説明

反射防止フィルム

【課題】十分な写像鮮明性と表面硬度とを有する反射防止フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の反射防止フィルムは、基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられる高屈折率層と、この高屈折率層上に設けられるとともに、前記高屈折率層の屈折率より0.1以上小さい屈折率である低屈折率層とを備え、前記高屈折率層は、主成分であるハードコート材料と、平均粒子径が3〜10μmである鱗片状の無機粒子とを含む組成物により構成され、当該反射防止フィルムの写像鮮明性が90%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として表示装置の表面に用いられる反射防止フィルムに関し、特に、十分な写像鮮明性と表面硬度を有する反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の表示画面は、使用者が手で触れたりする機会が多く、その表面が汚れたり、傷が付いたりして、表示画像が見にくくなることがあり、その表面硬度の向上が求められている。また、表示装置の表示画面には、蛍光灯の外光の映り込みによる反射像によって表示画像の視認性が低下することがあるため、反射防止機能が求められている。このため、従来、表示装置の表示画面には、適度な表面硬度を有する反射防止フィルムを貼付することが行われる場合がある。
【0003】
前記反射防止フィルムとしては、例えば、基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられ、高屈折率層と、この高屈折率層上に設けられる低屈折率層とを備えるものが検討されている。また、高屈折率層には、その表面硬度を高めるために、ハードコート層としての機能も付与される。ハードコート層を兼用する高屈折率層には、例えば、アクリル系オリゴマーやアクリルウレタン系オリゴマー等の紫外線もしくは熱硬化性樹脂からなる硬化材料が用いられ、この硬化材料を塗布した後、紫外線等で硬化させることにより形成できる。
【0004】
前記ハードコート層の表面硬度をより一層高める技術として、例えば特許文献1には、ハードコート層を形成する硬化材料に、平均粒子径10〜300nm以下である例えば鱗片状の無機微粒子を添加した組成物を用いて、ハードコート層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−42653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬化材料に平均粒子径が3μm以下の微粒子を添加した場合には、その粒子が細かすぎること等に起因して、必ずしも十分な表面硬度を得られない。また、十分な表面硬度を有奏するべく、前記微粒子を多量に添加することも考えられるが、その場合には、当該ハードコート層のヘイズが上昇して写像鮮明性が低下することにより表示装置への使用には適さないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、十分な写像鮮明性と表面硬度とを有する反射防止フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、反射防止フィルムの高屈折率層に所定の無機粒子を添加することにより、写像鮮明性と表面硬度に優れる反射防止フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明には、以下のものが含まれる。
(1)基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられる高屈折率層と、この高屈折率層上に設けられるとともに、前記高屈折率層の屈折率より0.1以上小さい屈折率である低屈折率層とを備える反射防止フィルムであって、前記高屈折率層は、主成分であるハードコート材料と、平均粒子径が3〜10μmである鱗片状の無機粒子とを含む組成物により構成され、当該反射防止フィルムの写像鮮明性が90%以上である反射防止フィルム。
(2)前記無機粒子は、酸化ケイ素成分を35%以上含む前記反射防止フィルム。
(3)前記組成物は、前記ハードコート材料100重量部に対して、前記無機粒子を3〜30重量部を含む前記反射防止フィルム。
(4)前記基材フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とを含む組成物からなる第1の樹脂層と、前記弾性体粒子を含まない熱可塑性樹脂からなる第2の樹脂層とを備え、共押出法により形成される平均厚さ100μm未満の多層フィルムである前記反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の反射防止フィルムによれば、主成分であるハードコート材料と、平均粒子径が3〜10μmである鱗片状または板状の無機粒子とを含む組成物を用いた高屈折率層を備えることにより、十分な写像鮮明性と十分な表面硬度とを奏することができるという効果がある。また、このような反射防止フィルムは、液晶表示装置や、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ装置、タッチパネル等の表示装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の反射防止フィルムは、基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられる高屈折率層と、この高屈折率層上に設けられるとともに、前記高屈折率層の屈折率より0.1以上小さい屈折率である低屈折率層とを備えて構成される。
【0011】
<基材フィルム>
基材フィルムは、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。
基材フィルムを構成する各層の材料としては、1mm厚で全光線透過率が80%以上となる透明樹脂を用いることができる。透明樹脂としては、例えば、脂環式構造を有する樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、および熱可塑性アクリル樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、本発明の基材フィルムに用いる透明樹脂としては、後述する高屈折率層との密着性等の観点から、熱可塑性アクリル樹脂が好ましい。
【0012】
熱可塑性アクリル樹脂には、原料主成分として(メタ)アクリル酸エステルが用いられるが、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜15のアルカノール及びシクロアルカノールから誘導される構造のものが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルカノールから誘導される構造のものである。炭素数が多すぎる場合は、得られる脆質フィルムの破断時の伸びが大きくなりすぎる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルのことである。
