印刷装置
【課題】安定した印刷品質が得られる印刷装置を提供する。
【解決手段】長尺状の被記録媒体28の搬送・停止を行なう搬送・停止手段31の駆動部5に、被記録媒体28の位置を検出するためのエンコーダ2,4とセンサ1,3を設置し、印刷動作の停止時のセンサ1,3によるエンコーダ24の位置情報に基づいて、被記録媒体28の印刷長毎の停止位置を決定する制御手段22を設けたことを特徴とする。
【解決手段】長尺状の被記録媒体28の搬送・停止を行なう搬送・停止手段31の駆動部5に、被記録媒体28の位置を検出するためのエンコーダ2,4とセンサ1,3を設置し、印刷動作の停止時のセンサ1,3によるエンコーダ24の位置情報に基づいて、被記録媒体28の印刷長毎の停止位置を決定する制御手段22を設けたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に係り、特に連続紙などの長尺状の被記録媒体に対して印刷を行う印刷装置の印刷位置決めの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の連続紙プリンタにおける用紙搬送機構の側面図である。
この用紙搬送機構は、ステッピングモータ(図示せず)を駆動源として動作し、そのステッピングモータが回ることによって一対のトラクタベルト51が用紙搬送方向に回転する。このトラクタベルト51の外周部には等間隔にピン52が設置されており、このピン52の先端部分が連続紙53の両側部分に形成された孔53aに挿入されて、前記トラクタベルト51が回転することにより連続紙53が搬送される。
【0003】
このプリンタにおける印刷位置の誤差は、トナー画像を感光体上に形成し、それが連続紙53に転写・定着されるまでの間の様々な誤差の積み重ねで決定される。この連続紙プリンタでは、印刷中は一定速度で連続紙53を搬送するため、印刷中での印刷位置のバラツキは発生しづらく、前記トラクタベルト51の停止時での位置のバラツキの方が、印刷位置の精度に与える影響が大きい。
【0004】
印刷停止時には、円盤状のロータリーエンコーダ(以下、エンコーダと略記する)54のスリットを光学センサ55で読み取って停止位置を決定する。このため停止位置のバラツキが大きいと、次に書き出し位置がずれてしまい、この印刷位置のずれは連続的に続くことになる。
【0005】
連続紙プリンタは、印刷を開始してしまえば一定の速度で連続紙53を搬送するため、連続紙53の引っ掛りなどの異常事態が発生しなければ、一連の印刷動作内では印刷位置の変動はカット紙に比較して少ない。
【0006】
印刷開始の第1ページの印刷位置精度は、連続紙53であるため印刷動作全体の印刷位置の基準となる。例えば、第1ページで印刷開始位置が用紙搬送方向において1mm遅れる(ずれる)と、印刷動作中全ページで第1ページと同様に1mm用紙搬送方向に遅れた(ずれた)位置に印刷される。
【0007】
このように連続紙プリンタでは、印刷開始位置のずれは1つ前の印刷動作が終了したときの用紙搬送停止位置のずれによって起こり易い現象であり、この原因の一つが前記用紙搬送トラクタにおけるエンコーダ54の位置検出の誤差である。
【0008】
ここで説明する連続紙プリンタでは、トラクタの用紙搬送用駆動軸にエンコーダ54を取り付け、光学センサ55でエンコーダ54の動きをモニタリングすることで、駆動軸の回転速度や位置を把握して、用紙搬送トラクタの速度および連続紙53の位置制御を行っている。
【0009】
従って、エンコーダ54の検出精度が印刷位置精度に影響することになるが、エンコーダ54はスリットの加工精度、またはエンコーダ54の取り付け時の偏芯などにより、検出精度に誤差を含むことになる。
【0010】
図10では、位置検出に円盤状の遮光板であるエンコーダ54と光学センサ55を用いた例を示しているが、その他に、例えば円盤状のマグネット板とホール素子を使用して磁気的に検出する場合でも、マグネット板の大きさのバラツキ、磁力の強さのバラツキ、取り付け位置の誤差などでも検出精度は影響を受け、エンコーダの検出誤差が発生し、それが連続紙プリンタにおける印刷位置ずれの要因となる。
【0011】
前記図10に示す用紙搬送機構における制御動作の一例を、図11のフローチャートを使って説明する。
用紙搬送開始時に、ステップ(以下、Sと略記する)1で、エラー検出のためのステップ数であるエラーチェックデータをカウンタにセットする。カウンタ値が0以上である場合はエンコーダのスリットを検出しているか確認して、検出していない場合は再度ステッピングモータを1ステップ回転させて(S2)、カウンタをデクリメントする(S3)工程を繰り返す。
【0012】
次にS4において、カウンタ値が0未満になったかどうか判定して、カウンタ値が0未満になった場合(S4でYES)は、規定のステップ内にエンコーダのスリットが検出できなかったため、ポジションエラーとする(S5)。
【0013】
一方、カウンタ値が0未満になる前であれば(S4でNO)、次にS6でエンコーダのスリットを検出したかどうかの判定がなされ、検出されなければ(S6でNO)、S2に戻り再度ステッピングモータを1ステップ回転させ、前の動作を繰り返す。
【0014】
エンコーダのスリットを検出した場合(S6でYES)は、S7においてカウンタ値が予め設定されている許容規定ステップ範囲から外れているかの判定がなされる。外れている場合はポジションエラーとし(S5)、外れていない場合はS1に戻り再度エラーチェックデータをカウンタにセットする。
【0015】
基本的に連続紙プリンタの搬送制御は、一度用紙を搬送し始めるとエンコーダは速度制御ではなく、何かしらの異常時に用紙搬送機構が正常に動かない状態を検出するためのチェックとして使うことになる。そのためエンコーダのスリットの周期のバラツキが正常範囲内であるかどうかのチェックのみを行なう。前述のように正常範囲(許容規定ステップ範囲)から逸脱した場合は、ポジションエラーとするのが一般的である。
【0016】
また、連続紙プリンタでは、前記エンコーダのスリットは用紙の停止位置に合わせて設けられているため、印刷停止時には停止位置に該当するエンコーダのスリットを検出した位置で停止するだけである。
【0017】
なお、この種の用紙搬送機構に関しては、例えば特開2002−310613号公報(特許文献1)を挙げることができる。
この特開2002−310613号公報に記載されている発明では、エンコーダの精度が印刷位置のずれに影響することを考慮して、ロータリーエンコーダに加えてリニアエンコーダを設けることが提案されている。このリニアエンコーダはスリット密度を高くすることが可能であるから、リニアエンコーダの併用により、用紙送り精度をロータリーエンコーダだけの場合に比べて高くすることが可能である。
【0018】
しかし、特開2002−310613号公報の提案では、用紙搬送のための位置制御はリニアエンコーダの精度が問題にならない前提があって初めて成り立つ技術である。つまり、エンコーダは検出したい角度毎に検出ポイントであるスリットが設けてあるが、エンコーダの加工精度で決まるスリットの間隔、またエンコーダが高精度で加工されたものであっても、用紙搬送用駆動軸へのエンコーダの取り付け時の偏芯で位置検出精度が影響される。
【0019】
図12を用いて、エンコーダ54の加工精度および取り付け精度の一般的な影響について説明する。
同図示すように、エンコーダ54の用紙搬送用駆動軸56の中心からスリットの検出点までの半径をr、隣のスリットの光学センサ55での検出点の距離をXとした場合、エンコーダ54の用紙搬送用駆動軸56を中心としたスリット間の角度(エンコーダ角度)θは、下式のように表すことができる。
【0020】
θ=tan−1(X/r)
前述のようにXはスリット間の距離であり、スリットが放射状に設けられているため、エンコーダ54の中心から離れるほど距離は長くなる。このスリット間距離Xは、スリット間の加工精度および取り付け時の偏芯で決まり、加工精度が高く偏芯が少ないほどスリット間距離Xの誤差は小さくなる。なお、図12では、駆動軸56に対するエンコーダ54の偏芯を極端に表している。
【0021】
前記rは駆動軸56から光学センサ55での検出点までの距離であるので、エンコーダ54の精度や取り付け時の偏芯に関わらず、一定である。従って、エンコーダ54の加工精度と組み立ての精度が低いと、エンコーダ54のスリット間距離Xが変動してしまい、結局、スリット間角度θの誤差が発生し、高精度な位置検出ができない。
【0022】
前記特開2002−310613号公報に記載の発明では、ロータリーエンコーダとリニアエンコーダを併用することによって検出精度を上げようとしているが、その精度はエンコーダの加工精度および取り付け精度に依存し、検出精度を上げるためには、高精度のエンコーダ加工と高精度なエンコーダ取り付け位置調整を行なわなければならない。
【0023】
印刷位置の精度を上げるためには、場合によってはエンコーダ製造後にもエンコーダの精度をチェックして、削りや研磨などで仕上げ処理を行い、エンコーダの取り付け後には偏芯を防止するために、用紙搬送用駆動軸とエンコーダの芯出し調整を行う必要があり、そのために手間がかかり、コスト高を招くことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
前述のように連続紙プリンタでは、一度印刷を開始すると一定速度で印刷を行うため、高い印刷位置精度が要求される。また、カット紙プリンタに比べると、印刷位置精度が特に要求される帳票や伝票の印刷などに連続紙プリンタが使用されることが多い。印刷用紙が罫線付きのプレプリント用紙などを使った場合は、印刷位置の精度が良くないと、印刷結果でも顕著に精度の悪さが露見するケースが見られる。
【0025】
連続紙プリンタにおいて印刷動作間の印刷位置のずれる障害は、位置検出手段であるエンコーダの精度誤差が含まれている場合に発生する。
【0026】
前記特開2002−310613号公報では、ロータリーエンコーダとリニアエンコーダを併用することで、高精度な位置制御が可能であるとしている。しかし、その位置制御の精度はエンコーダの精度、つまりエンコーダの加工精度と取り付け精度で決定される。エンコーダの加工精度を確保するためには、エンコーダのスリットの削りや研磨などの処理を行なって、要求される形状に仕上げなければならず、高価な加工機械が必要となり、また仕上げ加工に時間がかかる。
【0027】
また、エンコーダを用紙搬送用駆動軸に固定する場合も偏芯することで検出精度が影響を受けるため、取り付け時に芯出しを行なう。この芯出し調整にも偏芯を測定できる機器を使って補正を行なうなどの高度な技術が必要となり、芯ずれが許容範囲内に入るまで補正を繰り返す必要がある。
【0028】
