説明

反射防止フィルム、反射防止性偏光板、及び透過型液晶ディスプレイ

【課題】ハードコート層の塗液の固形分濃度が変化しても、耐擦傷機能が低下しない生産性の高い反射防止フィルムとなり、またケン化処理を行っても低屈折率層がハードコート層から剥がれることがないアルカリ耐性のある反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材上にハードコート層、低屈折率層を順に備える反射防止フィルムである。前記低屈折率層積層前の前記ハードコート層表面のヨウ化メチレンに対する接触角が15°以上、23°以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓やディスプレイなどの表面に外光が反射することを防止することを目的として設けられる反射防止フィルム及びその反射防止フィルムを使用する技術に関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)、CRTディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などのディスプレイの表面に設けられる反射防止フィルムに関する。特に、液晶ディスプレイ(LCD)表面に設けられる反射防止フィルムに関する。さらには、透過型液晶ディスプレイ(LCD)表面に設けられる反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。しかし、この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することによって、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することは必須であり、また、反射防止機能の高性能化、反射防止機能以外の機能の複合化が求められている。
【0003】
一般に反射防止機能は、透明基材上に金属酸化物等の透明材料からなる高屈折率層と低屈折率層の繰り返し構造による多層構造の反射防止層を形成することで得られる。これらの多層構造からなる反射防止層は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法といった乾式成膜法により形成することができる。
乾式成膜法を用いて反射防止層を形成する場合にあっては、低屈折率層、高屈折率層の膜厚を精密に制御できるという利点がある一方、成膜を真空中でおこなうため、生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、反射防止層の形成方法として、大面積化、連続生産、低コスト化が可能である塗液を用いた湿式成膜法による反射防止膜の生産が注目されている。
【0004】
また、これらの反射防止層が透明基材上に設けられている反射防止フィルム(特許文献1〜6)にあっては、その表面が比較的柔軟であることから、表面硬度を付与するために、一般にアクリル系材料を硬化して得られるハードコート層を設け、その上に反射防止層を形成するという手法が用いられている。このハードコート層はアクリル系材料により、高い表面硬度、光沢性、透明性、耐擦傷性を有する。
【0005】
湿式成膜法によって反射防止層を形成する場合、特許文献4〜6に記載のように、これらの電離放射線硬化型材料を硬化して得られるハードコート層の上に少なくとも低屈折率層を塗布して製造されるものであり、乾式成膜法に比べ安価に製造できるメリットがあり、市場に広く出まわっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−202389号公報
【特許文献2】特開2005−199707号公報
【特許文献3】特開平11−92750号公報
【特許文献4】特開2007−121993号公報
【特許文献5】特開2005−144849号公報
【特許文献6】特開2006−159415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反射防止フィルムをディスプレイ表面に設けることにより、反射防止フィルムの反射防止機能によって、外光の反射を抑制することができ、明所でのコントラストを向上させることができる。また、同時に透過率を向上させることができることから画像をより明るく表示可能にすることができる。また、バックライトの出力などを抑える省エネ効果も期待できる。
反射防止フィルムはディスプレイ表面に設けられることから、反射防止機能のほかに反射防止フィルム表面が傷つくことを防ぐための耐擦傷機能が要求される。
【0008】
しかし、反射防止フィルムの製造工程において、塗液の溶剤蒸発や、水分吸収により固形分濃度が徐々に変化してしまうことがあり、塗液の固形分濃度が変化すると塗工されるハードコート層の膜厚にバラツキが生じている。ハードコート層の膜厚が薄すぎると、反射防止フィルムが傷つきやすくなり、一方、厚いと、傷はつきにくくなるが塗液の使用量が多くなり、コスト高となってしまう。そのため、ハードコート層の膜厚は、耐擦傷機能に問題が生じない範囲で極力薄くしており、製造工程において塗液の固形分濃度が変化を起こすことにより、膜厚が薄くなりすぎて耐擦傷機能が低下する恐れがあり、また、膜厚が厚すぎると生産性が低下するという問題がある。
【0009】
また、反射防止フィルムを透過型液晶ディスプレイの最表面に設ける場合には、反射防止フィルムの低屈折率層側とは反対側の面(透明基材側)に偏光層および第2の透明基材が積層され、偏光板が作製される。このとき、偏光層と反射防止フィルムの密着性を向上させるために、偏光層を形成する前にはケン化処理と呼ばれるアルカリ処理がおこなわれる。ケン化処理は、反射防止フィルムをアルカリ溶液に浸漬することによりおこなわれるが、反射防止フィルムの低屈折率層がアルカリ溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった場合には、アルカリ溶液により低屈折率層がハードコート層から剥がれてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、前記のような点に着目したもので、ハードコート層の塗液の固形分濃度が変化しても、耐擦傷機能が低下しない生産性の高い反射防止フィルムとなり、またケン化処理を行っても低屈折率層がハードコート層から剥がれることがないアルカリ耐性のある反射防止フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、透明基材上にハードコート層、低屈折率層を順に備える反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層積層前の前記ハードコート層表面のヨウ化メチレンに対する接触角が15°以上、23°以下であることを特徴とする。
