説明

印刷装置

【課題】 画像データと印刷設定情報を関連付けて記憶装置に記憶し、記憶した印刷設定情報で「焼増しプリント」が可能な印刷装置において、印刷設定情報は画像データが記憶されている印刷装置の印刷能力にあわせて記憶されている。そのため印刷設定情報と画像データを単純にそのまま他のプリンタ装置へ転送しただけでは、転送先のプリンタ装置では正しく印刷が再現されない可能性がある。
【解決手段】 印刷装置の印刷能力と印刷設定を管理する印刷設定管理手段と、画像データに関連付けされた印刷設定情報を自身の印刷能力にあわせて修正するための印刷情報修正手段とを備える。そして、通信手段を介して、接続される印刷装置に記憶されている画像データと、画像データに関連付けされた印刷設定情報を読み出すとともに、前記読み出した印刷設定情報を修正して、自身の記憶装置に画像データと修正された印刷設定情報を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラで撮影した画像データを格納する記憶媒体を装着し、この記憶媒体に格納されている画像データを読み出し、内蔵、あるいは接続された記憶装置に読み出した画像データを記憶する機能を有する印刷装置に関する。特に記憶装置に記憶された画像データと画像データに関連付けされた印刷設定情報を他の印刷装置へ転送する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラの普及に伴い、デジタルカメラで撮影した画像を家庭でプリントアウト(フォトプリント)する需要が高まっている。一般に、デジタルカメラで撮影した画像をプリントアウトするためには、まずパーソナルコンピュータ(以下「PC」と呼ぶ)に記憶媒体読取装置(以下「メモリカードリーダ」と呼ぶ)を接続する。次に、デジタルカメラで撮影した画像を記憶している記憶媒体(以下「メモリカード」と呼ぶ)を、メモリカードリーダに装着し、画像データをPCに取り込む。そして、PCとプリンタとを接続し、プリントアウトする。
【0003】
PCに不慣れな利用者が、簡単にフォトプリントする装置として、所謂ダイレクトプリンタ装置や、1台で複数の機能を提供することができる所謂マルチファンクションプリンタ装置(以下「MFP装置」と呼ぶ)が市販されている。これらの装置は、デジタルカメラで撮影した画像を記憶したメモリカードを、上記装置上に装着するためのメモリカードスロットを備えている。また、上記装置上の操作部を操作し、印刷する画像を選択し、用紙のサイズ、プリント枚数などを指定することができる。
【0004】
また、近年では、カラーLCDの画面を有する機器も市販され、LCD画面を見ながら、印刷すべき画像を選択することができ、PCに不慣れな利用者であっても、手軽にフォトプリントを得ることができる。
【0005】
また、ハードディスクなどの記憶装置をダイレクトプリンタ装置や、MFP装置に内蔵し、メモリカードに記憶された画像データを内蔵の記憶装置に記憶することで、記憶装置に記憶した画像データをいつでも印刷することができる。さらに、フォトプリントの印刷設定と画像データとを関連付けて記憶装置に記憶することで、一旦設定した印刷設定を読み出し、再びその設定で印刷することができる所謂「焼増しプリント」が可能な印刷装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
また、記憶装置を備える画像形成装置であって、記憶装置に記憶された画像データを他の画像形成装置に転送し、分散処理を行うことによって印刷スループットを向上する方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−215358号公報
【特許文献2】特開2004−201210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような画像データを記憶する機能を有するプリンタ装置を、買い替えなどによって、他のプリンタ装置へ置き換える際、今まで使用していたプリンタ装置に記憶されている画像データと画像データに関連付けされた印刷設定情報の扱いが問題となる。プリンタ装置に記憶した画像データは、本来お気に入りの画像データであり、プリンタ装置を交換した場合においても、交換したプリンタ装置にお気に入りの画像データを引き継ぎたいという要望がある。画像データを引き継ぐ場合、プリンタ装置に記憶されている画像データを一度メモリカードに記憶し、再び新しいプリンタ装置を操作して、メモリカードの画像データを記憶するなどの作業を行うこととなる。記憶装置と比較して、容量の少ないメモリカードを介して画像データの引き継ぎが行われるため、繰り返し作業が必要となり、大変煩雑である。