但し、エンコーダの加工や取り付けを精度よく行なっても、エンコーダ自体が温度や湿度、あるいは経時変化で変形してしまうこともあるため、高強度で環境変化に強い材料を使わねばならない。この高強度で環境変化に強い材料は一般に高価であり、しかも高強度であることから削り作業や熱処理などが行い難く、実際には前述のような加工や調整は困難な作業である。
【0029】
従って、エンコーダの強度と加工や調整のしやすさにトレードオフがあり、精度を上げたい場合は物理的に高強度で環境安全性が高い材料を使用し、時間と費用をかけてエンコーダを製作し、微細な調整を行なってエンコーダを取り付ける。
【0030】
一方、費用や時間をかけられない場合は、物理的に低強度で、環境変化にも弱い材料を使用することで、加工や調整がしやすいエンコーダを製作し、最低限の調整を行なってエンコーダを取り付ける。
【0031】
よって、プリンタで要求される精度と許容されるコストのトレードオフを見極めてエンコーダの仕様を決定することになるが、要求される精度を満たすような仕上げ加工や取り付け調整はどのケースでも必要となり、精度に見合った費用と作業時間が必要である。
【0032】
連続紙プリンタは、印刷動作が終了すると用紙をプリンタの内部の用紙パスに残したまま停止することになり、用紙の停止位置はエンコーダで停止位置を検出して決定する。次に印刷動作は前回の印刷動作終了で用紙を停止した位置を基準として印刷を行うため、前回の停止位置に誤差があると用紙上の印刷位置が停止位置の誤差分ずれてしまうことになる。
【0033】
印刷位置ずれが修正される契機は、印刷動作が終了して用紙搬送が停止するときとなる。エンコーダで位置を確認して停止するため、補正がかかる可能性があるからであるが、その場合もその用紙の停止位置は停止するときのエンコーダのスリットの精度に依存することになる。
【0034】
このように連続紙プリンタの印刷位置精度はエンコーダの精度で決定するため、印刷位置精度が要求される場合は、エンコーダの加工や調整に多くの費用や時間をかけることになる。エンコーダの加工や調整は加工装置や作業者の熟練度、エンコーダに使用する材料などで精度の上限が決定されてしまう。高価な加工設備や加工時間、加工に適した強度と経時的に安定した高価なエンコーダ材料、エンコーダの取り付けを高精度で行なうための調整作業を適用することは、プリンタ本体の価格を上げる原因にもなる。
【0035】
なお、工場出荷時に高精度の調整を行なったプリンタでも市場でのメインメンテナンス、例えば用紙搬送機構のセンサやエンコーダの取り付け位置が影響を受けるような分解組み立てや部品交換などを行なった場合は、駆動系の検出精度も影響を受けてしまい、結果として用紙搬送機構の位置制御の精度低下により印刷位置が変動することがある。
【0036】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、安定した印刷品質が得られる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
前記目的を達成するため、本発明は、
長尺状の被記録媒体の搬送・停止を行なう搬送・停止手段を備えて、その搬送・停止手段によって搬送・停止される前記長尺状の被記録媒体に対して印刷を行う印刷装置において、
前記搬送・停止手段の例えば用紙搬送用駆動軸などの駆動部に、前記被記録媒体の位置を検出するための例えばロータリーエンコーダなどのエンコーダと例えば光学センサなどのセンサを設置し、
印刷動作の停止時の前記センサによるエンコーダの位置情報に基づいて、前記長尺状被記録媒体の印刷長毎の停止位置を決定する制御手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明は前述のような構成になっており、安定した印刷品質が得られる印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に係る用紙搬送エンコーダ機構の正面図である。
【図2】その用紙搬送エンコーダ機構の側面図である。
【図3】本実施例に係る用紙搬送エンコーダ機構による用紙搬送位置補正データの取得方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施例においてメモリー上に格納した用紙搬送位置補正データの例を示す図である。
【図5】本発明の実施例においてホームポジションからm番目のスリットで印刷用紙の搬送を停止する場合の位置制御を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施例に係る用紙搬送エンコーダ機構の正面図である。
【図7】その実施例に用いるエンコーダの一部拡大正面図である。
【図8】本発明の実施例に係るレーザビームプリンタ全体の概略構成図である。
【図9】そのレーザビームプリンタの内の本実施例が関係する部分の制御ブロック図である。
【図10】従来の連続紙プリンタにおける用紙搬送機構の側面図である。
【図11】その連続紙プリンタの用紙搬送機構における制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図12】その用紙搬送機構に用いるロータリーエンコーダの加工精度および取り付け精度の一般的な影響について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実際にはエンコーダ自体の精度をやみくもに上げるよりは、位置制御を行う連続紙プリンタにおける駆動系の制御装置が制御可能な精度以上でのエンコーダ精度を確保できれば問題とはならない。
【0041】
そのため、連続紙プリンタの駆動系制御装置自体がエンコーダの誤差を検出して補正をかければ、連続紙プリンタの駆動系が要求する精度での調整が容易であり、エンコーダの精度確保に必要以上にコストと加工工数をかけずに、適切な位置制御を行なうことができる。
【0042】
本発明でのエンコーダの位置検出補正は、エンコーダの基準点を定め、そのエンコーダ基準点から検出点であるエンコーダのスリットをセンサで検出した位置までを、用紙搬送機構駆動源のステッピングモータを回転させる基準クロックでカウントして、エンコーダの検出点が理論上のモータクロックカウント数とずれている差を算出する。
【0043】
エンコーダの全ての検出ポイントについて理論値との差が算出されていれば、エンコーダの全検出点と理論上のモータを駆動するクロックカウント数の補正量が分かっていることになり、それぞれのエンコーダ検出点の理論値からの補正値として使用できる。これによって各検出点のエンコーダ検出誤差を補正しながらステッピングモータの回転を制御することで、連続紙の用紙停止位置の補正が可能となる。
【0044】
前述のように、連続紙プリンタは印刷動作終了時の用紙停止位置によって次の印刷動作の印刷位置が影響を受ける印刷装置であり、用紙搬送の位置を検出するエンコーダの精度で印刷位置精度が決定される。
【0045】
しかし、エンコーダの精度を上げるためには材料、加工ならびに取り付け精度などコストや時間が関係するため、用紙搬送の位置精度が高い印刷装置の場合は装置全体の価格を押し上げる要因となる。
【0046】
本発明では、エンコーダの加工や取り付け精度によらず、エンコーダの誤差を制御的に補正して高精度の位置制御が可能となり、エンコーダ自体の精度や取り付けの精度に依存しない、正確でかつ低コストな位置制御が可能である。
【0047】
本発明では、印刷装置の制御部自体がエンコーダの全検出点の理論値からのズレを検出し、そのズレを補正するため印刷装置に要求される精度での誤差補正を行なうことができる。従って、エンコーダやエンコーダの芯出しなどの物理的な誤差要因を無調整でも低価格で高精度な検出系が実現できる。その結果、印刷装置全体のコストダウン、もしくは従来は装置全体を低価格に抑えなければならないため高精度の用紙搬送制御をすることができなかった低価格の印刷装置にも高精度の用紙搬送制御を適用することが可能となる。
【0048】
本発明では、用紙搬送に微細な位置制御が可能な駆動源を用い、具体的には2相励磁型のステッピングモータで、200パルスで一回転するモータのロータは1パルスで1.8度回転する。高精度のステッピングモータでなくても、通常の2相励磁型の200ステップでロータが一回転するステッピングモータの回転角度誤差は0.05度程度であり、実際に印刷装置に組み込む場合はギアなどで減速するため誤差はさらに圧縮される。
【0049】
仮に減速機構を介してモータ10回転で用紙を50mm搬送する用紙搬送機構を仮定すると、1ステップで用紙は0.025mm移動し、そのときの停止時のモータの駆動軸誤差0.05度は用紙上での印刷ずれは0.7μmとなり、人間の目視で確認できる精度以下であるため、モータの回転角の誤差が位置制御に与える影響は微小である。
【0050】
実際の連続紙プリンタの搬送駆動でもステッピングモータの1ステップ毎に用紙搬送の速度変動が発生するため、モータの1ステップが人間の目で判断できる大きさの50μm以下となるよう駆動機構の減速比を設計するのが普通である。
【0051】
従って、エンコーダ自体の精度および取り付け精度の誤差補正を、ステッピングモータのステップ数で誤差を算出することにより、高精度な位置制御が可能である。また、駆動機構が可能な精度以上の検出を行っても、その駆動機構が対応できる精度以上の位置制御はできないため、実際の印刷装置では意味を持たない。すなわち、エンコーダの要求精度は、駆動機構が対応できる範囲内でよい。
【0052】
次に本発明の実施例を図面とともに説明する。
(印刷装置全体の概略構成)
始めに、本発明を適用した印刷装置として電子写真方式を用いたレーザビームプリンタを例示し、その構成について図8ならびに図9を用いて説明する。図8はレーザビームプリンタ全体の概略構成図、図9は本実施例が関係する部分の制御ブロック図である。
【0053】
図8において、符号21はレーザビームプリンタであり、そのコントローラ(CPU)22(図9参照)からの印刷動作開始信号に基づいて感光体ドラム23が矢印方向に回転を始める。感光体ドラム23は、レーザビームプリンタ21の印刷速度に相当する速度で回転し、印刷動作が終了するまで回転を続ける。感光体ドラム23が回転を開始すると、コロナ帯電手段24
に高電圧が印加され、感光体ドラム23の表面に例えば正の電荷が一様に帯電される。
【0054】
半導体レーザなどの光源、回転多面鏡ならびにfθレンズなどを備えた露光手段25から出射された光(レーザビーム)は、感光体ドラム23上を走査しながら照射する。
【0055】
ドットイメージに変換された文字データや画像データがレーザビームのON/OFF信号として前記コントローラ22から送られると、感光体ドラム23の表面にレーザビームが照射される部分と照射されない部分とが形成され、それによって前記データに基づいた静電潜像が形成される。
【0056】
この静電潜像を形成した感光体ドラム23の領域が現像手段26と対向する位置に到来すると、現像手段26内のトナーが前記静電潜像に供給され、レーザビームの照射により感光体ドラム23上の電荷が消失した部分に、例えば正電荷を帯電したトナーが静電気により吸引されて感光体ドラム23上にトナー像が形成される。
