説明

厚肉型樹脂レンズ及びその形成方法

【課題】 成型時間を短縮して効率よく成形を可能とする厚肉型樹脂レンズ及びその形成方法を提供する。
【解決手段】 プロジェクタ型樹脂レンズの厚肉方向の何れか一方の面側から他方の面側に向けて順次肉厚を増していき、最終的には規定肉厚に達するようにした可動金型3及び固定金型4を形成してなる厚肉型樹脂レンズの形成方法において、前記可動金型3には、一方の面3aが複数の形成されてなり、前記固定金型4には、他方の面4a,4bが複数の形成されてなり、該可動金型3及び固定金型4の少なくとも何れかが順次隣の金型3,4に移動可能として、次々にレンズ用の樹脂を注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とし、前記可動金型3及び固定金型4による複数の途中成型品の冷却時間がほぼ同じに制御されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘッドランプの投影レンズなどの厚肉型樹脂レンズ及びその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプの投影レンズなどの厚肉型樹脂レンズ及びその形成方法として、合成樹脂の厚肉レンズの肉厚方向に対して何れか一方の面側から順次に肉厚を増していき、最終的には規定肉厚に達するようにした複数の金型を形成し、この一方の面の金型を交換しながら、1次成型品から3次成型品まで金型毎の回数の合成樹脂の注入を行う樹脂レンズ及びその形成方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−191365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の厚肉型樹脂レンズ及びその形成方法にあっては、1次成型品の成形後に、逐一一方の面の金型を交換しなければならず、その度にキャビティの位置合わせを行わねばならず、結局成型時間が多く必要とし、生産性に改善が求められている。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、成型時間を短縮して効率よく成形を可能とする厚肉型樹脂レンズ及びその形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、プロジェクタ型樹脂レンズの厚肉方向の何れか一方の面側から他方の面側に向けて順次肉厚を増していき、最終的には規定肉厚に達するようにした可動金型及び固定金型を形成してなる厚肉型樹脂レンズの形成方法において、前記可動金型には、一方の面が複数の形成されてなり、前記固定金型には、他方の面が複数の形成されてなり、該可動金型及び固定金型の少なくとも何れかが順次隣の金型に移動可能として、次々にレンズ用の樹脂を注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とし、前記可動金型及び固定金型による複数の途中成型品の冷却時間がほぼ同じに制御されてなることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、プロジェクタ型樹脂レンズの厚肉方向と薄肉方向とにより、最終的には規定肉厚に達するようにした可動金型及び固定金型を形成してなる厚肉型樹脂レンズの形成方法において、前記可動金型には、同一の一方の面が複数の形成されてなり、前記固定金型には、異なる他方の面が複数の形成されてなり、該可動金型及び固定金型の少なくとも何れかが順次隣の金型に移動可能として、次々にレンズ用の樹脂を注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とし、
前記可動金型及び固定金型による複数の途中成型品の冷却時間がほぼ同じに制御されてなることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、平板型樹脂レンズの厚肉方向の何れか一方の面側から他方の面側に向けて順次肉厚を増していく厚肉型樹脂レンズにおいて、前記一方の面側の一次成型品に対して他方の面側が順次レンズ用樹脂の注入により二次成型品が形成され且つ前記一次成型品に対して前記二次成型品の厚みがほぼ半分であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、厚肉型樹脂レンズにおいて、前記一方の面側の一次成型品と、他方の面側の二次成型品とが重なるように形成され且つ前記一次成型品に対して前記二次成型品の厚みがほぼ半分であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、可動金型及び固定金型に、一方及び他方の面が複数の形成されてなり、可動金型及び固定金型の何れかが順次隣の金型に移動可能とすることで、次々にレンズ用の樹脂を注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とする。こうして、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とすることができ、原価が著しく低減できることになる。