説明

反射防止フィルム

【課題】湿式塗工法によって生産性よく安価に製造することができ、しかも耐擦傷性および反射防止特性に優れた、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどに好適に使用することができる反射防止フィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルム上に、フッ素含有ポリオレフィンと、光硬化性架橋成分50〜90重量%と熱硬化性架橋成分10〜50重量%とからなる架橋剤成分とを含む硬化性樹脂から形成された反射防止層を少なくとも1層積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止フィルムに関するものである。さらに詳しくは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ、PDPなどの表面に反射防止フィルムとして、また、デバイス内部に光線透過率上昇フィルムとして用いられる反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来反射防止機能を付与するためには、ディスプレイを形成する基板上に直接コーティング層が形成されることが多かった。しかし、近年ディスプレイのフラット化に伴い、歩留り向上の狙いから反射防止機能をもった樹脂フィルム(反射防止フィルム)をディスプレイ表面または、ディスプレイの保護もしくはフィルター機能を目的とした前面板に貼り付けるのが一般的となっている。この反射防止フィルムを形成する技術としては、塗液を基板フィルム上に塗布・乾燥してコーティング層を積層していく湿式法と、スパッタリング、蒸着等により積層する乾式法とがあるが、後者の方法は精度よく膜厚を制御できるが真空を利用するために生産コストが高くなると共に生産性が低いという問題がある。一方、前者の方法は、精度よく膜厚を制御するためにはコーティング層の数をなるべく少なくするため、湿式塗布が可能で、しかも十分に屈折率の低い材料が必要とされている。
【0003】
このような材料としては、例えば特開平10−182745号公報には特定構造の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体組成物を重合させてなる低屈折率材料が提案されている。また、特開2001−262011号公報には含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤およびフッ素含有シランカップリング剤により変性されたコロイダルシリカとを、特定割合で含む含フッ素硬化性塗液を硬化してなる、高い表面硬度を有した低屈折材料が提案され、各種基材表面等に使用可能であることが記載されている。しかし、これらの低屈折材料を例えばUV光を照射して硬化させる際、通常これら低屈折材料からなる層の厚みが約100nmであるため、空気中では酸素障害を起こして十分には硬化せず該層の耐擦傷性が不十分であるという問題がある。
【0004】
さらに特開昭60−67518号公報には、含フッ素共重合体にメラミン系などの熱硬化剤が添加された低屈折材料が提案されているが、膜自体の硬度が不十分で擦傷性に劣るとか、基板フィルムとの密着性が不十分であるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−182745号公報
【特許文献2】特開2001−262011号公報
【特許文献3】特開昭60−67518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記背景技術を鑑みなされたもので、その目的は、湿式塗工法によって生産性よく安価に製造することができ、しかも耐擦傷性および反射防止特性に優れた反射防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、フッ素含有ポリオレフィンに架橋成分として光架橋成分と熱架橋成分とを組合せた硬化性塗液が、表面硬度の高い低屈折率のコーティング層を形成できることを見出し、さらに検討を重ね本発明に到達した。
【0008】
かくして、本発明によれば、「基材フィルム上に、少なくとも1層の反射防止層が積層されてなる反射防止フィルムにおいて、該反射防止層が、フッ素含有ポリオレフィンと架橋剤成分とを構成成分として含む硬化性樹脂から形成され、かつ該架橋剤成分が光硬化性架橋成分50〜90重量%と熱硬化性架橋成分10〜50重量%とからなることを特徴とする反射防止フィルム。」が提供される。
【0009】
また好ましい態様として、硬化性樹脂が、フッ素含有ポリオレフィン100重量部に対して架橋剤成分を10〜50重量部含むこと、熱硬化性架橋成分がメラミン成分を含むこと、光硬化性架橋成分が、分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基をあわせて2個以上有するものであること、反射防止層の中心線表面粗さが3〜10nmで、かつ10点平均粗さが50〜300nmであること、硬化性樹脂が平均粒径10〜80nmの微粒子を10〜60重量%含有し、かつ該平均粒子径dと反射防止層厚みtとが0.1≦d/t≦0.8の関係を満足すること、反射防止層の屈折率が1.45以下であること、反射防止層が、温度120〜160℃で熱硬化させた後に光硬化させて形成したものであること、および、反射防止層と基材フィルムの間にハードコート層を有することの少なくともひとつを具備する反射防止フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の反射防止フィルムは、熱硬化性架橋成分と光硬化性架橋成分とからなる架橋剤成分とフッ素含有ポリオレフィンとを構成成分として含む硬化性樹脂からなる反射防止層が形成されているので、基材フィルム(ハードコート層が設けられている場合には該コート層)との接着性に優れ、しかも高い表面硬度を有しているので、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどの表面に反射防止フィルムとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の反射防止フィルムは、基材フィルム上に、フッ素含有ポリオレフィンと架橋剤成分とを構成成分として含む硬化性樹脂から形成される、少なくとも1層の反射防止層が積層されている必要がある。ここで用いられるフッ素含有ポリオレフィンは、反射防止効率の点からフッ素元素の含有量が20重量%以上であることが好ましく、特に25〜60重量%のものが好ましい。フッ素元素の含有量が20重量%未満の場合には反射防止層の屈折率を十分に低くすることが困難になり、反射防止フィルムとしての性能が低下しやすい。一方、フッ素含有量は多くなるほど反射防止層の屈折率が低くなって好ましいが、60重量%を超えて多くなりすぎると、一般に該フッ素含有ポリオレフィンの溶媒への溶解・分散性が低下するだけでなく、併用する架橋剤成分との相溶性も低下して、得られる反射防止フィルムのヘーズが高くなりやすい。
【0012】
フッ素含有ポリオレフィンと架橋剤成分との割合は、前者100重量部に対して、後者が10〜50重量部、特に20〜45重量部の範囲が適当である。該架橋剤成分の割合が50重量部を超える場合には得られる反射防止層の屈折率を低くすることが難しくなって反射防止効果が低下する傾向にあり、一方10重量部未満の場合には、架橋剤成分の量が不十分となって高い表面硬度を得ることが難しくなる。
【0013】
ここで用いられるフッ素含有ポリオレフィンは、分子中に重合可能の不飽和二重結合とフッ素原子とを同時に有するモノマーを単独または2種以上併用して得られる重合体であって、好ましく用いられるモノマーとしては、例えば、(1)テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、3,3,3−トリフロロプロピレン等のフロロオレフィン類;(2)アルキルパーフロロビニルエーテル類またはアルコキシアルキルパーフロロビニルエーテル類;(3)パーフロロ(メチルビニルエーテル)、パーフロロ(エチルビニルエーテル)、パーフロロ(プロピルビニルエーテル)、パーフロロ(ブチルビニルエーテル)、パーフロロ(イソブチルビニルエーテル)等のパーフロロ(アルキルビニルエーテル)類;(4)パーフロロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)等のパーフロロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類などを挙げることができる。なかでも、ヘキサフロロプロピレン、パーフロロアルキルパーフロロビニルエーテルまたはパーフロロアルコキシアルキルパーフロロビニルエーテルが好ましく、特にこれらを組合せて使用することが好ましい。
【0014】
また、フッ素元素の含有量を調整するために、分子中に重合可能な不飽和二重結合を有する非フッ素含有モノマーを共重合してもよい。好ましく用いられるものとしては、例えば、(1)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルもしくはシクロアルキルビニルエーテル類;(2)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;(3)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(4)(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸等を挙げることができる。
【0015】
このようなフッ素含有ポリオレフィンは、熱架橋成分と反応し得る官能基を有するモノマーを共重合させることが、得られる反射防止層の表面硬度をより硬くすることができるので好ましい。ここで熱架橋成分と反応し得る官能基としては、熱架橋成分の種類に応じて変わるが、例えば熱架橋成分がメラミン樹脂またはエポキシ樹脂である場合には水酸基またはエポキシ基が好ましく、その両方を有するものであってもよい。
【0016】
水酸基を含有するモノマーとしては、例えば、(1)2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;(2)2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類;(3)アリルアルコール;(4)ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。一方エポキシ基を含有するモノマーとしては、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、クロトン酸グリシジルエステル、マレイン酸メチルグリシジルエステル等を挙げることができる。これらのモノマーは、単独で、または2種以上を併用することができる。
【0017】