【0008】
また、プリンタ装置をPCに接続して、PCを操作して画像データの転送作業は行えるものの、この作業は、プリンタ装置のほかにPCを必要とする。また、本来ダイレクトプリンタ装置は、PCに不慣れな利用者のため、PCを使用せずにプリントするためのプリンタ装置であるにもかかわらず、PCを使用した作業を利用者に強いることになってしまう。
【0009】
また、画像データに関連付けて記憶されている印刷設定情報は、画像データが記憶されている印刷装置の印刷能力にあわせて記憶されている。そのため、印刷設定情報を単純にそのまま他のプリンタ装置へ転送しただけでは、転送先のプリンタ装置では正しく再現されない可能性がある。
【0010】
また、転送元の印刷装置と転送先の印刷装置の間で、対応している印刷能力にばらつきがある場合、印刷設定情報の食い違いが発生し、利用者の意図した印刷設定が反映できない可能性がある。
【0011】
そこで本発明は、これらの問題を解決し、より簡単に画像データと印刷設定の引継ぎを行えるプリンタ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の請求項によると、画像データを記憶するための外部記憶装置と、他の印刷装置と通信する通信手段とを備える印刷装置であって、印刷装置の印刷能力と印刷設定を管理する印刷設定管理手段と、前記画像データに関連付けされた印刷設定情報を自身の印刷能力にあわせて修正するための印刷情報修正手段とを備え、接続される印刷装置に記憶されている画像データと、画像データに関連付けされた印刷設定情報を前記通信手段を介して読み出すとともに、前記読み出した印刷設定情報を修正して、自身の外部記憶装置に画像データと修正された印刷設定情報を記憶することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第2の請求項によると、印刷設定の互換情報を管理するための互換情報管理手段と、前記印刷装置に接続された接続先印刷装置の印刷設定の互換情報に応じて前記画像データに関連付けされた印刷設定情報を修正するかどうか、あるいは記憶するかどうかを決定する印刷情報修正決定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、従来メモリカード等を介して行っていた画像データの転送作業を自動的に行うことができ、煩雑な作業をなくすことができる。
【0015】
また、プリンタ装置を直接接続可能としたため、画像データの転送のためにPCなどのその他の機器を必要としない。
【0016】
また、転送元プリンタ装置の印刷能力を取得し、転送先プリンタ装置の印刷能力にあわせて自動的に印刷設定情報の修正がなされるため、改めて転送先プリンタ装置の印刷能力にあわせた印刷設定をやり直す必要が無くなる。
【0017】
また、画像データと印刷設定情報を転送する際、転送する印刷設定情報に対して転送可能な互換情報を有するため、互換情報にあわせて画像データと印刷設定情報を転送することができ、利用者の意図した印刷設定を反映することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1−(a)は本発明の第1の実施形態におけるMFP装置100を示す概観斜視図である。MFP装置100は、PCからデータを受信し、印刷する通常のPCプリンタとしての機能を有し、また、PCからの動作指示によって、原稿台に置かれている原稿を読み取るスキャン機能とを有する。また、原稿台の原稿を複写して印刷するコピー機能や、メモリカードに記憶されている画像データを読み取り、印刷する機能と、デジタルカメラからの画像データを受信し、印刷する機能とを有する。
【0020】
MFP装置100は、上部カバー11と、排紙トレー12と、コネクタ13と、カードスロット14と、液晶表示部15と、操作部16とを有する。
【0021】
図1−(a)に示す状態は、上部カバー11が閉じられている状態であり、上部カバー11を開けることによって、原稿を原稿台へ置くことができる(不図示)。図1−(a)に示す状態では、排紙トレー12が閉じられ、プリントを行う際に、排紙トレー12を開くことによって、プリントアウトされた用紙の排紙トレーとして機能する。デジタルカメラを接続するためのコネクタ13を、デジタルカメラ(不図示)と接続することによって、デジタルカメラ内部のメモリに記憶されている画像データ読み出し、直接MFP装置100で印刷することができる。また、このコネクタ13は他のプリンタ装置との接続にも使用する。
