説明

反応器

【課題】充填物の充填や抜出しが容易で反応性能を損わない多パス構造ラジアルフロー型反応器を提供する。
【解決手段】直立配置される筒状の反応容器内に、粒状充填物の連続した充填層を収容する充填領域と、充填領域の外側と内側にそれぞれ配された流体が軸方向に流通可能な外側流路および内側流路とを含み、充填領域と外側流路との間でかつ充填領域と内側流路との間で流体が流通可能に構成された反応器であって、充填領域の内側縁との間に粒状充填物が通過可能な隙間をもって充填領域を軸方向に区画する仕切り板と外側流路における軸方向の流体の流通を遮断する閉塞部とを含む外側仕切り構造、及び、充填領域の外側縁との間に粒状充填物が通過可能な隙間をもって充填領域を軸方向に区画する仕切り板と内側流路における軸方向の流体の流通を遮断する閉塞部とを含む内側仕切り構造のうちの少なくとも一つを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒層や吸着剤などの充填層を収容した反応器に関し、特には、反応容器が筒状であって、充填層を流体が半径方向に通過するように構成された、ラジアルフロー反応器と呼ばれる反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なラジアルフロー反応器においては、反応器は円筒状であり、直立して設置される。反応容器の内部に、センターパイプと、充填層と、アウターバスケットとが、反応器の軸方向に垂直な断面、すなわち水平断面において中央から外側に向かってこの順に配される。センターパイプは、水平断面において中央に位置し、軸方向に延在する流体通路(内側流路)を形成する。内側流路の中を流体が軸方向に移動可能であるとともに、センターパイプを流体が半径方向に通過可能である。充填層は、粒状充填物の連続した層であり、水平断面において、センターパイプの周囲に配置され、断面形状が円環である。アウターバスケットと反応容器内面との間に、充填層の周囲に位置する流体通路(外側流路)が形成される。外側流路の中を流体が軸方向に移動可能であるとともに、アウターバスケットを流体が半径方向に通過可能である。反応容器に供給された流体は、センターパイプ内を軸方向に流れ、充填層内を半径方向に流れ、次いでアウターバスケットの外側を軸方向に流れて、あるいは、アウターバスケットの外側を軸方向に流れ、充填層内を半径方向に流れ、次いでセンターパイプ内を軸方向に流れて、反応容器から排出される。充填層内を流体が半径方向に流れる際に、触媒反応や吸着反応が起きる。
【0003】
充填層内の流体の流れが軸方向である軸流反応器に比べ、ラジアルフロー反応器は、流体の通過面積を大きく、かつ充填層の通過厚さを小さくすることが容易であり、したがって反応器の入口と出口との間の圧力降下を小さくすることが容易である。このような長所のため、反応器における圧力降下を小さくしつつ、大容量の流体を反応させたい場合にラジアルフロー反応器が好適に用いられる。
【0004】
ところで、近年は経済的あるいは社会的要請により反応器を大型化することが求められており、その場合は経済上あるいは製作技術上の理由により反応器の直径よりは反応器の長さを拡大して大型化する事が普通である。(直径を抑えれば比較的薄い板を使って圧力容器を構成できる)
しかしラジアルフロー反応器は、反応器の直径より反応器の長さを拡大して大型化した場合、流体の通過面積が過剰に拡大されて流体の充填層内の流速が低下し充填層内の圧力損失が過剰に低下して充填層内の通過面積に対して均一に分布する流れを得にくくなることがある。そのような場合、敢えてアウターバスケットやセンターパイプを複雑な構造として流れに対する抵抗(圧力損失)を付けて、通過面積に対して強制的に均一に分布する流れが得られるようにすることが多い。
【0005】
また加熱もしくは冷却のための伝熱管が充填層内に挿入されているラジアルフロー反応器の場合は、反応器の直径より反応器の長さを拡大して大型化した場合、充填層内の流体の流速が遅くなり十分な伝熱性能が得られないことがある。
【0006】
このような問題はラジアルフロー反応器にて流体の流れを多パス化することで解決することができる。
【0007】
