説明

双方向定圧膨張弁

【課題】従来より確実に下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能な双方向定圧膨張弁の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の双方向定圧膨張弁10では、冷媒の流れに応じてベローズ41が一端側と他端側の何れに移動しても、可動対向盤44のガイド突部44Bと対向壁13のガイド凹部13Uとの案内により可動対向盤44が芯だしされ、ベローズ41、当接シャフト37及び弁体19が同軸上に配置される。これにより、当接シャフト37と弁体19との当接位置が安定して弁の特性も安定し、従来より確実に下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ回路の室外熱交換器と室内熱交換器の間に接続されて冷媒が双方向に流され、下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能な双方向定圧膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示した従来の双方向定圧膨張弁のボディは、円筒ケース2の両端部を対向壁1,1で閉塞してなる。各対向壁1にはそれぞれボール弁機構4が備えられ、両対向壁1,1の間にはベローズ5が収容されている。また、ベローズ5の両端部を閉塞した可動対向盤5A,5Aからは、各ボール弁機構4,4に向かって1対の押圧シャフト7,7が延びている。そして、ベローズ5は、冷媒が流れる向きに応じて円筒ケース2内を直動し、一端部が下流側の対向壁1に当接した状態で冷媒圧力に応じて伸縮する。これにより、上流側のボール弁機構4の弁開度が調節され、下流側の冷媒圧力が一定になる(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特許第4418271号公報(段落[0013]、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の双方向定圧膨張弁は、ベローズ5が対向壁1,1の間を直動する度に、その直動方向と直交する方向にベローズ5がずれて弁の特性が変わり、下流側の冷媒圧力が一定にならない場合があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より確実に下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能な双方向定圧膨張弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る双方向定圧膨張弁(10)は、ヒートポンプ回路(90)の室内熱交換器(92A)と室外熱交換器(91A)との間に接続されて冷媒が双方向に流され、下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能な双方向定圧膨張弁(10)において、冷媒の流路(11)を内部に有したボディ(10B)と、ボディ(10B)に設けられて、流路(11)を一端側領域(R1)と中間領域(R3)と他端側領域(R2)とに区画する1対の対向壁(13)と、1対の対向壁(13)に貫通形成されて、略同軸上に配置された1対の弁口(16A,16B)と、一端側領域(R1)内及び他端側領域(R2)内にそれぞれ配置されて、各弁口(16A,16B)を開閉する1対の弁体(19)と、各弁体(19)を弁口(16A,16B)側に付勢する1対の弁体付勢ばね(17)と、中間領域(R3)に収容され、1対の対向壁(13)の対向方向に延びたベローズ(41)と、ベローズ(41)の両端部を密閉した1対の可動対向盤(44)と、弁体(19)と可動対向盤(44)との何れか一方に固定されて1対の弁口(16A,16B)に遊嵌され、弁体(19)と可動対向盤(44)との間で突っ張り状態になり、ベローズ(41)の変形量に応じて弁体(19)を移動して弁口(16A,16B)の弁開度を変更する1対の当接シャフト(37)と、可動対向盤(44)から対向壁(13)に向かって突出したガイド突部(44B)と、対向壁(13)の端面に陥没形成されてガイド突部(44B)が嵌合し、ベローズ(41)、当接シャフト(37)及び弁体(19)が同軸上に並ぶように可動対向盤(44)を芯出しするガイド凹部(13U)とを備えたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の双方向定圧膨張弁(10)において、ガイド凹部(13U)及びガイド突部(44B)が、常時嵌合しているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の双方向定圧膨張弁(10)において、ガイド凹部(13U)又はガイド突部(44B)の一方の周面に、摺動リング(44E)を設けたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の双方向定圧膨張弁(10)において、摺動リング(44E)は、摺動性樹脂で形成されたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明に係る双方向定圧膨張弁(10)は、ヒートポンプ回路(90)の室内熱交換器(92A)と室外熱交換器(91A)との間に接続されて冷媒が双方向に流され、下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能な双方向定圧膨張弁(10)において、冷媒の流路(11)を内部に有したボディ(10B)と、ボディ(10B)に設けられて、流路(11)を一端側領域(R1)と中間領域(R3)と他端側領域(R2)とに区画する1対の対向壁(13)と、1対の対向壁(13)に貫通形成されて、略同軸上に配置された1対の弁口(16A,16B)と、一端側領域(R1)内及び他端側領域(R2)内にそれぞれ配置されて、各弁口(16A,16B)を開閉する1対の弁体(19)と、各弁体(19)を弁口(16A,16B)側に付勢する1対の弁体付勢ばね(17)と、中間領域(R3)に収容され、1対の対向壁(13)の対向方向に延びたベローズ(41)と、ベローズ(41)の両端部を密閉した1対の可動対向盤(44)と、弁体(19)と可動対向盤(44)との何れか一方に固定されて1対の弁口(16A,16B)に遊嵌され、弁体(19)と可動対向盤(44)との間で突っ張り状態になり、ベローズ(41)の変形量に応じて弁体(19)を移動して弁口(16A,16B)の弁開度を変更する1対の当接シャフト(37)と、可動対向盤(44)に形成されて、テーパー状に縮径した錐形突入部(44F)と、対向壁(13)に形成されて内側がテーパー状に縮径し、錐形突入部(44F)が嵌合して、ベローズ(41)、当接シャフト(37)及び弁体(19)が同軸上に並ぶように可動対向盤(44)を芯出しする錐形凹部(13T)と、1対の可動対向盤(44)の間を連結し、それら可動対向盤(44)同士を同軸状に保持した状態で直動を許容する座屈防止機構(45)が備えられたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の双方向定圧膨張弁(10)において、一方の弁口(16A)と当接シャフト(37)との隙間の開口面積を、他方の弁口(16B)と当接シャフト(37)との隙間の開口面積より広くしたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1の発明]
請求項1の双方向定圧膨張弁(10)によれば、ヒートポンプ回路(90)を冷房運転と暖房運転との何れか一方にして、冷媒が一端側領域(R1)、中間領域(R3)、他端側領域(R2)の順番に流れると、ベローズ(41)は冷媒に押されて他端側に移動し、他端側の可動対向盤(44)が対向壁(13)に当接して軸方向で位置決めされる一方、一端側の可動対向盤(44)が対向壁(13)から離れる。そして、各当接シャフト(37)が各弁体(19)と各可動対向盤(44)との間で突っ張り状態になることで、他端側領域(R2)の弁体(19)が弁口(16B)から離れた位置に保持され、一端側領域(R1)の弁体(19)が弁口(16A)に接近した位置で、中間領域(R3)内の冷媒圧力に応じて弁口(16A)に接離する。これにより、一端側領域(R1)の弁口(16A)より下流側の冷媒圧力を一定にすることができる。また、冷暖房を切り替えて冷媒の流れる向きが逆転した場合も同様にして、上流に位置した他端側領域(R2)側の弁口(16B)の弁開度が中間領域(R3)の冷媒圧力に応じて変化し、その弁口(16B)より下流側の冷媒圧力を一定にすることができる。ここで、本発明では、冷媒の流れに応じてベローズ(41)が一端側と他端側の何れに移動しても、可動対向盤(44)のガイド突部(44B)と対向壁(13)のガイド凹部(13U)との案内により、ベローズ(41)、当接シャフト(37)及び弁体(19)が同軸上に並ぶように芯出しされる。これにより、弁の特性が安定し、従来より確実に下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能になる。