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、視感平均反射率が0.5%以上、1.5%以下であることを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射防止フィルムと、
その反射フィルムの前記低屈折率層側とは反対側の前記透明基材側に配置される偏光層および第2の透明基材と、を備えることを特徴とする反射防止性偏光板を提供するものである。
【0012】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した構成に対し、前記低屈折率層とアルカリ溶液が接触する状態で前記反射防止フィルムをアルカリ溶液に浸漬させてアルカリ処理をした前記反射防止フィルムの透明基材面に対し、前記偏光層及び前記第2の透明基材を積層したことを特徴とする。
次に、請求項5に記載した発明は、観察者側から順に、請求項3又は請求項4に記載の反射防止性偏光板、液晶セル、第2の偏光板、及びバックライトユニットが配置され、前記反射防止性偏光板における前記低屈折率層とは反対側の面側に前記液晶セルが配置されることを特徴とする透過型液晶ディスプレイを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
前記構成からなる本発明の反射防止フィルムにあっては、ハードコート層の塗液の固形分濃度が変化しても、耐擦傷機能が低下しない生産性の高い反射防止フィルムとなり、かつケン化処理を行っても低屈折率層が、ハードコート層からより剥がれ難いアルカリ耐性のある反射防止フィルムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る反射防止フィルムの模式断面図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る偏光板の模式断面図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る偏光板を用いた透過型液晶ディスプレイの模式断面図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る反射防止フィルムの製造装置の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(反射防止フィルム)
まず本発明の実施形態に係る反射防止フィルムについて説明する。
図1は、本実施形態の反射防止フィルムの模式断面図である。
本実施形態の反射防止フィルム(1)では、図1に示すように、透明基材(11)上にハードコート層(12)が積層され、そのハードコート層(12)上に低屈折率層(13)が積層されている。
【0016】
ハードコート層(12)は、電離放射線硬化型材料を硬化することにより形成され、反射防止フィルム(1)の主に耐擦傷性を付与する。低屈折率層(13)は反射防止フィルムの最表層を形成し、反射防止フィルム(1)に反射防止機能、防汚機能、耐擦傷機能を付与する。低屈折率層は、前記反射防止機能を付与するために、該低屈折率層の膜厚と屈折率とを乗することで得られる光学膜厚が、可視光波長の1/4若しくはその近傍となるように設計される。具体的には、低屈折率層の光学膜厚は50nm以上200nm以下の範囲内となるように設計される。
【0017】
本実施形態の反射防止フィルムは、以下の1)〜4)の工程により製造される。
1)電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコード層形成塗液を前記透明基材上に塗布し塗膜を形成する第1塗膜形成工程。
2)前記塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射しハードコート層を形成するハードコート層形成工程。
3)前記ハードコート層上に、電離放射線硬化型材料と低屈折率材料と撥水材料と溶媒を含む低屈折率層形成塗液を塗布し塗膜を形成する第2塗膜形成工程。
4)前記塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射し低屈折率層を形成する低屈折率層形成工程。
【0018】
本発明者らは、電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコード層形成塗液を用いて形成した、低屈折率層積層前のハードコート層表面について、そのハードコート層表面のヨウ化メチレンに対する接触角が15°以上であると、ハードコート層の塗液の固形分濃度が変化しても、耐擦傷機能が低下しない生産性の高い反射防止フィルムとすることができることを見出した。
【0019】
また、電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコード層形成塗液を用いて形成した低屈折率層積層前のハードコート層の表面のヨウ化メチレンに対する接触角が23°以下であると、反射防止フィルムに対しケン化処理を行っても低屈折率層がハードコート層から剥がれることがないアルカリ耐性のある反射防止フィルムとすることができることを見出した。
【0020】
また、前記低屈折率層積層前のハードコート層表面のヨウ化メチレンに対する接触角が23°を超える場合にあっては、ハードコート層上の濡れ性が悪く、上に積層した低屈折率層との密着性が低下してしまい、ケン化処理により低屈折率層がハードコート層から剥がれる反射防止フィルムとなってしまう。
また、15°を下回る場合にあっては、ハードコート層上の濡れ性は良く、上に積層した低屈折率層との密着性は良くなるが、ハードコート層自体の硬化が弱いものとなってしまう結果、製造工程においてハードコート層の塗液の固形分濃度が変化し膜厚がばらつくと共に耐擦傷機能が低下する。このため生産性の悪い反射防止フィルムとなってしまう。
