説明

反射型液晶表示素子および画像表示装置

【課題】反射型液晶表示素子において、端子数の増加を抑えつつ温度分布を計測できるようにする。
【解決手段】反射型液晶表示素子50は、透光性を有する共通電極216と、該共通電極を透過した光を反射する複数の反射電極214が形成された半導体基板211と、共通電極および半導体基板の間に配置された液晶層217とを有する。半導体基板に、複数の温度検出素子250と、該複数の温度検出素子からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、該デジタル信号を用いた処理を行う信号処理回路262と、該信号処理回路からの信号を出力する端子であって複数の温度検出素子の数よりも少ない数の出力端子300とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶プロジェクタ等の画像表示装置に用いられる反射型液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型液晶表示素子は、Si等の半導体により形成された半導体基板上にマトリックス状に配置された複数の画素電極(反射電極)と、透光性の導電膜により形成された共通の電極(共通電極)との間に液晶を配置して構成される。半導体基板における反射電極の下層には、アクティブマトリックス駆動に必要なMOSトランジスタ等のスイッチング素子を含む液晶駆動回路が形成される。
【0003】
このように構成される反射型液晶表示素子においては、共通電極と反射電極との間の電位差を画像信号に応じて画素電極ごとに変更することで画素ごとに液晶の配向を制御し、共通電極側から入射して反射電極にて反射する光を画素ごとに変調する。
【0004】
液晶表示素子を搭載した液晶プロジェクタ等の画像表示装置では、該装置に設けられた光源からの高強度の光の入射や電気回路基板から発せられた熱の伝達によって液晶表示素子の温度が上昇する。また、外気温の変化も液晶表示素子の温度を変化させる。
【0005】
そして、液晶表示素子の温度が変化すると、該液晶表示素子の電気光学特性が変化する。これには、液晶分子の屈折率異方性の温度依存性や温度変化によるセルギャップ変化によって液晶層に印加される実効電界が変化したり、液晶分子の配向状態が温度によって変化したりする等の様々な要因がある。液晶表示素子の電気光学特性が変化すると、液晶表示素子にて変調される光の明るさや色が変化し、該液晶表示素子を搭載した画像表示装置により表示される画像の画質が劣化する。
【0006】
このため、特許文献1,2には、液晶表示素子の温度を直接測定できるように、液晶表示素子を構成する基板に温度検出素子を設けた液晶表示素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−122838号公報
【特許文献2】特開平7−253765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、液晶表示素子の温度は、その表示面内において均一ではなく、高低差(分布)を持つ場合が多い。このような温度分布は、表示面内での明るさや色の変化を発生させる。このため、液晶表示素子の温度分布に応じた補償を行う必要がある。
【0009】
液晶表示素子の温度分布を計測するためには、液晶表示素子に複数の温度検出素子を設ければよい。しかし、温度検出素子の数が増えると、これら温度検出素子からの信号を出力するための端子が温度検出素子の数の分だけ必要となり、液晶表示素子における端子数が大幅に増加したり多数の端子の存在によって配線が制約されたりする。
【0010】
本発明は、端子数の増加を抑えつつ温度分布を計測できるようにした反射型液晶表示素子およびこれを用いた画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面としての反射型液晶表示素子は、透光性を有する共通電極と、該共通電極を透過した光を反射する複数の反射電極が形成された半導体基板と、共通電極および半導体基板の間に配置された液晶層とを有する。そして、半導体基板に、複数の温度検出素子と、該複数の温度検出素子からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、該デジタル信号を用いた処理を行う信号処理回路と、該信号処理回路からの信号を出力する端子であって複数の温度検出素子の数よりも少ない数の出力端子とが設けられていることを特徴とする。
