説明

印象用硬化組成物およびその製造方法

【課題】本発明は、パラジウムの無機、有機、または有機金属化合物を、付加硬化性組成物の反応中に発生する水素ガスの量を減少させるのに有効な量で含む付加硬化性組成物を提供する。
【解決手段】以下を含む口内で架橋されるように適用される印象用硬化性組:
a)脂肪族性不飽和を含む付加硬化性化合物;b)少なくとも2つのケイ素-水素結合を有する架橋剤;c)白金含有触媒;d)前記組成物の反応中に発生する水素ガスの量を捕捉により減少させるのに有効な量のパラジウムの無機化合物、有機化合物、または有機金属化合物;およびe)組成物中20〜90重量%の割合で存在する充填剤。上記印象用硬化性組成物を用いて印象を調製する工程、および(b)その印象から陽型歯科用模型を調整する工程を含む陽歯科用模型の作製方法。上記陽型歯科用模型の作製方法であって、前記パラジウムの化合物は前記陽型が小窩を含まないような量で存在する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素が放出される硬化性組成物において水素スカベンジャーとして有用な無機、有機および有機金属パラジウム化合物を含有する印象用硬化組成物およびその製造方法に関する。本発明は、付加硬化性シリコーン歯科用印象材組成物から放出される水素の吸収において特に有用である。放出された水素を吸収すると、印象から作製される陽型の不完全性または小窩が顕著に減少し得る。
【背景技術】
【0002】
多くの付加硬化性化合物、特に付加硬化性シリコーン歯科用組成物は、触媒の存在下で有機ポリシロキサンおよび有機水素ポリシロキサンの反応の副作用として水素ガスを放出する。水素ガスが放出されると、陽型を形成するための歯科用印象(即ち、陰型)にその後適用されるかまたは注がれる材料の所望されない不完全性または小窩を生じ得る。これは受け入れ不能な物品の形成をもたらし得るか、または歯科用デバイスの場合、適切に適合しない。
【0003】
米国特許第4,273,902号には、付加硬化性シリコーン印象剤処方物中の水素スカベンジャーとして支持体上に配置された微細に分割されたパラジウム金属粉末、パラジウム合金またはパラジウム金属の使用が記載されている。
【0004】
米国特許第4,957,667号には、硬化性陽性印象材または微細に分割されたパラジウムと注入前の陽性印象剤との混合物の注入前の陰性印象材の少なくとも一部上に適用された微細に分割されたパラジウムの使用が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおりの従来技術が有する課題を解決でき、付加硬化性シリコーン歯科用印象材組成物から放出される水素の吸収において特に有用であり、放出された水素を吸収すると、印象から作製される陽型の不完全性または小窩が顕著に減少し得る印象用硬化組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下を含む組成物:a)付加硬化性化合物、例えば、ビニル基含有オルガノポリシロキサン;b)架橋剤、例えば、多数のSiH結合を含有するオルガノポリシロキサン;c)白金含有触媒、例えば、ヒドロシリル化触媒含有白金;d)組成物の反応中に発生する水素ガスの量を減少させるのに有効な量のパラジウム化合物およびe)組成物中20〜90重量%の割合で存在する充填剤。好ましくは、組成物は、約0.6 mL未満の10.0 gの組成物あたりの2時間の水素ガス発生値を示す。好ましくは、組成物から形成される陽型石膏模型は実質的に小窩を含まない。
【0007】
本発明の目的のために、用語「パラジウム化合物」は、パラジウムが無機、有機、または有機金属部分またはそれらの任意の組み合わせと結合する化学実体を意味する。
【0008】
本発明はまた、固化性組成物を用いて印象を調製する工程を包含する、陽型歯科用模型の作製方法であって、組成物が、(i)付加硬化性化合物;(ii)架橋剤;(iii)白金含有触媒;(iv)組成物の反応中に発生する水素ガスの量を減少させるのに有効な量でパラジウム化合物および(v)組成物中20〜90重量%の割合で存在する充填剤を含む、方法に関する。好ましくは、組成物は、組成物10.0 gあたり2時間の水素ガス発生値が約0.6 mL未満であるような量のパラジウムの化合物を含有する。
【0009】
本発明はまた、陽型歯科用模型の作製方法であって、陽型材料を注入する前に、陽型材料に接触する印象表面の少なくとも部分上にパラジウム化合物を塗布する工程を包含する方法に関する。
【0010】
本発明はまた、陽型歯科用模型の作製方法であって、固化性陽型材料を注入する前に、パラジウムの無機、有機、または有機金属化合物を前記陽型材料と混合することによって、印象から漏出する水素ガスを捕捉する工程を包含する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、水素ガスが発生する硬化性組成物の実質的に小窩を含まない陽型を提供する新規の溶液を提供する。好ましい実施態様において、硬化性組成物は歯科陽員小策成型を含み、これは、組成物材料にパラジウム化合物を取り込む工程、印象の表面の少なくとも部分にパラジウム化合物を塗布する工程、該型材料を印象またはその任意の組み合わせに注入する前に、陽型材料にパラジウム化合物を取り込む工程を含む。
【0012】
本発明の好ましい実施態様は:(1)ビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む付加硬化性化合物;(2)多数のSiH結合を含有するオルガノポリシロキサンを含む架橋剤;(3)ヒドロキシル化反応を触媒し得る白金含有触媒;(4)パラジウム化合物を含む歯科用印象材組成物;および(5)組成物中20〜90重量%の割合で存在する充填剤を含む。パラジウム組成物は、ヒドロキシル化反応の副産物として発生する水素のいくつかまたはすべてを捕捉する。
【0013】
パラジウム化合物の量は、付加硬化性組成物から放出される水素ガスを捕捉するのに十分でなければならず、該組成物では、水素ガスが取り込まれ、下記の水素ガス発生値試験においてガスクロマトグラフィー(「GC」)によって決定され得る。好ましくは、10.0 gの材料あたり2時間で放出される水素の量は約0.6 mLであり、より好ましくは約0.4 mLであり、最も好ましくは約0.2 mLである。好ましくは、パラジウム化合物はシリコーン印象材中に約1〜約500 ppmで、より好ましくは約5〜300 ppmで、最も好ましくは素成分としてのパラジウムに基づき全組成物中の約10〜200 ppmの量で存在する。
【0014】
水素捕捉におけるパラジウム化合物の有効性は、実際には、印象から形成される陽型石膏模型を調べることによって決定され得る。陽型は、印象材の押し出しを開始してから、好ましくは2時間未満で、より好ましくは約30分未満で、最も好ましくは5分未満で石膏が印象に注入されたときには、小窩を実質的に有しない。水との混合を開始してからの石膏の模型材料の固化時間または凝固時間は、石膏の製造者およびタイプに依存して変化する。一般に、固化時間は約30分〜1時間である。
【0015】
歯科用印象の作製系、特に、付加硬化性シリコーン印象材の1つ以上のコンポーネントにおいて、パラジウム金属または合金よりもパラジウム化合物を使用する利点は、等量のパラジウム金属または合金の使用と比較して、小窩の数が同等に減少することが観測される陽型を提供するために必要とされるパラジウム化合物の量がより少ないことである。パラジウム化合物は、パラジウム金属または合金と同様に、かなり高価な材料であるため、このことは重要である。多くのパラジウム化合物はまた、シリコーン組成物に可溶であり、そして貯蔵時、パラジウム化合物がシリコーン組成物から分離する可能性を減少させ得る。これに対して、パラジウム金属粉末は、不溶性で非常に密度が高く、処方物中に一様に分散し得ず、そして水素捕捉能に関して不安定な反応特性をもたらし得る。この問題は、充填されていない印象材処方物において深刻となり得る。
