厚鋼板の熱処理装置及び方法並びに厚鋼板の製造方法及びその製造ライン
【課題】厚鋼板の長手方向の温度分布が予定したものにすることを目的とする。
【解決手段】矯正装置1と、誘導加熱装置2とをライン上に備えた厚鋼板の熱処理装置において、誘導加熱装置2の出側に該誘導加熱装置により熱処理された厚鋼板5の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有する押しつけロール3を搬送ロール4に対向させて設ける。熱処理により厚鋼板5が変形したとしても、その厚鋼板5の変形は押しつけロール3によって矯正されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱される。厚鋼板5の変形は、押しつけロール3によって矯正されるため、誘導加熱装置2を用いても、厚鋼板5の搬送が阻害されることなく目標とする熱処理を行うことができ、厚鋼板5をより高い生産性で安定製造することができる。
【解決手段】矯正装置1と、誘導加熱装置2とをライン上に備えた厚鋼板の熱処理装置において、誘導加熱装置2の出側に該誘導加熱装置により熱処理された厚鋼板5の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有する押しつけロール3を搬送ロール4に対向させて設ける。熱処理により厚鋼板5が変形したとしても、その厚鋼板5の変形は押しつけロール3によって矯正されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱される。厚鋼板5の変形は、押しつけロール3によって矯正されるため、誘導加熱装置2を用いても、厚鋼板5の搬送が阻害されることなく目標とする熱処理を行うことができ、厚鋼板5をより高い生産性で安定製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延した鋼板を材質調整のために再加熱して熱処理する厚鋼板の熱処理装置及び方法並びに厚鋼板の製造方法及び製造ラインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
厚鋼板の熱処理はバッチ式の再熱炉で行われることが多く、生産性に劣るため、従来より誘導加熱式の熱処理が提唱されていた。
従来の1つの誘導加熱式の熱処理方法は、誘導加熱炉を複数基配置した誘導加熱炉列によって厚板を連続的に加熱するに際し、最終誘導加熱炉に装入される厚板の幅方向端部は中央部に較べて高い温度であるため、最終誘導加熱炉に装入される前に厚板の端部の温度を中央部の温度よりも冷却水により低下させてから最終誘導加熱炉で厚板を加熱して幅方向の温度を均一にするようにしたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、従来のもう1つの誘導加熱式の熱処理方法は、金属材料の先端が誘導加熱炉内へ装入されたとき該誘導加熱炉の出口に、一方該金属材料の後端が該誘導加熱炉内へ装入されたとき該誘導加熱炉の入口に、熱発生体を位置せしめ、該金属材料の先、後端を加熱することにより、金属材料の先、後端と中央部の温度を均一に加熱するようにしたものである(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、従来のさらにもう1つの厚鋼板の熱処理方法は、熱間圧延後にオンライン上に設置した誘導加熱装置により厚鋼板を熱処理することにより、効率的に、大量に残留応力の少ない厚鋼板を熱処理するようにしたものである(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭48−25239号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開昭48−25237号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】特開2003−13133号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の誘導加熱式の熱処理を行えば、高能率で熱処理が行えることは自明であったが、現在に至るまで標準的な方法となっていない。これは、特許文献1や特許文献2に示されるように、被加熱材に対して均一加熱性の問題があったからである。
即ち、特許文献1に記載の誘導加熱式の熱処理方法では、幅方向の均一加熱性の問題を解決するものとしているが、長手方向の均一加熱性について考慮されておらず、予定しない温度分布となるという問題があったからである。
また、特許文献2に記載の誘導加熱式の熱処理方法では、長手方向の均一加熱性の問題を解決するものとしているが、長手方向における先尾端の冷えの問題は微々たるもので、全長にわたっての温度の均一性や予定温度に加熱することの方が大きな問題であったからである。
【0006】
さらに、特許文献3に記載の厚鋼板の熱処理方法は、オンライン上に設置した誘導加熱装置により厚鋼板を熱処理するが、これは鋼板が均一に加熱されることを前提とするものであり、形状の矯正をホットレベラーにより行うものである。
しかし、実際には誘導加熱装置による熱処理によって鋼板に反り等の変形が生じるが、鋼板が均一に加熱されることを前提としているためにかかる鋼板の変形については何等考慮されていないものであった。
【0007】
従って、誘導加熱装置によって熱処理され、鋼板が変形した場合に、厚鋼板を搬送する搬送ロールが所定の速度であっても、厚鋼板がスリップしてしまうという事態を生じさせるものであった。
また、厚鋼板の温度は、厚鋼板を送る搬送速度と誘導加熱装置の出力によって決まるが、厚鋼板がスリップすれば、そのスリップによって搬送速度が遅くなったり、或いは厚鋼板が誘導加熱装置の電磁力で吸引されることによって搬送速度が早くなったりし、搬送速度が変化してしまうために長手方向の温度が予期しないものとなってしまうという問題があった。
【0008】
さらに、誘導加熱装置は厚鋼板を通せる空間が限定されているため、誘導加熱装置を破壊しないように板の変形を矯正する必要があり、誘導加熱装置の前に厚鋼板の先端や尾端を平坦化する方法が必要になることが容易に想像できるが、事前に矯正したとしても、誘導加熱装置の加熱によって板の変形が発生する場合もある。
従って、誘導加熱装置の前に厚鋼板の平坦化する方法を採用しても依然として板の変形が生じ、この板の変形は主に反りや捩れであり、誘導加熱装置の破壊や、板が傾くことによって加熱の不良が発生して長手方向の温度が予定しない分布になるという問題が依然としてあるものである。
【0009】
また、誘導加熱装置を用いて厚鋼板を急速加熱すると、上述のように、厚鋼板を幅方向及び長手方向にわたって均−に熱処理することは難しく、厚鋼板には反りが生じるが、特に、幅の広い厚鋼板では、長手方向と幅方向に複合した大きな反りが生じ易く、そのため厚鋼板が、搬送ロールや複数の誘導加熱装置を設けた場合は次の誘導加熱装置に衝突して、厚鋼板の搬送が著しく阻害され、目標とする熱処理も行えなくなる。この点に関しては、上記のように、特許文献3には、誘導加熱装置の下流側にホットレべラーを配置する方法が提案されているが、ホットレべラーは大掛かりな装置であるため、誘導加熱装置に近接して配置できない、また、複数の誘導加熱装置を設けた場合は隣接する誘導加熱装置間に配置できないなどの問題があり、ホットレべラーでは上記のような厚鋼板と搬送ロールや誘導加熱装置との衝突を防止できない、という問題点がある。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、厚鋼板の長手方向の温度分布が予定したものになるようにすることを可能にした厚鋼板の熱処理装置及び方法並びにその熱処理装置を用いた厚鋼板の製造方法及び製造ラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る厚鋼板の熱処理装置は、厚鋼板を搬送するための複数の搬送ロールと、前記鋼板を加熱するための少なくとも1台の誘導加熱装置とを有し、前記誘導加熱装置は、隣接する前記搬送ロール間に配置され、かつ、前記誘導加熱装置のうち少なくとも最上流にある誘導加熱装置の出側には、板の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有し、前記厚鋼板を上面から押しつけるための押しつけロールが少なくとも1本設けられ、前記押しつけロールのうち少なくとも最上流にある押しつけロールは、前記誘導加熱装置の出側にある搬送ロールの上方に前記搬送ロールに対向して配置されている。
【0012】
本発明に係る厚鋼板の熱処理装置は、前記少なくとも最上流側にある誘導加熱装置の入側に、厚鋼板を上面から押しつけるための押しつけロールが少なくとも1本設けられたものである。
【0013】
また、本発明に係る厚鋼板の熱処理装置は、熱間圧延された厚鋼板を熱処理する誘導加熱装置と、誘導加熱装置により熱処理された板の変形を矯正する矯正装置をライン上に備えた厚鋼板の熱処理装置において、前記誘導加熱装置は複数台であり、そのうちの少なくとも一番上流側の誘導加熱装置の出側又は入り側と出側に、板の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有する押しつけロールをそれぞれ設けたことを特徴とする。
また、本発明の厚鋼板の熱処理装置は、互いに隣接する誘導加熱装置の間にそれぞれ前記押しつけロールを設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の厚鋼板の熱処理装置においては、前記押しつけロールのロール径は前記誘導加熱装置の開口部の寸法の約1/2より大きいことを特徴とする。
さらに、本発明の厚鋼板の熱処理装置においては、前記押しつけロールは、前記誘導加熱装置の電磁的な吸引、反発力による速度変化を抑制し得る回転力を有する駆動型のロールであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の厚鋼板の熱処理方法は、前記の厚鋼板の熱処理装置を用いて誘導加熱装置により熱処理された板の変形又は板のスリップを防止するようにしたものである。
また、本発明の厚鋼板の製造方法は、前記の熱処理装置を用いて厚鋼板を上面から押しつける工程を熱処理工程に含むものである。
【0016】
また、本発明の厚鋼板の製造ラインは、同一ライン上に、熱間圧延機と、加速冷却装置と、上記の熱処理装置とを備えたものである。
