説明

印刷装置

【課題】 印刷用サーバの役割を果たす装置なしに、ネットワークで接続された他の印刷装置とフォントを共有し利用できる印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
少なくとも1つの他の印刷装置に伝送路を介して接続されており、印刷データに示されるフォントに従って印刷を行う印刷装置において、
印刷データを解析して印刷に必要なフォントを判断するフォント判断部2021と、自己が持つフォントを記憶するフォント情報記憶部2031と、フォント判断部の判断結果に基づいてフォント情報記憶部を参照し、不足するフォントを判断する不足フォント判断部2022と、他の印刷装置で保持するフォントの問合わせを行うフォント問合わせ部2023と、問合わせの結果に基づいて他の印刷装置へ要求すべきフォントを選定する要求フォント選定部2024と、他の印刷装置へ要求して当該要求フォントを取得するフォント通信部2011と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークで結ばれる複数の印刷装置において、お互いにフォントを共有し利用できる印刷装置、特に印刷用サーバの役割を果たす装置を必要としない印刷フォントを共有し利用できる印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク上の1つの印刷装置に搭載されているハードディスクに格納されている印刷フォントを、同一ネットワーク上に接続された他の印刷装置が共有し利用する。この印刷システムでは、複数の印刷装置に対して1つのハードディスクに印刷フォントを用意するだけで良く、フォントのダウンロード作業も1回で済む。同一ネットワーク上に接続されている他の印刷装置は、自印刷装置で所有していないフォントでの印刷要求があった場合、ハードディスクを搭載している印刷装置が所有する共有の印刷フォントの中に要求のあったフォントが含まれているならば、そのハードディスクからネットワークを介して要求の印刷フォントデータをダウンロードして、そのダウンロードしたフォントを利用して印刷を行うことが広く普及している。
【0003】
特許文献1には、パソコンと印刷装置がフォント格納装置で保持しているフォント情報を共有することにより、表示と印刷のフォントを等しくできると共に、フォント情報格納のための2次記憶領域を削減しているフォント格納システムが提案されている。特許文献2には、ネットワーク上の1つの印刷装置に搭載されているハードディスクに格納されているフォントを、他の印刷装置が共有するネットワーク印刷システムおよびそれを構築する印刷装置が提案されている。
【特許文献1】特開平5−303371号公報
【特許文献2】特開2001−92618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1によれば、1台のフォント格納装置が印刷用サーバの役割を担うため、この装置に障害が発生したり、あるいは、何らかの原因で稼動できない状況となると、このシステムは機能不全になってしまう欠点がある。また、複数の印刷装置をフォント格納装置に接続してフォント情報を共有することを考慮した場合、パソコンや印刷装置からの同時アクセスが頻発することが予想されサーバの役目を担っているフォント格納装置への負荷が極度に集中してしまうというも問題点がある。
特許文献2のネットワーク印刷システムでは、フォントを記憶している記憶手段を備えた印刷装置へ他の印刷装置からフォント要求する通信が極度に集中してしまうので、該記憶を備えた印刷装置に障害が発生すると、このシステムが機能不全になってしまう問題点がある。
【0005】
上記の従来の欠点と問題点を解決するためになされたもので、印刷用サーバの役割を果たす装置なしに、ネットワークで接続された他の印刷装置とフォントを共有し利用できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上の点を解決するために、次の構成を採用する。
〈構成1〉
少なくとも1つの他の印刷装置に伝送路を介して接続されており、印刷データに示されるフォントに従って印刷を行う印刷装置において、
印刷データを解析して印刷に必要なフォントを判断するフォント判断部と、自己が持つフォントを記憶するフォント情報記憶部と、フォント判断部の判断結果に基づいてフォント情報記憶部を参照し、不足するフォントを判断する不足フォント判断部と、他の印刷装置で保持するフォントの問合わせを行うフォント問合わせ部と、問合わせの結果に基づいて不足フォントを保持する他の印刷装置へ要求し、他の印刷装置から当該不足フォントを取得するフォント通信部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
