原子炉一次系配管の内壁位置同定装置
【課題】原子炉一次系配管内壁に付着した放射性核種からの放射線を定量することで、内壁位置を、被曝量の問題を回避しながら精度高く同定すること。
【解決手段】一次系配管を挟んでほぼ直線上に設置され、一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、放射線検出器を一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、移動した放射線検出器の位置で同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、対消滅γ線強度分布に基づいて一次系配管の断面内の位置と放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から一次系配管の断面内の位置を同定する位置関係同定装置と、を備える。
【解決手段】一次系配管を挟んでほぼ直線上に設置され、一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、放射線検出器を一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、移動した放射線検出器の位置で同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、対消滅γ線強度分布に基づいて一次系配管の断面内の位置と放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から一次系配管の断面内の位置を同定する位置関係同定装置と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉運転中に行われる一次系配管内の放射線をモニタリングする際に必要とされる配管内壁部分と放射線検出器との位置関係を正確に同定するために、定期検査期間中に配管内壁に付着した放射性核種から放射される放射線を定量し、放射線検出器位置を移動させることで得られる放射線強度分布から配管の内壁位置を同定する原子炉一次系配管の内壁位置同定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉運転中に行われる原子炉一次系配管(以下「一次系配管」という。)内の放射線をオンラインで監視するモニタリング装置(以下「放射線オンラインモニタ」という。)は、原子炉格納容器内の放射線線量が定期検査時と比べて非常に高いので、定期検査時と同じ方法での計測を実施できず、定期検査時に使用される装置を使用することができない。
【0003】
原子炉運転中の一次系配管内を流れる原子炉冷却材に含まれ、計測精度を低下させる妨害放射性核種(例えば、N-13、N-16、F-18、等)によるバックグラウンドの影響を最小限にするため、放射線オンラインモニタはそのコリメータが見込む一次系配管の表面積及び体積の比を最適とする必要がある。そして、そのためには、一次系配管内壁部分と、放射線オンラインモニタに備え付けられる放射線検出器の位置関係を正確に把握する必要がある。
【0004】
現在、上記した一次系配管内壁部分と放射線検出器の位置関係は、保温材の外側から実寸するか、保温材を剥して一次系配管の外側から実寸かして、設計時に定められた配管厚さと保温材厚さを用いて推定することが可能ではある。しかし定期検査中の原子炉格納容器内でも比較的放射線線量が高いため被曝量の増加につながり、長時間の実寸を行うことは困難である。さらに、実際のプラント環境における保温材は、変形等により設計時に定められたとおりの均一の厚さではないことが多い。そのため、実寸による方法では、高精度の位置関係の把握は困難である。そのため、放射線オンラインモニタから得られる放射性核種の一次系配管内壁付着濃度を、高精度に計測することは極めて難しいのが現状である。
【0005】
原子炉一次系配管内壁部分と放射線検出器の位置関係を同定できれば、放射線モニタリング装置の計測精度の向上を効果的に実現し、被曝量を効果的に低減することができる。これに関連する従来技術として、特許文献1は、配管内面にほぼ一様に沈着した放射能と、配管内部にほぼ一様に分布した水溶液状放射能と、配管内部にほぼ一様に分布したガス状放射能から放射されるγ線の検出システムを用いて、その検出システムの配管を臨む角度を変えることにより、2箇所以上の測定箇所で測定された2つ以上のγ線測定値と、測定の前段階から分かっている配管の内径、配管の外径、配管の軸から検出器までの距離等を使用して放射能を定量する配管内部放射能測定法を開示している。
【0006】
また、特許文献2は、妨害核種を含む試料についてポジトロン(陽電子)放出核種の放射能を、一対のシンチレーション検出器と同時計数回路を使用して正確に測定し、かつ広い測定範囲をカバーする対消滅γ線を検出する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−223686号公報
【特許文献2】特開平8−285946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、保温材の外側からの実寸作業には、原子炉格納容器内の放射線線量が比較的高いために、被曝量の増加につながるという基本的には問題があり、特に保温材を剥してからの実寸作業では、被曝線量が更に増加してしまう。
【0009】
特許文献1は、配管内部の放射能を正確に定量するための技術の一つを開示するものであるが、一次系配管と放射線検出器の位置関係については、従来の実寸と設計値を使用するものであり、被曝量の増加の問題を解消することはできず、放射線測定による位置関係同定についての記載は一切ないし、放射線測定技術として、妨害放射線の寄与を効果的に低減できる同時計数法に関する記載も全くない。そして、特許文献1は、放射線オンラインモニタに設置される放射線検出器が見込む一次系配管表面積と一次系配管体積の比を最適にするための位置関係を正確に把握するという本発明の課題に対し、解決手段を与えるものでもない。
【0010】
特許文献2は、対消滅γ線の同時計数技術の一つを開示するものである。しかし、特許文献2には、検出器装置の移動による対消滅γ線強度分布に関する記載は全くなく、一次系配管の内壁位置を正確に測定する上で、更なる精度向上が求められている。
本発明は、上述の課題を解決する原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置は、i)原子炉一次系配管を挟んでほぼ直線上の対向する位置に設置される検出器であって、原子炉の運転によって前記一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、ii)前記対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、iii)前記放射線検出器を前記一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、iv)前記検出器移動装置によって移動した放射線検出器の位置で前記同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、前記放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、v)前記対消滅γ線強度分布に基づいて、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から前記一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置は、i)原子炉一次系配管を挟んでほぼ直線上の対向する位置に設置される検出器であって、原子炉の運転によって前記一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、ii)前記放射性核種が前記陽電子を放射するのとほぼ同時刻に4π方向へ放射するカスケードγ線を検出するカスケードγ線用放射線検出器と、iii)前記対消滅γ線及び前記カスケードγ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、iv)前記放射線検出器を前記一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、v)前記カスケードγ線用放射線検出器が見込む測定領域と前記放射線検出器が見込む測定領域が重なるように前記カスケードγ線用放射線検出器を移動させるカスケードγ線検出器移動装置と、vi)前記検出器移動装置及び前記カスケードγ線検出器移動装置によって移動した各放射線検出器の位置で前記同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、前記放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、vii)前記対消滅γ線強度分布に基づいて、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から前記一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置の上記位置関係同定装置は、前記対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる前記放射線検出器位置を前記一次系配管の軸部分の位置とし、前記強度分布のほぼ対称中心となる前記検出器位置から前記強度分布の変曲点箇所までの距離を、前記一次系配管の軸から前記検出器移動装置の移動方向へ平行移動したときの距離とすることにより、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との前記相関を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一次系配管に付着する放射性核種を利用して原子炉一次系配管の内壁位置を同定することにより、放射線オンラインモニタを高精度に設置することができる。また、従来の方法と比較して、作業中の被曝量を低減することができる。さらに、放射線検出器として、Ge半導体検出器等の半導体検出器だけでなく、安価なシンチレータを採用することができるので、コストを低減することができる。また、対消滅γ線はほぼ対向に放射される特徴を有しているため、検出する放射線の指向性を確保するためのコリメータなしに高精度計測が可能となる。
以上のとおり、本発明は、従来の技術と比較して顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置のブロック構成を示す。