【0022】
カードスロット14は、メモリカードを挿入するものであり、この挿入によって、メモリカードに記憶されている画像データを読み出し、印刷することができる。
【0023】
メモリカードに記憶されている画像の中からプリントしたい画像を検索する場合などに、液晶表示部15に、1コマ毎の画像やインデックス画像などを表示する。また、MFP装置100のコピー時の用紙サイズ、倍率、コピー濃度などの各種設定や、装置のメンテナンス機能などを操作するための画面を、液晶表示部15に表示する。さらに、MFP装置100に何らかの異常が発生した場合に、MFP装置100の状態を示す画面や、禁止されている操作が行われた際に、操作のガイダンスを示す画面などを、液晶表示部15に表示する。
【0024】
操作部16は、MFP装置100を操作する操作部であり、上下左右キーや、コピーモードキー、印刷開始キーなどの操作用のキーを複数備え、これらのキーを押下することによって、液晶表示部15に表示されている画面と連動し、MFP装置100を操作する。
【0025】
また、PCからの動作指示によって、原稿台に置かれた原稿を読み取るスキャナ装置として機能する。また、このMFP装置100の内部には、メモリカードの画像データや、印刷設定情報を記憶するための記憶装置が内蔵されている(不図示)。
【0026】
図1−(b)は、MFP装置100に接続されるダイレクトプリンタ装置110を示す外観斜視図である。このダイレクトプリンタ装置110は、上部カバー17と、排紙トレー18と、コネクタ19と、カードスロット20と、液晶表示部21と、操作部22と、接続ケーブル23とを有する。また、このダイレクトプリンタ装置110の内部には、MFP装置100と同様にメモリカードの画像データや、印刷設定情報を記憶するための記憶装置が内蔵されている(不図示)。図1−(b)に示す状態は、上部カバー17が閉じられた状態であり、上部カバー17を開けることによって、ダイレクトプリンタ装置110が備えるプリントヘッド(不図示)や、プリントヘッドに搭載されたインクタンク(不図示)を交換することが可能となる。なお、排紙トレー18と、コネクタ19と、カードスロット20と、液晶表示部21と、操作部22は、機能面でMFP装置100と同等の機能を有しているため、ここではそれぞれの詳細な説明は省略する。接続ケーブル23は、ダイレクトプリンタ装置110の背面に備え付けられた接続用コネクタ(不図示)に接続されており、その一方をPCや、MFP装置100のコネクタ13に接続することが可能となっている。
【0027】
図2−(a)は、MFP装置100の内部構成を示す機能ブロック図である。MFP装置100は、通信手段31と、操作制御手段32と、表示制御手段33と、ドキュメント解析手段34と、スキャンエンジン制御手段35とを有する。また、システム制御手段36と、プリントエンジン制御手段37と、画像処理手段38と、メモリカード制御手段39とを有する。さらに、外部記憶装置制御手段40と、印刷設定管理手段41と、印刷設定修正手段42とを有する。
【0028】
通信手段31は、PC用コネクタ(不図示)に接続されているPCとの間でのデータ通信や、デジタルカメラ等の接続用コネクタ13に接続されているデジタルカメラや、印刷装置との間でのデータ通信を制御する。
【0029】
操作制御手段32は、MFP装置100の操作部16の各種キーの押下を検出し、論理的なキー操作メッセージに変換し、表示制御手段33へ送信する手段である。
【0030】
表示制御手段33は、操作制御手段32から送信されたキー操作メッセージに応じて、プリントする画像の表示や、選択した画像に対するトリミング範囲の表示などを行い、コピー時のコピー枚数、用紙サイズなどの設定を、液晶表示部15に表示させる。
【0031】
スキャンエンジン制御手段35は、コピー時に原稿台に置かれたドキュメントを読み取るためにスキャン制御を行う手段であり、PCスキャン時にも使用される。
【0032】
ドキュメント解析手段34は、スキャンエンジン制御手段25にて読み取られたドキュメントがカラー原稿か、モノクロ原稿かを解析する手段であり、解析の結果を利用することでコピーや、PCスキャン時の画像処理設定を最適にすることが可能となる。
【0033】
システム制御手段36は、各種制御手段の調停を行う手段であり、物理的リソースの排他制御や、シーケンス制御、各種エラーや、インク残量など、MFP装置100の状態管理を行う。