〈構成2〉
取得したフォントを補完フォントとして記憶する補完フォント情報記憶部を備え、補完フォント情報記憶部に保持する補完フォントに基づいて印刷を行うこと特徴とする。
〈構成3〉
フォント問合わせ部は、少なくとも印刷装置名とフォント名とフォントの種類数を問合わせの結果として取得することを特徴とする。
〈構成4〉
フォント問合わせ部が取得した問合わせの結果を問合わせフォント情報として記憶するフォントリスト記憶部を備え、問合わせフォント情報をリスト形式で保持することを特徴とする。
【0008】
〈構成5〉
補完フォント情報記憶部に格納されたフォントは、ベクトルフォントであり、ベクトルフォントをビットマップフォントへ変換する変換部を備えても良い。
〈構成6〉
フォント問合わせ部の問合わせ結果において、他の印刷装置が複数の種別のフォントを保持している場合、あるいは複数の他の印刷装置が複数の種別のフォントを保持し、かつそれらが異なるフォント種別である場合、
これらの複数のフォントから要求すべきフォントを選択する要求フォント選択部を備えても良い。
【0009】
〈構成7〉
フォント問合わせ部は、他の印刷装置が複数あるとき、各他の印刷装置に対してネットワークへの接続の有無を一斉に問合わせても良い。
〈構成8〉
フォント通信部は、他の印刷装置から要求されたフォントをフォント情報記憶部から取得し、フォントを要求元の他の印刷装置に対して送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
従来、複数の印刷装置でフォントを共用する場合は、サーバの役割を果たす装置が必ず1台必要であったが、本発明の印刷装置によれば、印刷データを解析して印刷に必要なフォントを判断するフォント判断部と、自己の持つフォントを記憶するフォント情報記憶部と、フォント判断部の判断結果に基づいてフォント情報記憶部を参照し、不足するフォントを判断する不足フォント判断部と、他の印刷装置で保持するフォントの問合わせを行うフォント問合わせ部と、問合わせの結果に基づいて不足フォントを保持する他の印刷装置へ要求し、他の印刷装置から当該不足フォントを取得するフォント通信部とを備えることにより、サーバ装置なしに印刷装置がお互いにフォントを共有することができる。
【0011】
即ち、自己が保持してないフォントが印刷に必要である時、該フォントを所有する他の印刷装置から、所望のフォントを取得し印刷処理に利用することが出来る。従来、サーバの役割を果たす装置に通信トラフィックが集中していたが、該サーバ装置がないため、フォント取得のための通信トラフィックの集中がなく分散されるので、通信トラフィックの集中がもたらす非効率なシステム運用を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。以下の説明では、各実施の形態に用いる図面の中で同一の構成要素は同一の符号を付し、かつ重複する説明は可能な限り省略する。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図11を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の印刷装置を用いてフォントを共有するシステムを構築した構成例を示す図である。
【0014】
印刷データなどを作成するコンピュータ101と,印刷装置1(プリンタ1)102と、印刷装置2(プリンタ2)103および印刷装置3(プリンタ3)104は、ネットワーク108上で接続されている。ネットワーク108に接続されている印刷装置102、103、104は、それぞれ記憶部105、106、107を各印刷装置の内部に搭載している。それぞれの印刷装置の記憶部には使用者が任意のフォントデータをダウンロードしているため、それぞれの印刷装置に搭載されているフォントは同一ではない。例えば、図1に示されるように、印刷装置1の記憶部105にはフォントAが格納され、印刷装置2の記憶部106にはフォントAとフォントBが格納され、印刷装置3の記憶部107にはフォントCとフォントDが格納される。
【0015】
実施例1の印刷装置102、103、104は、同じ構成である。図2は、印刷装置102、103、104の主要部の構成を示す図である。印刷装置102の主要部について説明し、その他の印刷装置103および104についての説明は内容が重複するので割愛する。
