説明

反射屈折光学系及びそれを有する撮像装置

【課題】 広い観察視野にわたり高い光学性能が容易に得られる反射屈折光学系を得ること。
【解決手段】 反射屈折部を含む第1結像光学系と、第1結像光学系からの光束を受けて中間像を形成するとともに、中間像を像面に結像させる屈折部を含む第2結像光学系とを有し、第1結像光学系は、光軸周辺が光透過部で、外周側のうち物体側の面が裏面反射部である第1の光学素子と、光軸周辺が光透過部で、外周側のうち像側の面が裏面反射部である第2の光学素子とを有し、第1の光学素子および第2の光学素子の裏面反射部の反射面側が互いに向き合うように配置されており、第1の光学素子と第2の光学素子との間には開口絞りが配置されており、物体からの光束は、順に第1の光学素子の光透過部、開口絞り、第2の光学素子の裏面反射部、開口絞り、第1の光学素子の裏面反射部、開口絞り、第2の光学素子の光透過部を介した後に第2結像光学系に出射すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料(物体)を拡大し、観察する際に好適な反射屈折光学系及びそれを有する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の病理検査では、光学顕微鏡を用いて病理標本(試料)を直接、人の目で観察している。近年、病理標本を画像データとして取り込み、ディスプレイ上で観察するバーチャル顕微鏡と呼ばれるものが利用されている。バーチャル顕微鏡では病理標本の画像データをディスプレイ上で観察できるため、複数人で同時に観察することができる。またこのバーチャル顕微鏡を用いると画像データを遠方の病理医と共有して診断を仰ぐこともできるなど多くの利点がある。しかし、この方法は病理標本を撮像して画像データとして取り込むためには時間がかかるという問題があった。
【0003】
時間がかかる原因の1つとして、大きな撮像範囲の病理標本を顕微鏡の狭い撮像領域を用いて画像データとして取り込まねばならないことが挙げられる。顕微鏡の撮像領域が狭い場合、複数回撮像して、もしくはスキャンしながら撮像してそれらを繋げることで一枚の画像とする必要がある。従来より撮像回数を少なくして画像データを取り込む時間を短縮するために、広い撮像領域を持った光学系(撮像光学系)が求められている。
【0004】
この他、病理標本を観察する上で、広い撮像領域が求められていると同時に可視領域(広い波長域)での高い解像力を持った光学系が要望されている。高い解像力を持った光学系は病理診断の用途に限らず様々な分野で要望されている。屈折光学系より成り可視光全域に渡って収差を良好に低減した生体細胞などの観察に好適な顕微鏡対物レンズが知られている(特許文献1)。
【0005】
また集積回路やフォトマスクに存在する欠陥を検査するため反射屈折光学系を用いて紫外の広波長帯域に渡って高い解像力を有した超広帯域紫外顕微鏡映像システムが知られている(特許文献2)。また、広い領域に微細なパターンを露光して半導体素子を製造するのに好適な反射屈折光学系が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭60−034737号公報
【特許文献2】特表2007−514179号公報
【特許文献3】WO00/039623
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
可視光全域に渡って収差を良好に低減するのに好適な光学系として反射光学系と屈折光学系を組み合わせた反射屈折光学系(カタディオプトリック光学系)がある。この反射屈折光学系では、面形状に対するペッツバール和の効き方が反射面と屈折面で反対となることを利用し、集光作用を持つ凹反射面と凸レンズを組み合わせてコンパクトな光学系としながら可視光全域に渡って収差を良好に低減している。
【0008】
この反射屈折光学系には、試料を拡大して観察するための、観察領域が大きく、かつ広い波長範囲にわたり高い光学性能を有することが求められている。 多くの反射屈折光学系では光学系の開口数の設定及び入射瞳及び射出瞳の設定のために光学系内の光路内に光束の周縁部を制限する開口絞りを設けている。反射屈折光学系において観察視野が広く、全視野が広く全視野にわたり高い光学性能を得るには、光束を制限する開口絞りの光軸上の位置を適切なる位置に配置することが重要になってくる。
【0009】