【0057】
一方、用紙ホッパー27に収納されている長尺状の連続した印刷用紙(連続紙)28は、上流側の用紙搬送トラクタ29によって、感光体ドラム23上に形成されたトナー像が転写位置に到達するタイミングと同期させて、感光体ドラム23と転写手段30の間に向けて搬送・供給される。
【0058】
感光体ドラム23上に形成されたトナー像は、連続紙28の裏面側にトナー像と逆極性の電荷を付与する転写手段30の作用によって連続紙28上に吸引・転写される。
【0059】
このようにして、用紙ホッパー27にセットされていた連続紙28は、上流側の用紙搬送トラクタ29、転写手段30および下流側の用紙搬送トラクタ31を経て定着手段32に搬送される。
【0060】
定着手段32に到着した連続紙28は、内部に複数本の発熱ランプを備えた加熱ローラ33と加圧ローラ34からなる一対の定着ローラによって形成されるニップ部によって加熱・加圧されながら挟持・搬送され、前記トナー像が連続紙28に溶融・定着される。
【0061】
加熱ローラ33と加圧ローラ34によって送り出された連続紙28は、用紙送り出しローラ35によってスタッカーテーブル36側に送り出されるとともに、スイングフィン37の揺動動作によってミシン目に沿って交互に折り分けられ、さらに、回転するパドル38で折り畳み状態が整えられながら、スタッカーテーブル36上に積み重ねられて行く。
感光体ドラム23の転写位置を通過した領域は、清掃装置39で表面が清掃されて、次に印刷動作に備えられる。
【0062】
図8に示すように、2つの用紙搬送トラクタ29,31は、1つの用紙搬送用ステッピングモータ40によって回転駆動される。本発明の実施例では下流側用紙搬送トラクタ31の駆動側に後述するエンコーダ2,4が取り付けられている。本実施例の場合、前記用紙搬送トラクタ29,31ならびに用紙搬送用ステッピングモータ40などから用紙搬送機構が構成されている。
【0063】
図示されていないが、前記用紙搬送トラクタ29,31にはそれぞれトラクタベルトが架設されており、このトラクタベルトの外周部には等間隔に多数のピンが設置されており、このピンの先端部分が連続紙28(図8参照)の両側部分に形成された孔に挿入されて、前記トラクタベルトが回転することにより連続紙28が所定の方向に搬送される。
【0064】
図9に示すように、前記用紙搬送用ステッピングモータ40はモータドライバー41によって回転駆動され、そのモータドライバー41はモータ駆動制御部42によって駆動制御され、さらにそのモータ駆動制御部42は前記コントローラ22によって制御される。
【0065】
コントローラ22はインターフェース43を介してROM44やRAM45などと接続されている。またこのコントローラ22には、後述する第1の光学センサ1ならびに第2の光学センサ3からの検出信号が入力されるようになっている。
【0066】
(用紙搬送エンコーダ機構の構成)
次に前記用紙搬送用機構内に設置されている用紙搬送エンコーダ機構の構成について図1および図2を用いて説明する。図1および図2は、用紙搬送エンコーダ機構の正面図および側面図である。
【0067】
これらの図に示されているように、用紙搬送機構の用紙搬送用駆動軸5上には、小径の第1のエンコーダ2と、大径の第2のエンコーダ4とが、所定の間隔をおいて取り付けられている。このエンコーダ2,4は遮光性の円盤から構成されており、用紙搬送用駆動軸5とともにエンコーダ2,4も一緒に回転する。
【0068】
また、前記用紙搬送用駆動軸5は、前記用紙搬送用ステッピングモータ40に接続されている。本実施例では前述した2相励磁型のステッピングモータが用いられており、200パルスでロータが一回転する構成になっている。ロータは1パルスで1.8度回転し、ロータが一回転したときの回転角度誤差は0.05度程度である。
【0069】
前記第1のエンコーダ2の外周部付近のある位置には、第1のエンコーダ2上に設けられた第1のスリット6を検出する第1の光学センサ1が設置されている。この第1の光学センサ1で第1のスリット6を検出した位置を、前記用紙搬送用駆動軸5の回転方向のホームポジション(基準位置)とし、前記コントローラ22(図9参照)に入力される。
【0070】
この第1のエンコーダ2は、制御上の位置の基準となるため調整が必要であるが、第1のスリット6が1本しかないため(図1参照)、第1のエンコーダ2の精度要求も無く、調整も1ポイントだけであるので容易である。なお、第1のエンコーダ2の第1のスリット6が用紙搬送機構の意図した位置からずれている場合、ずれたステップ数を連続紙プリンタの記憶装置(RAM45 図9参照)で記憶しておき、そのステップ数を制御上で補正した位置を制御上のホームポジションとすることも可能である。
【0071】
図1に示すように前記第2のエンコーダ4の外周部には、複数本の第2のスリット7が設けられており、この第2のスリット7を第2の光学センサ3で検出することにより、前記用紙搬送用駆動軸5の回転角が検出できる。この第2の光学センサ3の検出信号も前記コントローラ22(図9参照)に入力される。前記第1ならびに第2の光学センサ55は、フォトインタラプタから構成されている。
【0072】
本実施例では、前記第1のエンコーダ2でホームポジションを検出して、第2のエンコーダ4はそのホームポジションからm番目のスリットであるかの検出が可能な構成になっている。但し、第2のエンコーダ4の第2のスリット7は、本明細書の発明が解決しようとする課題の欄でも説明したように、エンコーダの加工精度や取り付け精度によっては、理論値に対する誤差が含まれることがある。
【0073】
(エンコーダ機構による誤差補正データの取得方法)
次にこの用紙搬送エンコーダ機構による用紙搬送位置補正データ(誤差補正データ)の取得方法について、図3のフローチャートとともに説明する。
【0074】
この用紙搬送位置補正データ(誤差補正データ)の取得は、電源投入時のイニシャライズもしくは用紙セット時、あるいは用紙エンプティなどの非印刷時で用紙搬送機構を動かせる状態で行う。
【0075】
まず最初にS1において、用紙搬送用ステッピングモータ40(図8参照)を1ステップずつ回転させ、第1の光学センサ1で第1のエンコーダ2のスリット6を検出しているかモニタリングしながら、スリット6(ホームポジション)を検出するまで用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップずつ回転させる(S2)。このステッピングモータ40の回転に伴って、第1のエンコーダ2と第2のエンコーダ4が一緒に回転する。
【0076】
第1のエンコーダ2のスリット6(ホームポジション)を検出すると(S2でYES)、その位置をホームポジション(基準位置)として、第2のエンコーダ4のスリット番号カウンタと、用紙搬送用ステッピングモータ40の駆動ステップ数をカウントするステップ数カウンタと、第1のエンコーダ2で検出したホームポジションからの理論ステップ数を過ぎるまで第2のエンコーダ4のスリット7が検出できなかった場合に立てる遅延フラグを、それぞれクリアする(S3,S4)。
【0077】
次にS5で、第2のエンコーダ4が理論上のスリット位置であるかどうか判定する。但し、最初は、エンコーダ4のスリット7の検出処理(S6)前のため、NOとして処理される。
【0078】
次にS6で、第2の光学センサ3で第2のエンコーダ4のスリット7の検出を行う。第2のエンコーダ4のスリット7を検出していない場合(S6でNO)は、用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップ回転させて(S7)、前記ステップ数カウンタをインクリメントする(S8)。
【0079】
これらの動作を繰り返し、用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップずつ回転させ、第2のエンコーダ4のスリット7が検出されないまま、第2のエンコーダ4の理論上のスリット位置まで用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させた場合(S5でYES)は、スリット7が理論ステップ数より遅れていることを意味する遅延フラグを立て(S9)、「ステップ数カウンタのカウント数−理論スリット位置カウント数」の絶対値を理論値とのステップ数差として、m番目のスリットに該当するメモリーのアドレスに格納する(S10)。
【0080】
一方、用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させ、第2のエンコーダ4の理論上のスリット位置まで回す以前にスリット7を検出した場合は(S5でNO、S6でYES)、遅延フラグは立てずにS10に進み、「ステップ数カウンタのカウント数−理論スリット位置カウント数」の絶対値を理論値とのステップ数差として、m番目のスリットに該当するメモリー(RAM45 図9参照)のアドレスに格納する(S10)。
【0081】
また、第2のエンコーダ4の理論上のスリット位置まで用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させた後に、第2のエンコーダ4のスリット7を検出した場合は、検出ポイント遅延フラグを立てるとともに、「ステップ数カウンタのカウント数−理論スリット位置カウント数」の絶対値を理論値とのステップ数差として、m番目のスリットに該当するメモリー(RAM45 図9参照)のアドレスに格納する。
【0082】
次にS11で第2のエンコーダ4の理論上のスリット位置まで用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させ、S12で前記スリット番号カウンタをインクリメントし、S13において全スリット補正量の検出が終了したかどうかの判定がなされ、終了してなければ前記S4からの動作が繰り返され、検出が終了していれば補正データ取得ルーチンを終わる。
【0083】
図4に、メモリー上に格納した補正データの例を示す。
同図に示すように、スリットmのデータとしてメモリーのアドレス毎に遅延フラグをBit7に割り当て、理論値からのズレ量データとしてBit6〜Bit0を割り当てる。Bit7の遅延フラグは理論値から遅延した場合“1”、理論値より先行した場合“0”、Bit6〜Bit0の7ビットは理論値からのズレ量となるステッピングモータ40のステップ数であり、最大128ステップ分のデータが格納できる。
【0084】
前述の補正ルーチンは、印刷装置の電源投入時のイニシャライズ、または用紙のセット時、用紙切れ時、用紙ジャムなどの障害から復帰した後のイニシャライズなどの非印刷時に行なう。
【0085】
