説明

印刷装置

【課題】安全性の向上を図る。
【解決手段】開口部を有する筐体と、筐体の内部において所定方向に移動可能に設けられたキャリッジと、開口部からの位置がキャリッジよりも奥側になるように筐体の内部に設けられた発熱部と、発熱部の温度を検出する検出部と、を備え、検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、開口部側から見て、キャリッジを発熱部の少なくとも一部を覆う位置に止める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一例として、キャリッジに搭載されたヘッドからインクを噴射して印刷を行うインクジェットプリンターが知られている。このようなプリンターには、駆動時に発熱する発熱体が用いられている。例えば、ヘッドの駆動素子を駆動させる駆動信号を生成する駆動信号生成回路は、トランジスター対からなる電流増幅回路を有しており、これらのトランジスターは、駆動信号を生成する際に発熱する。また、プリンターには様々なモーターが使用されており、これらを駆動するモータードライバーにおいても同様に発熱する。そこで、トランジスター対等の発熱体(以下、発熱部ともいう)による発熱を放熱する放熱体を備えるようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−197461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スペースの都合上、放熱体がユーザーの触れる可能性のある場所に配置される可能性がある。例えば、プリンターのカバーを開けることによって開放される内部空間に、放熱体が露出して設けられていることがある。この場合、もし、発熱部が異常温度(高温)になると、放熱体も高温になる可能性があり、ユーザーが放熱体の高温の部分に触れてしまうおそれがある。
そこで、本発明は、安全性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、開口部を有する筐体と、前記筐体の内部において所定方向に移動可能に設けられたキャリッジと、前記開口部からの位置が前記キャリッジよりも奥側になるように前記筐体の内部に設けられた発熱部と、前記発熱部の温度を検出する検出部と、を備え、前記検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、前記開口部側から見て、前記キャリッジを前記発熱部の少なくとも一部を覆う位置に止めることを特徴とする印刷装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンター1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2A及び図2Bは、プリンター1の外観図である。
【図3】図3A及び図3Bは、プリンター1の内部構成を示す図である。
【図4】ヘッド41の構造を示した断面図である。
【図5】放熱の様子を説明するための図である。
【図6】比較例におけるキャリッジ停止位置の簡略説明図である。
【図7】第1実施形態における異常時の処置の動作を示すフロー図である。
【図8】第1実施形態におけるキャリッジ停止位置の簡略説明図である。
【図9】第2実施形態におけるキャリッジ停止位置の簡略説明図である。
【図10】第3実施形態におけるキャリッジ停止位置の簡略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0008】
開口部を有する筐体と、前記筐体の内部において所定方向に移動可能に設けられたキャリッジと、前記開口部からの位置が前記キャリッジよりも奥側になるように前記筐体の内部に設けられた発熱部と、前記発熱部の温度を検出する検出部と、を備え、前記検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、前記開口部側から見て、前記キャリッジを前記発熱部の少なくとも一部を覆う位置に止めることが明らかとなる。
このような印刷装置によれば、安全性の向上を図ることができる。
【0009】
また、開口部を有する筐体と、前記筐体の内部において所定方向に移動可能に設けられたキャリッジと、前記開口部からの位置が前記キャリッジよりも奥側になるように前記筐体の内部に設けられた発熱部と、前記発熱部の温度を検出する検出部と、を備え、前記検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、前記開口部側から見て、前記キャリッジを前記開口部の少なくとも一部を覆う位置に止めることを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
【0010】
また、開口部を有する筐体と、前記筐体の内部において所定方向に移動可能に設けられたキャリッジと、前記開口部からの位置が前記キャリッジよりも奥側になるように前記筐体の内部に設けられた発熱部と、前記発熱部の温度を検出する検出部と、を備え、前記検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、前記発熱部と前記開口部の間に前記キャリッジの少なくとも一部が位置するように前記キャリッジを止めることを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記キャリッジにはインクを吐出するヘッドが搭載されており、前記検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、前記ヘッドからインクを吐出することなく前記キャリッジを移動させた後、当該キャリッジを止めることが望ましい。