特許文献1に、ラジアルフロー反応器でガスが触媒層を複数回通過する多パス構造が開示されている。この反応器では触媒層が仕切り板によって軸方向に2つ乃至3つに分割され、ガス流が折り返しながら半径方向に2回乃至3回触媒層を通過する。
【0008】
特許文献2に、複数に分割されていない充填層、すなわち連続した充填層を有するラジアルフロー反応器が開示されている。この反応器では、センターパイプの一部に軸方向および半径方向のガスの通過を遮断する閉塞部が設けられ、アウターバスケットの一部にも軸方向および半径方向のガスの通過を遮断する閉塞部が設けられる。そして、センターパイプの閉塞部の位置とアウターバスケットの閉塞部の位置とが軸方向にずれている。これら閉塞部によってガスの流れ方向が変えられ、充填層をガスが複数回通過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3372988号公報
【特許文献2】特開平3−131336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されるように充填層を分割する多パス構造においては、仕切り板がセンターパイプとアウターバスケットに機械的に固定される。したがって、充填物の充填や抜き出しに際しては、仕切り構造にアクセスすることが必要であった。例えば、触媒を充填する際には、触媒層を分割する仕切り板をいったん取り外すことが必要であった。また、加熱もしくは冷却のための伝熱管が充填層内に挿入されている反応器においては、仕切り板へのアクセスが非常に困難であるため、このような多パス構造を採用することは困難であった。
【0011】
特許文献2に開示される構造では、仕切り板が無いため、上記のような点を解消することができる。しかし、充填層が仕切られていないため、閉塞部の近傍をガスがショートカットする。例えば、センターパイプの閉塞部の近傍では、センターパイプからいったん触媒層に流入したガスが、半径方向に流れず、軸方向に流れてしまい、アウターバスケットに流入することなくセンターパイプに戻ってしまう。したがって、ラジアルフロー反応器の長所が損なわれ、反応器の反応性能が低下してしまう。
【0012】
本発明は、充填物の充填や抜き出しを容易に行うことができ、しかも反応性能を損なうことのない、多パス構造を有するラジアルフロー型の反応器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により、
直立して配置される筒状の反応容器内に、粒状充填物の連続した充填層を収容する領域である充填領域と、反応容器の軸方向に垂直な断面において充填領域の外側と内側にそれぞれ配された、流体が軸方向に流通可能な外側流路および内側流路とを含み、充填領域と外側流路との間で流体が流通可能、かつ充填領域と内側流路との間で流体が流通可能に構成された反応器であって、
充填領域の内側の縁との間に粒状充填物が通過可能な隙間をもって充填領域を軸方向に区画する仕切り板と、外側流路における軸方向の流体の流通を遮断する閉塞部と、を含む外側仕切り構造、および、
充填領域の外側の縁との間に粒状充填物が通過可能な隙間をもって充填領域を軸方向に区画する仕切り板と、内側流路における軸方向の流体の流通を遮断する閉塞部と、を含む内側仕切り構造
のうちの少なくとも一つの仕切り構造を含む反応器
が提供される。
【0014】
前記少なくとも一つの仕切り構造において、前記仕切り板が、前記隙間を有する側に向かって上向きの傾斜を有することが好ましい。
【0015】
前記傾斜の角度が、15°〜50°であることができる。
【0016】
前記傾斜の角度が、前記粒状充填物の安息角以上であることが好ましい。
【0017】
前記仕切り板に、充填物抜き出し用の管が設けられることが好ましい。
【0018】
前記充填領域内に、伝熱管を含むことができる。
【0019】
前記仕切り板が、前記伝熱管を支持することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、充填物の充填や抜き出しを容易に行うことができ、しかも反応性能を損なうことのない、多パス構造を有するラジアルフロー型の反応器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の反応器の一形態を説明するための、軸方向の断面を示す模式図である。
