説明

反射防止フィルム

【課題】反射干渉ムラを少なくし、外観特性に優れると共に反射防止性能を高く得ることができる反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルム1の表面に表面側易接着層2及びハードコート層3をこの順に設けると共に、前記ポリエステルフィルム1の裏面に裏面側易接着層4を設けて形成された反射防止フィルムに関する。ハードコート層3の屈折率が1.58〜1.85である。裏面側易接着層4の光学膜厚が110〜170nmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ(CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等)の表示画面表面、窓、ショーウィンドウ等住建部材表面に適用される反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム、特に、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの2軸延伸フィルムは、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性等を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、ラミネート用フィルム、ディスプレイなどの表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。特に、ディスプレイ用途に関しては液晶表示装置の部材であるプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや、テレビの反射防止フィルムのベースフィルム、プラズマテレビの前面光学フィルターに用いられる反射防止フィルム、近赤外線カットフィルム、電磁波シールドフィルムのベースフィルム等の用途がある。
【0003】
このような反射防止フィルムなどの光学フィルムに用いられるベースフィルムは、高透過性とともに、コート層との易接着性が求められる。すなわち、ベースフィルムには、光学フィルムとしての性能を確保したり機能を高めたりするために、例えば、表面保護のために設けられるハードコート層を形成するためのハードコート層材料、粘着材料、反射防止処理材料及びその他コーティング材料が適用されるが、このようなコーティング材料に対する優れた易接着性が要求される場合がある。
【0004】
しかしながら、通常のポリエステルフィルムは結晶性が高く、一般的に上記コーティング材料などとの密着性を確保するのは困難であった。従って、例えば、ハードコート層との易接着性を確保するためには、ポリエステルフィルムの表面へ易接着層を塗設する方法が、コロナ処理、フレーム処理等気相表面処理方法、プライマー等塗布による化学的表面処理方法等が用いられている。特に、ディスプレイ用途に用いられるPETフィルムは高い透明性及び密着性が要求されるため、ナノメートルオーダーの膜厚の易接着層が塗設されたタイプを用いるのが一般的であった(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このような易接着層が塗設されたポリエステルフィルムを用いた場合、前述の通り高い透明性及びハードコート層との密着性を確保することができ、また、ポリエステルフィルムの耐ブロッキング性を向上させることができる。
【0006】
しかしながら、反射防止フィルム等の光学フィルムに用いる場合、易接着層とポリエステルフィルムの間、また易接着層とハードコートフィルムの間の屈折率ミスマッチのため、界面反射が増大し、反射率増大の不具合を生じていた。加えて、ハードコート層と反対側に位置する易接着層についても同様に、易接着層とポリエステルフィルムとの間、易接着層と構成層(粘着層など)との間での界面反射が増大し、反射率増大の不具合を生じていた。
【特許文献1】特開平9−220791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、反射干渉ムラを少なくし、外観特性に優れると共に反射防止性能を高く得ることができる反射防止フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る反射防止フィルムは、ポリエステルフィルム1の表面に表面側易接着層2及びハードコート層3をこの順に設けると共に、前記ポリエステルフィルム1の裏面に裏面側易接着層4を設けて形成された反射防止フィルムにおいて、ハードコート層3の屈折率が1.58〜1.85であると共に、裏面側易接着層4の光学膜厚が110〜170nmであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、裏面側易接着層4の屈折率が1.45〜1.65であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、ポリエステルフィルム1の反射率が4%以上であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、表面側易接着層2の膜厚が5〜80nmであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、表面側易接着層2の屈折率が1.58〜1.75であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が高屈折率粒子としてハードコート層3に含有されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか1項において、ハードコート層3が帯電防止性を有していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか1項において、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が導電性ナノ粒子としてハードコート層3に含有されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれか1項において、ハードコート層3のシート抵抗が1015Ω/□以下であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至9のいずれか1項において、ハードコート層3の表面に屈折率が1.30〜1.45の低屈折率層5が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項11に係る発明は、請求項10において、低屈折率層5の表面に防汚層6が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る反射防止フィルムによれば、反射干渉ムラを少なくし、外観特性に優れると共に反射防止性能を高く得ることができるものである。