双極リチウムイオン再充電可能電池
【課題】新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システムを提供する。
【解決手段】新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システム(10)は、電解液を含む有孔セパレータ(18a,18b,...18n)を介装し正負電極(14a、14b,...14n)(16a、16b,...16n)を対向対面配置した複数個の別個電気化学セル(12a、12b,...12n)より構成され、隣接セルの正負電極は、単一双極構造を形成する共通集電要素(20a、20b,...20n)の両側とそれぞれ接触して配置される。負電極は集電要素の片側に付着されたカーボン層(24)を備え、正電極は該要素の他側に付着されたリチウム遷移金属または硫化化合物(26)を含む層を備える。隣接セルの正負電極を含む単一双極構造体は、密封積層配列で一体に接合される、好ましくはプラスチック絶縁リング(28a、28b,...28n)状の、外周電気絶縁密封部材を含む。
【解決手段】新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システム(10)は、電解液を含む有孔セパレータ(18a,18b,...18n)を介装し正負電極(14a、14b,...14n)(16a、16b,...16n)を対向対面配置した複数個の別個電気化学セル(12a、12b,...12n)より構成され、隣接セルの正負電極は、単一双極構造を形成する共通集電要素(20a、20b,...20n)の両側とそれぞれ接触して配置される。負電極は集電要素の片側に付着されたカーボン層(24)を備え、正電極は該要素の他側に付着されたリチウム遷移金属または硫化化合物(26)を含む層を備える。隣接セルの正負電極を含む単一双極構造体は、密封積層配列で一体に接合される、好ましくはプラスチック絶縁リング(28a、28b,...28n)状の、外周電気絶縁密封部材を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、双極非水溶再充電可能2次電池、特に、負活性材としてカーボン、正活性材としてリチウム化遷移金属酸化物または硫化物、および双極形状の非水溶電解液を使用する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
有用な再充電可能2次電気化学セルは、セルの充電、放電中に電解液を介して正負電極間で交換される金属イオン源として、ナトリウム、カリウム、特にリチウム等軽量アルカリ金属を使用して製造できることが知られている。これらアルカリ金属は、正活性材として、酸化マンガン等遷移金属酸化物または硫化物と結合して、特に有用である。従来、これらアルカリ金属および特別のリチウム金属は、正電極として遷移金属酸化物と結合してセル負電極として純金属状態で使用されている。しかし、リチウム金属は水と激しく反応するので、これらセルの組立において水分の痕跡を排除するように十分注意しなければならないことは普通知られている。
【0003】
ごく最近、研究者は、金属リチウム負電極の代わりに、たとえば、適当には、黒鉛または石油コーク状のカーボンより構成される内位添加ホスト電極を使用しうる、安全で再充電可能2次リチウムセルを開発した。ホスト電極は、セルの交互充放電中に格子構造のリチウムイオンを内位添加および脱内位添加できる。これらセルに普通使用される正電極は、たとえば、リチウム化遷移金属または硫化物より成る。これら化合物は層間でリチウムイオンを可逆ドーピングされる。
【0004】
充放電工程中これらのいわゆる”リチウムーイオンセル”の正負電極で行う電気化学反応は次のように表される。
充電
(1) LiM02 ⇔ Li1−x M02 +xLi+ +xe
放電
充電
(2) C + xLi+ + xe ⇔ Lix C
放電
ここで、”MO2 ”は、たとえば、遷移金属酸化物または硫化物である。
【0005】
