説明

反応混合物から水素を電気化学的に分離する方法

本発明は、少なくとも1個の選択的プロトン伝導性膜を含み、かつ該膜の各側上に少なくとも1種の電極触媒を含む気密性膜電極アセンブリを用いることによって、水素含有反応混合物Rから電気化学的に水素を分離する方法に関し、反応混合物R中に含まれる水素の少なくとも一部を、膜の保持側でアノード触媒と接触させてプロトンに酸化し、かつこのプロトンは、膜を通過させて透過側でカソード触媒と接触させて、(I)水素に還元するか、および/または(II)酸素により水に変換し、この際、酸素は、膜の透過側で接触する酸素含有流O由来のものである。さらに本発明は、少なくとも1個の膜電極アセンブリを備えた反応器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個の選択的プロトン伝導性膜、および該膜の各側で少なくとも1個の電極触媒を有する気密性膜電極アセンブリを用いて、反応混合物から水素を電気化学的に分離する方法、ならびに少なくとも1個の該膜電極アセンブリを備えた反応器に関する。
【0002】
数多くの化学的変換の際に生じる反応混合物は、このうち、二次生成物として水素を含む。多くの場合において、反応混合物から水素を除去することが不可欠である。たとえば水素は、反応平衡の状態に不利な影響を与え、かつそれにより所望の生成物の不十分な収率を招きうる。さらに反応混合物中の水素は、生成物のさらなる使用を困難にしうる。さらにこれに関して水素は、反応混合物の重要な成分である。
【0003】
反応混合物を生じさせ、この際、二次生成物として水素を含む化学的変換のための例は、非酸化的条件下での脂肪族化合物から芳香族化合物への変換である。これは、非酸化的脱水素芳香族化(DHAM)と呼称される。脱水素環化によって、脂肪族化合物から芳香族炭化水素および水素が生じる。たとえば、6モルのメタンから1モルのベンゼンおよび9モルの水素を形成する。
【0004】
DHAMもまた、形成された水素が、反応平衡に望ましくない影響を与える反応の例である。反応混合物中に含まれる水素が多ければ多いほど、ベンゼンに変換されうるメタンは少なくなる。熱力学的考察は、メタンからのDHAMの際に、平衡の状態による反応の制限を示す(D. Wang, J. H. LunsfordおよびM. P. Rosynek、"Characterization of a Mo/ZSM-5 catalyst for the conversion of methane to benzene"、Journal of Catalysis 169、347-358 (1997))。成分であるメタン、ベンゼン、ナフタリンおよび水素の考慮下での計算上、メタンのベンゼン(およびナフタリン)への等温反応に関する平衡反応率は、上昇した圧力および低下した温度で減少し、たとえば、平衡反応率は1バールおよび750℃で約17%という結果がもたらされる。反応混合物からの水素の除去は、変換率を増加させることができる。
【0005】
反応混合物からの水素の分離は、しばしば高い設備コストおよびエネルギー投入と結びつく。
【0006】
生成物ガスからHおよび芳香族炭化水素を分離し、かつ生じる生成物ガスを反応領域中に返送するか、あるいは水素の分離後であってかつ芳香族炭化水素の予めの分離なしで、生成物ガスをさらなる反応段階において再変換することを含む、炭化水素、特に天然ガスのDHAMの方法がUS 7,019,184 B2中で記載されている。Hを分離するための方法として、水素選択的膜分離法および圧力スイング吸着法が挙げられる。分離した水素は、たとえば燃焼室または燃料電池中で、エネルギー産生のために使用することができる。
【0007】
選択的水素透過膜を用いての水素分離の際に、水素はH分子として膜を通過する。この際、膜は通常、Pd−薄板または多孔質ポリマーから成る。ここで、拡散速度は、膜の保持側と透過側との間の水素分圧差に左右される。この水素分圧差は、基本的に、3種の異なる方法によって左右される:1)供給ガスの圧縮(これによって水素分圧が増加する)、2)透過側での真空形成、または3)透過側上での水素分圧を低下させる掃引ガスの使用。これらの方法は、機械的に複雑であるか(オプション1)および2))、あるいは水素を掃引ガスから分離することが要求される。したがって、高い拡散速度を達成するために、高い圧力差で処理しなければならず、これは、膜の機械的安定性に関する高い要求を示し、さらにガス混合物を濃縮および膨張させるための相当する装置が存在しなければならない。運動理論的理由から、常に、保持液中に一定量の水素が残る。たとえば、透過液は、水素透過性ポリマー膜によって得られるH/CH混合物が含まれ、これは通常10個のH分子あたり1個のCH分子である。Pd−膜の場合には、これは約200℃以上で、選択的に水素透過性であり、かつその最適な分離性能は400℃〜500℃で達成され、この透過液は通常200個のH分子当たり1個のCH分子を含む。
【0008】
圧力スィング吸着法の場合には、吸着体を循環的に第1相で水素含有流と衝突させ、この際、水以外のすべての成分は吸着によって保持される。第2相中でこれらの成分は、減圧によって再度脱着される。これは、吸着体を使用しなければならず、かつ水素含量が40%を上回る水素含有廃棄流を生じる、技術的に極めてコストのかかる方法である(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、"Membranes Gas Separation-Applications"、D.B. Strooky, Elah Strategies、第6頁、Chesterfield, Missouri, USA, 2005 Wiley-VCH Verlag, Weinheim参照)。圧力スィング吸着法および選択的水素透過性膜の使用の他、いわゆる「コールドボックス(Cold Box)」の使用が、ガス混合物から水素を分離するための通常の方法である。
【0009】
コールドボックスによる水素分離の際に、混合物は30〜50バールの圧力で、約−150℃〜−190℃に冷却する。この低い温度の生成はコストがかかるものである。これに関して、水素不含の混合物を再度反応中で使用すべき場合には、これはさらに相当する反応温度に、たとえば600〜1000℃で脱水素芳香族化のために加熱しなければならない。
【0010】
水素およびメタンからなる混合物からの水素の分離は、B. Ibehら(International Journal of Hydrogen Energy 32 (2007)、第908頁〜第914頁)に記載されている。その出発点は、水素運搬のためのキャリアガスとしての天然ガスの適性を、予め存在する天然ガス運搬のための工業設備によって試験し、この際、水素は天然ガスによる運搬後に、これから再度分離しなければならない。B. Ibehらは、水素−メタン−混合物から水素を分離するために、個々のプロトン−交換膜およびPtまたはPt/Ru−アノード電極触媒を有する燃料電池を使用する。この燃料電池は、水素−メタン混合物を大気圧で、かつ20〜70℃の温度に連行する。
【0011】
反応が進行している間において、圧力スィング法もコールドボックスも反応混合物からの水素を分離するのに適していない。
【0012】
したがって本発明の課題は、水素含有反応混合物から水素を分離するための方法を提供することであり、この場合、この方法は、水素を分離するための技術水準から公知の方法の欠点を回避する。特に、水素を反応領域から直接分離することが可能であり、この結果、水素形成反応の際、反応平衡状態に影響を与えることができる。この方法は、反応の際に使用された出発材料および反応混合物中に存在する水素を効率的に使用することをサポートするものでなければならない。さらに、可能な限り有利なエネルギーバランスを示すべきであり、かつ設備コストは低くあるべきである。
【0013】
本発明の課題は、少なくとも1個の選択的プロトン伝導性膜、および該膜の各側に少なくとも1個の電極触媒を有する気密性膜電極アセンブリを用いて、水素含有反応混合物Rから水素を電気化学的に分離除去するための方法によって解決され、この際、膜の保持側で、反応混合物R中に含まれる水素の少なくとも一部をアノード触媒と接触させて、プロトンに酸化し、かつこのプロトンを、膜を通過させた後に透過側でカソード触媒と接触させて
I)水素に還元するか、および/または
II)酸素により水に変換し、この際、この酸素は、膜の透過側で接触する酸素含有流O由来のものである。
【0014】
本発明による方法は、技術水準に記載された方法に対して、水素含有反応混合物Rから水素を電気化学的に分離するという利点を有する。水素分離の動因は、プロトンを選択的に通過させる膜の両側間の電位差であるか(代替法I)、あるいは水素と酸素から水を生成する反応の負の自由エンタルピー(代替法II)に基づく。
【0015】
選択的プロトン伝導性膜を使用することによって、方法は、選択的に水素分子を通過させる膜を使用する際には不可欠であるような圧力差とはほぼ無関係に操作することができる。そのため、水素分離を低い圧力および低い圧力差で実施することができ、この際、好ましくは、外側から適用される圧力差を完全に放棄する。これにより膜の機械的要求は顕著に減少し、これは膜の長期安定性の増加を導く。さらに、膜に関して考慮の対象となる材料の選択の幅が広がる。
【0016】
低い圧力で反応混合物から水素を分離除去する方法は、さらに、たとえば圧力スィング吸着法または「コールドボックス」の使用を不可欠とするような設備的にコストのかかる分離方法を考慮しないで済む。
【0017】
さらに本発明による方法は、改善されたエネルギーバランスを示し、それというのも、エネルギー投資的な温度変更、たとえば冷却サイクルおよび加熱サイクルを回避するためである。反応混合物からの水素の除去は、さらに、たとえばDHAMの平衡反応の際の目的生成物の方向への平衡シフトおよびそれによる高い収率を導く。
【0018】
水素の電気化学的分離は、水素選択性膜を用いての水素分離と比較して顕著に効果的である。したがって要求される膜面積を減少させることができるか、あるいは同一の膜面積であっても顕著に多くの水素を反応混合物から分離することができる。この際、反応混合物中に分離後に残留する水素量は、水素選択性膜を用いての分離の場合よりも極めて少ない。
【0019】
本発明による方法が代替法Iにより操作される場合には、方法は極めて純粋な水素を獲得する。極めて純粋な水素は、不純物について敏感に反応する数多くのさらなる反応またはプロセス中で使用され、したがって有益な二次生成物を生成する。
【0020】
本発明による方法が代替法IIにより操作される場合には、方法において電気的エネルギーおよび熱は存在しない。これらのエネルギーは、本発明による方法の操作のために使用することができる。そのため、本発明による方法のエネルギーバランスはさらに改善される。
【0021】
操作方法に応じて、方法の際にどの程度の水素が得られるか、どの程度の電気エネルギーおよび熱が得られるかいずれにせよ使用者により調整することができ、特に、代替法Iによる水素の分離のために要求される電気的エネルギーは、代替法IIによって水素を同時に分離することによって調達される。
【0022】
以下、本発明につき詳細に記載する。
【0023】
本発明によれば、反応混合物R中に含まれる水素の少なくとも一部を、気密性膜電極アセンブリによって電気化学的に分離し、この際、分離された水素は、プロトンの形で膜を介して運搬される。内部に配列された膜を有する電極を、膜電極アセンブリ(MEA)と呼称する。本発明によれば気密性MEAは、少なくとも1個の選択的プロトン伝導性膜を有する。
【0024】
生成物Pは、膜の一方の側に沿って連行される。この側は、以下、保持側と呼称する。膜のもう一方の側は、以下、透過側と呼称する。透過側で、代替法Iにより生じた水素および/または代替法IIにより生じた水が生じる。この膜は、各側上で少なくとも1個の電極触媒を示し、ここで、本発明の記載の範囲内において、保持側に存在する電極触媒をアノード触媒と、かつ透過側に存在する電極触媒をカソード触媒と呼称する。保持側において、水素をアノード触媒と接触させてプロトンに酸化し、このプロトンは膜を通過させて、かつ透過側でカソード触媒と接触させて水素に還元する(代替法I)か、あるいは酸素により水に変換する(代替法II)。さらに代替法IIによれば、透過側に沿って酸素含有流Oを連行し、かつ膜と接触させる。代替法Iでは、膜を通してプロトンを運搬するために電気的エネルギーを使用し、この場合、これは、膜の両側に電極によって直流電圧を適用することによって供給される。代替法IIでは電気的エネルギーが生じる。
【0025】
本発明の範囲内において反応混合物とは、化学的変換によって得られる混合物であると理解される。化学的変換とは、1種または複数の化学的反応成分から、1種または複数の生成物を製造する反応であると理解される。化学的変換なしで物理的混合によってのみ得られる混合物は、本発明の範囲内において反応混合物ではない。さらに天然に存在する混合物、たとえば天然ガスも本発明の範囲内における反応混合物ではない。
【0026】
特に好ましい実施態様において、反応混合物は直接使用される。これに関連して、直接とは、反応混合物を、予めの精製または後処理なしに本発明による方法に直接使用することを意味する。
【0027】
好ましくは、水素形成反応由来の反応混合物Rを使用する。さらに好ましくは、水素を、反応混合物Rが形成される反応帯域から直接分離する。
【0028】
特に好ましくは、反応混合物Rを導くべき反応が生じる間に、反応帯域から水素を分離する。
【0029】
