説明

印刷装置

【課題】 定着温度が異なる用紙への連続印刷時に、印刷開始時間の短縮を可能とし無駄な電力消費を防ぎ、また印刷効率を向上させ得る印刷装置を得る。
【解決手段】 薬の情報書類(薬情)とその書類を入れる封筒(薬袋)など、書類とその書類を入れる封筒の両方を組み合わせて印刷処理する機能を備えた印刷装置1において、連続印刷開始時の用紙モードの定着温度をメモリして、印刷終了後メモリしておいた前回の印刷開始時の定着温度に戻すことにより、そのまま今回の印刷を即座に開始できるように構成し、これにより印刷開始時間の短縮を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤師によって調整される薬剤の情報、及び薬剤を収納する薬袋の印刷が可能な薬袋薬情印刷モードを有する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、病院や診療所等において、薬の種類、効き目、副作用、飲み方、飲み合わせなど、薬剤の情報について患者に理解されるよう説明することが重視されている。また、近年薬剤師法が改正され、処方せんで調剤した薬剤についての情報を患者や看護にあたる人に提供しなければならないことが義務づけられ、薬袋に薬の種類、効き目、副作用等の薬情報を記載した印刷物を添付することが必要になった。
【0003】
すなわち、薬袋とは、薬を入れる袋、薬情とは、薬袋に薬と一緒に入れる薬の内容情報を印刷した用紙のことであり、薬局では、医師の発行した処方箋を基に、薬を用意し、その薬の説明文書(薬情)を、薬情報データベースから出力して印刷するとともに、その薬情を薬と一緒に薬袋に入れて、患者に渡している。
【0004】
そこで、上記薬袋と薬情報とを纏めて印刷処理する薬袋薬情印刷モードの機能を設けた印刷装置が従来から種々提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
このような印刷装置では、例えば薬袋薬情印刷モード、封筒印刷モード、及び通常印刷モードの各機能を設け、定着を良好に行うため、それぞれ印刷速度(プロセス速度)を異ならせている。
【0005】
例えば、薬袋薬情印刷モードは、封筒と普通紙を混在させて印刷できるモードであり、定着温度の設定は普通紙と同じ温度であるが、普通紙と同じ速度で印刷を行うと定着不良になるため、印刷速度を下げて印刷している。
【0006】
すなわち、特許文献1,2,3等は、薬局の作業効率を向上させる薬袋シートの印刷システムの発明であり、薬剤に関する情報をデータベースに格納し、このデータベースに薬局内のデータベースを接続し、薬剤を処方する際、薬剤コードに基づいてデータベースを検索し、薬袋に印刷すべきデータ、及び処方箋に印刷すべきデータを読み出し、それぞれの印刷処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−42833号公報
【特許文献2】特開2001−318988号公報
【特許文献3】特開2008−225057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したように用紙の種別に応じた複数の定着温度設定を有する従来の電子写真方式の印刷装置では、所定の印刷ジョブの終了時には、最後の用紙モードの定着温度を維持して待機する。これは、その後も同じ用紙の印刷処理が連続して来る可能性が高いためである。
【0009】
特に、このような印刷装置によれば、厚紙モードで印刷作業が終了すると、厚紙の温度設定になったままになるが、この方式では、無駄な電力を消費するおそれがある。
【0010】
例えば、特許文献3は、普通紙より高温の定着処理が必要な薬袋用紙が連続する場合、定着温度を高温に制御する方式であって、薬袋用紙モードより高い温度での定着処理が必要な厚紙と薬袋用紙より低い温度での定着処理が必要な普通紙との双方の用紙に対して短時間で対応が可能になるように、両方の用紙モードの中間の定着温度で待機するよう制御するようになっていた。
【0011】
ここで、印刷に用いられる用紙の種別(厚さ)に応じて、以下のような定着温度設定制御を行う印刷装置の場合、薄紙、普通紙、厚紙、封筒等の用紙種別と定着設定温度との関係を、下記の表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
この表1から明らかなように、用紙の種別によって定着設定温度が異なることが理解されよう。
【0014】
薬局で薬袋用紙と薬情用紙を纏めて印刷する作業時の異なる紙種の処理順序として、以下の例がある。
印刷順例A.
