説明

参照つき検査素子

吸収測定によって液体中の検体濃度を定量するシステム。該システムは検出領域(2)を有する検査素子(1)を有する。該検出領域(2)は少なくとも1つの反応領域(3)および少なくとも1つの参照領域(4)を有する。前記少なくとも1つの反応領域(3)は、検体との反応において吸収挙動の変化をもたらす検体検出用試薬を有する。前記少なくとも1つの参照領域(4)において、検体によって本質的には吸収挙動が変化しない。前記システムはさらに検出ユニット(7)および、該検出ユニット(7)の信号を評価する評価ユニット(8)を有する。前記検出ユニット(7)は、前記検出領域から受け取った光の光強度を空間分解検出する。前記システムは前記反応領域(3)および前記参照領域(4)が二次元に交互に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体中の検体濃度の定量に関する。
【背景技術】
【0002】
生理学的試料における各種検体の検体濃度の定量は、我々の社会で重要性を増している。そのような試料は臨床検査またはホームモニタリングなどの各種応用分野において分析される。これに関連して、その結果は各種病気の処置のために非常に重要である。これはまた特に、糖尿病管理におけるブドウ糖の測定および心血管疾患におけるコレステロールの測定を含む。医療的な血液診断法においては常に、検査の対象者から血液試料を採取する必要がある。
【0003】
穿刺過程のあとに実施される分析は、しばしば小さく持ち運び可能な測定装置、いわゆる携帯型装置によって実施され、血液で湿った検査素子が分析される。これら携帯型装置は特に糖尿病の診断において非常に重要である。これらの装置において測定は主として電気化学的にまたは光学的に実施される。光学に基づく測定の場合、試料に光が照射され、検体濃度を定量するために反射光が検出される。試験紙などの検査素子が主としてこれに使われ、検査素子の一部である検出領域が血液または間質液などの試料で湿らされる。試料は続いて、前記検出領域につけられる試薬と反応する。これは色の変化、または電気化学的反応の場合さらに電荷の変化を起こし、これらの変化が検出される。
【0004】
少量の試料のみが塗布された検出領域の光学的評価の場合、前記検出領域の湿った部分が最適に評価されることが非常に重要である。これは適切な照明および検出に加え、参照領域を用いることによって達成される。この参照は様々な方法で行われ得る。つまり、前記検出領域から分離された参照領域が、光源または検出器の特性、さらには検査素子の特性などによる技術的影響を相殺するために使われる。試料の特性に関する参照を行うには、前記参照領域は前記検出領域と似た構造をもつ必要がある。
【0005】
有色点の光強度を測定するための反射率測定システムが、米国特許出願公開第2004/0071331号明細書で使用されており、当該点を囲む領域が参照に利用される。この方法の問題点は、参照のためのバックグラウンド信号を取得する領域が試料で湿っていないため、試料で湿った領域とは異なる光学特性を示すことである。
【0006】
欧州特許出願公開第0469377号明細書において、試料中の検体濃度を定量するための方法が記載される。該方法において、試料中の検体に対し異なる結合活性を示す2つの副領域が区別される。試料が塗布されたときに検体を結合させる、高い結合活性をもつ副領域には、結合相手を担持する担体が固定化されている。検体に対し低い結合活性をもつ副領域の担体には、一切の結合相手が固定化されない。結合活性が低いほうの領域は参照に利用される。この分析システムの問題点は、検体の拡散がもはや起こらない、担持された結合相手に検体が結合する必要のある反応しか実施および参照できないことである。検体の定量は結合した分子に限られる。
【0007】
米国特許第6249593号明細書は試験担体上の検体を検出するシステムについて記載している。検体は該試験担体上の固定化受容体に結合する。固定化受容体を一切含まない試験担体の部分が、参照に利用される。またこの明細書において、検体の定量には固定化要素への結合を要する。
【発明の概要】
【0008】
先行技術の問題点を鑑み、検体の試験担体への不可逆的結合を要さない、検体濃度定量用分析システムを開発することを本発明の目的とする。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、ごく少量の試料を用いた、より精度の高い検体の定量を可能とする分析システムを提案することである。
【0010】