【0034】
プリントエンジン制御手段37は、インク滴の吐出制御や、用紙の給紙や排紙、プリントヘッドの制御など、コピー印刷や、フォトプリント、PC印刷など、プリント処理に関する制御を行う手段である。
【0035】
画像処理手段38は、PCから送信された印刷データを変換し、プリントエンジン制御手段37へ送信する手段であり、また、フォトプリントにおける画像のデコード処理、トリミング処理などを行う。画像処理手段38は、印刷レイアウトの領域情報を保持し、レイアウト位置に画像データ等を配置する処理や、スケーリング処理や色処理、2値化処理、明るさや彩度、赤目補正処理、セピア調処理などの画像処理も行う。
【0036】
メモリカード制御手段39は、カードスロット14に装着されているメモリカードに記憶されている画像ファイルを読み書き処理し、また、メモリカードに記憶されている画像データ情報の詳細を解析し、ディレクトリを管理する。
【0037】
外部記憶装置制御手段40は、MPF装置100に内蔵された記憶装置(不図示)を制御し、メモリカード制御手段39を介してメモリカードに記憶されている画像データを記憶装置へ書き込む。また記憶装置に記憶されている画像データの読み出しや、ディレクトリの管理を行い、画像データに関連付けされた印刷設定情報の読み書きも行う。
【0038】
印刷設定管理手段41は、MFP装置100が印刷する際に設定可能な全ての印刷設定情報を管理する。また、印刷設定管理手段41によって管理されている情報は通信手段31を介してMFP装置100のコネクタ13に接続された他の印刷装置へ送信することが可能となっている。
【0039】
印刷設定修正手段42は、通信手段31を介してMFP装置100のコネクタ13に接続された他の印刷装置から、印刷能力を受信し、MFP装置100の印刷設定にあわせて画像データに関連付けされた印刷設定情報を修正する手段である。
【0040】
図2−(b)はダイレクトプリンタ装置110の内部構成を示す機能ブロック図である。ダイレクトプリンタ装置110は、通信手段51と、操作制御手段52と、表示制御手段53と、システム制御手段54と、プリントエンジン制御手段55と、画像処理手段56と、メモリカード制御手段57とを有する。さらに、外部記憶装置制御手段58と、印刷設定管理手段59と、印刷設定修正手段60とを有する。ダイレクトプリンタ装置110はドキュメントを読み取るスキャン機能を有していないため、MFP装置100に対しドキュメント解析手段34と、スキャンエンジン制御手段35が除かれている。また、それ以外の機能ブロックに関しては、MFP装置100の各機能ブロックと同等の機能ブロックであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0041】
図3−(a)はMFP装置100の印刷設定管理手段41が備える画像処理能力を示すテーブルである。このMFP装置100で印刷時に設定できる画像処理能力として、「明るさ」「色合い」「コントラスト」設定があり、それぞれに対して、「最小値」、「中央値」、「最大値」の情報を保持している。ここでは、全ての画像処理能力の値は「最小値」=「−8」、「中央値」=「0」、「最大値」=「+8」となっており、この値がMFP装置100の画像処理の設定範囲をあらわしている。またそれぞれ、「−100%」、「0」、「+100%」の効果がかかるように値が決定されている。図3−(c)はMFP装置100で印刷可能な用紙サイズを示すテーブルである。MFP装置100では、用紙サイズとして、「L判」、「2L判」、「はがき」、「A4」、「レター」、「名刺」、「パノラマ」の各サイズが選択可能である。また、各用紙サイズは順番に「1」から「7」の値が対応付けられている。図3−(e)はMFP装置100で印刷可能な用紙種類を示すテーブルである。用紙種類として「普通紙」、「インクジェット用紙」、「フォトペーパー」、「光沢紙」、「コート紙」の各用紙種類が選択可能である。また、各用紙種類は順番に「1」から「5」の値が対応付けられている。図3−(g)はMFP装置100で印刷可能なレイアウトを示すテーブルである。レイアウトとして「ふちあり」、「ふちなし」、「2分割」、「4分割」が選択可能であり、それぞれ、「1」から「4」の値が対応付けられている。