【0021】
(偏光板)
次に、本実施形態の反射防止フィルムを用いた偏光板について説明する。
図2は、本実施形態に係る偏光板の模式断面図である。
本実施形態の偏光板は、図2に示すように、前記構成の反射防止フィルム(1)と、その反射防止フィルム(1)における低屈折率層形成面とは反対側の透明基材(11)側に積層された、偏光層(23)および第2の透明基材(22)とを備える。そして、この偏光板を透過型液晶ディスプレイの表面に設けることで、当該透過型液晶ディスプレイの表面に本実施形態の反射防止フィルムが設けられる。
【0022】
本実施形態の反射防止フィルム(1)を用いた偏光板(2)にあっては、当該偏光層(23)と前記反射防止フィルム(1)の透明基材(11)との密着性を向上させるために、前記構成の反射防止フィルム(1)の透明基材(11)に対し、偏光層(23)を積層する前にケン化処理と呼ばれるアルカリ処理がおこなわれる。ケン化処理は反射防止フィルム(1)をアルカリ溶液に浸漬することによりおこなわれる。このとき、本実施形態の反射防止フィルム(1)にあっては、低屈折率層(13)がアルカリ溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった際にも低屈折率層(13)がハードコート層(12)から剥がれることがなく、その後の反射防止フィルム(1)に対して偏光板を形成(積層)することができる。
【0023】
(透過型液晶ディスプレイ)
図3は、本実施形態の偏光板を用いた透過型液晶ディスプレイの模式断面図を示す。
本実施形態の透過型液晶ディスプレイにあっては、図3に示すように、バックライトユニット(5)、偏光板(4)、液晶セル(3)、偏光板(2)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(1)を備える偏光板(2)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0024】
バックライトユニット(5)は、光源(不図示)と光拡散板(不図示)を備える。液晶セル(3)は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(3)を挟むように設けられる2つの偏光板2,4にあっては、透明基材(11、22、41、42)間に偏光層(23)(43)を挟持した構造となっている。
【0025】
また、本実施形態の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【0026】
(反射防止フィルム等の形成方法その他についての詳説)
さらに詳細に本実施形態の反射防止フィルム(1)について説明する。
本実施形態の反射防止フィルム(1)における透明基材は、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものも使用できる。また、透明基材は前記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。また、透明基材フィルムの厚みとしては、35μm以上120μm以下を用いることが好ましい。また、トリアセチルセルロースを用いる場合は、35μm以上80μm以下の厚みを用いることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、20μm以上80μm以下の厚みを用いることが好ましい。
【0027】
中でも、トリアセチルセルロースフィルムは複屈折が少なく、透明性が良好であることから、本実施形態の反射防止フィルム(1)を液晶ディスプレイに用いるにあっては好適に使用することができる。トリアセチルセルロースフィルムの屈折率は約1.50であって、他の透明基材と比較して屈折率が低い。また、透明基材として広範に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、1.60である。
透明基材(11)上にはハードコート層(12)が形成される。
ハードコート層(12)は、電離放射線硬化型材料と溶媒を含むハードコード層形成塗液を前記透明基材上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射することにより形成される。
【0028】
ハードコート層形成用塗液に含まれる電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0029】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0032】
アクリル系材料として多官能ウレタンアクリレートを用いることもできる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
【0033】
また、これらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
ハードコート層形成用塗液には溶媒が含まれる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、その他としてN−メチル−2−ピロリドン、炭酸ジメチルが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、ハードコート層形成用塗液には、光重合開始剤を含むことができる。塗膜を硬化する際の電離放射線として紫外線を用いる場合には光重合開始剤がハードコート層形成用塗液に加えられる。光重合開始剤としては、電離放射線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料に対して0.1wt%以上10wt%以下の範囲内であることが好ましく、さらには1wt%以上8.5wt%以下であることが好ましい。
【0035】
また、ハードコート層形成用塗液には添加剤として、ハードコート層形成用塗液においては、塗液中に先に述べた表面調整剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。機能性添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、密着性向上剤、硬化剤などを用いることができる。
