説明

反射フイルム

【課題】本発明は、高反射性を維持したまま、モアレや輝度ムラの発生を防止できる反射フイルムを提供するものである。
【解決手段】本発明の反射フイルムは、少なくとも、プラスチックフイルムの片面に、金属反射層、屈折率が1.4〜1.7である中屈折率層、及び屈折率が1.7〜2.2である高屈折率層が順次形成されている反射フイルムにおいて、(A)高屈折率層の屈折率と中屈折率層の屈折率との差が0.1以上であること、(B)高屈折率層が、樹脂からなる樹脂膜、高屈折率微粒子、及び透明微粒子からなるものであること、(C)透明微粒子の粒径が高屈折率微粒子の粒径より大きいものであること、(D)高屈折率微粒子は全体が樹脂膜に埋め込まれ、かつ透明微粒子はその一部分が樹脂膜に埋め込まれ、残りの部分が樹脂膜から突出した状態となっていることを満足するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶バックライトユニットのプリズム導光板に載置する反射フイルムであって、高反射であるとともに、輝度ムラやモアレの発生を防止できる反射フイルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックフイルム上に、金属反射層、及び金属反射層を腐食から防止する樹脂からなる腐食防止層が順次形成された反射フイルムが知られている。
該反射フイルムは、多くの場合、金属反射層の厚さが厚いため、反射型液晶ディスプレイにも使用するものであり、具体的には液晶バックライトユニットの導光板の裏側(導光板の液晶表示部が設置される側と反対側)に、腐食防止層側を導光板側として載置して液晶バックライトユニットに組み込んで使用するものである。
また、プラスチックフイルム上に形成された金属反射層上に、屈折率の異なる薄膜層を複数層形成することにより屈折率の差を利用して反射率を向上させた反射フイルムが知られている。
特許文献1には、透明なプラスチックフィルムの片面に、金属層(金属反射層)、低屈折率層、高屈折率層を積層してなる積層フィルム(反射フイルム)が記載されている。
そして、上記低屈折率層の屈折率が1.2以上1.6未満、厚さが10〜100nmである旨、高屈折率層の屈折率が1.6以上2.2以下、膜厚が20〜100nmである旨、低屈折率層がアクリルメラミン系樹脂等の樹脂から形成されている旨、高屈折率層が熱硬化型樹脂等に金属酸化物微粒子を含有したものを塗工して形成するものなどである旨が記載されている。
さらに、上記積層フィルムは、もっぱら半透過半反射型液晶ディスプレイに使用するものであり、その具体的使用方法として偏光板の裏面(一般的には導光板と液晶表示部との間に設置される偏光板の導光板側)に貼着して使用する旨、そのため金属層の厚さは10〜100nm(好ましくは20〜60nm)と薄く、その結果積層フィルムの可視光透過率が3〜50%、可視光反射率が50〜97%である旨の記載もある。
尚、一般的に、反射フイルムを半透過半反射型液晶ディスプレイに使用する場合には、反射フイルムの可視光透過率は10%程度以上、好ましくは20%以上としておくのが望ましく(可視光透過率が10%未満では、現実的に半透過半反射型液晶ディスプレイに使用できない)、その際の金属反射層(特許文献1では金属層)の厚さは、使用する金属の種類にもよるが35nm以下、好ましくは30nm以下としておくのが通常である。
また、一般的に、反射フイルムを反射型液晶ディスプレイに使用する場合には、反射フイルムの可視光透過率は3%未満、好ましくは1%未満としておくのが望ましく、その際の金属反射層の厚さは、使用する金属の種類にもよるが40nm以上、好ましくは60nm以上としておくのが通常である。
従って、引用文献1記載の積層フィルムがもっぱら半透過半反射型液晶ディスプレイに使用するものであることを考慮すると、上記金属層の厚さの範囲は、実質的には積層フィルムの可視光透過率が3%未満となる場合も含んでいることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−39960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1記載の積層フィルムに代表される従来の反射フイルムには以下に示す欠点があった。