印刷装置102の主要部は、ネットワーク108を介して接続されているコンピュータ101および他の印刷装置103、104と通信するとともに処理部の判断による不足フォントを保持する他の印刷装置へ要求し、他の印刷装置から当該不足フォントを取得する通信処理部201と、印刷データを解析して必要とするフォントを判断し、該印刷に必要とするフォントを自己が所有しているか否かを判断すると共に所有してない場合、他の印刷装置103、104へ必要とするフォントについての問合わせを行い、問合わせの結果に基づいて要求すべきフォントを選定する処理部202と、ダウンロードされたフォントデータを格納する記憶部203と、該印刷データに基づいて印刷処理を行う印刷部204とから構成される。
【0016】
処理部202は、印刷データを解析して必要とするフォントを判断するフォント判断部2021と、該フォント判断部の判断結果に基づいてフォント情報記憶部2031を参照し不足するフォントを判断する不足フォント判断部2022と、他の印刷装置で保持するフォントの問合わせを行うフォント問合わせ部2023と、他の印刷装置が複数の種別のフォントを保持している場合、あるいは複数の他の印刷装置が複数の種別のフォントを保持し、かつそれらが異なるフォント種別である場合、問合わせの結果に基づいてこれらの複数のフォントから要求すべきフォントを選択する要求フォント選択部2024とで構成される。
【0017】
通信処理部201には、ネットワーク108を介して接続されているコンピュータ101および他の印刷装置103、104と通信する機能を有する。さらに、前記処理部202の処理結果に基づいた前記不足フォントを保持する他の印刷装置へ要求を送信し、該他の印刷装置から当該不足フォントを受信する機能と、他の印刷装置から要求されたフォントをフォント情報記憶部2031から取得し該フォントを要求元の他の印刷装置に対して送信する機能と、を有するフォント通信部2011が設けられる。他の印刷装置から受信した不足フォントは、記憶部203の補完フォント情報記憶部へ送信され格納される。
【0018】
記憶部203は、自己が保持するフォントデータを記憶するフォント情報記憶部2031と、他の印刷装置から取得したフォントを補完フォントとして記憶する補完フォント情報記憶部2032および前記問合わせに対する他の印刷装置からの応答(結果)をリスト形式で保持するフォントリスト記憶部2033から構成される。
【0019】
ところで文書を印刷するとき、コンピュータ101から印刷装置へ送信される印刷データ300には、印刷フォントを示す印刷フォントデータ列301が含まれている。
印刷フォントデータ列301は、図3に示すように、例えばフォントを指定するフォントの指定3011、文字の間隔、文字の大きさ、文字の高さ、文字のスタイル、文字の線の太さ、文字の書体、文字の印字開始位置、文字コードなどで構成されている。各印刷装置のフォント判断部2021は、フォントの指定3011に基づいて印刷に使用するフォントの判断を行う。
【0020】
つぎに、印刷フォントリストについて説明する。印刷フォントリスト400は、図4に示されるように、自印刷装置が必要としているフォントを送信可能な他の印刷装置を示すプリンタ名401と、要求と一致した他の印刷装置が所有するフォントの名402および要求と一致したフォントの種類数403で構成される。
【0021】
フォントの指定3011により指定されたフォントを自印刷装置が所有しているか否かは、不足フォント判断部2022がフォント情報記憶部2031を参照し判断する。指定されたフォントを所有していないと判断された場合、フォント問合わせ部2023が、同一のネットワーク108上に接続された他の印刷装置へフォントの指定3011により指定されたフォントを所有しているか否かを問合わせる。該問合わせに対する回答(結果)を問合わせ元の印刷装置の記憶部203にあるフォントリスト記憶部2033に格納する。該結果の格納にはリスト形式を用いる。該リストが印刷フォントリストである(図4を参照)。要求フォント選択部2024が、この印刷フォントリストを参照して、要求先印刷装置を複数の他の印刷装置から選択し、該選択された印刷装置を要求先としてフォント通信部2011は指定のフォントをダウンロードするように要求する。
【0022】
実施例1の印刷装置の動作について、図5〜図8のフロー図を用いて説明する。
図5は、実施例1の印刷装置の動作を示すフロー図である。コンピュータ101から印刷装置1へ印刷データが送信された場合を想定し説明する。該送信されてきた印刷データは、その印刷結果が図10に示され、印刷開始位置を示す座標情報とフォント種別情報と文字サイズ情報と印字文字列が存在する。
【0023】
