説明

反応染料組成物及び該組成物を用いた染色法

【課題】 各種の染色条件における水に対する溶解度と、得られた染色物における各種堅牢度に優れた青色反応染料組成物を提供すること。
【解決手段】 遊離酸の形で表すと、下式(II)で示される染料群から選ばれる少なくとも2種の青色反応染料を含むことを特徴とする青色反応染料組成物。


[式中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基を表す。X’は塩素原子、フッ素原子、臭素原子又は水酸基を表す。Q’は−SO−CH=CH又は−SO−CHCHを表す。Lはアルカリの作用で脱離する基又は水酸基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維材料等を染色する際に有用な青色反応染料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
下式(III)で示される反応染料は、セルロース繊維材料を青色に染色する染料として公知である(下記特許文献1を参照)。
【0003】

(III)
【0004】
【特許文献1】特開昭59−228090号公報(実施例8を参照)
【0005】
しかしながら、上記反応染料(III)は染色浴中において水に対する溶解度が低い染料であり、濃色の染色物を再現性良く得ることが困難であった。また、黄色反応染料及び/又は赤色反応染料と反応染料(III)とを配合して染色する際に反応染料(III)が染色浴中で析出して、染色物に斑が生じ易いという問題もあった。さらに、黄色反応染料及び/又は赤色反応染料と反応染料(III)を配合染色して得た染色物の摩擦堅牢度や耐光堅牢度が不良になるという問題が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の事情から、青色反応染料(III)の代替品が求められていた。
本発明の目的は、各種の染色又は捺染条件において、水に対して充分な溶解度を有する青色反応染料組成物を提供することにある。また、黄色反応染料及び/又は赤色反応染料と配合染色した際に得られた染色物に斑が生じない青色反応染料組成物を提供することにある。さらに、青色反応染料組成物を黄色反応染料及び/又は赤色反応染料と配合染色した際に、得られた染色物の摩擦堅牢度や耐光堅牢度等が良好である繊維材料の染色方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、次の(i)〜(iv)を提供するものである。
(i)遊離酸の形で表すと、下式(II)で示される染料群から選ばれる少なくとも2種の青色反応染料を含むことを特徴とする青色反応染料含有組成物。
【0008】

【0009】
[式中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基を表す。X’は塩素原子、フッ素原子、臭素原子又は水酸基を表す。Q’は−SO−CH=CH又は−SO−CHCHを表す。Lはアルカリの作用で脱離する基又は水酸基を表す。]
【0010】
(ii)さらに、遊離酸の形で表すと、下式(I)で示される染料群から選ばれる少なくとも1種の赤色染料を含む上記(i)に記載の反応染料含有組成物。
【0011】