代替法Iによって得られる水素は、高い純度を示す。これを捕集して、かつ販売するか、あるいはエネルギー産生のために使用することができる。高い純度の理由から、この水素は、不純物について敏感に反応するさらなる化学反応またはプロセスにも使用することができる。代替法IIによる方法の場合には、熱および電気エネルギーは不要である。熱は、たとえば、反応混合物Rを形成する反応の加熱のために使用することができる。
【0030】
膜と保持側に存在する水素との良好な接触、ならびに分離された水素または水の透過側での良好な搬出を保証するために、通常、電極層はガス分配層に接触している。このガス分配層は、たとえば、微細なチャネルまたは多孔質材料、たとえばフリース、織物または紙からなる層の1種の系から成る格子状の表面構造を有するプレートである。ガス分配層および電極層はまとめて一般にガス拡散電極(GDE)と呼称される。ガス分配層を通して、分離すべき水素を膜およびアノード電極近くの保持側に導き、かつ形成された水素または水の搬出を透過側で容易にする。
【0031】
本発明によって使用されたMEAは気密性であり、この気密性とは、事実上、ガスを原子または分子形態で、MEAの一方の側から他方の側に通過させることができる多孔性を有しないという意味であり、さらにはガスを非選択的に、たとえば吸着、膜中での溶解、拡散および脱着によってMEAを通して運搬することができる機序を有していないという意味である。
【0032】
膜電極アセンブリ(MEA)の密度は、気密性膜、気密性電極および/または気密性電極触媒によって保証することができる。したがって、気密性電極としてたとえば薄い金属箔、たとえばPd箔、Pd−Ag箔またはPd−Cu箔を使用することができる。
【0033】
本発明によって使用された膜は、選択的にプロトンを伝導し、これは特に、非導電性であることを意味する。本発明による方法において、プロトン伝導性膜として原則、燃料電池のための膜材料として技術水準において使用されるすべての膜材料を使用することができる(Standard SOFC (Solide Oxide Fuel Cell))。
【0034】
適したプロトン伝導性セラミックは、たとえば固体の状態で、Solid State lonics 125(1999)、第271〜278頁; Journal of Power Sources 180, (2008)、第15〜22頁; lonics 12(2006)、第103〜115頁; Journal of Power Sources 179 (2008)、第92〜95頁; Journal of Power Sources 176 (2008)、第122〜127頁およびElectrochemistry Communications 10 (2008)、第1005〜1007頁に記載されている。
【0035】
プロトン伝導性セラミックの例はSrCeO、BaCeO、Yb:SrCeO、Nd:BaCeO、Gd:BaCeO、Sm:BaCeO、BaCaNdO、Y:BaCeO、Y:BaZrCeO、PrドープされたY:BaCeO、Gd:BaCeO、BaCe0.90.12.95(BYC)、SrCe0.95Yb0.053−α、BaCe0.9Nd0.103−α、CaZr0.96In0.043−α(この際、αはペロブスカイト型の酸化物の構造式単位あたりの酸素空格子点の数を示す);Sr−ドープされたLa、Sr−ドープされたLaPO、BaCe0.90.13−α(BCY)、BaZr0.90.13−α(BZY)、BaCa1.18Nd1.828.73(BCN18)、(La1.95Ca0.05)Zr7−α、LaCe、EuZr、HS/(BまたはGa)/GeS、SiS、AsまたはCsI;BaCe0.8Gd0.23−α(BCGO);Gd−ドープされたBaCeO、たとえばBaCe0.850.153−α(BCY15)およびBaCe0.8Sm0.23−α、xAl(1−x)SiO、SnP、Sn1−xIn(X=0.0〜0.2)である。
【0036】
アノードおよびカソードを形成するための適した材料は、たとえばJournal of Power Sources 180, (2008)、第15〜22頁に記載されている。
【0037】
本発明による方法においてアノードを形成するために、燃料電池のためのアノード材料として技術水準で使用されている、すべての材料を使用することができる(Standard SOFC (Solid Oxide Fuel Cell))。アノードを形成するのに適した材料は、たとえばNi、Pd、Pt、Ag、Cu、Fe、Cr、Ti、V、Mn、Au、Mo、炭化モリブデン、W、炭化タングステン、Re、Ru、Co、Zr、Rh、Ir、Y、Nb、炭素の導電性の形、たとえばカーボンブラック、グラファイトおよびナノチューブならびにこれら元素の混合物および合金である。さらに、たとえばPt/Ni合金、Pd添加酸化鉄、たとえばFeO、PrドープされたY:BaCeO、BaCeYO、Ni−BaCeSmO、Ni−BaCeGdOおよびNi−BaCeNdOが適している。
【0038】
本発明による方法においてカソードを形成するために、燃料電池のためのカソード材料として技術水準で使用されている、すべての材料を使用することができる(Standard SOFC (Solid Oxide Fuel Cell))。カソードを形成するのに適した材料は、たとえばNi、Pd、Pt、Ag、Cu、Fe、Cr、Ti、V、Mn、Au、Mo、炭化モリブデン、W、炭化タングステン、Re、Ru、Co、Zr、Rh、Ir、Y、Nb、炭素の導電性の形、たとえばカーボンブラック、グラファイトおよびナノチューブならびにこれら元素の混合物および合金である。さらに、たとえばBaCePrYO、BaPrCoO、BaPrYO、LaCaFeCoO、BaSrCoFeO+BaCeSmO、LaSrCoO+BaCeGdOおよびLaSrCoO+BaCeNdOが適している。
【0039】
前記アノード材料およびカソード材料は、任意の組合せであってもよい。膜電極ユニットを形成するためのアノードとカソードとの適した組合せ(アノード/カソード)は、たとえばPt/Pt、Ni/Ni、Pd/Pd、Cu/Cu、Ag/Ag、Fe/Fe、Cr/Cr、Ti/Ti、V/V、Mn/Mn、Au/Au、Pt/Pd、Pd/Pt、Ni/Pt、Pt/Ag、Pd添加FeO/BaPrCoO、PrドープされたY:BaCeO/BaPrYO、Pt/LaCaFeCOO、BaCeYO/Pt、Ni−BaCeSmO/BaSrCoFeO+BaCeSmO、Ni−BaCeGdO/LaSrCoO+BaCeGdO、Ni/BaCePrYO、Ni−BaCeNdO/LaSrCoO+BaCeNdOおよびBa0.5Sr0.5Co0.83−α(BSCFO)を単独でまたはGd0.2Ce0.81.9との混合物の形が適している。
【0040】
