説明

反応装置、発電装置、電子機器及び触媒定着方法

【課題】水素等の燃焼燃料が局所的に燃焼することを抑える。
【解決手段】マイクロ反応装置1は、基板30,40,50を積層してこれらを接合したものである。基板30と基板40には、改質路34,44が形成され、改質路34,44において改質反応が起きる。基板50には、燃焼路54が形成され、燃焼路54において水素の触媒燃焼が起きる。燃焼路54には燃焼触媒57が定着されている。燃焼触媒57は、活性成分としての白金を含む触媒組成物57bが担持体57aに担持されてなるものである。担持体57aが膜状に設けられ、その上に触媒組成物57bが間隔をおいて点在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸熱を起こす処理器と前記処理器に重ねられた燃焼器を有する反応装置、その反応装置を備えた発電装置及びその発電装置を備えた電子機器に関するとともに、その燃焼器に触媒を定着させる触媒定着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は燃料の電気化学反応により電力を取り出すものであり、燃料電池の研究・開発が広く行われている。燃料電池に用いる燃料は水素ガスであり、メタノール等の原燃料を改質器で改質することでその水素ガスを生成している。また、エネルギーの利用効率を高めるために、燃料電池から排出される未反応の水素ガスを燃焼器で燃焼させ、その燃焼熱によって改質器を加熱することが行われている。
【0003】
図16に従来の燃焼器の構成を模式的に示す。図16(a)は従来の燃焼器の部分断面図であり、図16(b)はその燃焼器における燃焼路の平面図である。
図16(a)に示すように、燃焼器500の内部には燃焼路501が形成されており、その燃焼路501に白金等の触媒502が定着されている。その燃焼路501に水素や酸素等が流れると、水素が燃焼して燃焼熱が発し、その反応速度は非常に速い。燃焼路501に触媒502を定着するには、スラリーを筆等の塗布部材によって燃焼路501に塗り付ける方法又はディップコート法若しくはスピンコート法が一般的に用いられている。
【0004】
また、燃料電池にも触媒が用いられており、その触媒を塗布する方法としてインクジェット法を用いたものがある(特許文献1)。特許文献1に記載された方法を燃焼器の触媒の塗布方法に応用すれば、燃焼路501に触媒502を定着することができる。
【特許文献1】特開2005−267916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ディップコート法等を用いると、燃焼路501の側壁面における段差によって、図16(b)に示すように触媒502の周囲部503が厚くなってしまい、その部分で局所的に水素が燃焼してしまう。その結果、局所的に高温になってしまう部分が存在する。また、インクジェット法を用いた方法でも、着弾した触媒の液滴と液滴との間に更に触媒の液滴を吐出するので、液滴の滲み等によって厚さが均一にならず、局所的に高温になってしまう現象が起こる。そのため、燃焼路が熱破壊してしまう場合もある。
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決しようとしてなされたものであり、水素等の燃焼燃料が局所的に燃焼することを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、反応装置において、吸熱を起こす処理器と、前記処理器に重ねられ、燃焼燃料と酸化剤が流れる燃焼路を形成した燃焼器と、を備え、活性成分としての触媒組成物が間隔をあけて前記燃焼路の壁面に定着されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の反応装置において、前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物の単位面積当たりの量がその位置における前記処理器への吸熱量に対応していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の反応装置において、前記触媒組成物がドット状となって前記燃焼路の壁面に点在し、前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物のドット密度がその位置における前記処理器への吸熱量に対応していることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1から3の何れか一項に記載の反応装置において、前記燃焼路の壁面に担持体が膜状に成膜され、前記触媒組成物が前記担持体に担持されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の反応装置において、前記燃焼路の壁面に担持体がドット状に点着され、前記触媒組成物が前記担持体に担持されることで前記触媒組成物がドット状に点在し、前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物のドット密度がその位置における前記処理器への吸熱量に対応していることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、発電装置において、請求項1〜5の何れか一項に記載の反応装置と、前記反応装置により生成された燃料により発電を行う発電セルとを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、電子機器において、請求項6に記載の発電装置と、前記発電装置によって発電された電気により動作する電子機器本体と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、触媒定着方法において、吸熱を起こす処理器に、燃焼燃料と酸化剤が流れる燃焼路を形成した燃焼器を重ねてなる反応装置において、活性成分としての触媒組成物を、間隔をあけて前記燃焼路の壁面に定着させることを特徴とする。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の触媒定着方法において、前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物の単位面積当たりの量をその位置における前記処理器への吸熱量に対応させるように前記触媒組成物を分布させることを特徴とする。