開口絞りの位置が不適切であると、画面全体に入射する光束径を適切に制限することが困難となり、フレアーが増大し高い光学性能を得るのが難しくなる。
【0010】
本発明は、広い観察視野にわたり高い光学性能が容易に得られる反射屈折光学系及びそれを有する撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の反射屈折光学系は、物体からの光束を集光する反射屈折部を含む第1結像光学系と、前記第1結像光学系からの光束を受けて中間像を形成するとともに、前記中間像を像面に結像させる屈折部を含む第2結像光学系とを有する反射屈折光学系であって、
前記第1結像光学系は、光軸周辺が光透過部で、前記光透過部よりも外周側のうち物体側の面が裏面反射部である第1の光学素子と、光軸周辺が光透過部で、前記光透過部よりも外周側のうち像側の面が裏面反射部である第2の光学素子とを有し、前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の前記裏面反射部の反射面側が互いに向き合うように配置されており、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間には開口絞りが配置されており、前記物体からの光束は、順に前記第1の光学素子の光透過部、前記開口絞り、前記第2の光学素子の裏面反射部、前記開口絞り、前記第1の光学素子の裏面反射部、前記開口絞り、前記第2の光学素子の光透過部を介した後に前記第2結像光学系に出射しており、
前記第1の光学素子と前記開口絞りの光軸方向の距離をt1、前記開口絞りと前記第2の光学素子の光軸方向の距離をt2、前記第1結像光学系の焦点距離をf1とするとき、
0.00<t1/f1<0.25
2.3<t2/t1
なる条件を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、広い観察視野にわたり高い光学性能が容易に得られる反射屈折光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の撮像装置の概略断面図である。
【図2】本発明の実施例1の反射屈折光学系のレンズ概略図である。
【図3】本発明の実施例1の各像高における歪量を表した図である。
【図4】本発明の実施例1の反射屈折光学系の収差図である。
【図5】本発明の実施例1において第2結像光学系に開口絞りを配置した場合のレンズ概略図である。
【図6】図2に示す反射屈折光学系における開口絞り位置のおける光束の形状の説明図である。
【図7】図5に示す反射屈折光学系における開口絞り位置のおける光束の形状の説明図。
【図8】本発明の実施例2の反射屈折光学系のレンズ概略図である。
【図9】本発明の実施例2の反射屈折光学系の収差図である。
【図10】図8に示す反射屈折光学系における開口絞り位置のおける光束の形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。本発明の撮像装置1000は、光源手段101と、光源手段101からの光束で物体103を照明する照明光学系102と、物体103を結像する反射屈折光学系104を有している。更に反射屈折光学系104によって結像された物体像を光電変換する撮像素子105と、撮像素子105からのデータより画像情報を生成する画像処理系106と画像処理系106で生成した画像データを表示する表示手段107とを有する。
【0015】
また少なくとも3つのレンズの移動量と収差変動に関するデータを予め記憶する記憶手段110と、反射屈折光学系が置かれている環境の温度を測定する温度測定手段108を有する。更に、温度測定手段108で得られた温度情報と記憶手段110に記憶されているデータより、少なくとも3つのレンズ成分の環境変化によって生ずる収差変動を補正するための移動量を算出する算出手段109を有する。更に算出手段109で算出された移動量を用いて少なくとも3つのレンズ成分を移動可能とする駆動手段111を有する。
【0016】
また本発明の反射屈折光学系104は、物体からの光束を集光する反射屈折部を含む第1結像光学系G1と、第1結像光学系G1からの光束を受けて中間像を形成するとともに中間像IMを像面に結像させる屈折部を含む第2結像光学系G2を有する。そして第1結像光学系G1は、光軸周辺が光透過部、周辺部(外周側)のうち物体側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第1の光学素子M1と、光軸周辺が光透過部、周辺部のうち像側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第2の光学素子M2とを有する。