1.特許文献1記載の積層フィルムは、上記の通りもっぱら半透過半反射型液晶ディスプレイに使用するものであり、光を透過する必要があるので、金属層の厚さが薄く、可視光反射率は90%を下回る場合があるなど相当低くなる問題があった。
2.特許文献1記載の積層フィルムの金属層の厚さを厚くした反射フイルムとしておけば、該反射フイルムは可視光反射率が向上するため、該反射フイルムを液晶バックライトユニットの導光板の裏側に、高屈折率層側を導光板側として載置して使用すれば、従来からある反射型液晶ディスプレイに使用する反射フイルム同様、反射型液晶ディスプレイにも使用可能な反射フイルムとすることができる。
このようにした上記反射フイルムは、特許文献1記載の積層フィルムと同様に、高屈折率層は、熱硬化型樹脂等に金属酸化物微粒子を含有したものを塗工して形成したものであるが、そもそも、上記高屈折率層は、熱硬化型樹脂に屈折率の高い金属酸化物微粒子を混入することにより高屈折率層全体の屈折率を高くする効果を狙ったものであり、該効果を充分に発揮するためには、通常、金属酸化物微粒子全体が熱硬化型樹脂にほぼ埋め込まれた状態となっている必要がある。
このため高屈折率層は表面がフラットで凹凸がほとんどない状態となる。
従って、上記反射フイルムは、反射型液晶ディスプレイに使用した場合、高屈折率層表面がフラットであるため高屈折率層が導光板と面で接することとなるので、反射フイルムと導光板の間に隙間がほとんどない状態となり、光源である冷陰極管やLEDから発せられる熱の影響をまともに受けて、該反射フイルムが歪んでしまい、その結果、モアレ(干渉ムラ)や輝度ムラが発生する問題があった。
さらに、液晶バックライトユニットが湿気の多い環境下におかれている場合には、上記問題はより顕著に現れた。
【0005】
本発明は、上記欠点を除去したものであり、高反射性を維持したまま、モアレや輝度ムラの発生を防止できる反射フイルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明は、少なくとも、プラスチックフイルムの片面に、厚さが40〜200nmである金属反射層、屈折率が1.4〜1.7である中屈折率層、及び屈折率が1.7〜2.2である高屈折率層が順次形成されている反射フイルムにおいて、下記の条件を満足することを特徴とする反射フイルムである。
(A)高屈折率層の屈折率と中屈折率層の屈折率との差が0.1以上である
(B)高屈折率層が、樹脂からなる樹脂膜、高屈折率微粒子、及び透明微粒子からなるものである
(C)透明微粒子の粒径が高屈折率微粒子の粒径より大きいものである
(D)高屈折率微粒子は全体が樹脂膜に埋め込まれ、かつ透明微粒子はその一部分が樹脂膜に埋め込まれ、残りの部分が樹脂膜から突出した状態となっている
[2]本発明は、高屈折率微粒子の粒径が1〜100nmであり、透明微粒子の粒径が50〜2000nmである上記[1]記載の反射フイルムである。
[3]本発明は、高屈折率層中の樹脂膜の樹脂に対する高屈折率微粒子の混入量が10〜200重量%であり、かつ樹脂膜の樹脂に対する透明微粒子の混入量が0.01〜10重量%である上記[1]、又は[2]記載の反射フイルムである。
[4]本発明は、プラスチックフイルムと金属反射層の間に、樹脂層が形成されている上記[1]〜[3]記載の反射フイルムである。
[5]本発明は、プラスチックフイルムの他の片面に、接着層を介して白色プラスチックフイルム、又は金属蒸着フイルムが形成されている上記[1]〜[4]記載の反射フイルムである。
【発明の効果】
【0007】
(1)本発明の反射フイルムは、少なくとも、プラスチックフイルムの片面に、金属反射層、屈折率が1.4〜1.7である中屈折率層、及び屈折率が1.7〜2.2である高屈折率層が順次形成されている反射フイルムにおいて、(A)高屈折率層の屈折率と中屈折率層の屈折率との差が0.1以上であること、(B)高屈折率層が、樹脂からなる樹脂膜、高屈折率微粒子、及び透明微粒子からなるものであること、(C)透明微粒子の粒径が高屈折率微粒子の粒径より大きいものであること、(D)高屈折率微粒子は全体が樹脂膜に埋め込まれ、かつ透明微粒子はその一部分が樹脂膜に埋め込まれ、残りの部分が樹脂膜から突出した状態となっていることを満足するものである。