特に好ましい実施態様において、膜電極ユニット(アノード/カソード)を形成するために膜としてプロトン伝導性セラミックまたはSrCeO、BaCeO、Yb:SrCeO、Nd:BaCeO、Gd:BaCeO、Sm:BaCeO、BaCaNdO、Y:BaCeO、Y:BaZrCeO、Pr−ドープされたY:BaCeO、Gd:BaCeO、BaCe0.90.12.95(BYC)、SrCe0.95Yb0.053−α、BaCe0.9Nd0.103−α、CaZe0.96In0.04;Sr−ドープされたLa、Sr−ドープされたLaPO、BaCe0.90.13−α(BCY)、BaZr0.90.13−α(BZY)、BaCa1.18Nd1.828.73(BCN18)、(La1.95Ca0.05)Zr7−α、LaCe、EuZr、HS/(BまたはGa)/GeS、SiS、AsまたはCsI;BaCe0.8Gd0.23−α(BCGO);GdドープされたBaCeO、たとえばBaCe0.850.153−α(BCY15)およびBaCe0.8Sm0.2−α3からなる群からの酸化物または前記材料の混合物が得られ、かつアノード/カソードの組合せとしてPt/Pt、Ni/Ni、Pd/Pd、Pt/Ni、Pt/Pd、Ni/Pt、Ni/Pd、Pd/PtまたはPd/Niを含有する。
【0041】
本発明の好ましい実施態様によれば、反応混合物Rからの水素の分離は反応器中で実施し、この場合、この反応器は、少なくとも1個のMEAを備えており、その結果、膜の保持側に反応帯域が存在するか、あるいは反応帯域を形成する。これは、たとえば、その外壁が、少なくとも部分的にMEAsから形成されている反応器中で実施することができる。水素を分離除去するために少なくとも1個のMEAを備えた反応器もまた同様に、本発明の対象である。
【0042】
少なくとも1個のMEAでの改質によって本発明による方法中で使用することができる反応器のタイプの詳細は、"Catalytica(登録商標)Studies Division, Oxidative Dehydrogenation and Alternative Dehydrogenation Processes"(Study Number 4192 OD, 1993, 430 Ferguson Drive, Mountain View, California, 94043-5272, USA)に含まれる。
【0043】
適した反応器のタイプは、流動層反応器、循環流動層反応器、固定層反応器、固定層管型反応器および管束反応器である。固定層管型反応器および管束反応器の場合には、触媒は固定層として反応管中または反応管の束中に存在し、この際、反応器の外壁は少なくとも1個のMEAを有する。通常の反応管の内径は約10〜15cmである。典型的な脱水素芳香族化管束反応器は、約300〜1000本の反応管を有する。
【0044】
本発明による方法の一つの実施形態において、さらに各反応管はそれぞれ少なくとも1個のMEAを有し、その結果、反応管から反応器の外壁への連続的な水素運搬が保証される。
【0045】
反応混合物Rを導くべき反応は、さらに流動層中または循環流動層中で、不均一系で触媒することができ、この際、反応器の外壁は、好ましくは1種のMEAを有する。
【0046】
反応混合物を導くべき反応は、さらにトレイ型反応器中で実施され、この際、好ましい実施態様によれば、反応器の外壁は少なくとも1個のMEAを有する。反応器は、1個またはそれ以上の連続した触媒床を含む。触媒床は好適には、反応ガスから放射状であるか、あるいは軸方向に貫流される。一般には、このようなトレイ型反応器は、1個の固定触媒床で運転する。最も単純な態様において、固定触媒床は高炉型反応器(Schachtofenreaktor)中で軸方向に、あるいは同心的に配置された円筒形の格子目の環状スリットに配置される。高炉型反応器は、1個のみのトレイを備えたトレイ型反応器に相当する。
【0047】
水素の分離は、200〜1200℃、好ましくは500〜1100℃、特に好ましくは600〜1000℃の温度で実施することができる。
【0048】
水素分離は、好ましくは0.5〜10バール、特に好ましくは1〜6バール、とりわけ好ましくは1〜4バールの圧力で実施される。本発明の好ましい実施形態によれば、膜の保持側と透過側との間の圧力差は1バール未満、好ましくは0.5バール未満、特に好ましくは圧力差がないことである。
【0049】
代替法Iによる水素の分離は、本発明によればRHE(水素−基準電極)に対して0.05〜2000mVの電圧、好ましくは100〜1500mVの電圧、特に好ましくは100〜900mVの電圧およびとりわけ好ましくは100〜800mVの電圧で実施する。
【0050】
代替法IIにより使用される酸素含有流は、本発明によれば少なくとも15モル%、好ましくは少なくとも20モル%の酸素を含有する。一つの好ましい実施形態において、空気は酸素含有流Oとして使用されるか、あるいは酸素に富む空気と一緒に使用される。空気は、通常、精製することなしに使用される。
【0051】
流Oの流量は、O量が化学量論的に、H量の1〜10倍、好ましくは1.2〜5倍および特に好ましくは1.5〜2.5倍であるように選択される。
【0052】
本発明によれば、反応混合物R中に含まれる水素の少なくとも一部を分離する。好ましくは、少なくとも30%、殊に好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%およびとりわけ好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも98%を分離する。
【0053】
代替法Iによって透過側で得られる水素は、通常、せいぜい5モル%、好ましくはせいぜい2モル%および特に好ましくはせいぜい1モル%の化合物を含有し、この場合、これは水素不含である。
【0054】
水素は、本発明によれば代替法I、代替法IIまたは双方の方法によって分離することができる。双方の方法による分離とは、水素の少なくとも一部を水素として得て、かつ水素の少なくとも一部を、電気エネルギーの発生下で水として得ることを意味する。生成物流P中に含まれる水素の多くが、それぞれ代替法IおよびIIによって分離されるように、使用者によりその要求にしたがって調整することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、代替法IおよびIIによる水素の分離は、代替法IIにより生じる電流が、代替法Iによる水素の分離のためのエネルギー要求を保証するために十分である程度の量の水素を、少なくとも代替法IIによって分離する。
【0055】
