説明

厚さをコントロールするためのデバイス及び方法

長く延ばされた金属要素を、溶融金属の槽(2)の中を通して連続的に移送することにより形成された、金属要素(1)の上の金属コーティングの厚さをコントロールするためのデバイスであって、少なくとも一対の電磁的なワイパー部材(7a,7b,8a,8b)を有し、それに対応して、金属要素から過剰な溶融金属を除去する際に前記電磁的なワイパー部材を助けるために、移送経路の方向に対して、金属要素を横切る方向の線に実質的に従って、金属要素(1)にターゲット領域を備えたガスのジェットを吹き付けるようにデザインされた第二のワイパー部材(11)を有している(図1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長く延ばされた金属要素を溶融金属の槽の中を通して連続的に移送することにより形成された、金属要素の上の金属コーティングの厚さをコントロールするためのデバイスに係る。金属要素は、槽から、予め定められた移送経路に沿って移送方向に移送されるように構成され、ここで、前記デバイスは、少なくとも一対の電磁的なワイパー部材を有し、この電磁的なワイパー部材は、金属要素の上の溶融金属に移動磁場を作用させることにより金属要素から過剰な溶融金属を除去するために、前記経路に沿って移送される金属要素のそれぞれの側に、前記移送経路に沿って配置されるようにデザインされている。また、本発明は、そのような厚さをコントロールするための方法にも係る。
【背景技術】
【0002】
そのようなデバイス及びそのような方法は、金属ストリップの連続メッキにおいて、特に優位性がある。本発明は、以下において、そのようなアプリケーションを参照しながら説明される。しかしながら、留意すべきことは、本発明が、例えばワイヤ、ロッド、チューブまたは他の長く延ばされた要素のような、他の金属の対象物のメッキにも適用可能であることである。本発明はまた、例えばスズまたはアルミニウム、またはこれらのまたは他の金属の混合物などの、亜鉛以外の他のコーティングによる、長く延ばされた金属要素のコーティングにも適用可能である。
【0003】
金属ストリップ(例えば鋼のストリップ)の連続メッキの間、鋼のストリップは、溶融金属(通常は亜鉛)を収容する槽の中を連続的に通過する。槽の中で、ストリップは、通常、浸漬ローラの下を通過し、その後、安定化及び修正ローラを通って、上方に移動する。ストリップは、槽から出て、例えば導入部において規定された種類のデバイスのような、ワイパー・デバイスの中を通って移送される。このコンテクストにおいて、移動磁場が、コーティングの厚さをコントロールするために、そして、金属ストリップから過剰な亜鉛を除去するために、使用される。過剰な亜鉛は槽に戻され、かくして、再使用が可能になる。
【0004】
ストリップは、その後、コーティングが冷却され凝固されるまで、支持無しで移送される。コーティングされたストリップは、次に、ストリップを個別のストリップ要素に切断するための装置、または、ストリップをローラに巻き取るための装置へ、アッパー・ローラを介して導かれまたは送られる。通常、ストリップは、浸漬ローラから出て、修正及び安定化ローラ及びワイパー・デバイスを通ってアッパー・ローラへ、縦方向に移動する。
【0005】
鋼のストリップがメッキされるとき、均一で且つ薄い厚さコーティングが求められる。過剰な溶融金属が除去され、コーティングが凝固された後に、コーティングの厚さをチェックする一つの共通の方法は、ストリップが、例えばアッパー・ローラを通過した後に、コーティングの量を測定することである。この読みは、ワイパー・デバイスをコントロールするために、従って、コーティングの厚さを調整するために使用される。
【0006】
前記デバイスのワイパー部材を介して金属要素に加えられるワイピング力の強さは、金属要素の移送経路に沿う所与の速度で実現されることが可能なコーティングの薄さに対して、決定的である。これは、例えば、10μmのオーダーのような、非常に薄いコーティングが望まれるときに、金属要素が、効率の良いストリップ製造のために望ましい速度よりも低い速度で走行しなければならないことを意味している。前記電磁的なワイピング部材の最大のワイピング力は、前記ワイパー部材に備えられた鉄心で飽和が生じ、それが磁束を制限し、それ故に力を制限することによって制限される。
【0007】
更に、移動磁場が、金属要素上の液体金属コーティングを横切る方向の電流を発生させ、そして、この電流が金属要素のサイド・エッジの近傍で回り、それによって、そのポイントでのワイピング力が低下し、それ故に、エッジでのコーティングがより厚くなる。