【図2】外側流路を形成するためにスカラップを用いた反応器の形態を説明するための、軸に垂直な断面を示す模式図である。
【図3】外側仕切構造の一形態を説明するための模式的拡大図である。
【図4】外側流路に設けられる閉塞部の一形態を説明するための、軸方向の断面を示す模式図である。
【図5】内側仕切構造の一形態を説明するための模式的拡大図である。
【図6】本発明の反応器の別の形態を説明するための、軸方向の断面を示す模式的図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照しつつ本発明の形態について説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0023】
図1は、反応器の軸を含む断面を模式的に示した図である。反応器は、筒状、特には円筒状の反応容器1内に、充填領域2、外側流路3、内側流路4を含む。
【0024】
反応器は直立して設置される縦型反応器である。つまり、反応器の軸が鉛直になるように反応器が設置される。反応器の例としては、メタノール合成反応器、アンモニア合成反応器、灯油軽油の水添脱硫反応器、排煙脱硫反応器を挙げることができる。
【0025】
反応器の内部に流す流体は、気体でも液体でも、これらの混合物(気液二相流)であってもよい。
【0026】
充填領域は、粒状充填物の連続した充填層を収容する。粒状充填物としては、触媒や吸着剤などの粒子を用いることができる。
【0027】
粒状充填物の形状は、典型的には球状あるいは円筒状で、その粒径は1mm〜15mm程度が一般的である。
【0028】
外側流路3は、反応容器の軸方向に垂直な断面において充填領域2の外側に配された、流体が軸方向に流通可能な流路である。内側流路4は、反応容器の軸方向に垂直な断面において充填領域2の内側に配された、流体が軸方向に流通可能な流路である。典型的には、内側流路、充填領域および外側流路が、反応容器と同心に配置される。
【0029】
内側流路は、センターパイプ5の内側の空隙によって形成される。充填領域は、センターパイプ5とアウターバスケット6の間に形成される。外側領域はアウターバスケット6と反応容器1(特には反応容器のシェル)との間の空隙によって形成される。
【0030】
センターパイプ5は、充填領域と内側流路との間で流体が流通可能かつ粒状充填物が通過不能となるよう構成される。センターパイプは、例えば、金網やプロファイルワイヤースクリーンやパンチングプレートを用いて、流体が通過可能で粒状充填物は通過不能な多数の貫通孔を有する筒、特には円筒を形成し、この筒の上端を閉じて得ることができる。センターパイプの下端は、流体の出口10(入り口でもよい)に接続することができる。充填領域2と内側流路4との間で粒状充填物が移動できないように、センターパイプの貫通孔の径は粒状充填物の径より小さい。
【0031】
アウターバスケット6は、充填領域2と外側流路3との間で流体が流通可能かつ粒状充填物が通過不能に構成される。アウターバスケットは、例えば、金網やプロファイルワイヤースクリーンやパンチングプレートを用いて、流体が通過可能で粒状充填物は通過不能な多数の貫通孔を有する筒、特には円筒を形成し、蓋8によってこの筒の上端を閉じて形成することができる。充填領域と外側流路との間で粒状充填物が移動できないように、アウターバスケットの貫通孔の径も粒状充填物の径より小さい。
【0032】
なお、図1において、また、後述する図2および6において、破線は流体が通過可能で粒状充填物が通過不能な部分を示す。
【0033】
アウターバスケットに替えて、反応容器の内壁(内周面)に沿って並べられた複数の筒状部材を用いることができる。この筒状部材として、例えば、スカラップと呼ばれる断面がホタテ貝の貝殻のような形の筒状部材を用いることができる。図2にスカラップを用いた場合の反応器の、軸方向に垂直な断面を模式的に示す。ただし図2には、仕切り構造は示されない。スカラップ7は、管を軸方向に割った形状を持ち、背面側を反応器内面に沿う形状の板で閉じたもので、スカラップを反応容器の内側に配置し、スカラップ内に空隙を形成する。この空隙が外側流路3となり、スカラップとセンターパイプ5との間に充填領域2が形成される。スカラップも金網やプロファイルワイヤースクリーンやパンチングプレートを用いて形成することができ、その上端は反応器の上部空間と連通するようにスカラップを形成するパイプを設けることができる。