双方の代替法IおよびIIによって、反応混合物Rから水素を分離する場合には、これらの方法は、好ましくは空間的に別個に実施され、それというのも酸素の存在により、透過側で通常プロトンが水素と直接反応してしまうためである。反応混合物は、たとえば連続して、まずMEAに沿って連行され、これは透過側で流Oと接触し、それにより水素の一部を水として分離する。引き続いて、反応混合物RはMEAに沿って連行され、これに電圧を適用し、それにより水素が水素として分離される。双方の代替法IとIIとの間の空間的分離は、2個の、たとえば向かい合う膜間に生成物流Pを貫流することからなり、これによって透過側で流Oと接触し、かつもう一方の側上に電圧を適用する。これに関して、好ましい実施態様によればMEAsは反応器中に存在し、ここで反応混合物Rを形成し、かつ特に好ましくは、MEAsは、反応混合物Rを導くべき反応が生じる反応帯域の空間的境界の少なくとも一部を形成する。
【0056】
水素を含む反応混合物Rを導くべき反応とは、最初から水素を添加する反応、たとえば反応に使用される触媒の寿命を延長させるための反応であるか、あるいは反応生成物として水素を生じる反応である。
【0057】
本発明によれば、好ましくは、反応混合物Rを導くべき水素形成反応とは、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素の脱水素芳香族化である。これに関して、本発明によれば、出発材料流Eの変換は、非酸化的条件下で、触媒の存在下で、芳香族炭化水素を含有する生成物流Pを生じる。出発材料流Eに含まれるC〜C−脂肪族化合物は、脱水素化および環化しながら反応して相当する芳香族化合物を生じ、この際、水素が遊離する。
【0058】
脱水素芳香族化の際に生じる水素を、反応器内部、すなわち反応帯域から連続的に除去することによって、メタン含有ガス混合物から芳香族炭化水素への反応平衡を、芳香族炭化水素の方向にシフトする。したがって、脱水素芳香族化を顕著に低下した温度で実施することができるか、あるいは同じ温度でメタン変換率を増加させることができる。例による算定は、ベンゼンのみが形成されると想定して、750℃で10.9%のメタンがベンゼンに変換されることを示す。形成された水素の40%が、反応帯域から直接除去される場合には、反応は679℃で、同収率で実施することができる。反対に、750℃の反応温度で、平衡状態で生じる0.0206kgH/kgCHから、電気化学的に0.02kgH/kgCHを除去する場合には、メタン変換率10.9モル%からほぼ22モル%まで増加させることができる。
【0059】
本発明による「非酸化的」とは、DHAMに関して、出発材料流E中で、酸化剤、たとえば酸素または窒素酸化物の濃度が、5質量%未満、好ましくは1質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。とりわけ好ましくは、出発材料流Eが酸素不含であることである。同様に特に好ましくは、出発材料流E中の酸化剤の濃度が、C〜C脂肪族化合物からなる供給源における酸化剤の濃度と同じまたは少ないことである。
【0060】
本発明によれば出発材料流Eは、1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族化合物を含む。これらの脂肪族化合物には、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、エテン、プロペン、1−ブテンおよび2−ブテン、イソブテンが含まれる。本発明の実施態様において出発材料流Eは、C〜C脂肪族化合物を少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、特に好ましくは少なくとも70モル%、殊に好ましくは少なくとも80モル%、とりわけ少なくとも90モル%含む。
【0061】
脂肪族化合物の中でもとりわけ、特に好ましくは飽和アルカンを使用し、この場合、出発材料流Eは、1〜4個のC原子を有するアルカンを、好ましくは少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、特に好ましくは少なくとも70モル%、殊に好ましくは少なくとも80モル%、とりわけ少なくとも90モル%含む。
【0062】
アルカンの中でもメタンとエタンが好ましく、とりわけメタンが好ましい。本発明の実施態様によれば出発材料流Eは、メタンを好ましくは少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、特に好ましくは少なくとも70モル%、殊に好ましくは少なくとも80モル%、とりわけ少なくとも90モル%含む。
【0063】
〜C脂肪族化合物の供給源として好ましくは、天然ガスを使用する。天然ガスの典型的な組成は、以下のとおりである:メタン75〜99モル%、エタン0.01〜15モル%、プロパン0.01〜10モル%、ブタン6モル%まで、二酸化炭素30モル%まで、硫化水素30モル%まで、窒素15モル%まで、およびヘリウム5モル%まで。この天然ガスは、本発明による方法において使用する前に、当業者に公知の方法に従って精製し、かつ濃縮することができる。精製には、たとえば、場合により天然ガス中に存在する硫化水素または二酸化炭素の除去、さらには後続の方法での望ましくない化合物の除去を含む。
【0064】
出発材料流E中に含まれるC〜C−脂肪族化合物はまた、他の供給源由来であってよく、たとえば、石油精製の際に生じるものであってよい。C〜C脂肪族化合物はまた、再生により(たとえばバイオガス)、あるいは合成により(たとえばフィッシャー−トロプシュ合成)製造されていてよい。
【0065】
〜C−脂肪族化合物の供給源としてバイオガスを使用する場合、出発材料流Eは付加的にさらにアンモニア、痕跡量の低級アルコール、およびバイオガスに典型的なさらなる添加物を含んでいてもよい。
【0066】
本発明の方法によるさらなる実施態様では、出発材料流Eとして、LPG(液化石油ガス)を使用することができる。本発明の方法のさらなる実施態様によれば、出発材料流EとしてLNG(液化天然ガス)を使用することができる。
【0067】
出発材料流Eに、付加的に水素、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、ならびに1種または複数の天然ガスを添加することができる。
【0068】
本発明によれば、DHAMは、適した触媒の存在下で実施する。一般に、DHAMを触媒するすべての触媒を使用することができる。通常、DHAM触媒は、1個の多孔質担体およびその上に塗布された少なくとも1種の金属を含む。担体は、通常、結晶質または非晶質の無機化合物を含有する。
【0069】