【0013】
熱可塑性アクリル樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体;アルキル基の水素がOH基、COOH基もしくはNH基などの官能基によって置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体;または(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレン、酢酸ビニル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、および無水マレイン酸などの不飽和結合を有するビニル系モノマーとの共重合体を挙げることができる。熱可塑性アクリル樹脂としては、これらのうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性アクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単位およびメタクリル酸ブチル単位が単量体単位として含まれているものがより好ましい。
【0014】
前記透明樹脂は、後述する弾性体粒子以外に、他の配合剤を含んでもよい。他の配合剤としては、例えば、無機粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等を挙げることができる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。配合剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択でき、通常は、透明樹脂100重量部に対して0〜5重量部、好ましくは0〜3重量部を含むことができる。これらの配合剤を含有させる方法としては、配合剤を予め透明樹脂中に配合する方法や、溶融押出成形時に直接供給する方法などを挙げることができる。
【0015】
また、基材フィルムは、前記透明樹脂の他に、数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子を含んでいることが好ましい。弾性体粒子とは、ゴム状弾性体からなる粒子である。ゴム状弾性体としては、アクリル酸エステル系ゴム状重合体、ブタジエンを主成分とするゴム状重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。アクリル酸エステル系ゴム状重合体としてはブチルアクリレ−ト、2−エチルヘキシルアクリレ−ト等を原料主成分とするものがある。これらのうち、ブチルアクリレ−トを原料主成分としたアクリル酸エステル系重合体及びブタジエンを主成分とするゴム状重合体が好ましい。弾性体粒子は、二種の重合体が層状になったものであってもよく、その代表例としては、ブチルアクリレ−ト等のアルキルアクリレ−トとスチレンのグラフト化ゴム弾性成分と、ポリメチルメタクリレ−ト及び/又はメチルメタクリレ−トとアルキルアクリレ−トの共重合体からなる硬質樹脂層とがコア−シェル構造で層を形成している弾性体粒子を挙げることができる。
【0016】
前記弾性体粒子としては、前記透明樹脂中に分散した状態における二次粒子の数平均粒径が2.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.1〜0.5μmである。弾性体粒子の一次粒子径が小さくても、凝集などによって形成される二次粒子の数平均粒径が大きいと、基材フィルムのヘイズ(曇り度)が高くなりすぎ、光線透過率が低くなる。また、数平均粒径が小さくなりすぎると可撓性が低下する傾向にある。
【0017】
前記基材フィルムは、前記透明樹脂、好ましくは前記熱可塑性アクリル樹脂と、当該フィルムの厚さ方向で偏在する前記弾性体粒子とを含む組成物により構成されることが好ましい。前記弾性体粒子が偏在する箇所は、厚さ方向の中央部であっても良いし、表面部であっても良い。弾性体粒子が中央部に偏在する場合は、基材フィルム表面付近には弾性体粒子が少なく、基材フィルムの厚さ方向中央部に弾性体粒子が多く分布する。表面部に弾性体粒子が偏在する場合は、基材フィルム中央部に弾性体粒子が少なく、少なくとも一方の表面部分に弾性体粒子が多く分布する。弾性体粒子の分布は、表面から中央に向ってなだらかに増加又は減少するものであってもよいし、段階的に増加又は減少するものであってもよい。弾性体粒子が層の厚さ方向で偏在することにより、反射防止フィルムの表面硬度を十分に確保しつつ、その可撓性を向上できる。 特に、本発明の反射防止フィルムを偏光板や表示装置等に貼り合わせる場合には、偏光板を構成する偏光子等との密着性が高まるとの観点から、少なくとも高屈折率層が積層される側とは反対側の基材フィルム表面に弾性体粒子が多く分布する構成とすることが好ましい。
【0018】
このように弾性体粒子が偏在する基材フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる組成物と、当該弾性体粒子を含まない熱可塑性樹脂とを共押出成形する方法;熱可塑性樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる組成物と、当該弾性体粒子を含まない熱可塑性アクリル樹脂とを共押出成形する方法が挙げられる。好ましくは、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる組成物と、当該弾性体粒子を含まない熱可塑性樹脂とを共押出成形する方法(共押出法)が採用される。共押出法としては、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられ、中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、弾性体粒子を含む層1の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
【0019】
基材フィルムの厚みは、合計の厚みとして、好ましくは10〜300μm、より好ましくは15〜150μmである。
基材フィルムが、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる組成物を用いて形成される多層の樹脂層からなる場合、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とからなる層の厚みの合計は60μm以下であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることが好ましい。また、弾性体粒子を含まない熱可塑性アクリル樹脂層の厚みの合計は20μm以上であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることが好ましい。 弾性体粒子を含まない熱可塑性アクリル樹脂層の厚みの合計が20μm未満であると耐熱性及び強度が不足し、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子からなる層の厚みの合計が20μm未満であると可撓性が不十分となる。