「薄紙(中身)数枚→封筒(袋)1枚」(一人分の薬袋・薬情印刷ジョブ)の繰返し
印刷順例B.
「封筒(袋)1枚→薄紙(中身)数枚」(一人分の薬袋・薬情印刷ジョブ)の繰返し
【0015】
上述したような処理順序で印刷を行う印刷装置にあっては、以下のような問題があった。
1.一般に定着温度は印刷終了時の用紙モードの温度を維持して制御されるので、印刷順例Aでは最後の作業の封筒温度でしばらく待機して数分後印刷順例Aの印刷では定着温度が薄紙用の低温になるまで待たされる。
【0016】
温度下降は、通常、放置状態では0.1℃/秒程度の冷却率しか得られず、時間が掛かり過ぎるので、強制冷却用定着フアン(高速)と定着ロールの回転を行うことで4℃/秒の冷却率が得られるようにしても、薄紙用の適正定着温度に下がるまでには、12.5秒(温度差50℃÷4)程度待つことになる。
【0017】
また、この場合、定着温度を早く下げるために無駄な電力を消費(待機の封筒+定着フアン高速+定着回転分)している。更に定着装置部分だけが独立回転しない構成では、本体モータが回転し装置全体を駆動しなければならず、更に電力を消費する。又消耗品としての感光ドラムやトナーを含む現像装置なども回転するので消耗品寿命が短くなる。
【0018】
逆に、印刷順例Bでは、印刷作業が完了すると薄紙処理時の温度で待機され、数分後、また同じ印刷順例Bの印刷が繰り返されると、定着温度が封筒用の高温になるまで待たなければ次の印刷作業が開始できない。例えば、急速加熱制御した場合の温度上昇率が2℃/秒とすると、作業開始可能になるまで25秒(温度差50℃÷2)待たされる。
【0019】
2.待機中の定着設定温度を選択設定できる装置では、待機中の定着設定温度を封筒モードに設定すると印刷順例Bの例では、封筒モードから開始されるので、次の印刷開始時間が短縮されるが、印刷順例Aの例では開始時間が遅れる点は変わらない。
【0020】
また、待機中の定着設定温度を薄紙モードに設定すると印刷順例Aの例では、薄紙モードから開始されるので、次の印刷開始時間が短縮されるが、印刷順例Bの例の場合には、開始時間が遅れる点は変わらない。しかし何れの温度に設定したとしても上記印刷順でない普通紙や厚紙を印刷すると定着温度が異なるため印刷開始時間が遅くなってしまう。
【0021】
すなわち、従来一人分の薬を渡す際に必要な印刷物を「薄紙(中身)数枚→封筒(袋)1枚」とすると、定着温度設定は低温(薄紙)から高温(封筒)と順に制御される。そして、1単位作業が終わったあと、次の薬を受け取る人が来て印刷処理が必要になるまで、定着温度は高温を保持している。次の印刷作業は、薄紙から開始されるので定着温度を低温に下げなければならないので印刷開始(給紙開始)が遅くなってしまうという不具合があり、このような問題点を解決し得る何らかの対策を講じることが望まれている。
【0022】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、定着温度が異なる用紙への連続印刷を行う印刷装置において、連続印刷時における印刷開始時間の短縮を可能とし無駄な電力消費を防ぎ、また印刷効率を向上させ得る印刷装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る印刷装置は、上位装置から転送される複数種類の印刷用紙に印刷処理を行う印刷ジョブに基づいて印刷処理を行う際、使用を指示される印刷用紙の種別に応じて定着装置の温度設定を異ならせて印刷処理する印刷装置において、前記印刷ジョブ開始時の開始状態情報を記憶する開始状態記憶手段と、同一印刷ジョブ内の連続印刷処理中は、前記印刷データ中に指定された印刷用紙の種別指定に対応して定着設定温度を順次切り換える定着温度制御手段と、前記連続印刷終了後、前記開始状態記憶手段に記憶されている開始状態情報に基づいて前記定着装置の制御温度を設定する定着温度設定手段を備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明(請求項2記載の発明)に係る印刷装置は、請求項1において、前記開始状態情報は、用紙種別であることを特徴とする。
【0025】
本発明(請求項3記載の発明)に係る印刷装置は、請求項1において、前記開始状態情報は、用紙種別に対応して予め設定された定着温度であることを特徴とする。
【0026】
本発明(請求項4記載の発明)に係る印刷装置は、請求項1ないし請求項3において、前記用紙種別は、用紙の厚さであることを特徴とする。
【0027】