コンピュータ101から印刷装置1へ印刷データが送信されると(ステップS1−1)、印刷データのフォントの指定3011を参照しフォント判断部2021が印刷に必要なフォントを判断する(ステップS1−2)。この判断結果に基づいて、印刷装置1が印刷データ中のフォントの全てを所有しているならば印刷処理を行う。印刷データ中のフォントの指定3011に印刷装置1の所有していないフォントが指定されているならば、フォント検索・ダウンロード処理を行う(ステップS1−3)。
【0024】
フォント検索・ダウンロード処理について、図6を用いて詳しく説明する。
フォント問合わせ部2023は、ネットワーク108上に接続されている全印刷装置に対してブロードキャスト送信で(図9の901)ネットワークを介しての接続を確認する(ステップS2−1)。
フォント問合わせ部2023は、通信処理部201を介しての応答(図9の902、903)があった印刷装置のプリンタ名のすべてをフォントリスト記憶部2033の印刷フォントリストのプリンタ名401に登録し、ネットワーク108上に接続されている印刷装置のプリンタ名一覧を作成する(ステップS2−2)。
【0025】
フォント問合わせ部2023は、ネットワーク108に接続された印刷装置があるか否かを判断する(ステップS2−3)。プリンタ名一覧にプリンタ名が1件でも登録されたならば、ステップS2−4の印刷フォントリストの作成へと進む。もしも、1件も登録されていなければ、ステップS1−4へ進み印刷装置1が所有するフォントを使用して印刷処理を行う。
【0026】
印刷フォントリストの作成処理について、図7を用いて詳しく説明する。
フォント問合わせ部2023は、ポインタa404が指し示している印刷フォントリストのプリンタ名401に登録されている印刷装置へフォント情報について通信処理部201経由で問合わせる。(ステップS3−1)
フォント問合わせ部2023は、通信処理部201経由で前記問合わせた印刷装置のフォント情報を取得する(ステップS3−2)。該取得したフォント情報の内容はフォントの指定3011が指定するフォントデータを保持し印刷装置1へ送信可能であるならば、ステップS3−3へ進む。該フォントデータを送信できなければステップS3−4へ進む。
【0027】
フォント問合わせ部2023は、ポインタa404が指し示すプリンタレコードへポインタb405が指し示す列にフォント名を格納し、さらにポインタc406の指し示す列にフォントの種類数を格納し印刷フォントリストを作成し、記憶部のフォントリスト記憶部2033に格納する(ステップS3−3)。
フォント問合わせ部2023は、フォント情報についての問合わせが全印刷装置に対して完了したか否かを判断する(ステップS3−4)。プリンタ数407を参照して印刷フォントリストに登録してある全印刷装置分の印刷フォントリストの作成処理が完了したならば、ポインタa404を初期化して自プリンタを指すようにセットしステップS4−1へ進む。完了していなければ、ステップS3−5へ進む。
ポインタa404を更新しステップS3−1へ進む(ステップS3−5)。
【0028】
フォントダウンロード処理の流れについて、図8を用いて詳しく説明する。
フォント通信部2011は、ポインタa404が示す印刷装置の送信可能なフォントデータをダウンロードする(ステップS4−1)。その際、ダウンロードが完了したフォントを明確にするためダウンロード済リスト409を更新しステップS4−2へ進む。
ポインタa404とプリンタ数407を比較してリスト上の全印刷装置分の処理が完了したか否かを判断する(ステップS4−2)。完了していなければステップS4−3へ進み、完了していれば、ステップS1−4へ進んでダウンロードされたフォントと自己で所有していたフォントを使用して印刷処理を行う。
【0029】
フォント通信部2011は、フォントデータのダウンロードがすべて完了した否かを判断する(ステップS4−3)。即ち、ダウンロード済リスト409のポインタd408が印刷装置1の要求フォントの種類数403を超えていれば、全て完了したと判断しステップS1−4へ進み印刷処理を行う。超えていなければポインタd408が指し示すダウンロード済リストのフォント名と一致するフォントを送信可能な印刷装置を検索する(ステップS4−4)。該検索はフォントリスト記憶部2033の印刷フォントリストを参照して行う。検索した後ステップS4−1へ戻る。
【0030】
次に、実施例1の印刷装置の動作タイミングについて、タイムチャート(図9)を用いて説明する。