【0012】
[式中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基を表す。Xは塩素原子、フッ素原子、臭素原子又は水酸基を表す。Qは−SO−CH=CH又は−SO−CHCHを表す。Lはアルカリの作用で脱離する基又は水酸基を表す。]
(iii)上記(i)又は(ii)記載の反応染料含有組成物を用いることを特徴とする繊維材料の染色方法。
(iv)上記(i)又は(ii)記載の反応染料含有組成物を用いることを特徴とする繊維材料の捺染方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明(i)又は(ii)記載の反応染料組成物は、各種の染色条件において水に対する溶解度が良好である。また、本発明(iii)により得られた染色物の摩擦堅牢度や耐光堅牢度等は良好である。さらに、本発明(iv)により得られた捺染物は、均一で斑のないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明(i)や(ii)における染料群(II)や染料群(I)において、RやRは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)、アルキルカルボニル基(好ましくは炭素数2〜5のアルキルカルボニル基)又はフェニルカルボニル基を表す。アルキルカルボニル基としては、特にアセチル基又はプロピオニル基が好ましい。
染料群(II)や染料群(I)において、X’及びXは塩素原子、フッ素原子、臭素原子又は水酸基を表す。
染料群(II)において、Q’は−SOCH=CH又は−SOCHCHを表す。Lはアルカリの作用で脱離する基又は水酸基を表す。
染料群(I)において、Qは−SOCH=CH又は−SOCHCHを表す。Lはアルカリの作用で脱離する基又は水酸基を表す。
上記のアルカリの作用で脱離する基LやLとしては、例えば、硫酸エステル基、チオ硫酸エステル基、燐酸エステル基、酢酸エステル基、ハロゲン原子又はピリジニオ基等を挙げることができる。該ピリジニオ基における水素原子の1〜2個は、カルボキシ基及びカルバモイル基からなる群より選ばれる置換基の1〜2個によって置換されていてもよい。
【0015】
染料群(II)や染料群(I)において、X’及びXは塩素原子、フッ素原子、臭素原子又は水酸基を表す。
【0016】
また、好ましい染料群(II)としては、−NH−基及びQ’が置換されたベンゼン環上の−NH−基が結合した炭素原子を1−位としたとき、上記Q’が3−位又は4−位の炭素原子に結合する染料が挙げられる。
さらに、好ましい染料群(I)としては、−NH−基及びQが置換されたベンゼン環上の−NH−基が結合した炭素原子を1−位としたとき、上記Qが3−位又は4−位の炭素原子に結合する染料が挙げられる。
【0017】
本発明において用いられる染料群(II)や染料群(I)は、それぞれ、遊離酸の形のものとその塩との混合物の形であってもよい。染料群(II)や染料群(I)としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であることが好ましい。また、ナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩、及びこれらの塩を含有する混合物であることが特に好ましい。
【0018】
本発明(i)では、青色染料群(II)の合計量と赤色染料群(I)の合計量との重量比が、(1〜50):(50〜99)の範囲であることが好ましい。
本発明(ii)では、青色染料群(II)の合計量と赤色染料群(I)の合計量との重量比が、(0.5〜50.0):(50.0〜99.5)の範囲であることが好ましい。
本発明(ii)では、青色染料群(II)の合計量と赤色染料群(I)の合計量との重量比が(1〜50):(50〜99)の範囲であることが特に好ましい。
【0019】
青色染料群(II)及び赤色染料群(I)は、例えば、特公昭62−001036号公報や特開昭56−118976号公報に記載の方法、又はこれらの公報記載の方法に準じて製造することができる。
【0020】
本発明(ii)において、青色染料群(II)及び赤色染料群(I)の混合方法は特に限定されるものではない。例えば、青色染料群(II)及び赤色染料群(I)を染色前に予め混合しておいてもよいし、青色染料群(II)及び赤色染料群(I)を染浴中で混合してもよい。また、青色染料群(II)の中間体化合物に赤色染料群(I)の2種の中間体化合物をそれぞれ逐次的に反応させて、青色染料群(II)と赤色染料群(I)の混合物を得てもよい。
【0021】
本発明(i)や(ii)の組成物は、繊維材料を染色又は捺染する反応染料として有用である。かかる繊維材料としては、ヒドロキシ基及び/又はアミド基を含有するものであれば特に限定されない。上記の繊維としては、例えば、天然又は再生セルロース繊維、天然又は合成ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、皮革、及びこれらを含有する混紡材料等を挙げることができる。天然セルロース繊維の具体例は、木綿、リネン、麻、ジュートやラミー繊維等を挙げることができる。好ましい天然セルロース繊維は、木綿である。
【0022】
再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン、ポリノジック、キュプラ繊維、テンセル(商品名)、タフセル(商品名)、モダール(商品名)、セルティマ(商品名)等を挙げることができる。天然又は合成ポリアミド繊維としては、例えば、羊毛、絹、ポリアミド−6,6、ポリアミド−6、ポリアミド−11やポリアミド−4等を挙げることができる。また、これらを含有する混紡材料としては、これら繊維材料の混紡材料の他、これらの繊維材料と、ポリエステル、ナイロンやアクリル等の合成繊維との混紡材料等も例示される。
【0023】
本発明(i)や(ii)の組成物は、上述の繊維材料上に物理的化学的性状に応じた方法で染色又は捺染することができる。具体的には、上述の繊維上に吸尽染色法、コールドパッドバッチアップ法、連続染色法や捺染法等の方法により染色又は捺染することができる。