【図2】実施例1の検出器設置の一例を示す。
【図3】実施例1の同時計数回路系により得られるエネルギースペクトルの説明図を示す。
【図4】実施例1の一対の放射線検出器が移動する様子と、検出器が見込む一次系配管内面積分布を示す。
【図5】実施例1の検出器移動装置が一次系配管の円周方向に移動する様子を示す。
【図6】一次系配管3の配管厚が対消滅γ線をほぼ減衰しない程度のものであるとしたときの対消滅γ線強度分布34を示す。
【図7】一次系配管3の配管厚により対消滅γ線が減衰するとしたときの対消滅γ線強度分布34を示す。
【図8】放射線検出器位置と一次系配管3の断面に沿った方向の位置の相関図を示す。
【図9】本発明の実施例2の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置のブロック構成を示す。
【図10】計測対象核種の一例として、Co−58による崩壊過程を示す。
【図11】本発明の実施例3の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置が備える放射線検出器のコリメータの形状を円柱とした場合の検出面を示す。
【図12】本発明の実施例3の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置が備える放射線検出器のコリメータの形状を角柱とした場合の検出面を示す。
【図13】本発明の実施例4の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、一例として3対の放射線検出器がそれぞれ検出器移動装置7に設置された様子を示す。
【図14】本発明の実施例4の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、一例として3対の検出器移動装置7が隣接する検出器移動装置7に接続されないで配置された様子を示す。
【図15】本発明の実施例5の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置における、一対のアレイ型放射線検出器の配置された様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、本発明者らが、一次系配管内に付着する放射性核種を利用して保温材の外側を実寸したり、保温材を剥して一次系配管を実寸したりすることなく、一次系配管内壁部分と放射線検出器との位置関係を正確に同定する方法を種々検討して得た新たな知見に基づいてなされたものである。
【0017】
この知見は、一次系配管に対してほぼ直線上の対向する位置に設置され、原子炉の運転によって一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、
対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、
一対の放射線検出器を一次系配管の断面方向とほぼ平行に移動する検出器移動装置と、
検出器移動装置によって移動した放射線検出器位置毎の同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、
対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置を一次系配管の軸部分の位置とし、対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置から変曲点箇所の放射線検出器位置までの距離を、一次系配管の軸から放射線検出器移動方向へ平行に動いた距離とすることで、放射線検出器位置と一次系配管の断面方向位置との相関を算出し、任意の放射線検出器位置から一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置を備えることで、原子炉一次系配管の内壁位置同定が可能となる、というものである。上記の新たな知見の内容を以下に具体的に説明する。
【0018】
対消滅γ線のための放射線検出器は、一般的なγ線検出器を用いる。例えばシンチレーション検出器の場合には、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaBr3(Ce)、BGO、GSO(Ce)、LuAG(Pr)等があり、また、半導体検出器の場合には、Ge、CdTe、CZT等があるが、いずれも本発明に適用可能である。
【0019】
原子炉の運転によって一次系配管に付着する放射性核種としては、Co−60、Co−58、Mn−54、Fe−59等が挙げられる。一次系配管の炉水中に含まれる放射性核種としては、N−13、N−16、F−18、O−19等が挙げられる。ここで、Co−60は原子炉構造材中に含まれるCo−59の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、以下、同じくCo−58はNi−58の(n,p)反応の、Mn−54はFe−54の(n,p)反応の、Fe−59はFe−58の(n,γ)反応の、N−13は水分子のO−16の(p,α)反応の、N−16はO−16の(n,γ)反応の、F−18はO−18の(p,n)反応の、O−19はO−18の(n,γ)反応の結果、生成される放射性核種である。
【0020】
これらの放射性核種の中で、対消滅γ線を放射するのは、Co−58、N−13、F−18である。いずれもβ+崩壊により生じた陽電子が近傍の電子と相互作用を起こし、2つの同じエネルギーのγ線を同時刻にほぼ180度の両方向へ放射する。電子及び陽電子の質量エネルギーは1.022MeVであるため、2つのγ線のエネルギーはそれぞれ511keVとなる。ここでCo−58、N−13、F−18の半減期は、それぞれ約70.86日、約9.965分、約109.8分となることから、炉水中に含まれるN−13及びF−18は、定期検査時には原子炉稼動中と比べて大幅に減衰しており、Co−58に寄与する対消滅γ線強度と比較して大幅に少なくなることが容易に予想される。それゆえ、定期検査時に計測される対消滅γ線のほとんどがCo−58由来のものである。
【0021】
同時計数法は、1回の壊変に起因する2つの放射線が2台の放射線検出器にほぼ同時刻に入射し、γ線検出信号となるときのみ計数する放射線計測回路装置である。この計測方法は、例えば一次系配管に付着するCo−60から放射されるカスケードγ線(γ線エネルギー1.173MeV、1.332MeV)及び原子炉格納容器内のあらゆる箇所に存在する妨害核種からのバックグラウンドγ線を計数することがないので、全吸収ピークの高いS/N比を得ることができる。対消滅γ線のエネルギーは511keVのみであるので、同時計数回路装置の出力は多チャンネル波高分析器にて波高分布としてデータ処理され、得られたエネルギースペクトルは単一のピークとなる。このピークの正味の計数値及び計測時間から同時計数による計数値、すなわち対消滅γ線強度を得ることができる。
【0022】
一対の放射線検出器は、それぞれ検出器移動装置に設置されており、放射線検出器の任意の位置で同時計数回路装置による計数値、すなわち対消滅γ線強度を得ることができる。さらに、得られた対消滅γ線強度のデータから、各放射線検出器位置における対消滅γ線強度分布としてデータ処理する装置を備える。取得された対消滅γ線強度分布では、分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置の1箇所と変曲点箇所の放射線検出器位置の2箇所を確認することができる。ここで分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置は、放射線検出器の検出面中心軸と一次系配管軸部分とが交わる位置を意味している。また変曲点箇所の放射線検出器位置は、一対の放射線検出器の計測領域が一次系配管の縁を見込む位置、つまり一対の放射線検出器が見込む一次系配管内壁面積が最大になる位置を意味している。
【0023】
分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置から変曲点箇所の放射線検出器位置までの距離は、一次系配管軸から、検出器の移動方向(と平行な方向)における一次系配管の縁までの距離に相当する。これにより、放射線検出器位置と、一次系配管の断面内における管軸からの位置との相関を算出し、これにより、任意の放射線検出器位置から、一次系配管の断面内における管軸からの位置を同定することで、原子炉一次系配管の内壁位置の同定が可能となる。このようにデータを処理する装置として位置関係同定装置が備えられる。また多チャンネル波高分析器、対消滅γ線強度分布、位置関係同定装置の出力は表示装置によって目視できるようにする。
【0024】
以上により、一次系配管に対して、ほぼ直線上に対向した位置に設置され、原子炉の運転によって一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、一対の放射線検出器を、一次系配管の断面を挟んで、ほぼ平行に移動する検出器移動装置と、検出器移動装置によって移動した放射線検出器位置毎の同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置を一次系配管の軸部分の位置とし、対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置から変曲点箇所の放射線検出器位置までの距離を、一次系配管の軸から放射線検出器移動方向へ平行に動いた距離とすることで、放射線検出器位置と一次系配管の断面内における管軸からの位置との相関を算出し、任意の放射線検出器位置から一次系配管の断面内における管軸からの位置を同定する位置関係同定装置を備えることを特徴とすることで、高精度の原子炉一次系配管の内壁位置同定が可能となるのである。
本発明の好適な実施例を、以下、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1の基本的構成を示す。実施例1の原子炉一次系配管の内壁位置を同定する装置24は、放射線検出器1A、放射線検出器1B、放射線計測装置22A、データ処理装置23及び表示装置20を備える。ここで、放射線計測装置22Aは、前置増幅器8、高圧電源9、主増幅器10、タイミングユニット11、遅延ユニット12、同時計数回路装置13、ゲート回路系14、可変遅延回路系15、ピークホールド回路系16を備える。データ処理装置23は、多チャンネル波高分析器17、対消滅γ線強度分布算出装置18、位置関係同定装置19を備える。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bは、前置増幅器8及び主増幅器10を介してタイミングユニット11及び可変遅延回路系15に分岐される。高圧電源9は、前置増幅器8に接続される。タイミングユニット11は、同時計数回路装置13に接続される。