【0017】
更に第1結像光学系G1は第1の光学素子M1と第2の光学素子M2との間に開口絞りASを有する。第1、第2の光学素子M1、M2は反射面側が向き合っている。
【0018】
本発明の反射屈折光学系104は直径3mm以上の視野領域を撮像する。図1は本発明の撮像装置の要部概略図である。図2は本発明の反射屈折光学系の実施例1の要部概略図である。図3は実施例1の第1結像光学系G1内に開口絞りASを配置した際のNAに対する歪量を表した説明図である。
【0019】
開口絞りASを配置する場所は瞳付近が一般的であるが、高画角な反射屈折光学系の場合、軸上と軸外の光束の光路が大きく異なることにより、瞳が歪む現象が生じる。ここで、瞳が歪む定義は軸上のNAに対して軸外のNAのずれの割合とする。図4は実施例1の収差図である。図5は実施例1の第2結像光学系G2内に開口絞りASを配置した場合の要部概略図である。
【0020】
以下、図1を参照して、本発明の反射屈折光学系104を有する撮像装置1000の構成について説明する。撮像装置1000は、光源手段101からの光を照明光学系102によって集光して試料としての物体103を均一に照明する。このとき使用する光は可視光(例えば、波長400nm〜波長700nm)が用いられる。結像光学系は物体103の像を撮像素子105上に結像する反射部と反射部を有する反射屈折光学系104より成っている。
【0021】
撮像素子105で取得したデータ(画像情報)は、画像処理系106によって画像データを生成し、生成した画像データを表示手段107などに表示する。この他、記憶手段110に記憶している。画像処理系106では反射屈折光学系104で補正しきれなかった収差を補正したり、または、撮像位置の異なった画像データを繋げて一枚の画像データに合成したりするなど用途に応じた処理が行われる。
【0022】
反射屈折光学系104内に配置された収差補正用のレンズ成分112、113、114は、各々を光軸に沿って移動させる駆動系(駆動手段)111を備えた保持機構(不図示)によって保持されている。レンズ成分は単一レンズ又は複数のレンズより成っている。使用環境の温度の変化などにより反射光学系104の温度が変化した場合、温度変化による収差変化は光軸を中心とした回転対称である。このため、レンズ成分112〜114を光軸に沿って移動することで補正している。
【0023】
ここで、その温度に応じて少なくとも3つのレンズ成分を光軸に沿って移動させることにより、球面収差、コマ収差、非点収差などの諸収差の変動を低減している。これにより広い視野領域全域に渡って良好な画質を得ている。また、反射屈折光学系104の収差が良好に低減されることで、画像処理系106における収差補正の処理が不要になるなど、画像処理の計算負荷を低減している。
【0024】
収差補正用のレンズ成分の光軸方向の移動は、顕微鏡使用者が表示手段107などに表示される画像データを確認しながら所望の画質が得られるよう手動で行ってもよいし、また、予め設定した収差補正フローに基づいて制御してもよい。
【0025】
図2は図1の本発明に係る反射屈折光学系104の実施例1の要部断面図である。図2において、104は反射屈折光学系、103は試料としての物体面である。105は撮像素子であり、像面に配置されている。ASは開口絞り、IMは中間像である。AXは反射屈折光学系104の光軸である。反射屈折光学系104は物体103からの光束を集光する開口絞りASと、反射面を含む第1結像光学系G1を有する。そして第1結像光学系G1からの光束を受けて中間像を形成し、中間像IMを撮像素子105に結像する屈折面と遮光部SHを含む第2結像光学系G2を有する。
【0026】
第1結像光学系G1は、物体側から順に第1の光学素子(マンジャンミラー)M1、開口絞りAS、第2の光学素子(マンジャンミラー)M2を有している。第2結像光学系G2は、物体側から順にレンズ群G21、G22、遮光部SH、レンズ群G23〜レンズG25を有している。第1結像光学系G1の第1の光学素子M1は、物体103側の面が凸形状で、光軸周辺が正の屈折力の光透過部M1T、周辺部のうち物体側の面M1aに反射膜を施し、裏面反射部としている。
【0027】