印刷装置1へ印刷データ(図10に示す。)が送信されると印刷装置1のフォント判断部2021が印刷データ中のフォントの指定3011を参照し印刷に必要なフォントを判断し、印刷装置1の不足フォント判断部2022にてフォント情報記憶部2031に格納されるフォント名と前記必要なフォント名と照合する。該照合の結果、印刷装置1に指定されたフォントBが存在しなかった場合、ネットワーク108上に接続されている他の印刷装置に対してブロードキャスト送信901でネットワークへの接続の有無を確認する。
応答が有れば、その応答からネットワーク108に接続されている印刷装置をリストアップしプリンタリストを作成する(904)。応答した印刷装置2と印刷装置3へ順次フォントデータの送信が可能か否かの問合わせを行う(905、807)。
【0031】
印刷装置2と印刷装置3から問合わせに対する返答をもらい(906、908)、印刷フォントリスト400を作成しフォントリスト記憶部2033に格納する。
印刷フォントリストに収容されるプリンタ名は、印刷装置1が必要としているフォントを送信可能な印刷装置の名前のみである。
印刷フォントリストに収容する情報は、プリンタ名401と要求と一致したフォント名402と要求と一致したフォントの種類数403である。
【0032】
印刷装置2が印刷装置1の要求しているフォントを送信することが可能な場合、印刷装置1から印刷装置2へフォントデータをダウンロードするように要求を出す(910)、フォントデータをダウンロードするように要求を受けた印刷装置2は該当するフォントデータを印刷装置1へ送信する。こうして、フォントBのフォントデータのダウンロードが完了した後、印刷装置1はこのダウンロードしたフォントBを用いて印刷データの印刷処理を行うことができる。
【0033】
図10に示されるような印刷結果が得られる。まず、左上角が座標の基準となり、水平方向Xと垂直方向Yの座標位置にフォントAを用いて、8ポイントの大きさで、“Hello”という文字列を印字する。次に、水平方向Xと垂直方向Yの座標位置にダウンロードしてきたフォントBを用いて、12ポイントの大きさで、“こんにちは”という文字列を印字して印刷処理を終了する。
【0034】
実施例1の印刷装置によれば、コンピュータ101および他の印刷装置103、104と通信するとともに不足フォントを保持する他の印刷装置へ要求し、該他の印刷装置から当該不足フォントを取得する通信処理部201と、印刷データを解析して必要とするフォントを判断し、該印刷に必要とするフォントを自己が所有しているか否かを判断すると共に所有していない場合に他の印刷装置103、104へ必要とするフォントについて問合わせを行い、問合わせの結果に基づいて要求すべきフォントを選定する処理部202と、ダウンロードされたフォントデータを格納する記憶部203と、該印刷データに基づいて印刷処理を行う印刷部204から構成されるので、印刷に必要なフォントを所有する他の印刷装置から、該フォントを取得し、該取得されたフォントを用いて印刷を行うことができる。
【0035】
従来、ネットワーク上に接続された複数の印刷装置がフォントを共有する場合、必ずサーバの役割を果たす装置が必要であったが、実施例1の印刷装置で構成されたシステムでは該サーバ装置が不要となる。また、従来、サーバの役割を果たす装置に印刷フォントを取得するための通信が集中していたが、このサーバ装置がないため、印刷フォントを取得するための通信トラフィックの集中は起こらず、通信トラフィックを分散することができる。
【実施例2】
【0036】
実施例2の印刷装置を用いてフォントを共有するシステムを構築した構成例を示す図は割愛するが、図1とほぼ同じになる。
【0037】
印刷データなどを作成するコンピュータ101と複数の印刷装置(プリンタ)102、103、104は、ネットワーク108上で接続されている。ネットワーク108に接続されている印刷装置1(102A)、印刷装置2(103A)、印刷装置3(104A)は、それぞれ記憶部105、106、107を各印刷装置の内部に搭載している。それぞれの印刷装置の記憶部には使用者が任意のフォントデータをダウンロードしているため、それぞれの印刷装置に搭載されているフォントは同一ではない。例えば、図1に示されるように、印刷装置1の記憶部105にはフォントAが格納され、印刷装置2の記憶部106にはフォントAとフォントBが格納され、印刷装置3の記憶部107にはフォントCとフォントDが格納される。
実施例2の印刷装置102A、103A、104Aは、同じ構成である。図2は、印刷装置の主要部の構成を示す図である。印刷装置102Aの主要部について説明し、その他についての説明は内容が重複するので割愛する。