【0012】
なお、上記反射型液晶表示素子の出力端子から出力された信号処理回路からの信号に応じて該装置の動作を制御するコントローラを有する画像表示装置も本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反射型液晶表示素子の端子数の増加を抑えつつ、該反射型液晶表示素子の温度分布を精度良く測定することができる。そして、このような反射型液晶表示素子を画像表示装置に用いることで、装置側の回路構成を複雑にすることなく、反射型液晶表示素子の温度分布に応じた該装置の良好な動作制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1である反射型液晶表示素子の構造を示す断面図。
【図2】実施例1である反射型液晶表示素子に設けられた温度検出/信号処理用の回路構成を示す図。
【図3】本発明の実施例2である反射型液晶表示素子の温度検出/信号処理用の回路構成を示す図。
【図4】本発明の実施例3である画像表示装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1には、本発明の実施例1である反射型液晶表示素子50の断面構造を示している。本実施例では、基台となる半導体基板211として、P型単結晶シリコン基板(P型Si基板)を用いている。ただし、他の半導体により形成された基板を半導体基板211として用いてもよい。半導体基板211の表面(後述する液晶側の面)には、複数の画素を構成する複数の反射電極214がマトリックス状に配置されている。複数の反射電極214がマトリックス状に配置された領域が、反射型液晶表示素子50の表示面となる。
【0017】
また、半導体基板211の内部には、ポリシリコンで形成されたゲート線201や、メタル層で形成された信号線205や、スイッチングトランジスタのドレイン領域202や、ゲート領域206が水平方向に広がるように形成されている。ゲート線201の一部は、スイッチング素子となるスイッチングトランジスタのゲートを構成する。
【0018】
また、スイッチングトランジスタのドレイン領域202は、半導体基板211の厚み方向に延びるドレインコンタクト203を介してそれぞれ信号線205と接続されている。また、信号線205はスルーホール204を介して反射電極214に接続されている。
【0019】
また、信号線205と反射電極214との間には、互いに隣り合う反射電極214間の隙間から入射する光を遮るための遮光層215が設けられている。
【0020】
半導体基板211に対向して、ITO膜(透光性導電膜)により形成された液晶共通電極216が配置されている。液晶共通電極216は、不図示のガラス基板(透光性基板)によって保持されている。そして、半導体基板211(反射電極214)と液晶共通電極216との間には、液晶(液晶層ともいう)217が配置されている。
【0021】
この反射型液晶表示素子50における液晶層217の厚みをd(μm)とする。液晶層217の厚みは図示しないスペーサーによって制御されている。
【0022】
液晶材料の屈折率異方性をΔnとする。屈折率異方性とは液晶分子の長軸方向の屈折率neと単軸方向の屈折率noとの差で与えられる。この屈折率の値は波長分散特性を有し、各々の波長に対して固有の値を有する。
【0023】
ここで、反射型液晶表示素子50の駆動原理について説明する。反射型液晶表示素子50は、1フレーム(例えば60Hz)を複数フィールドに分割し、フィールド毎に正負の電圧を反転させた駆動電圧を半導体基板211に構成された半導体回路を通して反射電極214に印加することにより駆動する。垂直配向した負の誘電率異方性を有する液晶材料は、駆動電圧が0Vのときには基板面に対してほぼ垂直に液晶分子が配向している。そして、駆動電圧を高くしていくと、基板面に対して水平方向に液晶分子が傾いていく。液晶分子が傾くに従い、液晶層217を透過する光の偏光方向を変調することにより、反射型液晶表示素子50の反射率を変化させ階調表示することが可能となる。
【0024】
反射率は、