【0016】
本明細書中で使用される用語「シリコーン」は、大部分が互い違いのケイ素原子および酸素原子(即ち、ポリシロキサンの化学構造)を有するポリマで、架橋剤化合物および触媒化合物の存在下で凝固反応を行うペンダント状官能基を十分に有するポリマを示す。
【0017】
本明細書中で使用される用語「架橋剤」は、ポリマ鎖の官能基(例えば、式F1のR1およびR2)と同時に反応して、ポリマ鎖を伸長し、ポリマ鎖を横方向に連結するポリマ(例えば、シリコーンエラストマーに特徴的な架橋化されたネットワークを形成するポリマ)を示す。熱可塑性ポリマ(即ち、加熱時に軟化および流動化するポリマ)とは対照的に、架橋ポリマは、架橋化後、さらに流動し得ないことを特徴とする。
【0018】
用語「ヒドロシリル化(hydrosilationあるいはhydrosylation)」は、水素化有機ケイ素化合物を、脂肪属多重結合(例えば、オレフィン結合性またはアセチレン結合性の不飽和)、好ましくはビニル基(-CH=CH2)を含有する化合物に付加することを意味する。
【0019】
本明細書中で使用される「溶解度」は、溶液(即ち、真の溶液またはコロイド状溶液のいずれか)を形成する物質の能力を意味する。真の溶液は、1つ以上の物質(溶媒)中に、分子的またはイオン的なレベルで、1つ以上の物質(溶質)が一様に分散された混合物である。コロイド状の分散は、しばしば、溶液と呼ばれる。コロイド粒子は分子よりも大きいため、厳密には、そのような分散を溶液と呼ぶことは正しくない;しかし、この用語は、特に混合物がほんのわずかに白濁している場合、文献では広く使用されている。本明細書中で使用される「分散能」は、分散(即ち、1つの相が、大量の物質全体にわたって分布する細かく分割された粒子(多くの場合、コロイドのサイズ範囲内の粒子)から成る2相系)を形成する物質の能力を意味し、粒子は分散相または内部相であり、大量の物質は連続相または外部相である。
【0020】
本発明は、シーラント、充填剤、接着剤、被覆剤、印象材、成型材料、印刷プレート、放出ライナー、埋め込み(potting)材料および反射シートの調製に有用な組成物(例えば、シリコーン組成物)を提供する。本発明の好ましいアプリケーションとして、表面の非接着性または低エネルギー特性が必要とされる分野が挙げられる:例えば、感圧性接着剤と使用される印象材、模型作製用材料または放出被覆剤等である。
【0021】
本発明の組成物の最適な成分として、フィラー(例えば、粉末化された金属、シリカ、石英、炭酸カルシウムまたは金属酸化物)、適切な重合開始剤および阻害剤、色素、安定化剤、界面活性剤、修飾剤、ならびに共重合性および非共重合性の共溶媒等が挙げられる。
【0022】
本発明の好ましい歯科用印象材は、およそ0〜90重量パーセントのフィラー、より好ましくはおよそ20〜80重量パーセントのフィラー、最も好ましくはおよそ30〜75重量パーセントのフィラーを含有する。
【0023】
本発明の歯科用印象材組成物は、使用される前に、一般的には、好ましくは2つの部分に前もって混合される。例えば、「A」部は、ビニル基含有のオルガノポリシロキサン、白金触媒およびパラジウム化合物を含有し得る一方、「B」部は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤、および任意にビニル基含有のオルガノポリシロキサンを含有し得る。あるいは、パラジウム化合物は、「A」部ではなく、「B」部に組み入れられ得るか、または「A」部および「B」部の両方に組み入れられ得る。現在のところ、パラジウム化合物は「A」部中にあることが好ましい。使用時に、2つの部分は、それらを一緒に手で混合することによって、2つのペーストを一緒に練り混ぜることによって、または静的もしくは機械的な混合機を使用することによって合わせることができる。
【0024】
実際、印象材は、一般に、静的な混合デバイスにより印象トレイにシリンジ注入され、そして患者の口の中に配置される。印象材の凝固後、トレイは患者の口から取り出される。歯科医が陽型を調製する場合、好ましくは、印象材が患者の口から取り出された直後に、陽型の模型材料が注入され得る。型材料を注入する前に印象を滅菌消毒するのがより好ましい。「直ちに注入(する)」と一般的に言われるが、実際には、これは、陽型の模型材料が約5分未満で印象に注入されることを意味する。このような場合には、一般に、印象材の表面からの水素ガスを消散させるのに十分な時間が得られず、容認できない数の小窩が陽型に存在し得る。より多くの場合、陽型の模型材料は、印象作製後の30分〜2時間のうちに印象に注入される。
【0025】
好ましい実施態様において、シリコーン印象材の2つの部分が混合されたときに起こるヒドロシリル化反応から発生する水素を捕捉するために、硬化性シリコーン組成物にパラジウム化合物が添加される。水素ガスの発生は問題である。なぜなら、印象作製後の工程により、パリスのプラスター(即ち、石膏)、ワックスまたはエポキシ樹脂等の材料で印象を充填することによって陽型が形成されるからである。水素ガスが発生すると、印象材の表面に泡が形成し、その後注入されて固化した石膏において小窩を生じる。あるいは、パラジウム化合物は、模型材料を印象に入れる前に、印象表面の少なくとも一部分に適用され得るか、または陽型の模型材料に組み込まれ得る。
【0026】
本発明の付加硬化性化合物は、一般に、極めて広範な物理特性を有する合成ポリマシリコーン材料である。それらは、低または高粘性の液体、固体樹脂、または加硫ゴムでありえる。それらは、有機化学および無機化学特性の通常では認められない組み合わせを示し、これらの特性は、ケイ素および酸素原子を変更するそれらの独特な分子構造による。適切なシリコーンポリマは当該分野において周知であり、例えば、「シリコーン」、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technoloby、第3版、20、922〜962頁(1982)に記載されている。
【0027】
典型的なポリマシリコーン材料は、式F1において以下に記載のシロキサンポリマである:
【0028】
【化1】

【0029】
これらのシリコーンポリマは、他のシロキサンからの平衡プロセルによって作製され得、典型的に粘度は約0.01 Pa s〜2500 Pa sの範囲にある。シリコーンポリマは、他の化学物質および充填剤と混合することができ、多数のアプリケーションにおいて役立つ極めて広範な製品となる。
【0030】
加硫シリコーンは、一般的な特質として化学反応により比較的低分子量のポリマから架橋したエラストマーへの発生を有し、この反応はこれらの架橋を形成し、同時に鎖の長さを効果的に伸長する。加硫シリコーンの必須成分は、架橋コンポーネント(以後、「架橋剤」または「有機水素ポリシロキサン」)であり、同時に「官能基」またはポリマ鎖の基(例えば、式F1のR1およびR2)と反応してそれらを伸長し、それらを補正して、シリコーンエラストマーの架橋ネットワーク特徴を形成する。通常、架橋剤とポリマの官能基との反応を促進するために触媒剤が含まれる。
【0031】
特に好ましい付加硬化化合物は、(1)多重性ビニル基含有有機ポリシロキサンと(2)1分子あたり多重性のSiH結合を含有する有機ポリシロキサン(即ち、有機水素ポリシロキサン)との反応によって形成されるシリコーンである。この反応は(3)カルステット型白金触媒の存在によって促進される。カルステット型白金触媒については米国特許第3,715,334号、同第3,775,452号および同第3,814,730号にきさいされており、これらは本明細書において参考として援用される。
【0032】