本発明の反射フイルムは、特に上記(D)の特徴ある構成を有するので、液晶バックライトユニットの導光板に載置して使用する際でも、透明微粒子の存在により高屈折率層表面がフラットではなく凹凸となることで、透明微粒子が導光板と点で接することとなり、高屈折率層が導光板と面で接することを防止し、本発明の反射フイルムと導光板の間に隙間ができる結果、光源である冷陰極管やLEDから発せられる熱による影響や、液晶バックライトユニットが湿気の多い環境下に置かれている場合の湿気による影響により、該反射フイルムが歪み難く、この歪みにより発生するモアレや輝度ムラを防止することができる。
(2)本発明の反射フイルムは、半透過半反射型液晶ディスプレイに使用するものではなく、反射型液晶ディスプレイに使用するものであるので、上記の通り金属反射層の厚さが40〜200nmと比較的厚く、さらに中屈折率層、及び高屈折率層との相乗効果により、反射率が98%以上となり、反射性に優れている。
(3)高屈折率微粒子の粒径が1〜100nmであり、透明微粒子の粒径が50〜2000nmである上記反射フイルムとしておけば、モアレや輝度ムラの発生防止の点からより好ましい。
さらに、高屈折率層中の樹脂膜の樹脂に対する高屈折率微粒子の混入量が10〜200重量%とし、かつ樹脂膜の樹脂に対する透明微粒子の混入量が0.01〜10重量%としておけば、万全である。
(4)また、本発明の反射フイルムのプラスチックフイルムと金属反射層の間に、樹脂層を形成しておけば、耐腐食性がより向上する。
(5)本発明の反射フイルムのプラスチックフイルムの他の片面に、接着層を介して白色プラスチックフイルム、又は金属蒸着フイルムを形成しておけば、本発明の反射フイルムの反射率がより向上するとともに、白色プラスチックフイルムや金属蒸着フイルムが支持体となって、反射フイルム全体の強度が増すことにより、モアレや輝度ムラの発生もより防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る反射フイルムの一例を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の反射フイルムの構成を図1に従って説明する。
図1は、本発明に係る反射フイルムの一例を示す一部拡大断面図であり、プラスチックフイルム5の片面に、樹脂層4、金属反射層3、中屈折率層2、高屈折率層1が順次形成されており、さらにプラスチックフイルム5の他の片面に、接着層6を介して白色プラスチックフイルム7が順次形成されている。
また、高屈折率層1の断面をみると、樹脂からなる樹脂膜(樹脂が薄い膜となったもの)Aに高屈折率微粒子Bの全体がほぼ埋め込まれているとともに、透明微粒子Cはその一部分が樹脂膜Aに埋め込まれ、残りの部分が樹脂膜Aから突出した構造となっていることがわかる。
本発明の反射フイルムは、半透過半反射型液晶ディスプレイに使用するものではなく、反射型液晶ディスプレイに使用するものであるので、導光板の裏側に載置して使用する。
従って、高屈折率層1側を導光板に接して使用するものである。
【0010】
本発明の反射フイルムに使用するプラスチックフイルムは、従来から反射フイルムに使用されているプラスチックフイルムであれば特に問題はなく、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、ポリプロピレンフイルム、アクリルフイルム、ポリカーボネートフイルム、フッ素フイルム等が使用できる。
【0011】
プラスチックフイルムの厚さは、25〜200μmが好ましい。
厚さが、200μmより厚いと、真空蒸着加工時の熱を充分に冷却できず、金属反射層が酸化等するいわゆるヤケ現象が生じ、その結果反射率が悪くなる場合があるため好ましくない。
厚さが、25μmより薄いと、本発明の反射フイルムを製造する加工時に、しわなどが発生するので好ましくない。
さらに、導光板に載置して反射フイルムを使用した場合には、光源である冷陰極管やLEDから発せられる熱や湿気の影響で該反射フイルムが歪んでしまい、その結果、モアレや輝度ムラが発生するので好ましくない。
【0012】