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、界面反射を低減し、反射防止性能をさらに高く得ることができるものである。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、反射干渉ムラを少なくし、外観特性をさらに向上させると共に、反射防止性能をさらに高く得ることができるものである。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、ポリエステルフィルムとハードコート層の密着性を確保しつつ、反射率の増大及び干渉ムラの悪化を防止することができるものである。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、表面側易接着層の屈折率とポリエステルフィルム及びハードコート層の屈折率との差が小さくなることによって、反射防止フィルムとしての反射率の増大及び干渉ムラの悪化を防止することができるものである。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、ハードコート層の屈折率を増大させることができ、ハードコート層による反射干渉ムラを少なくすることができ、外観特性に優れると共に、ハードコート層の表面に低屈折率層を設ける場合に反射防止性能を高く得ることができるものである。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、ハードコート層が静電気等により帯電するのを防止し、埃を付着させにくくすることができるものである。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、導電性ナノ粒子によりハードコート層に導電性を付与することができ、帯電防止性を有するハードコート層を容易に設けることができるものである。
【0027】
請求項9に係る発明によれば、ハードコート層の帯電防止性を向上させることができるものである。
【0028】
請求項10に係る発明によれば、ハードコート層よりも屈折率の小さい低屈折率層で光の反射をさらに低減することができ、反射防止性能をさらに高く得ることができるものである。
【0029】
請求項11に係る発明によれば、指紋付着などによる汚染を少なくし、かつその除去性を高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1は本発明に係る反射防止フィルムの一例を示す断面図である。図1(a)に示す反射防止フィルムは、透明基材としてポリエステルフィルム1が用いられる。ポリエステルフィルム1の表裏両面にはそれぞれ表面側易接着層2、裏面側易接着層4が設けられている。表面側易接着層2の表面にはさらにハードコート層3が設けられている。図1(b)は、上記反射防止フィルムを粘着層などの構成層7に貼り付けた状態を示す断面図である。
【0032】
図2は本発明に係る反射防止フィルムの他の一例を示す断面図である。図2(a)に示す反射防止フィルムは、ハードコート層3の表面に低屈折率層5が設けられている。図2(b)は、最表面に低屈折率層5が設けられた反射防止フィルムを粘着層などの構成層7に貼り付けた状態を示す断面図である。
【0033】
図3は本発明に係る反射防止フィルムの他の一例を示す断面図である。図3(a)に示す反射防止フィルムは、低屈折率層5の表面に防汚層6が設けられている。図3(b)は、最表面に防汚層6が設けられた反射防止フィルムを粘着層などの構成層7に貼り付けた状態を示す断面図である。
【0034】
本発明で用いるポリエステルフィルム1は、ポリエステルとして、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール成分とから構成される芳香族ポリエステルが好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートが好ましい。また、上記に例示した複数の成分等の共重合ポリエステルであってもよい。
【0035】
上記ポリエステルフィルム1には、製膜時のフィルムの巻き取り性や、ハードコート層3や粘着剤等を塗設する際のフィルムの搬送性等を良くするため、必要に応じて、滑剤としての有機または無機の微粒子を含有させることができる。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂微粒子、架橋ポリスチレン樹脂微粒子、尿素樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、架橋シリコーン樹脂微粒子等が例示される。また、微粒子以外にも着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、他の樹脂等も透明性を損なわない範囲で任意に含有させることができる。
【0036】
本発明におけるポリエステルフィルム1はヘイズが3%以下、好ましくは1.5%以下であることが好ましい。ヘイズが3%を超えると各種ディスプレイ用途において視認性を損なうなど光学用途として適さないことがある。この観点において、ヘイズが3%以下の高い透明性を保持しながら、ロール状態での耐ブロッキング性、易滑性、ハードコート層3との密着性を向上させるために、ナノメートルオーダーの表面側易接着層2がコーティングされたポリエステルフィルム1が従来から一般的に用いられる。しかしながら、このような表面側易接着層2がコーティングされたポリエステルフィルム1を用いた場合、表面側易接着層2の屈折率はポリエステルフィルム1の屈折率と異なるのが一般的である。