また、ハードコート層形成用塗液には導電性材料を加えることもできる。ハードコート層形成用塗液に導電性材料を加えることにより、得られる反射防止フィルム(1)に帯電防止機能を付与することができ、ディスプレイ表面への誇りの付着等を防ぐことができる。
【0036】
導電性材料としては、四級アンモニウム塩材料、金属酸化物粒子、導電性高分子等を用いることができる。
導電性材料である四級アンモニウム塩材料としては、四級アンモニウム塩材料を官能基として分子内に含む材料を好適に用いることができる。四級アンモニウム塩材料は−Nの構造を示し、四級アンモニウムカチオン(−N)とアニオン(X)を備えることによりハードコート層(12)に導電性を発現させる。このとき、Xとしては、Cl、Br、I、F、HSO、SO2−、NO、PO3−、HPO2−、HPO、SO、OH等を挙げることができる。
【0037】
また、四級アンモニウム塩材料として、四級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料を用いることもできる。四級アンモニウム塩材料を官能基として分子内に含むアクリル系材料としては、四級アンモニウム塩材料(−N)を官能基として分子内に含む多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0038】
導電性材料として用いられる金属酸化物粒子としては、酸化ジルコニウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、スズ含有酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、アルミニウム含有酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモン含有酸化亜鉛及びインジウム含有酸化亜鉛から選択される1種又は2種以上の金属酸化物を主成とする導電性を有する金属酸化物粒子を用いることができる。
【0039】
導電性材料として用いられる導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(1,6−ヘプタジイン)、ポリビフェニレン(ポリパラフェニレン)、ポリパラフィニレンスルフィド、ポリフェニルアセチレン、ポリ(2,5−チエニレン)及びこれらの誘導体から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。
以上の材料を調整して得られるハードコート層形成用塗液を湿式成膜法により透明基材(11)上に塗布し、塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、該塗膜に電離放射線を照射することにより、ハードコート層(12)を形成することができる。以下にハードコート層(12)の形成方法を示す。
【0040】
ハードコート層形成用塗液は透明基材(11)上に塗布され、塗膜を形成する。ハードコート層形成用塗液を透明基材(11)上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。なお、本実施形態のハードコート層(12)は薄い塗膜であり、均一な膜厚であることが必要であることから、マイクログラビアコーター法、ダイコーター法を用いることが好ましい。
【0041】
次に、透明基材(11)上に形成されたハードコート層(12)の塗膜は乾燥することにより、塗膜中の溶媒は除去される。このとき乾燥手段としては、加熱、送風、熱風等を用いることができる。
次に、ハードコート層形成用塗液を透明基材(11)上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、ハードコート層(12)が形成される。
【0042】
電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。電子線は、50〜1000KeVのエネルギーを有するのが好ましい。100〜300KeVのエネルギーを有する電子線がより好ましい。
【0043】
以上により形成されたハードコート層(12)上には、低屈折率層(13)が形成される。低屈折率層(13)は、電離放射線硬化型材料と低屈折率材料と撥水材料と溶媒を含む低屈折率層形成塗液を塗布し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射することにより形成される。
低屈折率層形成用塗液に含まれる低屈折率材料としては、内部に空隙を有するシリカ粒子を用いることができる。内部に空隙を有するシリカ粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。内部に空隙を有する低屈折率シリカ材料としては、多孔質シリカ粒子やシェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0044】
本実施形態の低屈折率層形成用塗液に含まれる低屈折率材料である内部に空隙を有するシリカ粒子としては、平均粒径が10nm以上100nm以下であることが好ましい。平均粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層(13)が白化して反射防止フィルム(1)の透明性が低下する傾向にある。一方、粒径が10nm未満の場合、粒子の凝集による低屈折率層(13)における粒子の不均一性等の問題が生じる。
【0045】
また、内部に空隙を有するシリカ粒子の空隙としては、20nm以上50nm以下であることが好ましい。空隙が50nmを超える場合、十分な耐擦傷性が得ることができずディスプレイ表面に設ける反射防止フィルム(1)に適さなくなってしまうためである。一方、空隙が20nm未満の場合、屈折率が1.45以上となってしまい平均視感反射率が1.5%以上となるためである。
【0046】
なお、内部に空隙を有するシリカ粒子の一例として、球状の形状を保持したまま、硝子の屈折率1.45に比べて低い屈折率1.35であり、半径20nm以上25nm以下、密度(ρ1)の球状の構造が中心部分にあり、周囲を厚み10nm以上15nm以下の異なる密度(ρ2)の層が覆っており、(ρ1/ρ2)の値が0.5、0.1、0.0を示し、シリカ粒子の中心部分は外部のシリカの1/10程度の密度となるような構造モデルを用いることもできる。
【0047】