本発明の反射フイルムに形成される金属反射層は、本発明の反射フイルムを導光板に載置して使用する際に、導光板の裏側へ漏れた光のほとんどを再度導光板側に反射させる役割を果たすものである。
従って、金属反射層は上記役割を果たすためには、光を透過するものであってはならず、金属反射層の厚さはある程度厚い必要がある。
よって、金属反射層の厚さは、上記金属反射層の役割を果たせる範囲で適宜決定すればよいが、金属の種類により多少異なるものの、大よそ40〜200nmが好ましく、より好ましくは60〜150nmである。
厚さが、200nmより厚くても、200nm以下の場合の反射率と比較して反射率の向上は期待できず、経済的でないため好ましくない。
厚さが、40nmより薄いと、反射型液晶ディスプレイに使用可能な反射率が得られないので好ましくない。
【0013】
金属反射層は、金属薄膜からなり、従来から反射フイルムの金属反射層として使用されている金属薄膜が使用でき、銀薄膜からなる銀反射層、アルミニウム薄膜からなるアルミニウム反射層等が使用できる。
【0014】
金属反射層は、抵抗加熱方式や誘導加熱方式による真空蒸着法、スパッタ蒸着法、EB蒸着法、CVD法等の従来公知の方法が使用できる。
【0015】
中屈折率層は金属反射層上に形成され、屈折率が1.4〜1.7である薄膜層である。
そして、後で述べる高屈折率層とともに、本発明の反射フイルムの反射率を向上させる役割を果たすものである。
中屈折率層は、屈折率が1.4〜1.7である薄膜層であれば、特に制限はなく、樹脂からなる樹脂薄膜層や、金属化合物からなる金属化合物薄膜層が使用できる。
【0016】
中屈折率層が金属化合物薄膜層である場合には、例えば、酸化アルミニウム、ケイ素酸化物、フッ化カルシウム、フッ化リチウム等からなる金属化合物薄膜層が使用できる。
【0017】
中屈折率層を樹脂薄膜層とした場合には、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる一般的な樹脂薄膜層が使用できる。
【0018】
中屈折率層の厚さは、0.5〜1000nmが好ましい。
厚さが1000nmより厚くても、高屈折率層の厚さや屈折率を調整しても、中屈折率層の厚さが上記範囲とした場合の反射率と比較して反射率の向上が期待できない。
厚さが0.5nmより薄いと中屈折率層の上記役割を果たすことができないため好ましくない。
【0019】
中屈折率層は、上記の通り、金属化合物薄膜層としても樹脂薄膜層としても構わないが、耐腐食性の点からは、樹脂薄膜層としておく方が好ましい。
樹脂薄膜層としておくことで、熱や湿気等から生じる金属反射層の腐食を防止でき、結果的に本発明の反射フイルムの耐腐食性が向上する。
中でも、ウレタン系樹脂、又はアクリル系樹脂からなる樹脂薄膜層としておけば、耐腐食性の点からは万全である。
【0020】
中屈折率層の形成方法としては、中屈折率層が金属化合物薄膜層である場合には、抵抗加熱方式や誘導加熱方式による真空蒸着法、スパッタ蒸着法、EB蒸着法、CVD法等の従来公知の方法が使用できる。
また、中屈折率層が樹脂薄膜層である場合には、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知の方法が使用できる。
【0021】
高屈折率層は中屈折率層上に形成され、樹脂からなる樹脂膜(樹脂が薄い膜となったもの)、高屈折率微粒子、及び透明微粒子からなるものである。
そして、高屈折率層は本発明の反射フイルムの最表面に位置し、該反射フイルムを導光板に載置して使用する際に、導光板と接するものである。
前記した通り、高屈折率層は、中屈折率層とともに、本発明の反射フイルムの反射率を向上させる役割を果たすものであり、そのためには、高屈折率層は、屈折率が1.7〜2.2である薄膜層としておく必要がある。
【0022】
もともと、金属反射層上に、中屈折率層、及び高屈折率層を順次形成する意味は、屈折率の異なる薄膜層を複数層形成することにより屈折率の差を利用して反射率を向上させる効果を得ることである。
従って、高屈折率層の屈折率と中屈折率層の屈折率との間にはある程度の差がないと上記効果は得られない。
本発明の反射フイルムにおいて、上記効果を得るには上記両層の屈折率の差は0.1以上である必要がある。