第2の光学素子M2は物体側に凹面を向けたメニスカス形状で、光軸周辺が負の屈折力の光透過部M2T、周辺部のうち像側の面M2bに反射膜を施し、裏面反射部としている。第1の光学素子M1と第2の光学素子M2は互いに裏面反射部M1a、M2bが対向するように配置されている。第2の結像光学系G2は物体103からの光束のうち光軸近傍の光束を遮光し、撮像素子105に入射するのを防止する遮光板SHがレンズ群G22の近傍に配置されている。
【0028】
各実施例における第1結像光学系G1の第1の光学素子M1と第2の光学素子M2の間には開口絞りSPが配置されている。そして第1の光学素子M1と開口絞りASの光軸方向の距離をt1とする。開口絞りSPと第2の光学素子M2の光軸方向の距離をt2とする。第1結像光学系G1の焦点距離をf1とする。このとき、
0.00<t1/f1<0.25 ・・・(1)
2.3<t2/t1 ・・・(2)
なる条件を満足している。
【0029】
次に条件式(1)、(2)の技術的意味について説明する。条件式(1)は第1の光学素子M1と開口絞りASとの光軸方向の距離に関する。条件式(1)の上限値を超えて開口絞りASが第1の光学素子M1から離れすぎると第一結像光学系の瞳より離れ、歪量が大きくなる。または下限値を超えて開口絞りASが第1の光学素子M1に接近しすぎるとt1=0となりASがM1に接触するので0.00<t1/f1は必須条件である。
【0030】
条件式(2)は第1の光学素子M1と第2の光学素子M2との間に開口絞りASを配置するときの位置のバランスに関する。条件式(2)の下限値を超えて開口絞りASが第1の光学素子M1に接近しすぎるとASの位置がM1より20mm以上の距離となり、歪量が大きくなる。
【0031】
図2に示す反射屈折光学系104では、照明光学系102からの光束で照明され、物体103から出射した光束は第1の光学素子M1の中央透過部M1Tを通過する。その後、第2の光学素子M2の屈折面M2aに入射し、その後裏面反射部M2bで反射し、屈折面M2aを通過して第1の光学素子M1の屈折面M1bに入射する。
【0032】
その後、第1の光学素子M1の裏面反射部M1aで反射する。そして屈折面M1bを通過し、第2の光学素子M2の中央透過部M2Tを通過し、第2結像光学系G2側へ出射している。そして第2結像光学系G2のレンズ群G21のレンズL1の近傍に試料103の中間像IMを形成する。レンズ群G21のレンズL1はフィールドレンズの作用をしている。
【0033】
本実施例において、第1結像光学系G1の構成はこれに限定されるものではない。例えば、マンジャンミラーより成る第1、第2の光学素子M1、M2の替わりに、中心部に透過部を有する表面反射ミラーとレンズとの組み合わせで構成しても構わない。
【0034】
ここで、第1結像光学系G1に含まれる第1の光学素子M1の裏面反射部M1aと第2の光学素子M2の裏面反射部M2bはいずれも非球面形状より成っている。これにより、色収差の発生を抑えつつ、球面収差を良好に補正している。また高NA(口径比)でも、可視の広波長帯域に渡って諸収差を良好に低減している。
【0035】
また、第1の光学素子M1の裏面反射部M1aと第2の光学素子M2の裏面反射部M2bは、いずれも正の屈折力の反射面としている。これにより、第2結像光学系G2のレンズの正の屈折力を強くして光学系全長を短くしたときのペッツバール和の増大を軽減している。これはペッツバール和への効き方が反射面と屈折面で反対となるためである。
【0036】
第1の結像光学系G1からの光は、順に、正の屈折力のレンズ群G21(レンズL1〜L8)、負の屈折力のレンズ群G22(レンズL9)、正の屈折力のレンズ群G23(レンズL10,L11)を通過する。更に負の屈折力のレンズ群G24(レンズL12,L13)、正の屈折力のレンズ群G25(レンズL14,L15)を通過する。そして撮像素子105上に物体103を倍率6で拡大結像している。
【0037】
さらに、遮光部SHは、レンズL9の物体103側の面をRa面、撮像素子105側の面をRb面としたとき、レンズL9のRb面上に配置されている。そして、物体103からの光が、第1の光学素子M1、及び、第2の光学素子M2で反射されることなく、第1、第2の光学素子M1、M2の中心透過部M1T、M2Tを通過して直接撮像素子105に到達することを防いでいる。
【0038】