【0020】
基材フィルムは、その残留溶剤含有量が0.01質量%以下であることが好ましい。残留溶剤量が上記範囲であることにより、例えば、高温・高湿度環境下において基材フィルムが変形するのを防止できるとともに、光学性能が劣化するのを防止できる。残留溶剤量が上記範囲となる基材フィルムは、例えば、複数の樹脂を共押出成形することによって得ることができる。共押出成形の場合には、複雑な工程(例えば、乾燥工程や塗工工程)を経なくてもよいため、ゴミなどの外部異物の混入が少なく、優れた光学性能を発揮できる。残留溶剤含有量は、表面に吸着していた水分や有機物を完全に除去した内径4mmのガラスチューブの試料容器に基材フィルム50mgを入れ、その容器を温度200℃で30分間加熱し、容器から出てきた気体を連続的に捕集し、捕集した気体を熱脱着ガスクロマトグラフィー質量分析計(TDS−GC−MS)で分析した値である。
【0021】
基材フィルムは、その透湿度が10g・m−2day−1以上、200g・m−2day−1以下であることが好ましい。基材フィルムの透湿度を上記好適な範囲とすることにより、基材フィルムに積層する層との密着性を向上できる。透湿度は、40℃、90%RHの環境下で、24時間放置する試験条件で、JIS Z 0208に記載のカップ法により測定できる。
【0022】
基材フィルムの表面には、干渉むらを低減させる観点から、凹凸構造を備える構成としてもよい。凹凸構造は、基材フィルムの一方の表面のみに形成してもよいし、両表面に形成してもよい。基材フィルムの表面に凹凸構造を付与する方法としては、凹凸の無い基材フィルムに対して、凹凸を有する賦型ロールを用いたニップ成形法や、凹凸を有するフィルムを用いたサンドイッチラミネート法、ブラスト法などを適用できる。基材フィルムの表面に凹凸構造を形成した場合には、その凹凸構造側の面は、算術平均表面粗さ(Ra)が0.05μm以上0.5μm以下とすることができ、また、その凹凸構造の平均周期(Sm)を10μm以上200μm以下とすることができる。なお、本発明において、基材フィルムの算術平均表面粗さと平均周期は、JIS B 0601:2001の規定に従い測定される値である。表面に凹凸構造を有する基材フィルムは、ヘイズが1%以上50%未満であることが好ましく、3%以上40%未満であることがより好ましい。
【0023】
また、基材フィルムにおける高屈折率層を設ける側の表面には、表面改質処理を施すことができる。表面改質処理としては、エネルギー線照射処理や、薬品処理等を挙げることができる。エネルギー線照射処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等を挙げることができ、処理効率等の観点から、コロナ放電処理、プラズマ処理が好ましい。また、薬品処理としては、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸などの酸化剤水溶液中に、剤フィルムを浸漬し、その後、十分に水で洗浄する方法が挙げられる。浸漬した状態で振とうすると短時間で処理できるが、処理しすぎると表面が溶解したり、透明性が低下したりするので、適宜条件を調整することが好ましい。
【0024】
<高屈折率層>
高屈折率層は、主成分であるハードコート材料と、平均粒子径が3〜10μmである鱗片状の無機粒子とを含む組成物(以下、高屈折率層形成用組成物と称する場合がある)により構成されている。
【0025】
前記ハードコート材料としては、無機材料、樹脂材料またはこれらの混合物を用いることができるが、生産性に優れるという観点から樹脂材料が好ましい。前記樹脂材料としては、高屈折率層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、さらに透明性のあるものを使用できる。前記樹脂材料としては、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、および電離放射線硬化型樹脂を挙げることができるが、皮膜の強度、加工性の点で、熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂が好ましい。
【0026】
熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、シリコーン樹脂、ポリシロキサン樹脂が挙げられる。また、これらの熱硬化型樹脂には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を必要に応じて加えてもよい。
【0027】
電離放射線硬化型樹脂は、分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマーおよび/またはモノマーが、電離放射線の照射により硬化する樹脂である。電離放射線は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを指し、通常は紫外線又は電子線を用いる。紫外線または電子線により硬化する樹脂としては特に制限はなく、従来から使用されているものの中から、適宜選択して用いることができる。紫外線硬化型樹脂としては、光重合性プレポリマー、又は光重合性モノマーと光重合開始剤や光増感剤を含有するもの、また、電子線硬化型樹脂としては、光重合性プレポリマー又は光重合性モノマーを含有するものが挙げられる。
【0028】
前記光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等が挙げられる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また,光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリアクリレート、ポリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、ヘキサンジオールメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。本発明では、プレポリマーとしてウレタンアクリレート系、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート若しくはジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートを用いることが好ましい。
【0029】