例えば、中屈折率層の屈折率が1.7である場合には、高屈折率層の屈折率は1.8以上(2.2以下)とする必要があり、高屈折率層の屈折率が1.7である場合には、中屈折率層の屈折率は1.6以下(1.4以上)とする必要がある。
【0023】
上記の通り、樹脂膜、高屈折率微粒子、及び透明微粒子からなる高屈折率層全体の屈折率は1.7〜2.2である。
そして該屈折率を決定する主要因は、樹脂膜及び高屈折率微粒子の屈折率であり、中でも高屈折率微粒子の屈折率が大きな割合を占める。
このように、高屈折率層中の高屈折率微粒子は、高屈折率層の屈折率を1.7〜2.2の範囲に保つための主要な役割を果たすものである。
【0024】
高屈折率微粒子に使用する微粒子としては、屈折率が1.9〜2.7である微粒子が使用でき、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化銅等からなる金属化合物微粒子や、亜鉛、クロム、タングステン等からなる金属微粒子が使用できる。
【0025】
高屈折率微粒子の粒径は、1〜100nmが好ましい。
粒径が、上記範囲でないと、高屈折率層の上記役割を果たすことができず、結果的に本発明の反射フイルムの反射率が悪くなるので好ましくない。
【0026】
高屈折率微粒子は、必ずしも透明である必要はなく、不透明のものであっても構わない。
高屈折率微粒子は、上記の通り粒径が非常に小さいので、樹脂膜の樹脂に対する混入量が特定の範囲内であれば、不透明であっても反射率に悪影響を与えることがほとんどないからである。
高屈折率微粒子の混入量については、後で詳述する。
【0027】
高屈折率微粒子の形状は、高屈折率微粒子の上記役割を果たせるものであれば特に制限はなく、真球状、ラグビーボール状等の様々な形状の高屈折率微粒子が使用できる。
【0028】
透明微粒子は、本発明の反射フイルムを導光板に載置して使用する際に、高屈折率層中の透明微粒子が導光板と点で接することにより、高屈折率層が導光板と面で接することを防止する役割を果たす。
透明微粒子の上記役割により、本発明の反射フイルムと導光板の間に隙間ができ、光源である冷陰極管やLEDから発せられる熱や湿気の影響で該反射フイルムが歪んでしまうことがなく、この歪みによる、モアレや輝度ムラの発生を防止する効果を得ることができる。
上記の効果を得るためには、透明微粒子の粒径は高屈折率微粒子の粒径より大きいものとしておく必要がある。
【0029】
透明微粒子による上記効果を得るためには、透明微粒子の粒径は、50〜2000nmが好ましく、より好ましくは、100〜1000nmである。
粒径が、50nmより小さいと、透明微粒子の上記役割を果たせ難くなるので好ましくない。
粒径が、2000nmより大きいと透明微粒子が樹脂膜から脱落する場合があるので好ましくない。
【0030】
また、透明微粒子の屈折率は、できれば高屈折率層の屈折率と同じ範囲が好ましいが、高屈折率層全体の屈折率が最終的に1.7〜2.2の範囲となれば問題はないので、1.7未満や2.2超であっても構わない。
【0031】
透明微粒子は、上記透明微粒子の役割、粒径や屈折率の上記範囲を満足するものであれば特に制限はなく、樹脂からなる樹脂微粒子や金属化合物からなる金属化合物微粒子などが使用できる。
樹脂微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂等からなる微粒子が使用できる。
また、金属化合物微粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等からなる微粒子が使用できる。
【0032】
透明微粒子の形状は、透明微粒子と接する導光板に傷が付き難いように、真球状が好ましい。
【0033】
高屈折率層の形成方法としては、中屈折率層上に、例えば、樹脂、高屈折率微粒子、及び透明微粒子を混合した塗料を、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知のコーティング方法によりコーティングして形成することができる。
【0034】
上記コーティング方法により高屈折率層を形成することにより、高屈折率層は、高屈折率微粒子、及び透明微粒子が高屈折率層の面方向に均一に分散された状態となる。