なお、第1エンコーダのずれたステップ数を含め、これらの補正データは、駆動回路の制御部で持っている記憶装置であるRAMもしくはROM、ハードディスクなどへの記憶が考えられるが、電源を切ったときにズレ量補正データを残したい場合は、ハードディスク、EEPROMあるいはNV−SRAMなどの不揮発性記憶装置に格納する。
【0086】
不揮発性の記憶装置に補正データを格納した場合は、電源を遮断しても補正データは残るので、図3に示す用紙搬送位置補正データ取得ルーチンを実行せずに記憶装置に記憶された補正データを読み出して使うことが可能である。
【0087】
工場での製造工程で印刷装置の完成時にその印刷装置で用紙搬送位置補正データ取得ルーチンを実行し、各印刷装置固有の補正データを記憶装置に記憶しておき、以降の動作時は記憶している補正データを記憶装置から読み出して使う設定にしておけば、実際の使用時に位置補正を行なわずとも正確な補正が可能である。
【0088】
また、出荷されて市場で稼動している印刷装置でも何らかの理由で用紙搬送機構のメンテナンスを行なう場合、例えばエンコーダ2やエンコーダ4の取り外しまたは取り付けを伴う作業や、光学センサ1や光学センサ3の取り外しまたは取り付けを伴う作業を行い、位置補正データの更新が必要な場合でも、メンテナンス終了後に一度だけ位置補正データを取得して記憶装置に記憶させておくだけで、工場出荷時と同じエンコーダ検出速度が確保できる。
【0089】
実使用上は電源投入時のイニシャライズや用紙セット時に印刷動作と関係の無い動作をエンドユーザが不安に思わない場合は、毎回の電源投入時のイニシャライズや用紙セット時に補正動作を行うことも可能である。
【0090】
次に印刷停止時の用紙を停止させる場合について説明する。図3に示す誤差補正データの取得ルーチンで算出した補正データを使って用紙の停止位置を補正する。
【0091】
1つの印刷動作が終了し、その印刷動作に伴って搬送して来た連続紙を停止するため、印刷装置はエンコーダ2のスリット6で用紙搬送用ステッピングモータ40の用紙搬送用駆動軸5のホームポジション(基準位置)を検出し、n個のスリット7を有するエンコーダ4の基準位置とする。
【0092】
印刷停止は用紙を停止するエンコーダ4のn個のスリット7に応じ、該当するメモリーのアドレスから前述の補正データを読み出して用紙の停止位置を補正する。
図5を用いてエンコーダ4のホームポジションからm番目のスリットで印刷用紙の搬送を停止する場合の位置制御を説明する。
【0093】
印刷装置は印刷終了時にエンコーダ4でm番目のスリット7で印刷用紙を停止する場合、用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップ回転させる(S1)度に、エンコーダ4のホームポジションからm番目のスリット7を検出しているかモニリタリング(S2)する。そしてm番目のスリット7を検出した場合(S2でYES)は、該当するm番目のスリットのメモリーに格納した補正データを読み込み、そのカウンタ値をカウンタにリロード(S3)する。
【0094】
次にS4で、メモリーに格納した該当アドレスに遅延フラグが立っているか否かの判定がなされる。補正データに遅延フラグが立っていない場合(S4でNO)、Bit6〜Bit0に格納されている補正データのステップ数分用紙を進めた位置まで用紙を送る。
【0095】
従って、m番目のスリット7で停止したい場合は、m番目のスリット7を検出した位置からBit6〜Bit0に格納されている補正データのステップ数分用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させて用紙を進めることで、理論上正しい位置で用紙を停止する。
【0096】
S5〜S7は前述の補正データのステップ数分用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させて用紙を進めるルーチンで、S5で用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップ回転させ、S6でカウンタデクリメントし、S7でカウンタ値が0になったかどうか、すなわち理論値ポイントに達したか否かの判定がなされる。このS5〜S7のルーチンをカウンタ値が0になるまで繰り返して、カウンタ値が0になると(S7でYES)用紙の搬送を停止する(S8)。
【0097】
一方、補正データに遅延フラグが立っている場合(S4でYES)、理論値より実際のスリット7が遅れて検出されるため、Bit6〜Bit0に格納されている補正データのステップ数分用紙搬送用ステッピングモータ40を逆転させ、用紙搬送方向とは逆方向に用紙を戻す。
【0098】
S9〜S11は前述の補正データのステップ数分用紙搬送用ステッピングモータ40を逆転させて用紙を戻すルーチンで、S9で用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップ逆転させ、S10でカウンタデクリメントし、S11でカウンタ値が0になったかどうか、すなわち理論値ポイントに達したか否かの判定がなされる。このS9〜S11のルーチンをカウンタ値が0になるまで繰り返して、カウンタ値が0になると(S11でYES)用紙の搬送を停止する(S8)。
【0099】
なお、用紙停止時に用紙を戻したくない場合は、用紙を停止するm番目のスリット検出まで用紙搬送用ステッピングモータ40を回さず、停止するスリットの1つ前のm−1番目のスリット位置から演算する。
【0100】
すなわち、用紙搬送中にm−1番目のスリットを検出したら、m番目の停止位置をm−1番目の補正データを使用して演算する。m−1番目の理論上のスリットを算出し、理論上のm−1番目のスリット位置から理論上のm−1番目のスリットとm番目のスリット間のステップ数を進めて停止すれば、用紙を逆送しないで理論上のm番目のスリット位置に用紙を停止させることができる。
【0101】
以上のように、実際の印刷装置で個々の用紙搬送機構の誤差データを測定し、そのデータを使ってエンコーダの加工誤差および取り付け誤差を含まない正しい停止位置で用紙を停止させることができ、そのときの誤差は駆動系で制御上可能な最小誤差となる。
【0102】
図6は本発明の他の実施例に係る用紙搬送エンコーダ機構の正面図、図7はその実施例に用いるエンコーダの一部拡大正面図である。
【0103】
図6に示されているように、用紙搬送機構の用紙搬送用駆動軸5上には、1枚のエンコーダ11が取り付けられており、このエンコーダ11の外周部には、ホームポジションに形成された1本の第1のスリット12と、等間隔に形成された複数本の第2のスリット13の2種類のスリットを有している。前記第1のスリット12は第2のスリット13よりも用紙搬送用駆動軸5に近い所まで切り込まれており、第1のスリット12と第2のスリット13で長短が付けられている。
【0104】
第1のスリット12を検出するホームポジション検出用の第1の光学センサ14と、第2のスリット13を検出する前記用紙搬送用駆動軸5の回転角検出用の第2の光学センサ15は、互いに離れた位置(本実施例では駆動軸5を挟んだ対向位置)に取り付けられている。図6に示されているように、前記第1の光学センサ14は第2の光学センサ15よりも用紙搬送用駆動軸5に近い位置が検出点となっている。
また、前記用紙搬送用駆動軸5は、用紙搬送用ステッピングモータに接続されている。
【0105】
制御自体は前記実施例と同様に、エンコーダ11の第1のスリット12をホームポジションとして、その他の全スリットの補正データを求めておき、その補正データを用いて用紙の停止位置を補正することにより、高精度の停止位置制御が可能である。
【0106】
前記実施例では用紙搬送用駆動軸の位置検出に、スリットを形成したエンコーダと光学センサを用いた例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばNSの磁極を有するマグネットからなるエンコーダと、前記NSの磁極の変化を検出するホール素子からなる磁気センサを使用することもできる。
【0107】
また、連続紙プリンタとして、本実施例では電子写真装置により説明したが、印刷機構についてはこれに限られるものではなく、例えば、インクジェット方式などにより印刷を行う連続紙プリンタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1:第1の光学センサ、2:第1のエンコーダ、3:第2の光学センサ、4:第2のエンコーダ、5:用紙搬送用駆動軸、6:第1のスリット、7:第2のスリット、11:エンコーダ、12:第1のスリット、13:第2のスリット、14:第1の光学センサ、15:第2の光学センサ、21:レーザビームプリンタ、22:コントローラ、23:感光体ドラム、24:コロナ帯電手段、25:露光手段、26:現像手段、28:連続紙、29:上流側の用紙搬送トラクタ、30:転写手段、31:下流側の用紙搬送トラクタ、32:定着手段、40:用紙搬送用ステッピングモータ、41:モータドライバ、42:モータ駆動印刷部、44:ROM、45:RAM。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2002−310613号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に係り、特に連続紙などの長尺状の被記録媒体に対して印刷を行う印刷装置の印刷位置決めの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の連続紙プリンタにおける用紙搬送機構の側面図である。
この用紙搬送機構は、ステッピングモータ(図示せず)を駆動源として動作し、そのステッピングモータが回ることによって一対のトラクタベルト51が用紙搬送方向に回転する。このトラクタベルト51の外周部には等間隔にピン52が設置されており、このピン52の先端部分が連続紙53の両側部分に形成された孔53aに挿入されて、前記トラクタベルト51が回転することにより連続紙53が搬送される。
【0003】
このプリンタにおける印刷位置の誤差は、トナー画像を感光体上に形成し、それが連続紙53に転写・定着されるまでの間の様々な誤差の積み重ねで決定される。この連続紙プリンタでは、印刷中は一定速度で連続紙53を搬送するため、印刷中での印刷位置のバラツキは発生しづらく、前記トラクタベルト51の停止時での位置のバラツキの方が、印刷位置の精度に与える影響が大きい。
【0004】
印刷停止時には、円盤状のロータリーエンコーダ(以下、エンコーダと略記する)54のスリットを光学センサ55で読み取って停止位置を決定する。このため停止位置のバラツキが大きいと、次に書き出し位置がずれてしまい、この印刷位置のずれは連続的に続くことになる。
【0005】
連続紙プリンタは、印刷を開始してしまえば一定の速度で連続紙53を搬送するため、連続紙53の引っ掛りなどの異常事態が発生しなければ、一連の印刷動作内では印刷位置の変動はカット紙に比較して少ない。