印刷装置102Aの主要部は、ネットワーク108を介して接続されているコンピュータ101および他の印刷装置103、104と通信するとともに処理部202の判断による不足フォントを保持する他の印刷装置へ要求し、他の印刷装置から当該不足フォントを取得する通信処理部201と、印刷データを解析して必要とするフォントを判断し、該印刷に必要とするフォントを自己が所有しているか否かを判断すると共に所有してない場合、他の印刷装置103、104へ不足のフォントについての問合わせを行い、問合わせの結果に基づいて要求すべきフォントを選定する処理部202と、ダウンロードされたフォントデータを格納する記憶部203Aと、該印刷データに基づいて印刷処理を行う印刷部204とから構成される。
【0038】
実施例2の印刷装置102Aの構成は、実施例1の印刷装置102とほぼ同じで、異なる点は記憶部203Aである。それは、印刷にベクトルフォントを使用することから来る実施例1の記憶部203との差異がある。ベクトルフォントとは、各頂点を結ぶ線画と所定領域を塗りつぶす際の塗りつぶし情報を持っている。
【0039】
記憶部203Aは、自己が保持するフォントデータを記憶するフォント情報記憶部2031と、他の印刷装置から取得したフォントデータを補完フォントとして記憶する補完フォント情報記憶部2032と、前記問合わせに対する他の印刷装置からの応答(結果)をリスト形式で保持するフォントリスト記憶部2033およびベクトルフォントからビットマップフォントへ変換する変換器から構成される。
【0040】
印刷装置1で印刷データ(図11に示す)が受信されると、印刷装置1のフォント判断部2021が印刷データのフォントの指定3011を参照する。該参照の結果、印刷装置1に指定されたベクトルフォントDが存在しないことが判明する。ネットワーク上に接続されている他の印刷装置に対して接続の有無の問い合わせをブロードキャスト送信で行う(901)。応答(902、903)があることにより、ネットワーク108に接続されている印刷装置のリストを作成する(904)。応答の有った印刷装置2と印刷装置3へ順次フォント情報の問合わせを行う(905、807)。印刷装置1は、印刷装置2と印刷装置3からの問合わせに対するフォント情報についての返信をもらい(906、908)、印刷フォントリストを作成し記憶部203Aに格納する。
【0041】
印刷フォントリストのプリンタ名は、印刷装置1が必要としている印刷フォントを所有する印刷装置のプリンタ名のみである。印刷フォントリストに収納される情報は、プリンタ名401、要求と一致したフォントのフォント名402、要求と一致したフォントの種類数403である。
【0042】
印刷装置2が印刷装置1の必要としている印刷フォント(ベクトルフォント)を所有していた場合、印刷装置1から印刷装置2へ必要としているフォントデータをダウンロードするように要求を出す(910)。該フォントのダウンロードの要求を受けた印刷装置2は、該要求されたフォントデータを印刷装置1へ送信する。ベクトルフォントデータを印刷装置2から受信した後に、印刷装置1は該ダウンロードしたベクトルフォントを用いて印刷データの印刷処理を行う。
【0043】
印刷装置1で受信された印刷データには、印刷開始位置を示す座標情報、フォント種別情報、印字文字列が存在する。まず、左上角が座標基準となり、水平方向(X)と垂直方向(Y)の位置に印刷装置1が以前から所有していたフォントAを用いて、8ポイントの大きさで、”Hello”の文字列を印字する。次に、水平方向(V)と垂直方向(W)の位置に印刷装置2からダウンロードしてきたベクトルフォントDを印刷装置1の記憶部203Aの変換器でビットマップ化して、12ポイントの大きさで、”こんにちは”の文字列を印字し印刷処理を完了する。図11に示す印刷結果が得られる。
【0044】
本発明の実施例2の印刷装置102Aによれば、他の印刷装置からダウンロードされたフォントデータを格納する記憶部203Aにベクトルフォントからビットマップフォントへ変換する変換器を設けることにより、印刷装置間のフォントデータの送受はベクトルフォントデータで行うことができる。これにより、データサイズのより小さいベクトルフォントデータで印刷装置間の送受信を行うため、フォントデータの伝送のためにネットワークを占有する時間が短くて済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の印刷装置を用いて印刷フォントを共有するシステムを構築した1例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の印刷装置における主要部の構成を示すブロック図。
【図3】印刷データと印刷フォントデータ列を示す図。
【図4】印刷フォントリストを示す図。