例えば、セルロース繊維上に吸尽染色法で染色する場合においては、炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ、第三燐酸ソーダや苛性ソーダ等のアルカリの存在下、必要に応じて芒硝、食塩等の中性塩を加え、さらに必要に応じて溶解助剤、浸透剤又は均染剤等を併用し、30〜100℃程度の温度で染色する方法等が例示される。ここでアルカリや中性塩等の添加は、一度に行ってもよく、分割して行ってもよい。
【0024】
セルロース繊維上にコールドパッドバッチアップ法で染色する場合においては、中性塩(芒硝や食塩等)及びアルカリ(苛性ソーダやケイ酸ソ−ダ等)を用いてパジング後、密閉包装材料中に一定温度で放置して処理する方法等が例示される。
セルロース繊維上に連続染色法で染色する場合においては、アルカリ(炭酸ソーダや重炭酸ソーダ等)の存在下、室温又は高められた温度でパジング後、スチーミング又は乾熱により処理する一相パジング法や、本発明の組成物が溶解されているパジング液に繊維を浸漬後、中性塩(芒硝又は食塩等)及びアルカリ(苛性ソーダやケイ酸ソ−ダ等)をパジングし、スチーミング又は乾熱することにより処理する二相パジング法等が例示される。
【0025】
セルロース繊維上に捺染する場合においては、アルカリ(重曹等)を含有する捺染ペーストで印捺し、次いで80℃以上の高温でスチーミングする一相法や、例えば中性又は弱酸性の捺染ペーストで印捺し、これを電解質含有のアルカリ性浴に通過させた後、又はアルカリ性の電解質含有パジング液でオーバパジングし、その後スチーミング又は乾熱処理することにより処理する二相法等が例示される。ここで、捺染ペーストには、例えばアルギン酸ソーダ、澱粉エーテル等の糊剤及び/又は乳化剤を含んでいてもよく、また、必要に応じて尿素等の捺染助剤及び/又は分散剤を含んでいてもよい。
【0026】
セルロース繊維上に本発明の組成物を染色又は捺染する場合、用いられるアルカリは特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属と無機酸又は有機酸との水溶性塩基性塩、又は、加熱状態でアルカリを遊離する化合物等を例示することができる。特に、アルカリ金属の水酸化物及び弱ないし中程度の強さの無機酸又は有機酸のアルカリ金属塩が挙げられ、これらの中でも、ナトリウム又はカリウムの水酸化物、ナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。このようなアルカリとしては、炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ、第三燐酸ソーダ、苛性ソーダ、ケイ酸ソーダ、苛性カリ、蟻酸ソーダ、炭酸カリ、第一燐酸ソーダ、第二燐酸ソーダやトリクロロ酢酸ソーダ等を用いることもできる。
【0027】
本発明(i)や(ii)の組成物で着色されたセルロース系繊維は、白色または着色抜染することができる。抜染法の例として、スルフィン系還元剤、例えばジンクスルフォキシレートホルムアルデハイド[Zn(HSOHCOH)]、ソジウムスルフォキシレートホルムアルデハイド[NaHSOHCOH・2HO]、ソジウムジンクスルホキシレート[Na・ZnS]を含む捺染糊を印捺してスチーム処理する白色抜染法や、上記の抜染剤に加えて着色用染料としてバット染料、硫化染料又は耐還元性の顔料を含む捺染糊を印捺してスチーム処理する着色抜染法が挙げられる。
【0028】
合成ポリアミド繊維又は天然ポリアミド繊維上や、ポリウレタン繊維上に吸尽染色する場合においては、酸性〜弱酸性の染浴中、pHの制御下に、本発明の組成物を吸尽させ、次いで60〜120℃程度の温度下、中性〜アルカリ性にpHを変化させる方法等が例示される。必要に応じて、均染剤(塩化シアヌルとアミノベンゼンスルホン酸の縮合生成物、塩化シアヌルとアミノナフタレンスルホン酸の縮合生成物、ステアリルアミンとエチレンオキサイドとの付加生成物等)を用いてもよい。
【0029】
本発明の組成物(i)や(ii)は、所望の色相を得るために、必要に応じて本発明の特徴を損なわない範囲で、他の染料と混合して使用することができる。混合して使用する染料としては、反応染料であれば特に制約はないが、例えば、反応基としてスルファトエチルスルホン基、ビニルスルホン基、モノクロロトリアジン基、モノフルオロトリアジン基、モノニコチン酸トリアジン基、ジクロロトリアジン基、ジフルオロモノクロロピリミジン基及びトリクロロピリミジン基の少なくとも1種を少なくとも1つ以上有する染料、又はSumifix、Sumifix HF、Sumifix Supra、Remazol、Levafix、Procion、Cibacron、Basilen、Drimarene、Kayacion、Kayacelon React等の冠称名で市販されている染料、更には、特開昭50−178号公報、特開昭56−9483号公報、特開昭56−15481号公報、特開昭56−118976号、特開昭56−128380号公報、特開昭57−2365号公報、特開昭57−89679号公報、特開昭57−143360号公報、特開昭59−15451号公報、特開昭58−191755号公報、特開昭59−96174号公報、特開昭59−161463号公報、特開昭60−6754号公報、特開昭60−123559号公報、特開昭60−229957号公報、特開昭60−260654号公報、特開昭61−126175号公報、特開昭61−155469号公報、特開昭61−225256号公報、特開昭63−77974号公報、特開昭63−225664号公報、特開平1−185370号公報、特開平3−770号公報、特開平5−32907号公報、特開平5−117538号公報、特開平5−247366号公報や特開平6−287463号公報に記載されている染料、及びC.I.Reactive Blue 19等が例示される。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中の%及び部は、特記しない限り重量%及び重量部を表す。
【0031】
下式(N1)〜(N11)で示される青色反応染料[遊離酸の形で表記]及び下式(R1)〜(R11)で示される赤色反応染料[遊離酸の形で表記]を用いて、下表1に示す組成の青色反応染料含有組成物を作製した。
【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】