これらの目的は、検査素子を備える、吸収測定による液体中検体濃度定量システムによって達成される。前記検査素子は、少なくとも1つの反応領域および少なくとも1つの参照領域からなる検出領域を有する。前記少なくとも1つの参照領域は、検体との反応において吸収挙動の変化をもたらす検体検出用試薬をさらに有する。また、前記システムは前記検出領域から受け取った光強度を空間分解検出するための検出ユニットおよび該検出ユニットの信号を評価する評価ユニットを有する。前記システムは、前記少なくとも1つの参照領域を湿らせる際に、その吸収挙動が本質的には変わらないことを特徴とする。
【0011】
これに関連し、前記検出領域は様々な形状をとり得る。例えば角があっても良いし、曲線的でも良い。前記検出領域の好ましい形状は、正方形または長方形である。前記検出領域はその場合長さと幅をもつ。その長さと幅にわたる領域には、少なくとも1つの反応領域および少なくとも1つの参照領域がある。
【0012】
前記少なくとも1つの反応領域と前記少なくとも1つの参照領域とは、本質的には前記参照領域内の検体による光吸収挙動の変化が起こらないという意味において異なる。このことは好ましくは、前記参照領域が検体と反応する試薬を有さないことによって実現する。前記少なくとも1つの参照領域における吸収挙動の変化を最小限に止めるための別の可能性としては、前記少なくとも1つの参照領域が試料で湿ることを避けることが考えられる。
【0013】
好ましくは、前記参照領域の前記反応領域に対する幾何学的配置によって、前記参照領域と試料との接触は避けられる。例えば、これら2つの領域の間に障害物を設けても良い。障害物によって前記参照領域を隔てるのに加え、前記参照領域は前記反応領域とは異なる高さに設けられても良い。これにより、試料が前記検出領域に塗布されるとき、前記参照領域は試料と接触しない。試料が前記検出領域に例えば毛細管または吸収材料を用いて自動的に塗布されるとき、あらかじめ選択された前記参照領域と適用部位との間の距離により、前記参照領域は適用位置から、試料液が前記参照領域に接触しないだけの距離にある。本発明の好適な実施の形態において、例えば針状構造物によって採取される液体試料は、前記検出領域に針状構造物で接触することによって、目標とするやり方で塗布される。目標とするやり方での(例えば自動的な)前記検出領域の針状構造物との接触には、前記検出領域の選ばれた部分のみが液体と接触するという効果がある。
【0014】
さらなる好適な実施の形態において、試料は前記反応領域に加えて前記参照領域とも接触する。前記反応領域には、試料の塗布によって吸収挙動が本質的には変わらないという性質がある。液体として前記検出領域に塗布される試料(例えば血清、血液または尿)の性質により、前記参照領域における吸収挙動の変化は最小限となる。これらの性質には例えば屈折率が含まれる。前記検出領域に液体が塗布されるとき、該液体によって置き換えられる空気の屈折率は該液体の屈折率とは異なるため、前記検出領域上で屈折率は変化する。しかしながら、固形成分または色素、さらに液体試料のその他の成分もまた、同様の性質をもつ。すなわち、参照領域の吸収挙動に影響し、それによって、検体の存在を推測できない。前記参照領域における吸収挙動の変化は試薬領域中の検体の変化による吸収変化に比べ微小なため、吸収挙動は本質的には変わらないと言える。これに関連し、前記参照領域における吸収挙動の変化は元の吸収の30%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0015】
本発明の好適な実施の形態において、いくつかの反応領域および参照領域が二次元に交互に配置される。二次元に交互にとは、前記反応領域および前記参照領域が位置する前記検出領域上に、少なくとも1つの反応領域および少なくとも1つの参照領域が交互に位置するという意味である。これはどの面から該領域を見るかにはよらない。これに関連して、該二次元は前記検出領域上に広がり、各次元の軸は互いに直角に配置される。結果として、前記少なくとも1つの反応領域および少なくとも1つの参照領域は第一の次元と、さらに第二の次元にも配置される。この場合各領域は異なる大きさおよび形状をとり得る。
【0016】
試料液が前記検出領域に塗布されるとき、少なくとも前記少なくとも1つの反応領域において、検体は検体検出用試薬と反応する。前記検体の前記試薬との反応の間、試料液で湿った前記少なくとも1つの反応領域の光吸収挙動は変化する。もっとも重要かつ実際的な適用において、試薬は少なくとも1つの酵素を含む。該酵素は好ましくは、前記検出領域上に固定化される。この酵素反応の反応生成物のいくつかは、さらなる酵素反応のための中間生成物としてはたらく。または、該酵素反応の最終生成物自体が、前記反応領域の吸収挙動を変えることもある。どちらの場合も(最終生成物または中間生成物)、一連の反応の中で、前記反応領域の吸収挙動を変える色素が生成される。前記反応領域における、検体と少なくとも1種の試薬との反応により、光吸収挙動の変化が起きる。この過程において、照射波長における吸収は増加または減少し得る。好適な反応においては照射波長の光を吸収する色素が生成されるため、好ましくは吸収は増加する。前記検出領域から反射または透過した光は、検出器によって検出される。色素の生成によって吸収挙動が変化するシステムは、以下のように記述される。