つぎに、本発明の硬化性樹脂に用いられる架橋剤成分は、その50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%が光硬化性架橋成分、特に紫外線硬化性(UV硬化性)架橋成分であり、残りの10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%が熱硬化性架橋成分である必要がある。ここで光硬化性架橋剤成分の割合が50重量%未満の場合には、反射防止層の密着性と高い表面硬度とを同時に満足させることが難しくなり、逆に90重量%を超える場合には良好な反射防止効果と高い表面硬度とを同時に満足させることが難しくなる。
【0018】
好ましく用いられる熱硬化性架橋成分としては、フッ素含有ポリオレフィン中に熱架橋成分と反応しうる官能基、例えば水酸基またはエポキシ基を有する場合には、水酸基と反応可能なヒドロキシアルキルアミノ基、アルコキシアルキルアミノ基などのアミノ化合物、エポキシ基と反応可能なペンタエリスリトール、ポリフェノール、グリコール等の各種水酸基含有化合物や、前記と同じヒドロキシアルキルアミノ基、アルコキシアルキルアミノ基などのアミノ化合物を例示することができる。なかでも、例えばメラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等のアミノ化合物が好ましく、特にメラミン系化合物が好ましい。
【0019】
ところでメラミン系化合物は、トリアジン環に窒素原子が結合した構造を有する化合物であって、具体的には、メラミン、アルキル化メラミン、メチロールメラミン、アルコキシ化メチルメラミン等が存在するが、本発明においては1分子中にメチロール基およびアルコキシ化メチル基のいずれか一方または両方を合計で2個以上有するものが、得られる反射防止層の表面硬度の点から好ましい。具体的には、メラミンとホルムアルデヒドとを塩基性条件下で反応させて得られるメチロール化メラミン、アルコキシ化メチルメラミン、またはそれらの誘導体が好ましく、特に硬化性樹脂の保存安定性と反応性がともに良好であるという点からアルコキシ化メチルメラミンが特に好ましい。
【0020】
好ましく用いられるメチロール化メラミンおよびアルコシ化メチルメラミンには、その製造法によって種々のものが市販されているが、本発明においては特に制限する必要はなく、例えば文献「プラスチック材料講座[8]ユリア・メラミン樹脂」(日刊工業新聞社)に記載されている方法で得られる各種の樹脂状物も使用することができる。
【0021】
また、尿素化合物としては、尿素の他、ポリメチロール化尿素、その誘導体であるアルコキシ化メチル尿素、ウロン環を有するメチロール化ウロン、アルコキシ化メチルウロン等を挙げることができる。かかる尿素化合物についても、上記メラミン化合物と同じく、上記文献に記載されている各種樹脂状物を使用することができる。
【0022】
本発明においては、熱硬化性架橋成分の架橋反応を十分に進めるため、該反応の触媒作用を有する成分を併用することが好ましく、かくすることにより、熱硬化のための加熱条件をより穏和なものに改善することができる。かかる触媒作用を有する成分としては、熱硬化架橋剤成分が水酸基と反応可能なヒドロキシアルキルアミノ基、アルコキシアルキルアミノ基などのアミノ化合物である場合には、熱酸発生剤、例えば各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、アルキルベンゼンスルホン酸とそのアンモニウム塩、各種金属塩、リン酸や有機酸のリン酸エステル等を挙げることができる。
【0023】
このような熱酸発生剤の使用割合は、あまりに多くなりすぎると硬化性樹脂の保存安定性が低下するので、該硬化性樹脂中のフッ素含有ポリオレフィン100重量部に対して、10重量部以下、特に0.1〜5重量部の範囲とするのが適当である。
【0024】
つぎに、本発明で用いられる光硬化性架橋成分としては、アクリロイル基またはメタアクリロイル基をあわせて少なくとも2個含有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。特に分子中にフッ素を含有する架橋剤成分は、得られる反射防止層の屈折率をさらに下げることができ、反射防止効果がより良好となるので好ましい。なお、フッ素含有の(メタ)アクリレート化合物とフッ素を含有しない(メタ)アクリレート化合物とを2種類以上組合せて用いても構わない。
【0025】
分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、「U−15HA」(商品名、新中村化学社製)等を挙げることができ、これらは一種単独で用いても、二種以上を併用しても構わない。
【0026】
なお、これらのうち、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。
【0027】
さらに、(メタ)アクリロイル基を含有する含フッ素(メタ)アクリレート化合物を、反射防止層の屈折率を低下させるために併用しても構わない。かかる化合物としては、例えばパーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらは単独で用いても、二種以上を併用しても構わない。
【0028】