また、前記可動金型及び固定金型による複数の途中成型品の冷却時間がほぼ同じに制御されてなることにより、最も短い冷却時間で成形が可能としたことで、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とすることができ、原価が著しく低減できることになる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、可動金型及び固定金型に、同一の一方の面及び異なる他方の面が複数の形成されてなり、可動金型及び固定金型の何れかが順次隣の金型に移動可能とすることで、次々にレンズ用の樹脂を注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とする。こうして、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とすることができ、原価が著しく低減できることになる。また、前記可動金型及び固定金型による複数の途中成型品の冷却時間がほぼ同じに制御されてなることにより、最も短い冷却時間で成形が可能としたことで、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とすることができ、原価が著しく低減できることになる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、一次成型品に対して二次成型品の厚みがほぼ半分であることにより、一次成型品は双方の面が共に金型に接触しており、二次成型品は他方の面側のみが金型に接触しており、冷却条件は異なるものの、必要とする冷却時間はほぼ同じとなり、分割した際の成形において最も短い冷却時間としたことで、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とすることができ、原価が著しく低減できることになる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、一次成型品に対して二次成型品の厚みがほぼ半分であることにより、一次成型品は双方の面が共に金型に接触しており、二次成型品は他方の面側のみが金型に接触しており、冷却条件は異なるものの、必要とする冷却時間はほぼ同じとなり、分割した際の成形において最も短い冷却時間としたことで、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とすることができ、原価が著しく低減できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
成型時間を短縮して効率よく成形を可能とする厚肉型樹脂レンズ及びその形成方法を提供する、という目的を、プロジェクタ型樹脂レンズの厚肉方向の何れか一方の面側から他方の面側に向けて順次肉厚を増していき、最終的には規定肉厚に達するようにした可動金型及び固定金型を形成してなる厚肉型樹脂レンズの形成方法において、前記可動金型には、一方の面が複数の形成されてなり、前記固定金型には、他方の面が複数の形成されてなり、該可動金型及び固定金型の少なくとも何れかが順次隣の金型に移動可能として、次々にレンズ用の樹脂を注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とし、前記可動金型及び固定金型による複数の途中成型品の冷却時間がほぼ同じに制御されてなることで、実現した。
【実施例1】
【0014】
以下、この発明の第1実施例を図1〜図9に基づいて説明する。
【0015】
符号1は、この実施例にかかる「厚肉型樹脂レンズ」としてのプロジェクタ型樹脂レンズで、金型2内に図示しない樹脂成型機により溶融状態の樹脂(熱可塑性透明樹脂、例えばポリカーボネイト、ポリシクロオレフィン、PMMA)を注入することで形成されるものである。
【0016】
金型2は、プロジェクタ型樹脂レンズ1の厚肉方向の一方の面1aである凸球面側の外形を形成するための凸球金型面3aを少なくとも2個形成されてなる可動金型3と、プロジェクタ型樹脂レンズ1の厚肉方向の他方の面1b側に向けて順次肉厚を増していき、最終的には規定肉厚に達する平面側より凸球金型面3a側に入り込んだ面1cを形成するための1次金型面4a及びプロジェクタ型樹脂レンズ1の他方の面1bである平面側を形成するための2次金型面4bを有する固定金型4とより構成されてなり、可動金型3及び固定金型4の1次金型面4aから隣の金型である2次金型面4bに順次に移動可能として、次々にプロジェクタ型樹脂レンズ1用の樹脂を材料注入口8により注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能としている。
【0017】
固定金型4の1次金型面4a及び2次金型面4bの基部面5(該基部面5は2次金型面4bと同一)からの突出量の差は、一回ごとの射出成型で得られる成型品の厚みを通常の成型工程においてもひけを生じない範囲に限定している。しかも、凸球金型面3aから1次金型面4aまでの肉厚T1は、20ミリメートルであるのに対し、1次金型面4aから2次金型面4bまでの肉厚T2は、10ミリメートルであることで、当出願人において確認したところ、冷却時間は13.5分であった。