【0006】
印刷開始の第1ページの印刷位置精度は、連続紙53であるため印刷動作全体の印刷位置の基準となる。例えば、第1ページで印刷開始位置が用紙搬送方向において1mm遅れる(ずれる)と、印刷動作中全ページで第1ページと同様に1mm用紙搬送方向に遅れた(ずれた)位置に印刷される。
【0007】
このように連続紙プリンタでは、印刷開始位置のずれは1つ前の印刷動作が終了したときの用紙搬送停止位置のずれによって起こり易い現象であり、この原因の一つが前記用紙搬送トラクタにおけるエンコーダ54の位置検出の誤差である。
【0008】
ここで説明する連続紙プリンタでは、トラクタの用紙搬送用駆動軸にエンコーダ54を取り付け、光学センサ55でエンコーダ54の動きをモニタリングすることで、駆動軸の回転速度や位置を把握して、用紙搬送トラクタの速度および連続紙53の位置制御を行っている。
【0009】
従って、エンコーダ54の検出精度が印刷位置精度に影響することになるが、エンコーダ54はスリットの加工精度、またはエンコーダ54の取り付け時の偏芯などにより、検出精度に誤差を含むことになる。
【0010】
図10では、位置検出に円盤状の遮光板であるエンコーダ54と光学センサ55を用いた例を示しているが、その他に、例えば円盤状のマグネット板とホール素子を使用して磁気的に検出する場合でも、マグネット板の大きさのバラツキ、磁力の強さのバラツキ、取り付け位置の誤差などでも検出精度は影響を受け、エンコーダの検出誤差が発生し、それが連続紙プリンタにおける印刷位置ずれの要因となる。
【0011】
前記図10に示す用紙搬送機構における制御動作の一例を、図11のフローチャートを使って説明する。
用紙搬送開始時に、ステップ(以下、Sと略記する)1で、エラー検出のためのステップ数であるエラーチェックデータをカウンタにセットする。カウンタ値が0以上である場合はエンコーダのスリットを検出しているか確認して、検出していない場合は再度ステッピングモータを1ステップ回転させて(S2)、カウンタをデクリメントする(S3)工程を繰り返す。
【0012】
次にS4において、カウンタ値が0未満になったかどうか判定して、カウンタ値が0未満になった場合(S4でYES)は、規定のステップ内にエンコーダのスリットが検出できなかったため、ポジションエラーとする(S5)。
【0013】
一方、カウンタ値が0未満になる前であれば(S4でNO)、次にS6でエンコーダのスリットを検出したかどうかの判定がなされ、検出されなければ(S6でNO)、S2に戻り再度ステッピングモータを1ステップ回転させ、前の動作を繰り返す。
【0014】
エンコーダのスリットを検出した場合(S6でYES)は、S7においてカウンタ値が予め設定されている許容規定ステップ範囲から外れているかの判定がなされる。外れている場合はポジションエラーとし(S5)、外れていない場合はS1に戻り再度エラーチェックデータをカウンタにセットする。
【0015】
基本的に連続紙プリンタの搬送制御は、一度用紙を搬送し始めるとエンコーダは速度制御ではなく、何かしらの異常時に用紙搬送機構が正常に動かない状態を検出するためのチェックとして使うことになる。そのためエンコーダのスリットの周期のバラツキが正常範囲内であるかどうかのチェックのみを行なう。前述のように正常範囲(許容規定ステップ範囲)から逸脱した場合は、ポジションエラーとするのが一般的である。
【0016】
また、連続紙プリンタでは、前記エンコーダのスリットは用紙の停止位置に合わせて設けられているため、印刷停止時には停止位置に該当するエンコーダのスリットを検出した位置で停止するだけである。
【0017】
なお、この種の用紙搬送機構に関しては、例えば特開2002−310613号公報(特許文献1)を挙げることができる。
この特開2002−310613号公報に記載されている発明では、エンコーダの精度が印刷位置のずれに影響することを考慮して、ロータリーエンコーダに加えてリニアエンコーダを設けることが提案されている。このリニアエンコーダはスリット密度を高くすることが可能であるから、リニアエンコーダの併用により、用紙送り精度をロータリーエンコーダだけの場合に比べて高くすることが可能である。
【0018】
しかし、特開2002−310613号公報の提案では、用紙搬送のための位置制御はリニアエンコーダの精度が問題にならない前提があって初めて成り立つ技術である。つまり、エンコーダは検出したい角度毎に検出ポイントであるスリットが設けてあるが、エンコーダの加工精度で決まるスリットの間隔、またエンコーダが高精度で加工されたものであっても、用紙搬送用駆動軸へのエンコーダの取り付け時の偏芯で位置検出精度が影響される。
【0019】
図12を用いて、エンコーダ54の加工精度および取り付け精度の一般的な影響について説明する。
同図示すように、エンコーダ54の用紙搬送用駆動軸56の中心からスリットの検出点までの半径をr、隣のスリットの光学センサ55での検出点の距離をXとした場合、エンコーダ54の用紙搬送用駆動軸56を中心としたスリット間の角度(エンコーダ角度)θは、下式のように表すことができる。
【0020】
θ=tan−1(X/r)
前述のようにXはスリット間の距離であり、スリットが放射状に設けられているため、エンコーダ54の中心から離れるほど距離は長くなる。このスリット間距離Xは、スリット間の加工精度および取り付け時の偏芯で決まり、加工精度が高く偏芯が少ないほどスリット間距離Xの誤差は小さくなる。なお、図12では、駆動軸56に対するエンコーダ54の偏芯を極端に表している。
【0021】
前記rは駆動軸56から光学センサ55での検出点までの距離であるので、エンコーダ54の精度や取り付け時の偏芯に関わらず、一定である。従って、エンコーダ54の加工精度と組み立ての精度が低いと、エンコーダ54のスリット間距離Xが変動してしまい、結局、スリット間角度θの誤差が発生し、高精度な位置検出ができない。
【0022】
前記特開2002−310613号公報に記載の発明では、ロータリーエンコーダとリニアエンコーダを併用することによって検出精度を上げようとしているが、その精度はエンコーダの加工精度および取り付け精度に依存し、検出精度を上げるためには、高精度のエンコーダ加工と高精度なエンコーダ取り付け位置調整を行なわなければならない。
【0023】
印刷位置の精度を上げるためには、場合によってはエンコーダ製造後にもエンコーダの精度をチェックして、削りや研磨などで仕上げ処理を行い、エンコーダの取り付け後には偏芯を防止するために、用紙搬送用駆動軸とエンコーダの芯出し調整を行う必要があり、そのために手間がかかり、コスト高を招くことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
前述のように連続紙プリンタでは、一度印刷を開始すると一定速度で印刷を行うため、高い印刷位置精度が要求される。また、カット紙プリンタに比べると、印刷位置精度が特に要求される帳票や伝票の印刷などに連続紙プリンタが使用されることが多い。印刷用紙が罫線付きのプレプリント用紙などを使った場合は、印刷位置の精度が良くないと、印刷結果でも顕著に精度の悪さが露見するケースが見られる。
【0025】
連続紙プリンタにおいて印刷動作間の印刷位置のずれる障害は、位置検出手段であるエンコーダの精度誤差が含まれている場合に発生する。
【0026】
前記特開2002−310613号公報では、ロータリーエンコーダとリニアエンコーダを併用することで、高精度な位置制御が可能であるとしている。しかし、その位置制御の精度はエンコーダの精度、つまりエンコーダの加工精度と取り付け精度で決定される。エンコーダの加工精度を確保するためには、エンコーダのスリットの削りや研磨などの処理を行なって、要求される形状に仕上げなければならず、高価な加工機械が必要となり、また仕上げ加工に時間がかかる。
【0027】
また、エンコーダを用紙搬送用駆動軸に固定する場合も偏芯することで検出精度が影響を受けるため、取り付け時に芯出しを行なう。この芯出し調整にも偏芯を測定できる機器を使って補正を行なうなどの高度な技術が必要となり、芯ずれが許容範囲内に入るまで補正を繰り返す必要がある。
【0028】
但し、エンコーダの加工や取り付けを精度よく行なっても、エンコーダ自体が温度や湿度、あるいは経時変化で変形してしまうこともあるため、高強度で環境変化に強い材料を使わねばならない。この高強度で環境変化に強い材料は一般に高価であり、しかも高強度であることから削り作業や熱処理などが行い難く、実際には前述のような加工や調整は困難な作業である。
【0029】
従って、エンコーダの強度と加工や調整のしやすさにトレードオフがあり、精度を上げたい場合は物理的に高強度で環境安全性が高い材料を使用し、時間と費用をかけてエンコーダを製作し、微細な調整を行なってエンコーダを取り付ける。
【0030】
一方、費用や時間をかけられない場合は、物理的に低強度で、環境変化にも弱い材料を使用することで、加工や調整がしやすいエンコーダを製作し、最低限の調整を行なってエンコーダを取り付ける。
【0031】
よって、プリンタで要求される精度と許容されるコストのトレードオフを見極めてエンコーダの仕様を決定することになるが、要求される精度を満たすような仕上げ加工や取り付け調整はどのケースでも必要となり、精度に見合った費用と作業時間が必要である。
【0032】
連続紙プリンタは、印刷動作が終了すると用紙をプリンタの内部の用紙パスに残したまま停止することになり、用紙の停止位置はエンコーダで停止位置を検出して決定する。次に印刷動作は前回の印刷動作終了で用紙を停止した位置を基準として印刷を行うため、前回の停止位置に誤差があると用紙上の印刷位置が停止位置の誤差分ずれてしまうことになる。
【0033】
印刷位置ずれが修正される契機は、印刷動作が終了して用紙搬送が停止するときとなる。エンコーダで位置を確認して停止するため、補正がかかる可能性があるからであるが、その場合もその用紙の停止位置は停止するときのエンコーダのスリットの精度に依存することになる。
【0034】
このように連続紙プリンタの印刷位置精度はエンコーダの精度で決定するため、印刷位置精度が要求される場合は、エンコーダの加工や調整に多くの費用や時間をかけることになる。エンコーダの加工や調整は加工装置や作業者の熟練度、エンコーダに使用する材料などで精度の上限が決定されてしまう。高価な加工設備や加工時間、加工に適した強度と経時的に安定した高価なエンコーダ材料、エンコーダの取り付けを高精度で行なうための調整作業を適用することは、プリンタ本体の価格を上げる原因にもなる。
【0035】
なお、工場出荷時に高精度の調整を行なったプリンタでも市場でのメインメンテナンス、例えば用紙搬送機構のセンサやエンコーダの取り付け位置が影響を受けるような分解組み立てや部品交換などを行なった場合は、駆動系の検出精度も影響を受けてしまい、結果として用紙搬送機構の位置制御の精度低下により印刷位置が変動することがある。