本発明によれば、触媒は、担体として少なくとも1種の金属シリケートを含有する。好ましくは、担体としてアルミニウムシリケートを使用する。特に好ましくは、本発明によれば、担体としてゼオライトを使用する。ゼオライトとは、製造の際に通常、ナトリウムの形で生じるアルミニウムシリケートである。Na形では、4価のSi原子を3価のAl原子と交換することにより結晶格子中に存在する過剰な負の電荷をNaイオンで補っている。ナトリウムのみならず、ゼオライトは電荷均衡のために、さらにアルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンを含んでいてもよい。本発明によれば、好ましくは、触媒中に含まれる少なくとも1種のゼオライトが、ペンタシルおよびMWWの構造型から選択される構造を示し、かつ特に好ましくはMFI、MEL、MFIとMELとの混合物およびMWWの構造型から選択される構造を示す。特に好ましくは、ZSM−5またはMCM−22型のゼオライトを使用する。ゼオライトの構造型の名称は、W. M. Meier、D. H. OlsonおよびCh Baerlocher、"Atlas of Zeolithe Structure Types"、Elsevier、第3版、Amsterdam 2001に相当する。ゼオライトの合成は、当業者に公知であり、かつ、たとえば熱水条件下で、アルカリアルミネート、アルカリ金属シリケートおよび非晶質SiOから出発して実施することができる。この際に、有機のテンプレート分子によって、温度およびさらなる実験パラメータによって、形成される触媒系の種類をゼオライト中で調整することができる。
【0070】
ゼオライトは、Alの他にさらなる元素、たとえばGa、B、FeまたはInを含有することができる。
【0071】
好ましくは、好ましい担体として使用されるゼオライトは、H形またはアンモニウムの形であり、この際、ゼオライトは、さらに商業的に入手可能であるもの、を使用する。
【0072】
Na形からH形への変換の際に、ゼオライト中に含まれるアルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンをプロトンと交換する。触媒をH形へ移行させるための通常の、そして本発明による好ましい方法は、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンをまずアンモニウムイオンと交換する二段階法である。約400℃〜500℃にゼオライトを加熱することにより、アンモニウムイオンが揮発性のアンモニアと、ゼオライト中に残留する陽子とに分解する。
【0073】
さらにゼオライトは、NH含有混合物で処理する。NH含有混合物のNH含有成分としては、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、および硫酸水素アンモニウムの群から選択されるアンモニウム塩を使用する。好ましくは、NH−含有成分として硝酸アンモニウムを使用する。
【0074】
NH含有混合物によるゼオライトの処理は、ゼオライトのアンモニウム交換に適した公知の方法により行う。これに関してたとえば、アンモニウム塩溶液によるゼオライトの浸漬、浸透または噴霧が挙げられ、この際、溶液は、一般に過剰量で使用される。溶剤として、好ましくは水および/またはアルコールを使用する。この混合物は、通常、使用されるNH成分を1〜20質量%含む。NH含有混合物による処理は通常、数時間にわたって、高められた温度で実施される。ゼオライト上にNH含有混合物を作用させた後、過剰な混合物を除去し、かつ、ゼオライトを洗浄することができる。引き続き、ゼオライトを40〜150℃で数時間、通常は4〜20時間乾燥させる。これに引き続いて、ゼオライトのか焼を300〜700℃の温度、好ましくは350〜650℃の温度、および特に好ましくは500〜600℃の温度で行う。か焼の所要時間は通常、2〜24時間、好ましくは3〜10時間、特に好ましくは4〜6時間である。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、担体として、再度NH−含有混合物で処理され、引き続いて乾燥されたゼオライトを使用する。NH−含有混合物を用いてのゼオライトの再度の処理は、前記のようにして実施する。
【0076】
商業的に入手可能なH形のゼオライトは、通常、すでに最初のアンモニウム交換を、NH−含有混合物での処理および引き続いての乾燥およびか焼によって終了している。したがって本発明による、商業的に入手されたH形で存在するゼオライトは、担体a)として使用することができるが、しかしながら好ましくは、NH−含有混合物を用いて再度の処理を行い、かつ場合によってはか焼する。
【0077】
通常、DHAM触媒は、少なくとも1種の金属を含有する。通常、金属は、元素周期律表(IUPAC)の第3〜12族から選択される。本発明によれば、好ましくは、DHAM触媒は、第5〜11副族の遷移金属から選択された少なくとも1種の金属を含む。特に好ましくは、DHAM触媒は、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Cr、Nb、Ta、AgおよびAuから選択される少なくとも1種の金属を含む。特に、DHAM触媒は、Mo、W、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cuの群から選択された少なくとも1種の金属を含む。とりわけ好ましくは、DHAM触媒は、Mo、WおよびReの群から選択された少なくとも1種の金属を含む。
【0078】
本発明によれば同様に、DHAM触媒は、活性成分として少なくとも1種の金属およびドープ成分として少なくとも1種のさらなる金属を含む。本発明によれば、活性成分は、Mo、W、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Ptから選択される。ドープ成分は、本発明によればCr、Mn、Fe、Co、Nb、Ta、Ni、Cu、V、Zn、ZrおよびGaの群から選択され、好ましくはFe、Co、Nb、Ta、Ni、CuおよびCrの群から選択される。本発明によれば、DHAM触媒は、活性成分として1種以上の金属およびドープ成分として1種以上の金属を含んでいてもよい。これらはそれぞれ、活性成分およびドープ成分のために示した金属から選択される。好ましくは、触媒は活性成分として1種の金属およびドープ成分として1種または2種の金属を含む。
【0079】
本発明によれば少なくとも1種の金属は、当業者に公知の方法によって湿式化学的に、あるいは乾式化学的に担体上に施与される。
【0080】
湿式化学的には、金属を、その塩または錯体の水溶液、有機溶液、または有機水性溶液の形で、相当する溶液での担体の含浸によって施与する。溶剤としてはまた、超臨界のCOが役立ち得る。含浸は、インシピエントウェットネス法によって実施することができ、この際、担体の細孔容積を、ほぼ同容積の含浸溶液により満たし、かつ、場合による熟成(Reifung)の後、担体を乾燥させる。また、溶液の過剰量で処理することもでき、この際、この溶液の容積は、担体の細孔容積よりも大きい。これに関して担体を含浸溶液と混合し、かつ、十分に長く撹拌する。さらに、担体を相当する金属化合物の溶液で噴霧することが可能である。さらに別の、当業者に公知の製造方法、たとえば金属化合物の担体上への析出、金属化合物含有溶液の噴霧、ゾル含浸等が可能である。少なくとも1種の金属の担体上への施与後に、触媒を約80〜130℃で、通常4〜20時間に亘って真空下または空気と接触させて乾燥させる。
