説明

反応染料、それらの製造方法およびそれらの使用

式(1)の反応染料[式中、Rは、場合により置換されているC〜Cアルキルであり、Rは、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはスルホであり、Zは、式−SO−Y(2a)、−CO−NH−(CH−SO−Y(2b)、−NH−CO−CH(Hal)−CH−Hal(2c)または−NH−CO−C(Hal)=CH(2d)の基(式中、Halは、塩素または臭素であり、Yは、ビニルまたは基−CHCH−Uであり、Uは、アルカリ条件下で除去することができる基であり、kは、数2、3、4、5または6である)であり、nは、数0、1または2であり、mは、数0または1である]は、セルロース含有繊維材料、好ましくは天然または合成ポリアミド繊維材料の染色または捺染に適しており、高い着色力で、良好な堅牢性を有する染色物および捺染物をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な反応染料、それらの製造方法および紡織繊維材料の染色または捺染におけるそれらの使用に関するものである。
【0002】
反応染料を使った染色の実施は、近年、染色物の品質および染色工程の採算性に対する要求が高度になってきた。その結果、改良された性質を持つ新規な反応染料が、特にそれらの応用に関して必要とされ続けている。
【0003】
現在、染色には、十分な直接性を有すると同時に未固着染料の洗浄除去性が良好な反応染料が求められている。それらは良好な着色力および高い反応性も有するべきであり、その目的は特に固着度が高い染色物を提供することにある。既知の染料は、これらの要求をすべての性質について満たすわけではない。
【0004】
したがって、本発明の根底にある課題は、繊維材料の染色および捺染用に、先に特徴付けた品質を高度に有する、新規な改良型反応染料を見い出すことである。新規な染料は、特に、高い固着収率および高い繊維−染料結合安定性を特徴とすべきである。この染料はまた、例えば耐光堅牢度および湿潤堅牢度など、良好な万能性を持つ染色物を与えるべきである。
【0005】
提起した課題は、以下に記載する新規な染料により、特に、この染料を合成ポリアミド繊維材料の染色に使用する場合に、大いに解決されることが見い出された。
【0006】
したがって、本発明は、式:
【0007】
【化8】

【0008】
[式中、
は、場合により置換されているC〜Cアルキルであり、
は、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはスルホであり、
は、式:
【0009】
【化9】

【0010】
(式中、
Halは、塩素または臭素であり、
Yは、ビニルまたは基−CHCH−Uであり、Uは、アルカリ条件下で除去することができる基であり、
kは、数2、3、4、5または6である)
の基であり、
nは、数0、1または2であり、
mは、数0または1である]
の反応染料に関する。
【0011】
本発明の式(1)の染料は、繊維反応性である。繊維反応性化合物とは、セルロースのヒドロキシル基、羊毛および絹中のアミノ、カルボキシ、ヒドロキシもしくはチオール基または合成ポリアミドのアミノ基、場合により、カルボキシ基と反応して、共有化学結合を形成する能力を持つ化合物と、理解すべきである。
【0012】
のC〜Cアルキルは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルまたはイソブチル、好ましくはメチルまたはエチル、特にエチルである。アルキル基Rは非置換であるか、または例えばヒドロキシ、スルホ、スルファト、シアノもしくはカルボキシで置換される。非置換基が好ましい。
【0013】
について、C〜Cアルキルとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルおよびイソブチル、好ましくはメチルまたはエチル、特にメチルが考慮される。
【0014】
について、C〜Cアルコキシとしては、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシおよびイソブトキシ、好ましくはメトキシまたはエトキシ、特にメトキシが考慮される。
【0015】
について、ハロゲンとしては、例えばフッ素、塩素および臭素、好ましくは塩素または臭素、特に塩素が考慮される。
【0016】
アルカリ条件下で除去することができる基Uとしては、例えば−Cl、−Br、−F、−OSOH、−SSOH、−OCO−CH、−OPO、−OCO−C、−OSO−C〜Cアルキルおよび−OSO−N(C〜Cアルキル)が考慮される。Uは、好ましくは、式−Cl、−OSOH、−SSOH、−OCO−CH、−OCO−Cまたは−OPO、特に−Clまたは−OSOH、とりわけ−OSOHの基である。
【0017】
したがって、適切な基Yの例は、ビニル、β−ブロモ−またはβ−クロロ−エチル、β−アセトキシエチル、β−ベンゾイルオキシエチル、β−ホスファトエチル、β−スルファトエチルおよびβ−チオスルファトエチルである。Yは、好ましくは、ビニル、β−クロロエチルまたはβ−スルファトエチル、特にビニルまたはβ−スルファトエチル、とりわけビニルである。
【0018】
本発明の式(1)の反応染料において、Rは、好ましくは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはスルホ、特にスルホである。
【0019】
本発明の式(1)の反応染料において、Halは、好ましくは、臭素である。
【0020】
mは、好ましくは、数1である。
【0021】
nは、好ましくは、数0または1、特に数0である。
【0022】
好ましくは、mは、数1であり、nは、数0である。
【0023】
kは、好ましくは、数2または3、特に数2である。
【0024】
本発明の式(1)の反応染料において、Zは、好ましくは式(2a)または(2b)の基、特に式(2a)の基であり、式中の可変部は先の定義および好ましい意味を有する。
【0025】
式(1)の反応染料は、好ましくは、式:
【0026】
【化10】