固有特性、たとえば、徐内位添加プロセス、比較的低いイオン導電率の有機電解液および非金属電極、たとえば、カーボンの使用は、残念ながら、いわゆる”リチウムーイオンセル”を比較的低速システムにする。さらにまた、アートリチウムーイオン電池技術の現状では、比較的高速用途には能率的でない螺旋巻きまたは平行板単極構成を使用している。これらの構成では材料の不均一利用となりまた、電極構造に十分に内位添加するよりはむしろカーボン電極に金属リチウムを直接メッキすることになることがよくある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システムを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、比較低高速用途に有用である、新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システムを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、従来の同様な電池システムで可能であるよりも均一かつ能率的に活性材料を利用する、新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、比較的高速用途に満足に行うため補助電源を使用する必要がない、新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記および他の目的、特長および利点は本発明による再充電可能双極リチウムイオン電池により達成される。この再充電可能双極リチウムイオン電池は、電解液を含む有孔セパレータを介装し正負電極を対向対面配置した複数個の別個電気化学セルを備え、隣接セルの正負電極は、単一双極構造を形成する共通集電要素の両側とそれぞれ接触して配置される。負電極は集電要素の片側に付着されたカーボン層を備え、一方正電極は該要素の他側に付着されたリチウム遷移金属または硫化化合物を含む層を備える。隣接セルの正負電極を含む単一双極構造は、密封積層配列状に一体に接合する、好ましくは、プラスチック絶縁リング状の、外周電気絶縁密封部材を含む。
【0011】
本双極リチウムイオン電池に使用される集電要素は、バイメタル基板、好ましくは薄いアルミニュウム銅箔より構成される。リチウム遷移金属酸化物または硫化物層を含む正電極は箔のアルミニュウム側に付着される一方カーボン層を含む負電極は箔の銅側に付着される。
【0012】
正負電極層を両側に付着したバイメタル基板を含む複数個の単一双極構造体は有孔電解液含有セパレータを介装し一体に積層されて、電池に隣接セルを形成する。
【0013】
本発明の好ましい実施例において、再充電可能リチウムイオン電池は、バイメタル基板の銅側のカーボン材よりなる負電極、非水溶溶剤におけるリチウム塩よりなる電解液、およびバイメタル基板のアルミニュウム側のリチウム化遷移金属酸化物、たとえば、LiMn2 04 よりなる正電極を含む複数個の単一双極構造体より成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を詳細に参照すると、図1と図2に、本発明により構成された再充電可能双極リチウムイオン電池10が示されている。図示のように、双極リチウムイオン電池10は、電解液を含む有孔セパレータ18a、18b,...18nを介在させ正電極14a,14b、...14nおよび負電極16a、16b,..16nを対向対面配置した複数個の別個電気化学セル12a、12b,... 12nを備える。隣接セルの、それぞれ正負電極14a,14b、...14nおよび16a、16b,...16nは、図2の22でさらに詳細に示すように複数個の単一双極構造体を形成する共通集電要素20a、20b、...20nの両側に物理的および電気的に接触して配置される。負電極は集電要素の片側に付着された、カーボン層24、たとえば、石油コーク、カーボン、黒鉛またはそれらの混合物よりなり、正電極は該要素の他側に付着されたリチウム遷移金属酸化物または硫化化合物26を含む層よりなる。特に図2に示すように、正負電極は集電要素のそれぞれの側のほぼ全表面積に接触し付着するのが好ましい。単一双極構造体各々は、密封積層配列に一体に接合される外周ポリマーリング28a、28b,...28n内に取り付けられる。
【0015】
本発明の好ましい態様では、双極リチウムイオン電池は、高いリチウム内位添加効率を有するカーボン材よりなる負電極と、LiCo02 、LiNi02 、LiMn2 04 、Li2 Mn2 04 またはこれらの材料の結合を含む正電極とにより構成される。好ましい双極構成ではバイメタル基板の片側はセルの負電極に使用され、他側は他のセルの正電極に使用される。バイメタル基板は好ましくは、薄い銅アルミニュウム箔であり、その銅側は負カーボン電極アノードに、他のアルミニュウム側は正リチウム化遷移金属酸化物電極に使用される。中実非導電重合性リング28は、一方のセルを他方から電気的に隔離して双極積層を密封するために基板の外側周囲に結合される。非導通リング28は適当に、たとえば、ポリテトラフロロエチレンで作られる。
