説明

反応器、オレフィン重合用予備重合触媒の製造方法、およびオレフィン重合体の製造方法

【課題】反応器の内壁面へのファウリングを防止することができ、反応器の内壁面を傷つけず、かつ掻き取り板が破損したかけらがオレフィン重合体に混入しても、オレフィン重合体を成形して得られる成形体の品質を劣化させることがないオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器を提供する。
【解決手段】攪拌翼と掻き取り板を有するオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器であって、該掻き取り板が反応器の内壁面に付着した付着物を掻き取ることができ、該掻き取り板の少なくとも付着物を掻き取る部位がポリオレフィンであるオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応器、オレフィン重合用予備重合触媒の製造方法、およびオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に攪拌翼と掻き取り板を有する反応器が知られている。
例えば、特許文献1には、伝熱効果の改良を目的として、攪拌槽の内壁面と接する平板部と、該平板部に接続され該平板部で掻き取られた流体を案内する波板状案内板から構成されたことを特徴とする掻き取り板が記載されている。
特許文献2には、フッ素系樹脂からなる掻き取り板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−16898号公報(1993年3月5日公告)
【特許文献2】特開平1−301210号公報(1989年12月5日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オレフィン重合用予備重合触媒を製造するときに、反応器の内壁面へのファウリングを防止しようとして、特許文献1または2の反応器を使用する場合、掻き取り板と反応器の内壁面の接触によって、掻き取り板または内壁面の一部が破損し、破損したかけらがその反応器で製造されるオレフィン重合用予備重合触媒へ混入し、次いで、前記かけらが混入したオレフィン重合用予備重合触媒をオレフィン重合体の製造に用いると、オレフィン重合体に前記かけらが混入することがあった。前記かけらが混入したオレフィン重合体を成形した場合、成形体の品質を劣化させる懸念があり、例えばフィルムにした場合、前記かけらがフィッシュアイ等になり、フィルムの品質を劣化させる懸念があった。そのため、オレフィン重合用予備重合触媒を製造するときに、ファウリングを防止できる反応器であって、内壁面を傷つけることなく、かつ破損したかけらがオレフィン重合体に混入しても、オレフィン重合体を成形して得られる成形体の品質を劣化させることがない掻き取り板を有する反応器が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、反応器の内壁面へのファウリングを防止することができ、反応器の内壁面を傷つけず、かつ掻き取り板が破損したかけらがオレフィン重合体に混入しても、オレフィン重合体を成形して得られる成形体の品質を劣化させることがないオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器を提供することにある。また、前記反応器を用いてオレフィン重合用予備重合触媒を製造する方法、およびそのオレフィン重合用予備重合触媒を用いてオレフィン重合体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、攪拌翼と掻き取り板を有するオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器であって、該掻き取り板が反応器の内壁面に付着した付着物を掻き取ることができ、該掻き取り板の少なくとも付着物を掻き取る部位がポリオレフィンであるオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器である。また、前記反応器を用いてオレフィン重合用予備重合触媒を製造する方法、およびそのオレフィン重合用予備重合触媒を用いてオレフィン重合体を製造する方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の反応器を用いれば、反応器の内壁面へのファウリングを防止することができ、反応器の内壁面を傷つけず、かつ掻き取り板が破損したかけらがオレフィン重合体に混入しても、オレフィン重合体を成形して得られる成形体の品質を劣化させることがないオレフィン重合用予備重合触媒およびオレフィン重合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器の一実施形態の正面図(概略図)。
【図2】本発明に係るオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器の一実施形態の上面図(概略図)。
【図3】本発明に係るオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器の一実施形態の正面図(概略図)。
【図4】本発明に係るオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器の一実施形態の正面図(概略図)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1、図2、図3、および図4を用いて詳細に説明する。
【0010】
〔反応器〕