上記の成分を含有する硬化性樹脂から形成される本発明の反射防止層は、その表面の滑り性を改善することにより、基材フィルムや後述するハードコート層からの界面剥離を抑制することができ、耐擦傷性が向上して耐久性が改善されるので好ましい。反射防止層の表面滑り性を改善するためには、面積0.06mmにおける中心線表面粗さ(Ra)が3〜10nm、特に4〜8nmの範囲とし、かつ10点平均粗さ(Rz)が50〜300nm、特に60〜200nm、さらには70〜100nmの範囲とすることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)が3nm未満の場合や10点平均粗さ(Rz)が50nm未満の場合には、反射防止フィルム表面の汚れを拭き取る際に反射防止層が剥がれやすくなる。一方、中心線平均粗さ(Ra)が10nmを超える場合には反射防止フィルムのヘーズが高くなる傾向にあり、10点平均粗さ(Rz)が300nmを超える場合には、該突起部分が拭き取り時に削れ易くなるため耐擦傷性が低下する傾向にある。
【0029】
このような表面粗さを有する反射防止層を形成するためには、例えば平均粒径が10〜80nmの微粒子を、硬化性樹脂の重量を基準として10〜60重量%添加するとともに、該平均粒子径dと反射防止層の厚みtとが、0.1≦d/t≦0.8の関係を満足していることが好ましい。該平均粒子径が10nm未満の場合には表面が平坦になりすぎ、逆に80nmを超える場合には反射防止フィルムのヘーズが高くなったり、粒子の脱落によって耐擦傷性が低下したりする。また、該微粒子の含有量が10重量%未満には表面が平坦になりすぎ、一方60重量%を超える場合には硬化性樹脂の割合が低下するので反射防止層の硬度が低下しやすくなる。
【0030】
また、d/tが0.1未満の場合には、反射層の膜厚に対する粒子径が小さすぎるため中心線表面粗さが3〜10nmでありながら10点平均粗さが50〜300nmであるといった表面粗さを達成することが難しくなる。一方、d/tが0.8を超える場合には、反射層の厚みと粒子径が同等になるため、粒子が削れやすくなる。
【0031】
微粒子の形状は、体積形状係数(f)が0.1〜π/6、さらに0.2〜π/6、特には0.4〜π/6が好ましい。なお、体積形状係数(f)がπ/6であるとき、微粒子の形状は真球状となる。すなわち、体積形状係数(f)が0.4〜π/6のものは、実質的に球ないしは真球、ラグビーボールのような楕円球を含むものであり、微粒子として好ましい。体積形状係数(f)が0.1未満の粒子、例えば薄片状の粒子では、前記の表面粗さを達成することが難しくなる。
【0032】
また、該微粒子は、中空微粒子、多孔質粒子、コアシェル粒子などいずれの形態であっても構わないが、反射防止層の屈折率を低減させてより良好な反射防止効果を得るという観点から、中空粒子や多孔質粒子が好ましい。
【0033】
このような微粒子は無機酸化物から形成されていることが好ましい。ここで無機酸化物とは、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した化合物を意味する。無機酸化物を構成する金属元素としては元素周期律表I〜VI族から選ばれる1種以上の元素が好ましく、さらに好ましくは元素周期律表I〜V族から選ばれる1種以上の元素である。これらの中でもSi、Al、Ti、Zrからなる一群より選ばれる1種以上の元素である。中でも最も好ましいのはSi元素である。これら無機酸化物微粒子は金属アルコキシドの部分加水分解物もしくは加水分解の縮合によって形成されるものが好ましい。この場合、金属アルコキシドとは上述のような元素から選ばれた金属元素に−ORの形の結合によって有機成分が結合された物質を意味する。このときRはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基が好適である。形成された無機酸化物微粒子は一部に水酸基などの官能基を含んでいてもよい。具体的にはアルコキシ基を含有することが好ましく、該アルコキシ基は無機微粒子と、無機微粒子を改質する目的の有機化合物/無機化合物や、硬化性樹脂中の有機化合物、無機化合物、有機/無機化合物との親和性を向上させたり、2者の間に化学結合を形成させることができる。また、硬化性樹脂を有機溶媒を用いて塗布する場合には、該有機溶媒中での微粒子の分散性を向上させる作用がある。金属アルコキシドはその金属元素の価数に応じて官能基を有するが、3〜4個含有した金属アルコキシドが好ましい。
【0034】
上記無機微粒子の改質を目的とする有機化合物/無機化合物(以下表面改質剤と表記)は、有機成分を主鎖、主鎖の一部、側鎖に持つ物質を意味する。有機成分としてはアルキル系ポリマー、ウレタン結合を有するポリマー、エステル結合を有するポリマー、エーテル結合を有するポリマーがあげられるが、好ましくはアクリル系のポリマーである。あるいは、該表面改質剤は少なくとも1つのポリシロキサン基を有し、かつ該ポリシロキサン基中には1つ以上のアルコキシ基を含有することが好ましい。アルコキシ基の例としては上述と同様の基である。また、かかる表面改質剤はフッ素元素を含有することが、硬化性樹脂中のフッ素含有ポリオレフィンとの親和性が向上するのでさらに好ましい。
【0035】
次に反射防止層の膜厚は、あまりに薄すぎると均一に塗布することが難しくなるだけでなく密着性が低下する場合があり、逆に厚すぎると反射防止効果が低下する場合があるので、50〜300nm、好ましくは50〜250nm、特に好ましくは60〜200nmの範囲とする。また、反射防止層の屈折率は、反射防止層が積層されている下地層の種類(屈折率)にもよるが、通常は1.46以下、好ましくは1.45以下、特に好ましくは1.43以下とする。一方下限は小さいほど反射防止効果は良好となるが、実際上では屈折率の小さい反射防止層を得ることは困難なので、1.35以上、好ましくは1.40以上が実際的である。