【0008】
かくして、最初に規定された種類のデバイスは、高い製造効率を維持しながら、金属要素の幅全体に渡って均一な厚さを備えた薄い金属コーティングを実現することに関して、一定の限界がある。
【0009】
また、同じ目的を備えた他のタイプのデバイスが知られていることも、ここで、指摘することができる。即ち、金属要素から過剰な溶融金属を除去するために、金属要素に移動磁場を作用させるの代わりに、金属要素を横切る方向の線に実質的に従って、ターゲット領域を備えたガスのジェットを噴射するデバイスである。このタイプのデバイスの一つの弱点は、ガスのジェットの可能な速度が音速により制限されることであって、それによって、金属要素は、金属のコーティングの厚さを所望のレベルに減少させるために、通常、低速で走行しなければならない。
【0010】
金属要素から過剰な溶融金属を除去するために、そのようないわゆるガス・ナイフを使用するときの他の弱点は、このタイプのワイピングは、通常、ガスジェットの中で生ずる乱流のために、金属要素の中央部分でより厚いコーティングをもたらし、金属要素のサイド・エッジでより薄いコーティングをもたらすことである。もし、それに加えて、前記ガスジェットが高過ぎる圧力で噴射された場合には、コーティング中に液滴(いわゆるスプラッシング)が発生して、コーティングの質を損なうことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、最初に規定された種類のデバイス及び方法を提供することにあり、この方法は、先行技術のそのようなデバイス及び方法の上述の弱点を、少なくとも部分的に、取り除くものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、デバイスに関して、本発明に基づいて、最初に記載された種類のデバイスにおいて、それぞれの電磁的なワイパー部材に対応して第二のワイパー部材を備えたデバイスにより、実現される。これらの第二のワイパー部材は、金属要素から過剰な溶融金属を除去する際、電磁的なワイパー部材を助けるために、移送経路の方向に対して、金属要素を横切る方向の線に実質的に従って、ターゲット領域を備えたガスのジェットを金属要素に吹き付けるようにデザインされている。
【0013】
前記電磁的なワイパー部材及びガスジェットに基づくワイパー部材は、互いに完全に独立に運転され、それによって、もし、所望の最大の可能な力が、電磁的なワイパー部材を介して加えられる場合に、それと同時に、第二のワイパー部材のガスジェットを介して最大の可能な力が加えられることも可能である。このようにして、電磁的なワイパー部材またはガスジェットに基づくワイパー部材の内のいずれか一方のみを有しているデバイスに対して、二倍のワイピング力が、そのようなデバイスにより実現されることが可能である。これは、金属コーティングの所与の所望の厚さに対して、前記移送経路に沿って金属要素が移送される速度を増大させること、従って、例えばストリップなどのような製品(前記金属要素に基づき製造される)の製造の速度を増大させることが、可能になることを意味している。
【0014】
二つの上述のワイピング方法を結合することにより、他の利点もまた、実現される。一つのそのような利点は、以下の事実からもたらされる。即ち、ガスジェットが金属コーティングに対する冷却効果を有し、これに対して、移動磁場は、それに対して加熱効果を有している。これは、これらの二つの効果が、ある程度互いに打ち消し合うことを意味し、それによって、ワイパー部材のコーティングの冷却速度に対する効果が減少し、それは、コーティングの改善された質をもたらす。
【0015】
更に、前記第二のワイパー部材は、ガスジェットを介して、金属要素のサイド・エッジの近くに、より高いワイピング力を作用させる傾向にあり、これに対して、電磁的なワイパー部材は、そこに、金属要素の中央部分と比べてより低いワイピング力を作用させ、それによってこれらの二つの効果が一緒になって、金属要素の横断方向にコーティングの均一な厚さをもたらす。更に、移動磁場は、ガスジェットにより引き起こされる上述のいわゆるスプラッシングを抑制する、それは、磁場が溶融金属コーティングの際のそのような動きに対する静止効果を有しているからである。
【0016】