【0036】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、安定した印刷品質が得られる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
前記目的を達成するため、本発明は、
長尺状の被記録媒体の搬送・停止を行なう搬送・停止手段を備えて、その搬送・停止手段によって搬送・停止される前記長尺状の被記録媒体に対して印刷を行う印刷装置において、
前記搬送・停止手段の例えば用紙搬送用駆動軸などの駆動部に、前記被記録媒体の位置を検出するための例えばロータリーエンコーダなどのエンコーダと例えば光学センサなどのセンサを設置し、
印刷動作の停止時の前記センサによるエンコーダの位置情報に基づいて、前記長尺状被記録媒体の印刷長毎の停止位置を決定する制御手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明は前述のような構成になっており、安定した印刷品質が得られる印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に係る用紙搬送エンコーダ機構の正面図である。
【図2】その用紙搬送エンコーダ機構の側面図である。
【図3】本実施例に係る用紙搬送エンコーダ機構による用紙搬送位置補正データの取得方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施例においてメモリー上に格納した用紙搬送位置補正データの例を示す図である。
【図5】本発明の実施例においてホームポジションからm番目のスリットで印刷用紙の搬送を停止する場合の位置制御を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施例に係る用紙搬送エンコーダ機構の正面図である。
【図7】その実施例に用いるエンコーダの一部拡大正面図である。
【図8】本発明の実施例に係るレーザビームプリンタ全体の概略構成図である。
【図9】そのレーザビームプリンタの内の本実施例が関係する部分の制御ブロック図である。
【図10】従来の連続紙プリンタにおける用紙搬送機構の側面図である。
【図11】その連続紙プリンタの用紙搬送機構における制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図12】その用紙搬送機構に用いるロータリーエンコーダの加工精度および取り付け精度の一般的な影響について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実際にはエンコーダ自体の精度をやみくもに上げるよりは、位置制御を行う連続紙プリンタにおける駆動系の制御装置が制御可能な精度以上でのエンコーダ精度を確保できれば問題とはならない。
【0041】
そのため、連続紙プリンタの駆動系制御装置自体がエンコーダの誤差を検出して補正をかければ、連続紙プリンタの駆動系が要求する精度での調整が容易であり、エンコーダの精度確保に必要以上にコストと加工工数をかけずに、適切な位置制御を行なうことができる。
【0042】
本発明でのエンコーダの位置検出補正は、エンコーダの基準点を定め、そのエンコーダ基準点から検出点であるエンコーダのスリットをセンサで検出した位置までを、用紙搬送機構駆動源のステッピングモータを回転させる基準クロックでカウントして、エンコーダの検出点が理論上のモータクロックカウント数とずれている差を算出する。
【0043】
エンコーダの全ての検出ポイントについて理論値との差が算出されていれば、エンコーダの全検出点と理論上のモータを駆動するクロックカウント数の補正量が分かっていることになり、それぞれのエンコーダ検出点の理論値からの補正値として使用できる。これによって各検出点のエンコーダ検出誤差を補正しながらステッピングモータの回転を制御することで、連続紙の用紙停止位置の補正が可能となる。
【0044】
前述のように、連続紙プリンタは印刷動作終了時の用紙停止位置によって次の印刷動作の印刷位置が影響を受ける印刷装置であり、用紙搬送の位置を検出するエンコーダの精度で印刷位置精度が決定される。
【0045】
しかし、エンコーダの精度を上げるためには材料、加工ならびに取り付け精度などコストや時間が関係するため、用紙搬送の位置精度が高い印刷装置の場合は装置全体の価格を押し上げる要因となる。
【0046】
本発明では、エンコーダの加工や取り付け精度によらず、エンコーダの誤差を制御的に補正して高精度の位置制御が可能となり、エンコーダ自体の精度や取り付けの精度に依存しない、正確でかつ低コストな位置制御が可能である。
【0047】
本発明では、印刷装置の制御部自体がエンコーダの全検出点の理論値からのズレを検出し、そのズレを補正するため印刷装置に要求される精度での誤差補正を行なうことができる。従って、エンコーダやエンコーダの芯出しなどの物理的な誤差要因を無調整でも低価格で高精度な検出系が実現できる。その結果、印刷装置全体のコストダウン、もしくは従来は装置全体を低価格に抑えなければならないため高精度の用紙搬送制御をすることができなかった低価格の印刷装置にも高精度の用紙搬送制御を適用することが可能となる。
【0048】
本発明では、用紙搬送に微細な位置制御が可能な駆動源を用い、具体的には2相励磁型のステッピングモータで、200パルスで一回転するモータのロータは1パルスで1.8度回転する。高精度のステッピングモータでなくても、通常の2相励磁型の200ステップでロータが一回転するステッピングモータの回転角度誤差は0.05度程度であり、実際に印刷装置に組み込む場合はギアなどで減速するため誤差はさらに圧縮される。
【0049】
仮に減速機構を介してモータ10回転で用紙を50mm搬送する用紙搬送機構を仮定すると、1ステップで用紙は0.025mm移動し、そのときの停止時のモータの駆動軸誤差0.05度は用紙上での印刷ずれは0.7μmとなり、人間の目視で確認できる精度以下であるため、モータの回転角の誤差が位置制御に与える影響は微小である。
【0050】
実際の連続紙プリンタの搬送駆動でもステッピングモータの1ステップ毎に用紙搬送の速度変動が発生するため、モータの1ステップが人間の目で判断できる大きさの50μm以下となるよう駆動機構の減速比を設計するのが普通である。
【0051】
従って、エンコーダ自体の精度および取り付け精度の誤差補正を、ステッピングモータのステップ数で誤差を算出することにより、高精度な位置制御が可能である。また、駆動機構が可能な精度以上の検出を行っても、その駆動機構が対応できる精度以上の位置制御はできないため、実際の印刷装置では意味を持たない。すなわち、エンコーダの要求精度は、駆動機構が対応できる範囲内でよい。
【0052】
次に本発明の実施例を図面とともに説明する。
(印刷装置全体の概略構成)
始めに、本発明を適用した印刷装置として電子写真方式を用いたレーザビームプリンタを例示し、その構成について図8ならびに図9を用いて説明する。図8はレーザビームプリンタ全体の概略構成図、図9は本実施例が関係する部分の制御ブロック図である。
【0053】
図8において、符号21はレーザビームプリンタであり、そのコントローラ(CPU)22(図9参照)からの印刷動作開始信号に基づいて感光体ドラム23が矢印方向に回転を始める。感光体ドラム23は、レーザビームプリンタ21の印刷速度に相当する速度で回転し、印刷動作が終了するまで回転を続ける。感光体ドラム23が回転を開始すると、コロナ帯電手段24
に高電圧が印加され、感光体ドラム23の表面に例えば正の電荷が一様に帯電される。
【0054】
半導体レーザなどの光源、回転多面鏡ならびにfθレンズなどを備えた露光手段25から出射された光(レーザビーム)は、感光体ドラム23上を走査しながら照射する。
【0055】
ドットイメージに変換された文字データや画像データがレーザビームのON/OFF信号として前記コントローラ22から送られると、感光体ドラム23の表面にレーザビームが照射される部分と照射されない部分とが形成され、それによって前記データに基づいた静電潜像が形成される。
【0056】
この静電潜像を形成した感光体ドラム23の領域が現像手段26と対向する位置に到来すると、現像手段26内のトナーが前記静電潜像に供給され、レーザビームの照射により感光体ドラム23上の電荷が消失した部分に、例えば正電荷を帯電したトナーが静電気により吸引されて感光体ドラム23上にトナー像が形成される。
【0057】
一方、用紙ホッパー27に収納されている長尺状の連続した印刷用紙(連続紙)28は、上流側の用紙搬送トラクタ29によって、感光体ドラム23上に形成されたトナー像が転写位置に到達するタイミングと同期させて、感光体ドラム23と転写手段30の間に向けて搬送・供給される。
【0058】
感光体ドラム23上に形成されたトナー像は、連続紙28の裏面側にトナー像と逆極性の電荷を付与する転写手段30の作用によって連続紙28上に吸引・転写される。
【0059】
このようにして、用紙ホッパー27にセットされていた連続紙28は、上流側の用紙搬送トラクタ29、転写手段30および下流側の用紙搬送トラクタ31を経て定着手段32に搬送される。
【0060】
定着手段32に到着した連続紙28は、内部に複数本の発熱ランプを備えた加熱ローラ33と加圧ローラ34からなる一対の定着ローラによって形成されるニップ部によって加熱・加圧されながら挟持・搬送され、前記トナー像が連続紙28に溶融・定着される。
【0061】
加熱ローラ33と加圧ローラ34によって送り出された連続紙28は、用紙送り出しローラ35によってスタッカーテーブル36側に送り出されるとともに、スイングフィン37の揺動動作によってミシン目に沿って交互に折り分けられ、さらに、回転するパドル38で折り畳み状態が整えられながら、スタッカーテーブル36上に積み重ねられて行く。
感光体ドラム23の転写位置を通過した領域は、清掃装置39で表面が清掃されて、次に印刷動作に備えられる。
【0062】
図8に示すように、2つの用紙搬送トラクタ29,31は、1つの用紙搬送用ステッピングモータ40によって回転駆動される。本発明の実施例では下流側用紙搬送トラクタ31の駆動側に後述するエンコーダ2,4が取り付けられている。本実施例の場合、前記用紙搬送トラクタ29,31ならびに用紙搬送用ステッピングモータ40などから用紙搬送機構が構成されている。
【0063】
図示されていないが、前記用紙搬送トラクタ29,31にはそれぞれトラクタベルトが架設されており、このトラクタベルトの外周部には等間隔に多数のピンが設置されており、このピンの先端部分が連続紙28(図8参照)の両側部分に形成された孔に挿入されて、前記トラクタベルトが回転することにより連続紙28が所定の方向に搬送される。
【0064】