付加硬化性シリコーンの凝固反応は、一般に付加効果性化合物、架橋剤および触媒を共に混合することによって引き起こされる。架橋剤および触媒の量を変えることによって、凝固の速度を調節し得る。凝固の速度は、更に周知の阻害剤および/または抑制剤を取り込むことによって調節してもよい。そのような1つの阻害剤は、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンである。これらの抑制剤は、しばしば触媒と競合的に反応することによって作用し、それによって架橋反応を示す。
【0033】
本発明における用途のための適切な付加硬化性化合物としては、エチレン不飽和化合物が挙げられ、これは、ヒドロシリル化触媒の存在下で架橋剤との架橋反応を受ける。典型的に、架橋反応は触媒反応によって促進され、温度の影響を受け得る(例えば、反応は高温でいくらかより速く促進し得るか、あるいは高温で開始され得る)。好ましいエチレン不飽和化合物としては、モノマ、オリゴマあるいはビニル、アルケニルもしくはシクロアルケニル基等のペンダント状または末端エチレン不飽和基を含むポリマが挙げられ、これらは触媒の存在下で架橋剤と反応する。あるいは、官能基はポリマ鎖に沿って(即ち、骨格に沿って)位置し、ペンダントの位置にはない。これらのエチレン不飽和基のうち、ビニル基はより好ましく、末端のビニル基は最も好ましい。一般に、硬化された組成物の骨格ネットワークまたは構造は、エチレン不飽和であった化合物および架橋剤の両方を含む。それぞれの化合物はより大きいかまたはより小さい比率で使用されるか、あるいは最初の分子量がより大きいかまたはより小さい。更に、エチレン不飽和化合物および架橋剤の組み合わせに依存して、これらの化合物の広範な骨格を利用し、広範な物理特性を有する広範な硬化組成物を達成し得る。
【0034】
本発明において有用な脂肪族性不飽和を含有する付加硬化性化合物は、オレフィンまたはアセチレン不飽和を有する。これらの火棒物はヒドロシリル化の分野において周知であり、米国特許第3,220,972号(Lamoreaux)、および米国特許第3,410,886号(Joy)等の特許に開示されており、それらは本発明において参考として援用される。ケイ素を含有する更に特に有用な不飽和化合物については、米国特許第4,916,169号(Boardmanら)に開示されており、これは本明細書において参考とて援用されている。オルガノポリシロキサンの好ましい分子量は、架橋前の所望の粘度の組成物にしばしば依存する。一般に、分子量が増加すると、対応して架橋していない組成物の粘度が増加する。成型組成物の用途のために、式(F1)の平均値は、好ましくは10と6000との間、より好ましくは50と2000との間、最も好ましくは100と1000との間である。1つを超える分子量の混合物を利用してもよい。
【0035】
式(F1)の基R1およびR2はポリマ鎖の「末端」部分を示し、しばしば官能基、すなわち架橋反応に関与する基の結合のための部位である。式(F1)に記載の1つ以上の部位は非官能性のメチル基を有するが、官能基を含有し得、次いでR1および/またはR2はメチル基または以下に列挙した別の1価のヒドロカルビルもしくは1価のハロゲン化ヒドロカルビル基を含み得る。従って、式(F1)は、単に末端官能基を有する「典型的な」オルガノポリシロキサンポリマを例示するために意図される。2つ以上の官能基の結合部位は所望のとおりに改変され得、現在のところ本発明の実施に本質的に重要ではないと考えられる。2つ以上の官能基は、一般にビニル、アリル、ブテニル、プロペニル、イソプロペニル、およびヘキセニルを含むアルケニル基またはシクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニル基を含む2〜20個の炭素原子を有する不飽和脂肪族基である。好ましい不飽和脂肪族機はビニルである。最も好ましくは、R1およびR2の両方がビニル基であり、式(F1)に記載のように末端位置に位置する。
【0036】
特別の特性が必要とされる場合、他の1価の非官能性ヒドロカルビルまたは1価のハロゲン化ヒドロカルビル基を式(F1)のメチル基に対して置換してもよい。例えば、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ドデシル、オクチル、およびオクタデシル;5〜7員環の炭素原子を有するシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル;6〜18個の炭素原子を有するアリール基、例えば、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル;ベンジル、β-フェニルエチル、およびナフチルメチルを含むアラルキル基;ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、およびドデシル等の0〜18個の炭素原子を有するアルコキシ基;ならびにジブロモフェニル、クロロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピルおよびクロロフェニル等のハロ置換炭化水素基を、式(F1)のメチル基のすべてまたはいくつかの代わりに用いてもよい。
【0037】
本発明のもう1つの付加硬化性化合物は、以下の一般式を有する分枝のオルガノポリシロキサンであり:
【0038】
【化2】

【0039】
ここで、R1は上記で定義される官能基または非官能基であり、更にここで、少なくとも2つであるが好ましくは2分の1を超えないシロキサンのすべてのR1基が官能基であり、mは0、1、2、または3を表し、nは1〜約1000までの平均値を有する数を表す。式(F1.1)に示すように1を超える分岐点を含有する化合物を用いてもよい。
【0040】
本発明においてエチレン不飽和シロキサンポリマとして有用であり、式(F1.1)に記載の官能性を含有する適切な付加硬化性化合物のもう1つのクラスは、MQ樹脂である。これらのポリマはテトラ官能性SiO4/2(Q単位)およびRaRbRcSiO1/2(M単位)を含有し、ここで、Ra、Rb、およびRcはビニル、メチル、フェニル、エチル、ヒドロキシ、または水素である。RaおよびRbはメチルであり、RcはビニルであるMQ樹脂が、本発明のエチレン化合物としての用途に最も適切である。典型的に、これらは処方物におけるエチレン化合物としてだけではなく、他のエチレン化合物、特に、式F1に示されるビニル末端化ポリジメチルシロキサンポリマ、ここで、R1およびR2はビニルとの組み合わせで使用され得る。歯科用印象剤において特定のこれらのポリマの用途については、米国特許第5,403,885号、および国際特許出願WO 93/17654に開示されている。
【0041】
オルガノポリシロキサン化合物の好ましい量は、シリコーン組成物の所望の物理特性(所望の非硬化の粘度、硬化性の硬度等)に依存して変化する。一部は、ポリマコンポーネントの受容可能な分子量が広範な範囲であることおよびポリマに添加され得る多くのタイプのアジュバントのため、この量は広範に変化する。組成物の双重量に基づいて、オルガノポリシロキサン化合物の現在好ましい量は、5%と99%との間、より好ましくは20%と90%との間、最も好ましくは20重量%と80重量%との間である。
【0042】
架橋剤は、少なくとも2つのケイ素-水素結合を含有し、高分子化合物または高分子ではない化合物であり得る。これらの化合物は当該分野において周知であり、例えば、Ashbyの米国特許第3,159,662号;Lamoreauxの同第3,220,972号;およびJoyの同第3,410,886号に開示されている。
【0043】
本発明で使用され得る少なくとも2つのケイ素-結合性水素原子を有する架橋剤のいくつかのクラスは:
(a)以下の実験式を有するオルガノヒドロシラン、
(H)a(R3)bSic (F2)