【0037】
まず裏面側易接着層4については、ポリエステルフィルム1との界面、またその反対側に粘着層や他のアクリル系樹脂膜などの構成層7を設けた場合、その構成層7との界面、合計2種類の界面反射が存在し、反射率を増大させる原因となっている。この課題を解決するためには、裏面側易接着層4の屈折率がポリエステルフィルム1の屈折率と構成層7の屈折率との中間の値を取ることが望ましく、かつ、その光学膜厚が140nmのときに最も反射率を低減することが可能である。具体的には、裏面側易接着層の屈折率は1.45〜1.65であることが好ましい。これにより、界面反射を低減し、反射防止性能をさらに高く得ることができるものである。通常、構成層7には粘着層や他のアクリル系樹脂膜(屈折率n=1.45〜1.65)を設けることが多く、例えば、粘着層(n=1.54)を設けた場合、ポリエステルフィルム1がPETフィルム(n=1.69)のとき、裏面側易接着層4の屈折率が1.62、光学膜厚が140nm(実膜厚86nm)のときに最も反射率を低減することができる。なお、以下において単に「膜厚」といえば、実膜厚(物理膜厚)を意味するものとする。
【0038】
次に表面側易接着層2については、ハードコート層3との屈折率の差が大きい場合、表面側易接着層2及びハードコート層3の膜厚ムラ等の原因により、外観干渉ムラを発生する等の課題があった。ポリエステルフィルム1の表面に表面側易接着層2を設け、さらにこの表面側易接着層2の表面に屈折率が1.58〜1.85のハードコート層3を設けると、光学的にはハードコート層3/表面側易接着層2及び表面側易接着層2/ポリエステルフィルム1の界面で反射を生じ、反射防止フィルムの反射率特性及び干渉ムラ特性を悪化させるおそれがある。この反射を抑制するには表面側易接着層2による光学的な悪影響を除外する必要がある。表面側易接着層2が設けられたポリエステルフィルム1の反射率は、使用する表面側易接着層2の屈折率がポリエステルフィルム1の屈折率(PETフィルムの場合、n=1.69)よりも小さくなるにつれ、かつ表面側易接着層2の膜厚が100nmに近づく程小さくなる。逆に表面側易接着層2の光学的悪影響を除外した場合、反射率はポリエステルフィルム1単体の6.5%に近づいていく。本発明ではこのような課題に鑑みて、使用するポリエステルフィルム1として、ハードコート層3と接する側の表面側易接着層2が設けられたポリエステルフィルムの反射率が4%以上(上限は9%)であるフィルムを使用し、表面側易接着層2の悪影響を除外したことを特徴とする。このように、ポリエステルフィルム1の反射率が4%以上であると、反射干渉ムラを少なくし、外観特性をさらに向上させると共に、反射防止性能をさらに高く得ることができるものである。
【0039】
表面側易接着層2が設けられたポリエステルフィルム1の反射率を上げるためには、表面側易接着層2の膜厚を5〜80nmに制御することが好ましい。これにより、ポリエステルフィルム1とハードコート層3の密着性を確保しつつ、反射率の増大及び干渉ムラの悪化を防止することができるものである。しかし、表面側易接着層2の膜厚が5nm未満であると、表面側易接着層2を形成する材料でポリエステルフィルム1の表面全体を均質に被覆することができないおそれがあり、ポリエステルフィルム1とハードコート層3との間で安定した密着性を確保することが困難となるおそれがある。逆に表面側易接着層2の膜厚が80nmを超えると、表面側易接着層2での反射が大きくなり、反射防止フィルムとしての反射率の増大、干渉ムラの悪化等の課題が生じるおそれがある。また表面側易接着層2が設けられたポリエステルフィルム1の反射率を上げるためには、表面側易接着層2の屈折率を1.58〜1.75にすることが好ましい。これにより、表面側易接着層2の屈折率とポリエステルフィルム1及びハードコート層3の屈折率との差が小さくなることによって、反射防止フィルムとしての反射率の増大及び干渉ムラの悪化を防止することができるものである。しかし、表面側易接着層2の屈折率が1.58未満であったり又は1.75を超えたりすると、ハードコート層3の屈折率とポリエステルフィルム1の屈折率との差が大きくなり、反射防止フィルムとしての反射率の増大、干渉ムラの悪化等の課題を生じるおそれがある。
【0040】
また、本発明で用いるポリエステルフィルム1の厚みは、特に限定されるものではないが、50〜200μmが好ましい。
【0041】
本発明において、ハードコート層3は、透明プラスチック基材であるポリエステルフィルム1よりも硬度の高い被膜であって、ポリエステルフィルム1の表面の硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を防止し、また、ポリエステルフィルム1の屈曲による低屈折率層5(後述)のクラック発生を抑制して反射防止フィルムの機械的強度を改善するものである。
【0042】
本発明において、ハードコート層3の鉛筆硬度はH以上、より好ましくは2H以上にするのが好ましいが、ハードコート層3の硬度を向上させるためには、反応性硬化型樹脂、すなわち、熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一方をハードコート材料(ハードコート層3を形成するための組成物)として用いてハードコート層3を形成するのが好ましい。
【0043】
前記熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を使用することができ、これらの熱硬化性樹脂に必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤を加えて使用することもできる。熱硬化性樹脂を用いてハードコート層3を形成する場合は、表面側易接着層2を介して、熱硬化性樹脂をポリエステルフィルム1の表面に塗布した後、加熱により乾燥硬化させるようにするのが好ましい。