本発明の一つの実施形態によれば、それぞれの電磁的なワイパー部材及びそれと協同する第二のワイパー部材は、金属要素の実質的に同じ領域内で前記金属要素にワイピング力を作用させるように構成される。このようにして、これらの二つのタイプのワイパー部材を使用する上述の組み合わせによる利点が、最大限に利用されることが可能になる。かくして、前記第二のワイパー部材が、それと協同する電磁的なワイパー部材によるワイピング力が作用する位置と、前記移送経路に沿って実質的に同じ位置に当たる位置で、または、移送経路の方向で実質的に前記位置の直ぐ下流で、金属要素に前記ガスジェットを噴射するように構成されることは、有利である。もし、二つのワイパー部材のワイピング力を、原則として同じポイントで最大となるように作用させることが可能であるならば、多くの場合において、それらを組み合わせる上述の利点の最大の効果が実現されるであろう。
【0017】
このコンテクストにおいて、前記第二のワイパー部材が、前記協同する電磁的なワイパー部材から生ずるワイピング力がその最大となる位置から、前記移送経路に沿って10cm以下好ましくは5cm以下の距離にあるポイントで、金属要素に前記ガスジェットを噴射するように構成されることが有利であることが判明した。先に述べたように、もし、前記第二のワイパー部材が、それと協同する電磁的なワイパー部材が最大のワイピング力を作用させるように構成されるポイントと、前記移送経路に沿って実質的に同じ位置に当たるポイントで、金属要素に前記ガスジェットを噴射するように構成されていれば、特に有利である。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、第二のワイパー部材は、金属要素に空気のジェットを噴射するようにデザインされ、これは、ガスの前記ジェットのコスト効率の良い実現を意味している。
【0019】
本発明の他の実施形態によれば、それぞれの第二のワイパー要素は、金属要素に窒素ガスのジェットを噴射するようにデザインされ、これは、もし、付着された金属コーティングにおける材料の酸化を、最大限、避けなければならない場合に有利である。
【0020】
本発明の他の実施形態によれば、各電磁的なワイパー部材は、マグネチック・コアから構成されるワイパー・ポールを有している。その場合には、本発明の更なる実施形態によれば、第二のワイパー部材は、前記マグネチック・コアの中に配置されたガス・ノズルを有していても良く、これは、ガスジェットと移動磁場に由来するワイピング力を、金属要素上の実質的に同じポイントに作用させることを実現することを可能にする。
【0021】
本発明の他の実施形態によれば、前記マグネチック・コアは、その部分で、前記ノズルを形成するようにデザインされる。本発明の更に他の実施形態によれば、前記マグネチック・コアは、前記ノズルを構成する別個の部分が収容されるインナー・キャビティを有している。これらの二つの実施形態のどちらが好ましいかは、本発明に基づくデバイスの用途に依存する。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、前記デバイスは、予め定められた移送経路に対する金属要素の位置を安定化させるために、金属要素のための移送経路のそれぞれの側に一つの安定化部材を有する少なくとも一対の電磁的な安定化部材を有し、各安定化部材は、安定化ポールを有している。前記金属要素が、先に言及された金属ストリップであるとき、このストリップの幾何学的形状、ストリップが支持無しで走行しなければならない長さ、その速度、及びワイパー部材からの影響は、金属ストリップをその移送方向に対して実質的に垂直な方向に移動させまたは振動させることになる。ストリップの前記振動は、前記電磁的な安定化部材により大幅に減少されることが可能であり、かくして、コーティングされたストリップの改善された質が実現される。
【0023】
本発明の他の実施形態によれば、前記移送経路の同じ側の、それぞれの電磁的なワイパー部材及び安定化部材は、ワイパー・ポールと安定化ポールが一致するように配置される。この結果、安定化部材からの安定化磁力が、電磁的なワイパー部材からの擾乱力と同じ領域に作用することになる。安定化の力が、ワイパー部材からのストリップ上での外乱と同じ領域に作用するので、金属要素の曲げ及び振動の減少が実現される。安定化部材と電磁的なワイパー部材の相対的配置の他の利点は、前記デバイスがコンパクトになることにある。ワイパー部材及び安定化部材は、そのとき、好ましくは、共通のマグネチック・コアを有する。
【0024】
本発明はまた、長く延ばされた金属要素の上の金属コーティングの厚さをコントロールするための方法にも係り、これによれば、コーティングは、溶融金属の槽の中を通して金属要素を連続的に移送することにより付着され、この方法は、以下の工程を有している:
− 予め定められた経路に沿う移送方向に、金属要素を移送し;
− 未だ凝固していない金属コーティングを備えた金属要素についての移送経路の方向に対して、金属要素を横切る方向の線に実質的に従って、未だ凝固していない金属コーティングを有する金属要素に、移動磁場を及びターゲット領域を備えたガスのジェットを作用させることにより、前記金属要素から過剰な溶融金属を除去する。
【0025】
そのような方法の利点及び優位性がある特徴は、本発明に基づく前記デバイスの上記の説明から明らかである。
【0026】
本発明の一つの実施形態によれば、この方法は、過剰な溶融金属を除去した後にコーティングの厚さを測定することを有していて、これによって、厚さの測定値と厚さの所望の値の間の差が以下の値を制御する;
a) 移動磁場を発生させる相巻線を流れる電流;および/または、
b) 金属要素に噴射されるガスの前記ジェットの圧力;
このようにして、信頼性の高いやり方でコーティングの所望の厚さが得られることが確保されることが可能になる。
【0027】
本発明の他の実施形態によれば、移動磁場を発生させる相巻線に送られる電流と、ガスの前記ジェットの噴射は、これらの二つのファクターから構成され金属要素に加えられるトータルのワイピング力が、金属要素の幅に渡って、即ち金属要素に沿って、前記移送経路の方向に対して横断方向で実質的に同等な大きさになるように、互いに構成される。このようにして、後から凝固されるコーティングの厚さが、金属要素のエンド部分で中央部分と実質的に同一になることが確保される。
【0028】
本発明の他の実施形態によれば、ガスのジェットは、それがジェットとして前記要素に噴射される前に、そこから湿分を除去するために予備加熱される。これは、ガスのジェットが同じ程度に冷却されないこと、そして、湿分が溶融金属に噴射されないことを、意味しており、これらの二つの特徴は、あるタイプのアプリケーションにおいて要求されることがある。
【0029】
本発明の更なる利点及び優位性がある特徴は、以下の説明から、及び他の従属請求項から、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の好ましい実施形態が、例として、以下において添付図面を参照しながら説明される。
【0031】
図1は、ストリップの形態の、長く延ばされた金属要素1の上の金属コーティングの厚さをコントロールするための、本発明の一つの実施形態に基づくデバイスを概略的に示す。ストリップ1は、溶融金属の槽2の中を通ってストリップを連続的に移送することにより、溶融金属のレイヤでコーティングされる。ストリップは、予め定められた移送経路Xに沿って移送方向3に槽から移送される。予め定められた移送経路Xは、槽2の中に浸漬されたローラ4と、ワイパー及び安定化ユニット6の後に配置されアッパー・ローラ5との間で実質的に伸びている。このユニットは、ストリップ1から過剰な溶融金属を除去するように、且つストリップを安定化させるように構成されている。このユニットは、反対方向からストリップに影響を与えるために、移送経路Xのそれぞれの側に配置された同一の二つのハーフa,bを備えている。
【0032】
前記デバイスは、移送経路Xのそれぞれの側に、第一の相のための第一の相巻線7a,7b及び第二の相のための第二の相巻線8a,8bから構成された電磁的なワイパー部材を有し、相巻線は、移送経路Xの方向へ向けられた、従って前記経路に沿って走行するストリップ1の方向へ向けられた、ワイパー・ポール10a,10bを有するマグネチック・コア9a,9bの周りに配置されている。
【0033】
このように形成された電磁的なワイパー部材は、以下のように運転される;
相巻線7a,7b,8a,8bには交流(図示せず)が供給され、ストリップ1上に交流磁場(移動磁場とも呼ばれる)を発生させる;
前記磁場は、コーティングの中に電流経路(図示せず)を誘導し、そして力が、ストリップの移送方向と反対の方向にコーティングに作用する。このようにして、過剰なコーティング材料がストリップの長手方向に除去される。
【0034】
次に、図3及び4を参照しながら説明する。
前記デバイスは、移送経路のそれぞれの側に第二のワイパー部材11を更に有している。この第二のワイパー部材は、ストリップから過剰な溶融金属を除去する際に電磁的なワイパー部材を助けるために、移送経路の方向に対してストリップを横切る方向の線に従って、ターゲット領域を備えたガスのジェットをストリップ1に吹き付けるようにデザインされている。どのように、この第二のワイパー部材がデザインされることが可能であるかについては、図3及び4から明らかである。