本発明に係わるオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器は、攪拌槽(1)、攪拌軸(2)、攪拌翼(3)、掻き取り板(4)、掻き取り板支え(5)、ジャケット(6)を有する反応器である。攪拌槽(1)は略円柱であり、攪拌軸(2)は攪拌槽(1)の上面の中心を通り鉛直方向に取り付けられている。攪拌翼(3)は攪拌軸(2)に取り付けられている。掻き取り板(4)は掻き取り板支え(5)を介して攪拌軸(2)に取り付けられている。ジャケット(6)は攪拌槽(1)の外側に取り付けられている。
攪拌軸(2)の回転に伴い、攪拌軸(2)に取り付けられた攪拌翼(3)と掻き取り板(4)は攪拌槽(1)内で回転する。攪拌軸(2)は逆回転しても構わない。掻き取り板(4)は回転することによって、攪拌槽(1)の内壁面に付着した付着物を掻き取る板であって、付着物を掻き取ることができるように取り付けられておればよく、掻き取り板(4)は攪拌槽(1)の内壁面に接していてもよく、接していなくてもよい。攪拌槽(1)の内壁面に付着する付着物を少なくし、ファウリングを防止するという観点から、掻き取り板は攪拌槽(1)の内壁面と接する方が好ましい。
掻き取り板(4)は付着物を掻き取ることができれば、掻き取り板支え(5)にどのように取り付けられていてもよい。攪拌槽(1)の内壁面に付着する付着物を少なくし、ファウリングを防止するという観点から、掻き取り板(4)は回転方向に対して掻き取り板支え(5)より先に位置するように取り付けられていることが好ましい。
掻き取り板(4)と掻き取り板支え(5)の延長線とがなす角度(図2に示した角度A)は、0度以上89度以下であることが好ましい。掻き取り板(4)と掻き取り板支え(5)の延長線とがなす角度とは、掻き取り板と水平面が交わってできる直線と、掻き取り板支えの延長線とがなす角度であって、掻き取り板支えの延長線から、掻き取り板の回転方向に測定した角度である。
掻き取り板(4)は、ファウリングを防止するという観点から、ジャケット(6)が取り付けられている全領域に対応する攪拌槽(1)の内壁面に付着した付着物を掻き取ることができるように取り付けられていることが好ましい。
図3に示すように、1本の掻き取り板支え(5)に、複数の掻き取り板(4)が取り付けられていてもよい。
掻き取り板(4)の変形を防ぎ、掻き取り板(4)を攪拌槽(1)の内壁面に接しやすくすることで、攪拌槽(1)の内壁面に付着する付着物を少なくし、ファウリングを防止するという観点から、掻き取り板(4)を掻き取り板支え(5)に取り付けるための留め具の位置は、掻き取り板の鉛直方向における両端に近い位置であることが好ましい。また、同様の観点から、掻き取り板(4)が図4に示すような形状である場合は、掻き取り板(4)を掻き取り板支え(5)に取り付けるための留め具の位置は、掻き取り部(4a)と水平面が交わってできる直線(その延長線を含む)上にない位置とすることが好ましい。
攪拌軸(2)に、複数の掻き取り板支え(5)が取り付けられている場合は、攪拌軸(2)を保護する観点から、攪拌槽(1)を上から見たときに掻き取り板支え(5)が対称に取り付けられていることが好ましい。
掻き取り板(4)が攪拌槽(1)の内壁面と均一に接するという観点から、各掻き取り板(4)の攪拌槽(1)の内壁面に接する部位の長さは、100cm以下であることが好ましく、50cm以下であることがより好ましく、25cm以下であることが更に好ましく、20cm以下であることが最も好ましい。
掻き取り板(4)の形状は、反応器内壁との接触によりそれを回転させる攪拌モーターの駆動負荷が大きくなりすぎず、安定して運転できるような形状に設定される。
【0011】
本発明に係わる反応器が有する掻き取り板の少なくとも付着物を掻き取る部位はポリオレフィンである。掻き取り板が破損したかけらが、本発明の反応器で製造されるオレフィン重合用予備重合触媒へ混入し、次いで前記オレフィン重合用予備重合触媒を用いて製造されるオレフィン重合体に混入しても、オレフィン重合体を成形して得られる成形体の品質をより劣化させにくい、という観点から、掻き取り板の少なくとも付着物を掻き取る部位に用いられるポリオレフィンが、オレフィン重合用予備重合触媒を用いて製造されるオレフィン重合体と同種のオレフィン重合体であることが好ましい。また、前記と同様な観点から、掻き取り板の少なくとも付着物を掻き取る部位に用いられるポリオレフィンのMFRは0.05g/10分以上10g/10分以下であることが好ましい。
掻き取り板の少なくとも付着物を掻き取る部位に用いられるポリオレフィンは、一種類のオレフィンの単独重合体でもよく、二種類以上の異なるオレフィンの共重合体でもよい。
【0012】
〔オレフィン重合用予備重合触媒の製造方法〕
本発明に係るオレフィン重合用予備重合触媒の製造方法は、本発明に係る反応器を用いてオレフィン重合用予備重合触媒を製造する方法である。
【0013】
本発明において、オレフィン重合用予備重合触媒とは、オレフィン重合用固体触媒成分上にオレフィンが予備重合された触媒である。
【0014】
本発明において用いられるオレフィン重合用固体触媒成分としては、オレフィン重合に用いられる公知の重合用固体触媒成分が挙げられる。例えば、メタロセン系触媒、チーグラー型触媒、フィリップ型触媒等が挙げられ、好ましくはメタロセン系触媒である。メタロセン系触媒としては、例えば、助触媒とメタロセン系化合物と有機アルミニウム化合物とを接触させて形成されるものが挙げられる。
【0015】
