説明

反射鏡付きランプ

【課題】反射鏡付きランプの光源となる高圧放電ランプの発光部から放射される光の利用効率を最大限に高め、特に、凹面反射鏡の反射面による光の反射率を高めて、光の利用効率を大幅に向上させることができるようにする。
【解決手段】凹面反射鏡9のボトム部11に固定された高圧放電ランプ1の発光部3の肉厚が、電極4R、4L間の発光点Aよりも凹面反射鏡9のボトム部11側に偏した部位Bで最大となるように、凹面反射鏡9の開口部13側からボトム部11側にかけて漸増している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターやプロジェクションTVのバックライト等として使用される反射鏡付きランプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の反射鏡付きランプは、例えば図3の如く、発光管31の発光部32に、一対のタングステン電極33R、33Lが対向して配置されると共に、水銀と、沃素や臭素などのハロゲンと、アルゴンガスなどの希ガスとが封入された高圧放電ランプ30が、その電極軸を凹面反射鏡34の光軸Xと同軸的に配して該反射鏡34のボトム部35に固定されたものが一般的であり、特にプロジェクターやプロジェクションTVに用いる高圧放電ランプは、小型で高輝度、長寿命であることが要求されるため、電極33R、33Lから蒸発して発光部32の内面に付着したタングステンを電極33R、33Lへ戻すタングステン−ハロゲンサイクルによって発光部32の早期黒化を防止すると共に、電極33R及び33L間の距離を狭めてアーク長を短くし、且つ発光部32の単位容積当りの水銀封入量を多くしてランプ点灯時における動作圧(発光部32内の水銀蒸気圧)を高めることにより、小型で点光源に近い高輝度発光が得られるようにしたショートアークタイプの高圧放電ランプが用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、点光源に近い高輝度発光を得るために、電極間距離を狭めてアーク長を短くすると、ランプ電圧が低下してランプ電流が増大し、それにより電極33R、33Lの温度が過度に上昇してタングステンや該タングステンに含まれる不純物の蒸発作用が促進されるため、発光部32の早期黒化を惹き起こすおそれがあり、また、発光部32の水銀封入量を多くしてランプ点灯時の動作圧を高めると、僅かな黒化が生じても発光部32が破裂するおそれがあるから、アーク長を短くしたり動作圧を高めるにも限界がある。
【0004】
そこで、高圧放電ランプの発光部の形状に工夫を施してその発光部から放射される光の利用効率を高めようとする提案がなされており、例えば、発光部から被照射領域に向かわない方向へ放射される光を有効利用するために、その光の放射方向に位置する発光部の特定部位の外表面と内表面をアーク中心(発光点)を中心とする球面に形成すると共に、その外表面に反射膜を形成して、該反射膜で発光部から放射される光を反射してアーク領域に戻し、その戻った反射光を凹面反射鏡で反射させて被照射領域に向かわせる発明が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、発光部の特定部位の外表面と内表面を球面に形成する加工は非常に困難であり、まして、両面揃ってアーク中心を中心とする球面に加工することは事実上不可能であるから、発光部から放射される光を効率良くアーク領域に戻すことはできないし、発光部から放射される光を発光部内に戻すと、ランプ温度の上昇を招いて不具合発生の原因となる。
【0005】
また、高圧放電ランプの発光部の形状を工夫することにより、電極間距離を狭めてアーク長を短くしなくとも、光学的に見掛けのアーク長を短くして点光源に近い発光が得られるようにする発明も提案されている(特許文献3参照)。この発明は、発光部の中央部の外表面に平坦部を形成して該平坦部から透かし見る電極間距離が実際よりも狭く見えるようにするものであるが、その平坦部を成す面と、その両端に連なる他面とが交わる境目で、外表面形状が急激に変化しているから、境目部分を透過する光がその境目で別方向に分かれるように屈折せられる。このため、当該発明に係る高圧放電ランプを設けた反射鏡付きランプは、その照射光に照度ムラを生ずるという問題がある。