このような印刷装置によれば、発熱部の駆動を早急に停止できる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記発熱部は、前記ヘッドを駆動するヘッド駆動用トランジスターと、紙送りモーターを駆動する紙送りモーター駆動用トランジスターと、を有し、前記検出部は、前記ヘッド駆動用トランジスターの近傍と、前記紙送りモーター駆動用トランジスターの近傍とにそれぞれ設けられ、前者の前記検出部の検出温度が前記所定値を超え、且つ、後者の前記検出部の検出温度が前記所定値に達していないときには、前記ヘッドによって印刷されていた紙を排紙して、電源をオフにすることが望ましい。
このような印刷装置によれば、より安全性の向上を図ることができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記開口部を塞ぐように前記筐体に設けられたカバーを有し、前記カバーが開かれ、且つ、前記検出部の検出温度が前記所定値を超えた場合に、前記キャリッジを所定位置に止めることが望ましい。
このような印刷装置によれば、安全性を保ちつつ、無駄にキャリッジを移動させなくてもよくなる。
【0014】
以下の実施形態では、印刷装置としてインクジェットプリンターを用いて説明を行う。
【0015】
===印刷装置の基本的構成===
<プリンターの構成>
図1は、プリンター1の全体構成を示すブロック図である。図2A及び図2Bはプリンター1の外観図である。また、図3A及び図3Bは、本実施形態のプリンター1の内部構成を示す図である。
【0016】
プリンター1は、紙・布・フィルム等の媒体にインクを噴射することで文字や画像を記録(印刷)するインクジェットプリンターであり、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
【0017】
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、表示装置(不図示)にユーザーインターフェースを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また、プリンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。
【0018】
プリンター1は、図2A及び図2Bに示すように筐体10と、カバー11とを有している。
筐体10は、プリンター1の各ユニット(後述する)を内部に収容するためのものである。なお、図2Bに示すように筐体10には開口部10aが設けられている。カバー11を閉じた状態(図2A)では開口部10aはカバー11に塞がれており、カバー11を開けた状態(図2B)になると開口部10aが現れる。
カバー11は、筐体10に開閉可能に設けられており、当該カバー11を開ける(開状態にする)ことによって、開口部10aを介して、プリンター1の内部空間を開放できるようになっている。
【0019】
以下、プリンター1の内部に設けられた各ユニットの詳細について説明する。
プリンター1は、搬送ユニット20と、キャリッジユニット30と、ヘッドユニット40と、検出器群50と、コントローラー60と、放熱ユニット80と、を有する。コントローラー60は、外部装置であるコンピューター110から受信した印刷データに基づいて各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は検出器群50から出力された検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0020】
<搬送ユニット20>
搬送ユニット20は、媒体(例えば紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。ここで、搬送方向とは、後述するキャリッジ31の移動する方向(以下、移動方向という)と交差する方向である。搬送ユニット20は、給紙ローラー21と、搬送モーター22と、搬送ローラー23と、プラテン24と、排紙ローラー25とを有する(図3A及び図3B)。
【0021】
給紙ローラー21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー23は、給紙ローラー21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーター22によって駆動される。搬送モーター22の動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。プラテン24は、印刷中の紙Sを、紙Sの裏側から支持する部材である。排紙ローラー25は、紙Sをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0022】