【0017】
少なくとも、前記反応領域から吸収挙動を変化させる反応は、前記参照領域においては起こらない。これには以下に例示されるような、様々な理由が考えられる。
【0018】
1.前記参照領域に、一切の酵素が存在しない。
2.前記参照領域において、前記少なくとも1つの酵素が不活性化されている。
3.前記参照領域において、色素生成反応が進まない。
4.前記参照領域に追加された被覆により、少なくとも部分的に前記参照領域が試料で湿ることが防がれる。
5.前記参照領域が試料で湿らない。
【0019】
この場合、前記参照領域の構造および検体に対する挙動は前記反応領域と酷似して設計され得る。しかし、前記参照領域において、検体による光吸収の変化は起こらない。最初の3つの場合には、測定結果の精度を増すための参照において、試料の特性を考慮することができる。これらは検査素子または検出領域をできるだけ小さくしたシステムにおいて、特に好適に利用され得る。小型化されたシステムの測定信号は非常に小さく、したがって間違いが起きやすいためである。前記検出領域のなるべく同質の領域において、検査素子および試料の不規則性が考慮して参照を行うことで、非常に少量の試料であっても十分な精度で評価できる。
【0020】
生成される色素の前記試薬領域から前記参照領域への拡散を防ぐために、前記検体の前記試薬との反応によって生成されたあと水不溶性となる色素が選ばれ得る。結果として色素は水溶液(例えば血液など)内に沈殿し、例えば前記参照領域などの、近隣領域への色素の拡散は起こらない。
【0021】
前記試薬領域および参照領域の配置および/または形状は、無作為に選ばれても良いし、均一でも良い。本発明の好適な実施の形態において、前記反応領域および参照領域の大きさは異なり、前記少なくとも1つの参照領域は特に好ましくは前記少なくとも1つの反応領域よりも小さい。さらなる好適な実施の形態において、いくつかの試薬領域および参照領域は規則的に配置される。この場合、前記反応領域および参照領域は同じ大きさおよび/または同じ容積となる。少量の試料を評価するために、前記反応領域および参照領域の面積はできるだけ小さく選ばれるのが良い。前記検出領域の大きさはせいぜい数平方ミリメートルであるため、前記反応領域および参照領域の好ましい面積もまた数平方ミリメートルである。検出領域の最小可能サイズは、前記反応領域および参照領域の製造工程の選択および検出の精度による。高解像度の検出システムを使用する場合、非常に小さな領域間を光学的に区別できる。本発明の好適な実施の形態において、前記反応領域または前記参照領域の面積は1mm2未満である。検体の分析を十分高精度にするためには、少なくとも反応領域の一部および参照領域の一部が試料で湿っている必要がある。面積が小さいほど、十分に湿った反応領域および適度に湿った参照領域の信号を得るために、検体の検出に要する試料液は少ない。好適な実施の形態に記載したように前記反応領域および参照領域が二次元に交互に配置される場合、1つの反応領域および参照領域が湿っていれば、検体の濃度を定量するのに十分である。最小可能な試料を測定するためには、試料が塗布されたときに少なくとも1つの反応領域および参照領域が適度に湿るように、前記反応領域および参照領域はできるだけ小さく選ばれ得る。
【0022】
プリント処理および/またはナイフ塗工が、二次元に交互に配置される様々な反応領域および参照領域をもつ検査素子の製造に適している。この場合、試薬が連続的に前記検出領域に塗布され、続いてレーザー照射および/または化学組成の変更によって、該領域の一部が参照領域へと変化する。
【0023】
参照領域の構造
最良の参照のためには、前記参照領域は前記反応領域とできるだけ類似した設計であるのが良い。前記検体の前記試薬との酵素反応の場合、検体は担体に結合していないため、一般的にその反応生成物は反応部位から拡散する。このため反応領域および参照領域は一般的に、検査素子上に直接隣り合うようには配置されていない。米国特許第6249593号明細書に記載の免疫学的反応に見られるような、検体が担体に固定化される場合においてのみ、前記反応領域および参照領域は直接隣り合うことができる。該反応において、検体は検出試薬とともに、固定化された反応相手に結合する。固定化された反応相手に反応生成物が結合しない分析システムの拡散過程においては、反応生成物(例えば色素)が前記反応領域から前記参照領域へと拡散する。これは参照を阻害するか、または不可能にする。塗布される試料を増やさないために、前記反応領域および参照領域の空間的分離を避ける手段としては、様々なものが考えられる。その一つとしては、酵素を前記反応領域に固定化することが挙げられる。これにより反応生成物を空間的に制限できる。さらに、生成する色素が水不溶性であるように設計することもできる。この場合、吸収挙動の変化は前記反応領域に限られる。結果として、検出される試薬の拡散が防がれるため、前記反応領域および参照領域を直接隣り合うように配置し、また非常に小さくすることができる。