【0015】
請求項10に係る発明は、請求項8に記載の触媒定着方法において、前記触媒組成物をドット状に前記燃焼路の壁面に点在させ、前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物のドット密度をその位置における前記処理器への吸熱量に対応させるように前記触媒組成物を分布させることを特徴とする。
【0016】
請求項11に係る発明は、請求項8から10の何れか一項に記載の触媒定着方法において、前記燃焼路の壁面に担持体を膜状に成膜した後に、前記触媒組成物を前記担持体に担持させることを特徴とする。
【0017】
請求項12に係る発明は、請求項8に記載の触媒定着方法において、前記燃焼路の壁面に担持体をドット状に点着させ、前記担持体を被覆するように触媒組成物を塗布した後に、前記担持体に担持された触媒組成物を除いて前記触媒組成物を除去することによって前記触媒組成物をドット状に点在させることを特徴とする。
【0018】
請求項13に係る発明は、請求項12に記載の触媒定着方法において、前記燃焼路の壁面にゾル状の担持体をドット状に点着させ、前記担持体の乾燥後に触媒組成物を含有したスラリーを塗布して前記担持体を被覆することを特徴とする。
【0019】
請求項14に係る発明は、請求項12に記載の触媒定着方法において、前記燃焼路の壁面にゾル状の担持体をドット状に点着させ、前記担持体の乾燥前に粉末状の触媒組成物を塗布して前記担持体を被覆することを特徴とする。
【0020】
請求項15に係る発明は、請求項12から14の何れか一項に記載の触媒定着方法において、前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物のドット密度をその位置における前記処理器への吸熱量に対応させるように前記触媒組成物を分布させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、触媒組成物が間隔をあけて燃焼路の壁面に定着されているので、触媒組成物が凝集することなく、燃焼燃料が局所的に燃焼せず、局所的に高温になることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0023】
図1は、本発明が適用される発電装置900を電子機器本体1000とともに示したブロック図である。この発電装置900は、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、電子手帳、腕時計、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、ゲーム機器、遊技機、その他の電子機器に備え付けられたものであり、電子機器本体1000を動作させるための電源として用いられる。
【0024】
発電装置900は、燃料カートリッジ901と、気化器902と、マイクロ反応装置(反応装置)1と、燃料電池型の発電セル903と、発電セル903により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換するDC/DCコンバータ904と、DC/DCコンバータ904に接続される二次電池905と、それらを制御する制御部906と、を備える。燃料カートリッジ901には、メタノール、エタノール、ブタン、ジメチルエーテル等の燃料と水が別々に又は混合した状態で貯留されている。燃料カートリッジ901内の燃料と水は、図示しないマイクロポンプにより気化器902に供給され、燃料と水が気化器902にて気化される。
【0025】
マイクロ反応装置1は、吸熱反応を発生させる改質器2と、発熱反応を発生させるCO除去器3と、発熱反応を発生させる燃焼器4とを有する。
【0026】
気化器902で気化した燃料と水はマイクロ反応装置1の改質器2に流れ込む。改質器2においては燃料と水が改質触媒により改質反応を起こし、水素ガスが生成されるとともに僅かながら一酸化炭素ガスも生成される(燃料がメタノールの場合には、下記化学式(1)、(2)を参照。)。改質器2で生成された水素ガス等はCO除去器3に送られ、更に外部の空気(酸化剤)(空気には、酸化剤である酸素が含まれている。)がCO除去器3に送られる。CO除去器3においては、一酸化炭素ガスが選択酸化触媒により優先的に酸化する選択酸化反応が起こり、一酸化炭素ガスが除去される(下記化学式(3)を参照)。CO除去器3を経た水素ガス等は発電セル903の燃料極に供給され、発電セル903の酸素極には空気が供給される。
CH3OH+H2O→3H2+CO2・・・(1)
2+CO2→H2O+CO・・・(2)
2CO+O2→2CO2・・・(3)
【0027】
発電セル903は、燃料極と、酸素極と、燃料極と酸素極の間に挟持された電解質膜とを備える。燃料極に送られたガス中の水素と、酸素極に送られた空気中の酸素が、電解質膜を介して電気化学反応をすることにより、発電セル903において電力が生じる。なお、電解質膜が水素イオン透過性の電解質膜(例えば、固体高分子電解質膜)の場合には、燃料極では次式(4)のような反応が起き、燃料極で生成された水素イオンが電解質膜を透過し、酸素極では次式(5)のような反応が起こる。
2→2H++2e- …(4)
2H++1/2O2+2e-→H2O …(5)