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。また、光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を単独又は混合して用いることができる。
【0030】
前記高屈折層形成用組成物は、平均粒子径が3〜10μmである鱗片状の無機粒子を含んでいる。平均粒子径が3μm未満の場合には、十分な表面硬度が得られず、また、平均粒子径が10μm超の場合には、ヘイズが高くなることにより、写像鮮明性が不十分(90%未満)となる。ここで、無機粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、無機粒子を100個観察して、その長径の長さを求め、これらの長径を平均して求めることができる。
【0031】
前記無機粒子は、酸化ケイ素成分を35%以上含むことが好ましい。上記好適な範囲とすることにより、低屈折率層との層間での密着をより高めることができて、その表面強度をより一層向上でき、特に、低屈折率層が酸化ケイ素成分を40%以上含む場合には、密着性をより一層向上できる利点がある。
【0032】
前記無機粒子は、ハードコート材料100重量部に対して、3〜30重量部含有することが好ましく、5〜20重量部含有することがより好ましい。上記好適な範囲とすることにより、表面硬度と写像鮮明性をより一層高めることができる。
【0033】
前記無機粒子としては、例えば、マスコバイト、フロゴパイト、バイオタイト、フッ素金雲母、カオリナイト、タルク、セリサイト、有機処理雲母、シリカ、ベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトナイト、ソーコナイト、スチーブンサイト、バーミュキュラライト、合成スメクタイトが挙げられ、これらの中の1種類でもよいし、2種以上併用してもよい。また、無機粒子には、シランカップリング剤を付与してもよい。
【0034】
前記高屈折率層形成用組成物は、前記無機粒子の他に、導電性微粒子を含むこともできる。導電性微粒子を含むことにより、高屈折率層としての機能だけでなく、帯電防止層としての機能も付与できる。前記導電性微粒子は、導電性を有する微粒子であれば特に限定されないが、透明性に優れる点で、金属酸化物の微粒子が好ましい。前記金属酸化物としては、例えば、五酸化アンチモン、酸化スズ、リンがドープされた酸化スズ(PTO)、アンチモンがドープされた酸化スズ(ATO)、スズがドープされた酸化インジウム(ITO)、亜鉛がドープされた酸化インジウム(IZO)、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛(AZO)、フッ素がドープされた酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム、アンチモン酸亜鉛等を挙げることができる。これらの金属酸化物の微粒子は、一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、透明性に優れること等から、五酸化アンチモンの微粒子および/またはリンがドープされた酸化スズの微粒子が好ましい。
【0035】
また、前記金属酸化物の微粒子としては、導電性を持たない金属酸化物の微粒子の表面に、導電性金属酸化物を被覆することによって、導電性を付与した微粒子も使用できる。例えば、屈折率は高いが導電性を有しない酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の微粒子の表面に、前記導電性金属酸化物を被覆して導電性を付与して用いることができる。また、導電性を持たない無機粒子と、導電性金属酸化物の微粒子を併用してもよい
【0036】
前記導電性微粒子の数平均粒子径は、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは50〜15nmである。数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)等により得られる二次電子放出のイメージ写真からの目視やイメージ写真を画像処理することにより、又は動的光散乱法、静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により計測できる。
【0037】
また、前記高屈折層形成用組成物には、前記無機粒子の他に、他の無機粒子を含んでいてもよい。他の無機粒子としては、無機酸化物が一般的であり、例えば、SiO、Al、B、TiO、ZrO、SnO、CeO、P、MoO、ZnO、WO等の一種または二種以上を挙げることができる。前記他の無機粒子の数平均粒子径は、500nm以下であることが好ましく、より好ましくは30〜15nmである。数平均粒子径は、前述と同様にして計測できる。
【0038】
前記高屈折率層は、前記高屈折率層形成用組成物を溶媒で希釈し、この希釈物を、基材フィルムの一方の表面、好ましくは前記凹凸構造が形成された面に、直接又は基材フィルム上に形成された他の層の上に塗布して塗膜を得、この塗膜に熱又は電離放射線を照射することにより得ることができる。
【0039】
前記溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;及びこれらの2種以上からなる組み合わせ;等が挙げられる。
【0040】
高屈折率層形成用組成物には、層厚の均一性や密着性向上等を目的としてレベリング剤や分散剤を含有させてもよい。レベリング剤としては、シリコーンオイル、フッ素化ポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル等の表面張力を低下させる化合物が挙げられ、分散剤としては、界面活性剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0041】
前記高屈折率層の屈折率は1.5〜1.7であることが好ましい。高屈折率層の屈折率がこの範囲にあると、高屈折率層上に後述する低屈折率層を積層した場合に、外光の反射を抑制し、映り込みを防止することができる。屈折率は、例えば、公知の分光エリプソメータを用いて測定して求めることができる。
【0042】
前記高屈折率層は、JIS K5600−5−4で示す鉛筆硬度試験(試験板はガラス板)500g荷重において「2H」以上の硬度を示すことが好ましい。高屈折率層の鉛筆硬度が前記範囲であることにより、高屈折率層がハードコート層を兼ねることができ、反射防止フィルム全体の厚みを薄くすることができる。また、高屈折率層の平均厚みは、通常0.3〜20μm、好ましくは0.8〜10μmである。
【0043】
また、高屈折率層の表面には、表面処理を施すことができる。表面処理の手段としては、前述の基材フィルムのところで例示した表面改質処理を挙げることができる。
【0044】
<低屈折率層>