【0027】
[式中、
は、先の定義および好ましい意味を有し、数2′および3′は、スルホ基の考えうる結合位置を示し、数3および4は、Zの考えうる結合位置を示す]
の染料である。
【0028】
スルホ基は、好ましくは、2′位に結合される。
【0029】
は、好ましくは、3位に結合される。
【0030】
本発明は、式(1)の反応染料の製造方法であって、
式:
【0031】
【化11】

【0032】
の化合物および式
【0033】
【化12】

【0034】
の化合物(R、R、Z、mおよびnは、先の定義および好ましい意味を有する)を、塩化シアヌルと反応させることを含む、方法にも関する。
【0035】
個々の工程段階は異なる順序で行うことができ、必要であれば同時に行うこともできるので、様々な変法が可能である。通常、反応は段階的に行われ、個々の反応成分間の単一反応を行う順序は、個別の条件によって有利に決定される。例えば、式(3)のアミン約1モル当量を、塩化シアヌル約1モル当量と反応させ、次に、その結果生じた生成物を、式(2)の化合物約1モル当量と縮合させる。もう一つの変法では、例えば、式(2)の化合物約1モル当量を、塩化シアヌル約1モル当量と反応させ、次に、その結果生じた混合物を、式(3)のアミン約1モル当量と縮合させる。
【0036】
個々の縮合反応は、例えばそれ自体公知の工程にしたがって、一般的には水溶液中、例えば温度0〜50℃、特に0〜10℃および例えばpH1〜10、特に1〜7で行われる。
【0037】
最終生成物は、場合により、変換反応に付すこともできる。そのような変換反応は、例えば、ビニル化することが可能な基Z中の反応性基を、例えば希水酸化ナトリウム溶液による処理でビニル型に変換すること、例えばβ−スルファトエチルスルホニルもしくはβ−クロロエチルスルホニル基のビニルスルホニル基への変換またはα,β−ジハロプロピオニルアミノ基のα−ハロアクリロイルアミノ基への変換である。このような反応自体は既知である。こうした変換反応は、一般的には、中性〜アルカリ性媒質中、例えば温度20〜70℃、例えばpH6〜14で行われる。
【0038】
式(2)および(3)の化合物は既知であるかまたは既知の製造方法に類似する方法で製造することができる。
【0039】
本発明の式(1)の反応染料は、窒素含有繊維材料またはヒドロキシル基含有繊維材料、紙または皮、例えばセルロース、絹、特に羊毛または合成ポリアミド製の紡織繊維材料を染色または捺染するのに適している。
【0040】
天然または合成ポリアミド繊維材料、特に合成ポリアミド繊維材料の染色または捺染が好ましい。
【0041】
式(1)の反応染料は、良好な万能性、特に良好な摩擦堅牢度、湿潤堅牢度、湿潤摩擦堅牢度および耐光堅牢度を有する、均等で鮮明な染色物をもたらす。それらは均一な発色、良好な親和性、高い反応性、良好な固着能および極めて良好なビルドアップ能も特徴とする。本発明の染料は良好な水溶性を有し、他の染料と容易に組み合わせることができる。
【0042】
本発明は、ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料、好ましくは天然または合成ポリアミド繊維材料、特に合成ポリアミド繊維材料を染色または捺染する方法であって、少なくとも1種の式(1)の反応染料(式中、R、R、Z、mおよびnは、先の定義および好ましい意味を有する)
を、式
【0043】
【化13】