【0036】
以上に説明した本発明の反射防止層を形成するには、上記の硬化性樹脂を、好ましくは適当な溶剤に溶解もしくは分散させ、必要に応じて耐傷性を改善するためにハードコート層を設けた基材フィルム上に塗布すればよい。反射防止層を2層以上積層する場合には、塗布・乾燥後のフィルム上に、同様にしてさらに第2、第3の反射防止層を形成してゆけばよい。
【0037】
塗布乾燥された反射防止層は、熱硬化反応および光硬化反応にさせることにより耐擦傷性に優れたものとすることができ、また下地への密着性も向上させることができる。その際、熱硬化性架橋成分を先に熱硬化させておくと、光硬化反応させる際に空気中で光処理しても酸素の影響が小さくなるため、反射防止層の膜厚が薄くても十分に硬化できるようになるので好ましい。なお熱硬化反応の温度は、基材フィルムの外観の観点から120〜160℃の範囲が適当である。
【0038】
次に、耐傷性などの向上の目的で必要に応じて反射防止層と基材フィルムの間に設けてもよいハードコート層は、その構成材料については特に制限されるものではなく、従来公知のものを用いればよい。このような材料としては、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等、任意のものを使用することができ、これらは単独でも二種以上を組合せても構わない。なかでも、光硬化性を有するアクリレート液系樹脂、例えば紫外線硬化性のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのような紫外線硬化性を有する、分子内に(メタ)アクリロイル基を複数以上有するアクリル系樹脂が好ましい。通常これらの樹脂単独ではハードコート層の屈折率は1.45〜1.62の範囲となるが、反射防止層の反射防止効果をより高めるためには該ハードコート層の屈折率をより高めることが好ましく、例えば1.65以上、好ましくは1.70以上とすることが望ましい。そのためには、上記の樹脂中に高屈折率の無機粒子、例えば金属酸化物粒子を配合することが好ましい。屈折率の大きいものであれば無機粒子の種類は限定されないが、例えばケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、セリウムなどの酸化物粒子があげられる。
【0039】
かかるハードコート層の厚さは特に限定する必要はないが、あまりに薄いと反射防止層の密着性が低下する場合があり、一方あまりに厚いと均一な層を形成することが難しくなるので、1〜10μm、特に2〜7μmとするのが好ましい。
【0040】
次に本発明における基材フィルムは、特に制限する必要はなく、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体、さらにはこれらの樹脂をアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基等の官能基で一部変性した樹脂などからなるフィルムが、必要に応じて任意に用いられる。
【0041】
これらの基材フィルムのうち、機械的特性や透明性の点からポリエステルフィルムが特に好ましい。その際、基材フィルムの厚みについても特に制限する必要はなく用途に応じて適宜設定すればよいが、例えばディスプレイなどに貼り付けて使用する場合には200μm以下が好ましい。200μmを超える場合には、反射防止フィルムの剛性が強くなりすぎてディスプレイに貼り付ける際の取り扱い性が低下する。
【0042】
かかるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分とからなる結晶性の線状飽和ポリエステルが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等をあげることができる。また、これらの一部が他成分に置換された共重合ポリエステルであっても、ポリアルキレングリコールまたは他の樹脂との混合物であってもよい。なお、共重合ポリエステルの場合では、共重合の割合はフィルムの耐熱変形性を損なわない範囲、例えば10モル%以下、特に5モル%以下の少量とするのが好ましい。
【0043】
好ましく用いられる共重合成分としては、上記ポリエステルの主たる酸成分以外である、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、シュウ酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸類、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類を挙げることができる。
【0044】
また、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸等のような3官能以上の成分を極少量(実質的に線状のポリマーが得られる範囲)で共重合したものであってもよい。
【0045】
さらに、上記ポリエステルは、その耐加水分解性を向上させるために例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコール等の一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封止したものであってもよい。
【0046】