【0026】
図1に示した例では、一例として、放射線検出器1Bから接続されるタイミングユニット11と、同時計数回路装置13の間に、遅延ユニット12を設けたが、このエネルギー弁別型同時計数処理で設置する遅延ユニット12は、放射線検出器1Aから接続されるタイミングユニット11と、同時計数回路装置13の間に設けても、全く同じ意味をもつ。可変遅延回路系15は、ピークホールド回路系16に接続され、その出力線は、多チャンネル波高分析器17に接続される。同時計数回路装置13は、ゲート回路系14に接続され、その出力線は、多チャンネル波高分析器17に接続される。
【0027】
多チャンネル波高分析器17及び検出器移動装置7は、対消滅γ線強度分布算出装置18に接続される。対消滅γ線強度分布算出装置18は、位置関係同定装置19に接続される。多チャンネル波高分析器17、対消滅γ線強度分布算出装置18及び位置関係同定装置19は、いずれも表示装置20に接続される。
【0028】
図1で示す同時計数回路系構成は一例であり、他の例として、放射線検出器1A及び1Bにシンチレーション結晶を接着した光電子増倍管を用いるときは、上記光電子増倍管ダイノード出力を前置増幅器8、主増幅器10、可変遅延回路系15の順に接続し、上記光電子増倍管アノード出力をタイミングユニット11、同時計数回路装置の順に接続することも考えられる。
【0029】
図2は、実施例1の検出器設置の一例を示す。原子炉冷却材21は原子炉圧力容器内に含まれる冷却材である。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bは、検出器移動装置7に設置されており、図中の矢印方向へ移動し、かつ、放射線検出器位置情報をデータ処理装置23に送信する機能を有する。
【0030】
保温材4は、検査対象の原子炉一次系配管3の周囲を取り囲むように取り付けられている。図1では、一例として一次系配管3内部に原子炉冷却材21を含んでいる場合が示されているが、定期検査時には原子炉冷却材21を含まない場合もある。一次系配管3の内壁には放射性核種2(例えばCo−58、Co−60、Mn−54、Fe−59)が付着している。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bは、ほぼ直線上の対向した位置に設置され、一次系配管3を見込むよう検出器移動装置7上に設置される。
【0031】
放射性核種2から放射される陽電子による対消滅γ線5は、同時刻にほぼ180度方向へ放射され、放射線検出器1A及び放射線検出器1Bにより検出される。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bにより得られた放射線検出信号は、前置増幅器8及び主増幅器10で増幅され、タイミングユニット11を介して同時計数回路装置13に送られる。ただし、図1で示す放射線計測装置22Aでは、放射線検出器1Bから接続されるタイミングユニット11と同時計数回路装置13の間に、遅延ユニット12が設けられており、同時計数のタイミング調整を行う構成となっている。
【0032】
同時計数回路装置13からゲート回路系14に接続され、ゲート回路系14より多チャンネル波高分析器17へゲート信号が送られる。このゲート信号により、放射線検出器1A及び放射線検出器1B、さらに前置増幅器8、主増幅器10、可変遅延回路系15、ピークホールド回路系16を介して得られた放射線検出信号は、多チャンネル波高分析器17に取り込まれる。
【0033】
図3は、実施例1の同時計数回路系により得られるエネルギースペクトルの説明図を示す。ここでは、同時計数回路装置13により、対消滅γ線5由来の単一の全吸収ピーク25を効果的に計測し、全吸収ピーク25の正味の計数値及び計測時間から計数率を取得することができる。ここで得られた計数率は、対消滅γ線強度として取り扱われ、その情報は、多チャンネル波高分析器17から対消滅γ線強度分布算出装置18に送られる。また、この対消滅γ線強度を得た放射線検出器の位置情報も検出器移動装置7から対消滅γ線強度分布算出装置18に送られる。
【0034】
図4は、実施例1の一対の放射線検出器が移動する様子と、検出器が見込む一次系配管内面積分布を示す。検出器移動装置7は、一次系配管3を挟んで一対の放射線検出器1A及び1Bがほぼ直線上の対向する位置をとる条件を保ちながら、一次系配管3の断面に沿う方向に移動する機能、及び放射線検出器の任意の位置を基準とする位置情報を、対消滅γ線強度分布算出装置18に送信する機能を有する。図4は、その一例として、一次系配管3を見込む放射線検出器1A及び放射線検出器1Bが、検出器移動装置7に設置されて移動するときの計測領域6の移動する様子と、検出器移動装置7から見込む一次系配管内面積分布33を示す。
【0035】
放射線検出器1Aを、図4に示す左側の位置から右方向へ移動させるとき、一次系配管3の縁を見込むときに一次系配管内面積が最大値29となる。一次系配管の縁部分から一次系配管軸27方向へ移動させると、検出器が見込む一次系配管内面積は、検出面中心軸26と一次系配管軸27が交わるときに極小点28を示す。検出器を更に一次系配管軸27方向の外側へ移動させると、一次系配管3の縁部分を見込むときに再び上記面積が最大となる。この傾向は、検出面の径及び一次系配管径が変化しても変化しない。図4は、検出器移動装置7が一次系配管3の断面に沿って、平行に移動する様子を示しているが、図5に示すように、検出器移動装置7を一次系配管3の断面に沿って、円周方向に移動するようにしてもよく、この場合にも同様の効果が得られる。
【0036】
次に、本発明による装置によって得られる対消滅γ線強度分布について説明する。図6は、一次系配管3の内壁に付着した放射性核種2の濃度がほぼ一様であり、一次系配管3の配管厚が対消滅γ線をほぼ減衰しない程度のものであるとしたときの対消滅γ線強度分布34のシミュレーション結果を示す。この分布の傾向は、図4と変わりがない。図6においても、図4の検出面中心軸26と一次系配管軸27が交わる位置の極小点28に相当する変曲点が存在し、分布対称中心位置30となる。同様に、図6には、図4の検出器の見込む内面積が最大値29となる位置の変曲点に相当する変曲点31が存在する。
【0037】
図7は、一次系配管3の内壁に付着した放射性核種2の濃度がほぼ一様であり、一次系配管3の配管厚により対消滅γ線5が減衰するとしたときの対消滅γ線強度分布34のシミュレーション結果を示す。図7では、対消滅γ線5の実効的な減衰率は一次系配管3の縁部分を見込むときほど大きくなるため、放射線検出器1Aの見込む内面積最大値29の位置において対消滅γ線強度が最大値を示す図6とは大きく異なる分布となるが、分布対称中心位置30が変わることはなく、検出器の見込む内面積最大値29となる箇所には、変曲点31が存在することに変わりがない。
【0038】
以上のシミュレーション結果により、原子炉一次系配管3の厚みによる実効的な減衰率を考慮することなく、3つの変曲点を計測することにより、一次系配管3と放射線検出器1A及び放射線検出器1Bとの位置相関を得ることが可能となる。
【0039】
図8は、放射線検出器位置と一次系配管3の断面に沿った方向の位置の相関図を示す。ここでは、一例として、分布対称中心位置30における放射線検出器位置を一次系配管軸27の位置とし、一次系配管3の断面に沿った位置の原点とする。変曲点31の位置は、一次系配管軸27から、検出器移動装置7が移動した方向に平行に動かした位置に相当するため、分布対称中心位置30から変曲点31までの距離をX、Yとするとき、一次系配管3の断面に沿った位置は、一次系配管軸27からそれぞれX、Yとなる。以上の分布対称中心位置と2つの変曲点の3点を利用して、近似曲線35は、一例として一次関数で近似されるものとする。そうすると、この近似曲線35より任意の放射線検出器位置より一次系配管3の断面に沿った位置の同定が可能となり、その結果から放射線検出器位置における一次系配管3の内壁位置の同定が可能となる。
【実施例2】
【0040】
図9は、本発明の他の実施例である実施例2の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を示す。実施例2では、原子炉一次系配管の内壁位置同定装置36は、放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37、放射線計測装置22B、データ処理装置23及び表示装置20を備え、カスケードγ線用放射線検出器37及び放射線計測装置22B以外は、実施例1と同じである。ここで、放射線計測装置22Bは、前置増幅器8、高圧電源9、主増幅器10、タイミングユニット11、遅延ユニット12、同時計数回路装置13、ゲート回路系14、可変遅延回路系15、ピークホールド回路系16を備える。
【0041】
カスケードγ線用放射線検出器37は、一次系配管3に付着する放射性核種2がβ+崩壊により励起状態となり、励起状態から基底状態に遷移する過程で放射されるカスケードγ線40を検出するために、その計測領域が、前記放射線検出器の見込む計測領域と重なるようにカスケードγ線検出器移動装置(図9では図示省略)に設置される。カスケードγ線40は、4π方向に放射され、その角度相関はないことが多い。図9は、1台のカスケードγ線用放射線検出器37を示しているが、カスケードγ線用放射線検出器の台数は、1台でも複数台でもよい。
【0042】
図10は、計測対象核種の一例として、Co−58による崩壊過程を示す。Co−58は、β+崩壊により励起状態のFe−58に壊変する。基底状態になるまでにかかる時間は、一般的に極めて短時間であり、一般の放射線計測系での計測では無視できる程度の時間である。そのため、実際の計測では対消滅γ線5とカスケードγ線40は、ほぼ同時刻に検出されることになる。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bによる対消滅γ線5の検出と、カスケードγ線用放射線検出器37によるカスケードγ線40の検出がほぼ同時刻であるとき、放射線検出器1A、放射線検出器1B及びカスケードγ線用放射線検出器37で得られた放射線検出信号を前置増幅器8及び主増幅器10で増幅させ、タイミングユニット11を介して同時計数回路系13に送る。そして、同時計数回路系13からゲート回路系14に送られると、ゲート回路系14より多チャンネル波高分析器17へゲート信号が送られる。
【0043】