【0049】

【0050】

【0051】

【0052】

【0053】

【0054】
【表1】

【0055】
実施例1
綿繊維からなる編み物100部をセットした各染色装置(浴比は1:10、浴温は60℃)中に、組成物No.1〜6で示される各染料組成物の4部及び無水芒硝50部をそれぞれ投入した。次いで、60℃で約20分間編み物を処理後、炭酸ソーダ20部を浴中に投入した。
次に、60℃で60分間編み物を染色した。染色を終了した後に洗浄して、斑のない均一な濃青色の染色物を得た。該染色物の耐光堅牢度及び摩擦堅牢度は良好であった。また、上記染色の再現性も良好であった。
【0056】
実施例2
a)綿繊維からなる編み物100部をセットした各染色装置(浴比は1:10、浴温は70℃)中に、組成物No.7〜12で示される各染料組成物の8部及び無水芒硝50部をそれぞれ投入した。次に、70℃で約20分間編み物を処理後、炭酸ソーダ20部を浴中に投入した。次いで、70℃で60分間編み物を染色した。染色を終了した後に洗浄して、斑のない均一な濃青色の染色物を得た。該染色物の耐光堅牢度は良好であった。また、上記染色の再現性も良好であった。
b)綿繊維からなる編み物100部をセットした各染色装置(浴比は1:10、浴温は70℃)中に、組成物No.7〜12で示される各染料組成物の4部及び無水芒硝50部をそれぞれ投入した。次に、70℃で約20分間編み物を処理後、炭酸ソーダ20部を浴中に投入した。次いで、70℃で60分間編み物を染色した。染色終了後に染色物を洗浄して、斑のない均一な濃青色の染色物を得た。該染色物の耐光堅牢度は良好であった。また、上記染色の再現性も良好であった。
c)上記のa)で得た染色物は、上記のb)で得た染色物に比べて、その表面濃度が充分に濃く染まっていた。
【0057】
実施例3
綿繊維からなる編み物100部をセットした各染色装置(浴比は1:10、浴温は80℃)中に、組成物No.13〜19で示される各染料組成物8部及び無水芒硝の60部を、それぞれ投入した。次に、60℃で約20分間編み物を処理後、38度ボーメの苛性ソーダ3mlを浴中に投入し、60℃で50分間編み物を染色した。染色終了後に染色物を洗浄して、斑のない均一な濃青色の染色物を得た。該染色物の耐光堅牢度及び摩擦堅牢度は良好であった。また、上記染色の再現性も良好であった。
【0058】
実施例4
綿繊維からなる糸1000部をセットしたチーズ染色装置(浴比は1:10、浴温は50℃)中に組成物No.20〜21で示される各染料組成物60部及び食塩の500部を、それぞれ投入した。50℃で20分間処理後、炭酸ソーダ200部を浴中に投入した。次いで、50℃で60分間染色後、得られた染色物を洗浄した。
得られた染色物の耐光堅牢度及び摩擦堅牢度は良好であった。また、チーズの内層と外層間で濃度差のない均一な濃青色の染色糸を得た。チーズの最内層部を観察したが、染色糸に染料の凝集は認められなかった。さらに、チーズ染色の再現性も良好であった。
【0059】
実施例5
レーヨンからなる編み物100部をセットした染色装置(浴比は1:10、浴温は80℃)中に、組成物No.1〜8で示される各染料組成物2部及び無水芒硝30部をそれぞれ投入した。80℃で20分間編み物を処理した後、炭酸ソーダ20部を投入し、80℃で60分間染色後、得られた染色物を洗浄した。耐光堅牢度及び摩擦堅牢度が良好であり、斑の無い均一な濃青色の染色物が得られた。また、上記染色の再現性も良好であった。
【0060】
実施例6
レーヨン織物100部をセットした染色装置(浴比は1:20、浴温は70℃)中に、組成物No.9〜15で示される各染料組成物3部及び無水芒硝各40部をそれぞれ投入し、70℃で20分間編み物を処理後、炭酸ソーダ20部を浴中に投入した。次いで、70℃で60分間編み物を処理して染色した。染色終了後、洗浄して得た染色物は、斑の無い均一な濃青色であり、染色物の耐光堅牢度及び摩擦堅牢度はいずれも良好であった。また、上記染色の再現性も良好であった。
【0061】
実施例7
組成物No.16〜19で示される各染料組成物200部を熱水で溶解後、25℃に冷却し、各液にアルギン酸ソーダ1部、メタニトロベンゼンスルホン酸ソーダ10部及び炭酸水素ナトリウム20部をそれぞれ添加し、さらに水を加えて、25℃で全量を1000部とした。この液をパジング液として用いて各木綿織物をパジングし、織物を120℃で2分間乾燥した。次に100℃で5分間スチーミングして染料を固着させた。均一な濃青色の染色物がそれぞれ得られた。各染色物の耐光堅牢度及び摩擦堅牢度は良好であった。また、上記染色を繰り返しても、染色の再現性は良好であった。
【0062】
実施例8
組成物No.1〜6で示される各染料組成物0.2部、遊離酸の形で表すと下式(IIIa)で示される黄色反応染料(特開昭56−15481号公報参照)0.2部、遊離酸の形で表すと下式(IVa)で示される赤色染料(特開昭50−178号公報参照)0.2部及び無水芒硝50部を、綿繊維からなる編み物100部をセットした染色装置(浴比は1:10、浴温は60℃)中に投入した。投入後、60℃で約20分間編み物を処理した。次いで、炭酸ソーダ20部を浴中に投入し、60℃で60分間編み物を染色した。この際、染色途中において、各色染料間の相容性を観察したところ、各色染料の染着速度が揃っており、相容性は良好であった。染色終了後、洗浄して、均一で斑のない茶褐色の染色物を得た。該染色物の耐光堅牢度及び摩擦堅牢度は良好であった。また、上記染色を繰り返し実施した。得られた各染色物の色相は、一回目と二回目で一致していた。
【0063】