図3−(b)はダイレクトプリンタ装置110が備える画像処理能力示すテーブルである。このダイレクトプリンタ装置110は、MFP装置100と同様の画像処理能力「明るさ」「色合い」「コントラスト」設定を有している。また、画像処理能力の値は「最小値」=「−4」、「中央値」=「0」、「最大値」=「+4」となっており、この値がダイレクトプリンタ装置110の画像処理能力をあらわしている。またMFP装置100と同様に、それぞれ、「−100%」、「0」、「+100%」の効果がかかるように値が決定されている。図3−(d)はダイレクトプリンタ装置110で印刷可能な用紙サイズのテーブルを示している。ダイレクトプリンタ装置110では、用紙サイズとして、「L判」、「2L判」、「はがき」、「A4」、「レター」、の各サイズが選択可能である。また、各用紙サイズは順番に「1」から「5」の値が対応付けられている。図3−(f)はダイレクトプリンタ装置110で印刷可能な用紙種類を示すテーブルである。用紙種類として「普通紙」、「インクジェット用紙」、「フォトペーパー」の各用紙種類が選択可能である。また、各用紙種類は順番に「1」から「3」の値が対応付けられている。図3−(h)はダイレクトプリンタ装置110で印刷可能なレイアウトを示すテーブルである。レイアウトとして「ふちあり」、「ふちなし」が選択可能であり、それぞれ、「1」から「2」の値が対応付けられている。
【0042】
図4−(c)は記憶装置に記憶された印刷設定情報のフォーマットを示す図である。印刷設定情報には、「画像番号」、「印刷枚数」、「用紙サイズ」「用紙種類」、「レイアウト」、「明るさ」、「色合い」、「コントラスト」の項目がある。ここで図4−(a)を例に取ると、「画像番号」は印刷する画像データを特定するために、印刷装置が管理するそれぞれの画像データに対して、一意になるようあらかじめ番号が割り当てられている。画像番号として、「100−1101」が記憶され、印刷設定情報と関連づけされている。「印刷枚数」は、焼増し印刷が実行された際に印刷される枚数を指定するものである。ここでは、「2」枚が設定されている。「用紙サイズ」は印刷する用紙のサイズを指定するものであり、印刷可能な複数の用紙サイズの中から実際に用紙サイズに対応付けされた値が設定される。ここでは印刷される用紙サイズとして「L判」に対応する値「1」が設定されている。「用紙種類」は印刷する用紙の種類を指定するものであり、用紙サイズと同様に印刷可能な用紙種類の中から、実際に用紙種類に対応付けされた値が設定される。ここでは、印刷される用紙種類として「フォトペーパー」に対応する値「3」が設定されている。「レイアウト」は印刷レイアウトを指定するものであり、「ふちあり」、「ふちなし」に対応付けされた値が設定される。ここでは、レイアウトとして、「ふちなし」に対応する値「2」が設定されている。「明るさ」、「色合い」、「コントラスト」はそれぞれ前述した画像処理の値を指定するものであり、ここでは順番に「+1」、「−2」、「+4」が設定されている。この印刷設定情報は、操作部16より、例えば「焼増しプリント」が実行された際に読み出され、読み出された印刷設定で印刷が実行される。
【0043】
次に、MFP装置100に接続されたダイレクトプリンタ装置110に記憶された画像データと、それぞれの画像データに関連付けて記憶された印刷設定情報を読み出し、MFP装置100の記憶装置に記憶する手順について詳細に説明する。図5は上記記憶の手順を示すフローチャートである。この手順の前にあらかじめ、利用者によりMFP装置100が操作され、画像データの引き継ぎ処理が選択されたものとする。まず、画像データの引き継ぎ処理が選択されると、MFP装置100の液晶表示部15に引き継ぎたい画像データが記憶された印刷装置の接続を促すメッセージを表示する(S1)。次に、画像データが記憶された印刷装置が接続されたかどうかを判断する(S2)ここでは、接続ケーブルがコネクタに装着されたことを検出して、接続されたかどうかの判断を行う。印刷装置と接続されていない場合は、液晶表示部15に接続を促す画面表示を継続して行う。S2で、印刷装置と接続された場合、接続された印刷装置の印刷能力情報を取得する(S3)。ここでは、接続された印刷装置はダイレクトプリンタ装置110であることとする。また、接続されたことを利用者に通知するために、MFP装置100の液晶表示部15に接続が確立されたメッセージを表示しても良く、ダイレクトプリンタ装置110の液晶表示部22に表示しても良い。次に、転送元のダイレクトプリンタ装置110に記憶されている画像データを選択する(S4)。次に、選択された画像データに関連付けされた印刷設定情報があるかどうかを判断する(S5)。関連付けされた印刷設定情報が存在しない場合は、選択された画像データを転送先のMFP装置100に記憶する(S8)。