ここで、それぞれのR3は同じであるかまたは異なり得、有機基を表し、好ましくは1価のヒドロカルビル基、1価のアルコキシヒドロカルビル基および1価のハロゲン化ヒドロカルビル基から成る群より選択され、cは少なくとも1の値を有する整数を示し、aは少なくとも2の値を有する整数を表し、aとbとの合計は2とcの2倍との合計に等しい;
(b)以下の実験式を有するオルガノヒドロシクロポリシロキサン、
HdR3e(SiO)f (F3)
ここで、R3は上記のように定義され、fは3〜18の値を有する整数を表し、dは少なくとも2で好ましくはf未満の値を有する整数を表し、dとeとの合計はfの2倍に等しい;
(c)以下の実験式を有するオルガノヒドロポリシロキサンポリマまたはコポリマ、
(H)g(R3)hSijO(j-1)(F4)
ここで、R3は上記のように定義され、jは2〜10,000の値を有する整数を表し、gは少なくとも2で好ましくはj未満の値を有する整数を表し、gとhとの合計は2とjの2倍との合計に等しい。
【0044】
R3で表される基としては、例えば、1〜18個の炭素原子を有する直鎖および分枝のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ドデシル、オクチル、およびオクタデシル、5〜8員環炭素原子を有するシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシルおよびシクロオクチル、6〜18個の炭素原子を有するアリール、アラルキル、およびアルカリール基、ならびに、例えば、クロロメチル、クロロフェニル、およびジブロモフェニルのハロ置換基が挙げられる。好ましくは、R3はメチルおよびフェニルを含む。より好ましくは、R3はメチルである。R3はまた、アルケニルまたはシクロアルケニル等の2〜20個の炭素原子を有する不飽和脂肪族基、例えば、ビニル、アリルおよびシクロヘキセニルであり得る。R3が脂肪族性不飽和を伴う基である場合、ケイ素-水素結合を含有するケイ素化合物は、それ自体と反応して架橋構造またはネットワークを形成し得る。
【0045】
本発明のおいて有用なケイ素結合性水素を有するもう1つの化合物は、以下の一般式を有する分枝のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり:
【0046】
【化3】

【0047】
ここで、それぞれのR4はR3に対する上記のように定義され、ここで、少なくとも2つであるが好ましくは2分の1を超えないシロキサンのすべてのR4基が水素であり、mは0、1、2、または3を表し、nは1〜約1000までの平均値を有する数を表す。式(F5)に示すように1を超える分岐点を含有する化合物を用いてもよいことが理解される。
【0048】
MQ樹脂も架橋剤として本発明において有用であり、式(F5)に記載の官能性を含有する。これらのポリマは、テトラ官能性SiO4/2(Q単位)およびRdReRfSiO1/2(M単位)(ここで、Rd、Re、およびRfはビニル、メチル、フェニル、エチル、ヒドロキシ、または水素である)を含有する。RdはおよびReはメチルであり、Rfは水素であるMQ樹脂が、本発明のエチレン不飽和化合物の用途に最も適している。典型的に、これらは処方物における架橋剤としてだけではなく、他の架橋剤、特に、式(F4)に示されるオルガノヒドロポリシロキサンコポリマとの組み合わせで使用され得る。
【0049】
架橋剤の量は、シリコーン組成物の所望の程度の架橋を提供するのに十分でなければならない。一部は、付加硬化性化合物および/または架橋剤の受容可能な分子量が広範な範囲であるため、現在この量は、組成物におけるSiH基対官能基(例えば、ビニル)の比について最もよく記載されている。SiH基対官能基(「SiH:F」)の現在好ましい比は1:1と20:1との間、より好ましくは1:1と10:1との間、最も好ましくは1.3:1と4:1との間である。全組成物注の架橋コンポーネントの現在の好ましい量は、0.2重量%と90重量%との間、より好ましくは0.2重量%と20重量%との間、最も好ましくは0.2重量%と10重量%との間である。
【0050】
本発明の使用に適切なヒドロシリル化触媒としては、エチレン不飽和基とケイ素-結合性水素基との間の付加反応を促進するかまたは容易にする化合物が挙げられる。適切な触媒の例としては、クロロ白金酸によって例示される白金または白金化合物触媒、クロロ白金とアルコールとの錯体、白金とオレフィンとの錯体、白金とケトンとの錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体、コロイド白金、コロイド白金とビニルシロキサン等との錯体、パラジウム、パラジウムブラックとトリフェニルホスフィン等との混合物、あるいはロジウムまたはロジウム化合物触媒が挙げられる。放射活性化ヒドロシリル化触媒も本発明の使用に適切である。例えば、(η4-シクロオクタジエン)ジアリール白金錯体(米国特許第4,530,879号、Drahnakに記載されており、本明細書において参考として援用される);(η5-シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体(米国特許第4,510,094号、Drahnakに記載されており、本明細書において参考として援用される);または(η5-シクロペンタジエニル)トリ(σ-脂肪酸)-白金錯体ならびに従来のビニル-シロキサンポリマおよび架橋剤を伴う可視光吸収可能な安定化剤(米国特許第4,916,169号、Boardmanら)を用いてもよい。白金または白金化合物触媒が現在のところ好ましい。あるいは、米国特許第5,145,886号に開示されているPt(II)β-ジケネート錯体または米国特許出願第07/626,904号および同第07/627,009号に記載の光ヒドロシリル化触媒系が本発明の使用に適切である。
【0051】
歯科用印象組成物に対しては、以下に記載の「カルステット」型触媒が現在のところ最も好ましい。カルステット白金触媒については、米国特許第3,715,334号、同第3,775,452号および同第3,814,730号に記載されており、その開示内容は本明細書において参考として援用される。一般に、カルステット触媒を生成するためには、(A)ハロゲン化白金、および(B)以下から選択される不飽和有機ケイ素材料の形成における錯体形成材料:
(a)以下の実験式を有する不飽和シラン、
RaR'bSicXz (F6)
ここで、Rは脂肪族性不飽和を伴わず、1価の炭化水素機から選択され、R’は1価の脂肪族性不飽和炭化水素基から選択され、Xは加水分解性基であり、cは少なくとも1の平均値を有する整数であり、bは2以上の平均値を有する整数であり、aとbとcとの合計は線状または分枝のシランについて2とcの2倍との合計に等しく、aとbとcとの合計は環式シランについてcの2倍に等しい;
(b)以下の実験式の不飽和の線状または分枝のシロキサン、
RdR'eSifO(f-1) (F7)
ここで、RおよびR’は上記のように定義され、fは2と10,000との間の平均値を有する整数であり、eは2以上の平均値を有する整数であり、dとeとの合計は2とfの2倍との合計に等しい;
(c)以下の実験式の不飽和環式シロキサン、
RdR'e(SiO)f (F8)
ここで、RおよびR’は上記で定義される通りであり、eは2以上の平均値を有する整数であり、fは3〜18の平均値を有する整数であり、dとeとの合計は2とfの2倍との合計に等しい。
【0052】
