説明

反射光を使用する液体内の微粒子の測定

本明細書に記載される発明は、液体内の微粒子を検出し、定量化するための改善された手段である。液体のサンプル容積が、この液体用の入口及び出口を有するハウジングによって保持される。光がサンプル容積を横切って放射され、サンプル容積内の光学経路の2倍の長さを作り出すように反射される。微粒子を検出する確率が増大し、この手段が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に反射光を使用する液体内の微粒子の測定に関し、具体的には内視鏡処置中に手術部位から吸引される流体のサンプル容積用のハウジング内の生体物質の検出及び測定に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡的な外科処置中、人間又は動物の身体内の膝関節、肩関節又は他の腔などの手術部位は内視鏡で観察される。本文献では、内視鏡処置のための手術部位は体腔と呼ばれる。この体腔は、体腔を広げ、体腔の視野を改善し、この腔を洗浄するために透明な液体が注がれる。この洗浄はポンプを使用して行われる。このポンプは、本文献では、流入液体ポンプと呼ばれる。この透明な液体は原則として生理的食塩水であり、このポンプは通常蠕動ローラー式ポンプである。さらにこの外科処置は一般に、組織例えば膝の半月板の除去又は半月板への作業を伴う。これは結果として残骸、すなわち体腔内の液体内で辺りを漂う様々なサイズの組織の微粒子になる。これらの微粒子は、洗浄によっていつも取り除かれる。血液及び/又は残骸を洗浄して出すために、体腔内のこの液体は、体腔を通る液体の流れを導入する又は増加させることによって置き換えられる。洗浄液体の流出流は一般に、導管を介して屑入れバケツに運ばれる。
【0003】
既存の液体管理システムは、処置を開始するときこのシステムのオペレータによって選択される固定のフラッシング流れによって、又はこのシステム用の固定圧力目標によってのどちらかで動作する。
【0004】
導管及び液体の流れを作り出し、それらの取り扱いを改善するために、蠕動ポンプ及び同様な医療用途用のカセットが開発されてきている。欧州特許第0362822号「Disposable vacuum/peristaltic pump cassette system」は使い捨てのカセットを記載し、米国特許第6,962,488号「Surgical cassette having an aspiration pressure sensor」は、眼科手術用に使用されるカセットシステム、及び硬質プラスチック及び軟質プラスチックを主成分とする流体用の通路を有する設計を開示する。
【0005】
流出流導管内の血液及び残骸の検出は以前に、体腔からの洗浄流体内の血液及び残骸などの生体物質を検出するための方法及び装置を開示する、国際公開第WO2007/114776号「Method and device for irrigation of body cavities」で論じられている。生体物質を検出するこの流出流液体デバイスは、導管に搭載される発光ダイオード(LED)と、ヘモグロビン、残骸用の光学センサと、任意選択の較正検出器とからなる。記載されている光学検出器は、ポンプ・システム用のハウジング上に取り付けられるが、任意選択でシェーバー・ツール又はカニューレなどの、患者から出てくる液体経路を形成する外科器具類の近くに、又は直接的に外科器具類によって又は外科器具類の中にさえ取り付けることができる。この記載される光学発光具及びセンサ配置は、洗浄流体の液体流出流経路内の容器のハウジング内の液体内に光学経路を形成する。
【0006】
微粒子の検出及び体液などの流体を分析する方法は、透析の分野内でよく知られている。国際公開第WO2007044548号「fluid handling system」は、サンプル内の検体の濃度を求めるための体液を分析するためのカセットシステムを論じている。患者カセットシステムは、ヘモグロビン用のセンサ及び液体通路内の空気の存在を表示する光学又は超音波「泡センサ」などのセンサによって機能する。さらに、血液システム内に空気を吹き込まないことが重要であるので、気泡を表示するための方法は、警報システムに接続される。米国特許第6511454号「irrigation/aspiration apparatus and irrigation/aspiration cassette」は、そのようなシステムを開示している。欧州特許第319278号「Disposable cassette for a medication infusion system」は、気泡の除去のための設計を教示する。
【0007】
透析及び医療液体流入システム用の既存の製品は、それらが対処する特定の目的に対して適切である可能性があるが、例えば吸引される流体内の希釈された微粒子の光学的測定に対しては同程度には適していない。