【0017】
また、本発明の厚鋼板の製造ラインは、前記加速冷却装置と前記熱処理装置との間に矯正装置を備えたものである。
また、本発明の厚鋼板の製造ラインは、前記熱処理装置の下流側に前記矯正装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、誘導加熱装置の熱処理により板が変形したときに生じるスリップと板の変形を押しつけロールによって防止することができ、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。このため、誘導加熱装置を用いても、鋼板の搬送が阻害されることなく目標とする熱処理を行うことができ、鋼板をより高い生産性で安定製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図2】誘導加熱装置による厚鋼板の先端の変形を示す側面図。
【図3】本発明の実施の形態2の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図4】本発明の実施の形態3の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図5】本発明の実施の形態4の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図6】本発明の実施の形態5の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図7】本発明の実施の形態6の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図8】本発明の実施の形態7の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図9】(A)〜(G)は押しつけロールの配置を示す図。
【図10】厚鋼板の反り高さhを定義する説明図。
【図11】図9(A)〜(G)の押しつけロールの配置条件と厚鋼板の反り高さhとの関係を示した図。
【図12】本発明の製造ラインの一例を示す図。
【図13】本発明の製造ラインの別の例を示す図。
【図14】比較例の温度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図、図2は誘導加熱装置による厚鋼板の先端の変形を示す側面図である。
図において、本発明の実施の形態1の厚鋼板の熱処理装置は、厚鋼板5を熱間圧延し、水冷した後に、板の変形を矯正する矯正装置1と、矯正装置1の後に設置され、急速加熱処理を行う1基の誘導加熱装置2と、誘導加熱装置2の後に設置されたピンチロール3とをライン上に備えたことを基本構成とする。なお、ピンチロール3は厚鋼板5の変形等を弾性変形内で防止するために所定の圧下力を有するものであり、厚鋼板5を押しつけることから本発明においては押しつけロールと称するものとする。4は矯正装置1の前と、押しつけロール3の対向位置と、該押しつけロール3より下流側とにそれぞれ設置され、厚鋼板5を搬送する搬送ロールである。この搬送ロール4は駆動源(図示省略)よって回転する駆動力を有するものである。なお、図において、鋼板は左から右へと搬送される。このことは後述する実施の形態の図についても同様である。
【0021】
矯正装置1は複数本の上、下ロールを配置してなり、繰り返し曲げによって反り等の圧延時や加速冷却時に生じた厚鋼板5の形状不良をなおすものである。
また、誘導加熱装置2はソレノイド型のものである。
押しつけロール3は搬送ロール4と対向して配置され、厚鋼板5に対して所定の圧下力を付与できるように構成されている。この押しつけロール3の圧下力は、厚鋼板5が押しつけロール3と搬送ロール4との間を通過する際に厚鋼板の変形又は厚鋼板のスリップを防止できる程度に設定されている。また、この押しつけロール3は自由に回転できるものである。そして、この押しつけロール3のロール径Rは、変形した厚鋼板5が押しつけロール3の軸心より上を通過しないように、誘導加熱装置2の開口2aのギャップGの半分以上の寸法に設定されている。これにより、鋼板の先端通過に応じて押しつけロール3を下げるような複雑な制御が不要となる。
【0022】
次に、本発明の実施の形態1の厚鋼板の熱処理装置の動作を説明する。
熱間圧延し、水冷した後の厚鋼板5は矯正装置1によって平坦化されていても、厚鋼板5を誘導加熱装置2を通過させて熱処理した場合に、図2に示すように加熱により厚鋼板5が上に反る変形を起こすことがある。
このように、厚鋼板5が上に反る変形を起こすと、加熱しなければならない厚鋼板5の質量は1/cosθだけ大きくなり、その分、目標の温度より低めに加熱されることとなる。また、厚鋼板5が下に反る変形を起こすと、搬送ロール4に衝突してスリップし、目標の搬送速度よりも遅くなるため、加熱される時間が長くなり、目標の温度より高く加熱されることとなる。
【0023】
このように誘導加熱装置2によって厚鋼板5に上反りや下反りの変形が生じたとしても、搬送ロール4の対向位置に所定の圧下力を有する押しつけロール3が有るため、押しつけロール3によってスリップが防止されると共に厚鋼板5の上反りや下反りの変形が矯正され、厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって目標の温度で加熱されることとなる。
【0024】
上述したように、温度の上昇量は厚鋼板5の変形による誘導加熱装置2内の質量増に反比例するから、cosθに比例することとなる。
従って、厚鋼板5が真っ直ぐであるθ=0°、cosθ=1に対して、工業的にはcosθ>0.995、θ<5.7°であるようにするのが良く、これは加熱による温度上昇量が500℃の場合で2.5℃の偏差以内で目標温度に加熱できることに相当する。
【0025】
この実施の形態1では、誘導加熱装置2の出側に押しつけロール3を搬送ロール4と対向させて設けたので、誘導加熱装置2の熱処理により板が変形したとしても、その板の変形は押しつけロール3によって矯正されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。
【0026】
なお、上記実施の形態1では、押しつけロール3は自由に回転できるものとしているが、押しつけロール3自体も駆動力を有するようにしてもよい。この場合、押しつけロール3と搬送ロール4の回転速度は同じにして両者の回転速度の同期を取ることが、厚鋼板5の搬送速度を一定にするために必要とされる。
このことは厚鋼板5の上反りや下反りが小さい場合には望ましいことであるが、厚鋼板5の上反りや下反りが大きい場合には押しつけロール3と搬送ロール4の回転速度を変えることにより、これらの反りを矯正することが可能となる。
また、押しつけロール3に駆動力を与えるようにするもう1つの理由は、誘導加熱装置2の電磁力により厚鋼板5の搬送速度が変化させられる場合に、その電磁力による速度変化に対抗させるためにトルクを所定の圧下力と相俟って付与することにある。
【0027】
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図3において、実施の形態1と同様の構成は実施の形態1と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態2は、実施の形態1と異なり、3基の誘導加熱装置2を使用したものである。この実施の形態2は、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置し、それより下流側の誘導加熱装置2の出側或いは入り側と出側の両方に押しつけロール3を配置しないようにしたものである。
【0028】
この実施の形態2では、3基の誘導加熱装置2が使用された場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近にだけ押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしている。これは、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に配置した押しつけロール3による板の変形の矯正と板のスリップの防止の効果が大きいため、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側に押しつけロール3を配置しなくてもよいと考えられるからである。なお、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に配置した押しつけロール3による板の変形の矯正と板のスリップの防止の効果が十分でないと考える場合には、それより下流側の誘導加熱装置2の出側、あるいは入り側と出側の両方に押しつけロール3を配置するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0029】
実施の形態3.
図4は本発明の実施の形態3の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図4において、実施の形態1と同様の構成は実施の形態1と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態3は、実施の形態2と同様に3基の誘導加熱装置2を使用した場合で、一番上流側の誘導加熱装置2の出側に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置することを前提とするが、結果的には互いに隣接する誘導加熱装置2の間にそれぞれ押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしたものである。
【0030】
このように、3基の誘導加熱装置2を使用した場合に、互いに隣接する誘導加熱装置2の間にそれぞれ押しつけロール3を配置するようにしたので、各押しつけロール3は各誘導加熱装置2の加熱により厚鋼板5に変形が生じた場合にその変形を出側の押しつけロール3により矯正し、それより下流側の誘導加熱装置2に厚鋼板5が入る前に板の変形の矯正と板のスリップの防止を図るようにしたものである。
このようにして厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。また、厚鋼板5が各誘導加熱装置2でそれぞれ加熱処理される毎に、厚鋼板5の残留応力が低減されることとなる。
【0031】
実施の形態4.