放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37、更に前置増幅器8、主増幅器10、可変遅延回路系15及びピークホールド回路系16を介して得られた放射線検出信号は、多チャンネル波高分析器17に取り込まれ、さらに対消滅ガンマ線強度分布算出装置18、位置関係同定装置19を介して表示装置20で表示される。
【0044】
なお、図9に示した実施例では、一例として、放射線検出器1Bから接続されるタイミングユニット11と同時計数回路装置13の間に遅延ユニット12を設けたが、このエネルギー弁別型同時計数処理で設置する遅延ユニット12は、放射線検出器1Aから接続されるタイミングユニット11と同時計数回路装置13の間に設けるようにしてもよい。
【0045】
なお、カスケードγ線用放射線検出器37から得られる放射線検出信号を高圧電源9、前置増幅器8及び主増幅器10を用いて増幅した後に伝送する回路系を、可変遅延回路系15及びピークホールド回路系16を介して、多チャンネル波高分析器17に接続する系と、タイミングユニット11を介して同時計数回路装置13への接続する系としているが、これに替えて、タイミングユニット11を介して同時計数回路装置13への接続する系のみとすることも可能である。
【0046】
実施例2では、カスケードγ線用放射線検出器37を備えることにより、放射線検出器1A及び放射線検出器1Bに入射するバックグラウンドγ線による偶発的な同時計数を効果的に抑制することができるので、一層高精度の計数が可能となる。
【実施例3】
【0047】
図11及び図12を用いて、本発明の実施例3の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を説明する。ここでは、放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37において、各検出器の見込む計測領域を定めるコリメータ43と、コリメータ43に取り付け可能である付属コリメータ42を備えること以外は、実施例1及び実施例2のいずれかと同じである。
【0048】
実施例3では、付属コリメータ42のコリメータ形状を円柱(図11参照)又は角柱(図12参照)とし、検出面44が放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37の検出部分である。コリメータ43は、検出面の縁部分41を見込む形状としている。
【0049】
実施例3では、各検出器を取り替えることなく、放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37の検出部分を、付属コリメータ42により任意に変更することが可能となる。コリメータ形状を小さくすることにより、高い位置検出精度を見込むことができる。
【実施例4】
【0050】
図13及び図14を用いて、本発明の実施例4の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を説明する。実施例4では、Nを1以上の自然数とするときにN対の放射線検出器があって、このN対の放射線検出器が前記検出器移動装置に並列に設置されること以外は、実施例1から実施例3のいずれかと同じである。
【0051】
図13は、一例として放射線検出器1Aから放射線検出器1Fまでの3対の放射線検出器があって、これらの放射線検出器が検出器移動装置7に設置されており、この検出器移動装置7は、隣接する検出器移動装置7と接続される構造を備えて、これらの3対の放射線検出器は、対向する位置となるように設置される原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を示している。
【0052】
図14は、一例として検出器移動装置7が隣接する検出器移動装置7に接続されない原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を示している。
上記の実施例4では、放射線検出器の移動時間を短縮化できるので、計測時間の短縮化が可能となる。
【0053】
なお、以上、説明した実施例1〜4において、放射線検出器とカスケードγ線用放射線検出器を移動させる検出器移動装置の操作は、予めプログラミングしておき、自動的に行うことが望ましい。
【実施例5】
【0054】
図15を用いて、本発明の実施例5の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を説明する。実施例5では、検出器移動装置7にアレイ型放射線検出器45A及びアレイ型放射線検出器45Bが備えられること以外は、実施例1から実施例4のいずれかと同じである。
【0055】
実施例5では、一例として一次系配管3の断面に沿って、アレイ型放射線検出器45A及びアレイ型放射線検出器45Bを備えている。ほぼ対向に設置されている1対のアレイでの同時計数信号を計測し、アレイ幅46を短くすることにより、位置同定精度の向上が可能となり、かつ、放射線検出器の移動を省略できるので、計測時間の短縮化も可能である。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B…放射線検出器、2…放射性核種、3…原子炉一次系配管、4…保温材、5…対消滅γ線、6…計測領域、7…検出器移動装置、8…前置増幅器、9…高圧電源、10…主増幅器、11…タイミングユニット、12…遅延ユニット、13…同時計数回路装置、14…ゲート回路系、15…可変遅延回路系、16…ピークホールド回路系、17…多チャンネル波高分析器、18…対消滅γ線強度分布算出装置、19…位置関係同定装置、20…表示装置、21…原子炉冷却材、22A、22B…放射線計測装置、23…データ処理装置、24…原子炉一次系配管の内壁位置同定装置、25…全吸収ピーク、26…検出面中心軸、27…一次系配管軸、28…極小点、29…内面積最大値、30…分布対称中心位置、31…変曲点、32…計数分布、33…一次系配管内面積分布、34…対消滅γ線強度分布、35…近似曲線、36…原子炉一次系配管の内壁位置同定装置、37…カスケードγ線用放射線検出器、38…コリメータ、39…カスケードγ線用放射線検出器計測領域、40…カスケードγ線、41…検出面の縁部分、42…付属コリメータ、43…コリメータ、44…検出面、45A、45B…アレイ型放射線検出器、46…アレイ幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉運転中に行われる一次系配管内の放射線をモニタリングする際に必要とされる配管内壁部分と放射線検出器との位置関係を正確に同定するために、定期検査期間中に配管内壁に付着した放射性核種から放射される放射線を定量し、放射線検出器位置を移動させることで得られる放射線強度分布から配管の内壁位置を同定する原子炉一次系配管の内壁位置同定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉運転中に行われる原子炉一次系配管(以下「一次系配管」という。)内の放射線をオンラインで監視するモニタリング装置(以下「放射線オンラインモニタ」という。)は、原子炉格納容器内の放射線線量が定期検査時と比べて非常に高いので、定期検査時と同じ方法での計測を実施できず、定期検査時に使用される装置を使用することができない。
【0003】
原子炉運転中の一次系配管内を流れる原子炉冷却材に含まれ、計測精度を低下させる妨害放射性核種(例えば、N-13、N-16、F-18、等)によるバックグラウンドの影響を最小限にするため、放射線オンラインモニタはそのコリメータが見込む一次系配管の表面積及び体積の比を最適とする必要がある。そして、そのためには、一次系配管内壁部分と、放射線オンラインモニタに備え付けられる放射線検出器の位置関係を正確に把握する必要がある。
【0004】
現在、上記した一次系配管内壁部分と放射線検出器の位置関係は、保温材の外側から実寸するか、保温材を剥して一次系配管の外側から実寸かして、設計時に定められた配管厚さと保温材厚さを用いて推定することが可能ではある。しかし定期検査中の原子炉格納容器内でも比較的放射線線量が高いため被曝量の増加につながり、長時間の実寸を行うことは困難である。さらに、実際のプラント環境における保温材は、変形等により設計時に定められたとおりの均一の厚さではないことが多い。そのため、実寸による方法では、高精度の位置関係の把握は困難である。そのため、放射線オンラインモニタから得られる放射性核種の一次系配管内壁付着濃度を、高精度に計測することは極めて難しいのが現状である。
【0005】
原子炉一次系配管内壁部分と放射線検出器の位置関係を同定できれば、放射線モニタリング装置の計測精度の向上を効果的に実現し、被曝量を効果的に低減することができる。これに関連する従来技術として、特許文献1は、配管内面にほぼ一様に沈着した放射能と、配管内部にほぼ一様に分布した水溶液状放射能と、配管内部にほぼ一様に分布したガス状放射能から放射されるγ線の検出システムを用いて、その検出システムの配管を臨む角度を変えることにより、2箇所以上の測定箇所で測定された2つ以上のγ線測定値と、測定の前段階から分かっている配管の内径、配管の外径、配管の軸から検出器までの距離等を使用して放射能を定量する配管内部放射能測定法を開示している。
【0006】
また、特許文献2は、妨害核種を含む試料についてポジトロン(陽電子)放出核種の放射能を、一対のシンチレーション検出器と同時計数回路を使用して正確に測定し、かつ広い測定範囲をカバーする対消滅γ線を検出する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−223686号公報
【特許文献2】特開平8−285946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、保温材の外側からの実寸作業には、原子炉格納容器内の放射線線量が比較的高いために、被曝量の増加につながるという基本的には問題があり、特に保温材を剥してからの実寸作業では、被曝線量が更に増加してしまう。
【0009】
特許文献1は、配管内部の放射能を正確に定量するための技術の一つを開示するものであるが、一次系配管と放射線検出器の位置関係については、従来の実寸と設計値を使用するものであり、被曝量の増加の問題を解消することはできず、放射線測定による位置関係同定についての記載は一切ないし、放射線測定技術として、妨害放射線の寄与を効果的に低減できる同時計数法に関する記載も全くない。そして、特許文献1は、放射線オンラインモニタに設置される放射線検出器が見込む一次系配管表面積と一次系配管体積の比を最適にするための位置関係を正確に把握するという本発明の課題に対し、解決手段を与えるものでもない。
【0010】