【0035】
前記デバイスは、高い圧力を備えたガス(例えば空気または窒素ガスなど)を、マグネチック・コア9の内側に形成されたガス・チャンバー12の中に供給するように構成された装置33を有している。このガス・チャンバー12は、ストリップ上に線状のターゲット領域を備えたガスの前記ジェットを形成するために、移送経路の横断方向に、ストリップに全幅に渡って拡がるように構成されていて、移送経路の方向(即ちストリップの方向)に向けられた狭いガス・ノズル13を介して、内側に向けて開いている。
【0036】
図4に示された実施形態において、ガス・ノズル13は、マグネチック・コアそれ自体の部分14から構成されている。電磁的なワイパー部材のマグネチック・コアの中に、いわゆるガス・ナイフをこのように配置することにより、ガスのジェットと電磁的なワイパー部材から生ずるワイピング力が実質的に同じ位置に作用することになる。
【0037】
図2は、二つのワイパー部材の作用により、どのようにコーティング15の厚さが減少されるかについて概略的に示している;その厚さは、例えば、コーティングに対するワイパー部材の作用ポイントの上流の部分16で、例えば100μmであり、その後に、部分17で、例えば10μmに減少する。ここで、電磁的なワイパー部材に由来する力は矢印18により示され、これに対して、ガスのジェットの影響は矢印19により示されている。
【0038】
移送経路に沿った、ストリップの所与の速度(好ましくは200m/分のオーダーである)で、ワイパー部材が作用を与えるポイントを通過した後でのコーティングの実現可能な厚さは、約 F−1/2 であり、ここで、Fはワイピング力である。
【0039】
二つのタイプのワイパー部材を結合することにより、ワイピング力が約二倍にされることが可能なので、ストリップの移動速度を変えることなく、30%のオーダーの厚さの減少が実現されることが可能である。即ち、所与の厚さに対して、ストリップはかなり速く走行することが可能になる。それに加えて、結合による複数の他の利点が、これらの二つのタイプのワイパー部材同時に使用することにより、先に述べたように実現される。
【0040】
前記デバイスは、移送経路Xのそれぞれの側に、電磁的な安定化部材20a,20bを更に有している。この電磁的な安定化部材は、相巻線と同一のマグネチック・コア10a,10bの周囲に巻かれた安定化巻線の形態であり、それによって、共通のワイパー及び安定化ポール10a,10bが実現されることになる。
【0041】
それぞれの安定化巻線20a,20bには直流が供給され、それによって、安定化の力がストリップ1に対して垂直に作用することになる。安定化ポール10a,10bが、ワイパー・ポールと協同するように構成されているので、安定化の力が、ワイピング・ポールからの外乱が生じる領域と同じ領域でストリップに作用することが可能である。外乱及び振動は、当然、ワイパー部材以外によっても、例えば、ストリップ1の自由長さ(即ち、ストリップ1が支持無しで走行する長さ)によっても、生ずることがある。これらの外乱または振動もまた、安定化部材により安定化されることが可能である。
【0042】
ワイパー及び安定化ポール10a,10bは、予め定められた移送経路Xから所定の距離に配置される。その距離は、当然、電流、ストリップ1の厚さ及びコーティングの厚さによって変わる。
【0043】
ワイピング及び安定化のための全体のユニットが、共通のいわゆるワイパー・ハウジング23(図3及び4参照方)の内側に配置される。このように同じ機械的ユニットの中に、二つのタイプのワイパー部材を収容することにより、これらが協同して作用を与え、それによって、移送経路Xに対して垂直方向の位置決め、ガスのジェットと移送経路の間の角度の調整、その他のための全ての装置が共通に使用されることになる。これは、そのような装置の、コストが掛るダブルの装置を不要にする。
【0044】
図1には、その予め定められた移送経路Xに対するストリップの位置1を検出するためのセンサー24a,24bが、ストリップ1のいずれかの側に配置されることが示されている。センサー24a,24bは、ワイパー及び安定化ユニット6の近傍に配置される。このセンサーは、予め定められた移送経路Xに対するストリップの位置に依存するパラメータの値を検出するように構成され、それによって、安定化部材が、検出値に対応する力をストリップ1に作用させるようにデザインされる。