【特許文献1】特許第2829339号公報
【特許文献2】特開2000−353493号公報
【特許文献3】特開2004−63222号公報
【0006】
ところで、プロジェクターやプロジェクションTVのバックライトとして用いる反射鏡付きランプは、その光が照射される被照射物に熱線による損傷を生じさせないようにするために、凹面反射鏡の基体が、石英や、ホウ珪酸ガラス等の硬質ガラス、結晶化ガラス等で形成されると共に、その反射面が、可視光を反射し、近赤外光を透過させて有害な熱線が反射される量を低減する誘電体多層膜で形成されたものが一般的であるが、反射面の反射特性は、図4のグラフに示すように、光の入射角度に大きく依存しており、入射角度が大きくなると、偏光作用によって反射率が低下し、反射光の色も変わってしまうという問題があった。
【0007】
つまり、図3に示す従来の反射鏡付きランプは、図5の部分拡大図の如く、高圧放電ランプ30の発光部32から放射されて凹面反射鏡34の反射面36で反射される光の入射角度θ1、θ2、θ3が、凹面反射鏡34のボトム部35側から開口部37側に向かうに従って漸次大きくなる(θ1<θ2<θ3)ので、反射面36は、凹面反射鏡34の開口部37側に向かうに従って可視光の反射率が低下し、その開口部37側で反射する光の利用効率が悪いという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、反射鏡付きランプの光源となる高圧放電ランプの発光部から放射される光の利用効率を最大限に高めることを技術的課題とし、特に、凹面反射鏡の反射面による光の反射率を高めて、光の利用効率を大幅に向上させることができるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、発光管の発光部に一対の電極が対向して配置された高圧放電ランプが、その電極軸を凹面反射鏡の光軸と同軸的に配して該反射鏡のボトム部に固定された反射鏡付きランプにおいて、前記発光部の肉厚が、前記電極間の発光点よりも前記凹面反射鏡のボトム部側に偏した部位で最大となるように、前記凹面反射鏡の開口部側からボトム部側にかけて漸増していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高圧放電ランプの発光部から凹面反射鏡の開口部方向に放射される光がその発光部の外表面で凹面反射鏡のボトム部側に屈折するので、凹面反射鏡の開口部側の反射面で反射して被照射領域に照射される光の量が増大する。また、光の入射角度が小さくなる凹面反射鏡のボトム部側の反射面で反射される光の量が増大するので、反射率の低下による光損失が抑制されて、光の利用効率が著しく向上すると同時に、反射光の色が変わることも抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る反射鏡付きランプの最良の実施形態は、発光管の発光部に一対のタングステン電極が対向して配置されると共に、水銀、ハロゲン及び始動用補助ガスが封入されたショートアークタイプの高圧放電ランプと、反射面が可視光を反射して近赤外光を透過する誘電体多層膜で形成された凹面反射鏡とで構成され、高圧放電ランプは、その電極軸を凹面反射鏡の光軸と同軸的に配して該反射鏡のボトム部に固定されている。
【0012】
そして、高圧放電ランプは、発光部の肉厚が、凹面反射鏡の開口部側からボトム部側にかけて漸増し、電極間の発光点よりも凹面反射鏡のボトム部側に偏した部位で最大となり、その部位から凹面反射鏡のボトム部側に位置する発光部の端部にかけて漸減している。これにより、発光部から凹面反射鏡の開口部方向に放射される光は、発光部の外表面で凹面反射鏡のボトム部側に屈折するので、凹面反射鏡の開口部から被照射領域に向かわない方向へ出射する光の量が減少し、凹面反射鏡の開口部側の反射面で反射して被照射領域に照射される光の量が増加する。また、発光部から反射面のない凹面反射鏡のボトム部に向かって放射される光が、発光部の外表面で凹面反射鏡の開口部側に屈折して、ボトム部周辺の反射面で反射される光の量が増加する。更に、光の入射角度が小さくなる凹面反射鏡のボトム部側の反射面で反射される光の量が増大するので、反射率の低下による光損失が低減して、光の利用効率が著しく向上する。