【0081】
本発明によれば、少なくとも1種の金属をさらに乾式化学的方法によって施与することができ、たとえば、高い温度でのガス状金属カルボニル、たとえば気相からのMo(CO)、W(CO)およびRe(CO)10を担体上に析出させる。金属カルボニル化合物の析出は、担体のか焼に引き続いて行う。これは、たとえばカーバイドのような微細な粉末の形で、担体と一緒に混合することもできる。
【0082】
本発明によれば、触媒は、触媒の全質量に対して少なくとも1種の金属をそれぞれ0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%含む。触媒は、1種の金属のみを含んでいてもよく、これはさらに2種、3種またはそれ以上の金属からなる混合物を含んでいてもよい。この金属は、湿式化学的に一つの溶液の形で一緒に施与するか、あるいは種々の溶液中で、それぞれの塗布の間に乾燥工程を含んで連続的に施与する。金属はさらに混合して施与することができ、すなわち、その一部は湿式化学的に、かつもう一部は乾式化学的に施与することができる。金属化合物の施与の間において、要求にしたがい、上記記載に応じてか焼することができる。
【0083】
本発明によれば、触媒は、活性成分の群からの少なくとも1種の金属と、ドープ成分の群から選択された少なくとも1種の金属とを一緒に含む。この場合において、活性成分の濃度は、それぞれ触媒の全質量に対して0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%含む。この場合においてドープ成分は、本発明による触媒において、触媒の全質量に対して少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.2質量%、特に好ましくは少なくとも0.5質量%の濃度で存在する。
【0084】
本発明のさらなる好ましい実施態様によれば、触媒を結合剤と一緒に混合する。結合剤としては、通常、当業者に公知の結合剤、たとえば酸化アルミニウム結合剤および/またはSi含有結合剤が適している。これに関して特に好ましくは、Si含有結合剤;特にテトラアルコキシシラン、ポリシロキサンおよびコロイダルシリカゾルが適している。
【0085】
本発明によれば、結合剤の添加後に、触媒材料を当業者に公知の方法によって成形体に加工する成形工程を実施する。これに関して成形工程として、たとえば担体a)または触媒材料を含有する懸濁液の噴霧、噴霧乾燥、ペレット化、湿潤または乾燥状態へのプレス加工および押出成形が挙げられる。これらのうち2つまたはそれ以上の方法を組み合わせることもできる。成形のために、助剤、たとえば細孔形成剤およびペースト化剤(Anteigungsmittel)、または当業者の公知の他の添加剤を使用することができる。ペースト化剤になり得るのは、混合特性、混練特性、および流動特性の改善につながる化合物である。本発明の範囲では、ペースト化剤は好適には、有機の、特に親水性のポリマー、たとえばセルロース、セルロース誘導体、たとえばメチルセルロース、デンプン、たとえばバレイショデンプン、壁紙糊、アクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリグリコールエーテル、脂肪酸化合物、ワックスエマルション、水、またはこれらのうち2つまたはそれ以上の化合物から成る混合物である。本発明の範囲において細孔形成剤としてはたとえば、水または水性溶剤混合物中で分散可能、懸濁可能、または乳化可能な化合物、たとえばポリアルキレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、炭水化物、セルロース、セルロース誘導体、たとえばメチルセルロース、天然の糖繊維(Zuckernaturfasern)、パルプ、グラファイト、またはこれらの化合物の2種またはそれ以上から成る混合物を挙げることができる。細孔形成剤および/またはペースト化剤は成形後、好ましくは少なくとも1つの適切な乾燥工程および/またはか焼工程によって、得られる成形体から除去される。これに関して要求される条件は、か焼のために記載されたパラメータと同様に選択することができ、かつこれは当業者に公知である。
【0086】
特に、流動層触媒としての使用に関して、触媒成形体は噴霧乾燥によって製造される。
本発明により得られる触媒の形状はたとえば、球状(中空または中実)、円筒形(中空または中実)、リング状、サドル型(sattelfoermig)、星型、ハニカム状、またはペレット状であってよい。さらには押出成形物、たとえばストランド形状、三葉(Trilob)形状、四葉(Quatrolob)形状、星型、または中空円筒形が考慮される。さらには、成形すべき触媒塊を押出し、か焼し、かつこうして得られた押出成形物を壊して、破砕体または粉末に加工することができる。この破砕体は、様々な篩分画分に分離することができる。
【0087】
本発明の好ましい実施態様によれば、この触媒は成形体または破砕体として使用する。
【0088】
さらなる好ましい実施態様によれば、触媒は粉末として使用する。これに関して、触媒粉末は結合剤を含有するが、しかしながらさらには結合剤不含である。
【0089】
本発明による触媒が結合剤を含有する場合には、結合剤は触媒の全質量に対して5〜80質量%、好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは10〜30質量%の濃度で存在する。
【0090】
〜C−脂肪族化合物を脱水素芳香族化するために使用する触媒を、本来の反応前に活性化させることが有利であり得る。
【0091】
この活性化は、C〜C−アルカン、たとえばエタン、プロパン、ブタン、またはこれらの混合物によって、好適にはブタンによって行うことができる。この活性化は、250℃〜850℃、好適には350〜650℃の温度、かつ0.5〜5バール、好適には0.5〜2バールの圧力で行う。GHSV(ガス空間速度)は通常、活性化の際に100〜4000h−1、好適には500〜2000h−1である。
【0092】
出発材料流Eが、C〜C−アルカン若しくはこれらの混合物をそれ自体既に含んでいるか、またはC〜C−アルカン若しくはこれらの混合物を出発材料流Eに添加することによって、活性化を行うこともまた可能である。この活性化は、250℃〜650℃、好適には350〜550℃の温度、かつ0.5〜5バール、好適には0.5〜2バールの圧力で行う。
【0093】