【0016】
本発明の双極電池に使用される電解液は非水溶有機電解液で、好ましくは、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ディエチル、ディメトキシエタン、炭酸ディメチルおよびそれらの混合物等溶剤に溶解するLiPF6 ,LiBF4 、LIAsF6 、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 またはLiCl04 等溶質より成る非水溶溶液である。
【0017】
本発明の双極構成の最低抵抗および均一電流ならびに潜在的分配により濃度勾配を最小にし、さらに、電極構造体内への内位添加よりはむしろカーボン上のリチウムの直接メッキとなる偏光損を防止する。しかし、本発明はその論理に限定されない。言うなれば、以下の実施例からさらに明らかになるように、通常予期される以上に、高速性能の有意な改良が本発明の双極構成により可能となることが意外に発見された。本リチウムイオンシステムの双極構成ではピークパワー条件を達するのに他の電源との結合を必要としない。
【0018】
下記の特定実施例を発明の実際を例示するため述べるが、何等の限定と考えるべきでない。
【実施例1】
【0019】
本発明の双極概念を評価するため、双極単一セル(双極積層の端板)を図3に実質的に示すように組み立てた。双極セルは、石油コークにより作られた負電極30、リチウム化コバルトディオキサイド正電極32および(50:50)/LiCl04 電解液の1M PC:DME(炭酸プロピレン:ディメトキシエタン)溶剤を含んだ。微孔性ポリプロピレンセパレータ34を正負電極間にそれらを電子的に隔離するため使用した。石油コークカーボン材をディメチルフォルムアミド中で2%ポリビニルデンフルオリド結合剤と混合し負電極を形成した。6%アスバリ黒鉛と4%テフロン(ポリテトラフルオロエチレン)と混合したLiCo02 をテフロンリッチ(ポリテトラフルオロエチレン)カーボン被覆アルミニュウム板38に押圧した。2枚の板36、38を、セパレータ34を介在させて重ねて40で示すように縁部の周りにネジで圧縮した。
【0020】
テフロン(ポリテトラフルオロエチレン)0リング42を使用してセルを密封した。セルに、銅板36の頂部の開口44を介し電解液を真空充填した。開口は2方充てん弁46により閉止されている。
【0021】
図4は、電圧限2.75と4.1V間1.5mA/cm2 のセルの放電挙動を示す。セルは約260mAh/gのカーボン容量を送出した。
【0022】
電気化学円筒巻きセルを上記と同じ活性成分で作成した。セルは電圧限4.1と2.75Vの1mA/cm2 で充放電した。
【0023】
図5は、この従来セルの放電挙動を示す。セルは約240mAh/gのカーボン容量を送出した。双極単一セルは円筒セルよりもかなり良好な電圧プロフィルを示した。
【実施例2】
【0024】
双極単一セルと円筒巻きセルを実施例1と同じ電解液と電極材料により作成した。両セルは電圧限4.1と2.75Vで充放電した。双極単一セルは1.5 mA/cm2 、円筒セルは1mA/cm2 のサイクルであった。(円筒セルは高放電速度では満足に機能しなかった)。最初の充放電サイクル後、これらセルのパルス応答を調べた。両セルは4.1Vに充電された。つぎに双極セルを15分間1.5mA/cm2 、30秒間15mA/cm2 、次の期間を1.5mA/ cm2 で放電した。この放電挙動を図6に示す。図7は、円筒セルの連続パルス放電挙動を示す。円筒セルは最初、15分間1mA/cm2 で、つぎに8mA/cm2 で放電した。セルは15mA/cm2 でなく8mA/cm2 での負荷をもとれなく、直ちに低電圧限となり充電状態となった。
【実施例3】
【0025】
双極単一セルと角柱平坦電極セルを実施例1と同じ電解液と電極材料により作成した。両セルは電圧限4.1Vと2.75V、3mA/cm2 で充放電した。完全9サイクル後、セルを3mA/cm2 で4.1Vに充電してからサイクラーから切断した。ついで、セルを、セル成分を視覚で調べるためアルゴン充てんグローブボックスで分析した。角柱セルの負カーボン電極は表面に光沢のある樹脂状金属リチウムの形跡を示した。このような金属リチウムの形跡は双極単一セルのカーボン表面にはなかった。