特許文献2は、対消滅γ線の同時計数技術の一つを開示するものである。しかし、特許文献2には、検出器装置の移動による対消滅γ線強度分布に関する記載は全くなく、一次系配管の内壁位置を正確に測定する上で、更なる精度向上が求められている。
本発明は、上述の課題を解決する原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置は、i)原子炉一次系配管を挟んでほぼ直線上の対向する位置に設置される検出器であって、原子炉の運転によって前記一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、ii)前記対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、iii)前記放射線検出器を前記一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、iv)前記検出器移動装置によって移動した放射線検出器の位置で前記同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、前記放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、v)前記対消滅γ線強度分布に基づいて、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から前記一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置は、i)原子炉一次系配管を挟んでほぼ直線上の対向する位置に設置される検出器であって、原子炉の運転によって前記一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、ii)前記放射性核種が前記陽電子を放射するのとほぼ同時刻に4π方向へ放射するカスケードγ線を検出するカスケードγ線用放射線検出器と、iii)前記対消滅γ線及び前記カスケードγ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、iv)前記放射線検出器を前記一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、v)前記カスケードγ線用放射線検出器が見込む測定領域と前記放射線検出器が見込む測定領域が重なるように前記カスケードγ線用放射線検出器を移動させるカスケードγ線検出器移動装置と、vi)前記検出器移動装置及び前記カスケードγ線検出器移動装置によって移動した各放射線検出器の位置で前記同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、前記放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、vii)前記対消滅γ線強度分布に基づいて、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から前記一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置の上記位置関係同定装置は、前記対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる前記放射線検出器位置を前記一次系配管の軸部分の位置とし、前記強度分布のほぼ対称中心となる前記検出器位置から前記強度分布の変曲点箇所までの距離を、前記一次系配管の軸から前記検出器移動装置の移動方向へ平行移動したときの距離とすることにより、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との前記相関を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一次系配管に付着する放射性核種を利用して原子炉一次系配管の内壁位置を同定することにより、放射線オンラインモニタを高精度に設置することができる。また、従来の方法と比較して、作業中の被曝量を低減することができる。さらに、放射線検出器として、Ge半導体検出器等の半導体検出器だけでなく、安価なシンチレータを採用することができるので、コストを低減することができる。また、対消滅γ線はほぼ対向に放射される特徴を有しているため、検出する放射線の指向性を確保するためのコリメータなしに高精度計測が可能となる。
以上のとおり、本発明は、従来の技術と比較して顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置のブロック構成を示す。
【図2】実施例1の検出器設置の一例を示す。
【図3】実施例1の同時計数回路系により得られるエネルギースペクトルの説明図を示す。
【図4】実施例1の一対の放射線検出器が移動する様子と、検出器が見込む一次系配管内面積分布を示す。
【図5】実施例1の検出器移動装置が一次系配管の円周方向に移動する様子を示す。
【図6】一次系配管3の配管厚が対消滅γ線をほぼ減衰しない程度のものであるとしたときの対消滅γ線強度分布34を示す。
【図7】一次系配管3の配管厚により対消滅γ線が減衰するとしたときの対消滅γ線強度分布34を示す。
【図8】放射線検出器位置と一次系配管3の断面に沿った方向の位置の相関図を示す。
【図9】本発明の実施例2の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置のブロック構成を示す。
【図10】計測対象核種の一例として、Co−58による崩壊過程を示す。
【図11】本発明の実施例3の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置が備える放射線検出器のコリメータの形状を円柱とした場合の検出面を示す。
【図12】本発明の実施例3の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置が備える放射線検出器のコリメータの形状を角柱とした場合の検出面を示す。
【図13】本発明の実施例4の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、一例として3対の放射線検出器がそれぞれ検出器移動装置7に設置された様子を示す。
【図14】本発明の実施例4の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、一例として3対の検出器移動装置7が隣接する検出器移動装置7に接続されないで配置された様子を示す。
【図15】本発明の実施例5の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置における、一対のアレイ型放射線検出器の配置された様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、本発明者らが、一次系配管内に付着する放射性核種を利用して保温材の外側を実寸したり、保温材を剥して一次系配管を実寸したりすることなく、一次系配管内壁部分と放射線検出器との位置関係を正確に同定する方法を種々検討して得た新たな知見に基づいてなされたものである。
【0017】
この知見は、一次系配管に対してほぼ直線上の対向する位置に設置され、原子炉の運転によって一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、
対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、
一対の放射線検出器を一次系配管の断面方向とほぼ平行に移動する検出器移動装置と、
検出器移動装置によって移動した放射線検出器位置毎の同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、
対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置を一次系配管の軸部分の位置とし、対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置から変曲点箇所の放射線検出器位置までの距離を、一次系配管の軸から放射線検出器移動方向へ平行に動いた距離とすることで、放射線検出器位置と一次系配管の断面方向位置との相関を算出し、任意の放射線検出器位置から一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置を備えることで、原子炉一次系配管の内壁位置同定が可能となる、というものである。上記の新たな知見の内容を以下に具体的に説明する。
【0018】
対消滅γ線のための放射線検出器は、一般的なγ線検出器を用いる。例えばシンチレーション検出器の場合には、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaBr3(Ce)、BGO、GSO(Ce)、LuAG(Pr)等があり、また、半導体検出器の場合には、Ge、CdTe、CZT等があるが、いずれも本発明に適用可能である。
【0019】
原子炉の運転によって一次系配管に付着する放射性核種としては、Co−60、Co−58、Mn−54、Fe−59等が挙げられる。一次系配管の炉水中に含まれる放射性核種としては、N−13、N−16、F−18、O−19等が挙げられる。ここで、Co−60は原子炉構造材中に含まれるCo−59の(n,γ)反応で生成される放射性核種であり、以下、同じくCo−58はNi−58の(n,p)反応の、Mn−54はFe−54の(n,p)反応の、Fe−59はFe−58の(n,γ)反応の、N−13は水分子のO−16の(p,α)反応の、N−16はO−16の(n,γ)反応の、F−18はO−18の(p,n)反応の、O−19はO−18の(n,γ)反応の結果、生成される放射性核種である。
【0020】
これらの放射性核種の中で、対消滅γ線を放射するのは、Co−58、N−13、F−18である。いずれもβ+崩壊により生じた陽電子が近傍の電子と相互作用を起こし、2つの同じエネルギーのγ線を同時刻にほぼ180度の両方向へ放射する。電子及び陽電子の質量エネルギーは1.022MeVであるため、2つのγ線のエネルギーはそれぞれ511keVとなる。ここでCo−58、N−13、F−18の半減期は、それぞれ約70.86日、約9.965分、約109.8分となることから、炉水中に含まれるN−13及びF−18は、定期検査時には原子炉稼動中と比べて大幅に減衰しており、Co−58に寄与する対消滅γ線強度と比較して大幅に少なくなることが容易に予想される。それゆえ、定期検査時に計測される対消滅γ線のほとんどがCo−58由来のものである。
【0021】