さらなる実施形態において、付加的にC〜C−アルカンに対してさらなる水素を添加することが可能である。
【0094】
本発明の好ましい実施態様によれば、触媒をH含有ガス流(このガス流は付加的に不活性ガス、たとえばN、He、Ne、およびArを含んでいてよい)によって活性化する。
【0095】
本発明によればC〜C−脂肪族化合物の脱水素芳香族化は、先に記載した本発明による触媒の存在下で、400〜1000℃、好ましくは500〜900℃、特に好ましくは600〜800℃、とりわけ700〜800℃の温度で、0.5〜100バール、好ましくは1〜30バール、特に好ましくは1〜10バール、とりわけ1〜5バールの圧力で行う。本発明によれば、100〜10000h−1、好適には200〜3000h−1のGHSV(ガス空間速度)で変換を行う。
【0096】
本発明によれば、触媒は希釈されないか、あるいは不活性材料と一緒に混合して使用することができる。不活性材料としてそれぞれの材料が、反応帯域中で占められる反応条件下で不活性であり、すなわち、反応するものではない。不活性材料として特に、ドープされていない、触媒のために使用される担体が適しているが、しかしながらさらに不活性ゼオライト、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等もまた適している。不活性材料の粒径は、触媒粒子の範囲内である。
【0097】
好ましくは本発明によれば、希釈されていない触媒または不活性材料と一緒に混合された固定層、移動層または流動層として存在する。特に好ましくは、触媒または触媒混合物および不活性材料は、流動層として存在する。
【0098】
DHAMに使用される触媒は、本発明の実施形態によれば、規則的に再生産される。再生は、通常の、当業者に公知の方法にしたがって実施することができる。本発明によれば、好ましくは、再生は還元条件下で、水素含有ガス流を用いて実施する。
【0099】
再生は、600〜1000℃の温度および特に好ましくは700〜900℃の温度で、かつ1〜30バール、好ましくは1〜15バールおよび特に好ましくは1〜10バールの圧力で実施する。
【0100】
〜C−脂肪族化合物は、本発明によればHを遊離しながら芳香族化合物に変換される。したがって生成物流Pは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、キシレンおよびナフタリンから成る群から選択される、少なくとも1種の芳香族炭化水素を含有する。特に好ましくは、ベンゼンおよびトルエンを含有する。さらに生成物流は、未変換のC〜C−脂肪族化合物、生じる水素および出発材料流E中に含まれる不活性ガス、たとえばN、He、Ne、Ar、出発材料流Eに添加された材料、たとえばHならびにすでに出発材料流E中に存在する不純物を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の選択的プロトン伝導性膜、および該膜の各側上に少なくとも1個の電極触媒を有する気密性膜電極アセンブリを用いて、水素含有反応混合物Rから水素を電気化学的に分離する方法において、該膜の保持側上で、反応混合物R中に含まれる水素の少なくとも一部を、アノード触媒と接触させてプロトンに酸化し、かつ該プロトンは、膜を通過させた後に透過側でカソード触媒と接触させて、
I 水素に還元するか、および/または
II 酸素により水に変換し、この際、酸素は、膜の透過側と接触する酸素含有流O由来のものである、
前記方法。
【請求項2】
反応混合物Rが水素形成反応由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素を、反応混合物Rが形成される反応帯域から直接分離する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
反応混合物Rを導くべき反応が生じる間に、水素を反応混合物Rから分離除去する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
代替法IおよびIIによる水素の同時分離の際に、代替法IIで生じた電流の少なくとも一部を代替法Iにおいて使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
代替法IIによる水素の分離の際に、代替法IIで生じた熱の少なくとも一部を反応帯域に供給する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
代替法Iによる水素を、水素−基準電極に対して0.05〜2000mVの電圧の適用下で分離する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酸素含有流Oが、少なくとも15モル%の酸素を含有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
酸素含有流Oとして空気を使用する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
膜電極アセンブリの電極が、ガス拡散電極として構成されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
選択的プロトン伝導性膜としてセラミック膜を使用する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水素を200〜1200℃で分離する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
水素形成反応が、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素の非酸化的脱水素芳香族化である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1個の反応帯域、および少なくとも1個の選択的プロトン伝導性膜、および該膜の各側上に少なくとも1個の電極触媒を有する少なくとも1個の気密性膜電極アセンブリを有する反応器であって、反応帯域が、膜電極アセンブリの保持側に存在する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法を実施するための、前記反応器。

【公表番号】特表2012−522721(P2012−522721A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503964(P2012−503964)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054117
【国際公開番号】WO2010/115761
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】