なお、搬送モーター22は媒体を搬送する際に駆動(回転)することによって発熱する。また、搬送モーター22の駆動力を搬送ローラーに伝達するために設けられるギア輪列(不図示)も回転時の摩擦により発熱する。つまり、搬送モーター22及びギア輪列はプリンター1の発熱部であると言える。
【0023】
<キャリッジユニット30>
キャリッジユニット30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジ31を移動方向に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモーター(不図示)とを有する(図3A及び図3B)。
【0024】
キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモーターによって駆動される。キャリッジモーターの動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
【0025】
また、キャリッジ31は、前述した開口部10aよりも搬送方向の上流側に設けられている。そして、インク交換時などにおいて、カバー11を開けることにより、ユーザーは開口部10aを介してキャリッジ31に触れることができる。
【0026】
なお、キャリッジモーターや、キャリッジモーターの駆動力を用いてキャリッジ31を移動させるためのギア輪列(不図示)は、キャリッジ31の移動動作時に発熱する。つまり、キャリッジモーター及びギア輪列はプリンター1の発熱部であると言える。
【0027】
<ヘッドユニット40>
ヘッドユニット40は、紙Sにインクを噴射するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41を備える。このヘッド41はキャリッジ31に設けられ、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に噴射することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0028】
図4は、ヘッド41の構造の一例を示した断面図である。ヘッド41は、ケース411と、流路ユニット412と、ピエゾ素子群PZTとを有する。ケース411はピエゾ素子群PZTを収納し、ケース411の下面に流路ユニット412が接合されている。流路ユニット412は、流路形成板412aと、弾性板412bと、ノズルプレート412cとを有する。流路形成板412aには、圧力室412dとなる溝部、ノズル連通口412eとなる貫通口、共通インク室412fとなる貫通口、インク供給路412gとなる溝部が形成されている。弾性板412bはピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部412hを有する。そして、アイランド部412hの周囲には弾性膜412iによる弾性領域が形成されている。インクカートリッジに貯留されたインクが、共通インク室412fを介して、各ノズルNzに対応した圧力室412dに供給される。ノズルプレート412cはノズルNzが形成されたプレートである。ノズル面では、イエローインクを吐出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックノズル列Kと、が形成されている。各ノズル列は、ノズルNzが搬送方向に所定間隔Dにて並ぶことによって構成されている。
【0029】
ピエゾ素子群PZTは、櫛歯状の複数のピエゾ素子(駆動素子)を有し、ノズルNzに対応する数分だけ設けられている。ヘッド制御部HCなどが実装された配線基板(不図示)を介してピエゾ素子に駆動信号COMが印加され、駆動信号COMの電位に応じてピエゾ素子は上下方向に伸縮する。ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部412hは圧力室412d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部412h周辺の弾性膜412iが変形し、圧力室412d内の圧力が上昇・下降することにより、ノズルからインク滴が吐出される。
【0030】
<検出器群50>
検出器群50は、プリンター1の状況を監視するためのものである。検出器群50には、リニア式エンコーダー51、ロータリー式エンコーダー52、紙検出センサー53、及び光学センサー54等が含まれる(図3A及び図3B)。
【0031】
リニア式エンコーダー51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダー52は、搬送ローラー23の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の紙Sの先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ31に取付けられている発光部と受光部により、対向する位置の紙Sの有無を検出し、例えば、移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、紙Sの先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0032】
また、本実施形態では、検出器群50として、後述するように発熱部の温度を検出する温度センサー(例えばサーミスター)が設けられている。
【0033】
<コントローラー60>