【0034】
反応器は、流体が充填層内を半径方向に流れるように、外側仕切構造11および内側仕切構造21のうちの、一以上の仕切構造を有する。仕切構造が一つだけの場合、外側仕切構造および内側仕切構造のうちのいずれかを用いることができる。仕切構造が二つ以上の場合、外側仕切構造および内側仕切構造を、軸方向に交互に設ける。
【0035】
図3に外側仕切り構造の例を拡大して示す。なお、図3において、また、後述する図4および5において、特に図示はしていないが、センターパイプ5とアウターバスケット6は流体通過可能である。外側仕切り構造は、仕切り板(外側仕切り板)12を含む。外側仕切り板は、充填領域の内側の縁との間に粒状充填物が通過可能な隙間をもって、充填領域を軸方向に、換言すれば上下に、区画する。外側仕切り板は、例えば、上から見た場合に円環状である。外側仕切り板12の外縁を、例えば溶接によって、アウターバスケット6に固定することができる。外側仕切り板の内縁はセンターパイプに接することなく、外側仕切り板の内縁とセンターパイプとの間に隙間が形成される。この隙間の幅W1は、粒状充填物が通過可能な大きさとされる。
【0036】
仕切板を支えるために、タイロッド14を設けることができる。タイロッドは、例えば溶接によって、仕切り板に固定することができる。またタイロッドは、例えば溶接によって、反応容器に固定することができる(固定部は不図示)。
【0037】
外側仕切り構造11は、外側流路における軸方向の流体の流通を遮断する閉塞部(外側閉塞部)13を含む。外側閉塞部の構造は、外側流路における軸方向の流体の流通を遮断することができる構造であればよい。ただし、反応容器1とアウターバスケット6との間の熱膨張差を吸収できる構造が好ましい。図3に示すように、外側閉塞部13は、円環状の板13aの内側に筒状部材13bが、例えば溶接によって、固定された構造を有することができる。円環状の板13aを、例えば溶接によって、反応容器1に固定することができる。筒状部材13bはアウターバスケット6の外面に接するが、アウターバスケットに固定はされない。このように、外側閉塞部が反応容器とアウターバスケットのうちの一方に固定され、他方には接するものの固定はされない構造により、上述の熱膨張差が吸収可能となる。図4に、外側閉塞部の別の例を示す。この外側閉塞部は、軸方向から見て円環状のベローズを、反応容器1とアウターバスケット6とにそれぞれ、例えば溶接によって、固定して形成することができる。ベローズが上記熱膨張差を吸収可能である。
【0038】
外側閉塞部と外側仕切り板は、流体の流れ方向を、軸方向から半径方向へ、あるいは、半径方向から軸方向へ変えるように、配置される。したがって、外側仕切り板12と外側閉塞部13とが連続して流体をガイドできるよう、外側仕切り板外縁と外側閉塞部内縁の軸方向の位置を一致させることができる。
【0039】
図5に内側仕切り構造の例を拡大して示す。内側仕切り構造は、仕切り板(内側仕切り板)22を含む。内側仕切り板は、充填領域の外側の縁との間に粒状充填物が通過可能な隙間をもって、充填領域を軸方向に、換言すれば上下に、区画する。内側仕切り板22は、例えば軸方向から見た場合に円環状の板22aの内側に筒状部材22bが、例えば溶接によって、固定された構造を有することができる。内側仕切り板22の内縁、つまり筒状部材22bの内周面はセンターパイプ5に接するが、センターパイプに固定はされない。内側仕切り板を、例えば溶接によって、タイロッド14に固定することができる。内側仕切り板を円環状の板22aだけで構成し、センターパイプに円環状の板22aを、例えば溶接によって、固定することもできる。しかし、上述のようにセンターパイプに対して内側仕切り板が移動可能に構成した場合、センターパイプを抜き出すことが可能になる。センターパイプを抜き出せるようにすることは、特に、反応器内部に伝熱管が設けられる場合など内部点検が必要な場合に効果的である。なお、外側仕切り板を支持するタイロッドと内側仕切り板を支持するタイロッドは同一でよい。タイロッドの本数は、適宜決めることができる。