有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、およびトリ−n−オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムクロライド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、およびジ−n−ヘキシルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、n−プロピルアルミニウムジクロライド、n−ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、およびn−ヘキシルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジ−n−プロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、およびジ−n−ヘキシルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、メチル(ジメトキシ)アルミニウム、メチル(ジエトキシ)アルミニウム、およびメチル(ジ−tert−ブトキシ)アルミニウム等のアルキル(ジアルコキシ)アルミニウム、ジメチル(メトキシ)アルミニウム、ジメチル(エトキシ)アルミニウム、およびジメチル(tert−ブトキシ)アルミニウム等のジアルキル(アルコキシ)アルミニウム、メチル(ジフェノキシ)アルミニウム、メチルビス(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)アルミニウム、およびメチルビス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等のアルキル(ジアリールオキシ)アルミニウム、ならびに、ジメチル(フェノキシ)アルミニウム、ジメチル(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)アルミニウム、およびジメチル(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等のジアルキル(アリールオキシ)アルミニウム等を挙げることができる。なかでも、好ましくはトリアルキルアルミニウムであり、更に好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウムまたはトリ−n−オクチルアルミニウムであり、特に好ましくはトリイソブチルアルミニウムまたはトリ−n−オクチルアルミニウムである。
【0016】
これらの有機アルミニウム化合物は単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明において、予備重合とは、オレフィン重合用固体触媒成分上で少量のオレフィンを重合させ、オレフィン重合用固体触媒成分上にオレフィン重合体を形成させることである。
【0018】
本発明に係るオレフィン重合用予備重合触媒の製造方法に用いるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどをあげることができる。これらは単独で、または二種類以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、エチレンのみ、あるいはエチレンとα−オレフィンとを組み合わせて用い、更に好ましくは、エチレンのみ、あるいは1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンから選ばれる少なくとも一種類のα−オレフィンとエチレンとを組み合わせて用いる。
【0019】
オレフィン重合用予備重合触媒中の予備重合されたオレフィン重合体の含有量は、通常、オレフィン重合用固体触媒成分1g当たり、好ましくは0.01〜1000gであり、より好ましくは0.05〜500gであり、さらに好ましくは0.1〜200gである。
【0020】
オレフィン重合用予備重合触媒を製造する方法としては、連続重合法でもバッチ重合法でもよく、例えば、バッチ式スラリー重合法、連続式スラリー重合法が挙げられる。
本発明の反応器に、オレフィン重合用固体触媒成分を投入する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で投入する方法、各成分を溶媒に溶解して、溶液またはスラリー状態で投入する方法が用いられる。
【0021】
本発明の反応器でオレフィン重合用予備重合触媒をスラリー重合法で製造する場合、溶媒としては、通常、飽和脂肪族炭化水素化合物が用いられ、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、または二種類以上を組み合わせて用いてもよい。飽和脂肪族炭化水素化合物としては、常圧における沸点が100℃以下のものが好ましく、常圧における沸点が90℃以下のものがより好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサンが更に好ましい。
【0022】
また予備重合の温度は、通常−20〜100℃であり、好ましくは0〜80℃である。予備重合中、予備重合温度は適宜変更してもよい。また、予備重合中の気相部でのオレフィン類の分圧は、通常0.001〜2MPaであり、好ましくは0.01〜1MPaである。予備重合時間は、通常2分間〜15時間である。
【0023】
〔オレフィン重合体の製造方法〕
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、上述した本発明に係るオレフィン重合用予備重合触媒の製造方法によって製造されたオレフィン重合用予備重合触媒を用いて、オレフィン重合体を製造する方法である。
【0024】
本発明において、オレフィン重合体とは、オレフィン重合用予備重合触媒にオレフィンが重合された重合体である。
【0025】
本発明において、重合とは、オレフィン重合用予備重合触媒に、オレフィンを重合させ、オレフィン重合体を形成させることである。
【0026】
本発明において、重合は、単独重合であってもよく、共重合であってもよい。また、重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。
【0027】