この実施例1の反射屈折光学系104において、物体側の開口数NAは0.7、視野領域は直径28.2mmである。瞳の中抜けの割合は面積比で3割以下に抑えられている。物体側がテレセントリックとなっている。
【0039】
本実施例では、白色光での波面収差最悪値が20mλrms以下に抑えられている。図4の収差図においては軸上物高(Y=0mm)、及び、最軸外物高(Y=14.1mm)の収差図を示している。実施例1は波長656.3nm、587.6nm、486.1nm、435.8nmにおいて収差は良好に抑えられている。試料103は直径3mm以上〜直径30mm以下である。
【0040】
また、図5は図2に示す反射屈折光学系と同一のレンズ構成において、開口絞り(AS)の位置が第2結像光学系G2に配置したときの光路図である。図5に示す位置に開口絞りASを配置すると、開口絞りASの光束の形状は図7に示すように軸上と軸外では大きくずれることとなる。これを歪と呼び、仮に軸上の設定NAにおいて絞りの開口径を決定すると、軸外の光線がけられることになり、解像度、光量に影響し、光学性能を悪化させる原因となる。
【0041】
図3は、このときの歪の割合を示している。図3は横軸に像高および縦軸に歪量を示している。開口絞りASを第2結像光学系G2に屈折部に配置した場合、像高が大きくなるにつれて歪の量は大きくなり、10割像高では約5%程度歪む。それと比較して、開口絞りASを第1結像光学系G1に配置した場合、像高が大きくなってもほぼ設計値と変わらない歪量となっている。開口絞りASの光束の形状を図6に示す。軸上光線と軸外光線の位置ずれはほとんどない。
【0042】
本実施例において、開口絞りASの位置は図2に示すように第1の光学素子M1の近傍で凸レンズM1の面M1bからの距離が20mm以内である。また、実施例1においては、
f1=89.2、t1=8、t2=73.57、であり、
t1/f1=0.09
t2/t1=9.19
である。
【0043】
歪量が大きくなると光量や解像度に影響し、光学性能が悪化してしまうが、開口絞りASを第1結像光学系G1の条件式(1)を満足する位置に配置することにより防ぐことが容易となる。
【0044】
本実施例では、光学性能の悪化を防ぎ、広い領域に渡って高い解像力を持ち、可視光全域に渡って収差を良好に補正した反射屈折光学系を達成している。
【0045】
次に本発明の実施例2について説明する。図8に示す実施例2は図2の実施例1とレンズ構成は略同じである。実施例2の反射屈折光学系において、物体側の開口数NAは0.7であって、倍率は10倍である。物体側がテレセントリックに構成されている。瞳の中抜けの割合が面積比で3割以下と抑えられている。また、白色光での波面収差最悪値が20mλrms以下に抑えられている。図9に本実施例の収差図を示す。
【0046】
図9の収差図では軸上物高(Y=0mm)、及び、最軸外物高(Y=7mm)の収差図を示している。実施例2は、波長656.3nm、587.6nm、486.1nm、435.8nmの各波長において収差は良好に抑えられている。試料103は直径3mm以上〜直径30mm以下である。また、実施例2において開口絞りASを第1結像光学系G1に配置した場合、歪量は1%以下である。本実施例における開口絞りASの光束の形状を図10に示す。
【0047】
また、開口絞りASの位置は図8に示すように第1の光学素子M1の近傍で第1の光学素子M1の面M1bからの距離が20mm以内である。また、実施例2に示す反射屈折光学系において、
f1=108、t1=13、t2=57.9、であり、
t1/f1=0.12
t2/t1=4.45
である。
【0048】
以下、実施例1と実施例2の数値実施例を示す。面番号は物体面(試料面)から像面まで数えた光学面の順である。rは第i番目の光学面の曲率半径である。dは第i番目と第i+1番目の間隔である(符号は物体側から像面側へ測ったときを(光が進行するときを)正、逆方向を負としている)。Nd、νdは波長587.6nmに対する材料の屈折率とアッベ数をそれぞれ示している。非球面の形状は、以下の式に示す一般的な非球面の式で表される。
【0049】
以下の式において、Zは光軸方向の座標、cは曲率(曲率半径rの逆数)、hは光軸からの高さである。kは円錐係数、A、B、C、D、E、F、G、H、J・・・は各々、4次、6次、8次、10次、12次、14次、16次、18次、20次、・・・の非球面係数である。
【0050】
【数1】

【0051】
「E−X」は「10-X」を意味する。前述した各条件式と数値実施例との関係を表3に示す。