【0024】
前記参照領域において吸収挙動を変化させる反応が起こらないため、前記参照領域が湿った際、検体または中間生成物は前記反応領域に拡散しても良い。前記参照領域において、少なくとも色素を生成する反応が起こらないためである。この拡散を検出領域全体にわたって比較可能とするためには、参照領域および反応領域が二次元に交互に配置されるようにすることが考えられる。この場合、前記領域の大きさおよび形状は制限されない。しかしながら、すべての領域への拡散を比較可能とすること、および前記領域の比較可能性を確実にするためには、均一な分布が好ましい。これは例えば、参照領域および反応領域をチェス盤のように配置することで可能となる。
【0025】
前記参照領域において酵素をレーザーによって不活性化するかまたは酵素を適用しない代わりに、検体の前記参照領域への浸透を防ぐ物質を該領域の一部に導入することによって、前記参照領域における検体と試薬との反応を防ぐことができる。この例としては、水を透過し、かつ検体などの大きな分子を透過させない膜が考えられる。あるいは、一般に液体の浸透を防ぐことも考えられる。これは例えば、液体の、したがって検体の浸透を防ぐ、疎水性プラスチックまたは人工樹脂などの疎水性の物質によって実現する。このようなプラスチックおよび人工樹脂は先行技術においてよく知られている。
【0026】
酵素/補酵素組成物
試薬の選択は、濃度を定量する検体の構造による。液体に可溶なすべての物質は検体たり得る。この検体は好ましくは体液に溶解しており、例えばコレステロール、ブドウ糖、トリグリセリド、尿素、尿酸またはヘモグロビンA1cなどのような標的分子が挙げられる。各種酵素、例えば脱水素酵素(例えばGluc-DH)、酸化還元酵素(例えばGlucDOR)およびフラビン(例えばFAD/FADH)などの補酵素、ニコチン(例えばNAD/NADH)またはキノン誘導体(例えばQ、PQQ)などがこのために利用できる。これらの酵素/補酵素系は先行技術において十分に知られており、例えば米国特許出願公開第2005/0214891号明細書において記載されている。本発明の好適な実施の形態においてはブドウ糖が検体であり、例えば下記の酵素反応によって検出される。
【0027】
1.GOD-FAD、POD-heamおよび固定化PODの部位における色素の沈殿
2.グルコース色素酸化還元酵素(GlucDOR-PQQ)、メディエーターおよび固定化リンモリブデン酸ピロロキノリンキノン(PQQ)
3.Gluc-DHによるNADのNADHへの変換、およびそれに続く、その最終段階でホルマザン色素が沈殿する、固定化ジアホラーゼを用いたテトラゾリウム塩の変換
【0028】
反応連鎖における要素の一つは、好ましくは固定化される。これは好ましくは、吸収挙動を変化させる物質が生成される、反応連鎖の最後にある要素である。つまり例えば、GOD、GlucDORまたはGlucDHなどのグルコース特異性酵素が、前記検出領域の箔上にチェス盤の模様のように前記参照領域と交互に配置する前記反応領域に固定化される。
【0029】
検査素子上の1つの試料中の異なる検体を同時に測定するためには、異なる反応領域に異なる酵素を導入することが考えられる。
【0030】
製造工程
参照領域および反応領域をもつ前記検出領域の構造は、米国特許第6592815号明細書または米国特許第7008799号明細書に記載されるようなその他従来の製造工程に加え、例えば以下のような各種プリント処理によって製造できる。
−スクリーン印刷
−オフセット印刷
−インクジェット
−ナイフ塗工
【0031】
これらの処理によって、前記検出領域の表面を一度に構成することができる。前記領域の表面は異なる領域に異なる機能性をもつように構成され、また検査素子の構成において一般的であるように、担体材料上に位置する。したがって、いくつかの試薬は前記参照領域には塗布されない一方で、前記反応領域はすべての必要な試薬とともにプリントされ得る。あるいは前記検出領域は前記反応領域と同様にプリントされ、続いて前記参照領域内の酵素が検体と反応しないように、前記参照領域が不活性化されても良い。この不活性化は例えばレーザー光照射、または酸もしくは塩基などの不活性化物質の部分的適用によって行われ得る。また、酵素と不可逆的に結合し、この酵素の検体との反応を阻害する物質を前記参照領域に加えても良い。