カルステット触媒は、(1)上記の式(F6)、(F7)または(F8)によって定義される不飽和有機水素材料とハロゲン化白金とを接触させて利用可能な無機ハロゲンの濃度を有する混合物を生産する工程、および(2)(1)から得られる混合物を処理して利用可能な無機ハロゲンを取り出す工程、および(3)(2)から白金の1グラム原子あたり約0.1グラム原子のハロゲンの利用可能な無機ハロゲンを有する白金-シロキサン錯体を回収する工程によって作製することができる。好ましくは、錯体は実質的にハロゲンを含まない。本明細書において使用されるように、用語「利用可能な無機ハロゲン」は、「無機塩化物」用ASTM名称D-1821-63を改変することによって検出することができるハロゲンをいう。手順は実質的に記載の通りであるが、アセトンの代わりに氷酢酸とアセトンとの混合物を利用することは除く。白金-シロキサン錯体中の白金のグラム原子を決定するために用いられる手順は原子吸光分光法であった。例えば、R DockyerおよびG. F. Hames, Analyst, 84, 385(1959)の方法。
【0053】
式F6、F7およびF8のRに含まれる基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、2-エチルヘキシル、ドデシル等のアルキル基;シクロヘキシル、シクロヘプチル等のシクロアルキル基;フェニル、ナフチル、トリル、キシリル等のアリールおよびアルカリル基;ベンジル、トリルエチル、フェニルプロピルなどのアラルキル基が挙げられる。式F6、F7およびF8のR’に含まれる基は、例えば、エチニル、2-プロピル等の芳香族性不飽和基;ビニル、アリル、10-ウンデセニル、ならびにシクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル等のシクロアルケニル基である。
【0054】
式(F6)のRに含まれる不飽和シランとしては、例えば、テトラビニルシラン、トリアリルメチルシラン、ジビニルジメチルシラン、トリビニルフェニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジビニルメチルエトキシシラン、ジビニルメチルアセトキシシラン等がある。
【0055】
例えば、以下の式のジシロキサンは式(F7)に含まれる不飽和シロキサン、
RgR'hSiOSiR'h'Rg'(F9)
ここで、R、R’は上記で定義される通りであり、hとh’との合計は少なくとも2の値を有する整数であり;gとhとの合計は3に等しく;g’とh’との合計は3に等しい。例えば、式(F9)のジシロキサンとして、1、1-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、ヘキサビニルジシロキサン、1,1,3-トリビニルトリエチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラビニルジメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン等が含まれる。
【0056】
シクロポリシロキサンも式(F8)の不飽和シロキサンに含まれる。例えば、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラアリル-1,3,5,7-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3-ジビニルオクタメチルシクロペンタシロキサン等が含まれる。
【0057】
好ましくは、上記の白金と式(F7)および(F8)のオルガノシロキサンとの白金-シロキサン錯体は、ハロゲン化白金および少なくとも1つの以下の式(F10)の構造単位を有する式(F7)または(F8)の不飽和の線状、分枝状または環式シロキサンを利用して作製される、
【0058】
【化4】

【0059】
ここで、上記の構造単位の満たされていない価(「Si=」)は、R、R’でおよび酸素基で満たされ得、ここで、RおよびR’は、先に定義される通りである。最も好ましくは、R’はビニル基である。
【0060】
本発明の実施において用いられ得るハロゲン化白金は、例えば、H2PtCl6.nH2O、およびNaHPtCl6.nH2O、KHPtCl6.nH2O、Na2PtCl6.nH2O、K2PtCl6.nH2O等の金属塩である。更に、PtCl4.nH2O、およびPtCl2、Na2PtCl4.nH2O、H2PtCl4.nH2O、NaHPtCl4.nH2O、KHPtCl4.nH2O、K2PtBr4等の白金(II)タイプのハロゲン化物、ならびにAshbyの特許第3,159,601号および同第3,159,662号に教示される脂肪性炭化水素とのハロゲン化白金錯体、例えば、[(CH2=CH2).PtCl2]2;(PtCl2.C3H6)2等を用いてもよい。利用することができる他のハロゲン化白金は、Lamoreauxの特許第3,220,972号によって示され、クロロ白金酸六水和物とオクチルアルコールとの反応生成物等がある。
【0061】
白金錯体触媒の量は、妥当な時間内にオルガノポリシロキサン化合物の所望の程度の架橋を提供するのに十分でなければならない。一部は、付加硬化性化合物の受容可能な分子量が広範な範囲であるため、現在のところ組成物中のPt原子対官能基の比について、この量が最もよく記載されていると考えられる。現在最も好ましいPt原子対官能基の比(「Pt:V」)は、1:2と1:2000との間、より好ましくは1:10と1:1000との間、最も好ましくは1:30と1:500との間である。好ましくは、触媒は、全組成物の百万重量部あたり約5〜約1000重量部(「ppm」)の白金、より好ましくは全組成物の約20〜500ppmの量で存在する。
【0062】
パラジウム化合物は、水素スカベンジャーとして組成物中に取り込まれる。適切なパラジウム化合物には、パラジウムの無機、有機、および有機金属化合物、即ち、パラジウムの任意の化合物が含まれ、ここで、パラジウムはハロゲン、酸素、窒素、リン、ヒ素、ケイ素、炭素、またはこれらの元素の任意の組み合わせ、あるいはパラジウムが金属と上記の元素のうちの1つとの両方に結合する化合物に直接結合する。パラジウム化合物の組み合わせを利用してもよい。これには、パラジウム金属または金属粉末、あるいはパラジウムが他の金属にのみ結合する化合物、例えば、パラジウム-銀またはパラジウム-金合金が含まれる。
【0063】
適切なパラジウム化合物には、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム酸(II)アンモニウム、およびヘキサクロロパラジウム酸(II)アンモニウム;酢酸パラジウム(II)、プロピオン酸パラジウム(II)、酪酸パラジウム(II)およびトリフルオロ酢酸パラジウム(II)等のパラジウムと有機酸との錯体;アセチルアセトンパラジウム(II)等のパラジウムとβ-ジケトンとの錯体、トランス-ジクロロアミンパラジウム(II)等のハロゲン化パラジウムとアミンとの錯体;亜硝酸ジアミンパラジウム(II)等のパラジウムとアミンとの錯体;ビス[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)およびテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)等のパラジウムとホスフィンとの錯体;ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)および塩化アリルパラジウム二量体等のハロゲン化パラジウムとオレフィンとの錯体;トリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等のパラジウムとオレフィンとの錯体;ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウムと窒素化合物との錯体;トランス-ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウムとホスフィンとの錯体が挙げられる。更なる適切なパラジウム化合物については、例えば、F. Albert CottonおよびGeoffrey Wilkinson、Advanced Inorganic Ghemistry、第5版、John Wiley & Sons、New York, NY (1988)、917〜937頁に記載されている。