【実施例4】
【0026】
リチウムイオンセルを、黒鉛アノード、リチウム化コバルトディオキサイドカソードおよび1M LiPF4 /を使用して炭酸エチレンと炭酸ディエチルの混合物(1:1 v/v)で実施例1のように双極形状に発現した。セルの連続放電特性を、1.5mA/cm2 で図8に示す。セルは、LiC4 に相当する372mAh/gの理論容量に近い340mAh/gのアノード容量を送出した。ついで同じセルを高速パルスパワー用途のため試験した。セルは、5秒間45mA/cm2 で放電し、2.75−4.1Vの電圧限で45秒間5mA/cm2 で充電した。充放電特性を図9に示す。3000パルスサイクル後(図9でパルスサイクルは2997−3000である)、サイクリングは、再びセルの連続放電挙動を調べるため意図的に終了した。セルは4.1Vに充電し、2mA/cm2 で2.75Vに放電した。図10は放電形状を表す。セルはカーボンの容量334mAh/gを送出した。上記の結果は、双極形状のリチウムイオンセルが連続放電特性に影響を与えないでパルスパワー条件で長いサイクル寿命を有することを示す。
【実施例5】
【0027】
4セル積層双極電池を、実施例1と同じ電解液と電極で組み立てた。片側はアルミニュウムで他側は銅であった。基板の直径は約4インチであった。基板の縁部周囲に、セルの絶縁と密封に使用されるTEFZEL(テトラフルオロエチレンーエチレンコポリマー)を成型した。アルゴンーパージ乾燥部屋区域で正しい量の電解液での活性化後、4セル双極積層を縁部周囲のフランジを使用して圧縮した。圧縮により良好な密封が得られる。外側TEFZEL(テトラフルオロエチレンーエチレンコポリマー)を熔解結合することによりさらに密封が確保される。双極構成は図面の図1と2に示すものと本質的に同じである。
【0028】
図11は、電圧限16.4Vと11.0V間1.5mA/cm2 における4セル積層双極電池の充放電特性を示す。電池は255mAh/gカーボン容量を送出する。
【実施例6】
【0029】
4セル積層双極電池を実施例1のように、炭酸エチレンと炭酸ディメチルの混合物(1:1v/v)で、黒鉛アノードと1M LiAsFを使用するリチウム化ニッケル酸化物により作成した。電池を5秒間45mA/cm2 で放電してから5秒間5mA/cm2 で充電した。サイクル番号2511ー2515のパルスサイクリング挙動を図12に示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明により構成された典型的再充電可能多セル双極リチウムイオン電池の断面正面図である。
【図2】図1のリチウムイオン電池に使用される、単一双極構造体の拡大断面図である。
【図3】本発明の概念を評価するため、種々の実験テストに使用される各個再充電可能サンプルリチウムイオン電気化学セルの斜視図である。
【図4】本発明により製造された再充電可能電気化学セルの放電挙動を示すグラフである。
【図5】従来技術により製造された円筒巻き再充電可能リチウムイオンセルの放電挙動を示す同様なグラフである。
【図6】本発明により製造された、再充電可能電気化学テストセルの連続およびパルス放電特性を示すグラフである。
【図7】従来技術により製造された、円筒巻き再充電可能リチウムイオンセルの連続およびパルス放電特性を示す同様なグラフである。
【図8】本発明により製造された再充電可能リチウムイオンテストセルの放電挙動を示すグラフである。
【図9】本発明により製造されたリチウムイオンテストセルの高速パルス充電/放電特性を示すグラフである。
【図10】高速パルス充電/放電性能後のリチウムイオンテストセルの連続放電挙動を示すグラフである。
【図11】本発明により製造された、4セル積層再充電可能双極リチウムイオンセルの充放電特性を示すグラフである。
【図12】本発明により製造された、4セル積層再充電可能双極リチウムイオン電池の高速パルス充放電特性を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、双極非水溶再充電可能2次電池、特に、負活性材としてカーボン、正活性材としてリチウム化遷移金属酸化物または硫化物、および双極形状の非水溶電解液を使用する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