【0044】
[式中、
、R、R、R、R12、R13およびR16は、互いに独立して、水素または非置換もしくは置換C〜Cアルキルであり、
、R10、R14およびR17は、互いに独立して、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはスルホであり、
(R0−2および(R110−2は、互いに独立して、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルカノイルアミノ、ウレイド、スルファモイル、ハロゲン、スルホおよびカルボキシの群から選択される0、1または2個の置換基であり、
は、アミノまたはN−モノ−もしくはN,N−ジ−C〜Cアルキルアミノであり、
15は、C〜Cアルキル、カルボキシ、非置換C〜Cアルコキシまたはカルボキシで置換されたC〜Cアルコキシであり、
Kは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、スルファモイル、カルバモイル、ハロゲン、スルホおよびカルボキシの群から選択される0、1、2または3個の置換基で置換されたフェニル基であるか、1、2または3個のスルホ基で置換されたナフチル基であり、
、Z、ZおよびZは、互いに独立して、Zに与えられた定義を有し、
qは、数0または1であり、
r、s、tおよびvは、互いに独立して、数0、1または2である]
の群から選択される少なくとも1種の反応染料と一緒に使用することを含む、方法にも関する。
【0045】
〜Cアルキル基としての基R、R、R、R、R12、R13およびR16は、直鎖または分枝鎖である。挙げることができる例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル、好ましくはメチルおよびエチルである。アルキル基は非置換であるか、または例えばヒドロキシ、スルホ、スルファト、シアノもしくはカルボキシによって更に置換されていてもよい。置換基として好ましいのは、ヒドロキシ、スルホまたはスルファト、特にヒドロキシまたはスルファト、とりわけヒドロキシである。非置換基が好ましい。
【0046】
、R、R10、R11、R14、R15およびR17について、C〜Cアルキルとしては、互いに独立して、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルおよびイソブチル、好ましくはメチルまたはエチル、特にメチルが考慮される。
【0047】
、R、R10、R11、R14、R15およびR17について、C〜Cアルコキシとしては、互いに独立して、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシおよびイソブトキシ、好ましくはメトキシまたはエトキシ、特にメトキシが考慮される。基R15は、カルボキシで置換されていてもよい。
【0048】
、R、R10、R11、R14およびR17について、ハロゲンとしては、互いに独立して、例えばフッ素、塩素および臭素、好ましくは塩素または臭素、特に塩素が考慮される。
【0049】
およびR11について、C〜Cアルカノイルアミノとしては、互いに独立して、例えばアセチルアミノおよびプロピオニルアミノ、特にアセチルアミノが考慮される。
【0050】
について、N−モノ−またはN,N−ジ−C〜Cアルキルアミノとしては、例えばメチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ、N,N−ジメチルアミノおよびN,N−ジエチルアミノ、好ましくはメチルアミノ、エチルアミノ、N,N−ジメチルアミノまたはN,N−ジエチルアミノ、特にメチルアミノ、エチルアミノまたはN,N−ジメチルアミノが考慮される。
【0051】
フェニル基としてのKは、非置換であるかまたはC〜Cアルキル(例えばメチルもしくはエチル、好ましくはメチル)、C〜Cアルコキシ(例えばメトキシもしくはエトキシ、好ましくはメトキシ)、スルファモイル、カルバモイル、ハロゲン(例えば臭素、塩素もしくはフッ素、好ましくは塩素)、スルホおよびカルボキシの群から選択される1、2または3個の置換基で置換される。
【0052】
ナフチル基としてのKは、1、2または3個、好ましくは1または2個のスルホ基で置換される。
【0053】
好ましくは、基R、RおよびR12は、互いに独立して、水素、メチルまたはエチル、特に水素である。
【0054】
好ましくは、基R、R、R13およびR16は、互いに独立して、水素、メチルまたはエチル、特に水素である。
【0055】