【0040】
内側仕切り板の外縁はアウターバスケットに接することなく、内側仕切り板の外縁とアウターバスケットとの間に隙間が形成される。この隙間の幅W2は、粒状充填物が通過可能な大きさとされる。
【0041】
隙間の幅W1およびW2は、使用する粒状充填物に応じて適宜決めることができるが、例えば50mm〜100mmとすることができる。
【0042】
内側仕切り構造21は、内側流路における軸方向の流体の流通を遮断する閉塞部(内側閉塞部)23を含む。内側閉塞部の構造は、内側流路における軸方向の流体の流通を遮断することができる構造であればよい。
【0043】
内側閉塞部と内側仕切り板は、流体の流れ方向を、軸方向から半径方向へ、あるいは、半径方向から軸方向へ変えるように、配置される。したがって、内側仕切り板22と内側閉塞部23とが連続して流体をガイドできるよう、内側仕切り板内縁と内側閉塞部外縁の軸方向の位置を一致させることができる。
【0044】
図1を参照すると、流体は反応器の流体入口9から流入し、外側流路3を通って下方に流れる。外側仕切り構造11によって軸方向の流れは遮断されているため、およびアウターバスケットを流体が流通可能であるため、流体はアウターバスケットを通過して充填領域を半径方向に流れる。センターパイプも流体が流通可能であるので、充填領域を半径方向内側に流れた流体はセンターパイプに流入し、軸方向下方に流れる。次に、センターパイプを下降した流れは、内側仕切り構造21によって方向を変えられ、センターパイプから再び充填領域(外側仕切り構造11の下、かつ内側仕切り構造21の上の部分)を半径方向に流れ、外側流路3に達する。次いで、外側流路を軸方向に流れた流体は、反応容器1の下部鏡板によって流れの方向が変えられ、再び充填領域2を半径方向に流れ、センターパイプに達する。流体はセンターパイプから流体出口10を通って反応器から排出される。このように流体を上から下に流すことができ、あるいは、流体を下から上に流すこともできる。
【0045】
外側仕切り板とセンターパイプとの間の隙間の幅W1、および、内側仕切り板とアウターバスケットとの間の隙間の幅W2とを、粒状充填物が通過可能である範囲で小さくしておくことにより、流体の流れに対するこれら隙間の影響を非常に小さくすることができる。したがって、これら隙間による反応器の反応性能への影響は無視しうる。
【0046】
さて粒状充填物を充填領域2に充填する際には、アウターバスケットの蓋8を取り外し、粒状充填物を充填領域に流し込む。このとき、外側仕切り板とセンターパイプとの間の隙間を通って、粒状充填物が外側仕切り板11よりも下の充填領域にも供給される。そして、内側仕切り板とアウターバスケットとの間の隙間を通って、粒状充填物が内側仕切り板よりも下の充填領域にも供給される。したがって、仕切り板にアクセスすることなく、充填領域に粒状充填物を充填することができる。
【0047】
外側仕切り板および内側仕切り板を、軸方向に垂直に配された板、つまり水平な板で形成することができる。しかしこの場合、仕切り板の下側に粒状充填物が充填されない部分が形成されることがある。このような現象を防ぐ観点から、仕切り板が、隙間を有する側に向かって上向きの傾斜を有することが好ましい。図1に示すように、外側仕切り板12を、内側に向かって上り勾配を有する円錐形状とすることができる。外側仕切り板は、水平に対してθ1の角度で傾斜している。また、内側仕切り板22、特にはその円環状の板22aを、外側に向かって上り勾配を有する円錐形状とすることができる。内側仕切り板は水平に対してθ2の角度で傾斜している。このような傾斜によって、隙間を通過した粒状充填物が、仕切り板の下に回り込むので、仕切り板の下側に粒状充填物が充填されない部分が生じることを防ぐことが容易である。
【0048】
傾斜の角度θ1およびθ2は、使用する粒状充填物に応じて適宜決めることができるが、およそ15°〜50°、さらには20°〜45°とすることができる。