【0052】
[数値実施例1]
面番号 r d Nd νd
物体面 3.00
1 783.74 28.01 1.49 70.24
2 -797.06 81.57
3 -102.12 7.77 1.52 64.14
4 -140.83 -7.77 1.52 64.14
5 -102.12 -81.57
6 -797.06 -28.01 1.49 70.24
7 783.74 28.01 1.49 70.24
8 -797.06 81.57
9 -102.12 7.77 1.52 64.14
10 -140.83 3.49
11 -154.32 7.05 1.64 55.38
12 -72.36 0.50
13 63.71 17.64 1.44 94.95
14 -50.65 5.00 1.67 38.15
15 531.40 7.25
16 134.93 13.56 1.70 48.52
17 -176.29 0.50
18 54.79 12.36 1.60 65.44
19 118.83 14.42
20 234.49 11.45 1.75 35.28
21 -144.57 3.61
22 99.73 17.43 1.60 65.44
23 -54.76 5.00 1.67 38.15
24 -392.90 1.00
25 0.00(遮光部) 3.84
26 -82.47 5.00 1.61 43.71
27 106.23 26.38
28 -475.21 23.33 1.72 43.69
29 -65.34 0.50
30 136.04 26.85 1.49 70.24
31 -132.13 44.13
32 -86.09 5.00 1.74 32.26
33 175.53 29.93
34 -56.65 5.00 1.49 70.24
35 -1735.21 11.41
36 -183.59 29.63 1.76 40.10
37 -85.12 6.37
38 456.98 31.46 1.68 50.72
39 -468.94 10.50
像面 0

【0053】
数値実施例1の非球面係数
(非球面係数)
面番号 k A B C D
E F G H J
1,7 0.00E+00 1.67E-09 3.09E-13 3.96E-17 3.63E-21
-9.72E-25 1.54E-28 -7.54E-33 0.00E+00 0.00E+00
4,10 0.00E+00 7.26E-09 4.06E-13 2.43E-17 2.13E-22
1.53E-25 -8.73E-30 6.74E-34 0.00E+00 0.00E+00
13 0.00E+00 -6.61E-07 3.61E-10 -1.77E-12 4.28E-15
-6.07E-18 4.64E-21 -1.49E-24 0.00E+00 0.00E+00
19 0.00E+00 1.06E-06 1.26E-10 -3.89E-14 1.21E-16
-1.34E-19 8.62E-23 -2.47E-26 0.00E+00 0.00E+00
20 0.00E+00 -2.24E-07 -2.10E-10 7.61E-14 2.93E-17
-6.10E-20 4.21E-23 -1.52E-26 0.00E+00 0.00E+00
22 0.00E+00 -3.39E-07 1.40E-10 -1.22E-13 1.12E-16
-2.82E-19 2.37E-22 -7.09E-26 0.00E+00 0.00E+00
27 0.00E+00 -8.37E-07 4.38E-10 -6.29E-13 8.80E-16
-9.05E-19 5.49E-22 -1.47E-25 0.00E+00 0.00E+00
28 0.00E+00 -5.75E-07 6.56E-11 -8.58E-15 2.98E-18
-1.39E-21 1.53E-25 -2.07E-29 0.00E+00 0.00E+00
31 0.00E+00 -2.68E-07 3.68E-11 1.85E-15 1.56E-19
-3.12E-22 4.81E-26 -1.39E-30 0.00E+00 0.00E+00
32 0.00E+00 -1.11E-06 1.65E-10 1.46E-15 -1.61E-17
3.66E-21 -2.08E-24 4.09E-28 0.00E+00 0.00E+00