【0064】
好ましいパラジウム化合物としては、塩化パラジウム(II)および臭化パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウム、酢酸パラジウム(II)等のパラジウムと有機酸との錯体、アセチルアセトンパラジウム(II)等のパラジウムとβ-ジケトンとの錯体、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウムとオレフィンとの錯体、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウムと窒素化合物との錯体、ならびにトリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等のパラジウムとオレフィンとの錯体が挙げられる。
【0065】
最も好ましいパラジウム化合物としては、塩化パラジウム(II)および臭化パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウム、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウムとオレフィンとの錯体、ならびにトリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等のパラジウムとオレフィンとの錯体が挙げられる。
【0066】
組成物中のパラジウム化合物の量は、ヒドロシリル化反応から発生する水素の全部またはほとんどを吸収するのに十分であるべきである。好ましくは、パラジウム化合物は、素成分としてのパラジウムに基づいて、全組成物の約1〜約500 ppm、より好ましくは約5〜200 ppm、最も好ましくは約10〜100 ppmの量で存在する。
【0067】
パラジウム化合物が印象剤の表面に適用される本発明の実施態様では、溶媒などの懸濁材料を伴うかまたは伴わずに(即ち、乾燥)印象表面にパラジウム化合物を適用してもよい。パラジウム化合物を懸濁材料を伴わずに適用する場合、好ましくは使用されるパラジウム化合物の量は、印象表面積の少なくとも約0.0001 g/cm2、より好ましくは素成分としてのパラジウムに基づいて約0.0001と0.10 g/ cm2との間である。パラジウム化合物はまた、炭素、アルミナ、または炭酸カルシウム等の基質上で吸収され得る。パラジウム化合物を懸濁材料に適用する場合、懸濁物ないのパラジウム化合物の量は、素成分としてのパラジウムに基づいて、好ましくは懸濁物の少なくとも約0.1重量%、より好ましくは0.1と10.0重量%との間である。
【0068】
パラジウム混合物を用方材料(例えば、石膏)と混合する本発明の実施態様において、パラジウム化合物の量は、素成分としてのパラジウムに基づき石膏粉末の好ましくは少なくとも約0.05%、より好ましくは約0.1と1.0重量%との間である。パラジウム化合物は、石膏との混合時には乾燥または湿潤(即ち、懸濁材料との組み合わせて)のいずれでもよい。
水素ガス発生値
本発明の付加高価性組成物から発生する水素ガスの量を環境温度および圧力で測定した。報告された容積は標準温度および圧力(「STP」、即ち、25℃および760 mm Hg)下にあったとみなし、STPからの偏差についての補正は行わなかった。水素標準物を試験しようとする範囲にわたって調製した。第1の標準は、0.25 mLの水素ガスを856.5 mLのガスサンプリングバルブに注入することによって調製した。バルブを振盪し、0.5 mLの2つの注入物をそれぞれ2分以内に作成した。0.25、0.50、1.00および1.50 mLの水素ガスを用いて全部で4つの標準物を調製し、標準曲線を算出した。すべてのサンプルをGC(熱伝導性検出器付きHewlet Packardモデル5890、シリーズIIおよびシリーズII積分器)により分析した。GCは、タイプ5A分子篩(60/80メッシュサイズ;Applied Science, Deerfield, IL)でパックした1.8メートル長および3.2ミリメートル直径のステンレスカラムを備えた。注入口の温度を120℃、カラムオーブンおよびプログラム等温を45℃、ならびに検出器を200℃に設定した。窒素を単体ガスとしてサンプル側で1分間あたり20 mLの流速で、対照側で1分間あたり30 mLの流速で使用した。
【0069】
それぞれの作動の印象材料(10.0 g)を、静的ミキサーを介してグラシンウェイティング紙上に押し出した。サンプルを秤量して極めて精密に10分の1グラムを取り、直ちにコック栓およびゴム性の隔壁を備えたメモリ付きの1030 mL丸底フラスコ内に配置した。特定の時間に、2つの0.5 mLのサンプルのガスを0.5 mL Precisionガスタイトシリンジ(Precision Sampling Corp., Baton Rouge, LA)を用いてフラスコから取りだし、それぞれ2分以内にGCのサンプル側に注入した。
【0070】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提供されるものであり、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。他に示さない限り、すべての部および百分率は重量によるものである。
予備の実施例
カルステット触媒の調製
三口フラスコに、機械的攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素パージ装置を取り付けて水浴中に設置した。フラスコに3,000部のエタノールおよび1,200部の1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサンを入れ、5分間窒素パージを行った。600部のヘキサクロロ白金酸を溶液に添加し、酸が実質的に溶解するまで(約5分間)混合物を攪拌した。次に1,800部の重炭酸ナトリウムを5分間にわたって添加する。水浴を60℃まで加熱し、次に2.5時間攪拌した。冷却後、溶液を濾過し、150部のエタノールで洗浄して、0.3Pa sの粘度、約10,000g/molの分子量を有するジメチルビニルシロキシ末端化ポリジメチルシロキサン6,000部を入れたフラスコに移した。フラスコをロータリーエバポレ−ターに設置し、真空度が0.5〜1.0トルに達するまで45℃でストリッピングして、約2.3−3.0%の白金濃度を有するカルステット型触媒溶液を生成した。
【実施例】
【0071】
実施例1
表1に列挙した成分を組み合わせることによって、ストックの「触媒」組成物およびストックの「基材」組成物を調整した。
【0072】
【表1】

【0073】
1 約2Pa sの粘度を有する(ビニルジメチルシロキシ)末端化ポリジメチルシロキサン;Witco Corp, OSi Specialties Group, Danbury, CT 由来のY-7942。
2 予備の実施例のカルステット型白金触媒。
3 約50〜70 mPa sの粘度および約0.2%の水素化物を有するオルガノヒドロポリシロキサン。
4 Witco Corp, OSi Specialties Group, Danbury, CT 由来の界面活性剤。
5 Degussa Corp., Dublin, OH由来のSipernat D 13フィラー。
6 Unimen Specialty Minerals, Cairo, IL由来のImsil A-25微晶シリカ。
7 United Chemical Technology, Inc., Bristol, PA由来の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン。
【0074】