S5で、関連付けされた印刷設定情報が存在すると判断された場合、転送先のMFP装置100の印刷能力にあわせて、印刷設定情報を修正する(S6)。ここで、印刷設定情報の修正方法について図6を参照して説明する。図6は印刷設定情報において、特に、画像処理設定値を修正する様子を示す図である。この場合、転送元の画像処理設定範囲が1刻みで「−4」から「+4」であるのに対し、転送先の画像処理設定値の設定範囲が1刻みで「−8」から「+8」となっている。ただし、効果の量が上限値、下限値ともにダイレクトプリンタ装置110の印刷能力の「+100%」と「−100%」であるため、転送元のダイレクトプリンタ装置110の刻みよりも細かく刻まれている。そのため、転送元のダイレクトプリンタ装置110の印刷設定情報に記憶されている「明るさ」の設定値「+1」を転送先のMFP装置100でも同等の効果を得られるようにするため、「+2」に修正する。これと同様の処理を「色合い」、「コントラスト」にも施し、印刷設定情報の修正が行われる。図4−(b)は転送後のMFP装置100の印刷能力にあわせて修正された印刷設定情報を表している。MFP装置100の印刷能力と同じ値となる設定項目、「画像番号」、「印刷枚数」、「用紙サイズ」、「用紙種類」、「レイアウト」は図4−(a)で示した転送元の印刷設定情報と同じ値をそのまま記憶する。そして、画像処理能力に依存した設定項目「明るさ」、「色合い」、「コントラスト」設定は修正される。なお、これらの一連の修正は、転送元の印刷設定情報を読み取った後、転送先のMFP装置100において修正を行うことで、転送元の印刷設定情報に影響を及ぼすことなく修正することができる。次に、修正した印刷設定情報を転送先のMFP装置100に記憶する(S7)。次に、選択された画像データを転送元のダイレクトプリンタ装置110から読み出し、転送先のMFP装置100に記憶する(S8)。次に転送元のダイレクトプリンタ装置110に記憶されているすべての画像データが転送先のMFP装置100に転送されたかどうか判断する(S9)。全ての画像データが転送されていない場合は、転送元のダイレクトプリンタ装置110に記憶されている次の画像データを選択し、S4からS9を同様に繰り返す。これら一連の処理を全画像データに対して行い、転送処理が終了する。
【0044】
以上の手順により、転送元の画像データとともに、画像データに関連付けされて記憶された印刷設定情報を転送先のMPF装置100の印刷能力にあわせて修正し、記憶することができる。なお上記手順は、ここに挙げた印刷設定項目や設定値に限らず適応することが可能であり、上記印刷設定項目、設定値に限定するものではない。
【0045】
図7は本発明の第2の実施形態におけるMFP装置100の内部構成を示す機能ブロック図である。第1の実施形態におけるMFP装置100の内部構成と同じ機能ブロックには同一の符号が割り当てられており、すでに説明済みであるためここでは詳細な説明を省略する。図7では、互換情報を記憶する互換情報管理手段61をさらに備えている。
【0046】
図8はあらかじめMFP装置100に記憶された互換情報を示すテーブルである。互換情報テーブルには互換レベルと、互換性のある設定項目の情報が記憶されている。互換レベル「1」は画像データに関連付けされた印刷設定情報のうち、修正をせずそのままの値を引き継ぐことができることを示すレベルである。(a)のテーブルでは、「用紙サイズ」、「用紙種類」、「印刷枚数」、「レイアウト」の設定項目が転送先の印刷装置でそのまま引き継ぐことができる。互換レベル「2」は、接続される印刷装置固有の印刷設定ではあるが、修正することにより印刷情報を引き継ぐことができることを示すレベルである。(a)のテーブルでは、「明るさ」、「色合い」、「コントラスト」設定を修正することで、転送先の印刷装置で引き継ぐことが可能である。互換レベル「3」は、印刷装置に固有の情報であり、転送先の印刷装置で引き継ぐことのできない情報であることを示すレベルである。(a)のテーブルでは、「赤目補正」、「自動色補正」、「セピア調」がそのレベルに該当していることを示している。テーブル(a)と同様にテーブル(b)の互換情報は、互換レベル「1」が「用紙サイズ」、「用紙種類」、「印刷枚数」、「レイアウト」、「明るさ」、「色合い」となる。また、互換レベル「2」が「コントラスト」、「赤目補正」、「自動色補正」、「セピア調」となる。
【0047】