【0013】
また、高圧放電ランプは、発光部の肉厚が漸増する部位の外表面が、凹面反射鏡の開口部側からボトム部側に向かって直線状もしくは緩やかな弧状の上り勾配を成すテーパ形に形成され、発光部の内表面が、球形、楕円球形又は紡錘形に形成されている。これにより、テーパ形に形成された発光部の外表面側から一対の電極を透かし見ると、その電極間距離が実際よりも狭く見える凹レンズ効果を奏するから、光学的に見掛けのアーク長を短くした点光源に近い発光が得られる。つまり、肉厚漸増部位の外表面が、直線状の上り勾配を成すテーパ形であれば平凹レンズ、緩やかな弧状の上り勾配を成すテーパ形であれば凹メニカスレンズのようなレンズ効果を奏して、点光源に近い発光を得ることができる。
【0014】
また、発光部の外表面には、テーパ形に形成された外表面と、その両端に連なる外表面ととを角を立てずに交わす平滑仕上げが施され、これによって、外面形状の急激な変化に起因する照度ムラを生ずることが防止されている。
【実施例】
【0015】
図1は本発明に係る反射鏡付きランプの一例を示す断面図、図2はその部分拡大図であって、本例の反射鏡付きランプは、ショートアークタイプの高圧放電ランプ1と凹面反射鏡2とが一体化されている。
【0016】
高圧放電ランプ1は、石英ガラス管で成る発光管2の中央付近に最大内径4.4mm、内容積80mmの発光部3が形成され、該発光部3には、一対のタングステン電極4R、4Lが1.2mmの電極間距離をあけて互いに対向するように配置されると共に、水銀が0.2mg/mm、始動用補助ガスとしてアルゴンが約20kPa(常温時)、黒化防止のための微量のハロゲンとして臭素が1.6×10−4μmol/mm3封入されている。
【0017】
なお、各電極4R、4Lは、発光部3の両端を気密に封止する封止部5R、5Lに埋設されたモリブデン箔6R、6Lを介してリード棒7R、7Lに接続され、該リード棒7R、7Lに結線された電力供給用リード線8R、8Lを通じて点灯装置(図示せず)からランプ電力が供給されるようになっている。
【0018】
凹面反射鏡9は、その基体が石英や、ホウ珪酸ガラス等の硬質ガラス、結晶化ガラス等で形成され、回転放物面を成す反射面10が、可視光を反射し、赤外光と紫外光を透過する特性を有する誘電体多層膜を蒸着して成るコールドミラーで形成されている。そして、高圧放電ランプ1が、発光部3の片端側を封止する封止部5Lを凹面反射鏡9のボトム部11に挿通して耐熱性接着剤12で固定することにより、電極軸を凹面反射鏡9の光軸Xと同軸的に配した状態でそのボトム部11に固定されている。
【0019】
また、高圧放電ランプ1は、発光部3の肉厚が、凹面反射鏡9の開口部13側からボトム部11側にかけて漸増し、電極4R、4L間の発光点Aよりもボトム部11側に偏した部位Bで最大となり、その肉厚最大部位Bからボトム部11側に位置する発光部3の端部にかけて漸減する形状に加工されている。
【0020】
これにより、図2の如く、発光部3から放射される光を実線で示し、同図鎖線図示の従来の発光部32から放射される光を破線で示して、両者の放射方向を対比すれば明らかなように、発光部3から放射される光は、その大半が凹面反射鏡9のボトム部11側に屈折するので、凹面反射鏡9の開口部13から被照射領域に向かわない方向へ出射する光の量が減少し、凹面反射鏡9の開口部13側の反射面10で反射して被照射領域に照射される光の量が増加すると共に、光の入射角度が小さくなる凹面反射鏡9のボトム部11側の反射面10で反射される光の量が増大して、反射率の低下による光損失が低減されるので、光の利用効率が著しく向上する。また、反射面10のない凹面反射鏡9のボトム部11に向かって放射される光が凹面反射鏡9の開口部13側に屈折してボトム部11周辺の反射面10で反射される光の量が増加するので、光の利用効率が更に高まる。