【図5】実施例1の印刷装置の動作を示すフロー図。
【図6】フォント検索・ダウンロード処理の流れを示すフロー図。
【図7】フォントリスト作成の流れを示すフロー図。
【図8】ダウンロード処理の流れを示すフロー図。
【図9】実施例1の印刷装置のタイムチャート。
【図10】ビットマップフォントの印刷データとその印刷結果を示す図。
【図11】ベクトルフォントの印刷データとその印刷結果を示す図。
【符号の説明】
【0046】
101 コンピュータ
102 印刷装置1
103 印刷装置2
104 印刷装置3
105 印刷装置1の記憶部
106 印刷装置2の記憶部
107 印刷装置3の記憶部
108 ネットワーク
201 通信処理部
2011 フォント通信部
202 処理部
2021 フォント判断部
2022 不足フォント判断部
2023 フォント問合わせ部
2024 要求フォント選択部
203 記憶部
2031 フォント情報記憶部
2032 補完フォント情報記憶部
2033 フォントリスト記憶部
300 印刷データ
301 印刷フォントデータ列
3011 フォントの指定
401 プリンタ名
402 要求と一致した所有フォント名
403 要求と一致した所有フォント数
404〜408 ポインタ
409 ダウンロード済みリスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの他の印刷装置に伝送路を介して接続されており、印刷データに示されるフォントに従って印刷を行う印刷装置において、
前記印刷データを解析して印刷に必要なフォントを判断するフォント判断部と、
自己が持つフォントを記憶するフォント情報記憶部と、
前記フォント判断部の判断結果に基づいて前記フォント情報記憶部を参照し、不足するフォントを判断する不足フォント判断部と、
前記他の印刷装置で保持するフォントの問合わせを行うフォント問合わせ部と、
前記問合わせの結果に基づいて前記不足フォントを保持する他の印刷装置へ要求し、該他の印刷装置から当該不足フォントを取得するフォント通信部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記取得したフォントを補完フォントとして記憶する補完フォント情報記憶部を備え、該補完フォント情報記憶部に保持する補完フォントに基づいて印刷を行うこと特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記フォント問合わせ部は、少なくとも印刷装置名とフォント名とフォントの種類数を前記問合わせの結果として取得することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記フォント問合わせ部が取得した問合わせの結果を問合わせフォント情報として記憶するフォントリスト記憶部を備え、該問合わせフォント情報をリスト形式で保持することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記補完フォント情報記憶部に格納されたフォントは、ベクトルフォントであり、該ベクトルフォントをビットマップフォントへ変換する変換器を備えることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記フォント問合わせ部の問合わせ結果において、前記他の印刷装置が複数の種別のフォントを保持している場合、あるいは前記複数の他の印刷装置が複数の種別のフォントを保持し、かつそれらが異なるフォント種別である場合、
これらの複数のフォントから要求すべきフォントを選択する要求フォント選択部を備えること特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記フォント問合わせ部は、前記他の印刷装置が複数あるとき、前記各他の印刷装置に対してネットワークへの接続の有無を一斉に問合わせることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記フォント通信部は、前記他の印刷装置から要求されたフォントを前記フォント情報記憶部から取得し、該フォントを要求元の前記他の印刷装置に対して送信することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−1041(P2006−1041A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177071(P2004−177071)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】