(IIIa)
【0064】

(IVa)
【0065】
比較例1
実施例8で用いた組成物No.1で示される染料組成物の代りに青色反応染料(III)の0.2部を用い、且つ、綿繊維からなる編み物100部をセットした染色装置(浴比は1:10、浴温は60℃)中に式(IIIa)で示される黄色反応染料0.2部、式(IVa)で示される赤色染料0.2部及び無水芒硝50部を投入した。投入後、60℃で約20分間編み物を処理した。次いで、炭酸ソーダ20部を浴中に投入し、60℃で60分間編み物を染色した。染色途中において、各色染料間の相容性を観察したところ、青色染料の染色速度が速すぎて、好ましくない相容性であった。染色終了後、洗浄し、次いで乾燥した。得られた茶褐色の染色布を観察したところ、染色布表面の着色が不均一であった。また、上記の染色布の耐光堅牢度及び摩擦堅牢度は、実施例8で得た染色布に比べて0.5級程度劣っていた。また、上記染色を繰り返し実施したところ、得られた染色布の色相は、一回目の染色時と二回目の染色時で一致しなかった。
【0066】
実施例9
組成物No.10〜19で示される各反応染料組成物0.5部、遊離酸の形で表すと下式(Va)で示される黄色反応染料(特開昭56−15481号公報参照)0.1部、遊離酸の形で表すと下式(VIa)で示される赤色反応染料(特開昭50−178号公報参照)0.2部及び無水芒硝50部を、綿繊維からなるチーズ100部をセットした染色装置(浴比は1:7、浴温は70℃)中に投入し、投入後70℃で約20分間処理後、炭酸ソーダ20部を浴中に投入し、70℃で60分間染色した。各色反応染料の相容性を、染色途中において確認した。各色反応染料の染着速度は揃っており、良好であった。染色終了後に洗浄して、上記チーズの内層と外層とで、濃度差の無い均一なグレー色の染色物が得られた。染色物の耐光堅牢度及び摩擦堅牢度は良好であった。また、上記染色を繰り返し実施したところ、得られた染色物の色相は良く一致していた。
【0067】