【0049】
また、傾斜の角度θ1およびθ2を、粒状充填物の安息角以上とすることが好ましい。安息角は、粒状充填物を積み上げたときに自発的に崩れることなく安定を保つ斜面の角度である。上記傾斜角を粒状充填物の安息角以上とすることにより、充填の際に粒状充填物の移動を特に促進しなくても、仕切り板の下側に粒状充填物が充填されない部分を生じさせないことが容易となる。
【0050】
粒状充填物を反応器から抜き出す際も、外側仕切り板12とセンターパイプ5との間の隙間、および、内側仕切り板22とアウターバスケット6との間の隙間を通って、粒状充填物が移動できる。このため仕切り板にアクセスすることなく、粒状充填物を抜き出すことができる。ただし、仕切り板の上に、粒状充填物が残ってしまうこともある。このような場合、例えば、バキュームホースを用いて、仕切り板の上に残った粒状充填物を吸い取ることができるが、仕切り板に粒状充填物抜き出し用の管を設け、この管を通して触媒を移動させることが好ましい。図3に示すように、外側仕切り板12のできるだけ外側に粒状充填物抜き出し用の管15を設けることができる。また、図5に示すように、内側仕切り板22のできるだけ内側に粒状充填物抜き出し用の管25を設けることができる。粒状充填物の抜き出しに際しても、仕切り板の傾斜は有効である。例えば、傾斜があるために外側仕切り板の上を粒状充填物が移動して、粒状充填物抜き出し用の管15から下に落ちる。このようにして、粒状充填物を自然に移動させることができる。
【0051】
粒状充填物抜き出し用の管15および25の長さは、これらの管を通る流体のバイパス流を抑えるために、他の部材の邪魔にならない範囲で、かつ、流体の流れを妨げない範囲で、できるだけ長くすることが好ましい。管の長さが長いと、管による圧力損失が大きいため、バイパス流を優れて抑制することができる。粒状充填物抜き出し用の管15および25の長さは、例えば、500mm〜1500mmとすることができる。
【0052】
反応容器から粒状充填物を排出するための排出口は、図示しないが、適宜反応容器の底部に設けてもよいし、あるいはセンターパイプの下端部に、必要に応じて開けることができる開閉部を設け、そこから粒状充填物を排出しても良い。
【0053】
なお、図1に示す構造においては、反応器に供給した流体を最初に外側流路に流しており、また、流体を内側流路から反応器外に排出している。このような形態に限らず、反応器に供給した流体を最初に内側流路に供給することもできるし、また、流体を外側流路から反応器外に排出することもできる。このようなバリエーションは、例えば、外側流路の上端を閉じるために、蓋8を反応容器の内壁に接するように設け、且つ、内側流路の上端を流体入口と連通させるために、上端が開口したセンターパイプ5を、蓋8を突き抜けるように設けることで得ることができる。また、センターパイプ下端を閉じ、外側流路に必要に応じて流体排出用のマニホールドを接続することで得ることができる。
【0054】
図6に、本発明の反応器の別の形態を示す。この形態は、図1に示した形態に、反応器を加熱もしくは冷却するための伝熱管61を追加した形態である。反応容器1内に、伝熱管61が設けられている。伝熱管には伝熱媒体(加熱媒体もしくは冷却媒体)を流すことができる。ここでは伝熱管は二重管構造を有する。反応容器の内部に、伝熱管の内管を固定した管板63と、伝熱管の外管を固定した管板62とが、下側からこの順に設けられる。反応容器の下部鏡板と管板63との間の空間が伝熱媒体の入口側ヘッダー、管板63と管板62との間の空間が、伝熱媒体の出口側ヘッダーとなっている。また管板62は、充填領域および外側流路の下端を形成する。センターパイプ5は伝熱媒体の出口側および入口側ヘッダーを貫通して流体出口10に接続される。センターパイプのこれらヘッダーを貫通する部分は、孔を有さない。
【0055】
例えば、伝熱管によって反応器、特には充填層を冷却する場合、伝熱媒体として水(ボイラー供給水)を伝熱媒体入口66から入口側ヘッダー64に供給する。水が伝熱管61の内管および外管を通る間に、その水が加熱され、熱水もしくはスチームが外管から出口側ヘッダー65に集合し、伝熱媒体出口67から排出される。
【0056】