低屈折率層形成用塗液に含まれる電離放射線硬化型材料としては、ハードコート層形成用塗液の項で例示したアクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0048】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0051】
アクリル系材料として多官能ウレタンアクリレートを用いることもできる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
【0052】
また、これらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
また、低屈折率層形成用塗液にあっては、撥水材料を含む。撥水材料としては、形成後の低屈折率層(13)表面の純水の接触角を75°以上とすることのできる撥水材料を用いることができる。低屈折率層(13)表面の純水の接触角が75°以上である場合には十分な防汚機能を備える反射防止フィルム(1)とすることができる。
【0053】
中でも、撥水材料としては、フッ素を含む化合物または珪素を含む化合物を好適に用いることができる。これらの材料は反射防止フィルム(1)の低屈折率層(13)表面に撥水性を付与し、優れた防汚機能を付与する。フッ素を含む化合物はフッ素部分により低屈折率層(13)表面に防汚機能が主に発現する。一方、珪素を含む化合物は珪素部分により低屈折率層(13)表面に防汚機能が主に発現する。
【0054】
撥水材料として用いられるフッ素を含む化合物としては、RS−72−K、RS−75(DIC製)等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
撥水材料として用いられる珪素を含む化合物としては、BYK−UV3500,BYK−3530、BYK−3570(ビックケミー社製)等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
なお、本実施形態にあっては、フッ素を含む化合物と珪素を含む化合物の両方を用いることも可能である。
【0055】
低屈折率層形成用塗液には溶媒が含まれる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、その他としてN−メチル−2−ピロリドン、炭酸ジメチルが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
また、低屈折率層形成用塗液には、光重合開始剤を含むことができる。塗膜を硬化する際の電離放射線として紫外線を用いる場合には光重合開始剤がハードコート層形成用塗液に加えられる。光重合開始剤としては、電離放射線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料に対して0.1wt%以上10wt%以下の範囲内であることが好ましく、さらには1wt%以上8.5wt%以下であることが好ましい。
【0057】
以上の材料を調整して得られる低屈折率層形成用塗液を湿式成膜法によりハードコート層(12)上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、該乾燥した塗膜に電離放射線を照射することにより、低屈折率層(13)を形成することができる。以下に低屈折率層(13)の形成方法を示す。
低屈折率層形成用塗液はハードコート層(12)上に塗布され、塗膜を形成する。低屈折率層形成用塗液を透明基材上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。なお、本実施形態のハードコート層(12)は薄い塗膜であり、均一な膜厚であることが必要であることから、マイクログラビアコーター法、ダイコーター法を用いることが好ましい。
【0058】
次に、透明基材上に形成された低屈折率層(13)の塗膜は乾燥することにより、塗膜中の溶媒は除去される。このとき乾燥手段としては、加熱、送風、熱風等を用いることができる。
次に、低屈折率層形成用塗液をハードコート層(12)上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、低屈折率層(13)が形成される。
【0059】
電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。電子線は、50〜1000KeVのエネルギーを有するのが好ましい。100〜300KeVのエネルギーを有する電子線がより好ましい。
【0060】
図4は、本実施形態の反射防止フィルム(1)の製造装置の概略図を示し。
本実施形態の反射防止フィルム(1)は、図4に示すように、ロール・ツー・ロール方式により連続形成される。巻き取られているウェブ状の透明基材を巻き出し部(71)から巻き取り部(72)まで連続走行させ、このとき、透明基材(11)を塗布ユニット(塗布工程)(61)、乾燥ユニット(乾燥工程)(62)、電離放射線照射ユニット(硬膜工程)(63)を通過させることにより、透明基材(11)上のハードコート層(12)上に低屈折率層(13)が連続形成される。
なお、図4の本実施形態の反射防止フィルム(1)の製造装置は、ハードコート層(12)、低屈折率層(13)の両方を形成する際に使用することができる。
【0061】
本実施形態の反射防止フィルム(1)にあっては、反射防止層が形成されている側とは反対側の透明基材(11)側の面に偏光層(23)、第2の透明基材(22)を設けることにより、偏光板(2)とすることができる。偏光層(23)としては、例えば、ヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコール(PVA)を用いることができる。また、もう一方の透明基材としては、反射防止フィルム(1)に用いる透明基材を用いることができ、トリアセチルセルロースからなるフィルムを好適に用いることができる。このとき、偏光層(23)の両面に設けられる2枚の透明基材(11,22)における前記偏光層(23)と接触する面に対しては、偏光層(23)と貼り合せる前にアルカリ処理(ケン化処理)がおこなわれる。ケン化処理は反射防止フィルム(1)もしくは透明基材をアルカリ溶液に浸漬することによりおこなわれるが、本実施形態の偏光板(2)にあっては、反射防止フィルム(1)の低屈折率層(13)がアルカリ溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった際にも低屈折率層(13)がハードコート層(12)から剥がれることがなく、偏光板(2)を形成することができる。アルカリ処理は、反射防止フィルム(1)もしくは透明基材フィルム(1)を水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液に浸漬することによりおこなわれる。