35 0.00E+00 -7.37E-07 2.14E-10 -5.75E-14 1.31E-17
-2.37E-21 2.68E-25 -1.43E-29 0.00E+00 0.00E+00
39 0.00E+00 -2.14E-07 3.18E-11 -8.94E-15 1.60E-18
-1.62E-22 8.95E-27 -2.10E-31 0.00E+00 0.00E+00

【0054】
[数値実施例2]
物体面 r d ND νd
1 非球面 642.4 9.4 1.52 64.14
2 球 -1525.2 70.9
3 球 -85.3 7.2 1.52 64.14
4 非球面 -115.3 -7.2 1.52 64.14
5 球 -85.3 -70.9
6 球 -1527.6 -9.4 1.52 64.14
7 非球面 642.4 9.4 1.52 64.14
8 球 -1525.2 70.9
9 球 -85.3 7.2 1.52 64.14
10 非球面 -115.3 3.0
11 非球面 -106.2 8.6 1.64 55.38
12 球 -23.6 5.0 1.74 29.30
13 球 -52.4 2.5
14 非球面 47.4 8.2 1.61 60.69
15 球 -60.3 9.9
16 球 45.1 9.4 1.54 55.43
17 球 -89.1 3.2
18 球 -126.3 6.9 1.75 30.11
19 非球面 -41.8 6.7
20 球 -24.2 7.4 1.65 33.10
21 非球面 -149.0 6.9
22 球 1.00E+18 6.8 1.50 59.58
23 球 1.00E+18 0.0
24 球 97.4 9.5 1.71 47.49
25 非球面 -554.5 0.9
26 球 110.1 14.2 1.61 60.52
27 非球面 -58.2 0.5
28 球 43.8 8.8 1.75 31.34
29 球 60.1 8.2
30 非球面 58.2 7.3 1.74 35.95
31 球 46.4 27.3
32 球 -27.3 5.6 1.74 35.95
33 非球面 793.1 17.6
34 非球面 -39.1 6.7 1.49 68.89
35 球 -147.5 10.9
36 球 -77.8 14.6 1.74 44.85
37 非球面 -60.9 0.7
38 球 -134.1 20.2 1.74 44.85
39 球 -73.7 0.5
40 球 1474.7 18.7 1.74 37.55
41 非球面 -263.7 1.5
像面

【0055】
面番号 k A B C D
E F G H J
1,7 0.00E+00 1.84E-08 -7.14E-13 -7.14E-13 1.27E-19
-5.77E-23 1.31E-26 -1.19E-30 0.00E+00 0.00E+00
4,10 0.00E+00 1.47E-08 1.37E-12 1.07E-16 4.38E-21
1.80E-24 -1.67E-28 2.11E-32 0.00E+00 0.00E+00
11 0.00E+00 -5.87E-06 8.08E-09 8.05E-12 3.85E-14
9.03E-26 -1.57E-32 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
14 0.00E+00 -4.04E-06 -7.89E-09 1.77E-11 -4.83E-14
-5.88E-24 -2.12E-27 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
19 0.00E+00 2.57E-07 -5.28E-10 5.16E-12 -7.30E-15
-2.69E-18 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
21 0.00E+00 -8.47E-06 2.05E-09 -5.43E-12 8.12E-15
-8.82E-18 -9.75E-30 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
25 0.00E+00 -8.16E-07 5.19E-10 -1.81E-12 2.14E-15
-7.44E-19 -7.83E-24 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