図5は本発明の実施の形態4の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図5において、実施の形態1と同様の構成は実施の形態1と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態4は、実施の形態2と同様に3基の誘導加熱装置2を使用した場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の出側直近に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するだけでなく、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側の直近に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしたものである。
【0032】
また、各誘導加熱装置2を挟むこととなる押しつけロール3の間隔、言い換えると、誘導加熱装置2の長さは、例えば製品である厚鋼板5の長さが30mとした場合に厚鋼板5の先後のそれぞれの切り落とし量である1m未満に設定されている。その理由は、押しつけロール3が効果を持つのは、厚鋼板5の先端と後端を除く部分であり、先端と後端は加熱不良が発生する可能性がある。このため、この加熱不良部分は通常製品とはならない先後端の切り落とし部分と一致させることが望ましいからである。但し、厚鋼板5は極めて剛性が高く、このような短い距離では押しつけロール3に要求される圧下力が莫大になるため、先後端の切り落としする距離を経済的に許容できる範囲で大きく取り、押しつけロール3の構成を簡易化することが有効である。従って、この経済的な距離、即ち誘導加熱装置2として利用可能な長さは、典型的な圧延長が30mの場合は、各2mとするのが限度である。
【0033】
この実施の形態4では、3基の誘導加熱装置2が使用された場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の後に押しつけロール3を配置するだけでなく、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側に押しつけロール3を配置するようにしたので、一番上流側の誘導加熱装置2の加熱により厚鋼板5に変形が生じた場合にその変形を出側の押しつけロール3により矯正し、その出側の押しつけロール3による厚鋼板5の変形の矯正が十分でなく、板のスリップを生じさせるおそれがあるときに、それより下流側の各誘導加熱装置2に厚鋼板5が入る前の入り側の押しつけロール3により板の変形が矯正されると共に板のスリップが防止され、各誘導加熱装置2による加熱処理により厚鋼板5に変形が生じた場合にもその変形を出側の押しつけロール3により矯正されることにより、厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。
【0034】
また、厚鋼板5が各誘導加熱装置2でそれぞれ加熱処理される毎に、厚鋼板5の残留応力が低減されることとなる。なお、対象とする鋼板寸法や加熱温度によっては、3台目の加熱による鋼板の変形やスリップの影響は小さいため、3台目の誘導加熱装置2の前後の押しつけロールを省略することも可能である。
【0035】
実施の形態5.
図6は本発明の実施の形態5の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図6において、実施の形態4と同様の構成は実施の形態4と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態5は、実施の形態4と異なり、3基の誘導加熱装置2を使用した場合で、一番上流側の誘導加熱装置2の入り側と出側の直近に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置し、それより下流側の誘導加熱装置2の入り側及び出側には押しつけロール3を配置しないようにしたものである。なお、図6の例では一番上流側の誘導熱装置の入り側と出側に押しつけロールを配置しているが、出側のみに押しつけロールを配置してもよい。
【0036】
これは、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に配置した押しつけロール3による板の変形の矯正と板のスリップの防止の効果が大きいため、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側に押しつけロール3を配置しなくてもよいと考えられたからである。なお、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に配置した押しつけロール3による板の変形の矯正と板のスリップの防止の効果が十分でないと考える場合には、それより下流側の誘導加熱装置2の出側或いは入り側と出側の両方に押しつけロール3を配置するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0037】
実施の形態6.
図7は本発明の実施の形態6の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図7において、実施の形態4と同様の構成は実施の形態4と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態6は、実施の形態5と同様に3基の誘導加熱装置2を使用した場合で、一番上流側の誘導加熱装置2の入り側に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置することを前提とするが、結果的には互いに隣接する誘導加熱装置2の間にそれぞれ押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしたものである。
このように、3基の誘導加熱装置2を使用した場合に、互いに隣接する誘導加熱装置2の間にそれぞれ押しつけロール3を配置するようにしたので、各押しつけロール3は各誘導加熱装置2の加熱による厚鋼板5に変形が生じた場合にその変形を出側の押しつけロール3により矯正し、それより下流側の誘導加熱装置2に厚鋼板5が入る前に板の変形の矯正と板のスリップの防止を図るようにしたものである。
【0038】
このようにして厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。また、厚鋼板5が各誘導加熱装置2でそれぞれ加熱処理される毎に、厚鋼板5の残留応力が低減されることとなる。
【0039】
実施の形態7.
図8は本発明の実施の形態7の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図8において、実施の形態4と同様の構成は実施の形態4と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態7は、実施の形態5と同様に3基の誘導加熱装置2を使用した場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の入り側と出側の直近にそれぞれ押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するだけでなく、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側の直近にも押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしたものである。
【0040】
この実施の形態7では、3基の誘導加熱装置2が使用された場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の入り側と出側に押しつけロール3を配置するだけでなく、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側にも押しつけロール3を配置するようにしたので、まず熱間圧延し、水冷した後の変形した厚鋼板5を、一番上流側の誘導加熱装置2の前に設置された押しつけロール2により板のスリップを防止すると共に厚鋼板5の変形を矯正して厚鋼板5を平坦化してからその誘導加熱装置2に入れる。
【0041】
次に、一番上流側の誘導加熱装置2の加熱による厚鋼板5に変形が生じた場合にその変形を出側の押しつけロール3により矯正し、その出側の押しつけロール3による厚鋼板5の変形の矯正が十分でなく、板のスリップを生じさせるおそれがあるときに、それより下流側の各誘導加熱装置2に厚鋼板5が入る前に入り側の押しつけロール3により板の変形が矯正されると共に板のスリップが防止され、各誘導加熱装置2による加熱処理により厚鋼板5に変形が生じた場合にもその変形を出側の押しつけロール3により矯正されることにより、厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。
【0042】
なお、下流側に矯正装置があるため、3台目の出側の押しつけロール3は省略してもよい。さらに、対象とする鋼板寸法や加熱温度によっては、2台目の誘導加熱装置2の出側の押しつけロール3で十分な矯正が可能なため、3台目の誘導加熱装置2の入り側の押しつけロール3も省略することが可能である。また、厚鋼板5が各誘導加熱装置2でそれぞれ加熱処理される毎に、厚鋼板5の残留応力が低減されることとなる。
上述した実施の形態1〜7では、誘導加熱装置2としてはソレノイド型のものを用いているが、トランスバース型のものを用いても、本発明を実施し得ることは勿論である。
【0043】
実施の形態8.
本発明者等は、板厚40mm、板幅2000mmの厚鋼板を用い、搬送ロール間に設けられたソレノイド型の誘導加熱装置で熱処理し、熱処理後の厚鋼板先端部の反りについて以下の検討を行った。それを実施の形態8として説明する。
【0044】
図9(A)〜(G)に示すように、誘導加熱装置2の入側や出側にある搬送ロール4の上方に、搬送ロール4に対向して厚鋼板5を上面から押しつけるための押しつけロール3を配置し、厚鋼板表面温度が60℃上昇するように加熱後、この押しつけロール3を厚鋼板5に80000Nの押しつけ力で押しつけ、誘導加熱装置2の出側における厚鋼板先端部の反り高さhを求めた。ここで、反り高さhは、図10に示すように、反りの生じた厚鋼板の最高点を反りが生じないとしたときの厚鋼板の表面から計った高さである。
【0045】
図11に、図9(A)〜(G)に示した押しつけロール3の配置と反り高さhの関係を示す。図9(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)のように、押しつけロール3を誘導加熱装置1の出側にある搬送ロール4の上方に、搬送ロール4に対向して設けた場合は、反り高さを20mm以下に抑えることができ、厚鋼板5が搬送ロール4や誘導加熱装置2と衝突するのを防止できる。
【0046】
押しつけロール3は、図9(C)や(E)のように誘導加熱装置2から1番目の搬送ロール4の上方に配置しても、図9(D)のように誘導加熱装置2から2番目の搬送ロール4の上方に配置しても、厚鋼板の反りを抑制できる。なお、3番目の搬送ロール4の上方に配置しても、同様な効果が得られる。ここで、2番目や3番目の搬送ロール4の上方に配置する場合には、厚鋼板の先端が加熱装置を通過した後、押しつけロール3に衝突したり押しつけロール3を乗り上げるようであれば、厚鋼板の先端を押しつけロール3に導くようにガイドロールなどを設置してもよい。
【0047】
複数台の誘導加熱装置2を設け、誘導加熱装置2間の距離を長くする場合は、図9(F)や(G)のように、誘導加熱装置2間の複数の搬送ロール4の上方に押しつけロール3を設けることが可能である。また、図9(F)のように、押しつけロール3は必ずしも搬送ロール4の直上に配置される必要はなく、押しつけロール3と搬送ロール4で厚鋼板5に押しつけ力が加えられるように配置されていればよい。また、図9(E)のように、誘導加熱装置2の入側にも押しつけロール3を設けると、誘導加熱装置2の入り側で厚鋼板5が図10に示すように幅方向で上側に反っているような場合により効果的である。一方、押しつけロール3が誘導加熱装置2の出側にある搬送ロール4の上方にない図9(A)や(B)の場合は、反り高さが40mmを超え、厚鋼板5が搬送ロール4や誘導加熱装置2と衝突する危険性が非常に高い。
【0048】
なお、誘導加熱装置2を複数台設ける場合には、押しつけロール3を少なくとも最上流にある誘導加熱装置2の出側に設ければ、厚鋼板5の反りは抑制できる。その理由は、最上流の誘導加熱装置2では厚鋼板5を加熱するときの温度上昇量が大きく、50℃以上の時、厚鋼板5に大きな反りが生じ易いためである。最上流の誘導加熱装置2以外の誘導加熱装置2においても大きな温度上昇量で加熱する場合もあるので、こうした誘導加熱装置2の出側にも押しつけロール3を設けることができる。
【0049】
また、押しつけロール3による押しつけ力は、上記検討では厚鋼板の板幅を一定としたので一定であるが、板幅に応じて適宜変更する必要がある。板幅が1000mm程度以上になると、反りは幅方向及び長手方向に生じるので、板幅が小さくなるほど大きな押しつけ力が必要となり、例えば、板幅が1000mm以上1500mm以下では100000N以上の押しつけ力が必要である。一方、板幅が3000mm以上だと、20000N程度の押しつけ力で十分である。さらに、誘導加熱装置2としては、トランスバース型のものを用いても同様な結果が得られる。
【0050】
実施の形態9.