本発明(請求項5記載の発明)に係る印刷装置は、上位装置から転送されてくる薬袋印刷データと薬情印刷データが混在する印刷ジョブに基づいて印刷処理を行う際、使用を指示される印刷用紙の種別に応じて定着装置の温度設定を異ならせて印刷処理する印刷装置において、前記印刷ジョブ開始時の開始状態情報を記憶する開始状態記憶手段と、同一印刷ジョブ内の連続印刷処理中は、前記印刷データ中に指定された印刷用紙の種別指定に対応して定着設定温度を順次切り換える定着温度制御手段と、前記連続印刷終了後、前記開始状態記憶手段に記憶されている開始状態情報に基づいて前記定着装置の制御温度を設定する定着温度設定手段を備えていることを特徴とする。
【0028】
本発明(請求項6記載の発明)に係る印刷装置は、請求項5において、前記開始状態情報は、用紙種別であることを特徴とする。
【0029】
本発明(請求項7記載の発明)に係る印刷装置は、請求項5において、前記開始状態情報は、用紙種別に対応して予め設定された定着温度であることを特徴とする。
【0030】
本発明(請求項8記載の発明)に係る印刷装置は、請求項5ないし請求項7において、前記用紙種別は、用紙の厚さであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明に係る印刷装置によれば、連続印刷時における各印刷時における印刷開始時間を短縮することができ、全体の印刷時間を短縮し、早く印刷処理が完了するという優れた効果がある。
【0032】
また、本発明によれば、印刷時間が短縮されるから、消耗品(例えばドラム、トナー、転写ベルト、定着装置等)の寿命が延びる。さらに、装置本体のモータも稼働時間が短縮されるから、同様に寿命が延びるという利点がある。
【0033】
さらに、「薄紙→封筒」の繰返しの印刷処理の場合は、次の印刷までにヒ一夕OFFの期間があるので電力削減に繋がる。
また、同じ用紙モードを繰返して印刷した場合、定着温度が変わらない従来と同様である。これは、待機温度が設定可能な機器では用紙モードが異なると遅くなるからである。
【0034】
すなわち、本発明装置によれば、印刷開始時の用紙モードの定着設定温度を記憶しておき、1単位の印刷作業終了時に、先に記憶していた定着温度設定に戻すので、次の薬を受取に来る人が来て、薬袋・薬情の印刷が必要になるまでの間に定着温度が下がり、直ちに印刷を開始させることができる。
【0035】
また、一般印刷物を繰返し(普通紙10枚→普通紙2枚)印刷した場合も、定着温度設定は変わらないので、次の印刷開始時間の遅れはない。つまり、1単位の印刷作業開始時の用紙設定に対する温度制御条件を記憶しておき、1単位の印刷作業が終わるたびに、先に記憶した温度制御条件に戻して、次に続く印刷作業が開始されるように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る印刷装置(プリンタ装置)の一実施形態を示し、その印刷処理を説明するシステム構成図である。
【図2】図1の印刷装置の内部構成を説明するための断面図である。
【図3】印刷順(薬袋と薬情とを混在して印刷処理される際の用紙処理手順の例)を図示したものである。
【図4】本発明に係る印刷装置による印刷動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明による印刷装置において、印刷順Aを例とした場合の定着温度の変化を(1)本発明の場合と(2)従来方式の場合とで比較図示した説明図である。
【図6】本発明による印刷装置において、印刷順Bを例とした場合の定着温度の変化を(1)本発明の場合と(2)従来方式の場合とで比較図示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1および図2は本発明に係る印刷装置(以下、プリンタ装置で示す)の一実施形態を示す。
これらの図において、図1はこの実施形態でのプリンタ装置の印刷処理を説明するシステム構成図である。
【0038】
同図において、ホストインターフェイス(以下、ホストI/F で示す)40は不図示のホスト機器から供給された印刷データを受信し、受信/描画部41に送る。受信/描画部41は、受信した印刷データを格納し、所定頁分の印刷データが格納されると、JOB制御/画像データ部49に印刷する記録媒体のサイズや、紙種情報等を記録する。
【0039】
受信/描画部41には、頁カウンタ42、紙種連続カウンタ46、紙種変換テーブル47、及び紙種先頭頁43、今頁紙種44、次頁紙種45の各情報を記録する記憶エリアが接続され、印刷動作モード48の設定を行い、JOB制御/画像データ部49を介して印刷制御部50に画像データを送信する。