sin(2πΔneffd/λ) (1)
で表せる。ここで、Δneffは駆動電圧を印加し、液晶分子が傾いたときの長軸方向の実効的な屈折率neと単軸方向の実効的な屈折率noとの差である。
【0025】
垂直配向している液晶においては、駆動電圧を大きくするにしたがい、Δneffは大きくなる。そして、液晶分子が基板と平行になるまでΔneffは大きくなり続ける。
【0026】
また、λは反射型液晶表示素子50に入射される光の波長である。この液晶表示素子は、反射型液晶表示素子であるため、入射した光は液晶層217を2回透過することになるため、Δndの値に2を乗算している。
【0027】
ここまでの反射型液晶表示素子50の構成および動作は、従来の反射型液晶表示素子と基本的に同じである。
【0028】
本実施例では、さらに図1に示すように、半導体基板211の内部(すなわち、半導体基板211におけるソース領域206やドレイン領域202等が形成された厚み領域内)に、温度検出素子250としてのPN接合ダイオード(半導体素子)を複数設けている。該複数の温度検出素子250は、例えば、半導体基板211のうち反射型液晶表示素子50の表示面に対応する領域の中央部と周辺部(四隅部)に分散されて配置されている。また、半導体基板211の内部には、温度検出回路261および信号処理回路262も設けられている。
【0029】
図2には、本実施例の反射型液晶表示素子50における温度検出/信号処理用の回路構成を示している。各温度検出素子250に対して定電流を流したときの電圧を温度検出素子250ごとに設けられた温度検出回路261により測定する。これにより、反射型液晶表示素子50における各温度検出素子250が設けられた部分の温度を検出することができる。具体的には、各温度検出回路261はAD変換素子を含んでおり、該AD変換素子によって、各温度検出素子250としてのPN接合ダイオードのアノード−カソード間の電圧(アナログ信号)を、温度を示すデジタル信号に変換する。
【0030】
信号処理回路262は、各温度検出回路261からのデジタル信号に対して演算処理を行い、その演算処理により得られた反射型液晶表示素子50の温度分布に関する情報を生成する。そして、信号処理回路262は、該温度分布に関する情報を、半導体基板211の液晶217よりも外側の領域に設けられた温度出力端子300から外部に出力する。温度分布に関する情報としては、温度分布そのもの、すなわち反射型液晶表示素子50上の複数の位置(座標)と位置ごとの温度を示す情報であってもよいし、複数の温度検出素子250により検出された温度の平均値や最頻値であってもよい。また、信号処理回路262は、温度分布に関する情報をアナログ信号およびデジタル信号のうちいずれで出力してもよい。なお、半導体基板211の液晶217よりも外側の領域には、接地(GND)用の端子も設けられている。
【0031】
このように、本実施例では、複数の温度検出素子250(温度検出回路261)からの信号を処理して出力情報としての温度分布に関する情報を生成する信号処理回路262を反射型液晶表示素子50に設けている。これにより、信号処理回路262にて生成された該情報を外部に出力するために反射型液晶表示素子50に設けられる温度出力端子300の数を、温度検出素子250の数よりも少なくすることができる。つまり、温度出力端子300を含めた反射型液晶表示素子50に設けられる端子の数の増加を抑えつつ、複数の温度検出素子250により反射型液晶表示素子50の温度分布に関する情報を得ることができる。端子の数の増加を抑えることで、反射型液晶表示素子50の大型化や配線の制約の増加も回避することができる。
【0032】
なお、温度検出素子250としては、PN接合ダイオードに限らず、同じく半導体素子としてのPNPトランジスタやNPNトランジスタを用いることもできる。また、また、温度変化によって電気抵抗が変化する抵抗素子(サーミスタ)を用いてもよい。
【0033】
また、本実施例では、温度出力端子300が1つ設けられている場合を示したが、温度出力端子の数は、複数の温度検出素子250の数よりも少なければ、複数であってもよい。
【実施例2】
【0034】
図3には、本発明の実施例2である反射型液晶表示素子50における温度検出/信号処理用の回路構成を示している。
【0035】