本発明において、オレフィン重合体を製造する方法としては、気相重合法、スラリー重合法、バルク重合法などが挙げられる。好ましくは、気相重合法であり、より好ましくは連続気相重合法である。
本発明のオレフィン重合体を製造する方法に用いられる気相重合反応装置としては、通常、気相流動床式反応装置であり、好ましくは、拡大部を有する気相流動床式反応装置である。反応装置内に撹拌翼が設置されていてもよい。
【0028】
オレフィン重合用予備重合触媒や、他の触媒成分を重合反応装置に投入する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で投入する方法、各成分を溶媒に溶解して、溶液またはスラリー状態で投入する方法が用いられる。
【0029】
オレフィンを気相重合する場合、重合温度としては、通常、オレフィン重合体が溶融する温度より低く、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。重合反応装置には、不活性ガスを導入してもよく、分子量調節剤として水素を導入してもよい。また、有機アルミニウム化合物や、電子供与性化合物を導入してもよい。
【0030】
重合圧力は、気相流動床式反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常0.1〜5.0MPa、好ましくは1.5〜3.0MPaである。また、反応装置内のガス流速は、通常10〜100cm/秒であり、好ましくは20〜70cm/秒である。オレフィンの気相重合に用いられるオレフィン重合用予備重合触媒は、オレフィン重合用予備重合触媒に含まれるオレフィン重合用固体触媒成分がオレフィン1gに対して、通常0.00001〜0.001gとなる範囲で使用される。
【0031】
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法に用いるオレフィンとしては、エチレン、α−オレフィン、その他のオレフィンが挙げられる。
α−オレフィンとしては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。
これらは単独で用いられていてもよく、二種類以上を併用されていてもよい。好ましくはエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンである。
【0032】
その他のオレフィンとしては、ジオレフィン、環状オレフィン、アルケニル芳香族炭化水素、α,β−不飽和カルボン酸等を挙げることができる。その他のオレフィンの具体例としては、例えば、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−シクロオクタジエン、5,8−エンドメチレンヘキサヒドロナフタレン、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等のジオレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、トリシクロウンデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、5−アセチルノルボルネン、5−アセチルオキシノルボルネン、5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−シアノノルボルネン、8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−テトラシクロドデセン、8−シアノテトラシクロドデセン等の環状オレフィン;スチレン、2−フェニルプロピレン、2−フェニルブテン、3−フェニルプロピレン等のアルケニルベンゼン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、3−メチル−5−エチルスチレン、p−第3級ブチルスチレン、p−第2級ブチルスチレン等のアルキルスチレン、ジビニルベンゼン等のビスアルケニルベンゼン、1−ビニルナフタレン等のアルケニルナフタレン等のアルケニル芳香族炭化水素;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;α,β−不飽和カルボン酸のナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等のα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル;マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0033】
本発明に係るオレフィン重合体がエチレン−α−オレフィン共重合体である場合、エチレンとα−オレフィンとの組み合わせとしては、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/4−メチル−1−ペンテン、エチレン/1−オクテン、エチレン/1−ブテン/1−ヘキセン、エチレン/1−ブテン/4−メチル−1−ペンテン、エチレン/1−ブテン/1−オクテン、エチレン/1−ヘキセン/1−オクテン等が挙げられ、好ましくはエチレン/1−ヘキセン、エチレン/4−メチル−1−ペンテン、エチレン/1−ブテン/1−ヘキセン、エチレン/1−ブテン/1−オクテン、エチレン/1−ヘキセン/1−オクテンである。必要に応じて、その他のオレフィンを共重合させてもよい。
【実施例】
【0034】
実施例中の各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0035】
(1)密度(単位:kg/m
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料には、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った。
【0036】