【0062】
また、本実施形態の反射防止フィルム(1)は、偏光板化され、さらに、透過型液晶ディスプレイの前面、すなわち、観察側に反射防止層が最表面となるように設けられる。本実施形態の反射防止フィルム(1)を透過型液晶ディスプレイ表面に設けることにより反射防止機能を有した透過型液晶ディスプレイとすることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について、実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
透明基材(11)として、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm、屈折率1.49)を用意した。
(合成例1)
攪拌翼、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた四口フラスコに、
・オクチルポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート
(商品名:「ブレンマー50POEP−800B」日本油脂社製) 18.0g
・メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド 35.0g
・シクロヘキシルメタクリレート 14.0g
・アゾビスイソブチロニトリル 0.3g
・イソプロピルアルコール 100.0g
・メチルエチルケトン 40.0g
を仕込み、窒素雰囲気下、65℃で3時間重合した。重合終了後、反応液をヘキサン中に投入し、生成物を析出させた後乾燥した。得られた四級アンモニウム塩基含有ポリマーの平均分子量は18500であった。
【0064】
<ハードコート層形成用塗液・調製例1>
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製U−6LPA) 100重量部 に対して、
・合成例1で作製した四級アンモニウム塩材料(分子量18500) 10重量部
・ジペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製 商品名:Irgacure184)
10重量部
を用い、これをメチルエチルケトンに固形分が50%になるように溶解してハードコート層形成用塗液1を調整した。
【0065】
<ハードコート層形成用塗液・調製例2>
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製U−6LPA)100重量部に対して、
・合成例1で作製した四級アンモニウム塩材料(分子量18500) 10重量部
・ジペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製 商品名:LucirinTPO)
10重量部
を用い、これをメチルエチルケトンに固形分が50%になるように溶解してハードコート層形成用塗液2を調整した。
【0066】
<ハードコート層形成用塗液・調製例3>
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製U−6LPA)100重量部に対して、
・合成例1で作製した四級アンモニウム塩材料(分子量18500) 10重量部
・ジペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製 商品名:Irgacure184)
15重量部
を用い、これをメチルエチルケトンに固形分が50%になるように溶解してハードコート層形成用塗液3を調整した。
【0067】
<ハードコート層形成用塗液・調製例4>
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製U−6LPA)100重量部に対して、
・合成例1で作製した四級アンモニウム塩材料(分子量18500) 10重量部
・ジペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製 商品名:Irgacure184)
20重量部
を用い、これをメチルエチルケトンに固形分が50%になるように溶解してハードコート層形成用塗液4を調整した。
【0068】
<ハードコート層形成用塗液・調製例3>
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製U−6LPA)100重量部に対して、
・合成例1で作製した四級アンモニウム塩材料(分子量18500) 10重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 100重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン社製 商品名:Irgacure184)
20重量部
を用い、これをメチルエチルケトンに固形分が50%になるように溶解してハードコート層形成用塗液5を調整した。
【0069】
<低屈折率層形成用塗液・調製例A>
・メガファック RS−75 0.1重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 100重量部
・内部に空隙を有する低屈折率シリカ微粒子分散液
(一次粒子径30nm/固形分20wt%/メチルエチルケトン分散)500重量部
光重合開始剤(BASFジャパン社製 商品名:Irgacure184)5重量部
メチルエチルケトンに固形分が10%になるように溶解して低屈折率層形成用塗液1を調整した。
【0070】
<実施例1>
(ハードコート層(12)の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調製例1のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量150mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層(12)を形成させた。