このポリエステルをフィルムとなすには、逐次2軸延伸法や同時2軸延伸法等の公知の方法を採用すればよい。例えば、逐次2軸延伸法では、上記ポリエステルを乾燥後溶融し、ダイ(例えば、T−ダイ、I−ダイ等)から冷却ドラムに押出し、急冷して未延伸フィルムを得る。続いて該未延伸フィルムを縦方向に2〜6倍の範囲で延伸し、ついで横方向に2〜5倍の範囲で延伸を行い。さらに160〜260℃で5秒〜1分間熱固定すればよい。なお、この熱固定は制限収縮下に行ってもよい。また、溶融押出しの際に静電密着法を採用することが好ましい。
【0047】
また本発明にかかる基材フィルムは、例えば微粒子を添加して表面粗さ(Ra)を5〜400nmとすることにより耐擦傷性が向上して好ましい。また透明性としては、波長550nmにおける光線透過率が30%以上であることが好ましい。好ましく用いられる微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機微粒子、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、架橋シリコーン樹脂等の有機微粒子を挙げることができる。Raが5nm未満の場合には、反射防止フィルムの塗工されていない面の耐擦傷性が不十分となり、積層状態で搬送する際に擦り傷が入りやすくなる。一方Raが400nmを超える場合には、微粒子の添加量が過大となって透明性が著しく低下するため、反射防止フィルムの用途として不適当になる場合が多くなる。
【0048】
上記微粒子以外にも、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を配合することができる。帯電防止剤としては、例えば第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜3級アミノ基等のカチオン性を有する各種カチオン性帯電防止剤、スルホン酸塩基、硝酸エステル塩基、リン酸エステル塩基等のアニオン性を有するアニオン性帯電防止剤、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性帯電防止剤、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性帯電防止剤等の各種界面活性剤型帯電防止剤、さらにはこれらを高分子化したものが好ましく使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性ポリマーやスズ、アンチモン等の酸化物系フィラーを分散したものも好ましく使用できる。
【0049】
さらには、帯電防止層として銀、スズ等の金属層を気相成長法や真空蒸着法、スパッター法またはプラズマCVD法等で基材フィルム表面に設けたものも好ましく使用できる。
【0050】
次に基材フィルムがポリエステルフィルムである場合を例として、反射防止層を形成する方法について簡単に説明する。前述の反射防止層を形成する硬化性樹脂を含有する塗液を、ポリエステルフィルムの延伸熱固定が完了する前の製膜中または、延伸熱固定が完了した製膜後に所定膜厚となる用に塗布すればよい。なかでも、延伸熱固定が完了した後に、別途所定膜厚になるよう塗布するオフライン塗装が好ましい。ポリエステルフィルム上への塗布方法は特に限定する必要はなく、任意の公知の方法を採用することでき、例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコーター法、ディップコーター法、バーコーター法等が好ましく挙げられる。
【0051】
オフライン塗装の場合の乾燥硬化条件は、例えば温度120〜160℃で10〜120秒間乾燥・熱硬化させ、次いで紫外線照射して光架橋させるのが好ましい。なお、乾燥ゾーンを2ゾーン以上設けて、温度60〜120℃で予備乾燥させた後に温度120〜160℃で乾燥・熱硬化させることが、塗布外観の観点から好ましい。
【0052】
予めハードコート層を設ける場合には、該ハードコート層形成する成分を含む塗液をポリエステルフィルムに塗布し、60〜100℃で5秒〜2分間予備乾燥させる。しかる後に、該ハードコート層を形成する成分に応じた条件で硬化処理、例えば紫外線照射を行う。
【0053】
上記の塗液をポリエステルフィルムに塗布する際には、必要に応じて、密着性、塗工性を向上させるための予備処理として、ポリエステルフィルム表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施すか、または、製膜中または製膜後に有機樹脂系や無機樹脂系の塗料を塗布して塗膜密着層を形成する化学的表面処理を施すことが好ましい。塗膜密着層を形成する場合には、その上に塗工されるハードコート層もしくは反射防止層との光干渉条件の観点から、塗膜密着層の屈折率および膜厚を注意して設定する必要がある。
【実施例】
【0054】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
【0055】
(平均粒径)
粒子径は、光散乱法を用いて測定した。すなわち、Nicomp Instruments Inc.社製のNICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZERにより求められる全粒子の50重量%の点にある粒子の「等価球直径」をもって表示する。
【0056】
(中心面平均粗さ、10点平均粗さ)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率10倍、測定面積283μm×213μm(=0.06mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetro Proにより中心面平均粗さ(Ra)と10点平均粗さ(Rz)を求める。