本発明の具体的な実施態様では、基R、R、R13およびR16がエチルである。
【0056】
基R、R10、R14およびR17は、互いに独立して、Rに関して上述した好ましい意味を有する。
【0057】
好ましくは、RおよびR11は、互いに独立して、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルカノイルアミノ、ウレイド、スルホまたはカルボキシ、特にC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルカノイルアミノ、ウレイドまたはスルホである。
【0058】
は、特に好ましくは、スルホ基である。
【0059】
11は、特に好ましくは、ウレイド基またはC〜Cアルカノイルアミノ基、とりわけC〜Cアルカノイルアミノ基である。
【0060】
は、好ましくは、アミノである。
【0061】
Kは、好ましくは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲンおよびスルホ、特にハロゲンおよびスルホの群から選択される1、2または3個の置換基で置換されたフェニル基である。
【0062】
、ZおよびZは、互いに独立して、Zに関して上述した定義および好ましい意味を有する。
【0063】
式(7)の反応染料において、Zは、好ましくは、式(2a)または(2b)、特に式(2b)の基であり、式中の可変部は先の定義および好ましい意味を有する。
【0064】
qは、好ましくは、数0である。
【0065】
r、s、tおよびvについては、互いに独立して、nに関して上述した定義および好ましい意味が考慮される。
【0066】
式(1)の反応染料が、式(1a)の反応染料(式中、Zは、先の定義および好ましい意味を有し、そしてZおよびスルホ基は、好ましくは、先に示したように結合している)である本発明の方法は、特に好ましい。
【0067】
式(4)の反応染料において、R、RおよびRが、それぞれ水素であり、Rが、スルホ基であり、Rが、アミノであり、Zが、式(2a)の基(式中、Yはビニルである)であり、qおよびrが、それぞれ数0である本発明の方法は、好ましい。
【0068】
式(5)の反応染料において、R、RおよびR10が、それぞれ水素であり、R11が、アセチルアミノ基であり、Zが、式(2a)の基(式中、Yはビニルである)であり、sが数0であり、ナフチルジアゾ部分が2個のスルホ基を有する本発明の方法は、好ましい。
【0069】
式(6)の反応染料において、R12、R13およびR14が、それぞれ水素であり、R15が、メチルであり、Zが、式(2a)の基(式中、Yはビニルである)であり、tが数0であり、Kが、2,5−ジクロロ−4−スルホフェニル基である本発明の方法は、好ましい。
【0070】
式(7)の反応染料において、R16およびR17が、それぞれ水素であり、Zが、式(2b)の基(式中、Yはビニルであり、kは数2である)であり、vが数0である本発明の方法は、好ましい。
【0071】
本発明の具体的な実施態様は、少なくとも1種の式(1)の反応染料を、式(6)の反応染料と一緒に使用することを含み、式中、R、R、R12、R13、R14、R15、K、Z、Z、m、nおよびtは先の定義および好ましい意味を有する。
【0072】
上述した実施形態では、いかなる触媒退色(catalytic fading)もほとんど示さない鮮明な緑色相が得られる。
【0073】
式(4)、(5)、(6)および(7)の反応染料は既知であるかまたは既知の製造方法に類似する方法で製造することができる。
【0074】
本発明の式(1)の反応染料中ならびに式(4)、(5)、(6)および(7)の反応染料中に存在するスルホ基は、それぞれ、それらの遊離酸の形態にあるかまたは好ましくは、その塩の形態にある。考慮される塩には、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩、有機アミンの塩、ならびにそれらの混合物が含まれる。挙げることのできる例は、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、モノ−、ジ−またはトリ−エタノールアミンの塩、ならびにNa/Li混合塩またはNa/Li/NH混合塩である。
【0075】
本発明の式(1)の反応染料ならびに式(4)、(5)、(6)および(7)の反応染料は、更なる添加剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストリンを含みうる。
【0076】