【0021】
また、高圧放電ランプ1は、発光部3の肉厚が漸増する部位Cの外表面が、凹面反射鏡9の開口部13側からボトム部11側に向かって直線状もしくは緩やかな弧状の上り勾配を成すテーパ形に形成され、発光部3の内表面が、発光点Aを中心とする球形乃至楕円球形もしくは紡錘形に形成されている。これにより、肉厚漸増部位Cの断面形状は、凹レンズのように、外表面側が直線もしくは曲率の小さい緩やかな凸曲面を成し、内表面側が曲率の大きい凹曲面を成しているから、その肉厚漸増部位Cを通じて電極4R、4Lを透かし見ると、その電極間距離が実際よりも狭く見えて、見掛けのアーク長を短くした点光源に近い発光が得られる。
【0022】
また、発光部3は、肉厚漸増部位Cのテーパ形に形成された外表面と、その両端に連なる外表面とを角を立てずに交わす平滑仕上げが施されると共に、肉厚漸増部位Cと肉厚最大部位Bの外表面や、肉厚最大部位Bと肉厚漸減部位Dの外表面も角を立てずに交わす平滑仕上げが施されて、外面形状の急激な変化に起因する照度ムラを生ずることが防止されている。
【0023】
なお、凹面反射鏡9の反射面10は、可視光を反射し、赤外光と紫外光を透過する誘電体多層膜を蒸着して成るコールドミラーで形成されているが、これに限らず、アルミ反射膜等で形成されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、プロジェクターやプロジェクションTVのバックライトとして用いる反射鏡付きランプの光利用効率を高めてその性能向上に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る反射鏡付きランプの一例を示す断面図
【図2】図2に示す反射鏡付きランプの部分拡大図
【図3】従来の反射鏡付きランプを示す断面図
【図4】凹面反射鏡の反射面の反射特性を示すグラフ
【図5】図3に示す反射鏡付きランプの部分拡大図
【符号の説明】
【0026】
1 高圧放電ランプ
2 発光管
3 発光部
4R 電極
4L 電極
A 発光点
B 肉厚最大部位
C 肉厚漸増部位
D 肉厚漸減部位
9 凹面反射鏡
10 反射面
11 ボトム部
13 開口部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管の発光部に一対の電極が対向して配置された高圧放電ランプが、その電極軸を凹面反射鏡の光軸と同軸的に配して該反射鏡のボトム部に固定された反射鏡付きランプにおいて、前記発光部の肉厚が、前記電極間の発光点よりも前記凹面反射鏡のボトム部側に偏した部位で最大となるように、前記凹面反射鏡の開口部側からボトム部側にかけて漸増していることを特徴とする反射鏡付きランプ。
【請求項2】
前記発光部の肉厚が、その肉厚が最大となる部位から前記凹面反射鏡のボトム部側に位置する発光部の端部にかけて漸減している請求項1記載の反射鏡付きランプ。
【請求項3】
前記発光部の肉厚が漸増する部位の外表面が、前記凹面反射鏡の開口部側からボトム部側に向かって直線状もしくは緩やかな弧状の上り勾配を成すテーパ形に形成され、その発光部の内表面が、球形、楕円球形又は紡錘形に形成されている請求項1又は2記載の反射鏡付きランプ。
【請求項4】
前記発光部のテーパ形に形成された外表面とその両端に連なる外表面とが、角を立てずに交わっている請求項3記載の反射鏡付きランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−128771(P2007−128771A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321147(P2005−321147)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】