図9に示すように、前記用紙搬送用ステッピングモータ40はモータドライバー41によって回転駆動され、そのモータドライバー41はモータ駆動制御部42によって駆動制御され、さらにそのモータ駆動制御部42は前記コントローラ22によって制御される。
【0065】
コントローラ22はインターフェース43を介してROM44やRAM45などと接続されている。またこのコントローラ22には、後述する第1の光学センサ1ならびに第2の光学センサ3からの検出信号が入力されるようになっている。
【0066】
(用紙搬送エンコーダ機構の構成)
次に前記用紙搬送用機構内に設置されている用紙搬送エンコーダ機構の構成について図1および図2を用いて説明する。図1および図2は、用紙搬送エンコーダ機構の正面図および側面図である。
【0067】
これらの図に示されているように、用紙搬送機構の用紙搬送用駆動軸5上には、小径の第1のエンコーダ2と、大径の第2のエンコーダ4とが、所定の間隔をおいて取り付けられている。このエンコーダ2,4は遮光性の円盤から構成されており、用紙搬送用駆動軸5とともにエンコーダ2,4も一緒に回転する。
【0068】
また、前記用紙搬送用駆動軸5は、前記用紙搬送用ステッピングモータ40に接続されている。本実施例では前述した2相励磁型のステッピングモータが用いられており、200パルスでロータが一回転する構成になっている。ロータは1パルスで1.8度回転し、ロータが一回転したときの回転角度誤差は0.05度程度である。
【0069】
前記第1のエンコーダ2の外周部付近のある位置には、第1のエンコーダ2上に設けられた第1のスリット6を検出する第1の光学センサ1が設置されている。この第1の光学センサ1で第1のスリット6を検出した位置を、前記用紙搬送用駆動軸5の回転方向のホームポジション(基準位置)とし、前記コントローラ22(図9参照)に入力される。
【0070】
この第1のエンコーダ2は、制御上の位置の基準となるため調整が必要であるが、第1のスリット6が1本しかないため(図1参照)、第1のエンコーダ2の精度要求も無く、調整も1ポイントだけであるので容易である。なお、第1のエンコーダ2の第1のスリット6が用紙搬送機構の意図した位置からずれている場合、ずれたステップ数を連続紙プリンタの記憶装置(RAM45 図9参照)で記憶しておき、そのステップ数を制御上で補正した位置を制御上のホームポジションとすることも可能である。
【0071】
図1に示すように前記第2のエンコーダ4の外周部には、複数本の第2のスリット7が設けられており、この第2のスリット7を第2の光学センサ3で検出することにより、前記用紙搬送用駆動軸5の回転角が検出できる。この第2の光学センサ3の検出信号も前記コントローラ22(図9参照)に入力される。前記第1ならびに第2の光学センサ55は、フォトインタラプタから構成されている。
【0072】
本実施例では、前記第1のエンコーダ2でホームポジションを検出して、第2のエンコーダ4はそのホームポジションからm番目のスリットであるかの検出が可能な構成になっている。但し、第2のエンコーダ4の第2のスリット7は、本明細書の発明が解決しようとする課題の欄でも説明したように、エンコーダの加工精度や取り付け精度によっては、理論値に対する誤差が含まれることがある。
【0073】
(エンコーダ機構による誤差補正データの取得方法)
次にこの用紙搬送エンコーダ機構による用紙搬送位置補正データ(誤差補正データ)の取得方法について、図3のフローチャートとともに説明する。
【0074】
この用紙搬送位置補正データ(誤差補正データ)の取得は、電源投入時のイニシャライズもしくは用紙セット時、あるいは用紙エンプティなどの非印刷時で用紙搬送機構を動かせる状態で行う。
【0075】
まず最初にS1において、用紙搬送用ステッピングモータ40(図8参照)を1ステップずつ回転させ、第1の光学センサ1で第1のエンコーダ2のスリット6を検出しているかモニタリングしながら、スリット6(ホームポジション)を検出するまで用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップずつ回転させる(S2)。このステッピングモータ40の回転に伴って、第1のエンコーダ2と第2のエンコーダ4が一緒に回転する。
【0076】
第1のエンコーダ2のスリット6(ホームポジション)を検出すると(S2でYES)、その位置をホームポジション(基準位置)として、第2のエンコーダ4のスリット番号カウンタと、用紙搬送用ステッピングモータ40の駆動ステップ数をカウントするステップ数カウンタと、第1のエンコーダ2で検出したホームポジションからの理論ステップ数を過ぎるまで第2のエンコーダ4のスリット7が検出できなかった場合に立てる遅延フラグを、それぞれクリアする(S3,S4)。
【0077】
次にS5で、第2のエンコーダ4が理論上のスリット位置であるかどうか判定する。但し、最初は、エンコーダ4のスリット7の検出処理(S6)前のため、NOとして処理される。
【0078】
次にS6で、第2の光学センサ3で第2のエンコーダ4のスリット7の検出を行う。第2のエンコーダ4のスリット7を検出していない場合(S6でNO)は、用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップ回転させて(S7)、前記ステップ数カウンタをインクリメントする(S8)。
【0079】
これらの動作を繰り返し、用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップずつ回転させ、第2のエンコーダ4のスリット7が検出されないまま、第2のエンコーダ4の理論上のスリット位置まで用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させた場合(S5でYES)は、スリット7が理論ステップ数より遅れていることを意味する遅延フラグを立て(S9)、「ステップ数カウンタのカウント数−理論スリット位置カウント数」の絶対値を理論値とのステップ数差として、m番目のスリットに該当するメモリーのアドレスに格納する(S10)。
【0080】
一方、用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させ、第2のエンコーダ4の理論上のスリット位置まで回す以前にスリット7を検出した場合は(S5でNO、S6でYES)、遅延フラグは立てずにS10に進み、「ステップ数カウンタのカウント数−理論スリット位置カウント数」の絶対値を理論値とのステップ数差として、m番目のスリットに該当するメモリー(RAM45 図9参照)のアドレスに格納する(S10)。
【0081】
また、第2のエンコーダ4の理論上のスリット位置まで用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させた後に、第2のエンコーダ4のスリット7を検出した場合は、検出ポイント遅延フラグを立てるとともに、「ステップ数カウンタのカウント数−理論スリット位置カウント数」の絶対値を理論値とのステップ数差として、m番目のスリットに該当するメモリー(RAM45 図9参照)のアドレスに格納する。
【0082】
次にS11で第2のエンコーダ4の理論上のスリット位置まで用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させ、S12で前記スリット番号カウンタをインクリメントし、S13において全スリット補正量の検出が終了したかどうかの判定がなされ、終了してなければ前記S4からの動作が繰り返され、検出が終了していれば補正データ取得ルーチンを終わる。
【0083】
図4に、メモリー上に格納した補正データの例を示す。
同図に示すように、スリットmのデータとしてメモリーのアドレス毎に遅延フラグをBit7に割り当て、理論値からのズレ量データとしてBit6〜Bit0を割り当てる。Bit7の遅延フラグは理論値から遅延した場合“1”、理論値より先行した場合“0”、Bit6〜Bit0の7ビットは理論値からのズレ量となるステッピングモータ40のステップ数であり、最大128ステップ分のデータが格納できる。
【0084】
前述の補正ルーチンは、印刷装置の電源投入時のイニシャライズ、または用紙のセット時、用紙切れ時、用紙ジャムなどの障害から復帰した後のイニシャライズなどの非印刷時に行なう。
【0085】
なお、第1エンコーダのずれたステップ数を含め、これらの補正データは、駆動回路の制御部で持っている記憶装置であるRAMもしくはROM、ハードディスクなどへの記憶が考えられるが、電源を切ったときにズレ量補正データを残したい場合は、ハードディスク、EEPROMあるいはNV−SRAMなどの不揮発性記憶装置に格納する。
【0086】
不揮発性の記憶装置に補正データを格納した場合は、電源を遮断しても補正データは残るので、図3に示す用紙搬送位置補正データ取得ルーチンを実行せずに記憶装置に記憶された補正データを読み出して使うことが可能である。
【0087】
工場での製造工程で印刷装置の完成時にその印刷装置で用紙搬送位置補正データ取得ルーチンを実行し、各印刷装置固有の補正データを記憶装置に記憶しておき、以降の動作時は記憶している補正データを記憶装置から読み出して使う設定にしておけば、実際の使用時に位置補正を行なわずとも正確な補正が可能である。
【0088】
また、出荷されて市場で稼動している印刷装置でも何らかの理由で用紙搬送機構のメンテナンスを行なう場合、例えばエンコーダ2やエンコーダ4の取り外しまたは取り付けを伴う作業や、光学センサ1や光学センサ3の取り外しまたは取り付けを伴う作業を行い、位置補正データの更新が必要な場合でも、メンテナンス終了後に一度だけ位置補正データを取得して記憶装置に記憶させておくだけで、工場出荷時と同じエンコーダ検出速度が確保できる。
【0089】
実使用上は電源投入時のイニシャライズや用紙セット時に印刷動作と関係の無い動作をエンドユーザが不安に思わない場合は、毎回の電源投入時のイニシャライズや用紙セット時に補正動作を行うことも可能である。
【0090】
次に印刷停止時の用紙を停止させる場合について説明する。図3に示す誤差補正データの取得ルーチンで算出した補正データを使って用紙の停止位置を補正する。
【0091】
1つの印刷動作が終了し、その印刷動作に伴って搬送して来た連続紙を停止するため、印刷装置はエンコーダ2のスリット6で用紙搬送用ステッピングモータ40の用紙搬送用駆動軸5のホームポジション(基準位置)を検出し、n個のスリット7を有するエンコーダ4の基準位置とする。
【0092】
印刷停止は用紙を停止するエンコーダ4のn個のスリット7に応じ、該当するメモリーのアドレスから前述の補正データを読み出して用紙の停止位置を補正する。
図5を用いてエンコーダ4のホームポジションからm番目のスリットで印刷用紙の搬送を停止する場合の位置制御を説明する。
【0093】