本発明の方法および式(1)の反応染料は、通常の染色または捺染工程にしたがって使用することができる。染色液または捺染糊は、水および染料の他に、更なる添加剤、例えば湿潤剤、消泡剤、均染剤または紡織材料の性質に影響を及ぼす薬剤、例えば柔軟剤、難燃加工用添加剤または防汚剤、撥水剤および撥油剤、ならびに硬水軟化剤および天然または合成増粘剤、例えばアルギナートおよびセルロースエーテルを含みうる。
【0077】
染浴または捺染糊中に使用する個々の染料の量は、所望する色の深みに応じて広範囲に変えることができ、染色すべき物品および捺染糊に基づいて、0.01〜15重量%、特に0.1〜10重量%の量は、有利であることがわかっている。
【0078】
カーペット生地の場合は、例えば置換捺染(displacement printing)またはスペース染色(space dyeing)といった捺染法が重要である。
【0079】
特に吸尽法にしたがって行われる染色は好ましく、カーペット染色の場合は連続法にしたがって行うこともできる。
【0080】
合成ポリアミド繊維を、pH値2〜7、特に2.5〜5.5、とりわけ2.5〜4で染色することが好ましい。浴比は広い範囲から、例えば1:5〜1:50、好ましくは1:5〜1:30から選択することができる。染色は、好ましくは、温度80〜130℃、特に85〜120℃で行われる。
【0081】
染色された合成ポリアミド繊維の湿潤堅牢性を高めるために、例えばpH値7〜12、特に7〜9で、かつ例えば温度30〜100℃、特に50〜80℃で後処理を行って、いかなる未固着染料も除去することができる。強い色相、例えば極めて深い色の染色物の場合、特にファイバーブレンドでは、アルカリ性後処理浴に、還元剤、例えばヒドロ亜硫酸塩(例えばヒドロ亜硫酸ナトリウム)を添加することにより、未固着染料を還元的に有利に除去することができる。繊維材料中に固着した染料は、この処理によって破壊されない。添加する還元剤の量は、後処理浴の重量に基づいて、例えば0.1〜6重量%、特に0.5〜5重量%であると有利である。
【0082】
本発明の工程で使用する反応染料は、均一な発色、良好な親和性および良好な固着能、異なる濃度でも良好な明度の一貫性、良好な堅牢性を特徴とし、そして特に他の染料と容易に組み合わせることもできる。本発明の方法で使用される反応染料は、有利なことに、メタメリズム制御に適している。すなわち、日光の下で一致する2つの明度は、他の光、例えば人工光の下でも一致するだろう。
【0083】
本発明にしたがって染色または捺染するのに適した合成ポリアミド繊維材料には、例えばポリアミド−6(ポリ−ε−カプロラクタム)、ポリアミド−6,6(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド−7、ポリアミド−6,12(ポリヘキサメチレンドデカノアミド)、ポリアミド−11およびポリアミド−12、ポリアミド−6,6またはポリアミド−6とのコポリアミド(例えばヘキサメチレンジアミン、ε−カプロラクタムおよびアジピン酸のポリマー、ならびにアジピン酸、ヘキサメチレンジアミンおよびイソフタル酸のポリマーまたはアジピン酸、ヘキサメチレンジアミンおよび2−メチルペンタメチレンジアミンもしくは2−エチルテトラメチレンジアミンのポリマー)、更には合成ポリアミドおよび羊毛の混紡生地または混紡糸などが含まれる。
【0084】
本発明の方法および本発明の反応染料は、合成ポリアミドの超微細繊維の染色または捺染にも有利に適している。超微細繊維は、個々の繊度が1デニール(1.1dTex)である糸から構築された繊維材料を意味すると理解される。そうした超微細繊維は既知であり、通常は溶融紡糸によって製造される。
【0085】
先の紡織材料は、例えば繊維、糸、織物または編物の形態およびカーペットの形態など、極めて広範囲にわたる製品形態をとりうる。
【0086】
良好な万能性、特に良好な摩擦堅牢度、湿潤堅牢度、湿潤摩擦堅牢度および耐光堅牢度を有する、均染染色物が得られる。
【0087】
以下の実施例は本発明を例示するのに役立つ。温度は摂氏温度で記載する。別段の指定がない限り、部は重量部であり、百分率は重量パーセントに関する。重量部は、リットル数キログラム数とリットル数と同じ比である。
【0088】
〔実施例1〕
(a)塩化シアヌル4.7部を、温度0〜2℃で10〜15分間、氷47部、水23部およびNaHPO・12HO 0.025部に懸濁した。次に、2N水酸化ナトリウム水溶液を添加することによってpH値を5に維持しながら、温度0〜2℃で45分間かけて、水150部および2N水酸化ナトリウム水溶液18.1部に溶解した式:
【0089】
【化14】