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、ヘッド駆動回路65と、モータードライバー66と、を有する。
【0034】
インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1の全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して搬送ユニット20等の各ユニットを制御する。
【0035】
ヘッド駆動回路65は、CPU62とヘッドユニット40との間で印刷用データの転送や印刷タイミングの制御等、ヘッド駆動関係の情報のやりとりを行なう。また、ヘッド駆動回路65は、ピエゾ素子PZTを駆動する駆動信号COM(駆動波形)の生成も行なう。駆動信号COMを生成する際には、NPNトランジスター及びPNPトランジスター(共に不図示)をプッシュプルで構成した増幅器を使用して電流波形を増幅し、所望の形状の台形波を生成する。この台形波をヘッドユニット40に印加してピエゾ素子PZTへの充放電を行なう。ピエゾ素子PZTの充放電時において、該トランジスター対は非常に高い熱を発生することから、ヘッド駆動回路65はプリンター1の発熱部であると言うことができる。なお、ヘッド駆動回路65はプリント基板67上に設けられている。またプリント基板67はヘッド駆動回路65を挟むようにして後述する放熱板81に固定されている(図2B)。
【0036】
モータードライバー66は、搬送モーター22やキャリッジモーター(不図示)の回転方向、回転速度等を制御する。モータードライバー66にはトランジスターやFET(不図示)が組み込まれており、各種モーターの駆動時には該トランジスター等によって構成されるブリッジ回路を用いて電流を増幅する。その際、該トランジスターは非常に高い熱を発生することから、モータードライバー66もプリンター1の発熱部であると言うことができる。
【0037】
<放熱ユニット80>
放熱ユニット80は、前述のヘッド駆動回路65やモータードライバー66等の発熱部で発生した熱を、周囲の大気中に放出させる放熱装置である。以下、前述した複数の発熱部のうち、印刷動作において最も高温となるヘッド駆動回路65に放熱ユニット80が設けられる場合について説明を行なう。なお、放熱ユニット80は前述した複数の発熱部のそれぞれについて設けられていてもよいし、発熱部同士がなるべく近くに配置されるように設計し、各発熱部に共通の放熱ユニット80を1つだけ設けてもよい。放熱ユニット80は、放熱体81を有する。
【0038】
放熱体81は、アルミニウムや鉄製の金属板であり、発熱部で発生した熱を放熱体81の表面から周囲の大気中に放射させることで熱を逃がし、発熱部の冷却を行なう。放熱体81は大気との接触面積が大きいほど熱の放射が起こりやすくなる。つまり、表面積が大きい程、冷却性能が高くなる。図3A及び図3Bに示されるように、本実施形態において放熱体81はキャリッジ移動方向に沿った長方形の板状とすることで、表面積がなるべく広くなるようにしてある。
【0039】
なお、本実施形態の放熱体81は、図3A、図3Bに示すように、キャリッジ31のレールを兼ねている。キャリッジ31は、移動方向に沿った放熱体81に案内されて移動方向に移動することになる。また、放熱体81において、キャリッジ31側の面(搬送方向下流側の面)と反対側の面(搬送方向上流側の面)には、ヘッド駆動回路65を挟むようにしてプリント基板67が固定されている。つまり、開口部10a側から見て、発熱部であるヘッド駆動回路65は、キャリッジ31よりも奥に配置されている。
【0040】
<プリンターの印刷動作>
プリンター1の印刷動作について簡単に説明する。コントローラー60は、コンピューター110からインターフェイス部61を介して印刷命令を受信し、各ユニットを制御することにより、給紙処理・ドット形成処理・搬送処理等を行う。
【0041】
給紙処理は、印刷すべき紙をプリンター内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)に紙を位置決めする処理である。コントローラー60は、給紙ローラー21を回転させ、印刷すべき紙を搬送ローラー23まで送る。続いて、搬送ローラー23を回転させ、給紙ローラー21から送られてきた紙を印刷開始位置に位置決めする。
【0042】
ドット形成処理は、移動方向(走査方向)に沿って移動するヘッドからインクを断続的に噴射させ、紙上にドットを形成する処理である。コントローラー60は、キャリッジ31を移動方向に移動させ、キャリッジ31が移動している間に、印刷データに基づいてヘッド41からインクを噴射させる。噴射されたインク滴が紙上に着弾すると、紙上にドットが形成され、紙上には移動方向に沿った複数のドットからなるドットラインが形成される。
【0043】
搬送処理は、紙をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラー60は、搬送ローラー23を回転させて紙を搬送方向に搬送する。この搬送処理により、ヘッド41は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
【0044】