【0071】
(低屈折率層(13)の形成)
次に、前記ハードコート層(12)の上層に、低屈折率層(13)を形成した。前記調製例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量250mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層(13)を形成し、反射防止フィルム(1)を作製した。
【0072】
<実施例2>
(ハードコート層(12)の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調製例2のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量200mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層(12)を形成させた。
【0073】
(低屈折率層(13)の形成)
次に、前記ハードコート層(12)の上層に、低屈折率層(13)を形成した。前記調製例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量250mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層(13)を形成し、反射防止フィルム(1)を作製した。
【0074】
<実施例3>
(ハードコート層(12)の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調製例3のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量150mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層(12)を形成させた。
【0075】
(低屈折率層(13)の形成)
次に、前記ハードコート層(12)の上層に、低屈折率層(13)を形成した。前記調製例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量350mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層(13)を形成し、反射防止フィルム(1)を作製した。
【0076】
<比較例1>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調製例1のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量100mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
【0077】
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調製例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量350mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0078】
<比較例2>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調製例4のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量350mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
【0079】
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調製例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量350mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0080】
<比較例3>
(ハードコート層の形成)
TACフィルム(膜厚80μm)の片面に前記調製例5のハードコート層形成用塗液を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量200mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成させた。
【0081】
(低屈折率層の形成)
次に、前記ハードコート層の上層に、低屈折率層を形成した。前記調製例Aの低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量350mJ/mで紫外線照射をおこなって硬膜させて低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
前記にて作製されたハードコート層および反射防止フィルムについて、以下の測定・評価をおこなった。
【0082】
「ハードコート層表面の接触角の測定」
得られたハードコート層の表面について、接触角計(協和界面科学社製 CA−X型)を用いて、乾燥状態(20℃−65%RH)で直径1.8mmの液滴を針先に作り、これを試料(固体)の表面に接触させて液滴を作った。接触角とは、固体と液体とが接触する点における液体表面に対する接線と固体表面とがなす角であり、液体を含む側の角度で定義した。液体としては、蒸留水、ヨウ化メチレン、ヘキサデカンの3種を使用した。接触角の測定方法としてはJIS−R3257(1999)に準拠して測定した。
【0083】
「視感平均反射率の測定(ケン化前)」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層形成面と反対側の面を黒色艶消しスプレーにより黒色に塗布した。塗布後、自動分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い測定した低屈折率層形成面についてC光源、2度視野の条件下での入射角5°における分光反射率から平均視感反射率(Y%)を算出した。また、比視感度は明所視標準比視感度を用いた。
【0084】
「視感平均反射率の測定(ケン化後)」