本発明の反射防止フィルムは、前記高屈折率層上に設けられるとともに、前記高屈折率層の屈折率より0.1以上小さい屈折率である低屈折率層を備える。低屈折率層を形成する材料(以下、低屈折率層形成用組成物と称する場合がある)は、熱硬化樹脂もしくは電離放射線型硬化樹脂を主として含むものが好ましい。
【0045】
低屈折率層の酸化ケイ素成分は40%以上であることが好ましい。このような好適な範囲とすることにより、高屈折層との密着性を高めることができる。
【0046】
前記熱硬化性樹脂としては、一般式、RnSi(OR)m(式中、Rは置換基を有していてもよい一価の炭化水素基、ORは加水分解性基を表し、n、mは整数を表し、mは1〜4であり、m+nは4である。)で表されるケイ素化合物を、全部又は部分的に加水分解して得られるものを用いることができる。
【0047】
置換基を有してもよい一価の炭化水素基としては、アルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロアルキル基;アルケニルカルボニルオキシアルキル基;エポキシ基を有するアルキル基、メルカプト基を有するアルキル基、アミノ基を有するアルキル基、パーフルオロアルキル基等を挙げることができる。この中でも、合成の容易性、入手可能性等から、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、パーフルオロアルキル基が好ましい。
【0048】
加水分解性基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基;オキシム基(−O−N=C−R(R))、エノキシ基(−O−C(R)=C(R)R)、アミノ基、アミノキシ基(−O−N(R)R)、アミド基(−N(R)−C(=O)−R)等を挙げることができる。これらの基において、R,R,Rは、それぞれ独立して水素原子または一価の炭化水素基を表す。これらの中でも、入手容易性等の観点から、アルコキシル基が好ましい。
【0049】
nSi(OR)mで表されるケイ素化合物としては、nが0〜2の整数である珪素化合物が好ましい。その具体例としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、オキシムシラン類、エノキシシラン類、アミノシラン類、アミノキシシラン類、アミドシラン類等を挙げることができる。これらの中でも、入手容易性等からアルコキシシラン類がより好ましい。
【0050】
nが0であるテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を例示でき、nが1であるオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を例示できる。nが2であるジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等を例示できる。
【0051】
前記ケイ素化合物は、フッ素を含有するものであることが好ましい。フッ素を含有するケイ素化合物としては含フッ素アルキルアルコキシシランが挙げられ、たとえば、一般式 CF(CF)nCHCHSi(OR(式中、Rは、炭素数1〜5個のアルキル基を示し、nは0〜12の整数を示す)で表される化合物があげられる。より具体的には、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなどがあげられる。これらのなかでも前記nが2〜6の化合物が好ましい。
【0052】
前記ケイ素化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。また、2種以上のケイ素化合物の混合および加水分解の順番は、逐次であっても同時であってもよい。
【0053】
また、電離放射線硬化性により硬化する樹脂としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基を有するモノマー;アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基を有するモノマー;ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレートなどのヒドロキシル基を有するモノマー;メチロールアクリレート、メチロールメタクリレート;アリルアクリレート、アリルメタクリレートなどのビニル基を有するモノマー;アミノ基を有するモノマー;スルホン酸基を有するモノマー;等を挙げることができる。
【0054】
前記低屈折率層形成用組成物は、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、無機化合物の微粒子であれば、特に制限されない。この無機化合物としては、無機酸化物が一般的であり、例えば、SiO、Al、B、TiO、ZrO、SnO、CeO、P、MoO、ZnO、WO等の一種または二種以上を挙げることができる。
【0055】
また、前記低屈折率層形成用組成物には、中空微粒子を添加してもよい。中空微粒子とは、外殻の内部に空洞が形成された中空の構造を有するものであり、例えば、シリカ系中空微粒子を好適に用いることができる。シリカ系中空微粒子を含有することにより、低屈折率性に加えて、耐擦傷性の向上も図ることができる。
【0056】
中空微粒子としては、(A)無機酸化物単一層、(B)種類の異なる無機酸化物からなる複合酸化物の単一層、(C)上記(A)と(B)との二重層を包含するものを利用できる。
【0057】
中空微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、5〜2000nmが好ましく、20〜100nmがより好ましい。5nmよりも小さいと、中空によって低屈折率になる効果が小さくなる。2000nmより大きいと、透明性が低下し、拡散反射による寄与が大きくなってしまう。ここで、平均粒子径は、透過型電子顕微鏡観察による数平均粒子径で求めることができる。
【0058】
中空微粒子の添加量は、特に限定されないが、前記低屈折率層形成用組成物の固形分に対して40〜200重量%であることが好ましく、より好ましくは40〜150重量%である。この範囲であれば、低屈折率性と耐擦傷性とをともに奏することができる。
【0059】
前記低屈折率層は、前記低屈折率層形成用組成物を溶媒で希釈し、この希釈物を高屈折率層上に塗工し、その後、この塗膜を乾燥、硬化してなる低屈折率層の硬化膜を形成できる。
【0060】
塗工方法は特に制限されず、通常の方法、例えば、ドクターブレード法、グラビアロールコーター法、ディッピング法、スピンコート法、刷毛塗り法フレキソ印刷法などがあげられる。得られた塗膜に、熱又は電離放射線を照射することで形成することで得られる。
【0061】
前記溶媒としては、前述の高屈折率層形成用組成物のところで例示した溶媒と同じものを挙げることができる。
【0062】