【0040】
印刷制御部50は、供給された画像データをエンジン部51に送信し、設定された印刷動作モードによる印刷処理をエンジン部51に行わせる。なお、上記説明において、紙種先頭43は紙種先頭記憶エリア43で示し、今頁紙種44は今頁紙種記憶エリア44で示し、次頁紙種45は次頁紙種記憶エリア45で示す。
【0041】
図2はこの実施形態におけるプリンタ装置の内部構成を説明する断面図である。
これを簡単に説明すると、同図に示すプリンタ装置1は、電子写真式で二次転写方式のタンデム型のカラーのプリンタ装置であり、4つの画像形成部2、中間転写ベルトユニット3、給紙部4、及び両面印刷用搬送ユニット5で構成されている。
【0042】
上記画像形成部2は、同図の右から左へ4個の画像形成ユニット6(6M、6C、6Y、6K)を多段式に並設した構成から成る。上記4個の画像形成ユニット6のうち上流側(図の右側)の3個の画像形成ユニット6M、6C、及び6Yは、それぞれ減法混色の三原色であるマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色トナーによるカラー画像を形成し、画像形成ユニット6Kは、主として文字や画像の暗黒部分等に用いられるブラック(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。
【0043】
上記の各画像形成ユニット6は、トナー容器に収納されたトナーの色を除き全て同じ構成である。したがって、以下、ブラック(K)用の画像形成ユニット6Kを例にしてその構成を説明する。
【0044】
画像形成ユニット6は、最下部に感光体ドラム7を備えている。この感光体ドラム7は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成され、周面近傍を取り巻いて、クリーナ8、帯電ローラ9、光ヘッド11、及び現像器12の現像ローラ13が配置されている。
【0045】
現像器12は、上部のトナー容器に同図にはM、C、Y、Kで示すようにマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のいずれかのトナーを収容し、中間部には下部へのトナー補給機構を備え、下部には側面開口部に上述した現像ローラ13を備え、内部にトナー撹拌部材、現像ローラ13にトナーを供給するトナー供給ローラ、現像ローラ13上のトナー層を一定の層厚に規制するドクターブレード等を備えている。
【0046】
中間転写ベルトユニット3は、本体装置のほぼ中央で図の左右のほぼ端から端まで扁平なループ状になって延在する無端状の転写ベルト14、この転写ベルト14を掛け渡されて転写ベルト14を図の反時計回り方向に循環移動させる駆動ローラ15、及び従動ローラ16を備えている。
【0047】
なお、上記転写ベルト14には、トナー像が直接ベルト面に転写(一次転写)され、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への転写位置まで搬送するので、ここではユニット全体を中間転写ベルトユニットとして示している。
【0048】
この中間転写ベルトユニット3は、上記扁平なループ状の転写ベルト14のループ内にベルト位置制御機構17を備えている。ベルト位置制御機構17は、転写ベルト14を介して感光体ドラム7の下部周面に押圧する導電性発泡スポンジから成る一次転写ローラ18を備えている。
【0049】
ベルト位置制御機構17は、マゼンタ(M)、シアン(C)及びイエロー(Y)の3個の画像形成ユニット6M、6C、及び6Yに対応する3個の一次転写ローラ18を鉤型の支持軸を中心に同一周期で回転移動させ、ブラック(K)の画像形成ユニット6Kに対応する1個の一次転写ローラ18を上記3個の一次転写ローラ18の周期と異なる回転移動周期で回転移動させて転写ベルト14を感光体ドラム7から離接させ、フルカラーモード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14に当接)、モノクロモード(画像形成ユニット6Kに対応する一次転写ローラ18のみが転写ベルト14に当接)、及び全非転写モード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14から離れる)に切換える。
【0050】
上記中間転写ベルトユニット3には、上面部のベルト移動方向最上流側の画像形成ユニット6Mの更に上流側に、ベルトクリーナユニットが配置され、下面部のほぼ全面に沿い付けるように平らで薄型の廃トナー回収容器19が着脱自在に配置されている。