【0018】
そしてまた、当出願人において確認したところ、前記可動金型3と固定金型4の1次金型面4aとで形成される1次成型品6の冷却時間は、13.5分であり、前記可動金型3と固定金型4の2次金型面4bとで形成される2次成型品7の冷却時間は、12.0分であった。
【0019】
以上のように構成されたプロジェクタ型樹脂レンズ1は、金型2の可動金型3には凸球金型面3aが形成され、固定金型4には一次金型面4a及び二次金型面4bが形成されてなり、双方の面3a、4a、4bを有する金型3,4の何れかが順次隣の金型3,4に移動可能とすることができる。また、プロジェクタ型樹脂レンズ1の樹脂を材料注入口8から注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とすることができるので、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とする。また、原価が著しく低減できることになる。
【0020】
更に、一次成型品6の厚みt1に対して二次成型品7の厚みt2がほぼ半分であることにより、一次成型品6はプロジェクタ型樹脂レンズ1の双方の面1a、1cが共に可動金型3の凸球金型面3a及び固定金型4の1次金型面4a双方に接触しており、二次成型品7はプロジェクタ型樹脂レンズ1の他方の面1b側のみが金型の2次金型面4bに接触しており、冷却条件は異なるものの、必要とする冷却時間はほぼ同じとなり、分割した際の成形において最も短い冷却時間としたことで、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とすることができ、原価が著しく低減できることになる。
【実施例2】
【0021】
以下、この発明の第2実施例を図11乃至図13に基づいて説明する。第1実施例と異なる主な点は、固定金型と可動金型双方に凹んだ面を形成して点にある。前記第1実施例と同一の構成部材は、同一符号を用いて重複する説明は可能な限り割愛する。
【0022】
符号11は、この実施例にかかる「厚肉型樹脂レンズ」としての平板型樹脂レンズで、金型2内に図示しない樹脂成型機により溶融状態の樹脂(熱可塑性透明樹脂、例えばポリカーボネイト、ポリシクロオレフィン、PMMA)を注入することで形成されるものである。
【0023】
金型12は、平板型樹脂レンズ11の厚肉方向の一方の面11aの外形を形成するための金型面13aを少なくとも2個形成されてなる可動金型13と、平板型樹脂レンズ11の厚肉方向の1次他方の面11bの外形、つまり、1次成型品16を形成するための1次金型面14a及び平板型樹脂レンズ11の他方の面1cである薄肉方向の2次他方の面の外形、つまり、2次成型品17を形成するための2次金型面14bを有する固定金型14とより構成されてなり、可動金型13及び固定金型14の1次金型面14aから隣の金型である2次金型面14bに順次に移動可能として、次々に平板型樹脂レンズ11用の樹脂を材料注入口8(図2参照)により注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能としている。
【0024】
固定金型14の1次金型面14a及び2次金型面14bの基部面15(該基部面15は1次金型面4aと同一)からの凹ませている量の差は、一回ごとの射出成型で得られる成型品の厚みを通常の成型工程においてもひけを生じない範囲に限定している。しかも、金型面13aから1次金型面14aまでの肉厚T1は、20ミリメートルであるのに対し、1次金型面14aから2次金型面14bまでの肉厚T2は、10ミリメートルであることで、当出願人において確認したところ、冷却時間は13.5分であった。
【0025】
そしてまた、当出願人において確認したところ、前記可動金型13と固定金型14の1次金型面14aとで形成される1次成型品16の冷却時間は、13.5分であり、前記可動金型13と固定金型14の2次金型面14bとで形成される2次成型品17の冷却時間は、12.0分であった。
【0026】
以上のように構成された平板型樹脂レンズ11は、金型12の可動金型13には金型面13aが形成され、固定金型14には一次金型面14a及び二次金型面14bが形成されてなり、双方の面13a、14a、14bを有する金型13,14の何れかが順次隣の金型13,14に移動可能とすることができる。また、平板型樹脂レンズ11の樹脂を材料注入口8から注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とすることができるので、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とする。また、原価が著しく低減できることになる。
【0027】