図9は、互換情報テーブルを用いて印刷設定情報を修正するかどうかを判断しながら、画像データと、画像データに関連付けされた印刷設定情報を転送先印刷装置の記憶装置に記憶する手順を示すフローチャートである。ここで、転送元の印刷装置をダイレクトプリンタ装置110とし、転送先の印刷装置をMFP装置100とする。図9のフローチャートにおいて、印刷装置が接続され、接続された印刷装置の印刷能力を取得する手順までは、第1の実施形態と同じである。そのため、ここではあらかじめ利用者の操作によって、引き継ぎ処理が選択され、印刷装置が接続を確認後、接続された印刷装置の印刷能力を取得した状態からフローチャートを開始する。
【0048】
まず、接続されたダイレクトプリンタ装置110に対応する互換情報を検索する(S11)。ここでは、互換情報として図8−(a)が選択されたものとする。次に、転送元のダイレクトプリンタ装置110に記憶されている画像データを選択する(S12)。次に、選択された画像データに関連付けされた印刷設定情報があるかどうかを判断する(S13)。関連付けされた印刷設定情報が存在しない場合は、選択された画像データを転送先のMFP装置100に記憶する(S22)。S13で、関連付けされた印刷設定情報が存在すると判断された場合、互換レベルにあわせて印刷設定項目を個別に処理するために、処理する印刷設定項目を選択する(S14)。次に、対象の印刷設定項目の互換レベルが「1」であるかどうかを判断する。S15で互換レベルが「1」である判断される項目の場合は、印刷設定の値をそのまま引き継ぐことが可能であり、印刷設定を修正せずにそのまま保持する(S16)。ここでは、例えば「用紙サイズ」、「用紙種類」、「印刷枚数」などである。S15で、互換レベルが「1」でないと判断された場合、互換レベルが「2」であるかを判断する(S17)。S17で、互換レベルが「2」であると判断される項目の場合は、転送先のMPF装置100で、同等の印刷設定が可能であるものの、修正処理が必要であり、印刷設定情報を転送先のMPF装置100の印刷能力にあわせて修正する(S18)。S18の修正方法については、第1の実施例で説明済みであるため、ここでは説明を省略する。S17で互換レベルが「2」ではないと判断された場合、印刷装置固有の設定であり、対応されていない設定項目であるため、印刷設定を引き継ぐことができない。そのため、対応していない印刷設定項目をあらかじめ決められた標準値に設定する(S19)。各手順S16、S17、S18によって互換レベルに応じた処理がなされた後、すべての印刷設定項目の設定が終了したかどうかを判断する(S20)。S20にて全ての印刷設定項目の設定が終了していない場合は、S14へ戻り、次の設定項目を処理対象にして、S15からS20の手順を繰り返すことで全ての印刷設定項目に対する処理が実行される。S20で、全ての印刷設定項目の設定が終了したと判断された場合、選択された印刷設定情報の全項目の処理が終了したため、処理した印刷設定情報を転送先のMFP装置100に記憶する(S21)。次に、選択された画像データを転送元のダイレクトプリンタ装置110から読み出し、転送先のMFP装置100に記憶する(S22)。次に転送元のダイレクトプリンタ装置110に記憶されているすべての画像データが転送先のMFP装置100に記憶されたかどうか判断する(S23)。全ての画像データが記憶されていない場合は、転送元のダイレクトプリンタ装置110に記憶されている次の画像データを選択し、S12からS23を同様に繰り返す。これら一連処理を全画像データに対して行い、転送処理が終了する。
【0049】
図10−(a)は引き継ぎ前のダイレクトプリンタ装置110の印刷設定情報を示している。図10−(b)は上記手順にてダイレクトプリンタ装置110からMFP装置100へ引き継がれた印刷設定情報を示している。上記処理を行った結果、引き継ぎ前の印刷設定情報が引き継ぎ後には、レベル「1」の設定項目は全てそのままの値が設定されている。また、レベル「2」の設定項目の、「明るさ」、「色合い」、「コントラスト」は修正処理がなされて、転送先のMFP装置100の印刷能力に合わせた値が設定されている。また、レベル「3」の設定項目の「赤目補正」、「自動色補正」、「セピア調」の設定値はすべて、標準値である「0」が設定されている。
【0050】
このように、接続される印刷装置との互換情報に応じて印刷設定を修正するかどうかを判断して印刷設定情報を修正することによって、利用者の意図した印刷設定を反映して印刷設定情報を引き継ぐことができる。
【0051】