さらに、前記した通り、高屈折率層を深さ方向の断面でみると、樹脂が薄い膜となった樹脂膜に、高屈折率微粒子の全体がほぼ埋め込まれるとともに、透明微粒子はその一部分が樹脂膜に埋め込まれ、残りの部分が樹脂膜から突出した構造となるのである(図1参照)。
そもそも、高屈折率層は、樹脂に屈折率の高い高屈折率微粒子を混入することにより高屈折率層全体の屈折率を高くする効果を狙ったものである。
従って、上記効果を充分に発揮するためには、通常、図1で示すように高屈折率微粒子全体が樹脂膜にほぼ埋め込まれた状態となっている必要がある。
また、図1で示すように透明微粒子の存在により高屈折率層表面がフラットではなく凹凸となることで、液晶バックライトの導光板に載置して使用する際でも、透明微粒子が導光板と点で接することとなり、高屈折率層が導光板と面で接することを防止し、本発明の反射フイルムと導光板の間に隙間ができる結果、光源である冷陰極管やLEDから発せられる熱や湿気の影響で該反射フイルムが歪んでしまうことがなく、この歪みにより、モアレや輝度ムラが発生することもない。
【0035】
尚、高屈折率層における図1の断面構成は、典型的な例であり、図1に示された断面構成の高屈折率層だけが本発明の反射フイルムにおける高屈折率層を表すものではなく、例えば、高屈折率層が本発明でいう高屈折率層の役割を果たせる範囲内であれば、必ずしも高屈折率微粒子の全てが完全に樹脂膜に埋め込まれている必要はなく、一部分が樹脂膜に埋め込まれ、残りの部分が樹脂膜から突出している状態の高屈折率微粒子が相当の割合存在するような高屈折率層であっても構わない。
さらに、上記の通り高屈折率層を、樹脂、高屈折率微粒子、及び透明微粒子を混合した塗料をコーティングする方法で形成した場合には、樹脂膜から突出した部分の高屈折率微粒子や透明微粒子の表面上に該樹脂が薄く形成された状態となることがあるが、このような状態である高屈折率層も本発明の反射フイルムにおける高屈折率層に含まれる。
【0036】
高屈折率層中の樹脂膜は、高屈折率微粒子、及び透明微粒子が高屈折率層上から剥がれ落ち難くするとともに、中屈折率層と密着するバインダーとしての役割を果たすものである。
上記構造からわかる通り、樹脂膜に高屈折率微粒子の全体がほぼ埋め込まれるとともに、透明微粒子はその一部分が樹脂膜に埋め込まれ、残りの部分が樹脂膜から突出した構造とする必要があることから、樹脂膜の厚さは、透明微粒子の粒径より小さい(薄い)ものとする必要がある。
従って、樹脂膜の厚さは、前記した透明微粒子の粒径との関係から、30〜500nmが好ましく、より好ましくは、50〜300nmである。
尚、上記高屈折率層の構造からも明らかな通り、樹脂膜の厚さと透明微粒子の粒径の関係は、樹脂膜の厚さより透明微粒子の粒径が大きい関係となっている必要があるが、透明微粒子が高屈折率層上から剥がれ落ち難くするためには、透明微粒子の粒径の少なくとも1/4は樹脂膜に埋まっていることが好ましいため、樹脂膜の厚さは、透明微粒子の粒径の1/4より厚くなっていることが好ましい。
【0037】
また、前記の通り、高屈折率層の樹脂膜は、高屈折率微粒子とともに高屈折率層の屈折率を決定する主要因である。
従って、樹脂膜の屈折率は、できれば高屈折率層の屈折率と同じ範囲が好ましいが、高屈折率層全体の屈折率が最終的に1.7〜2.2の範囲となれば問題はないので、1.7未満や2.2超であっても構わない。
【0038】
高屈折率層中の樹脂膜に使用する樹脂としては、上記役割や高屈折率層の上記効果を得られるものであれば特に制限はなく、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等が使用できる。
また、バインダーとしての役割をより果たすために、上記樹脂にイソシアネート等の硬化剤を混入した熱硬化型の樹脂膜としてもよい。
【0039】
本発明の反射フイルムが、高反射性である効果を維持したまま、モアレや輝度ムラの発生を防止するためには、高屈折率層中の高屈折率微粒子の混入量、及び透明微粒子の混入量を適度なバランスに保つ必要がある。
この適度なバランスとして、高屈折率層中の樹脂膜の樹脂に対する高屈折率微粒子の混入量を10〜200重量%とし、かつ樹脂膜の樹脂に対する透明微粒子の混入量を0.01〜10重量%としておくことが好ましい。