同時計数法は、1回の壊変に起因する2つの放射線が2台の放射線検出器にほぼ同時刻に入射し、γ線検出信号となるときのみ計数する放射線計測回路装置である。この計測方法は、例えば一次系配管に付着するCo−60から放射されるカスケードγ線(γ線エネルギー1.173MeV、1.332MeV)及び原子炉格納容器内のあらゆる箇所に存在する妨害核種からのバックグラウンドγ線を計数することがないので、全吸収ピークの高いS/N比を得ることができる。対消滅γ線のエネルギーは511keVのみであるので、同時計数回路装置の出力は多チャンネル波高分析器にて波高分布としてデータ処理され、得られたエネルギースペクトルは単一のピークとなる。このピークの正味の計数値及び計測時間から同時計数による計数値、すなわち対消滅γ線強度を得ることができる。
【0022】
一対の放射線検出器は、それぞれ検出器移動装置に設置されており、放射線検出器の任意の位置で同時計数回路装置による計数値、すなわち対消滅γ線強度を得ることができる。さらに、得られた対消滅γ線強度のデータから、各放射線検出器位置における対消滅γ線強度分布としてデータ処理する装置を備える。取得された対消滅γ線強度分布では、分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置の1箇所と変曲点箇所の放射線検出器位置の2箇所を確認することができる。ここで分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置は、放射線検出器の検出面中心軸と一次系配管軸部分とが交わる位置を意味している。また変曲点箇所の放射線検出器位置は、一対の放射線検出器の計測領域が一次系配管の縁を見込む位置、つまり一対の放射線検出器が見込む一次系配管内壁面積が最大になる位置を意味している。
【0023】
分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置から変曲点箇所の放射線検出器位置までの距離は、一次系配管軸から、検出器の移動方向(と平行な方向)における一次系配管の縁までの距離に相当する。これにより、放射線検出器位置と、一次系配管の断面内における管軸からの位置との相関を算出し、これにより、任意の放射線検出器位置から、一次系配管の断面内における管軸からの位置を同定することで、原子炉一次系配管の内壁位置の同定が可能となる。このようにデータを処理する装置として位置関係同定装置が備えられる。また多チャンネル波高分析器、対消滅γ線強度分布、位置関係同定装置の出力は表示装置によって目視できるようにする。
【0024】
以上により、一次系配管に対して、ほぼ直線上に対向した位置に設置され、原子炉の運転によって一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、一対の放射線検出器を、一次系配管の断面を挟んで、ほぼ平行に移動する検出器移動装置と、検出器移動装置によって移動した放射線検出器位置毎の同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置を一次系配管の軸部分の位置とし、対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる放射線検出器位置から変曲点箇所の放射線検出器位置までの距離を、一次系配管の軸から放射線検出器移動方向へ平行に動いた距離とすることで、放射線検出器位置と一次系配管の断面内における管軸からの位置との相関を算出し、任意の放射線検出器位置から一次系配管の断面内における管軸からの位置を同定する位置関係同定装置を備えることを特徴とすることで、高精度の原子炉一次系配管の内壁位置同定が可能となるのである。
本発明の好適な実施例を、以下、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1の基本的構成を示す。実施例1の原子炉一次系配管の内壁位置を同定する装置24は、放射線検出器1A、放射線検出器1B、放射線計測装置22A、データ処理装置23及び表示装置20を備える。ここで、放射線計測装置22Aは、前置増幅器8、高圧電源9、主増幅器10、タイミングユニット11、遅延ユニット12、同時計数回路装置13、ゲート回路系14、可変遅延回路系15、ピークホールド回路系16を備える。データ処理装置23は、多チャンネル波高分析器17、対消滅γ線強度分布算出装置18、位置関係同定装置19を備える。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bは、前置増幅器8及び主増幅器10を介してタイミングユニット11及び可変遅延回路系15に分岐される。高圧電源9は、前置増幅器8に接続される。タイミングユニット11は、同時計数回路装置13に接続される。
【0026】
図1に示した例では、一例として、放射線検出器1Bから接続されるタイミングユニット11と、同時計数回路装置13の間に、遅延ユニット12を設けたが、このエネルギー弁別型同時計数処理で設置する遅延ユニット12は、放射線検出器1Aから接続されるタイミングユニット11と、同時計数回路装置13の間に設けても、全く同じ意味をもつ。可変遅延回路系15は、ピークホールド回路系16に接続され、その出力線は、多チャンネル波高分析器17に接続される。同時計数回路装置13は、ゲート回路系14に接続され、その出力線は、多チャンネル波高分析器17に接続される。
【0027】
多チャンネル波高分析器17及び検出器移動装置7は、対消滅γ線強度分布算出装置18に接続される。対消滅γ線強度分布算出装置18は、位置関係同定装置19に接続される。多チャンネル波高分析器17、対消滅γ線強度分布算出装置18及び位置関係同定装置19は、いずれも表示装置20に接続される。
【0028】
図1で示す同時計数回路系構成は一例であり、他の例として、放射線検出器1A及び1Bにシンチレーション結晶を接着した光電子増倍管を用いるときは、上記光電子増倍管ダイノード出力を前置増幅器8、主増幅器10、可変遅延回路系15の順に接続し、上記光電子増倍管アノード出力をタイミングユニット11、同時計数回路装置の順に接続することも考えられる。
【0029】
図2は、実施例1の検出器設置の一例を示す。原子炉冷却材21は原子炉圧力容器内に含まれる冷却材である。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bは、検出器移動装置7に設置されており、図中の矢印方向へ移動し、かつ、放射線検出器位置情報をデータ処理装置23に送信する機能を有する。
【0030】
保温材4は、検査対象の原子炉一次系配管3の周囲を取り囲むように取り付けられている。図1では、一例として一次系配管3内部に原子炉冷却材21を含んでいる場合が示されているが、定期検査時には原子炉冷却材21を含まない場合もある。一次系配管3の内壁には放射性核種2(例えばCo−58、Co−60、Mn−54、Fe−59)が付着している。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bは、ほぼ直線上の対向した位置に設置され、一次系配管3を見込むよう検出器移動装置7上に設置される。
【0031】
放射性核種2から放射される陽電子による対消滅γ線5は、同時刻にほぼ180度方向へ放射され、放射線検出器1A及び放射線検出器1Bにより検出される。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bにより得られた放射線検出信号は、前置増幅器8及び主増幅器10で増幅され、タイミングユニット11を介して同時計数回路装置13に送られる。ただし、図1で示す放射線計測装置22Aでは、放射線検出器1Bから接続されるタイミングユニット11と同時計数回路装置13の間に、遅延ユニット12が設けられており、同時計数のタイミング調整を行う構成となっている。
【0032】
同時計数回路装置13からゲート回路系14に接続され、ゲート回路系14より多チャンネル波高分析器17へゲート信号が送られる。このゲート信号により、放射線検出器1A及び放射線検出器1B、さらに前置増幅器8、主増幅器10、可変遅延回路系15、ピークホールド回路系16を介して得られた放射線検出信号は、多チャンネル波高分析器17に取り込まれる。
【0033】
図3は、実施例1の同時計数回路系により得られるエネルギースペクトルの説明図を示す。ここでは、同時計数回路装置13により、対消滅γ線5由来の単一の全吸収ピーク25を効果的に計測し、全吸収ピーク25の正味の計数値及び計測時間から計数率を取得することができる。ここで得られた計数率は、対消滅γ線強度として取り扱われ、その情報は、多チャンネル波高分析器17から対消滅γ線強度分布算出装置18に送られる。また、この対消滅γ線強度を得た放射線検出器の位置情報も検出器移動装置7から対消滅γ線強度分布算出装置18に送られる。
【0034】
図4は、実施例1の一対の放射線検出器が移動する様子と、検出器が見込む一次系配管内面積分布を示す。検出器移動装置7は、一次系配管3を挟んで一対の放射線検出器1A及び1Bがほぼ直線上の対向する位置をとる条件を保ちながら、一次系配管3の断面に沿う方向に移動する機能、及び放射線検出器の任意の位置を基準とする位置情報を、対消滅γ線強度分布算出装置18に送信する機能を有する。図4は、その一例として、一次系配管3を見込む放射線検出器1A及び放射線検出器1Bが、検出器移動装置7に設置されて移動するときの計測領域6の移動する様子と、検出器移動装置7から見込む一次系配管内面積分布33を示す。
【0035】
放射線検出器1Aを、図4に示す左側の位置から右方向へ移動させるとき、一次系配管3の縁を見込むときに一次系配管内面積が最大値29となる。一次系配管の縁部分から一次系配管軸27方向へ移動させると、検出器が見込む一次系配管内面積は、検出面中心軸26と一次系配管軸27が交わるときに極小点28を示す。検出器を更に一次系配管軸27方向の外側へ移動させると、一次系配管3の縁部分を見込むときに再び上記面積が最大となる。この傾向は、検出面の径及び一次系配管径が変化しても変化しない。図4は、検出器移動装置7が一次系配管3の断面に沿って、平行に移動する様子を示しているが、図5に示すように、検出器移動装置7を一次系配管3の断面に沿って、円周方向に移動するようにしてもよく、この場合にも同様の効果が得られる。
【0036】
次に、本発明による装置によって得られる対消滅γ線強度分布について説明する。図6は、一次系配管3の内壁に付着した放射性核種2の濃度がほぼ一様であり、一次系配管3の配管厚が対消滅γ線をほぼ減衰しない程度のものであるとしたときの対消滅γ線強度分布34のシミュレーション結果を示す。この分布の傾向は、図4と変わりがない。図6においても、図4の検出面中心軸26と一次系配管軸27が交わる位置の極小点28に相当する変曲点が存在し、分布対称中心位置30となる。同様に、図6には、図4の検出器の見込む内面積が最大値29となる位置の変曲点に相当する変曲点31が存在する。