また、接続される印刷装置が異なる場合、S11の検索によって選択されるテーブルが変更される。例えば、ダイレクトプリンタ装置110以外の印刷装置の互換情報として、図8−(b)に示すテーブルを対応付けることができる。これらのテーブルはあらかじめMFP装置100の記憶装置に、印刷装置ごと対応するテーブルが記憶されている。MFP装置100の対応印刷装置を増やすために、メモリカードに新たなテーブルを記憶し、このメモリカードのテーブルを読み取ることによって対応する印刷装置のテーブルを拡張するようにしても良い。
【0052】
なお、図9で示したフローチャートでは、転送元と、転送先の印刷装置とで設定項目が同じである場合の手順を説明したが、転送先の印刷装置には無い設定項目が転送元の印刷装置の印刷情報に記憶されている場合、その情報は読み捨てるようにしても良い。また逆に、転送元の印刷装置にない項目が転送先の印刷装置に存在する場合、あらかじめ決められた設定値を設定しても良いし、現在設定されている内容を設定しても良い。また、利用者に設定値を入力するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の印刷装置の実施形態に係る印刷装置の外観斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の内部構成例を示すブロック図
【図3】本発明の印刷装置の実施形態に係る印刷能力情報を示す図
【図4】本発明の印刷装置の実施形態に係る印刷設定情報を示す図
【図5】本発明の印刷装置の第1の実施形態に係る印刷設定情報を修正して記憶する手順を示すフローチャート
【図6】本発明の印刷装置の実施形態に係る印刷能力に応じて印刷設定を修正する様子を示す図
【図7】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置の内部構成例を示すブロック図
【図8】本発明の印刷装置の第2の実施形態に係る互換情報を示す図
【図9】本発明の印刷装置の第2の実施形態に係る印刷設定情報を互換情報に基づき修正して記憶する手順を示すフローチャート
【図10】本発明の印刷装置の第2の実施形態に係る印刷設定情報を示す図
【符号の説明】
【0054】
100 MFP装置
110 ダイレクトプリンタ装置
11 上部カバー
12 排紙トレー
13 コネクタ
14 カードスロット
15 液晶表示部
16 操作部
23 接続ケーブル
31 通信手段
32 操作制御手段
33 表示制御手段
34 ドキュメント解析手段
35 スキャンエンジン制御手段
36 システム制御手段
37 プリントエンジン制御手段
38 画像処理手段
39 メモリカード制御手段
40 外部記憶装置制御手段
41 印刷設定管理手段
42 印刷設定修正手段
61 互換情報管理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを記憶するための外部記憶装置と、他の印刷装置と通信する通信手段とを備える印刷装置であって、印刷装置の印刷能力と印刷設定を管理する印刷設定管理手段と、前記画像データに関連付けされた印刷設定情報を自身の印刷能力にあわせて修正するための印刷情報修正手段とを備え、接続される印刷装置に記憶されている画像データと、画像データに関連付けされた印刷設定情報を前記通信手段を介して読み出すとともに、前記読み出した印刷設定情報を修正して、自身の外部記憶装置に画像データと修正された印刷設定情報を記憶することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
印刷設定の互換情報を管理するための互換情報管理手段と、前記印刷装置に接続された接続先印刷装置の印刷設定の互換情報に応じて前記画像データに関連付けされた印刷設定情報を修正するかどうか、あるいは記憶するかどうかを決定する印刷情報修正決定手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷能力は、画像処理能力を含むことを特徴とする請求項1又は、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記画像データは、写真データであることを特徴とする請求項1又は、請求項2に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−107173(P2009−107173A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280415(P2007−280415)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】