【0090】
の化合物12部の溶液を投入した。次いで、温度0〜2℃で40分間撹拌した。式:
【0091】
【化15】

【0092】
の化合物(遊離酸の形で示したもの)を含む溶液を得た。
【0093】
(b)式:
【0094】
【化16】

【0095】
の化合物8.2部を水140部に溶解した。得られた溶液を、(a)にしたがって得た溶液(温度0〜2℃に冷却したもの)に、45分間かけて滴下した。添加中は、2N水酸化ナトリウム水溶液を使ってpH値を6に維持した。次に、撹拌を温度0〜2℃、pH値6で一晩行った。β−スルファトエチルスルホニル型をビニル型に変換するために、2N水酸化ナトリウム溶液を使ってpH値を10に調節し、室温で30分間撹拌した。次に、希塩酸を使って反応混合物を中性にした後、塩化ナトリウムを添加してから、氷浴中で1時間撹拌した。沈殿した染料を濾別し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、温度40℃で乾燥した。遊離酸の形で、式:
【0096】
【化17】

【0097】
の化合物に相当する染料を得た。式(101)の染料は、羊毛および合成ポリアミド繊維材料を青色相に染色した。
【0098】
〔実施例2〜5〕
羊毛および合成ポリアミドを鮮明な青色相に染色する式:
【0099】
【化18】

【0100】
の染料を、実施例1に記載した方法と類似する方法で得ることができた。
【0101】
染色手順I:
酢酸アンモニア2g/lを含有する水性液(酢酸を使ってpH5に調節したもの)500部中で、ポリアミド−6,6繊維材料(Helancaジャージー)10部を染色した。実施例1に記載の染料の含量は、繊維の重量に基づいて0.8%だった。温度98℃における染色の継続時間は、30〜90分だった。次に、染色された繊維材料を取り出し、通常どおりに洗浄し、乾燥した。極めて良好な堅牢性を有する鮮明な青色染色物を得た。
【0102】
染色手順II:
水100部につき、実施例1の染料0.8部、硫酸ナトリウム0.5部および酢酸ナトリウム2部を含有する染浴(酢酸(80%)でpH4.5に調節したもの)中、30℃で、紡毛編糸10部を撹拌した。液を45分間かけて沸騰させ、沸騰温度を更に45〜70分間維持した。次に、染色された材料を取り出し、冷水で十分にすすぎ、乾燥した。極めて良好な堅牢性を持つ鮮明な青色染色物を得た。
【0103】
工程例1:
染浴1000部につき、
式(101)の青色染料0.46部、
式:
【0104】
【化19】

【0105】
の赤色染料0.28部および
式:
【0106】
【化20】

【0107】
の黄色染料0.8部
を含み、そして更に市販増粘剤1.0部、市販不凍剤3.0部、非イオン性湿潤剤1.0部および染浴のpH値を5.5で安定させるのに十分な量のクエン酸を含有する染浴から、ポリアミド−6,6カーペット生地を連続的に染色した。次に、カーペット生地を、蒸気中、100℃で5分間固着し、通常の方法で洗浄し、乾燥した。該カーペット生地は、良好な堅牢性を持つ均一な暗褐色染色物であるという特徴を示した。
【0108】
工程例2および3:式(101)の青色染料0.46部、式(106)の赤色染料0.28部および式(107)の黄色染料0.8部を使用する代わりに、下記表1の第2欄に示す反応染料を表示した量で使用して、工程例1の場合と同様にして、良好な均染性および良好な堅牢性を有する褐色染色物を同様に得た。
【0109】
【表1】