【0032】
検出
前記検出領域は1つかそれ以上の光源によって照明され得る。これに関連し、前記検出領域は一様に照明されても良いし、一部の副領域のみにおいてでも良い。1つの光源のみが使われる場合、前記検出領域の一様な照明は、乳白ガラスまたはその他の散乱部材を用いて改善できる。
【0033】
少なくとも1つの光源で前記検出領域を照明する代わりに、前記検出領域の照明に環境光(太陽光または人工照明)を用いることもできる。環境光は複数波長からなるため、特定の波長域のみを検出するために、検査素子と検出器との間にフィルターを挿入しても良い。
【0034】
または、前記システムは検査素子のシーケンシャル照明のために別の照明ユニットを備えていても良い。しかし、これは絶対に必要というわけではない。例えば、微細機構で調整され得る反射体と組み合わせた普通のレーザーダイオードが光源として使われ得る。前記反射体のおかげで、光線は検査素子を隙間なく走査することができる。あるいはレーザーアレイ、好ましくはVCSEL(vertical cavity surface emitting laser)アレイを使っても良い。前記アレイの各レーザーはこの場合個別に動かせる。VCSELの利点は、狭いビーム広がり角で光を照射できることである。これらのレーザー構成約5〜8°のビーム広がり角をもつ。この方法では、単に狭い領域を照射できるだけではなく、光量も非常に大きくなる。
【0035】
前記照明ユニットは、単色または多色の、コヒーレントまたはインコヒーレントな線源からなる。試薬の検体との呈色反応を測定するために、前記照明ユニットからの照射は前記検出領域の中を通るように用いられる。前記照明ユニットは好ましくは1つかそれ以上のLEDからなる。該LEDの光は、試料部位における一様な照明かまたは特に選ばれた空間強度分布を実現する。本発明の好適な実施の形態において、波長約660nmの光が使われる。これは光源の選択によるか、または規定の波長域の光のみを透過するフィルターなどの、組み込み式撮像補助部材によって実現する。
【0036】
撮像補助部材は前記照明ユニットと前記検出領域との間に取り付けられ得る。この撮像補助部材はレンズ、フィルター、鏡、絞り、プリズム、導光素子またはホログラフィック素子などの光学素子からなる。これは前記検出領域の照明を確かなものとする。さらなる撮像補助部材は、照射された試料を検出ユニット上に投影する役割を果たす。この撮像補助部材もまた、レンズ、フィルター、鏡、プリズム、絞り、導光素子またはホログラフィック素子などの画像光学素子からなる。マイクロ光学レンズアレイを選択的に用いても良い。該アレイの個々の素子は、前記検査素子の区切られた空間的領域の像を、検出ユニットの個々の素子上に結像する。複数波長の光源を用いる場合、検出器の前か、または検査素子の前にフィルターを設置するのが望ましい。
【0037】
本発明に用いられる検出ユニットは、平面的または直線的な要素からなり得る。該検出ユニットは、前記検出領域から結合された散乱光の時間・空間分解測定を可能とする。この要素は好ましくは、前記検出領域の空間分解結像がスキャン処理によって行われる、線形ダイオードアレイ、2次元CMOSアレイまたはCCDアレイである。多くの場合、空間分解能をもたない単純なフォトダイオードで十分かもしれない。これは例えば、前記検出領域の空間的に分解された照射と組み合わせて使用され得る。
【0038】
測定の手順
測定の際、以下の手順が患者によって、または前記システムによって実行される。
【0039】
−検査素子の検出領域への、試料の塗布
−前記検出領域からの反射光強度の、空間分解測定
−少なくとも1つの反応領域および少なくとも1つの参照領域から測定された光強度による、検体濃度の定量
【0040】
このために使われる検査素子は、少なくとも1つの反応領域および少なくとも1つの参照領域からなる。前記参照領域においては、前記参照領域が試料で湿った際、検体および/または試料による吸収挙動の変化が本質的には起こらない。既に記述されたような検出のために、検出システムを用いても良い。
【0041】
本出願で記載された液体中の検体濃度を定量するためのシステムおよび方法には、装置においてさらなる参照を必要としないという利点がある。したがって、前記システムにまたは前記検査素子上に、測定の適切な精度を得るための追加の参照領域を設ける必要はない。
【0042】
参照領域および反応領域の配置によって、これらの領域を同時に照明し、および/または検出し、および/または評価できる。異なる領域を別々に照明または検出する必要はない。
【0043】