【0044】
また、前記電離放射線硬化型樹脂としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマー、及び反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びに多官能モノマー、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものを使用することができる。さらに、上記の電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂とするには、この中に光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などを例示することができる。また、光重合開始剤に加えて光増感剤を用いてもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどを例示することができる。光重合反応する紫外線硬化型樹脂を用いてハードコート層3を形成する場合は、表面側易接着層2を介して、紫外線硬化型樹脂をポリエステルフィルム1の表面に塗布し乾燥した後、紫外線照射により硬化させるようにするのが好ましい。
【0045】
ハードコート層3はポリエステルフィルム1と屈折率が近似していることが好ましい。反射率低減の理由から実用的には1.58〜1.85が好ましい。また、ハードコート層3の膜厚は1〜2μm以上あれば十分な強度が得られる。
【0046】
以上の成分からなるハードコート層3の屈折率は通常1.49〜1.52程度であるが、本発明ではハードコート層3に高屈折率粒子を含有させて屈折率を増大させて反射防止性能を高めるために、ハードコート層3の材料中に高屈折率粒子、すなわち高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することができる。本発明において高屈折率粒子とは、屈折率が1.6〜2.5で粒径が0.5〜200nmのものをいう。ポリエステルフィルム1を基材(ベース)とする反射防止フィルムにおいて、低反射率化のためのハードコート層3の好ましい屈折率は1.58〜1.85であり、本発明ではこの屈折率を有するハードコート層3を形成するために、高屈折率粒子の配合量をハードコート層3に対して5〜70体積%となるように調整することができる。前記高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子としては、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる一つあるいは二つ以上の酸化物の粒子を用いることができ、具体的には、例えば、ZnO(屈折率1.90)、TiO(屈折率2.3〜2.7)、CeO(屈折率1.95)、Sb(屈折率1.71)、SnO、ITO(屈折率1.95)、Y(屈折率1.87)、La(屈折率1.95)、ZrO(屈折率2.05)、Al(屈折率1.63)等の微粉末が挙げられる。このような酸化物を高屈折率粒子としてハードコート層3に含有させることによって、ハードコート層3の屈折率を増大させることができ、ハードコート層3による反射干渉ムラを少なくすることができ、外観特性に優れると共に、ハードコート層3の表面に低屈折率層5を設ける場合に反射防止性能を高く得ることができるものである。
【0047】
さらに、ハードコート層3が帯電防止性を有しているのが好ましく、これにより、ハードコート層3が静電気等により帯電するのを防止し、反射防止フィルムに埃を付着させにくくすることができるものである。ハードコート層3に帯電防止性を付与するためにはハードコート層3に導電性ナノ粒子を含有させればよく、これはハードコート層3の材料中に導電性ナノ粒子、すなわち導電性の金属や金属酸化物で粒径が0.5〜200nmの超微粒子を添加することにより可能となる。導電性ナノ粒子としては、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる一つあるいは二つ以上の酸化物の粒子を用いるのが好ましく、具体的には、酸化インジウム(ITO)、酸化錫(SnO)、アンチモン/錫酸化物(ATO)、鉛/チタン酸化物(PTO)、アンチモン酸化物(Sb)の超微粒子を用いるのが好ましい。このような酸化物を導電性ナノ粒子としてハードコート層3に含有させることによって、ハードコート層3に導電性を付与することができ、帯電防止性を有するハードコート層3を容易に設けることができるものである。
【0048】
さらに、前記高屈折率粒子と導電性ナノ粒子を凝集なく併用することにより、高屈折率かつ帯電防止性に優れたハードコート層3を得ることが可能となる。具体的には、ハードコート層3のシート抵抗は1015Ω/□以下であることが好ましく、これにより、ハードコート層3の帯電防止性を向上させることができるものである。なお、ハードコート層3のシート抵抗は小さいほど帯電防止性が向上するので、特に、下限は設定されないが、シート抵抗を小さくするのには限界があるために、ハードコート層3のシート抵抗は実質的に10Ω/□以上となる。また、ハードコート層3のシート抵抗値は導電性ナノ粒子の配合量等によって調整することができ、例えば、導電性ナノ粒子の配合量をハードコート層3の全量に対して5〜70質量%となるように調整することができる。
【0049】
また、図2に示すように、ハードコート層3の表面に低屈折率層5を形成するための低屈折率コーティング剤を塗工するなどして低屈折率層5を形成する前に、ハードコート層3の表面処理を行うことが好ましい。この表面処理を行うことによりハードコート層3と低屈折率層5とのぬれ性、密着性を向上させることが可能となる。表面処理法としてはポリエステルフィルム1に施す表面改質処理と同様であって、プラズマ放電処理、コロナ処理、フレーム処理のような物理的表面処理とカップリング剤、酸、アルカリによる化学的表面処理が用いられる。
【0050】