27 0.00E+00 3.63E-06 -1.07E-09 1.64E-12 -1.60E-15
6.70E-19 -8.25E-23 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
30 0.00E+00 -2.80E-08 -4.09E-09 4.05E-12 -4.18E-15
3.21E-18 -5.72E-24 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
33 0.00E+00 5.46E-06 -6.07E-09 8.19E-13 2.08E-15
-3.65E-19 -6.71E-22 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
34 0.00E+00 6.51E-06 -1.13E-09 1.19E-12 -7.85E-17
-5.25E-19 4.61E-22 0.00E+00 0.00E+00 0.00E+00
37 0.00E+00 1.23E-06 -3.10E-10 8.66E-14 2.17E-18
-2.43E-21 -4.59E-25 4.48E-28 0.00E+00 0.00E+00
41 0.00E+00 -6.20E-07 2.51E-10 -7.51E-14 1.44E-17
-1.72E-21 1.04E-25 -1.76E-30 0.00E+00 0.00E+00
【0056】
【表1】

【符号の説明】
【0057】
101 光源 102 照明光学系 103 試料
104 結像光学系 105 撮像素子 106 画像処理系
107〜109 収差補正レンズ AS 開口絞り IM 中間像
AX 光軸 G1 第1結像光学系 G2 第2結像光学系
L1〜L15 レンズ M1 第1の光学素子 M2 第2の光学素子
SH 遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体からの光束を集光する反射屈折部を含む第1結像光学系と、前記第1結像光学系からの光束を受けて中間像を形成するとともに、前記中間像を像面に結像させる屈折部を含む第2結像光学系とを有する反射屈折光学系であって、
前記第1結像光学系は、光軸周辺が光透過部で、前記光透過部よりも外周側のうち物体側の面が裏面反射部である第1の光学素子と、光軸周辺が光透過部で、前記光透過部よりも外周側のうち像側の面が裏面反射部である第2の光学素子とを有し、前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の前記裏面反射部の反射面側が互いに向き合うように配置されており、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間には開口絞りが配置されており、前記物体からの光束は、順に前記第1の光学素子の光透過部、前記開口絞り、前記第2の光学素子の裏面反射部、前記開口絞り、前記第1の光学素子の裏面反射部、前記開口絞り、前記第2の光学素子の光透過部を介した後に前記第2結像光学系に出射しており、
前記第1の光学素子と前記開口絞りの光軸方向の距離をt1、前記開口絞りと前記第2の光学素子の光軸方向の距離をt2、前記第1結像光学系の焦点距離をf1とするとき、
0.00<t1/f1<0.25
2.3<t2/t1
なる条件を満足することを特徴とする反射屈折光学系。
【請求項2】
前記第1の光学素子は物体側の面が凸でメニスカス形状であり、前記第2の光学素子は物体側の面が凹でメニスカス形状であることを特徴とする請求項1の反射屈折光学系。
【請求項3】
光源手段と、前記光源手段からの光束で物体を照明する照明光学系と、前記物体を結像する請求項1又は2の反射屈折光学系と該反射屈折光学系によって結像された物体像を光電変換する撮像素子と、該撮像素子からのデータより画像情報を生成する画像処理系とを有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−29654(P2013−29654A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165389(P2011−165389)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】