コントローラー60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理とを交互に繰り返し、ドットラインにより構成される画像を徐々に紙に印刷する。そして、印刷すべきデータがなくなると、排紙ローラーを回転させてその紙を排紙する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
次の紙に印刷を行う場合は同処理を繰り返し、行わない場合は、印刷動作を終了する。
【0045】
===放熱について===
図5は、放熱体81による放熱の様子を説明する図である。図ではプリント基板67上にヘッド駆動回路65(発熱部)が設けられ、ヘッド駆動回路65に接して放熱体81が設けられている。図中の矢印は放熱時における熱の流れを表している。
【0046】
発熱部(この場合、ヘッド駆動回路65)で発生した熱は図の斜線部で表される熱源(トランジスタ等)を中心として四方へと発散する。ヘッド駆動回路65はプリント基板67及び放熱体81と接しているが、プリント基板67は熱伝導性が悪いため、発生した熱は主に放熱体81の方へ移動する。放熱体81は発熱部よりも温度が低く、また、熱伝導性が高いので、発熱部(ヘッド駆動回路65)で発生した熱は、ヘッド駆動回路65と放熱体81とが接触している領域から放熱体81内部へと伝導し、さらに放熱体81内を伝導して反対側の表面から大気へと放出される。これにより、発熱部(ヘッド駆動回路65)が冷却される。なお、放熱体81において、発熱部に接触している部分は最も温度が高く、発熱部から遠ざかるほど温度が低くなる。これは、熱が放熱体81の内部を伝導する過程で、熱が大気中に放射されるためである。
【0047】
なお、印刷時において、ヘッド駆動回路65の発熱が異常に高い温度(例えば70度)になることがある。このため、放熱体81をユーザーが触れることができない位置に配置することが望ましいが、装置設計の都合上、ユーザーが触れる可能性がある位置に放熱体81を配置せざるを得ない場合もある。本実施形態では、カバー11が開けられると、筐体10の開口部10aを介して放熱体81に触れることができるようになっている。この場合、ヘッド駆動回路65が異常発熱していると、放熱体81(特に、ヘッド駆動回路65に接触している部分)の温度も高くなっている可能性があり危険である。
【0048】
そこで、以下の実施形態では、ヘッド駆動回路65(発熱部)の温度が異常になったときの安全性の向上を図るようにしている。
【0049】
===第1実施形態===
<比較例>
本実施形態について説明する前に、まず比較例について説明する。
図6は、比較例におけるキャリッジ31の停止位置の簡略説明図である。なお、同図は、プリンター1を上側から透過して見た図である。図に示すように、発熱部であるヘッド駆動回路65は、移動方向の位置が筐体10の開口部10aと重なるように設けられている。
この比較例では、ヘッド駆動回路65が異常温度になった場合、印刷を中止し、キャリッジ31をホームポジション(図の右側)に止めている。この場合、ユーザーが高温の放熱体81(特に最も温度が高いヘッド駆動回路65との接触部分)に触れるおそれがある。
【0050】
<本実施形態>
図7は第1実施形態における異常時の処置の動作を示すフロー図である。なお、本実施形態では、ヘッド駆動回路65の近傍と、搬送モーター22(紙送りモーターに相当する)の近傍にそれぞれサーミスター(共に不図示)が設けられていることとする。
【0051】
まず、コントローラー60は、コンピューター110から印刷命令を受信すると、その命令に基づいて、前述した印刷動作を行うべく各ユニットを駆動させて印刷を開始する(S101)。
【0052】
印刷時において、コントローラー60は、ヘッド駆動回路65の近傍に設けられたサーミスター(不図示)からヘッド駆動回路65の温度を取得する(S102)。そして、その温度が閾値(例えば70度)以下か否かを判断する(S103)。
【0053】
サーミスターによるヘッド駆動回路65の検出温度が閾値を超える場合(S103でNO)、コントローラー60は、キャリッジ31を、開口部10a側から見てヘッド駆動回路65を覆う位置に移動させて止める(S104)。なお、このとき、コントローラー60は、ヘッド41からインクを噴射させずにキャリッジ31を移動させる。これにより、発熱部であるヘッド駆動回路65の駆動を早急に停止できるので、より安全性を向上させることができる。
【0054】
図8は、第1実施形態におけるキャリッジ停止位置の簡略説明図である。なお、図8も図6(比較例)と同様に、プリンター1を上側から透過して見た図である。
【0055】
図8に示すように、ヘッド駆動回路65の温度が異常の場合、コントローラー60は、キャリッジ31を、開口部10a側から見てヘッド駆動回路65(発熱部)を覆う位置で止める。こうすることにより、ユーザーが開口部10aから手を入れても、放熱体81の最も温度の高い部分(ヘッド駆動回路65との接触部分)には触れ難くなる。よって安全性を向上させることができる。なお、本実施形態では、キャリッジ31がヘッド駆動回路65を完全に覆うようにしているが、これには限られない。例えば、ヘッド駆動回路65が開口部10aの左側(図の左側)に位置するように配置されている場合は、キャリッジをヘッド駆動回路65の右側の一部を覆うように停止させてもよい。この場合においても、ユーザーが開口部10aから手を入れても、放熱体81の最も温度の高い部分には触れ難くなる。
【0056】