有用な再充電可能2次電気化学セルは、セルの充電、放電中に電解液を介して正負電極間で交換される金属イオン源として、ナトリウム、カリウム、特にリチウム等軽量アルカリ金属を使用して製造できることが知られている。これらアルカリ金属は、正活性材として、酸化マンガン等遷移金属酸化物または硫化物と結合して、特に有用である。従来、これらアルカリ金属および特別のリチウム金属は、正電極として遷移金属酸化物と結合してセル負電極として純金属状態で使用されている。しかし、リチウム金属は水と激しく反応するので、これらセルの組立において水分の痕跡を排除するように十分注意しなければならないことは普通知られている。
【0003】
ごく最近、研究者は、金属リチウム負電極の代わりに、たとえば、適当には、黒鉛または石油コーク状のカーボンより構成される内位添加ホスト電極を使用しうる、安全で再充電可能2次リチウムセルを開発した。ホスト電極は、セルの交互充放電中に格子構造のリチウムイオンを内位添加および脱内位添加できる。これらセルに普通使用される正電極は、たとえば、リチウム化遷移金属または硫化物より成る。これら化合物は層間でリチウムイオンを可逆ドーピングされる。
【0004】
充放電工程中これらのいわゆる”リチウムーイオンセル”の正負電極で行う電気化学反応は次のように表される。
充電
(1) LiM02 ⇔ Li1−x M02 +xLi+ +xe
放電
充電
(2) C + xLi+ + xe ⇔ Lix C
放電
ここで、”MO2 ”は、たとえば、遷移金属酸化物または硫化物である。
【0005】
固有特性、たとえば、徐内位添加プロセス、比較的低いイオン導電率の有機電解液および非金属電極、たとえば、カーボンの使用は、残念ながら、いわゆる”リチウムーイオンセル”を比較的低速システムにする。さらにまた、アートリチウムーイオン電池技術の現状では、比較的高速用途には能率的でない螺旋巻きまたは平行板単極構成を使用している。これらの構成では材料の不均一利用となりまた、電極構造に十分に内位添加するよりはむしろカーボン電極に金属リチウムを直接メッキすることになることがよくある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システムを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、比較低高速用途に有用である、新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システムを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、従来の同様な電池システムで可能であるよりも均一かつ能率的に活性材料を利用する、新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、比較的高速用途に満足に行うため補助電源を使用する必要がない、新規な改良再充電可能リチウムイオン電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記および他の目的、特長および利点は本発明による再充電可能双極リチウムイオン電池により達成される。この再充電可能双極リチウムイオン電池は、電解液を含む有孔セパレータを介装し正負電極を対向対面配置した複数個の別個電気化学セルを備え、隣接セルの正負電極は、単一双極構造を形成する共通集電要素の両側とそれぞれ接触して配置される。負電極は集電要素の片側に付着されたカーボン層を備え、一方正電極は該要素の他側に付着されたリチウム遷移金属または硫化化合物を含む層を備える。隣接セルの正負電極を含む単一双極構造は、密封積層配列状に一体に接合する、好ましくは、プラスチック絶縁リング状の、外周電気絶縁密封部材を含む。
【0011】
本双極リチウムイオン電池に使用される集電要素は、バイメタル基板、好ましくは薄いアルミニュウム銅箔より構成される。リチウム遷移金属酸化物または硫化物層を含む正電極は箔のアルミニュウム側に付着される一方カーボン層を含む負電極は箔の銅側に付着される。
【0012】
正負電極層を両側に付着したバイメタル基板を含む複数個の単一双極構造体は有孔電解液含有セパレータを介装し一体に積層されて、電池に隣接セルを形成する。
【0013】