溶媒により希釈された低屈折率層形成用組成物中の固形分濃度は、溶液安定性を損なわない範囲で適宜調整することができる。低屈折率層形成用組成物を厚み精度よく薄膜に形成することが好ましいため、通常、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%の程度とするのが、取扱い易く好ましい。
【0063】
(その他の成分)
低屈折率層形成用組成物には、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、界面活性剤、光重合開始剤、シランカップリング剤等の分散剤、レベリング剤、増粘剤などが挙げられる。
【0064】
前記界面活性剤の含有量は、低屈折率層形成用組成物の固形分に対して500ppm以上が好ましく、1000ppm以上がより好ましい。界面活性剤の含有量が前記範囲よりも少ないと、塗布液の対流が発生し、低屈折率層表面の凹凸を小さくできない。 界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。フッ素系の界面活性剤としては、スリーエム社製のフロラードFC-431等のパーフルオロアルキルスルホン酸アミド基含有ノニオン、大日本インキ社製のメガファックF-171、F-172、F-173、F-176PF、F-470、F-471等のパーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のオリゴマー等の各種の置換基で側鎖や主鎖の末端が変性されたポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0065】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤が挙げられ、具体的にはアリールケトン系光重合開始剤(例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類など);含硫黄系光重合開始剤(例えば、スルフィド類、チオキサントン類など);アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;その他の光重合開始剤がある。また、光重合開始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせても使用できる。光重合開始剤の含有量は、電離放射線硬化樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0066】
硬化条件は、低屈折率層形成用組成物に応じて、加熱および/または活性光線照射により行うことができる。乾燥条件、硬化条件は使用する溶媒の沸点や飽和蒸気圧、基材の種類等により適宜に決定できるが、基材の着色や分解を抑えるため、加熱する場合には、通常160℃以下、UV照射する場合には通常2J/cm 以下とするのが好ましい。
【0067】
低屈折率層の屈折率は、高屈折層より0.1以上小さい。低屈折率層の屈折率は1.4未満であることが好ましく、好ましくは1.25〜1.38、さらに好ましくは1.30〜1.38である。低屈折率層の屈折率を前記範囲にすることにより、反射防止性に加えて、耐擦傷性を付与することができる。また、低屈折率層の平均厚みは、通常10〜1000nm、好ましくは20〜500nmである。
【0068】
本発明においては、低屈折率層の上に防汚層を有していても良い。防汚層は、低屈折率層を保護し、かつ、防汚性能を高めるために設けるものである。 防汚層の形成材料としては、低屈折率層の機能が阻害されず、防汚層としての要求性能が満たされる限り特に制限はない。通常、疎水基を有する化合物を好ましく使用できる。
具体的な例としては、パーフルオロアルキルシラン化合物、パーフルオロポリエーテルシラン化合物、フッ素含有シリコーン化合物を使用することができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、例えば、蒸着、スパッタリング等の物理的気相成長法;化学的気相成長(CVD)法;湿式コーティング法;等を用いることができる。防汚層の厚みは特に制限はないが、通常20nm以下が好ましく、1〜10nmであるのがより好ましい。
【0069】
本発明の反射防止フィルムの反射率は、波長430〜700nmにおける入射角5度で測定した最小値が1.5%未満であり、1.3%以下であることが好ましい。
【0070】
また、本発明の反射防止フィルムの写像鮮明性は90%以上であり。90%未満であると表示画像の乱反射が激しくなり視認性が低下する。
【0071】
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、電子ペーパー,タッチパネルなどの表示装置に、直接に貼合することにより、または偏光板保護フィルム、前面板など表示装置に組み込まれる表面部材と置き換えることにより用いることができる。
【実施例】
【0072】
本発明について、実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。なお、部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
【0073】
(基材フィルムの膜厚)
フィルムをエポキシ樹脂に包埋したのち、ミクロトーム(大和工業社製、製品名「RUB−2100」)を用いてスライスし、走査電子顕微鏡を用いて断面を観察し、測定した。
【0074】
(基材フィルムの屈折率)
樹脂を単層成形し、プリズムカプラ-(Metricon社製 製品名「model2010」)を用い、温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で測定した。
【0075】
(屈折率(高屈折率層、低屈折率層))
高速分光エリプソメトリ(J.A.Woollam社製、製品名「M−2000U」)を用い、入射角度をそれぞれ55,60,65度、温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で測定した場合の、波長領域400〜1000nmのスペクトルから算出した。
【0076】
(密着性(スチールウール試験))
スチールウール#0000に荷重0.025MPaをかけた状態で、反射防止フィルムの低屈折率層の表面を10往復させ、往復させた後の表面状態を目視で観測した。
○:傷が認められない。
△:若干のスジ傷が見られるものの、品質上問題はない。
×:スジ傷が8本以上ある。
【0077】
(最小反射率)
分光光度計(日本分光社製、製品名「V−550」)を用いて、波長430〜700nmにおける入射角5度での反射率を測定し(測定波長間隔は1nm)、前記波長域における最小反射率を算出した。最小反射率は、1.5%未満である場合に良好である。
【0078】
(写像鮮明性(透過鮮明性))