図7のステップS104の後、続いてコントローラー60は、搬送モーター22(紙送りモーター)の近傍に設けられたサーミスターから搬送モーター22の温度を取得し(S105)、その温度が閾値以下か否かを判断する(S106)。搬送モーター22の温度が閾値以下である場合(S106でYES)、コントローラー60は、印刷中の紙を排紙させ(S107)、電源をオフにする(S108)。一方、ステップS106において搬送モーター22の温度が閾値を超える場合(S106でNO)、搬送モーター22を駆動させることなく(すなわち、紙を排紙することなく)、電源をオフにするステップS108を実行する。こうすることにより、より安全性の向上を図ることができる。
【0057】
また、ステップS103において、ヘッド駆動回路65の温度が閾値以下であると判断した場合(S103でYES)、コントローラー60は、印刷終了か否かの判断を行う(S109)。印刷終了でないと判断すると(S109でNO)、ステップS102に戻り、前述した処理を再度実行する。印刷終了であると判断すると(S109でYES)、印刷処理を終了する。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態では、発熱部(ヘッド駆動回路65)の温度が異常温度の閾値(例えば70度)を超える場合、キャリッジ31を開口部10a側から見てヘッド駆動回路65を覆う位置で止めている。こうすることにより、ヘッド駆動回路65の温度が異常であっても、ユーザーが放熱体81の最も温度の高くなる部分に触れ難くするようにできる。よって安全性の向上を図ることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、ヘッド駆動回路65の温度が閾値を超える場合に図7の異常時の処理(S104〜S108)を行っていたが、カバー11が開けられて、且つ、ヘッド駆動回路65の温度が閾値を超える場合のみに異常時の処理を実行するようにしてもよい。こうすることで、キャリッジ31を、開口部10a側から見てヘッド駆動回路65を覆う位置で止める処理を、実際にユーザーが放熱体81に触れるおそれのある場合だけにできるので、安全性を保ちつつ、無駄にキャリッジ31を移動させなくてもよくなる。
【0060】
===第2実施形態===
第1実施形態では、ヘッド駆動回路65が異常温度となった場合にキャリッジ31を開口部10a側から見て、ヘッド駆動回路65を覆うように止めていた。第2実施形態では、ヘッド駆動回路65の位置、及び、キャリッジ31を止める位置が第1実施形態と異なる。なお、それ以外の構成及び異常時の処理については第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0061】
図9は、第2実施形態におけるキャリッジ停止位置の簡略説明図である。
図のように第2実施形態では、ヘッド駆動回路65と開口部10aの移動方向の位置がずれている。具体的には、ヘッド駆動回路65は、開口部10aよりも図の左側の筐体10と移動方向の位置が重なるように設けられている。
この第2実施形態の場合、コントローラー60は、ヘッド駆動回路65が異常温度になると(閾値を超えると)、キャリッジ31を開口部10a側から見て開口部10aの左側を覆う位置に移動させて止める。
この場合、ヘッド駆動回路65とキャリッジ11の移動方向の位置はずれているが、ユーザーが開口10aから手を入れても、放熱体81における最も温度の高い部分(ヘッド駆動回路65との当接部分)に触れ難くすることができる。よって、安全性の向上を図ることができる。
【0062】
また、この第2実施形態においても、カバー11が開けられて、且つ、ヘッド駆動回路65の温度が閾値を超える場合のみに異常時の処理を実行するようにしてもよい。
【0063】
===第3実施形態===
第3実施形態では、ヘッド駆動回路65の位置、及び、キャリッジ31を止める位置が前述の実施形態と異なる。なお、それ以外の構成及び処理については前述の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0064】
図10は、第3実施形態におけるキャリッジ停止位置の簡略説明図である。
図のように第3実施形態では、ヘッド駆動回路65は、第2実施形態よりもさらに左側(開口部10aから離れた位置)に設けられている。
この第3実施形態では、コントローラー60は、ヘッド駆動回路65が異常温度になると(閾値を超えると)、ヘッド駆動回路65と開口部10aの間にキャリッジ31の少なくとも一部が位置するようにキャリッジ31を止める。この図10の場合では、キャリッジ31の停止位置(移動方向の位置)は、ヘッド駆動回路65とも開口部10aの間である。つまり、キャリッジ31の移動方向の位置は、ヘッド駆動回路65(発熱部)とも開口部10aとも重なっていないが、この位置でキャリッジ31を止めることによって、ユーザーが、放熱体81の最も温度の高い部分に触れ難くすることができる。
よって、この第3実施形態においても、安全性の向上を図ることができる。