更に、一次成型品16の厚みt1に対して二次成型品17の厚みt2がほぼ半分であることにより、一次成型品16は平板型樹脂レンズ11の双方の面11a、11bが共に可動金型13の金型面13a及び固定金型14の1次金型面14a双方に接触しており、二次成型品17は平板型樹脂レンズ11の他方の面11c側のみが金型の2次金型面14bに接触しており、冷却条件は異なるものの、必要とする冷却時間はほぼ同じとなり、分割した際の成形において最も短い冷却時間としたことで、成型時間を短縮して効率のよい成形を可能とすることができ、原価が著しく低減できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
図2,図5,図7、図11に示す金型2、12の可動金型3、13は、何れも凸球金型面3a及び金型面13aが2個あるものとして説明しているが、3個でも4個でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の第1実施例に係るプロジェクタ型樹脂レンズの金型を示す断面図。
【図2】図1のSA−SA線に沿った可動型を示す断面図。
【図3】図2のSC−SC線に沿った可動型と固定型とに樹脂が注入される状態を示す断面図。
【図4】図2のSD−SD線に沿った可動型と固定型とに樹脂が注入される状態を示す断面図。
【図5】図2に示す可動型を180度回転させた状態を示す断面図。
【図6】図5のSE−SE線に沿った可動型と固定型とに樹脂が注入される状態を示す断面図。
【図7】図5の凸球金型面に樹脂が注入される状態を示す断面図。
【図8】図7のSF−SF線に沿った可動型と固定型とに樹脂が注入される状態を示す断面図。
【図9】第1実施例にかかるプロジェクタ型樹脂レンズの一次成型品及び二次成型品の断面図。
【図10】第1実施例にかかるプロジェクタ型樹脂レンズの断面図。
【図11】この発明の第2実施例に係る平板型樹脂レンズの金型を示す断面図。
【図12】第2実施例にかかる平板型樹脂レンズの一次成型品及び二次成型品の断面図。
【図13】第2実施例にかかる平板型樹脂レンズの断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 プロジェクタ型樹脂レンズ(厚肉型樹脂レンズ)
1a 一方の面
1b 他方の面
1c 入り込んだ面
2、12 金型
3 可動金型
3a 凸球金型面
4、14 固定金型
4a、14a 一次金型面
4b、14b 二次金型面
5、15 基部面
6、16 一次成型品
7、17 二次成型品
11 平板型樹脂レンズ(厚肉型樹脂レンズ)
11a 一方の面
11b 他方の面
11c 他方の面
13 可動金型
13a 金型面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタ型樹脂レンズの厚肉方向の何れか一方の面側から他方の面側に向けて順次肉厚を増していき、最終的には規定肉厚に達するようにした可動金型及び固定金型を形成してなる厚肉型樹脂レンズの形成方法において、
前記可動金型には、一方の面が複数の形成されてなり、前記固定金型には、他方の面が複数の形成されてなり、該可動金型及び固定金型の少なくとも何れかが順次隣の金型に移動可能として、次々にレンズ用の樹脂を注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とし、
前記可動金型及び固定金型による複数の途中成型品の冷却時間がほぼ同じに制御されてなることを特徴とする厚肉型樹脂レンズの形成方法。
【請求項2】
プロジェクタ型樹脂レンズの厚肉方向と薄肉方向とにより、最終的には規定肉厚に達するようにした可動金型及び固定金型を形成してなる厚肉型樹脂レンズの形成方法において、
前記可動金型には、同一の一方の面が複数の形成されてなり、前記固定金型には、異なる他方の面が複数の形成されてなり、該可動金型及び固定金型の少なくとも何れかが順次隣の金型に移動可能として、次々にレンズ用の樹脂を注入可能とすると共に樹脂の冷却を可能とし、
前記可動金型及び固定金型による複数の途中成型品の冷却時間がほぼ同じに制御されてなることを特徴とする厚肉型樹脂レンズの形成方法。
【請求項3】
平板型樹脂レンズの厚肉方向の何れか一方の面側から他方の面側に向けて順次肉厚を増していく厚肉型樹脂レンズにおいて、
前記一方の面側の一次成型品に対して他方の面側が順次レンズ用樹脂の注入により二次成型品が形成され且つ前記一次成型品に対して前記二次成型品の厚みがほぼ半分であることを特徴とする厚肉型樹脂レンズ。
【請求項4】
厚肉型樹脂レンズにおいて、
前記一方の面側の一次成型品と、他方の面側の二次成型品とが重なるように形成され且つ前記一次成型品に対して前記二次成型品の厚みがほぼ半分であることを特徴とする厚肉型樹脂レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−62359(P2006−62359A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222080(P2005−222080)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】