(Va)
【0068】

(VIa)
【0069】
実施例10
組成物No.1〜8で示される各反応染料組成物を用いて、以下の組成をもつ色糊を作製した。
<色糊組成>
反応染料組成物 5部
尿素 5部
アルギン酸ソーダ(5%)元糊 50部
熱湯 25部
重曹 2部
バランス(水) 13部
合 計 100部
【0070】
この色糊をシルケット加工綿ブロード上に印捺し、中間乾燥後、100℃で5分間スチーミングを行い、湯洗い、ソーピング、湯洗い及び乾燥して仕上げた。得られた各捺染物の濃度はいずれも濃色であった。また、各捺染物の諸堅牢度はいずれも良好であった。
【0071】
実施例11
上記の実施例10において、組成物No.1で示される反応染料組成物を用いて得た染色布に、以下の組成からなる抜染糊を印捺し、中間乾燥後、100℃で15分間スチーミングを行い、次いで、湯洗い、ソーピング、湯洗い及び乾燥して仕上げた。得られた捺染布は、上記抜染糊を印捺した部分が紺から白色となり、白色抜染法に耐える白度を有していた。
<抜染糊組成>
アルギン酸ソーダ(5%)元糊 50部
熱湯 20部
スルフィン系還元剤 15部
炭酸カリウム 3部
バランス(水) 12部
合 計 100部
【0072】
比較例2
組成物No.1における化合物R1に代えて式(IVa)で示される染料を用いた以外は、実施例10と同様に処理した捺染布を用意した。この捺染布を用いる以外は上記実施例11と同じ方法で抜染処理を行った。抜染糊印捺部は紺色から赤色に変色し、充分な白度を有する布が得られなかった。
【0073】
実施例12
組成物No.9〜15で示される各反応染料組成物30部をそれぞれ熱水に溶解した後、25℃に冷却した。各染料溶液中に32.5%苛性ソーダ水溶液15部及び50度ボーメの水ガラス150部を添加後、25℃で水を加えて全量を1000部とし、直後に、この液をパジング液として木綿織物をパジングした。パジングした木綿織物を巻き上げ、ポリエチレンフィルムで密閉し、25℃の室温で20時間放置した。次いで、常法で洗浄し、乾燥して仕上げた。各染色物の濃度は濃いものであった。また、各染色物の諸堅牢度も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明(i)や(ii)の反応染料組成物は、セルロース繊維材料等の衣料品を濃青色に染色又は捺染する際に有用である。
また、本発明(iii)の染色方法や(iv)の捺染方法によれば、均一で斑のない染色物や捺染物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離酸の形で表すと、下式(II)で示される染料群から選ばれる少なくとも2種の青色反応染料を含むことを特徴とする青色反応染料組成物。

[式中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基を表す。X’は塩素原子、フッ素原子、臭素原子又は水酸基を表す。Q’は−SO−CH=CH又は−SO−CHCHを表す。Lはアルカリの作用で脱離する基又は水酸基を表す。]
【請求項2】
さらに、遊離酸の形で表すと、下式(I)で示される染料群から選ばれる少なくとも1種の赤色反応染料を含む請求項1に記載の反応染料組成物。

[式中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はフェニルカルボニル基を表す。Xは塩素原子、フッ素原子、臭素原子又は水酸基を表す。Qは−SO−CH=CH又は−SO−CHCHを表す。Lはアルカリの作用で脱離する基又は水酸基を表す。]
【請求項3】
式(I)で示される染料群から選ばれる赤色反応染料の合計と式(II)で示される染料群から選ばれる青色反応染料の合計との重量比が、(0.5〜50.0):(50.0〜99.5)の範囲である請求項1又は2に記載の反応染料組成物。
【請求項4】
式(I)で示される染料群から選ばれる赤色反応染料の合計と式(II)で示される染料群から選ばれる青色反応染料の合計との重量比が、(1〜50):(50〜99)の範囲である請求項1又は2に記載の反応染料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の反応染料組成物を用いることを特徴とする繊維材料の染色方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の反応染料組成物を用いることを特徴とする繊維材料の捺染方法。

【公開番号】特開2006−117821(P2006−117821A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307960(P2004−307960)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】