厚鋼板の製造ラインとして、同一ライン上に、熱間圧延機と、加速冷却装置と、上述したような本発明である厚鋼板の熱処理装置とを配備したラインとすれば、より高い生産性で厚鋼板を安定製造できることになる。図12に本発明の製造ラインの一例を示す。加熱炉8で加熱されたスラブ7は熱間圧延機10で厚鋼板5に圧延される。厚鋼板5は、熱間圧延後、加速冷却装置20で急冷され、熱処理装置30で熱処理されて、所望の特性が付与される。熱処理装置30は、6台の誘導加熱装置2で構成されており、最上流の誘導加熱装置2の出側には搬送ロール4の直上に、搬送ロール4に対向して押しつけロール3が1本配置されている。
【0051】
誘導加熱装置2で熱処理された厚鋼板5は、厚鋼板の板幅に応じた押しつけ力で押しつけロール3により押されるので、大きく反ることはなく、下流にある誘導加熱装置2で問題なく熱処理を受けることができる。本熱処理装置30では、6台の誘導加熱装置2を有しているので1パスで所望の熱処理が行える。
【0052】
実施の形態10.
図13に本発明の製造ラインの別の例を示す。製造ラインの構成は図12の場合と同じであるが、本熱処理装置30の誘導加熱装置2の台数は3台である。図12の場合と同様に、押しつけロール3は、最上流の誘導加熱装置2の出側にある搬送ロール4の直上に、搬送ロール4に対向して1本配置されている。本熱処理装置30では、3台の誘導加熱装置2しかないので、リバースパスで熱処理を行うのが好ましい。なお、リバースパスでは、最初のパス以外は必ずしも押しつけロール3を使用する必要はないが、その場合は、押しつけ力を0にすればよい。なお、図12、図13の製造ラインにおいて、加速冷却装置20と熱処理装置30の間に、あるいは熱処理装置30の下流側に、矯正装置(ホットレベラー)を備えると、より平坦度の高い厚鋼板の製造が可能になる。
【実施例】
【0053】
実施例1.
本発明の実施例1では、図1に示す厚鋼板の熱処理装置を用いて矯正装置1により厚鋼板5の曲げ戻しをして真直化を行い、真直化された厚鋼板5を誘導加熱装置2により熱処理を実施し、次いで押しつけロール3で厚鋼板5の変形を抑えてスリップをなくし、目標の搬送速度を維持するようにし、その効果を調べた。ここで、厚鋼板5の真直化を行う矯正装置1は上1本、下2本の計3本のロールを配置したものである。
また、誘導加熱装置2は周波数1500Hzのソレノイド型のものであり、開口部が200mm×200mm、長さが1000mmで、出力は最大1MWである。
押しつけロール3はロール径200mmとして、圧下力を変えられるようにした。
厚鋼板5としては、厚さ25mm、幅100mm、長さ2mのものを用い、室温から目標温度を全長にわたり一様な温度300℃として、一定の速度で搬送ロール4を駆動して誘導加熱装置2により加熱を行った。
【0054】
また、比較例としては、実施例と同じサイズの厚鋼板に対して、図1に示す厚鋼板の熱処理装置のうち、押しつけロールが無いものにつき、矯正装置1により厚鋼板5の曲げ戻しをして真直化を行い、真直化された厚鋼板5を誘導加熱装置2により熱処理を実施し、その効果を調べた。なお、押しつけロールが無い以外は他の装置は実施例と全て同じ条件である。
押しつけロール3を用いない比較例の場合の加熱後の全長の温度分布の例は図14のようになっており、比較例では厚鋼板の先端部は約100mmほど上に反っていた。この板を加熱した際には先端は温度上昇量が小さかった。また、板の長さ中央が誘導加熱装置に近づいた際に、二度ほどスリップが発生し、搬送速度が遅くなるため、温度の高い部分があった。
【0055】
図14に示す温度変動をΔTとして、その結果を表1に比較例として示した。
また、本発明の実施例では、押しつけロール3の圧下力である押し付け力を3段階に変えた場合の温度変動ΔTの結果を下記の表1に本発明1〜3として示した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1を見て分かるように、押しつけロールを用いない比較例では加熱温度が一定にならないのに対し、押しつけロールを用いた本発明では、圧下力を増やすことで温度変動ΔTの偏差が減っており、その効果がわかる。
【0058】
実施例2.
図12又は図13の製造ラインを用いて、熱間圧延機10により表2に示すような板厚12−40mm、板幅1500−4000mmの厚鋼板を製造後、加速冷却装置20でほぼ室温まで急冷し、熱処理装置30の最上流の誘導加熱装置2により300℃まで加熱し、最上流の誘導加熱装置2の出側にある搬送ロール4上方に配置した押しつけロール3の押しつけ力を表2のように変えて、その後の厚鋼板5と搬送ロール4や誘導加熱装置2との衝突の有無を検討した。なお、図13の製造ラインを用い、厚鋼板を3パスで熱処理装置30を通過させた場合も検討したが、この場合は1パス目で押しつけロール3を使用した。誘導加熱装置2は、周波数1500Hzのソレノイド型で、コイルの開口部が200mm(高さ)×5000mm(幅)、長さが2000mm、最大出力が1MWである。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
押しつけロール3を用い、板幅に応じて適性な押しつけ力で厚鋼板を押しつけた本発明例(本発明4〜6)では、搬送ロール4や誘導加熱装置2との衝突は全く起こらなかった。図13の製造ラインを用いて、リバースパスで熱処理した場合には、1パス目で押しつけロール3を使用することにより、衝突を避けることができた。一方、押しつけロール3を用いなかったり、用いても小さな押しつけ力で厚鋼板を押しつけた比較例(従来例1〜4)では、搬送ロール4や誘導加熱装置2との衝突が起こった。
【符号の説明】
【0061】
1 矯正装置、2 誘導加熱装置、2a 誘導加熱装置の開口部、3 押しつけロール、4 搬送ロール、5 厚鋼板、7 誘導加熱装置の開口部、R 押しつけロールの径。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延した鋼板を材質調整のために再加熱して熱処理する厚鋼板の熱処理装置及び方法並びに厚鋼板の製造方法及び製造ラインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
厚鋼板の熱処理はバッチ式の再熱炉で行われることが多く、生産性に劣るため、従来より誘導加熱式の熱処理が提唱されていた。
従来の1つの誘導加熱式の熱処理方法は、誘導加熱炉を複数基配置した誘導加熱炉列によって厚板を連続的に加熱するに際し、最終誘導加熱炉に装入される厚板の幅方向端部は中央部に較べて高い温度であるため、最終誘導加熱炉に装入される前に厚板の端部の温度を中央部の温度よりも冷却水により低下させてから最終誘導加熱炉で厚板を加熱して幅方向の温度を均一にするようにしたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、従来のもう1つの誘導加熱式の熱処理方法は、金属材料の先端が誘導加熱炉内へ装入されたとき該誘導加熱炉の出口に、一方該金属材料の後端が該誘導加熱炉内へ装入されたとき該誘導加熱炉の入口に、熱発生体を位置せしめ、該金属材料の先、後端を加熱することにより、金属材料の先、後端と中央部の温度を均一に加熱するようにしたものである(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、従来のさらにもう1つの厚鋼板の熱処理方法は、熱間圧延後にオンライン上に設置した誘導加熱装置により厚鋼板を熱処理することにより、効率的に、大量に残留応力の少ない厚鋼板を熱処理するようにしたものである(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭48−25239号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開昭48−25237号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】特開2003−13133号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の誘導加熱式の熱処理を行えば、高能率で熱処理が行えることは自明であったが、現在に至るまで標準的な方法となっていない。これは、特許文献1や特許文献2に示されるように、被加熱材に対して均一加熱性の問題があったからである。
即ち、特許文献1に記載の誘導加熱式の熱処理方法では、幅方向の均一加熱性の問題を解決するものとしているが、長手方向の均一加熱性について考慮されておらず、予定しない温度分布となるという問題があったからである。
また、特許文献2に記載の誘導加熱式の熱処理方法では、長手方向の均一加熱性の問題を解決するものとしているが、長手方向における先尾端の冷えの問題は微々たるもので、全長にわたっての温度の均一性や予定温度に加熱することの方が大きな問題であったからである。
【0006】
さらに、特許文献3に記載の厚鋼板の熱処理方法は、オンライン上に設置した誘導加熱装置により厚鋼板を熱処理するが、これは鋼板が均一に加熱されることを前提とするものであり、形状の矯正をホットレベラーにより行うものである。
しかし、実際には誘導加熱装置による熱処理によって鋼板に反り等の変形が生じるが、鋼板が均一に加熱されることを前提としているためにかかる鋼板の変形については何等考慮されていないものであった。
【0007】
従って、誘導加熱装置によって熱処理され、鋼板が変形した場合に、厚鋼板を搬送する搬送ロールが所定の速度であっても、厚鋼板がスリップしてしまうという事態を生じさせるものであった。
また、厚鋼板の温度は、厚鋼板を送る搬送速度と誘導加熱装置の出力によって決まるが、厚鋼板がスリップすれば、そのスリップによって搬送速度が遅くなったり、或いは厚鋼板が誘導加熱装置の電磁力で吸引されることによって搬送速度が早くなったりし、搬送速度が変化してしまうために長手方向の温度が予期しないものとなってしまうという問題があった。
【0008】
さらに、誘導加熱装置は厚鋼板を通せる空間が限定されているため、誘導加熱装置を破壊しないように板の変形を矯正する必要があり、誘導加熱装置の前に厚鋼板の先端や尾端を平坦化する方法が必要になることが容易に想像できるが、事前に矯正したとしても、誘導加熱装置の加熱によって板の変形が発生する場合もある。
従って、誘導加熱装置の前に厚鋼板の平坦化する方法を採用しても依然として板の変形が生じ、この板の変形は主に反りや捩れであり、誘導加熱装置の破壊や、板が傾くことによって加熱の不良が発生して長手方向の温度が予定しない分布になるという問題が依然としてあるものである。