【0051】
給紙部4は、上下3段に配置された3個の給紙カセット21a〜21cを備え、3個の給紙カセット21a〜21cの給紙口(図の右方)近傍には、それぞれ用紙取出ローラ22、給送ローラ23、捌きローラ24、待機搬送ローラ対25が配置されている。待機搬送ローラ対25の用紙搬送方向(図の鉛直上方向)には、転写ベルト14を介して従動ローラ16に圧接する二次転写ローラ26が配設されて、用紙への二次転写部を形成している。
【0052】
また、上記3個の給紙カセット21a〜21cには、それぞれ異なる記録媒体が収納されている。そして、後述する制御に従って、指定された給紙カセット21a〜21cから対応する記録媒体が搬出される。
【0053】
ここで、この実施形態では、給紙カセット21aには薬袋である封筒が収納され、給紙カセット21bには薬情として薄紙が収納され、さらに給紙カセット21cには普通紙が収納されている。
そして、これらの給紙カセット21a〜21cに必要な記録媒体が順次補給されるとともに、順次連続して給紙されるように構成されている。
【0054】
上記二次転写部の下流(図では上方)側にはベルト式熱定着装置27が配置されて、ベルト式熱定着装置27の更に下流側には、定着後の用紙をベルト式熱定着装置27から搬出する搬出ローラ対28、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレイ29に排紙する排紙ローラ対31が配設されている。
【0055】
両面印刷用搬送ユニット5は、上記搬出ローラ対28と排紙ローラ対31との中間部の搬送路から図の右横方向に分岐した開始返送路32a、それから下方に曲がる中間返送路32b、更に上記とは反対の左横方向に曲がって最終的に返送用紙を反転させる終端返送路32c、及びこれらの返送路の途中に配置された4組の返送ローラ対33a、33b、33c、33dを備えている。尚、上記終端返送路32cの出口は、給紙部4の下方の給紙カセット21に対応する待機搬送ローラ対25への搬送路に連絡している。
【0056】
また、本例において中間転写ベルトユニット3の上面部には、クリーニング部35、取り込みローラ36が配置されている。クリーニング部35は、転写ベルト14の上面に当接して廃トナーを擦り取って除去し、取り込みローラ36はクリーニング部35が除去した廃トナーを引き継いで、図示を省略したベルトクリーナユニットの一時貯留部に溜め込み、その溜め込まれた廃トナーを搬送スクリューにより落下筒内を上部まで搬送し、落下筒を介して廃トナー回収容器19に送り込んでいる。
【0057】
また、上記のクリーニング部35を適度の圧力で転写ベルト14に圧接させるために、中間転写ベルトユニット3側には、下方から転写ベルト14をクリーニング部35に向けて押圧する押圧ローラ37が設けられている。
【0058】
図3は印刷順(薬袋と薬情とを混在して印刷処理される際の用紙処理手順の例)を図示したものであり、以下に簡単に説明する。
(A)中身(薬情用薄紙)を先に印刷する例
ここで、1頁目の図示する意味は、(用紙サイズ:A4サイズの用紙(カセット)が選択され給紙される。紙の種類:薬情モードが選択される。画像データとしては、N頁目として記録されている薬情の画像データが出力される。定着の温度設定としては薄紙モードの温度設定となる。)ことを示している。2頁以降もこれに準じる。
【0059】
また、N頁目の図示する意味は、(用紙サイズ:A5サイズの用紙(カセット)が選択され給紙される。紙の種類:薬袋モードが選択される。画像データとしては、1頁目として記録されている薬袋の画像データが出力される。定着の温度設定としては封筒モードの温度設定となる。)ことを示している。
【0060】
(B)袋(薬袋用封筒用紙)を先に印刷する例
薬の種類や量は患者によって違うので一人分の印刷処理において中身(薬情用薄紙)の印刷枚数をN頁とする。
【0061】
勿論、データベース上は(B)のような形式で管理されていても、印刷順(A)に変換することは容易であり、印刷順はいずれでもよい。
【0062】
図4は印刷処理動作を説明するフローチャートである。
ここで、フローチャートにおいて、「追加1」と「追加2」と付記された手順が本発明による印刷装置の改善点であり、従来の方式による装置では、この「追加1」と「追加2」の手順がない。
【0063】