本発明において、低屈折率層5はポリエステルフィルム1及びハードコート層3よりも屈折率の小さい層であって、ハードコート層3の表面に低屈折率コーティング剤を塗工するなどして形成することができる。この低屈折率層5は、屈折率が1.30〜1.45であることが好ましく、1.30〜1.40であることがさらに好ましい。これにより、ハードコート層3よりも屈折率の小さい低屈折率層5で光の反射をさらに低減することができ、反射防止性能をさらに高く得ることができるものである。低屈折率層5の厚みdは低屈折率層5の屈折率をn、入射する光の波長をλとすると、nd=λ/4であることが好ましい。具体的には、低屈折率層5の厚みは50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。
【0051】
低屈折率コーティング剤は、バインダー材料自身が低屈折率である場合と、バインダー材料に低屈折率の微粒子を含有して調製する場合がある。バインダー材料はシリコンアルコキシド系であっても、飽和炭化水素、ポリエーテルを主鎖として有するポリマー(UV硬化型樹脂、熱硬化型樹脂)であっても良い。その中にフッ素原子を含む単位を含有しても良い。
【0052】
シリコンアルコキシドの好ましい例は、RmSi(OR´)nで表される化合物であり、ここでR、R´は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは4であり、m及びnはそれぞれ整数である。さらに具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等及びそれらを基本骨格とするオリゴマーやポリマー、また少なくとも2種類以上の共重合体が挙げられる。
【0053】
上記珪素アルコキシドの加水分解は、上記珪素アルコキシドを適当な溶媒中に溶解して行う。使用する溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルコール、ケトン、エステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、あるいはこれらの混合物が挙げられる。上記アルコキシドは上記溶媒中に、該アルコキシドが100%加水分解及び縮合したとして生じるSiO換算で0.1%以上、好ましくは0.1〜10質量%になるように溶解する。SiOゾルの濃度が0.1質量%未満であると形成されるゾル膜が所望の特性が十分に発揮できず、一方、10質量%を越えると透明均質膜の形成が困難となる。また、本発明においては、以上の固形分以内であるならば、有機物や無機物バインダーを併用することも可能である。
【0054】
この溶液に加水分解に必要な量以上の水を加え、15〜35℃、好ましくは22〜28℃の温度で、0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間撹拌を行う。上記加水分解においては、触媒を用いることが好ましく、これらの触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸又は酢酸等の酸が好ましく、これらの酸を約0.001〜20.0N、好ましくは0.005〜5.0N程度の水溶液として加え、該水溶液中の水分を加水分解用の水分とすることができる。以上のようにして得られたSiOゾルは、無色透明な液体であり、ポットライフが約1ケ月の安定な溶液であり、基材に対して濡れ性が良く、塗布適性に優れている。
【0055】
本発明においては、上記のSiOゾルに反応性有機珪素化合物又はその部分加水分解物を添加する。該反応性有機珪素化合物としては、前記の反応性有機珪素化合物の他に、熱又は電離放射線によって反応架橋する複数の基、例えば、重合性二重結合基を有する分子量5000以下の有機珪素化合物が好ましい材料として挙げられる。このような反応性有機珪素化合物は、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、あるいはこれらの化合物を反応させたビニル官能性ポリシラン、又はビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。具体的な化合物を例示すれば下記の通りである。
【0056】
【化1】

【0057】
飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダー材料のポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例には、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが含まれる。ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。
【0058】
二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダー材料のポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果、反応性を示すものであってもよい。
【0059】
上記バインダー材料のポリマーの重合反応および架橋反応に使用する重合開始剤は、熱重合開始剤よりも光重合開始剤の方が好ましい。光重合開始剤の例には、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0060】
バインダー材料は反応性有機珪素化合物であることが好ましい。低屈折率微粒子に中空シリカを用いた場合、反応性有機珪素化合物をバインダー材料に用いれば、中空シリカ粒子とのぬれ性、分散性が良好である。反応性有機珪素化合物としては、熱又は電離放射線によって反応架橋する複数の基、例えば、重合性二重結合基を有する分子量5000以下の有機珪素化合物が好ましい材料として挙げられる。このような反応性有機珪素化合物は、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、あるいはこれらの化合物を反応させたビニル官能性ポリシラン、又はビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。具体的な化合物を例示すれば下記の通りである。
【0061】
【化2】