【0009】
また、誘導加熱装置を用いて厚鋼板を急速加熱すると、上述のように、厚鋼板を幅方向及び長手方向にわたって均−に熱処理することは難しく、厚鋼板には反りが生じるが、特に、幅の広い厚鋼板では、長手方向と幅方向に複合した大きな反りが生じ易く、そのため厚鋼板が、搬送ロールや複数の誘導加熱装置を設けた場合は次の誘導加熱装置に衝突して、厚鋼板の搬送が著しく阻害され、目標とする熱処理も行えなくなる。この点に関しては、上記のように、特許文献3には、誘導加熱装置の下流側にホットレべラーを配置する方法が提案されているが、ホットレべラーは大掛かりな装置であるため、誘導加熱装置に近接して配置できない、また、複数の誘導加熱装置を設けた場合は隣接する誘導加熱装置間に配置できないなどの問題があり、ホットレべラーでは上記のような厚鋼板と搬送ロールや誘導加熱装置との衝突を防止できない、という問題点がある。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、厚鋼板の長手方向の温度分布が予定したものになるようにすることを可能にした厚鋼板の熱処理装置及び方法並びにその熱処理装置を用いた厚鋼板の製造方法及び製造ラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る厚鋼板の熱処理装置は、厚鋼板を搬送するための複数の搬送ロールと、前記鋼板を加熱するための少なくとも1台の誘導加熱装置とを有し、前記誘導加熱装置は、隣接する前記搬送ロール間に配置され、かつ、前記誘導加熱装置のうち少なくとも最上流にある誘導加熱装置の出側には、板の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有し、前記厚鋼板を上面から押しつけるための押しつけロールが少なくとも1本設けられ、前記押しつけロールのうち少なくとも最上流にある押しつけロールは、前記誘導加熱装置の出側にある搬送ロールの上方に前記搬送ロールに対向して配置されている。
【0012】
本発明に係る厚鋼板の熱処理装置は、前記少なくとも最上流側にある誘導加熱装置の入側に、厚鋼板を上面から押しつけるための押しつけロールが少なくとも1本設けられたものである。
【0013】
また、本発明に係る厚鋼板の熱処理装置は、熱間圧延された厚鋼板を熱処理する誘導加熱装置と、誘導加熱装置により熱処理された板の変形を矯正する矯正装置をライン上に備えた厚鋼板の熱処理装置において、前記誘導加熱装置は複数台であり、そのうちの少なくとも一番上流側の誘導加熱装置の出側又は入り側と出側に、板の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有する押しつけロールをそれぞれ設けたことを特徴とする。
また、本発明の厚鋼板の熱処理装置は、互いに隣接する誘導加熱装置の間にそれぞれ前記押しつけロールを設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の厚鋼板の熱処理装置においては、前記押しつけロールのロール径は前記誘導加熱装置の開口部の寸法の約1/2より大きいことを特徴とする。
さらに、本発明の厚鋼板の熱処理装置においては、前記押しつけロールは、前記誘導加熱装置の電磁的な吸引、反発力による速度変化を抑制し得る回転力を有する駆動型のロールであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の厚鋼板の熱処理方法は、前記の厚鋼板の熱処理装置を用いて誘導加熱装置により熱処理された板の変形又は板のスリップを防止するようにしたものである。
また、本発明の厚鋼板の製造方法は、前記の熱処理装置を用いて厚鋼板を上面から押しつける工程を熱処理工程に含むものである。
【0016】
また、本発明の厚鋼板の製造ラインは、同一ライン上に、熱間圧延機と、加速冷却装置と、上記の熱処理装置とを備えたものである。
【0017】
また、本発明の厚鋼板の製造ラインは、前記加速冷却装置と前記熱処理装置との間に矯正装置を備えたものである。
また、本発明の厚鋼板の製造ラインは、前記熱処理装置の下流側に前記矯正装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、誘導加熱装置の熱処理により板が変形したときに生じるスリップと板の変形を押しつけロールによって防止することができ、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。このため、誘導加熱装置を用いても、鋼板の搬送が阻害されることなく目標とする熱処理を行うことができ、鋼板をより高い生産性で安定製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図2】誘導加熱装置による厚鋼板の先端の変形を示す側面図。
【図3】本発明の実施の形態2の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図4】本発明の実施の形態3の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図5】本発明の実施の形態4の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図6】本発明の実施の形態5の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図7】本発明の実施の形態6の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図8】本発明の実施の形態7の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図。
【図9】(A)〜(G)は押しつけロールの配置を示す図。
【図10】厚鋼板の反り高さhを定義する説明図。
【図11】図9(A)〜(G)の押しつけロールの配置条件と厚鋼板の反り高さhとの関係を示した図。
【図12】本発明の製造ラインの一例を示す図。
【図13】本発明の製造ラインの別の例を示す図。
【図14】比較例の温度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図、図2は誘導加熱装置による厚鋼板の先端の変形を示す側面図である。
図において、本発明の実施の形態1の厚鋼板の熱処理装置は、厚鋼板5を熱間圧延し、水冷した後に、板の変形を矯正する矯正装置1と、矯正装置1の後に設置され、急速加熱処理を行う1基の誘導加熱装置2と、誘導加熱装置2の後に設置されたピンチロール3とをライン上に備えたことを基本構成とする。なお、ピンチロール3は厚鋼板5の変形等を弾性変形内で防止するために所定の圧下力を有するものであり、厚鋼板5を押しつけることから本発明においては押しつけロールと称するものとする。4は矯正装置1の前と、押しつけロール3の対向位置と、該押しつけロール3より下流側とにそれぞれ設置され、厚鋼板5を搬送する搬送ロールである。この搬送ロール4は駆動源(図示省略)よって回転する駆動力を有するものである。なお、図において、鋼板は左から右へと搬送される。このことは後述する実施の形態の図についても同様である。
【0021】
矯正装置1は複数本の上、下ロールを配置してなり、繰り返し曲げによって反り等の圧延時や加速冷却時に生じた厚鋼板5の形状不良をなおすものである。
また、誘導加熱装置2はソレノイド型のものである。
押しつけロール3は搬送ロール4と対向して配置され、厚鋼板5に対して所定の圧下力を付与できるように構成されている。この押しつけロール3の圧下力は、厚鋼板5が押しつけロール3と搬送ロール4との間を通過する際に厚鋼板の変形又は厚鋼板のスリップを防止できる程度に設定されている。また、この押しつけロール3は自由に回転できるものである。そして、この押しつけロール3のロール径Rは、変形した厚鋼板5が押しつけロール3の軸心より上を通過しないように、誘導加熱装置2の開口2aのギャップGの半分以上の寸法に設定されている。これにより、鋼板の先端通過に応じて押しつけロール3を下げるような複雑な制御が不要となる。
【0022】
次に、本発明の実施の形態1の厚鋼板の熱処理装置の動作を説明する。
熱間圧延し、水冷した後の厚鋼板5は矯正装置1によって平坦化されていても、厚鋼板5を誘導加熱装置2を通過させて熱処理した場合に、図2に示すように加熱により厚鋼板5が上に反る変形を起こすことがある。
このように、厚鋼板5が上に反る変形を起こすと、加熱しなければならない厚鋼板5の質量は1/cosθだけ大きくなり、その分、目標の温度より低めに加熱されることとなる。また、厚鋼板5が下に反る変形を起こすと、搬送ロール4に衝突してスリップし、目標の搬送速度よりも遅くなるため、加熱される時間が長くなり、目標の温度より高く加熱されることとなる。
【0023】
このように誘導加熱装置2によって厚鋼板5に上反りや下反りの変形が生じたとしても、搬送ロール4の対向位置に所定の圧下力を有する押しつけロール3が有るため、押しつけロール3によってスリップが防止されると共に厚鋼板5の上反りや下反りの変形が矯正され、厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって目標の温度で加熱されることとなる。
【0024】
上述したように、温度の上昇量は厚鋼板5の変形による誘導加熱装置2内の質量増に反比例するから、cosθに比例することとなる。
従って、厚鋼板5が真っ直ぐであるθ=0°、cosθ=1に対して、工業的にはcosθ>0.995、θ<5.7°であるようにするのが良く、これは加熱による温度上昇量が500℃の場合で2.5℃の偏差以内で目標温度に加熱できることに相当する。
【0025】
この実施の形態1では、誘導加熱装置2の出側に押しつけロール3を搬送ロール4と対向させて設けたので、誘導加熱装置2の熱処理により板が変形したとしても、その板の変形は押しつけロール3によって矯正されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。
【0026】
なお、上記実施の形態1では、押しつけロール3は自由に回転できるものとしているが、押しつけロール3自体も駆動力を有するようにしてもよい。この場合、押しつけロール3と搬送ロール4の回転速度は同じにして両者の回転速度の同期を取ることが、厚鋼板5の搬送速度を一定にするために必要とされる。