【0037】
図7は、一次系配管3の内壁に付着した放射性核種2の濃度がほぼ一様であり、一次系配管3の配管厚により対消滅γ線5が減衰するとしたときの対消滅γ線強度分布34のシミュレーション結果を示す。図7では、対消滅γ線5の実効的な減衰率は一次系配管3の縁部分を見込むときほど大きくなるため、放射線検出器1Aの見込む内面積最大値29の位置において対消滅γ線強度が最大値を示す図6とは大きく異なる分布となるが、分布対称中心位置30が変わることはなく、検出器の見込む内面積最大値29となる箇所には、変曲点31が存在することに変わりがない。
【0038】
以上のシミュレーション結果により、原子炉一次系配管3の厚みによる実効的な減衰率を考慮することなく、3つの変曲点を計測することにより、一次系配管3と放射線検出器1A及び放射線検出器1Bとの位置相関を得ることが可能となる。
【0039】
図8は、放射線検出器位置と一次系配管3の断面に沿った方向の位置の相関図を示す。ここでは、一例として、分布対称中心位置30における放射線検出器位置を一次系配管軸27の位置とし、一次系配管3の断面に沿った位置の原点とする。変曲点31の位置は、一次系配管軸27から、検出器移動装置7が移動した方向に平行に動かした位置に相当するため、分布対称中心位置30から変曲点31までの距離をX、Yとするとき、一次系配管3の断面に沿った位置は、一次系配管軸27からそれぞれX、Yとなる。以上の分布対称中心位置と2つの変曲点の3点を利用して、近似曲線35は、一例として一次関数で近似されるものとする。そうすると、この近似曲線35より任意の放射線検出器位置より一次系配管3の断面に沿った位置の同定が可能となり、その結果から放射線検出器位置における一次系配管3の内壁位置の同定が可能となる。
【実施例2】
【0040】
図9は、本発明の他の実施例である実施例2の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を示す。実施例2では、原子炉一次系配管の内壁位置同定装置36は、放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37、放射線計測装置22B、データ処理装置23及び表示装置20を備え、カスケードγ線用放射線検出器37及び放射線計測装置22B以外は、実施例1と同じである。ここで、放射線計測装置22Bは、前置増幅器8、高圧電源9、主増幅器10、タイミングユニット11、遅延ユニット12、同時計数回路装置13、ゲート回路系14、可変遅延回路系15、ピークホールド回路系16を備える。
【0041】
カスケードγ線用放射線検出器37は、一次系配管3に付着する放射性核種2がβ+崩壊により励起状態となり、励起状態から基底状態に遷移する過程で放射されるカスケードγ線40を検出するために、その計測領域が、前記放射線検出器の見込む計測領域と重なるようにカスケードγ線検出器移動装置(図9では図示省略)に設置される。カスケードγ線40は、4π方向に放射され、その角度相関はないことが多い。図9は、1台のカスケードγ線用放射線検出器37を示しているが、カスケードγ線用放射線検出器の台数は、1台でも複数台でもよい。
【0042】
図10は、計測対象核種の一例として、Co−58による崩壊過程を示す。Co−58は、β+崩壊により励起状態のFe−58に壊変する。基底状態になるまでにかかる時間は、一般的に極めて短時間であり、一般の放射線計測系での計測では無視できる程度の時間である。そのため、実際の計測では対消滅γ線5とカスケードγ線40は、ほぼ同時刻に検出されることになる。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bによる対消滅γ線5の検出と、カスケードγ線用放射線検出器37によるカスケードγ線40の検出がほぼ同時刻であるとき、放射線検出器1A、放射線検出器1B及びカスケードγ線用放射線検出器37で得られた放射線検出信号を前置増幅器8及び主増幅器10で増幅させ、タイミングユニット11を介して同時計数回路系13に送る。そして、同時計数回路系13からゲート回路系14に送られると、ゲート回路系14より多チャンネル波高分析器17へゲート信号が送られる。
【0043】
放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37、更に前置増幅器8、主増幅器10、可変遅延回路系15及びピークホールド回路系16を介して得られた放射線検出信号は、多チャンネル波高分析器17に取り込まれ、さらに対消滅ガンマ線強度分布算出装置18、位置関係同定装置19を介して表示装置20で表示される。
【0044】
なお、図9に示した実施例では、一例として、放射線検出器1Bから接続されるタイミングユニット11と同時計数回路装置13の間に遅延ユニット12を設けたが、このエネルギー弁別型同時計数処理で設置する遅延ユニット12は、放射線検出器1Aから接続されるタイミングユニット11と同時計数回路装置13の間に設けるようにしてもよい。
【0045】
なお、カスケードγ線用放射線検出器37から得られる放射線検出信号を高圧電源9、前置増幅器8及び主増幅器10を用いて増幅した後に伝送する回路系を、可変遅延回路系15及びピークホールド回路系16を介して、多チャンネル波高分析器17に接続する系と、タイミングユニット11を介して同時計数回路装置13への接続する系としているが、これに替えて、タイミングユニット11を介して同時計数回路装置13への接続する系のみとすることも可能である。
【0046】
実施例2では、カスケードγ線用放射線検出器37を備えることにより、放射線検出器1A及び放射線検出器1Bに入射するバックグラウンドγ線による偶発的な同時計数を効果的に抑制することができるので、一層高精度の計数が可能となる。
【実施例3】
【0047】
図11及び図12を用いて、本発明の実施例3の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を説明する。ここでは、放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37において、各検出器の見込む計測領域を定めるコリメータ43と、コリメータ43に取り付け可能である付属コリメータ42を備えること以外は、実施例1及び実施例2のいずれかと同じである。
【0048】
実施例3では、付属コリメータ42のコリメータ形状を円柱(図11参照)又は角柱(図12参照)とし、検出面44が放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37の検出部分である。コリメータ43は、検出面の縁部分41を見込む形状としている。
【0049】
実施例3では、各検出器を取り替えることなく、放射線検出器1A、放射線検出器1B、カスケードγ線用放射線検出器37の検出部分を、付属コリメータ42により任意に変更することが可能となる。コリメータ形状を小さくすることにより、高い位置検出精度を見込むことができる。
【実施例4】
【0050】
図13及び図14を用いて、本発明の実施例4の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を説明する。実施例4では、Nを1以上の自然数とするときにN対の放射線検出器があって、このN対の放射線検出器が前記検出器移動装置に並列に設置されること以外は、実施例1から実施例3のいずれかと同じである。
【0051】
図13は、一例として放射線検出器1Aから放射線検出器1Fまでの3対の放射線検出器があって、これらの放射線検出器が検出器移動装置7に設置されており、この検出器移動装置7は、隣接する検出器移動装置7と接続される構造を備えて、これらの3対の放射線検出器は、対向する位置となるように設置される原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を示している。
【0052】
図14は、一例として検出器移動装置7が隣接する検出器移動装置7に接続されない原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を示している。
上記の実施例4では、放射線検出器の移動時間を短縮化できるので、計測時間の短縮化が可能となる。
【0053】
なお、以上、説明した実施例1〜4において、放射線検出器とカスケードγ線用放射線検出器を移動させる検出器移動装置の操作は、予めプログラミングしておき、自動的に行うことが望ましい。
【実施例5】
【0054】
図15を用いて、本発明の実施例5の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置を説明する。実施例5では、検出器移動装置7にアレイ型放射線検出器45A及びアレイ型放射線検出器45Bが備えられること以外は、実施例1から実施例4のいずれかと同じである。
【0055】
実施例5では、一例として一次系配管3の断面に沿って、アレイ型放射線検出器45A及びアレイ型放射線検出器45Bを備えている。ほぼ対向に設置されている1対のアレイでの同時計数信号を計測し、アレイ幅46を短くすることにより、位置同定精度の向上が可能となり、かつ、放射線検出器の移動を省略できるので、計測時間の短縮化も可能である。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B…放射線検出器、2…放射性核種、3…原子炉一次系配管、4…保温材、5…対消滅γ線、6…計測領域、7…検出器移動装置、8…前置増幅器、9…高圧電源、10…主増幅器、11…タイミングユニット、12…遅延ユニット、13…同時計数回路装置、14…ゲート回路系、15…可変遅延回路系、16…ピークホールド回路系、17…多チャンネル波高分析器、18…対消滅γ線強度分布算出装置、19…位置関係同定装置、20…表示装置、21…原子炉冷却材、22A、22B…放射線計測装置、23…データ処理装置、24…原子炉一次系配管の内壁位置同定装置、25…全吸収ピーク、26…検出面中心軸、27…一次系配管軸、28…極小点、29…内面積最大値、30…分布対称中心位置、31…変曲点、32…計数分布、33…一次系配管内面積分布、34…対消滅γ線強度分布、35…近似曲線、36…原子炉一次系配管の内壁位置同定装置、37…カスケードγ線用放射線検出器、38…コリメータ、39…カスケードγ線用放射線検出器計測領域、40…カスケードγ線、41…検出面の縁部分、42…付属コリメータ、43…コリメータ、44…検出面、45A、45B…アレイ型放射線検出器、46…アレイ幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉一次系配管を挟んでほぼ直線上の対向する位置に設置される検出器であって、原子炉の運転によって前記一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、