本発明の反射フイルムを実際に液晶バックライトユニットに組み込んで使用する際に、高温、高湿度の環境になる場合があるが、高屈折率微粒子の混入量が200重量%より多いと、高屈折率層の樹脂膜に高屈折率微粒子の存在による隙間が多く生じ、高屈折率層や中屈折率層が劣化してしまい、その結果、反射率が悪くなる場合があるので好ましくない。
高屈折率微粒子の混入量が、10重量%より少ないと高屈折率層の屈折率が所望の屈折率とならず、結果的に本発明の反射フイルムの反射率が悪くなるので好ましくない。
また、透明微粒子の混入量が、0.01重量%より少ないとモアレ(干渉ムラ)や輝度ムラの発生を防止できないので好ましくない。
透明微粒子の混入量が10重量%より多いと、本発明の反射フイルムの反射率が悪くなるので好ましくない。
高屈折率微粒子及び透明微粒子の上記混入量は、本発明の反射フイルムの所望の反射率、高屈折率微粒子及び透明微粒子の屈折率や粒径等により適宜決定される。
【0040】
本発明の反射フイルムは、前記の通り金属反射層の厚さが40〜200nmであり、かつ中屈折率層、及び高屈折率層との相乗効果により、反射率が98%以上となり、反射性に優れている。
【0041】
本発明の反射フイルムのプラスチックフイルムと金属反射層の間に、樹脂層を形成しておけば、本発明の反射フイルムの耐腐食性がより向上するので好ましい。
樹脂層に使用する樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。
また、樹脂層の厚さは、0.01〜1μmが好ましい。
樹脂層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知の方法が使用できる。
【0042】
さらに、本発明の反射フイルムのプラスチックフイルムの他の片面に、接着層を介して白色プラスチックフイルム、又は金属蒸着フイルムを形成しておけば、本発明の反射フイルムの反射率がより向上するとともに、白色プラスチックフイルムや金属蒸着フイルムが支持体となって、反射フイルム全体の強度が増すことにより、よりモアレや輝度ムラの発生を防止できる。
上記白色プラスチックフイルムとしては、例えばプラスチックフイルム上に白色顔料を混入した樹脂の薄膜をコーティングしたもの、あらかじめ白色顔料をプラスチックフイルム中に混入したものが挙げられる。
また、上記蒸着フイルムとしては、例えばプラスチックフイルム上に銀薄膜層やアルミニウム薄膜層等を真空蒸着法等の公知の方法で形成したものが挙げられる。
【0043】
上記接着層としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂からなる接着層が使用できる。
上記接着層は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等公知の方法が使用できる。
【0044】
プラスチックフイルムの片面に、金属反射層、中屈折率層、及び高屈折率層が順次形成されている本発明の反射フイルムの他の片面に、接着層を介して白色プラスチックフイルム、又は金属蒸着フイルムを形成する方法としては、プラスチックフイルムの他の片面に接着層を形成した後、白色プラスチックフイルム、又は金属蒸着フイルムを接着層面と貼り合わせる方法、白色プラスチックフイルム、又は金属蒸着フイルムに接着層を形成した後、上記反射フイルムの他の片面と貼り合わせる方法が使用できる。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルムの片面に、ポリエステル系樹脂をグラビアコート法にてコーティングして厚さ0.1μmの樹脂層を形成し、該樹脂層上に真空蒸着法にて純度99.99%の銀を蒸着して厚さ100nmの銀反射層を形成し、該銀反射層上に、アクリル系樹脂をグラビアコート法にてコーティングして厚さ100nmで屈折率が1.5の中屈折率層を形成し、該中屈折率層上に、アクリル系樹脂100重量部、粒径15nmの酸化チタンからなる高屈折率微粒子110重量部、粒径500nmのメラミン系樹脂からなる透明微粒子0.8重量部からなる屈折率が1.9の高屈折率層(樹脂膜の厚さ:150nm、樹脂に対する高屈折率微粒子の混入量:110重量%、樹脂に対する透明微粒子の混入量:0.8重量%)を形成して、本発明の反射フイルムを得た。