【0062】
その他の化合物しては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物が挙げられる。
【0063】
さらに低屈折率層5に防汚性を付与するために、バインダー材料の一部を撥水、撥油性材料に置き換えても良い。撥水、撥油性材料は一般にワックス系の材料等が挙げられるが、特に、含フッ素化合物を含有することが望ましい。フッ素化合物を含有したときの効果は、低屈折率層5の表面が汚れから保護され、また付着した汚れ、指紋等の除去性に優れる。さらに表面の摩擦抵抗を低減でき、耐摩耗性向上の効果も期待できる。
【0064】
低屈折率層5の屈折率を低減するには、上記バインダー材料に低屈折率微粒子(屈折率:1.20〜1.45)を添加することにより実現できる。低屈折率微粒子の平均粒子径は0.5〜200nmであることが好ましい。なお、低屈折率微粒子の平均粒子径は、液温度25℃の低屈折率微粒子の分散液について、例えば、大塚電子(株)製濃厚系粒径アナライザー「FPAR1000」を用いて測定することができる。そして低屈折率微粒子の平均粒子径が200nmよりも大きくなると、得られる低屈折率層5においてレイリー散乱によって光が乱反射され、低屈折率層5が白っぽく見え、そのヘイズ値が増大することがある。逆に低屈折率微粒子の平均粒子径が0.5nmよりも小さくなると、低屈折率微粒子の分散性が低下し、低屈折率コーティング剤の液中で凝集を生じてしまう。また、低屈折率微粒子の添加量は低屈折率層5の全量に対して20〜99体積%であることが好ましい。20体積%未満であると、低屈折率化の効果が少なく、微粒子の添加量が多いほど低屈折率化の効果が大きい。
【0065】
本発明に係る反射防止フィルムをディスプレイ等の最表面に配置して使用する場合、実使用に耐えうる表面硬度、耐摩耗性が必要となる。このような場合は低屈折率層5として高い膜硬度が必要となる。しかしながら一般的に粒子充填複合材料は粒径の等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填したときの、微粒子の最大体積分率は、Horsfieldの充填モデルによると、0.74となり、幾何学的な関係から、必然的に24体積%粒子間間隙が生じてしまう。従って、理想的には低屈折率層5に24体積%のバインダー材料を添加したとき(76体積%の低屈折率微粒子)、低屈折率微粒子間の空隙は全てバインダー材料で置換され、高充填かつ非常に緻密な低屈折率層5の薄膜が得られることになる。しかしながら実際には、微粒子は粒度分布を持っており、また、低屈折率微粒子/バインダー材料の界面のぬれ性不足、ナノサイズの粒子径のため、低屈折率コーティング剤の液中または溶剤乾燥過程で凝集等を生じている。従って、実際には、低屈折率微粒子の添加量が70体積%以上の領域では低屈折率層5中で、低屈折率微粒子の充填不良を生じ、低屈折率微粒子間にバインダー材料の未充填に起因する空隙を生じることになる。
【0066】
この低屈折率微粒子の高充填領域で生じた低屈折率層5内でのバインダー材料の未充填部分は、薄膜の強度、耐摩耗性能を著しく低下させる。従って、低屈折率微粒子の添加による低屈折率層5の屈折率低減手法は、70体積%以上の低屈折率微粒子の高充填領域では、耐摩耗性と完全にトレードオフの関係になり、実用上利用困難である。
【0067】
低屈折率微粒子としては、屈折率が1.5以下であることが望ましい。具体的にはシリカ微粒子、中空シリカ微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物微粒子が好ましい。これら微粒子を1種類もしくは2種類以上混合して使用する。これら低屈折率微粒子をバインダー材料の樹脂等に相溶性を持たせるため表面処理を施して分散させる。
【0068】
低屈折率層5中に含有される低屈折率微粒子が1種類以上の低屈折率微粒子から構成されており、低屈折率微粒子として少なくとも中空シリカゾルを含有することが好ましい。本発明において、中空粒子とは外殻によって包囲された空洞を有する微粒子である。また、中空粒子自体の屈折率は1.20〜1.45であることが好ましく、この中空粒子の屈折率は特開2001−233611号公報に開示されている方法によって測定することができる。また、中空粒子の平均粒子径は0.5〜200nmであることが好ましい。中空粒子の外殻を構成する材料は、シリカのほか、金属酸化物であることも好ましい。中空粒子は、その平均粒子径に比べて外殻の厚みが薄いものを用いるのが好ましく、また、低屈折率層5中に占める中空シリカ微粒子(内部の空洞も含む)の体積が多いこと(40体積%以上)が好ましい。このような中空粒子は、例えば、特開2001−233611号公報に開示されており、そこに開示されている中空粒子を、低屈折率コーティング剤を調製する際に使用することができる。
【0069】
中空粒子の外殻を構成する材料を具体的に挙げると、SiO、SiO、TiO、TiO、SnO、CeO、Sb、ITO、ATO、Al等の単独材料又はこれらの材料のいずれかの組み合わせの混合物の形態の材料である。また、これらの材料のいずれかの組み合わせの複合酸化物であってもよい。なお、SiOは、酸化雰囲気中で焼成した場合に、SiOとなるものが好ましい。
【0070】
前記低屈折率コーティング剤は液相法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、リバースコーティング法、トランスファーロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キャストコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)により表面処理を行ったハードコート層3上に塗工されることが好ましい。塗工後加熱乾燥により塗膜中の溶剤を揮発させ、その後、加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等を行い、塗膜を硬化させて低屈折率層5を形成することができる。
【0071】