実施例1では、温度検出素子250ごとに温度検出回路261を設けた(つまり複数の温度検出回路261を設けた)場合について説明したが、本実施例では、信号処理回路262′に温度検出回路の機能も持たせている。信号処理回路262′は、複数の温度検出素子250に対して定電流を流したときの電圧を温度検出素子250ごとに測定する。そして、信号処理回路262′は、測定した電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、該デジタル信号に対して演算処理を行って反射型液晶表示素子50の温度分布に関する情報を生成する。さらに、信号処理回路262′は、該温度分布に関する情報を、実施例1と同様に半導体基板に設けられた温度出力端子300から外部に出力する。
【0036】
本実施例によれば、実施例1に比べて、温度検出回路の数を少なくすることができる。
【実施例3】
【0037】
図4には、上記各実施例にて説明した反射型液晶表示素子を用いた画像表示装置の1つである液晶プロジェクタの構成を示している。なお、上記各実施例の反射型液晶表示素子は、液晶プロジェクタに限らず、反射型液晶表示素子をモニタとして用いる直視型の画像表示装置にも用いることができる。
【0038】
液晶プロジェクタ1は、ランプ10と、照明光学系20と、色分解合成光学系30と、投射レンズ(投射光学系)40と、反射型液晶表示素子(以下、反射型液晶パネルという)50R,50G,50Bと、CPU等により構成されたコントローラ70とを有する。これらの構成要素は、筐体1aの内部に収容される。
【0039】
光源ランプ10の発光管11から発せられた光(白色の無偏光光)は、リフレクタ12により集光され、第1のシリンダアレイ21に入射する。第1のシリンダアレイ21に入射した光束は、複数の光束に分割され、各分割光束は、紫外線吸収フィルタ23および第2のシリンダアレイ22を介して偏光変換素子24の近傍にて結像する。偏光変換素子24は、入射した無偏光光を、所定の偏光方向を有する偏光光(ここではS偏光光とする)に変換して射出する。
【0040】
偏光変換素子24から射出した複数の光束は、フロントコンプレッサ25、反射ミラー26、コンデンサーレンズ27およびリアコンプレッサ28を介してダイクロイックミラー31に入射する。フロントコンプレッサ25、コンデンサーレンズ27およびリアコンプレッサ28の光学的作用により、複数の光束は後述する反射型液晶パネル50R,50G,50B上において重ね合わされる。
【0041】
ダイクロイックミラー31は、青光と赤光を反射して、緑光を透過する。ダイクロイックミラー31を透過した緑光は、入射側偏光板32aを通過して偏光ビームスプリッタ33aにS偏光として入射し、その偏光分離面で反射されて緑用の反射型液晶パネル50Gに入射する。コントローラ70は、液晶プロジェクタ1に入力された映像信号に応じて緑用、赤用および青用の反射型液晶パネル50R,50G,50Bのそれぞれにおける反射電極の電位を制御して、各反射型液晶パネルに各色の原画像を形成させる。緑用の反射型液晶パネル50Gは、入射した緑光を反射するとともに緑用の原画像に応じて変調する。
【0042】
変調されて偏光ビームスプリッタ33aに再び入射した緑光のうちP偏光成分は、偏光ビームスプリッタ33aの偏光分離面を透過して色合成プリズムである偏光ビームスプリッタ33cに向かう。偏光ビームスプリッタ33aと緑用の反射型液晶パネル50Gとの間に設けられた1/4波長板35Gの遅相軸の方位を調整することで、偏光ビームスプリッタ33aと緑用の反射型液晶パネル50Gとで発生する偏光状態の乱れを小さくすることができる。P偏光である緑光は偏光ビームスプリッタ33cの偏光分離面を透過して投射レンズ40に向かう。
【0043】
ダイクロイックミラー31で反射された赤光と青光は、S偏光として偏光板32bを通過して色選択性位相差板36aに入射する。色選択性位相差板36aは、青光の偏光方向のみを90度回転させる作用を有する。このため、青光はP偏光に変換されて、赤光はS偏光のまま色選択性位相差板36aから射出し、偏光ビームスプリッタ33bに入射する。
【0044】