【0008】
洗浄流体などの液体内のサンプル内の体液などの微粒子の光学的測定は、サンプル容積のハウジングと測定システムの実施に高度に依存する。この光学経路は、少ない数の微粒子を検出するために十分長くする必要がある。例えば気泡のために生じるノイズ及び光学経路に沿った光学的屈折の不必要な差のために生じるノイズは避けるべきであり、サンプル容積のハウジングは安定であり且つ光学センサに容易に搭載されるべきである。単語「サンプル容積(sample volume)」は、ハウジング内の液体内の光学経路内の液体を意味する。
【0009】
これらの点において、本発明による微粒子の検出及びサンプル容積のハウジングの設計は、従来型の考え方及び従来技術の設計から実質的に外れ、そうすることによって吸引される洗浄流体用のカセットシステム内などのサンプル容積内の血液及び残骸などの微粒子の改善される測定の目的のために主として開発される製品を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第0362822号
【特許文献2】米国特許第6,962,488号
【特許文献3】国際公開第WO2007/114776号
【特許文献4】国際公開第WO2007044548号
【特許文献5】米国特許第6511454号
【特許文献6】欧州特許第319278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
引き続きより詳細に説明される本発明の一般的な目的は、身体部位からの洗浄流体内などのサンプル容積(検出が行われるハウジング内の液体の容積)内の微粒子の改善された、より鋭敏な検出と、吸引される洗浄流体のサンプル容積のハウジング用のカセットとを提供することであり、それらは単独又はその任意の組み合わせのいずれかで、血液、残骸の改善された検出及び空気などのノイズの除去に関する多くの利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これを達成するために本発明は一般に、吸引される洗浄流体のサンプル容積用のハウジングを収容する、蠕動ポンプ上に搭載されるカセットを備える。このハウジングは、サンプル容積を通過する光学的信号を反射する、ハウジングの片側の反射領域によって特徴付けられる。
【0013】
本発明の詳細な説明がより良く理解できるように、かつこの技術分野に対する本発明の寄与がより良く評価されるように、本発明のより重要な特徴を、かなり大雑把にこのように概説的に述べてきた。以下に説明する本発明の追加の特徴も存在する。
【0014】
この点において、本発明の少なくとも1つの実施例を詳細に説明する前に、本発明はその適用において、以下の説明に記載される、又は図面に示される構造の詳細及び構成部品の配置に限定されないことを理解すべきである。本発明は他の実施例が可能であり、様々な方式で実施し、実行できる。さらに、本明細書で使用される語法及び術語は説明の目的のためであり、限定であると見なされるべきではない。
【0015】
本発明の主たる目的は、サンプル容積を包含するカセットのハウジングの反射領域上で光学的信号を反射させることを用いた、手術部位から吸引される洗浄流体のサンプル容積内の血球、赤血球、ヘモグロビン及び/又は残骸の改善される検出を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、ポンプ搭載領域に対して反対側に反射器を有する、吸引される洗浄流体のためのサンプル容積用のハウジングを収容する、蠕動ポンプ上で使用されるカセットを提供することである。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は読者に明らかになり、これらの目的及び利点は本発明の範囲内であることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】蠕動ポンプ上で使用されるカセットの設計の実例を示す図である。
【図2】サンプル容積用のハウジングの設計及びチューブへの接続を示す、カセットの図である。
【図3】光学経路を示すカセットの図である。
【図4】2つの光学経路を示すカセットの設計の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、洗浄流体のサンプル容積を保持するためのハウジングを収容するカセットであって、このカセットが透明な物質から作られ、少なくとも1つの入口開口部及び少なくとも1つの出口開口部とを有することを特徴とし、このハウジングの少なくとも片側に光学経路内でサンプル容積を通過する光学的信号を反射させる少なくとも1つの反射領域を有することによって特徴付けられる、カセットに関する。
【0020】