JIS K 7105に準じ、写像鮮明性測定装置(スガ試験機社製)により、0.5mm幅の光学くしで測定した。数値が高いほど鮮明性が高いことを意味する。写像鮮明性は、試料からの透過光を移動する光学クシを通して測定し、その値を計算によって求めるものである。試料がボケを生じるものの場合、光学クシ上に結像されるスリットの像は、そのボケの影響で太くなるため、透過部の位置ではスリット像の両端が不透明部にかかり、100%あった光量が減少する。また、不透明部の位置ではスリット像の両端は不透明部から光が漏れて、0%の光量が増加する。鮮明性の値は、光学クシの透明部の透過光最大値Mと、不透明部の最小値mから次式によって定義される。写像鮮明性は、下記値Cが90(%)以上の場合(より好ましくは95%以上)に良好であると判断できる。
写像鮮明性の値 C(%)=((M−m)/(M+m)) × 100
【0079】
(表面硬度(鉛筆硬度試験)
荷重を500gにした以外はJIS K 5600−5−4に従って、鉛筆で、反射防止フィルムの表面の5箇所について、5mm程度引っかき、傷の付き具合を確認した。
【0080】
(製造例1) 基材フィルム1の作製
2種3層の多層共押出装置を使用して、両表面層を構成する、弾性体粒子を含有するポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスHT20Y」)、中間層を構成する、耐熱性の高いポリメチルメタクリレート樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスMH」)をそれぞれ、20kg/hr、10kg/hrの押出量でT型ダイスより吐出させた後に冷却して、3層構成の基材フィルム1を得た。
【0081】
基材フィルム1を構成する各層の厚みは、一方の表面層(表面層1)の厚みが5μm、中間層が10μm、他方の表面層(表面層2)が5μmであり、基材フィルム1の総厚は20μmであった。基材フィルム1の表面層1の屈折率は1.49であった。
【0082】
(製造例2) 基材フィルム2の作製
ノルボルネン系重合体(製品名「ZEONOR 1420R」、日本ゼオン社製:ガラス転移温度Tg136℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて110℃で4時間乾燥した。その後、このペレットを、単軸押出機を用いて、260℃で溶融押出しして基材フィルム2を得た。また、この基材フィルム2の膜厚は20μmであった。
【0083】
(製造例3)高屈折層形成用組成物1の調製
アクリロイル基を含有するオリゴマー(日本合成化学工業社製、商品名「UV−1700B」)の100部に、鱗片形状の無機粒子(山口雲母工業所社製、SJ−005、平均粒子径5μm、酸化ケイ素成分45%)7部と、ジルコニア(シーアイ化成社製、平均粒子径20nm)150部と、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名「IRGACURE184」)2部とを加え、メタクリル変性ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名「X−22−164A」)をさらに1部加え、攪拌機にて5000rpmで5分間攪拌することにより、高屈折率層形成用組成物1を得た。屈折率は1.62であった。
【0084】
(製造例4)高屈折層形成用組成物2の調製
鱗片形状の無機粒子を35部に変えた以外は、製造例3と同様にして高屈折率層形成用組成物2を得た。屈折率は1.63であった。
【0085】
(製造例5)高屈折層形成用組成物3の調製
鱗片形状の無機粒子をボールミルで砕き、1μmのふるいにかけ、平均粒子径0.7μmに変更した以外は、製造例3と同様にして高屈折率層形成用組成物3を得た。屈折率は1.62であった。
【0086】
(製造例6)高屈折層形成用組成物4の調製
鱗片形状の無機粒子を除いた以外は、製造例3と同様にして高屈折率層形成用組成物4を得た。屈折率は1.58であった。
【0087】
(製造例7)高屈折層形成用組成物5の調製
鱗片形状の無機粒子を、他の鱗片形状の無機粒子(コープケミカル社製、MK−300、平均粒径15μm、酸化ケイ素成分52%)に変更した以外は、製造例3と同様にして高屈折率層形成用組成物5を得た。屈折率は1.62であった。
【0088】
(製造例8)高屈折層形成用組成物6の調製
鱗片形状の無機粒子をバイオタイト(平均粒子径6μm)に変更した以外は、製造例3と同様にして高屈折率層形成用組成物6を得た。なお、バイオタイトはバイオタイト(霊寿県天將鉱業有限公司社製、酸化ケイ素成分35%)をボールミルで砕き、8μmのふるいにかけ、平均粒子径6μmを得た。屈折率は1.62であった。
【0089】
(製造例9)高屈折層形成用組成物7の調製
鱗片形状の無機粒子を3部に変更した以外は、製造例3と同様にして高屈折率層形成用組成物7を得た。屈折率は1.52であった。
【0090】
(製造例10)低屈折率層形成用組成物1の調製
還流管を備えつけた4つ口反応フラスコにエタノール200部を投入し、撹拌下にこのエタノールに蓚酸120部を少量づつ添加することにより、蓚酸のエタノール溶液を調製した。次いでこの溶液をその還流温度まで加熱し、還流下のこの溶液中にテトラエトキシシラン20部とトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、商品名「TSL8257」)4部の混合物を滴下した。滴下終了後も、還流下に加熱を5時間続けた後冷却し、メタノールにて固形分が1重量%になるように希釈することにより液1を調製した。
次に、中空シリカ微粒子(数平均粒子径30nm、屈折率1.29)を前記液1の固形分(24重量部)に対し30重量部になるように添加し、低屈折率層形成用組成物1を調製した。低屈折率層は、乾燥し成膜した際の酸化ケイ素成分は90%であった。低屈折率層のの屈折率は1.37であった。
【0091】
(製造例11)低屈折率層形成用組成物2の調製
アクリロイル基を含有するモノマー(旭電化工業社製、商品名「オプトマーKR566」)100部に光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE184」)2部、中空シリカ微粒子(数平均粒子径30nm、屈折率1.29)150部と、メタクリル変性ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名「X−22−164A」)10部を加え、攪拌機にて2000rpmで5分間攪拌することにより、低屈折率層形成用組成物2を得た。低屈折率層は、乾燥し成膜した際の酸化ケイ素成分は58%であった。低屈折率層のの屈折率は1.37であった。
【0092】
(製造例12)低屈折率層形成用組成物3の調製
中空シリカ微粒子を80部に変えた以外は、製造例10と同様にして低屈折率層形成用組成物3を得た。低屈折率層は、乾燥し成膜した際の酸化ケイ素成分は42%であった。低屈折率層のの屈折率は1.43であった。
【0093】
(製造例13)低屈折率層形成用組成物4の調製