本発明では、反射防止フィルムの防汚性、指紋除去性をさらに向上させるためには、低屈折率層5の表面に防汚層6を設けて、この防汚層6で低屈折率層5をコーティングするのが好ましい。防汚層6の厚みは光学特性に影響を与えないため、30nm以下にするのが好ましい。また、防汚層6の形成処理は、シリコーン系またはフッ素含有化合物を被覆し、低屈折率層5の表面と化学的に結合させるようにして行う。また、防汚層6を形成する材料としては、アルコキシシラノ基を有するフッ素化合物、反応性シリコーンオイル等基材との反応性を有するものが耐摩耗性、耐薬品性、耐経時劣化性を向上することができて好ましい。
【0072】
防汚層6を形成するための防汚材料としては、例えば、GE東芝シリコーン製長鎖フルオロアルキルシランコーティング剤「XC98−B2472」を用い、これを希釈溶剤IPA(イソプロパノール)を用いて、固形分0.2質量%まで希釈し、この混合液を膜厚15nmとなるようにワイヤーバーコーター#10番で低屈折率層5の表面に塗布した後、120℃、15分間乾燥させることによって、防汚層6を形成することができる。また、防汚層6の性能評価としては、指紋拭き取り性を挙げることができる。すなわち、防汚層6に指紋を付着させ、表面を汚した直後に、キムワイプ(十条キンバリー(株)製)で50往復して拭取る。拭取った部分にセロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を貼り付けて剥がし、40cmの距離より目視で観察し、汚れの除去度を評価することができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0074】
ポリエステルフィルム(透明基板フィルム)1としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製「A1544−1〜4(100μmフィルム厚、表面側易接着層2:光学膜厚51nm、屈折率1.60、裏面側易接着層4:光学膜厚97〜162nm、屈折率1.56)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製「A4300(100μmフィルム厚、表面側易接着層2:光学膜厚100nm、屈折率1.56、裏面側易接着層2:光学膜厚100nm、屈折率1.56)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製「O300S36U53C(100μmフィルム厚、表面側易接着層2:光学膜厚90nm、屈折率1.59、裏面側易接着層4:光学膜厚150nm、屈折率1.59)を用いた。
【0075】
ハードコート層3は、アクリル系紫外線硬化型樹脂(大日精化工業(株)製「セイカビームPET−HC15」有効成分(固形分)60質量%)中に各種ナノ粒子を分散させてハードコート材料を調製し、このハードコート材料(混合液)を表面側易接着層2を介してワイヤーバーコーター#10番でポリエステルフィルム1の表面に塗布し、80℃、1分間乾燥させた後、UV照射(600mJ/cm)により硬化させて形成した。上記各種ナノ粒子のうち、高屈折率粒子としては、テイカ(株)製酸化チタン粒子「760T」(分散溶剤:トルエン、固形分48質量%)を用いた。また、上記各種ナノ粒子のうち、導電性ナノ粒子としては、触媒化成工業(株)製ATO粒子「ELCOM P−特殊品A」(分散溶剤:MEK/トルエン(4/1)、固形分30質量%)を用いた。なお、下記[表1]に実施例1〜6及び比較例1、2(後述)のハードコート層3中の酸化チタン粒子及びATO粒子の配合量(いずれも質量%)、ハードコート層3の屈折率を示す。
【0076】
低屈折率層5は低屈折率コーティング剤をハードコート層3の表面に塗布して形成した。低屈折率コーティング剤は、次のようにして調製した。まずテトラエトキシシラン208質量部にメタノール356質量部を加え、さらに水18質量部及び0.01Nの塩酸水溶液18質量部を加え、これをディスパーで混合し、混合液を得、この混合液を25℃恒温槽中で2時間攪拌して重量平均分子量を850に調整したシリコーンレジン(A)として使用し、次に、低屈折率微粒子として以下の低屈折率ナノ粒子(1)(2)をシリコーンレジン(A)に加え、低屈折率ナノ粒子/シリコーンレジンが縮合固形物換算で所望の体積比となるように配合し、その後、全固形分が1質量%となるようにメタノールで希釈することによって、低屈折率コーティング剤を調製し、低屈折率コーティング剤を膜厚100nmとなるようにワイヤーバーコーター#10番で上記ハードコート層3の表面に塗布した後、120℃、15分間乾燥させて低屈折率層5を形成した。低屈折率ナノ粒子(1)としては、中空シリカIPA(イソプロパノール)分散ゾル(スルーリアCS−60IPA、固形分20質量%、触媒化成工業(株)製)を用いた。また、低屈折率ナノ粒子(2)としては、オルガノシリカゾル(IPA−ST、固形分30質量%、日産化学(株)製)を用いた。なお、下記[表1]に実施例1〜6及び比較例1、2(後述)の低屈折率層5中の「CS−60IPA」及び「IPA−ST」の配合量(いずれも体積%)を示す。
【0077】
構成層7としては、粘着フィルム(巴川製紙(株)製、ノンキャリアTD06A、粘着層厚み25μm)を用いた。
【0078】
(実施例1)
PETフィルム「A1544−2」上に、酸化チタン粒子「760T」を30質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、膜厚3μmのハードコート層3を得た。その上にシリコーンレジン(A)マトリックスに対しトータル量の40体積%の「CS−60IPA」を分散させた低屈折率コーティング剤を、膜厚100nmとなるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させて低屈折率層5を設けることによって、図2のような反射防止フィルムを製造した。
【0079】
(実施例2)
PETフィルムに「A1544−3」を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを製造した。
【0080】
(実施例3)