このことは厚鋼板5の上反りや下反りが小さい場合には望ましいことであるが、厚鋼板5の上反りや下反りが大きい場合には押しつけロール3と搬送ロール4の回転速度を変えることにより、これらの反りを矯正することが可能となる。
また、押しつけロール3に駆動力を与えるようにするもう1つの理由は、誘導加熱装置2の電磁力により厚鋼板5の搬送速度が変化させられる場合に、その電磁力による速度変化に対抗させるためにトルクを所定の圧下力と相俟って付与することにある。
【0027】
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図3において、実施の形態1と同様の構成は実施の形態1と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態2は、実施の形態1と異なり、3基の誘導加熱装置2を使用したものである。この実施の形態2は、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置し、それより下流側の誘導加熱装置2の出側或いは入り側と出側の両方に押しつけロール3を配置しないようにしたものである。
【0028】
この実施の形態2では、3基の誘導加熱装置2が使用された場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近にだけ押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしている。これは、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に配置した押しつけロール3による板の変形の矯正と板のスリップの防止の効果が大きいため、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側に押しつけロール3を配置しなくてもよいと考えられるからである。なお、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に配置した押しつけロール3による板の変形の矯正と板のスリップの防止の効果が十分でないと考える場合には、それより下流側の誘導加熱装置2の出側、あるいは入り側と出側の両方に押しつけロール3を配置するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0029】
実施の形態3.
図4は本発明の実施の形態3の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図4において、実施の形態1と同様の構成は実施の形態1と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態3は、実施の形態2と同様に3基の誘導加熱装置2を使用した場合で、一番上流側の誘導加熱装置2の出側に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置することを前提とするが、結果的には互いに隣接する誘導加熱装置2の間にそれぞれ押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしたものである。
【0030】
このように、3基の誘導加熱装置2を使用した場合に、互いに隣接する誘導加熱装置2の間にそれぞれ押しつけロール3を配置するようにしたので、各押しつけロール3は各誘導加熱装置2の加熱により厚鋼板5に変形が生じた場合にその変形を出側の押しつけロール3により矯正し、それより下流側の誘導加熱装置2に厚鋼板5が入る前に板の変形の矯正と板のスリップの防止を図るようにしたものである。
このようにして厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。また、厚鋼板5が各誘導加熱装置2でそれぞれ加熱処理される毎に、厚鋼板5の残留応力が低減されることとなる。
【0031】
実施の形態4.
図5は本発明の実施の形態4の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図5において、実施の形態1と同様の構成は実施の形態1と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態4は、実施の形態2と同様に3基の誘導加熱装置2を使用した場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の出側直近に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するだけでなく、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側の直近に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしたものである。
【0032】
また、各誘導加熱装置2を挟むこととなる押しつけロール3の間隔、言い換えると、誘導加熱装置2の長さは、例えば製品である厚鋼板5の長さが30mとした場合に厚鋼板5の先後のそれぞれの切り落とし量である1m未満に設定されている。その理由は、押しつけロール3が効果を持つのは、厚鋼板5の先端と後端を除く部分であり、先端と後端は加熱不良が発生する可能性がある。このため、この加熱不良部分は通常製品とはならない先後端の切り落とし部分と一致させることが望ましいからである。但し、厚鋼板5は極めて剛性が高く、このような短い距離では押しつけロール3に要求される圧下力が莫大になるため、先後端の切り落としする距離を経済的に許容できる範囲で大きく取り、押しつけロール3の構成を簡易化することが有効である。従って、この経済的な距離、即ち誘導加熱装置2として利用可能な長さは、典型的な圧延長が30mの場合は、各2mとするのが限度である。
【0033】
この実施の形態4では、3基の誘導加熱装置2が使用された場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の後に押しつけロール3を配置するだけでなく、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側に押しつけロール3を配置するようにしたので、一番上流側の誘導加熱装置2の加熱により厚鋼板5に変形が生じた場合にその変形を出側の押しつけロール3により矯正し、その出側の押しつけロール3による厚鋼板5の変形の矯正が十分でなく、板のスリップを生じさせるおそれがあるときに、それより下流側の各誘導加熱装置2に厚鋼板5が入る前の入り側の押しつけロール3により板の変形が矯正されると共に板のスリップが防止され、各誘導加熱装置2による加熱処理により厚鋼板5に変形が生じた場合にもその変形を出側の押しつけロール3により矯正されることにより、厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。
【0034】
また、厚鋼板5が各誘導加熱装置2でそれぞれ加熱処理される毎に、厚鋼板5の残留応力が低減されることとなる。なお、対象とする鋼板寸法や加熱温度によっては、3台目の加熱による鋼板の変形やスリップの影響は小さいため、3台目の誘導加熱装置2の前後の押しつけロールを省略することも可能である。
【0035】
実施の形態5.
図6は本発明の実施の形態5の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図6において、実施の形態4と同様の構成は実施の形態4と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態5は、実施の形態4と異なり、3基の誘導加熱装置2を使用した場合で、一番上流側の誘導加熱装置2の入り側と出側の直近に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置し、それより下流側の誘導加熱装置2の入り側及び出側には押しつけロール3を配置しないようにしたものである。なお、図6の例では一番上流側の誘導熱装置の入り側と出側に押しつけロールを配置しているが、出側のみに押しつけロールを配置してもよい。
【0036】
これは、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に配置した押しつけロール3による板の変形の矯正と板のスリップの防止の効果が大きいため、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側に押しつけロール3を配置しなくてもよいと考えられたからである。なお、一番上流側の誘導加熱装置2の出側の直近に配置した押しつけロール3による板の変形の矯正と板のスリップの防止の効果が十分でないと考える場合には、それより下流側の誘導加熱装置2の出側或いは入り側と出側の両方に押しつけロール3を配置するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0037】
実施の形態6.
図7は本発明の実施の形態6の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図7において、実施の形態4と同様の構成は実施の形態4と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態6は、実施の形態5と同様に3基の誘導加熱装置2を使用した場合で、一番上流側の誘導加熱装置2の入り側に押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置することを前提とするが、結果的には互いに隣接する誘導加熱装置2の間にそれぞれ押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしたものである。
このように、3基の誘導加熱装置2を使用した場合に、互いに隣接する誘導加熱装置2の間にそれぞれ押しつけロール3を配置するようにしたので、各押しつけロール3は各誘導加熱装置2の加熱による厚鋼板5に変形が生じた場合にその変形を出側の押しつけロール3により矯正し、それより下流側の誘導加熱装置2に厚鋼板5が入る前に板の変形の矯正と板のスリップの防止を図るようにしたものである。
【0038】
このようにして厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。また、厚鋼板5が各誘導加熱装置2でそれぞれ加熱処理される毎に、厚鋼板5の残留応力が低減されることとなる。
【0039】
実施の形態7.