また、前記少なくとも1つの参照領域および前記少なくとも1つの反応領域の大きさおよび形状が、少なくとも前記参照領域の一部および前記反応領域の一部を分析のために使えることを確かにしているため、患者は試料を前記検査素子にどう塗布するかに気を配る必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1a】反射系による吸収測定システムの略図である。
【図1b】透過系による検体濃度定量システムの略図である。
【図2a】同じ大きさのいくつかの反応領域および参照領域を交互に有する検出領域をもつ検査素子の構成を表す略図である。
【図2b】異なる大きさのいくつかの反応領域および参照領域を交互に有する検出領域をもつ検査素子の構成を表す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
2つのシステムを図1aおよび1bに示す。これらの図は、いくつかの参照領域4および反応領域3からなる検出領域2をもつ検査素子1を示す。このシステムは単にいくつかの参照領域および反応領域をもつ例として示されたのであり、システムは1つの参照領域4および1つの反応領域3のみをもつことも考えられる。
【0046】
図1aにおいて、前記検出領域2が照明ユニット6によって少なくとも部分的に照射され、前記検出領域2から反射した光が検出器7によって捉えられるように、前記検査素子1は前記システム内に配置される。前記検出器7が受け取る信号は、評価ユニット8においてさらに処理され、評価される。照明または検出は、前記検出領域を反応領域3および参照領域4として区別できるように、好ましくは空間的に分解される。それにより前記反応領域3および前記参照領域4の信号は互いに関連付けられ、アルゴリズムによって評価できる。
【0047】
図1bに示されるシステムも、検査素子1、照明ユニット6および検出器7を備える。ここで前記検出器は、前記検査素子1に対し、前記照明ユニットとは反対側に配置される。この態様においては、少なくとも前記検査素子の前記検出領域が光を通し、前記検体の前記試薬との反応の結果起こる吸収を前記検出器7によって測定できるようにしなければならない。この態様においても照明および/または検出は、前記反応領域3および前記参照領域4を互いに区別できるよう、空間的に分解可能な方法で行われる。図1aおよび図1bの前記システムにおいて、できるだけ効率よく前記検査素子を照明または検出するために、片側で前記検査素子と前記照明ユニットとの間に、およびもう片側で前記検査素子と前記検出ユニットとの間に、追加の撮像補助部材5を用いても良い。これらの撮像補助部材5は例えばレンズ、絞りまたはフィルターである。
【0048】
図2aおよび2bは、検査素子1の検出領域2の構造を示す概略図である。前記検査素子1は好ましくは、試薬12を固定化できる担体箔11を有する。前記検出領域2全体に前記試薬12が固定化されるのではなく、固定化試薬を有するいわゆる反応領域3と、試薬が固定化されない参照領域4とが交互に並ぶ。
【0049】
非常に規則的な反応領域3および参照領域4の配置が図2に示される一方、図2bには、同様に反応領域3および参照領域4が交互に並ぶものの、該領域の大きさが異なり得る例が示される。
【符号の説明】
【0050】
1 検査素子
2 検出領域
3 反応領域
4 参照領域
5 撮像補助部材
6 照明ユニット
7 検出器
8 評価ユニット
11 担体箔
12 固定化要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体との反応において前記反応領域における光学密度の変化をもたらす検体検出用試薬;
前記試薬を有する少なくとも1つの反応領域と、
検体によって本質的には吸収挙動が変わらない、少なくとも1つの参照領域
とを有する検出領域をもつ検査素子;
少なくとも1つの反応領域および少なくとも1つの参照領域を含む前記検出領域の一部か、それより広い前記検出領域の部分から受け取った光の光強度を空間分解検出する、検出ユニット;および
該検出ユニットの信号を評価する評価ユニット
を備える、吸収測定による液体中検体濃度定量システムであって、
前記参照領域が試料で湿った際に、前記参照領域の吸収挙動が本質的には変わらないことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記検出領域がいくつかの反応領域および参照領域を有することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記反応領域および前記参照領域が二次元に交互に配置されることを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの参照領域が被覆または含浸物を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記被覆または含浸物が、膜またはプラスチックもしくは人工樹脂であることを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項6】