PETフィルムに「A1544−4」を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを製造した。
【0081】
(実施例4)
中空シリカ粒子(CS−60IPA)が60体積%配合された低屈折率コーティング剤を用いた以外は、実施例2と同様にして、反射防止フィルムを製造した。
【0082】
(実施例5)
実施例2にて製造した反射防止フィルムの低屈折率層5の上に防汚材料(ダイキン工業(株)製防汚材料「オプツールDSX」)を膜厚約15nmとなるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させて防汚層6を設けることによって、図3のような反射防止フィルムを製造した。
【0083】
(実施例6)
PETフィルムに「O300S36U53C」を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを製造した。
【0084】
(比較例1)
PETフィルム「A1544−1」上に、酸化チタン粒子「760T」を30質量%分散させたハードコート材料をコーティングし、膜厚3μmのハードコート層3を得た。その上にシリコーンレジン(A)マトリックスに対しトータル量の40体積%の「CS−60IPA」を分散させた低屈折率コーティング剤を、膜厚100nmとなるようにワイヤーバーコーターでコーティングした。この後、120℃、15分の条件で硬化させて低屈折率層5を設けることによって、反射防止フィルムを製造した。
【0085】
(比較例2)
PETフィルムに「A4300」を用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを製造した。
【0086】
下記[表1]に実施例1〜6及び比較例1、2の反射防止フィルム(サンプル)の評価結果を示す。なお、各評価方法は以下の通りである。
【0087】
外観干渉ムラ:A4サイズのサンプル裏面を黒塗りした後、3波長蛍光灯下で外観特性を目視観察した。
【0088】
平均視感反射率:(株)日立ハイテクノロジーズ製分光光度計「U−4100」を用い、JIS R−3106 に基づき、サンプル裏面を黒塗りした後に、5度の正反射で測定した。
【0089】
密着性(クロスカットテープ試験):サンプルについてJIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用い、指の腹でサンプルに密着させた後剥離した。判定は100マスの内、剥離しないマス目の数で表し、剥離しない場合を100/100、完全に剥離する場合を0/100として表す。
【0090】
指紋拭取り性:サンプルに人の指で実際に指紋を付着させ、BEMCOT(旭化成製、M−3)を使用して数回拭取りを行った。そして拭き取ったときの状態を目視で観察した。
【0091】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る反射防止フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る反射防止フィルムの他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る反射防止フィルムの他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 ポリエステルフィルム
2 表面側易接着層
3 ハードコート層
4 裏面側易接着層
5 低屈折率層
6 防汚層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの表面に表面側易接着層及びハードコート層をこの順に設けると共に、前記ポリエステルフィルムの裏面に裏面側易接着層を設けて形成された反射防止フィルムにおいて、ハードコート層の屈折率が1.58〜1.85であると共に、裏面側易接着層の光学膜厚が110〜170nmであることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
裏面側易接着層の屈折率が1.45〜1.65であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
ポリエステルフィルムの反射率が4%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
表面側易接着層の膜厚が5〜80nmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
表面側易接着層の屈折率が1.58〜1.75であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が高屈折率粒子としてハードコート層に含有されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
ハードコート層が帯電防止性を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
インジウム、亜鉛、錫、アンチモンから選ばれる少なくとも一つの酸化物が導電性ナノ粒子としてハードコート層に含有されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
ハードコート層のシート抵抗が1015Ω/□以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
ハードコート層の表面に屈折率が1.30〜1.45の低屈折率層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
低屈折率層の表面に防汚層が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−32734(P2010−32734A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194133(P2008−194133)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】