S偏光である赤光は、偏光ビームスプリッタ33bの偏光分離面で反射されて、赤用の反射型液晶パネル50Rに入射し、ここで反射されるとともに赤用の原画像に応じて変調されて偏光ビームスプリッタ33bに再び入射する。また、P偏光である青光は、偏光ビームスプリッタ33bの偏光分離面を透過して青用の反射型液晶パネル50Bに入射し、ここで反射されるとともに青用の原画像に応じて変調されて偏光ビームスプリッタ33bに再び入射する。
【0045】
偏光ビームスプリッタ33bに再入射した赤光のうちP偏光成分は、該偏光ビームスプリッタ33bの偏光分離面を透過して、色選択性位相差板36bに入射する。また、偏光ビームスプリッタ33bに再入射した青光のうちS偏光成分は、該偏光ビームスプリッタ33bの偏光分離面で反射されて色選択性位相差板36bに入射する。色選択性位相差板36bは、赤光の偏光方向のみを90度回転させる作用を有する。このため、赤光はS偏光に変換されて、青光はS偏光のまま色選択性位相差板36bから射出し、偏光ビームスプリッタ33cに入射する。偏光ビームスプリッタ33bと赤用および青用の反射型液晶パネル50R,50Bとの間に設けられた1/4波長板35R,35Bの遅相軸の方位を調整することで、緑光と同様に赤光および青光の偏光状態の乱れを小さくすることができる。
【0046】
偏光ビームスプリッタ33cにS偏光として入射した赤光および青光は、偏光ビームスプリッタ33cの偏光分離面で反射されて投射レンズ40に向かう。こうして、偏光ビームスプリッタ33cにて合成された緑光、赤光および青光は、投射レンズ40によって不図示のスクリーン等の被投射面に投射され、カラー画像を表示する。
【0047】
ここで、反射型液晶パネル50R,50G,50Bにおいては、入射する光の波長によって、最も効率良く入射光の変調を行う、すなわち反射光のほとんど全てを変調して、最も明るい画像を投射するために反射電極に与えるべき電位が異なる。例えば緑用の反射型液晶パネル50Gにおいて反射電極に与えるべき電位は、緑光にその半波長分のリタデーションを与えるような電位である。また、赤用および青用の反射型液晶パネル50R,50Bにおいて反射電極に与えるべき電位もそれぞれ、赤光および青光にそれらの半波長分のリタデーションを与えるような電位である。
【0048】
一方、光源ランプ10からの高強度の光が入射する反射型液晶パネル50G,50R,50Bでは、温度が上昇する。このため、図4に示したファン60の回転によって、筐体1aの外部から筐体1aの内部に取り込んだ空気Aを反射型液晶パネル50G,50R,50Bに送ることで、これら反射型液晶パネル50G,50R,50Bを冷却する。
【0049】
また、液晶プロジェクタ1が設置された空間の温度(環境温度)の変化によっても反射型液晶パネル50G,50R,50Bの温度が変化する。さらに、液晶プロジェクタ1が、明るさや画質を選択可能とする表示モードの変更機能を備えている場合、表示モードの変更によっても反射型液晶パネル50G,50R,50Bの温度が変化する。しかも、厳密には、表示している画像の種類によって反射型液晶パネル50G,50R,50Bの消費電力に差が生じたり、光源ランプ10からの光が筐体1a内にこもったりすることによっても、反射型液晶パネル50G,50R,50Bの温度が変化する。
【0050】
そして、このような温度変化は、各反射型液晶パネルにおいて均一に発生せず、部分ごとに異なって発生する場合が多く、この結果、各反射型液晶パネルに温度分布が発生する。そして、各反射型液晶パネルにおける表示面内での温度分布の発生により、表示面内での電気光学特性にむらが生じ、この結果、画像に明るさむらや色むらが発生する。
【0051】
そこで、本実施例では、反射型液晶パネル50G,50R,50Bとして実施例1又は2で説明した反射型液晶表示素子50を用い、各反射型液晶パネルの表示面内での温度分布に関する情報が得られるようにしている。コントローラ70は、各反射型液晶パネルの温度出力端子300から温度分布に関する情報を取得し、該情報に応じて反射電極に与える電圧(駆動信号)の振幅、周波数およびパルス幅等のパネル駆動条件を変更する。これにより、各反射型液晶パネルの温度分布に起因した画像の明るさむらや色むらを低減する動作としての温度補償動作を行うことができる。反射電極に与える駆動信号に対して温度に応じたゲインを乗じたり、ガンマテーブルを温度に応じて変更したりしてもよい。
【0052】