本発明の好ましい実施例において、再充電可能リチウムイオン電池は、バイメタル基板の銅側のカーボン材よりなる負電極、非水溶溶剤におけるリチウム塩よりなる電解液、およびバイメタル基板のアルミニュウム側のリチウム化遷移金属酸化物、たとえば、LiMn2 04 よりなる正電極を含む複数個の単一双極構造体より成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を詳細に参照すると、図1と図2に、本発明により構成された再充電可能双極リチウムイオン電池10が示されている。図示のように、双極リチウムイオン電池10は、電解液を含む有孔セパレータ18a、18b,...18nを介在させ正電極14a,14b、...14nおよび負電極16a、16b,..16nを対向対面配置した複数個の別個電気化学セル12a、12b,... 12nを備える。隣接セルの、それぞれ正負電極14a,14b、...14nおよび16a、16b,...16nは、図2の22でさらに詳細に示すように複数個の単一双極構造体を形成する共通集電要素20a、20b、...20nの両側に物理的および電気的に接触して配置される。負電極は集電要素の片側に付着された、カーボン層24、たとえば、石油コーク、カーボン、黒鉛またはそれらの混合物よりなり、正電極は該要素の他側に付着されたリチウム遷移金属酸化物または硫化化合物26を含む層よりなる。特に図2に示すように、正負電極は集電要素のそれぞれの側のほぼ全表面積に接触し付着するのが好ましい。単一双極構造体各々は、密封積層配列に一体に接合される外周ポリマーリング28a、28b,...28n内に取り付けられる。
【0015】
本発明の好ましい態様では、双極リチウムイオン電池は、高いリチウム内位添加効率を有するカーボン材よりなる負電極と、LiCo02 、LiNi02 、LiMn2 04 、Li2 Mn2 04 またはこれらの材料の結合を含む正電極とにより構成される。好ましい双極構成ではバイメタル基板の片側はセルの負電極に使用され、他側は他のセルの正電極に使用される。バイメタル基板は好ましくは、薄い銅アルミニュウム箔であり、その銅側は負カーボン電極アノードに、他のアルミニュウム側は正リチウム化遷移金属酸化物電極に使用される。中実非導電重合性リング28は、一方のセルを他方から電気的に隔離して双極積層を密封するために基板の外側周囲に結合される。非導通リング28は適当に、たとえば、ポリテトラフロロエチレンで作られる。
【0016】
本発明の双極電池に使用される電解液は非水溶有機電解液で、好ましくは、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ディエチル、ディメトキシエタン、炭酸ディメチルおよびそれらの混合物等溶剤に溶解するLiPF6 ,LiBF4 、LIAsF6 、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 またはLiCl04 等溶質より成る非水溶溶液である。
【0017】
本発明の双極構成の最低抵抗および均一電流ならびに潜在的分配により濃度勾配を最小にし、さらに、電極構造体内への内位添加よりはむしろカーボン上のリチウムの直接メッキとなる偏光損を防止する。しかし、本発明はその論理に限定されない。言うなれば、以下の実施例からさらに明らかになるように、通常予期される以上に、高速性能の有意な改良が本発明の双極構成により可能となることが意外に発見された。本リチウムイオンシステムの双極構成ではピークパワー条件を達するのに他の電源との結合を必要としない。
【0018】
下記の特定実施例を発明の実際を例示するため述べるが、何等の限定と考えるべきでない。
【実施例1】
【0019】
本発明の双極概念を評価するため、双極単一セル(双極積層の端板)を図3に実質的に示すように組み立てた。双極セルは、石油コークにより作られた負電極30、リチウム化コバルトディオキサイド正電極32および(50:50)/LiCl04 電解液の1M PC:DME(炭酸プロピレン:ディメトキシエタン)溶剤を含んだ。微孔性ポリプロピレンセパレータ34を正負電極間にそれらを電子的に隔離するため使用した。石油コークカーボン材をディメチルフォルムアミド中で2%ポリビニルデンフルオリド結合剤と混合し負電極を形成した。6%アスバリ黒鉛と4%テフロン(ポリテトラフルオロエチレン)と混合したLiCo02 をテフロンリッチ(ポリテトラフルオロエチレン)カーボン被覆アルミニュウム板38に押圧した。2枚の板36、38を、セパレータ34を介在させて重ねて40で示すように縁部の周りにネジで圧縮した。