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定した。
【0037】
〔実施例1〕
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の調製
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、溶媒としてトルエン24kg、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m/g)2.81kgを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン0.91kgとトルエン1.43kgの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら32分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、95℃で3.3時間攪拌した。
その後、得られた固体生成物をトルエン21kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエンを7.1kg加え、一晩静置してトルエンスラリーを得た。
【0038】
上記のトルエンスラリーへ、50重量%のジエチル亜鉛のヘキサン溶液1.75kgと溶媒としてヘキサン1.0kgを投入し、攪拌した。その後、5℃に冷却した後、トリフルオロフェノール0.78kgと溶媒としてトルエン1.41kgの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら61分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、22℃に降温した後に、水0.11kgを反応器の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、22℃で1.5時間、40℃で2時間、更に、80℃で2時間攪拌した。攪拌を停止し残量が16リットルとなるまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、攪拌した。95℃に昇温し、4時間攪拌した。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することでオレフィン重合用固体触媒成分を得た。元素分析の結果、Znの含有量=11重量%、Siの含有量=30重量%、Fの含有量=5.9重量%、Nの含有量=2.3重量%であった。
【0039】
(2)予備重合
MFRが0.9g/10分で、密度が918kg/mのエチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体を用いた厚さ3mmで鉛直方向の長さが15cmの掻き取り板を有する図1、図2に示した反応器を用いて以下の予備重合を行った。また掻き取り板と掻き取り板支えとがなす角度は30°で設置した。
予め窒素置換した(内容積210リットル)反応器に、常温下でブタン80リットルを投入し、次に、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド34.8mmolを投入した。その後、反応器内の温度を50℃まで上昇させ、2時間攪拌した。反応器内の温度を30℃まで降温し、エチレンを0.1kg投入した。次に、上記実施例1(1)で得られたオレフィン重合用固体触媒成分701gを投入した。その後、水素を常温常圧として0.1リットル投入した。系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム140mmolを投入して予備重合を開始した。攪拌翼と掻き取り板は連動して動いており、回転数は108rpmで回転させた。
【0040】
予備重合開始後、反応器内の予備重合温度を30℃とし0.5時間予備重合を行い、その後30分かけて50℃まで昇温して、その後は50℃で予備重合を行った。最初の0.5時間は、エチレンを0.7kg/時間で供給し、水素を常温常圧として0.8リットル/時間の速度で供給し、予備重合開始後0.5時間からは、エチレンを3.2kg/時間、水素を常温常圧として9.5リットル/時間の速度で供給し、合計6時間の予備重合を実施した。予備重合終了後、反応器内圧力を0.5MPaGまでパージし、スラリー状オレフィン重合用予備重合触媒を乾燥器に移送して、窒素流通乾燥を実施して、オレフィン重合用予備重合触媒を得た。該オレフィン重合用予備重合触媒中のエチレン重合体の予備重合量は、オレフィン重合用固体触媒成分1g当り21.9gであった。
この方法と同様な方法で、7回予備重合を実施したが、ファウリングによる除熱効率の低下は小さく、掻き取り板が接触している攪拌槽の内壁面には付着物が殆どない状態であった。
【0041】
(4)流動床式気相重合
気相流動床式反応装置を用い、重合温度:86℃、圧力:2.0MPaG、ホールドアップ量:80kg、ガス組成:エチレン86.0mol%、水素1.1mol%、1−ヘキセン1.1mol%、窒素11.5mol%、ヘキサン0.3mol%、循環ガス流速:31cm/秒の重合条件でエチレンと1−ヘキセンとの共重合を行った。
【0042】
重合中は、上記実施例1(2)で得たオレフィン重合用予備重合触媒を、59.2g/時間の供給量で供給した。また、重合中は、トリエチルアミンを0.6mmol/時間の供給量で、トリイソブチルアルミニウムを20mmol/時間の供給量で、重合反応器に供給し、平均21.4kg/時間のエチレン−1−ヘキセン共重合体を製造した。飛散率は1.1重量ppmであり、塊の発生は殆どなかった。得られたエチレン−1−ヘキセン共重合体の密度は919.2kg/m、MFRは0.72g/10分であった。
また当該重合体をフィルムにした際のフィッシュアイの個数は少ないレベルであった。