【0110】
工程例4:染色装置において、ポリアミド−6,6ジャージー織物100kgを、酢酸4kg、湿潤剤0.5gおよび均染剤1kgを含有する液2000リットルにより、40℃で10分間処理した。液のpHは3.4だった。次に、少量の水に予め溶解しておいた式(101)の染料430gおよび式(108)の染料440gを加えた。
【0111】
染色すべき材料を該染料液中、40℃で5分間処理した後、加熱速度1℃/分で98℃まで加熱し、その温度で60分間染色した。染色物を通常の方法で仕上げた。極めて良好な堅牢性を持つ鮮明な緑色の均染染色物を得た。
【0112】
工程例5:染色装置において、ポリアミド−6,6超微細繊維の生地70kgを、ギ酸3kg、湿潤剤0.4kgおよび均染剤0.7kgを含有する液1500リットルにより、40℃で10分間処理した。液のpHは2.9であった。次に、少量の水に予め溶解しておいた式(107)の染料700g、式(106)の染料1300gおよび式(101)の染料430gを加えた。染色すべき材料を、染料液中、40℃で5分間処理した後、加熱速度1℃/分で110℃まで加熱し、その温度で60分間染色した。染色手順に続いて、湿潤堅牢性を改善するためにアルカリ後処理を行った。そのために、ソーダ2g/lを含有するpH9.2の新しい浴を使って、染色物を60℃で20分間処理した。次に、染色物をすすぎ、通常の方法で仕上げた。優れた堅牢性を持つ均染染色物を得た。
【0113】
工程例6:アルカリ後処理を60℃ではなく70℃で行った点以外は、工程例4に記述したとおりの手順にしたがった。
【0114】
工程例7:アルカリ後処理をソーダ5g/lおよびヒドロ亜硫酸塩5g/lを含有する浴で行った点以外は、工程例4に記述したとおりの手順にしたがった。この浴を使って、染色物を70℃で20分間処理した。
【0115】
工程例8:(スペース染色):
最初に、液1000部につき、下記の成分を含有する液を使って、ポリアミド−6糸のカーペットをパッド染色した。
式(101)の青色染料0.008部、
式(106)の赤色染料0.003部、
式(107)の黄色染料0.01部、
市販増粘剤3.00部、
市販非イオン性湿潤剤2.00部、
市販不凍剤1.00部、
クエン酸必要量を使ってpHを5に調節。
【0116】
次に、染色したカーペットの領域を、捺染糊1000部につき、下記の成分を含有する捺染糊を使って、捺染した:
式(101)の青色染料0.50部、
式(106)の赤色染料0.50部、
市販増粘剤15.0部、
市販非イオン性湿潤剤2.00部、
市販不凍剤1.00部、
クエン酸必要量を使ってpHを5に調節。
次に、染色し部分的に捺染したカーペットを、飽和蒸気により、100℃で5分間処理し、通常の方法で洗浄し、乾燥したところ、ベージュ色の地に赤く捺染された部分を持ち、それらの部分が良好な均染性および良好な堅牢性という特徴を示すカーペットを得た。
【0117】
工程例9(連続染色):ポリアミド−6,6糸のカーペットを、液1000部につき、下記の成分を含有する液を使って、連続的に染色した:
式(101)の青色染料0.46部、
式(106)の赤色染料0.28部、
式(107)の黄色染料0.8部、
市販増粘剤1.00部、
市販非イオン性湿潤剤1.00部、
市販不凍剤3.00部、
クエン酸必要量を使ってpHを5.5に調節。次に、染色したカーペット生地を、飽和蒸気により、100℃で5分間処理し、通常の方法で洗浄し、乾燥したところ、良好な堅牢性を持つ均等な暗褐色染色を特徴とするカーペットを得た。
【0118】
工程例10(置換捺染):
最初に、ポリアミド−6,6糸のカーペットを、下記の成分を含有する種々の捺染糊(一部の成分は量x、yおよびzが変動する)で捺染した。
Tectilon(登録商標)Yellow 3R(Ciba Specialty Chemicals)x部、
Tectilon(登録商標)Red 2B(Ciba Specialty Chemicals)y部、
Tectilon(登録商標)Blue 4R-01(Ciba Specialty Chemicals)z部、
(例えばxは1.05、yは0.34、zは1.01である)
市販増粘剤15.0部、
Lyoprint(登録商標)MP 10.0部、
市販非イオン性湿潤剤2.00部、
市販不凍剤1.00部、
クエン酸必要量を使ってpHを4に調節。
次に、捺染したカーペットを、液1000部につき、下記の成分を含有する液で染色した(液のピックアップは350%だった):
式(101)の青色染料1.90部、
式(106)の赤色染料0.62部、
式(107)の黄色染料1.26部、
市販増粘剤1.00部、
市販非イオン性湿潤剤2.00部、
市販不凍剤2.00部、
クエン酸必要量を使ってpHを5.5に調節。
次に、カーペットを飽和蒸気により、100℃で5分間処理し、通常の方法で洗浄し、乾燥したところ、暗紫色の地に着色部分を持ち、それらの部分が良好な均染性および良好な堅牢性という特徴を示すカーペットを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】