【0065】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0066】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、媒体を搬送方向に搬送する搬送動作と、ヘッドを移動方向に移動させながらノズルからインクを噴射することによって媒体にドットを形成するドット形成動作を繰り返し行なうプリンター(シリアルプリンター)であったが、これには限られない。例えば、媒体幅方向に媒体幅以上の長さのノズル列を備え、媒体を搬送方向に搬送させながらノズル列の各ノズルからインクを噴射させることで媒体に画像を印刷するラインプリンターでも良い。
【0067】
<ピエゾ素子について>
前述の実施形態では、ピエゾ素子を用いてインクを噴射していた。しかし、液体を噴射する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 プリンター、10 筐体、10a開口部、11 カバー、
20 搬送ユニット、21 給紙ローラー、22 搬送モーター、
23 搬送ローラー、24 プラテン、25 排紙ローラー、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、411 ケース、412 流路ユニット、
412a 流路形成板、412b 弾性板、412c ノズルプレート、
412d 圧力室、412e ノズル連通口、412f 共通インク室、
412g インク供給路、412h アイランド部、412i 弾性膜、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダー、52 ロータリー式エンコーダー、
53 紙検出センサー、54 光学センサー、60 コントローラー、
61 インターフェイス部、62 CPU、63 メモリー、
64 ユニット制御回路、65 ヘッド駆動回路、66 モータードライバー、
67 プリント基板、80 放熱ユニット、81 放熱体、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
前記筐体の内部において所定方向に移動可能に設けられたキャリッジと、
前記開口部からの位置が前記キャリッジよりも奥側になるように前記筐体の内部に設けられた発熱部と、
前記発熱部の温度を検出する検出部と、
を備え、
前記検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、前記開口部側から見て、前記キャリッジを前記発熱部の少なくとも一部を覆う位置に止める
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
開口部を有する筐体と、
前記筐体の内部において所定方向に移動可能に設けられたキャリッジと、
前記開口部からの位置が前記キャリッジよりも奥側になるように前記筐体の内部に設けられた発熱部と、
前記発熱部の温度を検出する検出部と、
を備え、
前記検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、前記開口部側から見て、前記キャリッジを前記開口部の少なくとも一部を覆う位置に止める
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
開口部を有する筐体と、
前記筐体の内部において所定方向に移動可能に設けられたキャリッジと、
前記開口部からの位置が前記キャリッジよりも奥側になるように前記筐体の内部に設けられた発熱部と、
前記発熱部の温度を検出する検出部と、
を備え、
前記検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、前記発熱部と前記開口部の間に前記キャリッジの少なくとも一部が位置するように前記キャリッジを止める
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の印刷装置であって、
前記キャリッジにはインクを吐出するヘッドが搭載されており、
前記検出部の検出温度が所定値を超えた場合には、前記ヘッドからインクを吐出することなく前記キャリッジを移動させた後、当該キャリッジを止める
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置であって、
前記発熱部は、前記ヘッドを駆動するヘッド駆動用トランジスターと、紙送りモーターを駆動する紙送りモーター駆動用トランジスターと、を有し、
前記検出部は、前記ヘッド駆動用トランジスターの近傍と、前記紙送りモーター駆動用トランジスターの近傍とにそれぞれ設けられ、
前者の前記検出部の検出温度が前記所定値を超え、且つ、後者の前記検出部の検出温度が前記所定値に達していないときには、前記ヘッドによって印刷されていた紙を排紙して、電源をオフにする
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の印刷装置であって、
前記開口部を塞ぐように前記筐体に設けられたカバーを有し、
前記カバーが開かれ、且つ、前記検出部の検出温度が前記所定値を超えた場合に、前記キャリッジを所定位置に止める、
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−111092(P2012−111092A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260939(P2010−260939)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】