図8は本発明の実施の形態7の厚鋼板の熱処理装置の構成を示す側面図である。図8において、実施の形態4と同様の構成は実施の形態4と同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。この実施の形態7は、実施の形態5と同様に3基の誘導加熱装置2を使用した場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の入り側と出側の直近にそれぞれ押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するだけでなく、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側の直近にも押しつけロール3を搬送ロール4と対向して配置するようにしたものである。
【0040】
この実施の形態7では、3基の誘導加熱装置2が使用された場合に、一番上流側の誘導加熱装置2の入り側と出側に押しつけロール3を配置するだけでなく、それより下流側の各誘導加熱装置2の入り側と出側にも押しつけロール3を配置するようにしたので、まず熱間圧延し、水冷した後の変形した厚鋼板5を、一番上流側の誘導加熱装置2の前に設置された押しつけロール2により板のスリップを防止すると共に厚鋼板5の変形を矯正して厚鋼板5を平坦化してからその誘導加熱装置2に入れる。
【0041】
次に、一番上流側の誘導加熱装置2の加熱による厚鋼板5に変形が生じた場合にその変形を出側の押しつけロール3により矯正し、その出側の押しつけロール3による厚鋼板5の変形の矯正が十分でなく、板のスリップを生じさせるおそれがあるときに、それより下流側の各誘導加熱装置2に厚鋼板5が入る前に入り側の押しつけロール3により板の変形が矯正されると共に板のスリップが防止され、各誘導加熱装置2による加熱処理により厚鋼板5に変形が生じた場合にもその変形を出側の押しつけロール3により矯正されることにより、厚鋼板5が平坦化されるため、目標の搬送速度が維持されることとなり、加熱時間も一定となって厚鋼板5がその長手方向において目標の温度で加熱されることとなる。
【0042】
なお、下流側に矯正装置があるため、3台目の出側の押しつけロール3は省略してもよい。さらに、対象とする鋼板寸法や加熱温度によっては、2台目の誘導加熱装置2の出側の押しつけロール3で十分な矯正が可能なため、3台目の誘導加熱装置2の入り側の押しつけロール3も省略することが可能である。また、厚鋼板5が各誘導加熱装置2でそれぞれ加熱処理される毎に、厚鋼板5の残留応力が低減されることとなる。
上述した実施の形態1〜7では、誘導加熱装置2としてはソレノイド型のものを用いているが、トランスバース型のものを用いても、本発明を実施し得ることは勿論である。
【0043】
実施の形態8.
本発明者等は、板厚40mm、板幅2000mmの厚鋼板を用い、搬送ロール間に設けられたソレノイド型の誘導加熱装置で熱処理し、熱処理後の厚鋼板先端部の反りについて以下の検討を行った。それを実施の形態8として説明する。
【0044】
図9(A)〜(G)に示すように、誘導加熱装置2の入側や出側にある搬送ロール4の上方に、搬送ロール4に対向して厚鋼板5を上面から押しつけるための押しつけロール3を配置し、厚鋼板表面温度が60℃上昇するように加熱後、この押しつけロール3を厚鋼板5に80000Nの押しつけ力で押しつけ、誘導加熱装置2の出側における厚鋼板先端部の反り高さhを求めた。ここで、反り高さhは、図10に示すように、反りの生じた厚鋼板の最高点を反りが生じないとしたときの厚鋼板の表面から計った高さである。
【0045】
図11に、図9(A)〜(G)に示した押しつけロール3の配置と反り高さhの関係を示す。図9(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)のように、押しつけロール3を誘導加熱装置1の出側にある搬送ロール4の上方に、搬送ロール4に対向して設けた場合は、反り高さを20mm以下に抑えることができ、厚鋼板5が搬送ロール4や誘導加熱装置2と衝突するのを防止できる。
【0046】
押しつけロール3は、図9(C)や(E)のように誘導加熱装置2から1番目の搬送ロール4の上方に配置しても、図9(D)のように誘導加熱装置2から2番目の搬送ロール4の上方に配置しても、厚鋼板の反りを抑制できる。なお、3番目の搬送ロール4の上方に配置しても、同様な効果が得られる。ここで、2番目や3番目の搬送ロール4の上方に配置する場合には、厚鋼板の先端が加熱装置を通過した後、押しつけロール3に衝突したり押しつけロール3を乗り上げるようであれば、厚鋼板の先端を押しつけロール3に導くようにガイドロールなどを設置してもよい。
【0047】
複数台の誘導加熱装置2を設け、誘導加熱装置2間の距離を長くする場合は、図9(F)や(G)のように、誘導加熱装置2間の複数の搬送ロール4の上方に押しつけロール3を設けることが可能である。また、図9(F)のように、押しつけロール3は必ずしも搬送ロール4の直上に配置される必要はなく、押しつけロール3と搬送ロール4で厚鋼板5に押しつけ力が加えられるように配置されていればよい。また、図9(E)のように、誘導加熱装置2の入側にも押しつけロール3を設けると、誘導加熱装置2の入り側で厚鋼板5が図10に示すように幅方向で上側に反っているような場合により効果的である。一方、押しつけロール3が誘導加熱装置2の出側にある搬送ロール4の上方にない図9(A)や(B)の場合は、反り高さが40mmを超え、厚鋼板5が搬送ロール4や誘導加熱装置2と衝突する危険性が非常に高い。
【0048】
なお、誘導加熱装置2を複数台設ける場合には、押しつけロール3を少なくとも最上流にある誘導加熱装置2の出側に設ければ、厚鋼板5の反りは抑制できる。その理由は、最上流の誘導加熱装置2では厚鋼板5を加熱するときの温度上昇量が大きく、50℃以上の時、厚鋼板5に大きな反りが生じ易いためである。最上流の誘導加熱装置2以外の誘導加熱装置2においても大きな温度上昇量で加熱する場合もあるので、こうした誘導加熱装置2の出側にも押しつけロール3を設けることができる。
【0049】
また、押しつけロール3による押しつけ力は、上記検討では厚鋼板の板幅を一定としたので一定であるが、板幅に応じて適宜変更する必要がある。板幅が1000mm程度以上になると、反りは幅方向及び長手方向に生じるので、板幅が小さくなるほど大きな押しつけ力が必要となり、例えば、板幅が1000mm以上1500mm以下では100000N以上の押しつけ力が必要である。一方、板幅が3000mm以上だと、20000N程度の押しつけ力で十分である。さらに、誘導加熱装置2としては、トランスバース型のものを用いても同様な結果が得られる。
【0050】
実施の形態9.
厚鋼板の製造ラインとして、同一ライン上に、熱間圧延機と、加速冷却装置と、上述したような本発明である厚鋼板の熱処理装置とを配備したラインとすれば、より高い生産性で厚鋼板を安定製造できることになる。図12に本発明の製造ラインの一例を示す。加熱炉8で加熱されたスラブ7は熱間圧延機10で厚鋼板5に圧延される。厚鋼板5は、熱間圧延後、加速冷却装置20で急冷され、熱処理装置30で熱処理されて、所望の特性が付与される。熱処理装置30は、6台の誘導加熱装置2で構成されており、最上流の誘導加熱装置2の出側には搬送ロール4の直上に、搬送ロール4に対向して押しつけロール3が1本配置されている。
【0051】
誘導加熱装置2で熱処理された厚鋼板5は、厚鋼板の板幅に応じた押しつけ力で押しつけロール3により押されるので、大きく反ることはなく、下流にある誘導加熱装置2で問題なく熱処理を受けることができる。本熱処理装置30では、6台の誘導加熱装置2を有しているので1パスで所望の熱処理が行える。
【0052】
実施の形態10.
図13に本発明の製造ラインの別の例を示す。製造ラインの構成は図12の場合と同じであるが、本熱処理装置30の誘導加熱装置2の台数は3台である。図12の場合と同様に、押しつけロール3は、最上流の誘導加熱装置2の出側にある搬送ロール4の直上に、搬送ロール4に対向して1本配置されている。本熱処理装置30では、3台の誘導加熱装置2しかないので、リバースパスで熱処理を行うのが好ましい。なお、リバースパスでは、最初のパス以外は必ずしも押しつけロール3を使用する必要はないが、その場合は、押しつけ力を0にすればよい。なお、図12、図13の製造ラインにおいて、加速冷却装置20と熱処理装置30の間に、あるいは熱処理装置30の下流側に、矯正装置(ホットレベラー)を備えると、より平坦度の高い厚鋼板の製造が可能になる。
【実施例】
【0053】
実施例1.