【化5】

【0075】

8 Ferro Corp., South Plainfield, NJ由来の青色シリコーン色素ペーストSV 1232。
【0076】
表2の作動番号C-5〜C-5および1-15について、2.10 gのSilwet 1-77界面活性剤(最初は1.05 gそして1.05 gで濯ぎ)に表2に示すパラジウム添加物の量を分散させることによって、パラジウム添加物を含有する触媒を調製した。300部の触媒ペースト中の示された添加物の量および触媒ペースト中のパラジウムのppmは、以下の表2に列挙されている。C-1を除くそれぞれの作動について、部分的に溶解した懸濁液を超音波浴に60〜120分間配置し、300グラムのストック触媒組成物を添加して、Rossダブルプラネタリー混合機において20分間混合した。表2のすべての添加物は、Strem Chemicals, Inc., Newburyport, MAより入手した。表2の作動番号C-1はパラジウム添加物を含有しなかった。
【0077】
それぞれの作動について、およそ等容積の触媒および基材組成物を挿入物でシールした二重樽型混合カートリッジの独立チャンバに移した。カートリッジを携帯型分散装置に挿入し、Kenics静的混合チップをカートリッジ上に配置し、触媒および基材を混合チップを介して共押出しによって混合した。Kenics静的混合機は、内部に左右交互のピッチの短い螺旋状の素成分の系列が固定されている円筒状のパイプから成る。中央の素成分の螺旋状の設計は、横向きの流れをパイプの軸に標準的な平面において上昇させる。結果として、2つの組成物の同径方向の混合が達成される。Kenics静的混合機の流体力学の完全な説明については、Stanley MiddlemanによるFundamentals of Polymer Processingの327および328頁に見ることができる。シリコーン化合物は2つの組成物の混合時に反応(即ち、架橋)を開始する。
【0078】
2時間で発生した水素ガスの量を、上記の水素ガス発生値試験に従って測定した。静的混合機を介して印象材サンプルの押出し開始2時間後、2つのガスの0.5 mLサンプルを0.5 mL Precisionガスタイトシリンジ(Precision Sampling Corp., Baton Rouge. LA)を用いて取りだし、それぞれ2分以内にGCのサンプル側に注入した。作動番号C-2〜15について、2つの印象材サンプル注入物のピーク面積の平均を求め、2時間で10.0 gの印象材あたりのH2のmLで報告した。これらは以下の表2に記載されている。作動番号C-1について、表2に報告された値は、5つの作動(10回の注入)の平均である。
【0079】
陽型の小窩の数を決定するために、それぞれの作動の材料を静的混合機を介して2つのステンレス成型に押出した。該成型はそれぞれ3つの円筒状の空隙を含み、それらは直径25 mmおよび深さ5mmであった。10 mm×10 mm平方を成型の基材にエッチングし、後に注入されるダイス型石材内の小窩を評価するための所定の領域を提供した。空隙に印象材を充填した後、それぞれの成型をステンレスの棒をかぶせ、締め付けて閉じ、37℃の浴内に配置した。浴内で3分後、成型を取り出し、開いて、印象剤のディスクを取り出した。3MTM Tray Adhesive(3M由来)をそれぞれの硬化した印象材に適用し、6枚のディスクをアルミニウム製の皿の底に接着した。水浴から取り出して直ちに(<5分)、30分後、または2時間後のいずれかに、プラスタースラリーを150 gの石膏(Jade StoneTM Green, WhipMix Corp)から調製し、33 mLの水を皿に注入してディスクの上部より約10 mmの深さまで注いだ。皿を振動プレート上に2分間配置し、プラスターを60分間硬化させた。次にプラスターを皿から取り出し、6つの円筒状の窪みを小窩について評価した。水浴からシリコーンディスクから取り出して5分未満、30分後、または2時間後に独立して注入したプラスターから得られた陽型の小窩の数を、裸眼でおよび/または拡大鏡で評価した。小窩が裸眼で容易に観察される場合、陽型を不良(「−」)と評価した。裸眼で小窩が観察されない場合は、陽型を拡大鏡を用いて調べ,陽型あたり平均で>5の小窩であれば良好(「+」)と評価し、陽型あたり<5の小窩であれば極めて良好(「++」)と評価した。
【0080】
【表2】

【0081】
1 ミクロン以下のサイズのパラジウム粉末、Stem製品93-4632。
2 アセチルアセトンパラジウム(II)、Stem製品46-1800。
3 ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、Stem製品46-0650。
4 トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、Stem製品46-3000。
5 ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、Stem製品46-0370。
6 臭化パラジウム(II)、Stem製品46-1836。
7 酢酸パラジウム(II)、Stem製品46-1780。
8 塩化パラジウム(II)、Stem製品46-1850。
* 評価せず
表2のデータは、シリコーン印象材組成物中の水素ガス吸収におけるパラジウム化合物の効果を示す。印象材に様々なタイプおよび量のパラジウム化合物を組み込んだところ,2時間で印象材から発生する水素の量を最小にするのに有効であった。パラジウム化合物の有効性は、印象材の硬化後に様々な時間で調製した陽型の小窩の数の減少において同様に明らかであった。作動番号1〜15は、パラジウムを含まない作動番号C-1および細かく分割されたパラジウム粉末を含む作動番号C-2〜C-5と比較して、シリコーン歯科用組成物にパラジウム化合物を用いることによって得られる結果の方ががより優れていることを示す。結果はまた、触媒ペースト中20 ppmと低いパラジウムレベルでパラジウム化合物が有効であり(作動番号5および13)、一方、80〜120 ppmのパラジウムレベルの細かく分割されたパラジウム金属粉末が有効であるのに必要であった(作動番号C-4およびC-5)ことを示す。
【0082】
表2に示す2時間の期間に加えて特定の時間に発生した水素ガスの量を、上記の水素ガス発生値試験に従って測定した。これらの測定値を表3に示す。表3で特定した時間間隔で、0.5 mL Precisionガスタイトシリンジ(Precision Sampling Corp., Baton Rouge, LA)を用いて、2つのガスの0.5 mLサンプルをフラスコから取り出し,それぞれ2分以内にGCのサンプル側に注入した。作動番号C-2〜15について、2つの印象材サンプル注入物のピーク面積の平均を求め、特定の時間で10.0 gの印象材あたりのH2のmLで報告した。作動番号C-1について、表3に報告された値は、5つの作動(10回の注入)の平均である。
【0083】
【表3】

【0084】
表3のデータは、特定の時間間隔でシリコーン印象剤組成物から発生する水素ガスを吸収するのに様々な濃度での多くのパラジウム化合物の有効性(作動番号1〜15)を示す。作動番号5〜10および13〜15の組成物は、特に低い量の水素ガスの発生を示した。
実施例2
表2中のC-1の組成物を用いて、「タイポドント」模型(Columbia Dentoform Corp.より入手)の印象を作製した。静的混合機から材料を印象用トレイ中に押し出し、タイポドント模型にかぶせた。約5分後、タイポドント模型から印象を取り外し、直ぐに、印象の全表面を湿らすに十分な量の0.1%塩化パラジウム(II)エタノール懸濁液を印象の表面に塗布した。表面を乾燥させ、懸濁液を塗布した約10分後に23部の水と100部の石膏とを組み合わせて作製したプラスタースラリーを印象中に注入し、約60分間凝固させた。次いで、陽型を印象から取り外し、視覚的に小窩を検査した。陽型には小窩が認められなかった。