【0012】
[請求項2,3,4の発明]
請求項2の構成によれば、ベローズ(41)の直動位置に拘わらず、ガイド凹部(13U)とガイド突部(44B)とが常時嵌合して可動対向盤(44)が常時芯出されているので、弁の特性がさらに安定する。この場合、請求項3の構成のように、ガイド凹部(13U)又はガイド突部(44B)に摺動リング(44E)を備えることで摺動抵抗が抑えられ、弁の特性をさらに安定させることができる。なお、摺動リング(44E)は、摺動性樹脂で構成することが好ましい(請求項4の発明)。
【0013】
[請求項5の発明]
請求項5の双方向定圧膨張弁(10)によれば、ベローズ(41)が両対向壁(13)の間を移動し、ベローズ(41)の一端側で可動対向盤(44)と対向壁(13)に当接すると、錐形突入部(44F)と錐形凹部(13T)との嵌合により、可動対向盤(44)が芯だしされる。ここで、ベローズ(41)は、座屈防止機構(45)によって座屈が規制されているので、上記したベローズ(41)の一端側の芯だしにより、ベローズ(41)全体と、当接シャフト(37)及び弁体(19)が芯だしされる。これにより、弁の特性が安定して従来より確実に下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能になる。
【0014】
[請求項6の発明]
請求項6の双方向定圧膨張弁(10)のように、暖房冷房いずれかの運転時に下流側に位置する一方の弁口(16A)と当接シャフト(37)との隙間の開口面積を、他方の弁口(16B)と当接シャフト(37)との隙間の開口面積より広くしてもよい。これにより、暖房冷房の何れか一方の運転時に双方向定圧膨張弁(10)にて制御されて流される冷媒流量が、他方の運転時に制御されて流される冷媒流量より大きくなり、比較的に大流量(大容量)を必要とする暖房運転時になどに適切に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示された本実施形態の双方向定圧膨張弁10のボディ10Bは、パイプ部材12の内部に1対の対向壁13,13を備えてなる。パイプ部材12は、例えば、断面円形をなして真っ直ぐ延びており、両端寄り位置でテーパー状に縮径され、中間部分より両端部の径が小さくなっている。
【0016】
両対向壁13,13は、パイプ部材12内に嵌合可能な断面円形をなしている。また、一方の対向壁13(図1の上側の対向壁13)の外縁部からは、他方の対向壁13に向けて円筒壁13Aが突出している。そして、他方の対向壁13には、一端部を縮径して嵌合部13Bが形成され、その嵌合部13Bを円筒壁13Aの内部に嵌合して対向壁13,13同士が互いに芯だしされている。また、円筒壁13Aの先端面が他方の対向壁13の段差部分に突き当てられて、対向壁13,13同士の間隔が一定の大きさになるように位置決めされている。
【0017】
各対向壁13の外周面には係止溝13Cが全周に亘って形成されている。これに対応して、パイプ部材12の中間部分における軸方向の2箇所には、パイプ部材12の一部を周方向全体に亘って内側に屈曲させて1対の突条12T,12Tが形成されている。そして、各対向壁13,13の係止溝13C内に各突条12Tを係合させて、対向壁13,13がパイプ部材12内に位置決め固定されると共に、対向壁13,13の外周面とパイプ部材12の内周面との隙間が塞がれている。これにより、パイプ部材12内の流路11が1対の対向壁13,13によって一端側の一端側領域R1と他端側の他端側領域R2とそれら一端側領域R1と他端側領域R2の中間の中間領域R3とに区画されている。
【0018】
対向壁13,13の中心部には、弁口16A,16Bが形成されている。これら弁口16A,16Bは、開口形状が共に円形になっており、互いに同軸上に配置されている。そして、これら弁口16A,16Bを通して冷媒が一端側領域R1と中間領域R3との間、中間領域R3と他端側領域R2との間を流れる。また、一方の弁口16Aにおける一端側領域R1側の開口縁及び他方の弁口16Bにおける他端側領域R2側の開口縁には、テーパー状の弁座16Zが形成されている。