温度補償動作の別の例として、コントローラ70は、温度分布に関する情報に応じて、ファン60の回転数(空気Aの流量)を増減させたり、流路を変化させて各反射型液晶パネルに送られる空気Aの分配比率を変更したりする等の冷却条件を変更してもよい。また、各反射型液晶パネルにおいて領域ごとに空気Aの流量分布を異ならせるように冷却条件を変更してもよい。各反射型液晶パネルにペルチェ素子等の冷却素子が設けられている場合に、該冷却素子の駆動条件(つまりは冷却条件)を変更してもよい。
【0053】
本実施例によれば、各反射型液晶パネルの温度出力端子300の数が少ないので、コントローラ70における入力端子数を増加させる等、回路構成を複雑にすることなく、各反射型液晶パネルの温度分布に関する情報をコントローラ70が取得することができる。そして、コントローラ70は、該情報に応じて各反射型液晶パネルの駆動条件や冷却条件を変更することで各反射型液晶パネルの温度を均一化し、明るさむらや色むらが少ない良好な投射画像を表示することができる。
【0054】
なお、各反射型液晶パネルの温度分布に関する情報に応じて、各反射型液晶パネルの駆動条件や冷却条件の変更以外のプロジェクタ1の動作の制御(例えば、光源ランプ10の明るさの制御や表示モードの自動切り替え)を行うようにしてもよい。
【0055】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
温度分布を計測可能な反射型液晶表示素子およびこれを用いて良好な画像を表示可能な画像表示装置を提供できる。
【符号の説明】
【0057】
50 反射型液晶表示素子
211 半導体基板
214 反射電極
216 共通電極
217 液晶
250 温度検出素子
262 信号処理回路
300 温度出力端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する共通電極と、該共通電極を透過した光を反射する複数の反射電極が形成された半導体基板と、前記共通電極および前記半導体基板の間に配置された液晶層とを有する反射型液晶表示素子であって、
前記半導体基板に、
複数の温度検出素子と、
該複数の温度検出素子からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、該デジタル信号を用いた処理を行う信号処理回路と、
該信号処理回路からの信号を出力する端子であって前記複数の温度検出素子の数よりも少ない数の出力端子とが設けられていることを特徴とする反射型液晶表示素子
【請求項2】
前記温度検出素子は、半導体素子または抵抗素子であることを特徴とする請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
【請求項3】
反射型液晶表示素子により変調した光を用いて画像を表示する画像表示装置であって、
前記反射型液晶表示素子は、
透光性を有する共通電極と、該共通電極を透過した光を反射する複数の反射電極が形成された半導体基板と、前記共通電極および前記半導体基板の間に配置された液晶層とを有し、
前記半導体基板に、
複数の温度検出素子と、
該複数の温度検出素子からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、該デジタル信号を用いた処理を行う信号処理回路と、
該信号処理回路からの信号を出力する端子であって前記複数の温度検出素子の数よりも少ない数の出力端子とが設けられており、
該画像表示装置は、
前記出力端子から出力された前記信号処理回路からの信号に応じて該装置の動作を制御するコントローラを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記信号処理回路からの信号に応じて、前記液晶表示素子の駆動条件または冷却条件を変更することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−226062(P2012−226062A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92567(P2011−92567)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】