印刷装置は印刷終了時にエンコーダ4でm番目のスリット7で印刷用紙を停止する場合、用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップ回転させる(S1)度に、エンコーダ4のホームポジションからm番目のスリット7を検出しているかモニリタリング(S2)する。そしてm番目のスリット7を検出した場合(S2でYES)は、該当するm番目のスリットのメモリーに格納した補正データを読み込み、そのカウンタ値をカウンタにリロード(S3)する。
【0094】
次にS4で、メモリーに格納した該当アドレスに遅延フラグが立っているか否かの判定がなされる。補正データに遅延フラグが立っていない場合(S4でNO)、Bit6〜Bit0に格納されている補正データのステップ数分用紙を進めた位置まで用紙を送る。
【0095】
従って、m番目のスリット7で停止したい場合は、m番目のスリット7を検出した位置からBit6〜Bit0に格納されている補正データのステップ数分用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させて用紙を進めることで、理論上正しい位置で用紙を停止する。
【0096】
S5〜S7は前述の補正データのステップ数分用紙搬送用ステッピングモータ40を回転させて用紙を進めるルーチンで、S5で用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップ回転させ、S6でカウンタデクリメントし、S7でカウンタ値が0になったかどうか、すなわち理論値ポイントに達したか否かの判定がなされる。このS5〜S7のルーチンをカウンタ値が0になるまで繰り返して、カウンタ値が0になると(S7でYES)用紙の搬送を停止する(S8)。
【0097】
一方、補正データに遅延フラグが立っている場合(S4でYES)、理論値より実際のスリット7が遅れて検出されるため、Bit6〜Bit0に格納されている補正データのステップ数分用紙搬送用ステッピングモータ40を逆転させ、用紙搬送方向とは逆方向に用紙を戻す。
【0098】
S9〜S11は前述の補正データのステップ数分用紙搬送用ステッピングモータ40を逆転させて用紙を戻すルーチンで、S9で用紙搬送用ステッピングモータ40を1ステップ逆転させ、S10でカウンタデクリメントし、S11でカウンタ値が0になったかどうか、すなわち理論値ポイントに達したか否かの判定がなされる。このS9〜S11のルーチンをカウンタ値が0になるまで繰り返して、カウンタ値が0になると(S11でYES)用紙の搬送を停止する(S8)。
【0099】
なお、用紙停止時に用紙を戻したくない場合は、用紙を停止するm番目のスリット検出まで用紙搬送用ステッピングモータ40を回さず、停止するスリットの1つ前のm−1番目のスリット位置から演算する。
【0100】
すなわち、用紙搬送中にm−1番目のスリットを検出したら、m番目の停止位置をm−1番目の補正データを使用して演算する。m−1番目の理論上のスリットを算出し、理論上のm−1番目のスリット位置から理論上のm−1番目のスリットとm番目のスリット間のステップ数を進めて停止すれば、用紙を逆送しないで理論上のm番目のスリット位置に用紙を停止させることができる。
【0101】
以上のように、実際の印刷装置で個々の用紙搬送機構の誤差データを測定し、そのデータを使ってエンコーダの加工誤差および取り付け誤差を含まない正しい停止位置で用紙を停止させることができ、そのときの誤差は駆動系で制御上可能な最小誤差となる。
【0102】
図6は本発明の他の実施例に係る用紙搬送エンコーダ機構の正面図、図7はその実施例に用いるエンコーダの一部拡大正面図である。
【0103】
図6に示されているように、用紙搬送機構の用紙搬送用駆動軸5上には、1枚のエンコーダ11が取り付けられており、このエンコーダ11の外周部には、ホームポジションに形成された1本の第1のスリット12と、等間隔に形成された複数本の第2のスリット13の2種類のスリットを有している。前記第1のスリット12は第2のスリット13よりも用紙搬送用駆動軸5に近い所まで切り込まれており、第1のスリット12と第2のスリット13で長短が付けられている。
【0104】
第1のスリット12を検出するホームポジション検出用の第1の光学センサ14と、第2のスリット13を検出する前記用紙搬送用駆動軸5の回転角検出用の第2の光学センサ15は、互いに離れた位置(本実施例では駆動軸5を挟んだ対向位置)に取り付けられている。図6に示されているように、前記第1の光学センサ14は第2の光学センサ15よりも用紙搬送用駆動軸5に近い位置が検出点となっている。
また、前記用紙搬送用駆動軸5は、用紙搬送用ステッピングモータに接続されている。
【0105】
制御自体は前記実施例と同様に、エンコーダ11の第1のスリット12をホームポジションとして、その他の全スリットの補正データを求めておき、その補正データを用いて用紙の停止位置を補正することにより、高精度の停止位置制御が可能である。
【0106】
前記実施例では用紙搬送用駆動軸の位置検出に、スリットを形成したエンコーダと光学センサを用いた例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばNSの磁極を有するマグネットからなるエンコーダと、前記NSの磁極の変化を検出するホール素子からなる磁気センサを使用することもできる。
【0107】
また、連続紙プリンタとして、本実施例では電子写真装置により説明したが、印刷機構についてはこれに限られるものではなく、例えば、インクジェット方式などにより印刷を行う連続紙プリンタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1:第1の光学センサ、2:第1のエンコーダ、3:第2の光学センサ、4:第2のエンコーダ、5:用紙搬送用駆動軸、6:第1のスリット、7:第2のスリット、11:エンコーダ、12:第1のスリット、13:第2のスリット、14:第1の光学センサ、15:第2の光学センサ、21:レーザビームプリンタ、22:コントローラ、23:感光体ドラム、24:コロナ帯電手段、25:露光手段、26:現像手段、28:連続紙、29:上流側の用紙搬送トラクタ、30:転写手段、31:下流側の用紙搬送トラクタ、32:定着手段、40:用紙搬送用ステッピングモータ、41:モータドライバ、42:モータ駆動印刷部、44:ROM、45:RAM。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2002−310613号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の被記録媒体の搬送・停止を行なう搬送・停止手段を備えて、その搬送・停止手段によって搬送・停止される前記長尺状の被記録媒体に対して印刷を行う印刷装置において、
前記搬送・停止手段の駆動部に、前記被記録媒体の位置を検出するためのエンコーダとセンサを設置し、
印刷動作の停止時の前記センサによるエンコーダの位置情報に基づいて、前記長尺状被記録媒体の印刷長毎の停止位置を決定する制御手段を設けたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記エンコーダの位置情報は、当該エンコーダの機械精度誤差ならびに前記搬送・停止手段の駆動部に対するエンコーダの取り付け位置誤差を考慮して補正された位置情報であることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置において、
印刷動作の停止時に前記センサで検出したエンコーダの位置情報を記憶する記憶手段を設けたことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印刷装置において、
当該印刷装置が、
感光体と、
その感光体の表面を一様に帯電する帯電手段と、
帯電した感光体の表面に対して画像データに基づいて露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像にトナーを付着してトナー像を形成する現像手段と、
長尺状の被記録媒体の搬送・停止を行なう搬送・停止手段と、
前記感光体上のトナー像を搬送されて来た前記被記録媒体上に転写する転写手段と、
前記被記録媒体上のトナー像を当該被記録媒体に定着する定着手段を備えた印刷装置であることを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
長尺状の被記録媒体の搬送・停止を行なう搬送・停止手段を備えて、その搬送・停止手段によって搬送・停止される前記長尺状の被記録媒体に対して印刷を行う印刷装置において、
前記搬送・停止手段の駆動部に、前記被記録媒体の位置を検出するためのエンコーダとセンサを設置し、
印刷動作の停止時の前記センサによるエンコーダの位置情報に基づいて、前記長尺状被記録媒体の印刷長毎の停止位置を決定する制御手段を設けたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記エンコーダの位置情報は、当該エンコーダの機械精度誤差ならびに前記搬送・停止手段の駆動部に対するエンコーダの取り付け位置誤差を考慮して補正された位置情報であることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置において、
印刷動作の停止時に前記センサで検出したエンコーダの位置情報を記憶する記憶手段を設けたことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印刷装置において、
当該印刷装置が、
感光体と、
その感光体の表面を一様に帯電する帯電手段と、
帯電した感光体の表面に対して画像データに基づいて露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像にトナーを付着してトナー像を形成する現像手段と、
長尺状の被記録媒体の搬送・停止を行なう搬送・停止手段と、
前記感光体上のトナー像を搬送されて来た前記被記録媒体上に転写する転写手段と、
前記被記録媒体上のトナー像を当該被記録媒体に定着する定着手段を備えた印刷装置であることを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図8】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図8】
【図10】
【公開番号】特開2013−71249(P2013−71249A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209480(P2011−209480)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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