【0057】
(反射率)
紫外・可視分光光度計(島津製作所製、製品名UV−3101PC)を用い、入射方向から5度の方向の絶対反射率を測定した。
【0058】
(膜厚、屈折率)
反射防止層の膜厚および屈折率は、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」によって300〜800nmの反射率を測定し、代表的な屈折率の波長分散の近似値としてn−k Cauchyの分散式を引用し、スペクトルの実測値とフィッティングさせることにより膜厚と屈折率を求めた。
基材フィルムおよびハードコート層の屈折率はアッベの屈折計によって測定し、ハードコート層の膜厚は打点式の膜厚計にて測定した。
【0059】
(耐擦傷性)
10円玉にスチールウール#0000番を均一に貼り付け、その上に荷重150gをかけて10往復こすり、傷の付き方を目視にて観察した。判定は以下のとおりに行った。
5.0:傷がつかない
4.5:5mmより長い傷がつかない。かつ深さが100nmより低い。面剥れがない。
4.0:5mm〜10mmの傷がある。かつ深さが100nm未満。面剥れがない。
3.5:5mm〜10mmの傷がある。かつ深さが100nm以上のものがある。面剥れがない。
3.0:10mmより長い傷がある。かつ深さが100nm以上のものがある。面剥れがない。
2.5:10mmより長い傷がある。かつ深さが100nm以上のものがある。長さ2mm以上の面剥れがない。
2.0:10mmより長い傷がある。かつ深さが100nm以上のものがある。長さ2mm以上の面剥れがある。
1.5:10mmより長い傷がある。かつ深さが100nm以上のものがある。1/3の面積で面剥れがある。
1.0:10mmより長い傷がある。かつ深さが100nm以上のものがある。80%以上の面積で面剥れがある。
【0060】
[実施例1]
<反射防止層用樹脂の調整>
溶剤の酢酸エチル500gとヘキサフロロプロピレン(HFP)120g、パーフロロ(プロピルビニルエーテル)(FPVE)53.2g、エチルビニルエーテル(EVE)48.7g、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)26.4g、重合開始剤の過酸化ラウロイル(LPO)1.0gを仕込み、60℃で20時間オートクレーブ中で反応させて水酸基を含むフッ素含有ポリオレフィン溶液を得た。得られた溶液からメタノールにてポリマーを析出させ、真空乾燥によりフッ素含有ポリオレフィンを得た。
【0061】
溶媒としてのメチルエチルケトン(MEK)を3060g、上記のポリオレフィンを250g、熱硬化性架橋成分としてメトキシ化メチルメラミン「サイメル303」(三井サイテック株式会社製)を30g、光硬化性架橋成分(紫外線硬化性)としてジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA、サートマー社製)を60g使用した。これらとともに、光重合開始剤として2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を2g、熱酸触媒としてp−トルエンスルホン酸を2g、攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、温度23℃にて1時間攪拌して均一な硬化性樹脂溶液を得た。この溶液は、固形分濃度が10重量%で、粘度は30cps以下であった。
なお、用いたフッ素含有ポリオレフィン樹脂について、アリザリンコンプレクソン法によりフッ素含有量を測定した。
【0062】
<ハードコート層用樹脂の調整>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート28重量部、トルエンジルコニアゾル(数平均粒子径0.01μm、ジルコニア濃度40重量%)170重量部、光重合開始剤として2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を4重量部、溶剤としてMEKを48重量部添加して23℃で1時間攪拌して均一なハードコート層用溶液を得た。
【0063】
<反射防止フィルムの作成>
基材フィルムとしてPETフィルム(帝人デュポンフィルム製、商品名O3PF8W−100)を使用し、上記ハードコート層用溶液をマイヤーバーにて基材フィルム上に塗工し、温度80℃で溶媒を乾燥させた後、低圧水銀ランプ(日本電池製 CS−30)にて紫外線を照射(460mJ/cm×2回)し、厚さ5μmのハードコート層を形成した。得られたハードコート層の屈折率は1.70であった。
【0064】
このハードコート層の上に、反射防止層として上記で調整した硬化性樹脂溶液をマイヤーバーで乾燥後の厚みが100nmになるように塗布し、145℃で2分間熱硬化処理を行い、ついで空気雰囲気下低圧水銀ランプ(日本電池製 CS−30)にて紫外線を照射(460mJ/cm×2回)し、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの評価結果を表1に示す。
【0065】
[実施例2〜3、比較例1〜2]
実施例1において、表1に示すように熱硬化性架橋成分と光硬化性架橋成分の比率を変更する以外は実施例1と同様にして反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの評価結果を表1にあわせて示す。
【0066】
[比較例3]