本発明の実施例1では、図1に示す厚鋼板の熱処理装置を用いて矯正装置1により厚鋼板5の曲げ戻しをして真直化を行い、真直化された厚鋼板5を誘導加熱装置2により熱処理を実施し、次いで押しつけロール3で厚鋼板5の変形を抑えてスリップをなくし、目標の搬送速度を維持するようにし、その効果を調べた。ここで、厚鋼板5の真直化を行う矯正装置1は上1本、下2本の計3本のロールを配置したものである。
また、誘導加熱装置2は周波数1500Hzのソレノイド型のものであり、開口部が200mm×200mm、長さが1000mmで、出力は最大1MWである。
押しつけロール3はロール径200mmとして、圧下力を変えられるようにした。
厚鋼板5としては、厚さ25mm、幅100mm、長さ2mのものを用い、室温から目標温度を全長にわたり一様な温度300℃として、一定の速度で搬送ロール4を駆動して誘導加熱装置2により加熱を行った。
【0054】
また、比較例としては、実施例と同じサイズの厚鋼板に対して、図1に示す厚鋼板の熱処理装置のうち、押しつけロールが無いものにつき、矯正装置1により厚鋼板5の曲げ戻しをして真直化を行い、真直化された厚鋼板5を誘導加熱装置2により熱処理を実施し、その効果を調べた。なお、押しつけロールが無い以外は他の装置は実施例と全て同じ条件である。
押しつけロール3を用いない比較例の場合の加熱後の全長の温度分布の例は図14のようになっており、比較例では厚鋼板の先端部は約100mmほど上に反っていた。この板を加熱した際には先端は温度上昇量が小さかった。また、板の長さ中央が誘導加熱装置に近づいた際に、二度ほどスリップが発生し、搬送速度が遅くなるため、温度の高い部分があった。
【0055】
図14に示す温度変動をΔTとして、その結果を表1に比較例として示した。
また、本発明の実施例では、押しつけロール3の圧下力である押し付け力を3段階に変えた場合の温度変動ΔTの結果を下記の表1に本発明1〜3として示した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1を見て分かるように、押しつけロールを用いない比較例では加熱温度が一定にならないのに対し、押しつけロールを用いた本発明では、圧下力を増やすことで温度変動ΔTの偏差が減っており、その効果がわかる。
【0058】
実施例2.
図12又は図13の製造ラインを用いて、熱間圧延機10により表2に示すような板厚12−40mm、板幅1500−4000mmの厚鋼板を製造後、加速冷却装置20でほぼ室温まで急冷し、熱処理装置30の最上流の誘導加熱装置2により300℃まで加熱し、最上流の誘導加熱装置2の出側にある搬送ロール4上方に配置した押しつけロール3の押しつけ力を表2のように変えて、その後の厚鋼板5と搬送ロール4や誘導加熱装置2との衝突の有無を検討した。なお、図13の製造ラインを用い、厚鋼板を3パスで熱処理装置30を通過させた場合も検討したが、この場合は1パス目で押しつけロール3を使用した。誘導加熱装置2は、周波数1500Hzのソレノイド型で、コイルの開口部が200mm(高さ)×5000mm(幅)、長さが2000mm、最大出力が1MWである。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
押しつけロール3を用い、板幅に応じて適性な押しつけ力で厚鋼板を押しつけた本発明例(本発明4〜6)では、搬送ロール4や誘導加熱装置2との衝突は全く起こらなかった。図13の製造ラインを用いて、リバースパスで熱処理した場合には、1パス目で押しつけロール3を使用することにより、衝突を避けることができた。一方、押しつけロール3を用いなかったり、用いても小さな押しつけ力で厚鋼板を押しつけた比較例(従来例1〜4)では、搬送ロール4や誘導加熱装置2との衝突が起こった。
【符号の説明】
【0061】
1 矯正装置、2 誘導加熱装置、2a 誘導加熱装置の開口部、3 押しつけロール、4 搬送ロール、5 厚鋼板、7 誘導加熱装置の開口部、R 押しつけロールの径。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚鋼板を搬送するための複数の搬送ロールと、
前記厚鋼板を加熱するための少なくとも1台の誘導加熱装置とを有し、
前記誘導加熱装置は、隣接する前記搬送ロール間に配置され、かつ、
前記誘導加熱装置のうち少なくとも最上流にある誘導加熱装置の出側には、板の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有し、前記厚鋼板を上面から押しつけるための押しつけロールが少なくとも1本設けられ、
前記押しつけロールのうち少なくとも最上流にある押しつけロールは、前記誘導加熱装置の出側にある搬送ロールの上方に前記搬送ロールに対向して配置されている
ことを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
【請求項2】
前記最上流にある誘導加熱装置の入側に、厚鋼板を上面から押しつけるための押しつけロールが少なくとも1本設けられたことを特徴とする請求項1記載の厚鋼板の熱処理装置。
【請求項3】
熱間圧延された厚鋼板を熱処理する誘導加熱装置と、誘導加熱装置により熱処理された板の変形を矯正する矯正装置をライン上に備えた厚鋼板の熱処理装置において、
前記誘導加熱装置は複数台であり、そのうちの少なくとも一番上流側の誘導加熱装置の出側又は入り側と出側に、板の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有する押しつけロールをそれぞれ設けたことを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
【請求項4】
互いに隣接する誘導加熱装置の間にそれぞれ前記押しつけロールを設けたことを特徴とする請求項3記載の厚鋼板の熱処理装置。
【請求項5】
前記押しつけロールのロール径は前記誘導加熱装置の開口部の寸法の約1/2より大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の厚鋼板の熱処理装置。
【請求項6】
前記押しつけロールは、前記誘導加熱装置の電磁的な吸引、反発力による速度変化を抑制し得る回転力を有する駆動型のロールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の厚鋼板の熱処理装置。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の熱処理装置を用いて誘導加熱装置により熱処理された板の変形又は板のスリップを防止する厚鋼板の熱処理方法。
【請求項8】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の熱処理装置を用いて厚鋼板を上面から押しつける工程を熱処理工程に含むことを特徴とする厚鋼板の製造方法。
【請求項9】
同一ライン上に、熱間圧延機と、加速冷却装置と、請求項1又2記載の厚鋼板の熱処理装置とを備えたことを特徴とする厚鋼板の製造ライン。
【請求項10】
前記加速冷却装置と前記熱処理装置との間に矯正装置を備えたことを特徴とする請求項9記載の厚鋼板の製造ライン。
【請求項11】
前記熱処理装置の下流側に矯正装置を備えたことを特徴とする請求項9又は10記載の厚鋼板の製造ライン。
【請求項1】
厚鋼板を搬送するための複数の搬送ロールと、
前記厚鋼板を加熱するための少なくとも1台の誘導加熱装置とを有し、
前記誘導加熱装置は、隣接する前記搬送ロール間に配置され、かつ、
前記誘導加熱装置のうち少なくとも最上流にある誘導加熱装置の出側には、板の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有し、前記厚鋼板を上面から押しつけるための押しつけロールが少なくとも1本設けられ、
前記押しつけロールのうち少なくとも最上流にある押しつけロールは、前記誘導加熱装置の出側にある搬送ロールの上方に前記搬送ロールに対向して配置されている
ことを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
【請求項2】
前記最上流にある誘導加熱装置の入側に、厚鋼板を上面から押しつけるための押しつけロールが少なくとも1本設けられたことを特徴とする請求項1記載の厚鋼板の熱処理装置。
【請求項3】
熱間圧延された厚鋼板を熱処理する誘導加熱装置と、誘導加熱装置により熱処理された板の変形を矯正する矯正装置をライン上に備えた厚鋼板の熱処理装置において、
前記誘導加熱装置は複数台であり、そのうちの少なくとも一番上流側の誘導加熱装置の出側又は入り側と出側に、板の変形又はスリップを防止するための所定の圧下力を有する押しつけロールをそれぞれ設けたことを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
【請求項4】
互いに隣接する誘導加熱装置の間にそれぞれ前記押しつけロールを設けたことを特徴とする請求項3記載の厚鋼板の熱処理装置。
【請求項5】
前記押しつけロールのロール径は前記誘導加熱装置の開口部の寸法の約1/2より大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の厚鋼板の熱処理装置。
【請求項6】
前記押しつけロールは、前記誘導加熱装置の電磁的な吸引、反発力による速度変化を抑制し得る回転力を有する駆動型のロールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の厚鋼板の熱処理装置。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の熱処理装置を用いて誘導加熱装置により熱処理された板の変形又は板のスリップを防止する厚鋼板の熱処理方法。
【請求項8】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の熱処理装置を用いて厚鋼板を上面から押しつける工程を熱処理工程に含むことを特徴とする厚鋼板の製造方法。
【請求項9】
同一ライン上に、熱間圧延機と、加速冷却装置と、請求項1又2記載の厚鋼板の熱処理装置とを備えたことを特徴とする厚鋼板の製造ライン。
【請求項10】
前記加速冷却装置と前記熱処理装置との間に矯正装置を備えたことを特徴とする請求項9記載の厚鋼板の製造ライン。
【請求項11】
前記熱処理装置の下流側に矯正装置を備えたことを特徴とする請求項9又は10記載の厚鋼板の製造ライン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−98393(P2011−98393A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22471(P2011−22471)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2005−14528(P2005−14528)の分割
【原出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2005−14528(P2005−14528)の分割
【原出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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