【0045】
前記デバイスには、層が凝固した後に、層の厚さを測定するための装置25a,25bが、更に設けられている。このコントロール装置25a,25bは、層の厚さに対応する信号をコントロール・ユニット26に送るように構成されている。このコントロール・ユニットは、その測定結果に応じて、相巻線7a,7b及び8a,8bに供給される電流をコントロールするように構成され、その電流は、トータルのワイピング力を設定するためにワイピング及びガス供給装置33のために使用され、それによって、コーティングの所望の厚さが実現されることになる。
【0046】
図5は、本発明の第二の実施形態によるデバイスを示している。この形態は、図4に示された形態と、次の点で異なっている。即ち、マグネチック・コア9a,9bの部分が、ガス・ノズルを形成するために使用されずに、その代わりに、前記ノズルが、マグネチック・コアの中のキャビィティの中に収容された別個の部分27から構成される。ここで、ガスは、ノズル13からガスのジェットを吹き出すために、その外被に均一に分散された開口を備えた長く延ばされたチューブ29を介して供給される。図3から、どのように、ガス(空気として)が、それぞれガス・チャンバー12及びチューブ29の中に、ワイパー・ハウジング23の端のガス接続部材30により、供給されることが可能であるかが明らかである。
【0047】
全体のハウジング23はまた、そこに、31で支持されて、かくして、軸32の回りで旋回されることが可能であり、ワイパーの力が、電磁的なワイパー部材及びガス・ジェット・ワイパー部材の中を通過する金属要素のコーティングに作用を及ぼす方向を変える。
【0048】
本発明は、当然、いかなる場合においても、上記の実施形態に限定されるものではなく、反対に、その可能な様々な変形が、それによって添付請求項の中で規定された基礎を成す発明概念から離れることなく、当業者にとって明らかである。
【0049】
例えば、前記デバイスが安定化部材を有することは、多くの場合に恐らく有利ではあるが、絶対的に必要であることはない。更に、前記デバイスは、長く延ばされた金属要素のそれぞれの側に、一つよりも多い電磁的なワイパー部材を有することが可能であり、同じことが、前記第二のワイパー部材についても言える。
【0050】
電磁的なワイパー部材が、移送経路のそれぞれの側に配置されることも可能であり、および/または、他のガス・ジェット・ワイパー部材が、ストリップなど(これらの部材の中を通過するように意図されるもの)の緯度方向で、異なる位置に配置された幾つかの部分に分割されることもまた可能である。その場合には、それらの異なる部分は、それを横切る方向の方向に対して、ストリップのある限定された部分(例えば、ストリップのエッジ部分において、または中央部分においてなど)において、ワイピング力を変化させるために、個別にコントロール可能であることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、金属ストリップの上の金属コーティングの厚さをコントロールするためのデバイスの一つの実施形態の、側方から見た、非常にシンプル化された断面図である。
【図2】図2は、溶融金属でコーティングされた金属ストリップの、ワイパーの力がコーティングに加えられる領域の非常にシンプル化された詳細図である。
【図3】図3は、電磁的なワイパー部材及びガスのジェットを備えたワイパー部材を含む、本発明に基づくデバイスの前側部分の図である。
【図4】図4は、図3の中の線B−Bに沿うシンプル化された断面図である。
【図5】図5は、本発明の第二の実施形態に基づくデバイスの図4に対応する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長く延ばされた金属要素を溶融金属の槽(2)の中を通して連続的に移送することにより形成された、金属要素(1)の上の金属コーティングの厚さをコントロールするためのデバイスであって、
金属要素は、予め定められた移送経路(X)に沿って移送方向に前記槽から移送されるように構成され、
前記デバイスは、金属要素の上の溶融金属に移動磁場を作用させることにより、金属要素から過剰な溶融金属を除去するために、前記経路に沿って移送される金属要素のそれぞれの側で、前記移送経路に沿って配置されるようにデザインされた少なくとも一対の電磁的なワイパー部材(7a,7b,8a,8b)を有している、
デバイスにおいて、