これを簡単に説明すると、印刷処理動作がステップF1でスタートし、ステップF2で印刷開始が確認されると、ステップF3において設定温度メモリから印刷する用紙の種類に応じて記憶されている開始状態情報である定着温度を呼び出し、ステップF4において用紙モードに基づき定着温度を指定し、ステップF5で所定の定着温度が得られたことを確認してから、ステップF6で給紙カセットからの給紙を開始し、ステップF7で定着を通過したら、ステップF8で印刷を終了する。
この終了後に、ステップF9でメモリの設定温度を設定し、ステップF10で動作を終了する。
【0064】
図5は印刷順Aを例とした場合の定着温度の変化を(1)本発明の場合と(2)従来方式の場合とで比較図示したものである。
同図において、(1)本発明の場合、図4のステップF3で開始時の設定温度が記憶される。薄紙を数枚繰り返し印刷する際は、ステップF4で用紙に対応した温度に設定する処理が行われ、その後、ステップF5で定着装置の現在温度が用紙に対応した温度に達しているか否かの確認、判断されるが、薄紙の繰り返し印刷の際には、既に薄紙温度状態なので、すぐにステップF6の給紙開始へ進む。
【0065】
次に、ステップF7で用紙が定着部を通過したかどうかが監視され、このステップF7がYESならば、ステップF8に進んで、ジョブの印刷処理が全て終わったかどうか判断し、未だ処理が終わっていなければ、ステップF4に戻り、ステップF4からステップF8までの動作を繰返す。
【0066】
印刷順Aの場合、最後の用紙は、薬袋用用紙なのでステップF4で封筒温度へ切換え制御が行われ、ステップF5において、封筒用紙のための最適温度になるまで、給紙開始を待つ{図5(1)においてPで示す}。
【0067】
その後、先と同様に、ステップF7で用紙が定着部を通過したかどうかを監視し、このステップF7がYESならば、ステップF8でジョブの印刷処理が全て終わったかどうか判断し、印刷順Aの場合、薬袋用封筒用紙の処理が最後なので、印刷終了が判断され、ステップF9においてステップF3で記憶されている最初の用紙モードの設定温度、すなわち薄紙用温度設定へ戻す。
【0068】
これに対し、同図において(2)従来方式の場合は、印刷開始時ステップF4で、薬袋用の封筒処理温度状態にある定着制御が薄紙温度へ切換えられるので、ステップF5で最適温度になるまで待たされる{図5(2)において*印で示す}。
【0069】
図6は印刷順Bを例とした場合の定着温度の変化を(1)本発明の場合と(2)従来方式の場合とで比較した図である。
同図において、(1)本発明の場合は、図4のステップF3で開始時設定温度が記憶される。薬袋を印刷ステップF4で用紙に対応した温度に設定する処理が行われ、ステップF5で定着装置の現在温度が用紙に対応した温度に達しているか確認判断されるが、既に封筒温度なので、すぐにステップF6の給紙開始へ進む。
【0070】
次に、ステップF7で用紙が定着部を通過したかどうかを監視し、ステップF7がYESならば、ステップF8でジョブの印刷処理が全て終わったかどうかを判断する。
この印刷順Bの場合、次は薄紙なのでステップF4で薄紙温度へ切換え処理が行われ、ステップF5で薄紙処理用の最適温度になるまで待つ{図5(1)においてPで示す}。
【0071】
次に、最適温度になれば、ステップF6で給紙が開始され、ステップF7で用紙が定着装置を通過したかどうかが監視され、さらにステップF8でジョブの印刷処理が全て終わったかどうかが判断される。まだ、薬情印刷が終わっていなければ、ステップF4に戻り、ステップF4〜ステップF8を繰返す。
【0072】
最後にステップF8でジョブの印刷処理が全て終わったかどうかが判断され、ジョブが終わりであれば、ステップF9においてステップF3で記憶されている最初の用紙モードの設定温度、すなわち封筒温度へ戻す。
【0073】
これに対し、同図において(2)従来方式の場合は、前回ジョブで薄紙用定着温度状態に制御されたままの定着装置が印刷開始時になって初めて、ステップF4で封筒温度へ切換えられるので、ステップF5で最適温度になるまで待たされることになる{図5(2)で*印で示す}。
【0074】
以上の構成による印刷装置によれば、上述した図5、図6における(1)本発明の場合と(2)従来方式の場合との比較において明らかなように、*の記号で示した時間分、早く印刷開始するので早く印刷完了することになり、効率のよい連続印刷が可能となる。
【0075】
また、印刷時間が短縮されるので、消耗品(ドラム、トナー、転写ベルト、定着部など)の寿命が延び、また、印刷装置本体のモータも稼働時間が短縮されるので、同様に寿命が延びることになる。
【0076】