仕切り板が、伝熱管を支持することができる。つまり、外側仕切り板および内側仕切り板の少なくとも一方が、伝熱管を支持する邪魔板を兼ねることができることができ、この構造は、簡易かつ効果的である。
【0057】
本発明の反応器においては、連続した充填層が仕切り板によって絞られており、その絞りによって多パス構造が得られているということができる。
【0058】
本発明によれば、触媒や吸着剤などの充填物が、仕切り板を超えて移動可能であるため、仕切り構造にアクセスすることなく、充填物の充填や抜き出しを容易に行うことができる。また、反応器の運転中に充填物が収縮した場合でも、充填物が移動することが可能である。仕切り構造にアクセスすることが不要なため、充填層内に設けられた伝熱管などの、仕切り構造へのアクセスを阻害する部材が存在する場合に、本発明による反応器は特に好適である。
【0059】
また、流体が充填層を半径方向に通過せずにショートカットしてしまうといった現象を防止できるため、反応器の反応性能を損なうこともない。
【符号の説明】
【0060】
1:反応容器
2:充填領域
3:外側流路
4:内側流路
5:センターパイプ
6:アウターバスケット
7:スカラップ
8:アウターバスケットの上端を閉じる蓋
9:流体入口
10:流体出口
11:外側仕切り構造
12:外側仕切り板
13:外側閉塞部
13a:円環状の板
13b:筒状部材
14:仕切り板支持用タイロッド
15:粒状充填物抜き出し用の管
21:内側仕切り構造
22:内側仕切り板
22a:円環状の板
22b:筒状部材
23:内側閉塞部
25:粒状充填物抜き出し用の管
61:伝熱管(二重管)
62:外管固定用の管板
63:内管固定用の管板
64:伝熱媒体入口側ヘッダー
65:伝熱媒体出口側ヘッダー
66:伝熱媒体入口
67:伝熱媒体出口
W1:外側仕切り板内縁とセンターパイプとの間の隙間の幅
W2:内側仕切り板外縁とアウターバスケットとの間の隙間の幅
θ1:水平に対して外側仕切り板がなす角度
θ2:水平に対して内側仕切り板がなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立して配置される筒状の反応容器内に、粒状充填物の連続した充填層を収容する領域である充填領域と、反応容器の軸方向に垂直な断面において充填領域の外側と内側にそれぞれ配された、流体が軸方向に流通可能な外側流路および内側流路とを含み、充填領域と外側流路との間で流体が流通可能、かつ充填領域と内側流路との間で流体が流通可能に構成された反応器であって、
充填領域の内側の縁との間に粒状充填物が通過可能な隙間をもって充填領域を軸方向に区画する仕切り板と、外側流路における軸方向の流体の流通を遮断する閉塞部と、を含む外側仕切り構造、および、
充填領域の外側の縁との間に粒状充填物が通過可能な隙間をもって充填領域を軸方向に区画する仕切り板と、内側流路における軸方向の流体の流通を遮断する閉塞部と、を含む内側仕切り構造
のうちの少なくとも一つの仕切り構造を含む反応器。
【請求項2】
前記少なくとも一つの仕切り構造において、前記仕切り板が、前記隙間を有する側に向かって上向きの傾斜を有する請求項1記載の反応器。
【請求項3】
前記傾斜の角度が、15°〜50°である請求項2記載の反応器。
【請求項4】
前記傾斜の角度が、前記粒状充填物の安息角以上である請求項2記載の反応器。
【請求項5】
前記仕切り板に、充填物抜き出し用の管が設けられた請求項1〜4のいずれか一項記載の反応器。
【請求項6】
前記充填領域内に、伝熱管を含む請求項1〜5のいずれか一項記載の反応器。
【請求項7】
前記仕切り板が、前記伝熱管を支持する請求項6記載の反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−206648(P2011−206648A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75377(P2010−75377)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000222174)東洋エンジニアリング株式会社 (69)
【Fターム(参考)】