一実施例では、光学経路の長さは1つ又は複数(n)の反射領域によって1回又は複数(n)回乗算され、上記でnは少なくとも1の整数である。反射領域のこの数は、偶数又は奇数であることができる。
【0021】
この光学的信号は、少なくとも1つの発光デバイスから発し、少なくとも1つの光学センサに到達することができる。これらは、サンプル容積の同じ側に配置することができる。したがって、一実施例によれば、反射領域の数及びその配置は、発光デバイスが配置されるのと同じサンプル容積の側の光学センサに光が到達するように選ばれる。
【0022】
体腔からの洗浄流体などのサンプル容積内の微粒子の改善される、より鋭敏な検出は、光学経路の長さを2倍にする、測定される光の反射によって得られる。これによって結果として、発光ダイオード及び光学センサなどの敏感な部品をサンプル容積の同じ側に有する、すなわちサンプル容積のより小さな幅又は高さを有することも可能になる。
【0023】
洗浄流体用に使用されるカセットのハウジング内のサンプル容積に適用する場合は、このシステムは血液及び/又は残骸の改善される検出に関する多くの利点を有する。(実例1でより詳細に説明される)このシステムは、サンプル容積内の異なる種類の微粒子及び溶液の間を識別する改善される検出感度を有する。これは、光学経路がより長く、光学経路を横切る微粒子の存在可能性が溶液内の光学経路の長さと関連して増加するからである。
【0024】
本明細書に記載される本発明の利点は、洗浄流体のサンプル容積内の血液及び残骸を検出する場合に特に顕著である。各内容物の量及び一定量の血液又は一定量の残骸が存在するか否かの間の識別を測定することができる。これによって例えば、血液及び/又は残骸の存在に基づく蠕動ポンプの制御を改善することができる。
【0025】
微粒子の改善される検出を達成するために、サンプル容積用のハウジングは、気泡などのノイズを防止し、残骸などの微粒子の検出の機会を改善するように設計することができる。気泡からのノイズは、プールの頂上に空気用の空間を作り出す、サンプル容積のための「液体のプール」を作り出すことによって減少させることができる。このプールは、図2に示すように入口(3)及び出口(4)に対してサンプル容積(1)のハウジングを低くすることによって、或いは気泡を強制的にハウジングの頂上に押しやるリッジ(16)によってのいずれかで作り出すことができる。さらに、このハウジングは、空気を自動的に連れ去るように設計することができる。これは例えば図2に示すように、ハウジングの頂上又は「屋根」(17)に傾斜をつけることによって達成することができる。
【0026】
反射光によって検出を改善することとは別に、サンプル容積内の残骸などの微粒子を検出する機会は、サンプル容積内に乱流を作り出し、その結果(異なるサイズ及び重量の)微粒子が光学検出経路を通過する機会を改善することによって改善することができる。これは例えば、図2に示すサンプル容積(1)の上記で述べたリッジ(16)によって作り出すことができる。
【0027】
前述は、本発明の原理の例示としてのみ見なされる。さらに、当業者は多数の改変及び変更に容易に気付くので、本発明を図示され、記載されるまさにその構造及び動作に限定することは望ましくなく、したがって、全ての適切な改変及び均等物は本発明の範囲内にあると主張することができる。
【0028】
「実例1」
上述のカセットの一実例は以下の通りである。
関節処置中に、患者の関節が洗浄液体によって膨張させられる。この液体は、この目的のためにポンプによって注がれる殺菌した生理的食塩水である。第2のポンプは、この関節から液体を取り除く、又は吸引する機能を有する。外科作業は、関節に対する手作業又は動力工具によって行われる。この外科的な作業は、この作業の結果として血管が破られるとき出血になる場合がある。工具の使用も結果として、様々なサイズの軟骨又は骨組織の破片が関節内の液体内に浮遊することになる。破片及び血液の両方が関節鏡内の視野を妨げ、吸引ポンプによって関節から吸引される。この液体は、外科器具を介して、又は患者の関節からの流出ポートを経由してのいずれかで患者から吸引される。この吸引ポンプは、容積ローラーポンプ型式のものであり、したがってポンプ・システムの一部として柔軟性のある導管を有する。この柔軟性のある導管はカセットに接続される。
【0029】