【0020】
テフロン(ポリテトラフルオロエチレン)0リング42を使用してセルを密封した。セルに、銅板36の頂部の開口44を介し電解液を真空充填した。開口は2方充てん弁46により閉止されている。
【0021】
図4は、電圧限2.75と4.1V間1.5mA/cm2 のセルの放電挙動を示す。セルは約260mAh/gのカーボン容量を送出した。
【0022】
電気化学円筒巻きセルを上記と同じ活性成分で作成した。セルは電圧限4.1と2.75Vの1mA/cm2 で充放電した。
【0023】
図5は、この従来セルの放電挙動を示す。セルは約240mAh/gのカーボン容量を送出した。双極単一セルは円筒セルよりもかなり良好な電圧プロフィルを示した。
【実施例2】
【0024】
双極単一セルと円筒巻きセルを実施例1と同じ電解液と電極材料により作成した。両セルは電圧限4.1と2.75Vで充放電した。双極単一セルは1.5 mA/cm2 、円筒セルは1mA/cm2 のサイクルであった。(円筒セルは高放電速度では満足に機能しなかった)。最初の充放電サイクル後、これらセルのパルス応答を調べた。両セルは4.1Vに充電された。つぎに双極セルを15分間1.5mA/cm2 、30秒間15mA/cm2 、次の期間を1.5mA/ cm2 で放電した。この放電挙動を図6に示す。図7は、円筒セルの連続パルス放電挙動を示す。円筒セルは最初、15分間1mA/cm2 で、つぎに8mA/cm2 で放電した。セルは15mA/cm2 でなく8mA/cm2 での負荷をもとれなく、直ちに低電圧限となり充電状態となった。
【実施例3】
【0025】
双極単一セルと角柱平坦電極セルを実施例1と同じ電解液と電極材料により作成した。両セルは電圧限4.1Vと2.75V、3mA/cm2 で充放電した。完全9サイクル後、セルを3mA/cm2 で4.1Vに充電してからサイクラーから切断した。ついで、セルを、セル成分を視覚で調べるためアルゴン充てんグローブボックスで分析した。角柱セルの負カーボン電極は表面に光沢のある樹脂状金属リチウムの形跡を示した。このような金属リチウムの形跡は双極単一セルのカーボン表面にはなかった。
【実施例4】
【0026】
リチウムイオンセルを、黒鉛アノード、リチウム化コバルトディオキサイドカソードおよび1M LiPF4 /を使用して炭酸エチレンと炭酸ディエチルの混合物(1:1 v/v)で実施例1のように双極形状に発現した。セルの連続放電特性を、1.5mA/cm2 で図8に示す。セルは、LiC4 に相当する372mAh/gの理論容量に近い340mAh/gのアノード容量を送出した。ついで同じセルを高速パルスパワー用途のため試験した。セルは、5秒間45mA/cm2 で放電し、2.75−4.1Vの電圧限で45秒間5mA/cm2 で充電した。充放電特性を図9に示す。3000パルスサイクル後(図9でパルスサイクルは2997−3000である)、サイクリングは、再びセルの連続放電挙動を調べるため意図的に終了した。セルは4.1Vに充電し、2mA/cm2 で2.75Vに放電した。図10は放電形状を表す。セルはカーボンの容量334mAh/gを送出した。上記の結果は、双極形状のリチウムイオンセルが連続放電特性に影響を与えないでパルスパワー条件で長いサイクル寿命を有することを示す。
【実施例5】
【0027】
4セル積層双極電池を、実施例1と同じ電解液と電極で組み立てた。片側はアルミニュウムで他側は銅であった。基板の直径は約4インチであった。基板の縁部周囲に、セルの絶縁と密封に使用されるTEFZEL(テトラフルオロエチレンーエチレンコポリマー)を成型した。アルゴンーパージ乾燥部屋区域で正しい量の電解液での活性化後、4セル双極積層を縁部周囲のフランジを使用して圧縮した。圧縮により良好な密封が得られる。外側TEFZEL(テトラフルオロエチレンーエチレンコポリマー)を熔解結合することによりさらに密封が確保される。双極構成は図面の図1と2に示すものと本質的に同じである。
【0028】
図11は、電圧限16.4Vと11.0V間1.5mA/cm2 における4セル積層双極電池の充放電特性を示す。電池は255mAh/gカーボン容量を送出する。
【実施例6】
【0029】