【0019】
中間領域R3内には、可動感圧部40が収容されている。図2に示すように、可動感圧部40は、1対の対向壁13,13の間に延びたベローズ41の両端部を1対の可動対向盤44,44にて密閉してなり、そのベローズ41内が真空や大気圧等の一定圧力に保たれている。
【0020】
各可動対向盤44は、円板状のフランジ部44Fを備え、フランジ部44Fのうちベローズ41の内側を向いた内面の中心に円形突部44Aを有している。円形突部44Aには、延長筒部材43が固定されている。その延長筒部材43は、一端有底の円筒状をなし、その開放端を円形突部44Aに嵌合した状態にして(圧入又は溶接により)固定されている。
【0021】
延長筒部材43,43の外側には、感圧補助ばね42が挿通されて、その感圧補助ばね42が可動対向盤44,44の間で突っ張り状態になっている。また、両延長筒部材43の底壁43Bには、貫通孔43Aが貫通形成されている。そして、一端にヘッド部48Hを有したガイドピン48が、一方の延長筒部材43の内側から両貫通孔43A,43Aに挿通されて他方の延長筒部材43の内部に突入している。また、他方の延長筒部材43内でガイドピン48の先端に備えたリング溝48Mにストッパリング49が装着され、ヘッド部48Hとストッパリング49とによりガイドピン48が貫通孔43A,43Aに抜け止めされている。また、これら延長筒部材43,43、ガイドピン48及びストッパリング49によって座屈防止機構45が構成されている。そして、この座屈防止機構45と感圧補助ばね42とにより、常には両延長筒部材43,43の底壁43B,43B同士が隙間を介して対向し、その隙間を狭めるようにしてベローズ41が圧縮変形可能になっている。
【0022】
各対向壁13のうち中間領域R3の端面には、ガイド凹部13Uがそれぞれ陥没形成されている。ガイド凹部13Uは、弁口16A(16B)と同心の内径円形をなして双方向定圧膨張弁10の軸方向に均一の径をなして延び、ガイド凹部13Uの奥面には、中心に弁口16A(16B)が開口している。これに対し、可動対向盤44のうちフランジ部44Fの外面の中心には、円柱状のガイド突部44Bが突出形成されている。そして、このガイド突部44Bがガイド凹部13U内に直動可能な状態で常時嵌合している。
【0023】
ガイド突部44Bには、冷媒連通孔16Dが形成されている。冷媒連通孔16Dは、ガイド突部44Bの先端面からガイド突部44Bとフランジ部44Fとの境界部分に亘って延びてその境界部分で直角曲げされ、ガイド突部44Bの先端面と側面とに開放している。また、ガイド凹部13Uの開口縁には、冷媒連通孔16Dの側面開口との対向位置に冷媒通過溝16Cが形成されている。冷媒通過溝16Cは、一端部が可動対向盤44の外縁部より外側まで延びている。これにより、可動対向盤44の位置に拘わらず中間領域R3が弁口16A,16Bに常時連通している。
【0024】
ガイド突部44Bには、冷媒連通孔16Dの内側に当接シャフト37が遊嵌され、その当接シャフト37の一端部がフランジ部44Fに固定されている。そして、当接シャフト37の他端部が、ガイド突部44Bの先端面から突出して弁口16A,16Bに挿通され、後述する球状の弁体19に突き合わされている。
【0025】
図1に示すように、各対向壁13,13には、中間領域R3内との反対面に端部筒壁14が突出形成されている。端部筒壁14の内面のうち先端寄り部分には、雌螺子部14Aが形成され、ここにナット15が螺合している。ナット15の中心部には貫通孔15Aが形成され、端部筒壁14の内部空間と一端側領域R1又は他端側領域R2とが連通している。
【0026】
各ナット15と各弁座16Zとの間には、ナット15側から順番に、弁体付勢ばね17、押圧部材18、球状の弁体19が収容されている。押圧部材18は、全体として円柱形状をなし、一端部を段付き状に拡径し、さらにその大径側の端面に球受凹部18Aを陥没形成した構造になっている。弁体付勢ばね17の一端部は、ナット15における貫通孔15Aの開口縁に突き当てられかつその開口縁から突出した環状突部(図示せず)によって芯だしされる一方、弁体付勢ばね17の他端部は、押圧部材18の小径部分に嵌合されている。そして、押圧部材18の球受凹部18Aにおける円錐形内面に弁体19が当接し、弁体付勢ばね17の弾発力によって弁体19を弁口16A,16B側に付勢している。