検体の存在下で前記反応領域に水不溶性色素が生成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記試薬が検体と反応する少なくとも1つの酵素を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記参照領域が活性な酵素を含まないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
前記試薬領域および前記参照領域の配置および/または形状が無作為であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
前記反応領域および参照領域が同じ大きさおよび容積をもつことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
前記反応領域または前記参照領域の面積が1mm2未満であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のシステム。
【請求項12】
透過光および/または反射光を検出することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
試薬を有するいくつかの反応領域と、検体が本質的には光学密度の変化を起こさないいくつかの参照領域とを有する検出領域
を有する、光学密度の測定によって体液中の検体濃度を定量する検査素子であって、
前記参照領域が試料で湿った際に、前記参照領域の吸収挙動が本質的には変わらないことを特徴とする検査素子。
【請求項14】
いくつかの反応領域および参照領域が二次元に交互に配置されることを特徴とする請求項13記載の検査素子。
【請求項15】
担体材料を提供する手順と、
前記担体材料に、少なくとも1つの反応領域および少なくとも1つの参照領域を有する検出領域を適用する手順
とを含む、体液内の検体を定量する検査素子を製造する製法であって、
前記参照領域が試料で湿った際に、前記参照領域の吸収挙動が本質的には変わらないことを特徴とする製法。
【請求項16】
前記反応領域および前記参照領域が二次元に交互に配置されることを特徴とする請求項15記載の製法。
【請求項17】
前記試薬領域および前記参照領域の配置および/または形状が無作為であることを特徴とする請求項16記載の製法。
【請求項18】
試薬を前記検出領域に適用するためにプリント処理および/またはナイフ塗工が使われることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項記載の製法。
【請求項19】
前記参照領域がレーザー照射および/または前記反応領域の一部の化学組成を変えることによってつくられることを特徴とする請求項15〜18のいずれか1項記載の製法。
【請求項20】
前記参照領域において少なくともいくつかの前記試薬が、好ましくはレーザー照射および/または化学処理によって不活性化されることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項記載の製法。
【請求項21】
参照領域が少なくとも1つの、前記反応領域より少ない物質を有することを特徴とする請求項15〜20のいずれか1項記載の製法。
【請求項22】
前記参照領域がさらに少なくとも1つの、検体との反応を阻害する物質を有することを特徴とする請求項15〜21のいずれか1項記載の製法。
【請求項23】
試料を前記検出領域に適用する手順と、
前記検出領域からの反射光の強度を空間分解測定する手順と、
少なくとも1つの反応領域および少なくとも1つの参照領域からの光の光強度を測定することによって、検体濃度を定量する手順
とを含む請求項13記載の検査素子で検体を検出する方法。
【請求項24】
適用される試料の量が500nl未満であることを特徴とする請求項23記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2010−513885(P2010−513885A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541888(P2009−541888)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011233
【国際公開番号】WO2008/074504
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】