【0046】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレートフイルムの他の片面に、厚さ7μmのウレタン系接着層を介して厚さ50μmの白色顔料が混入された白色ポリエチレンテレフタレートフイルムを貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の反射フイルムを得た。
【比較例】
【0047】
[比較例]
高屈折率層に透明微粒子を混入しなかったこと以外は、実施例1と同様にして反射フイルムを得た。
【0048】
実施例1、2で得られた本発明の反射フイルム、及び比較例で得られた反射フイルムについて、以下に示す反射率測定試験、及びモアレ試験を行って性能を比較した。
【0049】
<反射率測定試験>
(評価試料)実施例1、2で得られた本発明の反射フイルム、比較例で得られた反射フイルムをそれぞれ、縦50mm、横50mmに切り取ったものを1枚ずつ準備して試料とした。
(評価方法)自記分光光度計(日立製作所社製 U−4000)にて、硫酸バリウムの反射率を100%とした場合の上記各試料の可視光反射率を高屈折率層側から測定した。
(評価結果)表1
【0050】
<モアレ試験>
(評価試料)実施例1、2で得られた本発明の反射フイルム、比較例で得られた反射フイルムをそれぞれ、縦50mm、横40mmに切り取ったものを1枚ずつ準備して試料とした。
(評価方法)上記各試料の上に、液晶バックライトユニット(重さ2.5g)を置き、さらにその上に重さ50gの重りを載せた状態のものについて、モアレの発生状態を目視にて観察した(0時間)。
さらに、上記状態のものを、温度60℃、湿度95%の環境下にて24時間放置後のモアレの発生状態も目視にて観察した。
(評価結果)表1
モアレが発生しなかったものを○、モアレが発生したものを×とした。
【0051】
【表1】

【符号の説明】
【0052】
1 高屈折率層
2 中屈折率層
3 金属反射層
4 樹脂層
5 プラスチックフイルム
6 接着層
7 白色プラスチックフイルム
A 樹脂膜
B 高屈折率微粒子
C 透明微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、プラスチックフイルムの片面に、厚さが40〜200nmである金属反射層、屈折率が1.4〜1.7である中屈折率層、及び屈折率が1.7〜2.2である高屈折率層が順次形成されている反射フイルムにおいて、下記の条件を満足することを特徴とする反射フイルム。
(A)高屈折率層の屈折率と中屈折率層の屈折率との差が0.1以上である
(B)高屈折率層が、樹脂からなる樹脂膜、高屈折率微粒子、及び透明微粒子からなるものである
(C)透明微粒子の粒径が高屈折率微粒子の粒径より大きいものである
(D)高屈折率微粒子は全体が樹脂膜に埋め込まれ、かつ透明微粒子はその一部分が樹脂膜に埋め込まれ、残りの部分が樹脂膜から突出した状態となっている
【請求項2】
高屈折率微粒子の粒径が1〜100nmであり、透明微粒子の粒径が50〜2000nmである請求項1記載の反射フイルム。
【請求項3】
高屈折率層中の樹脂膜の樹脂に対する高屈折率微粒子の混入量が10〜200重量%であり、かつ樹脂膜の樹脂に対する透明微粒子の混入量が0.01〜10重量%である請求項1、又は2記載の反射フイルム。
【請求項4】
プラスチックフイルムと金属反射層の間に、樹脂層が形成されている請求項1〜3記載の反射フイルム。
【請求項5】
プラスチックフイルムの他の片面に、接着層を介して白色プラスチックフイルム、又は金属蒸着フイルムが形成されている請求項1〜4記載の反射フイルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−231155(P2010−231155A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81547(P2009−81547)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000156042)株式会社麗光 (33)
【Fターム(参考)】