【0027】
本実施形態に係る双方向定圧膨張弁10の構成の説明は以上であり、次に、この双方向定圧膨張弁10を、図3に示したヒートポンプ回路90に組み付けた場合の動作について説明する。このヒートポンプ回路90は、例えば、一般家庭用のルームエアコンに備えられている。ヒートポンプ回路90には室外熱交換器91Aと室内熱交換器92Aとが備えられ、その室外熱交換器91Aは、ルームエアコンの室外機91に組み込まれる一方、室内熱交換器92Aは室内機92に組み込まれている。そして、1対の管路96A,96Bによってこれら室外熱交換器91Aと室内熱交換器92Aとの間が接続されて、室外熱交換器91A及び室内熱交換器92Aを含む冷媒循環路96が形成され、冷媒がこれら室外熱交換器91A及び室内熱交換器92Aを通過して冷媒循環路96を循環する。そして、冷媒が室外熱交換器91Aを通過する際に冷媒と外気との間で熱交換が行われ、冷媒が室内熱交換器92Aを通過する際に冷媒と室内の空気との間で熱交換が行われる。
【0028】
本実施形態の双方向定圧膨張弁10は、室外機91内に組み付けられると共に、室外熱交換器91Aと室内熱交換器92Aとの間を連絡する一方の管路96Aの途中に接続されている。そして、ボディ10Bのうち図1の上側に示した一端側領域R1が室外熱交換器91Aに常時連通する一方、図1の下側に示した他端側領域R2が室内熱交換器92Aに常時連通した状態になっている。また、室外機91側では、他方の管路96Bの途中に四方弁93を介して圧縮機94が接続されている。そして、ヒートポンプ回路90を冷房運転と暖房運転とに切り替えると、四方弁93が作動して、冷媒循環路96を流れる冷媒の向きが逆転する。
【0029】
さて、ヒートポンプ回路90の冷房運転時には、一方の管路96Aにおいては、冷媒が室内熱交換器92Aから室外熱交換器91Aに流され、このとき、双方向定圧膨張弁10においては、図2の矢印で示したように、冷媒が一端側領域R1、一方の弁口16A、中間領域R3、他方の弁口16B、他端側領域R2の順番に流れる。
【0030】
すると、ベローズ41は冷媒に押されて他端側に移動し、ベローズ41の他端側の可動対向盤44が対向壁13に当接して軸方向で位置決めされる一方、一端側の可動対向盤44が対向壁13から離れる。そして、当接シャフト37が各弁体19と各可動対向盤44との間で突っ張り状態になることで、他端側領域R2の弁体19が、弁口16Bから離れた位置に保持され、一端側領域R1の弁体19が弁口16Aに接近した位置で、中間領域R3内の冷媒圧力に応じて弁口16Aに接離する。これにより、一端側領域R1の弁口16Aより下流側の冷媒圧力を一定にすることができる。また、冷暖房を切り替えて冷媒の流れる向きが逆転した場合も同様にして、上流に位置した他端側領域R2の弁口16Bの弁開度が中間領域R3の冷媒圧力に応じて変化し、その弁口16Bより下流側の冷媒圧力を一定にすることができる。
【0031】
ここで、本実施形態では、冷媒の流れに応じてベローズ41が一端側と他端側の何れに移動しても、可動対向盤44のガイド突部44Bと対向壁13のガイド凹部13Uとの案内により可動対向盤44が芯だしされ、ベローズ41、当接シャフト37及び弁体19が同軸上に配置される。これにより、当接シャフト37と弁体19との当接位置が安定する。しかも、ベローズ41の直動位置に拘わらず、ベローズ41の両端の可動対向盤44,44における各ガイド突部44Bが、各ガイド凹部13Uに常時嵌合しているので当接シャフト37と弁体19との当接位置の安定度が高まる。また、ガイド突部44B及びガイド凹部13Uによる案内機構と、座屈防止機構45とが協働してベローズ41の座屈を確実に防ぐことができる。これらにより、本実施形態の双方向定圧膨張弁10では、弁の特性が安定し、従来より確実に下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能になる。
【0032】
なお、本実施形態の双方向定圧膨張弁10のうち一方の弁口16Aと当接シャフト37との隙間の開口面積を、他方の弁口16Bと当接シャフト37との隙間の開口面積より広くしてもよい。このようにすれば、暖房冷房の何れか一方の運転時に双方向定圧膨張弁10にて制御されて流される冷媒流量が、他方の運転時に制御されて流される冷媒流量より大きくなり、比較的に大流量を必要とする暖房運転時になどに適切に対応することができる。