中空シリカ微粒子を60部に変えた以外は、製造例10と同様にして低屈折率層形成用組成物4を得た。低屈折率層は、乾燥し成膜した際の酸化ケイ素成分は35%であった。低屈折率層のの屈折率は1.44であった。
【0094】
(実施例1)
製造例1で得られた基材フィルム1における凹凸構造が形成された面に、製造例3で得られた高屈折層形成用組成物1をバーコーターで塗布した後、紫外線照射機を用いて積算光量200mJ/cmとなるように紫外線照射を行い硬化させ、厚み5μmの高屈折層を形成させて、基材フィルム/高屈折率層となる積層体を得た。次に、高屈折率層の上に、製造例10で得られた低屈折率層用形成組成物1をバーコーターで塗布し、得られた塗膜を60℃で1分間乾燥・硬化させ、厚み100nmの低屈折率層を形成し、本発明の反射防止フィルム1を得た。反射防止フィルム1の評価結果を表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
(実施例2)
低屈折率層用形成組成物1の代わりに、製造例11で得られた低屈折率層用形成組成物2を用い、高屈折率層の上に、低屈折率層用形成組成物をバーコーターで塗布し、得られた塗膜を60℃で1分間乾燥させ、積算光量100mJ/cmとなるように紫外線照射を行い硬化させた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム2を得た。反射防止フィルム2の評価結果を表1に示す。
【0097】
(実施例3)
基材フィルム1の代わりに、製造例2で得られた基材フィルム2を用いた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム3を得た。反射防止フィルム3の評価結果を表1に示す。
【0098】
(実施例4)
低屈折率層用形成組成物1の代わりに、製造例13で得られた低屈折率層用形成組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム4を得た。反射防止フィルム4の評価結果を表1に示す。
【0099】
(実施例5)
高屈折層用形成組成物1の代わりに、製造例8で得られた高屈折層用形成組成物6を用いた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム5を得た。反射防止フィルム9の評価結果を表1に示す。
【0100】
(比較例1)
高屈折層用形成組成物1の代わりに、製造例4で得られた高屈折層用形成組成物2を用いた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム11を得た。反射防止フィルム11の評価結果を表1に示す。
【0101】
(比較例2)
高屈折層用形成組成物1の代わりに、製造例5で得られた高屈折層用形成組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム12を得た。反射防止フィルム12の評価結果を表1に示す。
【0102】
(比較例3)
高屈折層用形成組成物1の代わりに、製造例6で得られた高屈折層用形成組成物4を用いた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム13を得た。反射防止フィルム13の評価結果を表1に示す。
【0103】
(比較例4)
高屈折層用形成組成物1の代わりに、製造例7で得られた高屈折層用形成組成物5を用いた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム14を得た。反射防止フィルム14の評価結果を表1に示す。
【0104】
(比較例5)
高屈折層用形成組成物1の代わりに、製造例9で得られた高屈折層用形成組成物7を用い、低屈折率層用形成組成物1の代わりに、製造例12で得られた低屈折率層用形成組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム15を得た。反射防止フィルム15の評価結果を表1に示す。
【0105】
前記実施例1〜5、比較例1〜5の各反射防止フィルムについて、密着性、最小反射率、写像鮮明性、表面硬度を評価して、その結果を表1に示した。
【0106】
表1に示すように、実施例1〜4の反射防止フィルムは、密着性がよく、最小反射率が1.3%以下であり、かつ表面強度が3H以上と高く、写像鮮明性が90%以上と高いため、十分な写像鮮明性と表面硬度とを有しており、したがって、表示装置に用いた際に視認性を低下させにくいことがわかる。また、実施例5は、密着性の点で若干低下するものの実際上の問題はなく、また、その他の点では十分であることが分かる。これに対して、比較例1,4に示すように、鱗片形状の無機粒子の含有量が多いもしくは粒子径が所定範囲より大きい場合には、写像鮮明性の点で劣ることが分かる。さらに、比較例2,3に示すように、鱗片形状の無機粒子の含有量が少ないもしくは粒子径が所定範囲より小さい場合には、表面硬度が不十分であることが分かる。さらに、比較例5に示すように、屈折率差が0.1より小さい場合には、最小反射率が1.5%となり、反射防止フィルムとしての性能が若干であるが劣ることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられる高屈折率層と、この高屈折率層上に設けられるとともに、前記高屈折率層の屈折率より0.1以上小さい屈折率である低屈折率層とを備える反射防止フィルムであって、
前記高屈折率層は、主成分であるハードコート材料と、平均粒子径が3〜10μmである鱗片状の無機粒子とを含む組成物により構成され、
当該反射防止フィルムの写像鮮明性が90%以上である反射防止フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の反射防止フィルムにおいて、
前記無機粒子は、酸化ケイ素成分を35%以上含む反射防止フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の反射防止フィルムにおいて、
前記組成物は、前記ハードコート材料100重量部に対して、前記無機粒子を3〜30重量部を含む反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルムにおいて、
前記基材フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂と数平均粒径2.0μm以下の弾性体粒子とを含む組成物からなる第1の樹脂層と、前記弾性体粒子を含まない熱可塑性樹脂からなる第2の樹脂層とを備え、共押出法により形成される多層フィルムである反射防止フィルム。


【公開番号】特開2012−68271(P2012−68271A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20086(P2009−20086)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】