[式中、
は、場合により置換されているC〜Cアルキルであり、
は、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはスルホであり、
は、式:
【化2】


(式中、
Halは、塩素または臭素であり、
Yは、ビニルまたは基−CHCH−Uであり、Uは、アルカリ条件下で除去することができる基であり、
kは、数2、3、4、5または6である)
の基であり、
nは、数0、1または2であり、
mは、数0または1である]
の反応染料。
【請求項2】
が、メチルまたはエチル、好ましくはエチルである、請求項1記載の反応染料。
【請求項3】
が、式(2a)の基であり、Yが、ビニルである、請求項1または2記載の反応染料。
【請求項4】
mが、数1であり、nが、数0である、請求項1〜3のいずれか一項記載の反応染料。
【請求項5】
式(1)の反応染料の製造方法であって、式:
【化3】


の化合物および式:
【化4】


の化合物(R、R、Z、mおよびnは、請求項1で定義したとおりである)を、塩化シアヌルと反応させることを含む、方法。
【請求項6】
ヒドロキシル基含有繊維材料または窒素含有繊維材料の染色または捺染における、請求項1〜4のいずれか一項記載の反応染料の使用または請求項5によって得られる反応染料の使用。
【請求項7】
天然または合成ポリアミド繊維材料、特に合成ポリアミド繊維材料が染色または捺染される、請求項6記載の使用。
【請求項8】
ヒドロキシル基含有繊維材料または窒素含有繊維材料を染色または捺染する方法であって、少なくとも1種の式
【化5】


[式中、
は、場合により置換されているC〜Cアルキルであり、
は、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはスルホであり、
は、式:
【化6】


(式中、
Halは、塩素または臭素であり、
Yは、ビニルまたは基−CHCH−Uであり、Uは、アルカリ条件下で除去することができる基であり、
kは、数2、3、4、5または6である)
の基であり、
nは、数0、1または2であり、
mは、数0または1である]
の反応染料を、式:
【化7】


[式中、
、R、R、R、R12、R13およびR16は、互いに独立して、水素または非置換もしくは置換C〜Cアルキルであり、
、R10、R14およびR17は、互いに独立して、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはスルホであり、
(R0−2および(R110−2は、互いに独立して、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルカノイルアミノ、ウレイド、スルファモイル、ハロゲン、スルホおよびカルボキシの群から選択される0、1または2個の置換基であり、
は、アミノまたはN−モノ−もしくはN,N−ジ−C〜Cアルキルアミノであり、
15は、C〜Cアルキル、カルボキシ、非置換C〜Cアルコキシまたはカルボキシで置換されたC〜Cアルコキシであり、
Kは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、スルファモイル、カルバモイル、ハロゲン、スルホおよびカルボキシの群から選択される0、1、2または3個の置換基で置換されたフェニル基であるか、1、2または3個のスルホ基で置換されたナフチル基であり、
、Z、ZおよびZは、互いに独立して、Zに与えられた定義を有し、
qは、数0または1であり、
r、s、tおよびvは、互いに独立して、数0、1または2である]
の群から選択される少なくとも1種の反応染料と一緒に使用することを含む方法。
【請求項9】
少なくとも1種の式(1)の反応染料を、式(6)の反応染料(R、R、R12、R13、R14、R15、K、Z、Z、m、nおよびtは、請求項8で定義したとおりである)と一緒に使用することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
天然または合成ポリアミド繊維材料、特に合成ポリアミド繊維材料が染色または捺染される、請求項8または9のどちらか一項記載の方法。

【公表番号】特表2006−508225(P2006−508225A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556327(P2004−556327)
【出願日】平成15年11月24日(2003.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050878
【国際公開番号】WO2004/050769
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】