【0033】
[第2実施形態]
本実施形態の双方向定圧膨張弁10は、図4に示されており、ガイド突部44Bの先端寄り位置の外周面にリング溝44Mが形成され、そこに摺動性樹脂製(例えば、フッ素系樹脂製)の摺動リング44Eが装着されている点が第1実施形態と異なる。その他の構成に関しては、第1実施形態と同様である。
【0034】
本実施形態によれば、摺動性樹脂製の摺動リング44Eを備えたことで、摺動抵抗の低減及び可動部分の軽量化が図られ、弁の特性の更なる安定化が可能になる。なお、摺動リング44Eは、摺動性樹脂以外の樹脂又は金属で構成してもよい。
【0035】
[第3実施形態]
本実施形態の双方向定圧膨張弁10は、図5に示されている。以下、第1実施形態と異なる構成に関してのみを説明する。
【0036】
本実施形態の双方向定圧膨張弁10では、一方の対向壁13(図5の上側の対向壁13)に備えた円筒壁13Aの基端部内面を奥側に向けて内径をテーパー状に徐々に縮径して一方の錐形凹部13Tが形成されている。また、他方の対向壁13の端面外縁部からは扁平の円筒壁13Dが突出形成され、その内側面をテーパー状にして他方の錐形凹部13Tが形成されている。各可動対向盤44におけるフランジ部44Fは、各錐形凹部13Tの内側面と同角度で傾斜したテーパー面44Tを備えて、本発明に係る「錐形突入部」を構成している。
【0037】
本実施形態の構成によれば、ベローズ41が両対向壁13,13の間を移動し、ベローズ41の一端が対向壁13に当接すると、ベローズ41の一端側において、「錐形突入部」としてのフランジ部44Fと錐形凹部13Tとの案内により、可動対向盤44が芯だしされる。ここで、ベローズ41は、座屈防止機構45によって座屈が規制されているので、上記したベローズ41の一端側の芯だしにより、ベローズ41全体と、当接シャフト37及び弁体19が芯だしされる。これにより、当接シャフト37と弁体19との当接位置が安定して弁の特性も安定し、従来より確実に下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能になる。
【0038】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0039】
(1)前記第1〜第3の実施形態では、当接シャフト37が可動対向盤44側に固定されていたが、当接シャフト37を弁体19側に固定した構成にしてもよい。
【0040】
(2)前記第1実施形態では、ガイド突部44Bとガイド凹部13Uとによる案内機構と、座屈防止機構45とが協働してベローズ41の座屈を防いでいたが、ガイド突部44Bとガイド凹部13Uとによる案内機構のみでベローズ41の座屈を防ぐ構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係る双方向定圧膨張弁の側断面図
【図2】冷房時の双方向定圧膨張弁の側断面図
【図3】ヒートポンプ回路の概念図
【図4】第2実施形態の双方向定圧膨張弁の側断面図
【図5】第3実施形態の双方向定圧膨張弁の側断面図
【図6】従来の双方向定圧膨張弁の側断面図
【符号の説明】
【0042】
10 双方向定圧膨張弁
10B ボディ
13 対向壁
13T ガイド凹部
13U 錐形凹部
16A,16B 弁口
17 弁体付勢ばね
19 弁体
37 当接シャフト
41 ベローズ
44 可動対向盤
44B ガイド突部
44E 摺動リング
44F フランジ部(錐形突入部)
45 座屈防止機構
90 ヒートポンプ回路
91A 室外熱交換器
92A 室内熱交換器
R1 一端側領域
R2 他端側領域
R3 中間領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ回路(90)の室内熱交換器(92A)と室外熱交換器(91A)との間に接続されて冷媒が双方向に流され、下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能な双方向定圧膨張弁(10)において、
前記冷媒の流路(11)を内部に有したボディ(10B)と、
前記ボディ(10B)に設けられて、前記流路(11)を一端側領域(R1)と中間領域(R3)と他端側領域(R2)とに区画する1対の対向壁(13)と、
前記1対の対向壁(13)に貫通形成されて、略同軸上に配置された1対の弁口(16A,16B)と、