【0043】
〔実施例2〕
(1)予備重合
MFRが0.9g/10分で、密度が918kg/mのエチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体を用いた厚さ3mmで鉛直方向の長さが15cmの掻き取り板を複数有する反応器を用いて以下の予備重合を行った。また掻き取り板と掻き取り板支えとがなす角度は30°で設置した。
その後、実施例1(1)、(2)と同様の触媒、同様の触媒、スラリー濃度で、予備重合を実施した。攪拌翼と掻き取り板は連動して動いており、回転数は60rpmで回転させた。このよう方法で6回予備重合を実施したが、ファウリングによる除熱効率の低下は小さく、掻き取り板が接触している攪拌槽の内壁面には付着物が殆どない状態であった。
【0044】
〔実施例3〕
(1)予備重合
MFRが0.9g/10分で、密度が918kg/mのエチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体を用いた厚さ3mmで鉛直方向の長さが15cmの掻き取り板を複数有する図2に示した反応器を用いて以下の予備重合を行った。また掻き取り板と掻き取り板支えとがなす角度は330°で設置した。
その後、実施例1(1)、(2)と同様の触媒、同様の触媒、スラリー濃度で、予備重合を実施した。攪拌翼と掻き取り板は連動して動いており、回転数は60rpmで回転させた。このよう方法で4回予備重合を実施した。ややファウリングが発生しており、攪拌槽の内壁面には付着物がまばらに存在していたが、ファウリングによる除熱効率の低下は小さかった。
【0045】
〔実施例4〕
(1)予備重合
MFRが0.9g/10分で、密度が918kg/mのエチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体を用いた厚さ3mmで鉛直方向の長さが56cmの掻き取り板を複数有する図2に示した反応器を用いて以下の予備重合を行った。また掻き取り板と掻き取り板支えとがなす角度は330°で設置した。
その後、実施例1(1)、(2)と同様の触媒、同様の触媒、スラリー濃度で、予備重合を実施した。攪拌翼と掻き取り板は連動して動いており、回転数は60rpmで回転させた。このよう方法で4回予備重合を実施した。実施例3より、やや多くファウリングが発生しており、攪拌槽の内壁面には付着物がまばらに存在していたが、ファウリングによる除熱効率の低下は小さかった。
【0046】
〔比較例1〕
(1)予備重合
掻き取り板を外して、実施例1(1)、(2)と同様の方法で予備重合を行った。ファウリングによる除熱能力の低下が大きく、4回の予備重合を行うと攪拌槽の内壁面に付着したファウリング物を除去するための開放掃除が必要になった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の反応器を用いれば、反応器の内壁面へのファウリングを防止することができ、反応器の内壁面を傷つけず、かつ掻き取り板が破損したかけらがオレフィン重合体に混入しても、オレフィン重合体を成形して得られる成形体の品質を劣化させることがないオレフィン重合用予備重合触媒およびオレフィン重合体を製造することができるので、オレフィン重合体の製造の分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 攪拌槽
2 攪拌軸
3 攪拌翼
4 掻き取り板
4a 掻き取り部
5 掻き取り板支え
6 ジャケット
7 留め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌翼と掻き取り板を有するオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器であって、該掻き取り板が反応器の内壁面に付着した付着物を掻き取ることができ、該掻き取り板の少なくとも付着物を掻き取る部位がポリオレフィンであるオレフィン重合用予備重合触媒を製造する反応器。
【請求項2】
掻き取り板の少なくとも付着物を掻き取る部位に用いられるポリオレフィンが、オレフィン重合用予備重合触媒を用いて製造されるオレフィン重合体と同種のオレフィン重合体である請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
掻き取り板と掻き取り板支えの延長線とがなす角度が0度以上89度以下である請求項1または請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
各掻き取り板の攪拌槽の内壁面に接する部位の長さが100cm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の反応器。
【請求項5】
掻き取り板の少なくとも付着物を掻き取る部位に用いられるポリオレフィンのMFRが0.05g/10分以上10g/10分以下である請求項1〜4のいずれかに記載の反応器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の反応器を用いてオレフィン重合用予備重合触媒を製造する方法。
【請求項7】
請求項6に記載のオレフィン重合用予備重合触媒を用い、かつ気相流動床式反応装置を用いてオレフィン重合体を製造する方法。
【請求項8】
請求項7に記載のオレフィン重合体が、エチレン重合体であるオレフィン重合体を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−225843(P2011−225843A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71897(P2011−71897)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】