特に、図5での「薄紙→封筒」の繰返しの場合は、次の印刷までにヒ一夕OFF期間があるから、電力削減に繋がる。
【0077】
また、同じ用紙モードを繰返して印刷した場合、定着温度が変わらない従来と同様であるが、待機温度が設定可能な機器では用紙モードが異なると遅くなる。
【0078】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、印刷装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【0079】
たとえば上述した実施形態では、薬局などで薬を患者に渡す際に必要となる薬の情報を印刷した薬情報用紙と、この印刷物と薬を一緒に入れて患者に渡すための薬袋を1回の印刷作業で纏めて印刷処理することができる薬袋薬情印刷装置に関しての説明を記載したが、この実施形態での構成に限らず、封筒とその封筒に入れる書類を一緒に纏めて印刷処理する、例えばダイレクトメール(DM)等の印刷処理を行う印刷装置にも本発明が適用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 印刷装置
2 画像形成部
4 給紙部
5 両面印刷用搬送ユニット
6 画像形成ユニット
7 感光体ドラム
8 クリーナ
9 帯電ローラ
11 光ヘッド
12 現像器
21a〜21c 給紙カセット
22 用紙取出ローラ
23 給送ローラ
24 捌きローラ
27 ベルト式熱定着装置
40 ホストインターフェイス
41 受信/描画部
42 頁カウンタ
43 紙種先頭頁
44 今頁紙種
45 次頁紙種
46 紙種連続カウンタ
47 紙種変換テーブル
48 印刷動作モード
49 JOB制御/画像データ部
50 印刷制御部
51 エンジン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から転送される複数種類の印刷用紙に印刷処理を行う印刷ジョブに基づいて印刷処理を行う際、使用を指示される印刷用紙の種別に応じて定着装置の温度設定を異ならせて印刷処理する印刷装置において、
前記印刷ジョブ開始時の開始状態情報を記憶する開始状態記憶手段と、
同一印刷ジョブ内の連続印刷処理中は、前記印刷データ中に指定された印刷用紙の種別指定に対応して定着設定温度を順次切り換える定着温度制御手段と、
前記連続印刷終了後、前記開始状態記憶手段に記憶されている開始状態情報に基づいて前記定着装置の制御温度を設定する定着温度設定手段を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記開始状態情報は、用紙種別であることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記開始状態情報は、用紙種別に対応して予め設定された定着温度であることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記用紙種別は、用紙の厚さであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
上位装置から転送されてくる薬袋印刷データと薬情印刷データが混在する印刷ジョブに基づいて印刷処理を行う際、使用を指示される印刷用紙の種別に応じて定着装置の温度設定を異ならせて印刷処理する印刷装置において、
前記印刷ジョブ開始時の開始状態情報を記憶する開始状態記憶手段と、
同一印刷ジョブ内の連続印刷処理中は、前記印刷データ中に指定された印刷用紙の種別指定に対応して定着設定温度を順次切り換える定着温度制御手段と、
前記連続印刷終了後、前記開始状態記憶手段に記憶されている開始状態情報に基づいて前記定着装置の制御温度を設定する定着温度設定手段を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
前記開始状態情報は、用紙種別であることを特徴とする請求項5記載の印刷装置。
【請求項7】
前記開始状態情報は、用紙種別に対応して予め設定された定着温度であることを特徴とする請求項5記載の印刷装置。
【請求項8】
前記用紙種別は、用紙の厚さであることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−224206(P2010−224206A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71284(P2009−71284)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】