得られた反射防止フィルムを5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液に50℃、60秒浸漬させ、その後、純水洗浄をおこないケン化処理をおこなった。このとき、低屈折率層(13)表面がNaOH溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった。ケン化処理をおこなった反射防止フィルムの低屈折率層形成面と反対側の面を黒色艶消しスプレーにより黒色に塗布した。塗布後、自動分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い測定した低屈折率層形成面についてC光源、2度視野の条件下での入射角5°における分光反射率から平均視感反射率(Y%)を算出した。また、比視感度は明所視標準比視感度を用いた。
【0085】
「耐擦傷性(スチールウール(SW))の評価」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、AB−301)を用いて、反射防止フィルムの低屈折率層表面に500g/cmの荷重をかけたスチールウール(日本スチールウール社製、ボンスター#0000)を用い、10往復擦り、擦り跡やキズなどによる外観の変化を目視で評価した。
【0086】
目視にて確認した評価は、
丸印 :傷を確認することが出来ない。
三角印:数本傷を確認できる。
バツ印:傷が多数確認できる。
表1に、得られたハードコート層表面に対する接触角、および得られた反射防止フィルムのケン化前後の視感平均反射率、固形分濃度変動時の耐擦傷性(SW)の測定結果、評価結果を示す。
【0087】
【表1】

【0088】
比較例では、低屈折率層積層前の前記ハードコート層の表面のヨウ化メチレンに対する接触角が15°未満となる反射防止フィルムは、ハードコート層形成用塗液の固形分濃度のバラツキにより耐擦傷機能の低下が見られた。
また、低屈折率層積層前の前記ハードコート層の表面のヨウ化メチレンに対する接触角が23°を越えると反射防止フィルムは、視感平均反射率がケン化処理後に3%になり、低屈折率層の剥がれが見られた。
【0089】
一方、実施例では、低屈折率層積層前の前記ハードコート層の表面のヨウ化メチレンに対する接触角が15°以上、23°以下となる本発明に基づく実施例の反射防止フィルムは、ケン化処理後も反射防止機能の低下がない、アルカリ耐性が強い反射防止フィルムで、かつハードコート層形成用塗液の固形分濃度のバラツキによる耐擦傷機能の低下がない、生産性の高い反射防止フィルム(1)であることが示された。
また、低屈折率層積層前の前記ハードコート層の表面の水、およびヘキサデカンに対する接触角とは、関係がないことも示された。
【0090】
(偏光板の作製)
本発明に基づく(実施例1)で得られた反射防止フィルムを5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液に50℃、60秒浸漬させ、その後、純水洗浄をおこないケン化処理をおこなった。このとき、低屈折率層表面がNaOH溶液と接触する状態でケン化処理をおこなった。一方、偏光層としてヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコールフィルムを用意した。また、第2の透明基材として、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm、屈折率1.49)を用意し、5Nの水酸化ナトリウム水溶液に50℃、60秒浸漬させケン化処理をおこなった。ケン化処理をおこなった(実施例1)の反射防止フィルムとケン化処理をおこなったトリアセチルセルロースフィルムの間にヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコールフィルムを配置し、ポリビニルアルコール系の接着剤により積層し偏光板を作製した。
このとき、反射防止フィルムにおける低屈折率層での剥離は確認されなかった。
【符号の説明】
【0091】
1 反射防止フィルム
11 透明基材
12 ハードコート層
13 低屈折率層
2 偏光板
22 (第2の)透明基材
23 偏光層
3 液晶セル
4 偏光板
41 透明基材
42 透明基材
43 偏光層
5 バックライトユニット
61 塗布ユニット
62 乾燥ユニット
63 電離放射線照射ユニット
71 巻き出し部
72 巻き取り部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上にハードコート層、低屈折率層を順に備える反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層積層前の前記ハードコート層表面のヨウ化メチレンに対する接触角が15°以上、23°以下であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
視感平均反射率が0.5%以上、1.5%以下であることを特徴とする請求項1に記載した反射防止フィルム
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射防止フィルムと、
その反射フィルムの前記低屈折率層側とは反対側の前記透明基材側に配置される偏光層および第2の透明基材と、を備えることを特徴とする反射防止性偏光板。
【請求項4】
前記低屈折率層とアルカリ溶液が接触する状態で前記反射防止フィルムをアルカリ溶液に浸漬させてアルカリ処理をした前記反射防止フィルムの透明基材面に対し、前記偏光層及び前記第2の透明基材を積層したことを特徴とする請求項3に記載した反射防止性偏光板。
【請求項5】
観察者側から順に、請求項3又は請求項4に記載の反射防止性偏光板、液晶セル、第2の偏光板、及びバックライトユニットが配置され、前記反射防止性偏光板における前記低屈折率層とは反対側の面側に前記液晶セルが配置されることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−198317(P2012−198317A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61208(P2011−61208)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】