前記デバイスは、それに加えて、それぞれの電磁的なワイパー部材に対応する第二のワイパー部材(11)を有しており、
前記第二のワイパー部材は、金属要素からの過剰な溶融金属の除去の際に前記電磁的なワイパー部材を助けるために、移送経路の方向に対して、金属要素を横切る方向の線に実質的に従って、金属要素にターゲット領域を備えたガスのジェットを吹き付けるようにデザインされていること、
を特徴とするデバイス。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のデバイス:
それぞれの電磁的なワイパー部材(7a,7b,8a,8b)及びそれと協同する第二のワイパー部材(11)は、金属要素の実質的に同じ領域の中で前記要素にワイピング力を作用させるように構成されている。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載のデバイス:
前記第二のワイパー部材(11)は、前記移送経路(X)に沿って、前記電磁的なワイパー部材(7a,7b,8a,8b)によるワイピング力が作用する位置と実質的に同じ位置に当たる位置で、または、移送経路の方向で実質的に直ぐその下流で、金属要素にガスの前記ジェットを噴射するように構成されている。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項3に記載のデバイス:
前記第二のワイパー部材(11)は、前記移送経路(X)に沿って、前記協同する電磁的なワイパー部材(7a,7b,8a,8b)に由来するワイピング力がその最大となる位置から、10cm以下の距離好ましくは5cm以下の距離にある位置で、金属要素にガスの前記ジェットを噴射するように構成されている。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項2から4のいずれか1項に記載のデバイス:
前記第二のワイパー部材(11)は、前記移送経路(X)に沿って、それと協同する電磁的なワイパー部材(7a,7b,8a,8b)が最大のワイピング力を作用させるように構成された位置と実質的に同じ位置に当たる位置で、金属要素にガスの前記ジェットを噴射するように構成されている。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス:
それぞれの第二のワイパー部材(11)は、金属要素に空気のジェットを噴射するようにデザインされている。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス:
それぞれの第二のワイパー部材(11)は、金属要素に窒素ガスのジェットを噴射するようにデザインされている。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のデバイス:
前記電磁的なワイパー部材(7a,7b,8a,8b)のそれぞれは、マグネチック・コア(9)から構成されたワイパー・ポール(10)を有している。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項8に記載のデバイス:
それぞれの第二のワイパー部材(11)は、前記マグネチック・コア(9)の中に配置されたガス・ノズル(13)を有している。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項9に記載のデバイス:
前記マグネチック・コア(9)は、その部分(14)で前記ノズル(13)を構成するようにデザインされている。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項9に記載のデバイス:
前記マグネチック・コア(9)は、ノズル(30)を構成する別個の部分(27)を受けるインナー・キャビティ(28)を有している。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項1から11のいずれか1項に記載のデバイス:
当該デバイスは、少なくとも一対の電磁的な安定化部材(20a,20b)を有し、
その電磁的な安定化部材は、予め定められた移送経路に対する金属要素の位置を安定化するために、金属要素のための移送経路(X)のそれぞれの側に一つの安定化部材を有しており、
前記安定化部材は、安定化ポール(10a,10b)を有している。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項12に記載のデバイス:
前記移送経路の同じ側の、それぞれの電磁的なワイパー部材(7a,7b,8a,8b)と前記安定化部材(20a,20b)は、ワイパー・ポール(10a,10b)と安定化ポール(10a,10b)が一致するように配置されている。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項13に記載のデバイス:
前記電磁的なワイパー部材(7a,7b,8a,8b)及び前記安定化部材(20a,20b)は、共通のマグネチック・コア(9)を有している。
【請求項15】
長く延ばされた金属要素の上の金属コーティングの厚さをコントロールするための方法であって、
金属要素(1)を溶融金属の槽(2)の中を通して連続的に移送することにより、コーティングが付着され、
当該方法は、
− 金属要素を、予め定められた経路に沿って移送方向に移送し;
− 移動磁場を、未だ凝固していない金属コーティングを有する金属要素に作用させることにより、且つ、ターゲット領域を備えたガスのジェットを、移送経路の方向に対して金属要素を横切る方向の線に実質的に従って、未だ凝固していない金属コーティングを有する金属要素に噴射することにより、長く延ばされた金属要素から過剰な溶融金属を除去すること、
を特徴とする方法。
【請求項16】
下記特徴を有する請求項15に記載の方法:
前記長く延ばされた金属要素は、金属ストリップである。
【請求項17】
下記特徴を有する請求項15または16に記載の方法:
− 過剰な溶融金属を除去した後、コーティングの厚さを測定し、厚さの測定値と厚さの所望の値の差が、
a)前記移動磁場を発生させる相巻線を通る電流;および/または、
b)金属要素に噴射されるガスの前記ジェットの圧力;
をコントロールする。
【請求項18】
下記特徴を有する請求項15から17のいずれか1項に記載の方法:
前記移動磁場を発生させる相巻線(7a,7b,8a,8b)に流れる電流の供給、及びガスの前記ジェットの噴射は、
これらの二つのファクターから構成され、金属要素に加えられるトータルのワイピング力が、金属要素の幅に渡って、即ち金属要素に沿って、前記移送経路の方向に対して横断方向で実質的に同等な大きさになるように、互いに構成される。
【請求項19】
下記特徴を有する請求項15から18のいずれか1項に記載の方法:
前記移動磁場及びガスの前記ジェットは、それに由来するワイピング力が金属要素の実質的に同じ領域の中で前記要素に作用するように、加えられる。
【請求項20】
下記特徴を有する請求項15から19のいずれか1項に記載の方法:
ガスの前記ジェットは、前記移送経路に沿って、前記移動磁場により金属要素に作用するワイピング力と実質的に同じ位置に当たる位置で、または移送経路の方向で実質的に直ぐその下流で、金属要素に噴射される。
【請求項21】
下記特徴を有する請求項20に記載の方法:
ガスの前記ジェットは、前記移送経路に沿って、前記移動磁場に由来するワイピング力がその最大となる位置から、10cm以下の距離に、好ましくは5cm以下の距離にある位置で、金属要素に噴射される。
【請求項22】
下記特徴を有する請求項15から21のいずれか1項に記載の方法:
ガスの前記ジェットは、前記移送経路に沿って、前記移動磁場が金属要素に最大のワイピング力を作用させるように配置された位置と実質的に同じ位置に当たる位置で、金属要素に噴射される。
【請求項23】
下記特徴を有する請求項15から22のいずれか1項に記載の方法:
ガスの前記ジェットは、空気のジェットである。
【請求項24】
下記特徴を有する請求項15から22のいずれか1項に記載の方法:
ガスの前記ジェットは、窒素ガスのジェットである。
【請求項25】
下記特徴を有する請求項15から24のいずれか1項に記載の方法:
ガスのジェットのためのガスは、前記要素にジェットとして噴射される前に、それから湿分を除去するために予備加熱される。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−500520(P2009−500520A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519219(P2008−519219)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000737
【国際公開番号】WO2007/004945
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504127740)アーベーベー・アーベー (19)
【Fターム(参考)】