実施例1において光硬化性硬化成分を用いず、かつ反射防止層形成時に紫外線照射処理をしない以外は実施例1と同様にして反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
[実施例4]
<反射防止層用樹脂の調整>
溶媒としてMEKを3447g、実施例1で用いたフッ素含有ポリオレフィンを250g、熱硬化性架橋成分としてメトキシ化メチルメラミン「サイメル303」(三井サイテック株式会社製)を30g、光硬化性架橋成分としてジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA、サートマー社製)を60g使用した。これらとともに光重合開始剤として2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を2g、熱酸触媒としてp−トルエンスルホン酸を2g、平均粒径40nm(体積形状=0.4)のシリカゾルを129g(微粒子の固形分として40%)、攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、23℃にて1時間攪拌して均一な硬化性樹脂溶液Bを得た。この溶液は、固形分濃度が10重量%で、粘度は30cps以下であった。
【0069】
<反射防止フィルムの作成>
基材フィルムとしてPETフィルム(帝人デュポンフィルム製、商品名O3PF8W−100)を使用し、実施例1と同様にして厚さ5μmのハードコート層を形成し、次いでこのハードコート層の上に、反射防止層として上記で調整した硬化性樹脂溶液Bをマイヤーバーで乾燥後の厚みが100nmになるように塗布し、145℃で2分間熱硬化処理を行い、ついで空気雰囲気下低圧水銀ランプにて紫外線を照射して反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの評価結果を表2に示す。
【0070】
[実施例5〜8、比較例4〜9]
実施例4において、表2に示すように熱硬化性架橋成分と光硬化性架橋成分の比率または微粒子の粒径および添加量を変更する以外は実施例4と同様にして反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの評価結果を表2にあわせて示す。
【0071】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0072】
以上に説明した本発明の反射防止フィルムは、基材フィルム(ハードコート層が設けられている場合には該コート層)との密着性に優れ、また高い表面硬度を有していて耐擦傷性に優れ、しかも反射防止特性も良好なので、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどの表面に反射防止フィルムとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、少なくとも1層の反射防止層が積層されてなる反射防止フィルムにおいて、該反射防止層が、フッ素含有ポリオレフィンと架橋剤成分とを構成成分として含む硬化性樹脂から形成され、かつ該架橋剤成分が光硬化性架橋成分50〜90重量%と熱硬化性架橋成分10〜50重量%とからなることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
硬化性樹脂が、フッ素含有ポリオレフィン100重量部に対して、架橋剤成分を10〜50重量部含む請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
熱硬化性架橋成分がメラミン成分を含む請求項1または2記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
光硬化性架橋成分が、分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基をあわせて2個以上有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
反射防止層の中心線表面粗さが3〜10nm、10点平均粗さが50〜300nmである請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
硬化性樹脂が平均粒径10〜80nmの微粒子を10〜60重量%含有し、かつ該平均粒子径dと反射防止層厚みtとが下記式を満足する請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
0.1≦d/t≦0.8
【請求項7】
反射防止層の屈折率が1.45以下である請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
反射防止層が、温度120〜160℃で熱硬化させた後に光硬化させたものである請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
反射防止層と基材フィルムの間にハードコート層を有する請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルム。

【公開番号】特開2007−183402(P2007−183402A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1340(P2006−1340)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】