前記対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、
前記放射線検出器を前記一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、
前記検出器移動装置によって移動した放射線検出器の位置で前記同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、前記放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、
前記対消滅γ線強度分布に基づいて、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から前記一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置と、
を備えることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項2】
原子炉一次系配管を挟んでほぼ直線上の対向する位置に設置される検出器であって、原子炉の運転によって前記一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、
前記放射性核種が前記陽電子を放射するのとほぼ同時刻に4π方向へ放射するカスケードγ線を検出するカスケードγ線用放射線検出器と、
前記対消滅γ線及び前記カスケードγ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、
前記放射線検出器を前記一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、
前記カスケードγ線用放射線検出器が見込む計測領域と前記放射線検出器が見込む計測領域が重なるように前記カスケードγ線用放射線検出器を移動させるカスケードγ線検出器移動装置と、
前記検出器移動装置及び前記カスケードγ線検出器移動装置によって移動した各放射線検出器の位置で前記同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、前記放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、
前記対消滅γ線強度分布に基づいて、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から前記一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置と、
を備えることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された前記位置関係同定装置において、
前記対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる前記放射線検出器位置を前記一次系配管の軸部分の位置とし、前記強度分布のほぼ対称中心となる前記検出器位置から前記強度分布の変曲点箇所までの距離を、前記一次系配管の軸から前記検出器移動装置の移動方向へ平行移動したときの距離とすることにより、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との前記相関を算出することを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかの請求項に記載された原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、
前記放射線検出器の検出面よりも小さいコリメータを有し、コリメータ径を任意に変更することにより前記一次系配管の位置同定精度を変更することが可能であることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載された原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、
Nを2以上の自然数としたとき、前記一対の放射線検出器をN対有し、該N対の放射線検出器は、各対がそれぞれの前記検出器移動装置上に、並列に設置されていることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載された原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、
Nを2以上の自然数としたとき、前記一対の放射線検出器をN対有し、該N対の放射線検出器は、アレイ状に前記検出器移動装置上に、並列に設置されていることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までに記載の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置であって、前記検出器移動装置の操作を自動で行うことを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項1】
原子炉一次系配管を挟んでほぼ直線上の対向する位置に設置される検出器であって、原子炉の運転によって前記一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、
前記対消滅γ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、
前記放射線検出器を前記一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、
前記検出器移動装置によって移動した放射線検出器の位置で前記同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、前記放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、
前記対消滅γ線強度分布に基づいて、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から前記一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置と、
を備えることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項2】
原子炉一次系配管を挟んでほぼ直線上の対向する位置に設置される検出器であって、原子炉の運転によって前記一次系配管の内壁に付着した放射性核種が放射する陽電子による対消滅γ線を検出する一対の放射線検出器と、
前記放射性核種が前記陽電子を放射するのとほぼ同時刻に4π方向へ放射するカスケードγ線を検出するカスケードγ線用放射線検出器と、
前記対消滅γ線及び前記カスケードγ線をほぼ同時刻に計数する同時計数装置と、
前記放射線検出器を前記一次系配管の断面に沿ってほぼ平行に移動させる検出器移動装置と、
前記カスケードγ線用放射線検出器が見込む計測領域と前記放射線検出器が見込む計測領域が重なるように前記カスケードγ線用放射線検出器を移動させるカスケードγ線検出器移動装置と、
前記検出器移動装置及び前記カスケードγ線検出器移動装置によって移動した各放射線検出器の位置で前記同時計数装置から得られた放射線エネルギー分布の全吸収ピーク計数率を、前記放射線検出器位置に対する対消滅γ線強度分布としてデータ処理する対消滅γ線強度分布算出装置と、
前記対消滅γ線強度分布に基づいて、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との相関を算出し、放射線検出器の任意の位置から前記一次系配管の断面方向位置を同定する位置関係同定装置と、
を備えることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された前記位置関係同定装置において、
前記対消滅γ線強度分布のほぼ対称中心となる前記放射線検出器位置を前記一次系配管の軸部分の位置とし、前記強度分布のほぼ対称中心となる前記検出器位置から前記強度分布の変曲点箇所までの距離を、前記一次系配管の軸から前記検出器移動装置の移動方向へ平行移動したときの距離とすることにより、前記一次系配管の断面内の位置と前記放射線検出器位置との前記相関を算出することを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかの請求項に記載された原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、
前記放射線検出器の検出面よりも小さいコリメータを有し、コリメータ径を任意に変更することにより前記一次系配管の位置同定精度を変更することが可能であることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載された原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、
Nを2以上の自然数としたとき、前記一対の放射線検出器をN対有し、該N対の放射線検出器は、各対がそれぞれの前記検出器移動装置上に、並列に設置されていることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載された原子炉一次系配管の内壁位置同定装置において、
Nを2以上の自然数としたとき、前記一対の放射線検出器をN対有し、該N対の放射線検出器は、アレイ状に前記検出器移動装置上に、並列に設置されていることを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までに記載の原子炉一次系配管の内壁位置同定装置であって、前記検出器移動装置の操作を自動で行うことを特徴とする原子炉一次系配管の内壁位置同定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−256035(P2010−256035A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103021(P2009−103021)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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