【0085】
PdCl2の代わりにPdCl2CODを用いる以外は、上記の手順を繰り返した。得られた陽型には小窩が認められなかった。
【0086】
コントロールとして、陽型を調製する前に印象表面にパラジウム化合物懸濁液を塗布しない以外は、上記の手順を繰り返した。硬化した陽型には多数の小窩が認められた。
実施例3
コントロールとして、実施例2のコントロールについて記載したように、陽型を調製する前に印象表面にパラジウム化合物を塗布しないで印象を調製した。0.062部の塩化パラジウム(II)と23部の水とを超音波で分散させた懸濁液と、100部の石膏を組み合わせることによって、プラスタースラリーを調製した。スラリーを印象中に注入し、約60分間硬化させ、取り出した。陽型を視覚的に検査したところ、多数の小窩が認められた。
【0087】
PdCl2の代わりにPdCl2CODを用いる以外は、上記の手順を繰り返した。得られた陽型には小窩が認められなかった。
【0088】
以下に、本発明に係る実施の態様に関して列挙する。
【0089】
1. 以下を含む組成物:
a)付加硬化性化合物;
b)架橋剤;
c)白金含有触媒;
d)前記組成物の反応中に発生する水素ガスの量を減少させるのに有効な量のパラジウムの無機、有機、または有機金属化合物。
【0090】
2. 前記パラジウムの化合物が、前記組成物10.0gあたり2時間の水素ガス発生値が約0.6mL未満であるような量で存在する、上記1に記載の組成物。
【0091】
3. 前記パラジウムの化合物の量が、実質的に小窩を含まない陽型の石膏模型を提供するに十分である、上記1に記載の組成物。
【0092】
4. 前記パラジウムの化合物が、ハロゲン化パラジウム、パラジウムと有機酸との錯体、パラジウムとβ−ジケトンとの錯体、ハロゲン化パラジウムとアミンとの錯体、パラジウムとホスフィンとの錯体、ハロゲン化パラジウムと窒素化合物との錯体、およびパラジウムとオレフィンとの錯体から成る群より選択される、上記1に記載の組成物。
【0093】
5. 前記付加硬化性化合物が、ビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む、上記1に記載の組成物。
【0094】
6. 前記架橋剤が、多数のSiH結合を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む、上記1に記載の組成物。
【0095】
7. 前記触媒がカルステット白金触媒を含む、上記1に記載の組成物。
【0096】
8. 前記パラジウムの化合物が、アセチルアセトンパラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、および塩化パラジウム(II)から成る群より選択される、上記1に記載の組成物。
【0097】
9. 前記パラジウムの化合物の量が、素成分としてのパラジウムに基づいて、全組成物の約1〜約500ppmである、上記1に記載の組成物。
【0098】
10. 前記組成物が歯科用印象材である、上記1に記載の組成物。
【0099】
11. 前記組成物中に約20〜80重量%で存在するフィラーを更に含む、上記1に記載の組成物。
【0100】
12. 固化性組成物を用いて印象を調製する工程を包含する、陽型歯科用模型の作製方法であって、前記組成物が、(i)付加硬化性化合物;(ii)架橋剤;(iii)白金含有触媒;および(iv)前記組成物の反応中に発生する水素ガスの量を減少させるのに有効な量のパラジウムの無機、有機、または有機金属化合物を含む、方法。
【0101】
13. 前記パラジウムの化合物が、前記組成物10.0gあたり2時間の水素ガス発生値が約0.6mL未満であるような量で存在する、上記12に記載の方法。
【0102】
14. 前記印象から陽型を調製する工程を更に包含する、上記12に記載の方法。
【0103】
15. 前記パラジウムの化合物の量が、実質的に小窩を含まない陽型の石膏模型を提供するに十分である、上記12に記載の方法。
【0104】
16. 前記パラジウムの化合物が、ハロゲン化パラジウム、パラジウムと有機酸との錯体、パラジウムとβ−ジケトンとの錯体、ハロゲン化パラジウムとアミンとの錯体、ハロゲン化パラジウムと窒素化合物との錯体、およびパラジウムとオレフィンとの錯体から成る群より選択される、上記12に記載の方法。
【0105】
17. 前記付加硬化性化合物が、ビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む、上記12に記載の方法。
【0106】
18. 前記架橋剤が、多数のSiH結合を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む、上記12に記載の方法。
【0107】
19. 前記触媒がカルステット白金触媒を含む、上記12に記載の方法。
【0108】
20. 前記パラジウムの化合物が、アセチルアセトンパラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、および塩化パラジウム(II)から成る群より選択される、上記12に記載の方法。
【0109】
21. 前記パラジウムの化合物の量が、素成分としてのパラジウムに基づいて、全組成物の約1〜約500ppmである、上記12に記載の方法。
【0110】
22. 前記組成物中に約20〜90重量%で存在するフィラーを更に含む、上記12に記載の方法。
【0111】
23. 陽型歯科用模型の作製方法であって、陽型材料を注入する前に、前記陽型材料に接触する印象表面の少なくとも部分上にパラジウムの無機、有機、または有機金属化合物を塗布する工程を包含し、前記パラジウムの化合物は前記陽型が実質的に小窩を含まないような量で存在する、方法。
【0112】
24. 前記陽型材料が石膏を含む、上記23に記載の方法。
【0113】
25. 陽型歯科用模型の作製方法であって、固化性陽型材料を注入する前に、パラジウムの無機、有機、または有機金属化合物を前記陽型材料と混合することによって、印象から漏出する水素ガスを捕捉する工程を包含し、前記パラジウムの化合物は前記陽型が実質的に小窩を含まないような量で存在する、方法。
【0114】
26. 前記陽型材料が石膏を含む、上記25に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む口内で架橋されるように適用される印象用硬化性組成物:
a)脂肪族性不飽和を含む付加硬化性化合物;
b)少なくとも2つのケイ素-水素結合を有する架橋剤;
c)白金含有触媒;および
d)前記組成物の反応中に発生する水素ガスの量を捕捉により減少させるのに有効な量のパラジウムの無機化合物、有機化合物、または有機金属化合物
e)組成物中20〜90重量%の割合で存在する充填剤。
【請求項2】
(a)請求項1に記載の印象用硬化性組成物を用いて印象を調製する工程、および(b)その印象から陽型歯科用模型を調整する工程を含む、陽歯科用模型の作製方法。
【請求項3】
請求項2に記載の陽型歯科用模型の作製方法であって、前記パラジウムの化合物は前記陽型が小窩を含まないような量で存在する、方法。

【公開番号】特開2007−191722(P2007−191722A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85304(P2007−85304)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【分割の表示】特願平9−536148の分割
【原出願日】平成8年8月7日(1996.8.7)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】