前記一端側領域(R1)内及び前記他端側領域(R2)内にそれぞれ配置されて、前記各弁口(16A,16B)を開閉する1対の弁体(19)と、
前記各弁体(19)を前記弁口(16A,16B)側に付勢する1対の弁体付勢ばね(17)と、
前記中間領域(R3)に収容され、前記1対の対向壁(13)の対向方向に延びたベローズ(41)と、
前記ベローズ(41)の両端部を密閉した1対の可動対向盤(44)と、
前記弁体(19)と前記可動対向盤(44)との何れか一方に固定されて前記1対の弁口(16A,16B)に遊嵌され、前記弁体(19)と前記可動対向盤(44)との間で突っ張り状態になり、前記ベローズ(41)の変形量に応じて前記弁体(19)を移動して前記弁口(16A,16B)の弁開度を変更する1対の当接シャフト(37)と、
前記可動対向盤(44)から前記対向壁(13)に向かって突出したガイド突部(44B)と、
前記対向壁(13)の端面に陥没形成されて前記ガイド突部(44B)が嵌合し、前記ベローズ(41)、前記当接シャフト(37)及び前記弁体(19)が同軸上に並ぶように前記可動対向盤(44)を芯出しするガイド凹部(13U)とを備えたことを特徴とする双方向定圧膨張弁(10)。
【請求項2】
前記ガイド凹部(13U)及び前記ガイド突部(44B)が、常時嵌合していることを特徴とする請求項1に記載の双方向定圧膨張弁(10)。
【請求項3】
前記ガイド凹部(13U)又は前記ガイド突部(44B)の一方の周面に、摺動リング(44E)を設けたことを特徴とする請求項2に記載の双方向定圧膨張弁(10)。
【請求項4】
前記摺動リング(44E)は、摺動性樹脂で形成されたことを特徴とする請求項3に記載の双方向定圧膨張弁(10)。
【請求項5】
ヒートポンプ回路(90)の室内熱交換器(92A)と室外熱交換器(91A)との間に接続されて冷媒が双方向に流され、下流側の冷媒圧力を一定にすることが可能な双方向定圧膨張弁(10)において、
前記冷媒の流路(11)を内部に有したボディ(10B)と、
前記ボディ(10B)に設けられて、前記流路(11)を一端側領域(R1)と中間領域(R3)と他端側領域(R2)とに区画する1対の対向壁(13)と、
前記1対の対向壁(13)に貫通形成されて、略同軸上に配置された1対の弁口(16A,16B)と、
前記一端側領域(R1)内及び前記他端側領域(R2)内にそれぞれ配置されて、前記各弁口(16A,16B)を開閉する1対の弁体(19)と、
前記各弁体(19)を前記弁口(16A,16B)側に付勢する1対の弁体付勢ばね(17)と、
前記中間領域(R3)に収容され、前記1対の対向壁(13)の対向方向に延びたベローズ(41)と、
前記ベローズ(41)の両端部を密閉した1対の可動対向盤(44)と、
前記弁体(19)と前記可動対向盤(44)との何れか一方に固定されて前記1対の弁口(16A,16B)に遊嵌され、前記弁体(19)と前記可動対向盤(44)との間で突っ張り状態になり、前記ベローズ(41)の変形量に応じて前記弁体(19)を移動して前記弁口(16A,16B)の弁開度を変更する1対の当接シャフト(37)と、
前記可動対向盤(44)に形成されて、テーパー状に縮径した錐形突入部(44F)と、
前記対向壁(13)に形成されて内側がテーパー状に縮径し、前記錐形突入部(44F)が嵌合して、前記ベローズ(41)、前記当接シャフト(37)及び前記弁体(19)が同軸上に並ぶように前記可動対向盤(44)を芯出しする錐形凹部(13T)と、
前記1対の可動対向盤(44)の間を連結し、それら可動対向盤(44)同士を同軸状に保持した状態で直動を許容する座屈防止機構(45)が備えられたことを特徴とする双方向定圧膨張弁(10)。
【請求項6】
一方の前記弁口(16A)と前記当接シャフト(37)との隙間の開口面積を、他方の前記弁口(16B)と前記当接シャフト(37)との隙間の開口面積より広くしたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の双方向定圧膨張弁(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−225209(P2007−225209A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47909(P2006−47909)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】