4セル積層双極電池を実施例1のように、炭酸エチレンと炭酸ディメチルの混合物(1:1v/v)で、黒鉛アノードと1M LiAsFを使用するリチウム化ニッケル酸化物により作成した。電池を5秒間45mA/cm2 で放電してから5秒間5mA/cm2 で充電した。サイクル番号2511ー2515のパルスサイクリング挙動を図12に示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明により構成された典型的再充電可能多セル双極リチウムイオン電池の断面正面図である。
【図2】図1のリチウムイオン電池に使用される、単一双極構造体の拡大断面図である。
【図3】本発明の概念を評価するため、種々の実験テストに使用される各個再充電可能サンプルリチウムイオン電気化学セルの斜視図である。
【図4】本発明により製造された再充電可能電気化学セルの放電挙動を示すグラフである。
【図5】従来技術により製造された円筒巻き再充電可能リチウムイオンセルの放電挙動を示す同様なグラフである。
【図6】本発明により製造された、再充電可能電気化学テストセルの連続およびパルス放電特性を示すグラフである。
【図7】従来技術により製造された、円筒巻き再充電可能リチウムイオンセルの連続およびパルス放電特性を示す同様なグラフである。
【図8】本発明により製造された再充電可能リチウムイオンテストセルの放電挙動を示すグラフである。
【図9】本発明により製造されたリチウムイオンテストセルの高速パルス充電/放電特性を示すグラフである。
【図10】高速パルス充電/放電性能後のリチウムイオンテストセルの連続放電挙動を示すグラフである。
【図11】本発明により製造された、4セル積層再充電可能双極リチウムイオンセルの充放電特性を示すグラフである。
【図12】本発明により製造された、4セル積層再充電可能双極リチウムイオン電池の高速パルス充放電特性を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する側面を有する中実液不浸透性の共通集電要素を備え、再充電可能リチウムイオン電池に使用される、単一双極構造体であって、
前記共通集電要素は、片側の銅および他側のアルミニュウムより構成されるバイメタル部材と、前記共通集電要素の銅側に隣接し接触して配置されたカーボンの負電極と、前記共通集電要素のアルミニュウム側に隣接し接触して配置された遷移金属酸化物の正電極と、前記共通集電要素の外周を取り巻くように接着される、外側絶縁リングと、を備える単一双極構造体。
【請求項1】
対向する側面を有する中実液不浸透性の共通集電要素を備え、再充電可能リチウムイオン電池に使用される、単一双極構造体であって、
前記共通集電要素は、片側の銅および他側のアルミニュウムより構成されるバイメタル部材と、前記共通集電要素の銅側に隣接し接触して配置されたカーボンの負電極と、前記共通集電要素のアルミニュウム側に隣接し接触して配置された遷移金属酸化物の正電極と、前記共通集電要素の外周を取り巻くように接着される、外側絶縁リングと、を備える単一双極構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−192621(P2008−192621A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59872(P2008−59872)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【分割の表示】特願平8−513256の分割
【原出願日】平成7年9月29日(1995.9.29)
【出願人】(504179602)ヤードニー、テクニカル、プロダクツ、インコーポレーテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】YARDNEY TECHNICAL PRODUCTS, INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【分割の表示】特願平8−513256の分割
【原出願日】平成7年9月29日(1995.9.29)
【出願人】(504179602)ヤードニー、テクニカル、プロダクツ、インコーポレーテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】YARDNEY TECHNICAL PRODUCTS, INC.
【Fターム(参考)】
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