このカセットは、ポリカーボネイトなどの光を通過させる透明な物質から作られる。それは、関節から吸引ポンプの導管までの液体通路の一部分として、ハウジング又は区画室(1)を有する。このカセットはフレーム構造体(2)を有する。このカセットは外科器具類又は流出ポートからの入力部(3a〜c)と、吸引ポンプ導管セグメントへの接続部(4)を有する。この区画室(1)は、サンプル容積(1)を通る光の洗浄の目的のための、吸引される液体のサンプル容積を有益に収容する形状を有する。このカセットは、吸引ポンプのハウジング上に取り付けられる。このカセットに隣接して、発光ダイオード(5)が取り付けられる。放射波長は880nmである。この光ビームは、凸レンズ(6)によって変換され、サンプル容積(1)を包含するカセット構造体の壁を通過している。光ビーム(7)が吸引された液体のサンプル容積(1)を通り移動しているとき、その強度は、吸引された液体内の軟骨組織又は骨組織の破片による散乱及び吸収の結果として減少する。次いでこの光ビームは反射面(8)によって反射され、もう一度サンプル容積(1)を通り移動する。さらにこの強度は、光ビーム(9)の移動距離がサンプル容積(1)内で2倍にされるので破片によって減少させられる。最後にこの光強度は、光検出ダイオード(10)によって検出される。吸引ポンプの速度は光検出ダイオード(10)からの信号によって制御される。
【0030】
「実例2」
この実例は、カセット内の血液の検出の増強を示し、第2の発光ダイオード(11)がカセットに隣接して取り付けられる。この波長はこの場合は370nmである。光ビーム(12)は凸レンズ(13)によって変換され、次いで吸引された液体のサンプル容積(1)を通り移動する。その強度は、吸引された液体内の血液による散乱及び吸収の結果として減少する。次いでこの光ビームは反射面(8)によって反射され、再度サンプル容積(1)を通り移動する。この強度は、光ビーム(14)の移動距離がサンプル容積(1)内で2倍になるので、さらに血液によって減少させられる。最後に、この光強度は、光検出ダイオード(15)によって検出される。光検出ダイオード(10及び15)からの信号強度の差は、血液の最も鋭敏な検出であると思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引される洗浄流体のサンプル容積を保持するためのハウジング(1)を収容するためのカセット(2)であって、前記カセットが透明な物質から作られ、少なくとも1つの入口開口部(3、3a、3b、3c)及び少なくとも1つの出口開口部(4)とを有することを特徴とし、前記ハウジングの少なくとも片側に、光学経路内の前記サンプル容積を通る光学的信号を反射させる少なくとも1つの反射領域(8)を有することによって特徴付けられる、カセット。
【請求項2】
前記光学経路の長さが、n個の反射領域(8)によってn回乗算され、nが少なくとも1の整数である、請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
前記光学的信号が少なくとも1つの発光デバイス(5、11)から発し、少なくとも1つの光学センサ(10、15)に到達する、請求項1及び2のいずれか一項に記載のカセット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの発光デバイス(5、11)及び前記少なくとも1つの光学センサ(10、15)が前記サンプル容積の同じ側に配置される、請求項3に記載のカセット。
【請求項5】
サンプル液体のプールの頂上に空気の空間を作り出すように構築されることによって特徴付けられる、請求項1から4までのいずれか一項に記載のカセット。
【請求項6】
前記ハウジングの上側部分に、液体のプールの頂上に空気の空間を作り出すための傾斜部が搭載されることを特徴とする、請求項5に記載のカセット。
【請求項7】
前記入口(3a、3b、3c)及び出口(4)が前記ハウジングの上側部分に配置され、液体のプールの頂上に空気の空間を作り出す、請求項5及び6のいずれか一項に記載のカセット。
【請求項8】
1つ又は複数のリッジ(16)が前記ハウジング内に配置される、請求項1から7までのいずれか一項に記載のカセット。
【請求項9】
前記リッジ(16)が前記入口に近接して配置され、気泡を前記ハウジングの頂上に強制的に押しやる、請求項5から8までのいずれか一項に記載のカセット。
【請求項10】
1つ又は複数のリッジが乱流を作り出すように配置され、微粒子が前記光学経路を移動する機会を改善する、請求項5から8までのいずれか一項に記載のカセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−516854(P2011−516854A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502898(P2011−502898)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050301
【国際公開番号】WO2009/123547
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510262725)メディカル ビジョン リサーチ アンド ディベロップメント エービー (2)
【Fターム(参考)】