【0028】
ここで、発電セル903の燃料極に供給された水素ガスは全てが反応しない方が高効率であり、残留した水素ガスは燃焼器4に供給される。水素ガスの他に空気(空気には、酸化剤である酸素が含まれている。)も燃焼器4に供給される。燃焼器4に供給された水素ガスは燃焼燃料であり、燃焼器4内において水素ガスが燃焼触媒により酸化し、燃焼熱が発生する。燃焼器4で発生した熱とCO除去器3で所定の温度で一酸化炭素除去反応を維持する熱の差分が改質器2における反応に用いられ、これにより改質器2やCO除去器3が所定の温度で動作する。例えば、改質器2が300℃で動作し、CO除去器3が100℃で動作する。
【0029】
DC/DCコンバータ904は、発電セル903により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換したのちに電子機器本体1000に供給する機能を有する。更に、DC/DCコンバータ904は、発電セル903により生成された電気エネルギーを二次電池905に充電し、発電セル903やマイクロ反応装置1等が動作していない時に、二次電池905に蓄電された電気エネルギーを電子機器本体1000に供給する機能も果たせるようになっている。制御部906は気化器902、マイクロ反応装置1、発電セル903を運転するために必要な図示しないポンプやバルブ類、ヒータ類のほか、DC/DCコンバータ904等を制御し、電子機器本体1000に安定して電気エネルギーを供給するような制御を行う。
なお、図1では、燃料としてメタノールを使用する場合について、反応物や生成物を示している。
【0030】
図2は、マイクロ反応装置1の断面図である。
図2に示すように、このマイクロ反応装置1の反応装置本体11が断熱パッケージ12内に収容されている。複数の管14が断熱パッケージ12を貫通して反応装置本体11に連結している。また、複数のリード線13が断熱パッケージ12を貫通して反応装置本体11まで配索されている。管14及びリード線13が断熱パッケージ12を貫通した箇所は、低融点ガラス封着剤によって気密封止されている。管14はガラスで形成されており、管14と断熱パッケージ12が同じ材料で形成されている。
【0031】
断熱パッケージ12は、有底箱形の2つのガラス容器21,22の開口を向かい合わせてこれらガラス容器21,22を低融点ガラス封着剤で接合したものである。そのため、断熱パッケージ12は、密閉中空を内側に有した箱体である。断熱パッケージ12の密閉空間は、真空引きされて真空状態となっている。断熱パッケージ12の内壁面には、図示しない赤外線反射膜が成膜されている。赤外線反射膜は、スパッタによるCrの膜を下地とし、スパッタによるAuの膜をそのCrの膜の上に積層したものである。断熱パッケージ12内には図示しないゲッターポンプが設けられ、ゲッターポンプのゲッター材を高周波誘導加熱等により活性させることで、高温運転時に壁面から発生する吸着ガス等がゲッター材に吸着し、断熱パッケージ12内の真空度が保たれている。なお、断熱パッケージ12は、ガラス製でなくとも良く、例えば金属製又はセラミック製であっても良い。赤外線反射膜は、断熱パッケージ12よりも赤外線の反射率が高ければCrとAuの積層でなくても良く、Ag、Alといった他の金属膜であっても良い。
【0032】
反応装置本体11は、3枚の基板30,40,50を積層してこれらを接合したものである。基板30,40,50は、アルカリ金属(Na、Li等)を含有したガラス基板である。例えば、基板30,40,50は、パイレックス(登録商標)ガラスからなる基板である。基板30と基板40との間には図示しない金属膜が介在し、その金属膜により基板30と基板40が陽極接合されている。同様に、基板40と基板50との間には図示しない金属膜が介在し、その金属膜により基板40と基板50が陽極接合されている。
【0033】
図3は、図2の切断線III−IIIに沿った面の矢視断面図である。図3に示すように、基板30の1つの角部には切欠き30aが形成されている。基板30には、矩形状の貫通孔31が形成されている。基板30の下面、つまり、基板40との接合面には、溝32が凹設されている。溝32は、基板30の右縁から貫通孔31の左側へ至る燃料導入路33と、燃料導入路33の端部33aに通じるとともに貫通孔31の左側において葛折り状になった改質路34と、改質路34の端部34aから基板30の右縁に至る、一酸化炭素除去反応の酸化剤である空気が導入されるCO除去用空気導入路35と、CO除去用空気導入路35の空気と改質器34で改質した改質ガスとの混合部35aから分岐して基板30の右縁に至る葛折り状の一酸化炭素除去路36とからなる。
【0034】
図2に示すように、改質路34の壁面には、改質触媒37が定着されている。改質触媒37は、触媒組成物(例えば、Cu/ZnO系触媒組成物)を溶媒に分散させた触媒分散液を改質路34の壁面にコーティングすることで担持されたものであったり、ゾルゲル法等により改質路34の壁面に成膜された酸化物(例えば、アルミナ)に対して触媒分散液をコーティングして担持されたものであったりする。
【0035】
一酸化炭素除去路36の壁面には、選択酸化触媒38が定着されている。選択酸化触媒38は、触媒組成物(例えば、白金系触媒組成物)を溶媒に分散させた触媒分散液を一酸化炭素除去路36の壁面にコーティングすることで担持されたものであったり、ゾルゲル法等により一酸化炭素除去路36の壁面に成膜された酸化物(例えば、アルミナ)に対して触媒分散液をコーティングして担持されたものであったりする。
【0036】
図4は、図2の切断線IV−IVに沿った面の矢視断面図である。図4に示すように、基板40には、貫通孔31に相対する矩形状の貫通孔41が形成されている。基板40の上面、つまり、基板30との接合面には、溝42が凹設されている。溝42は、燃料導入路33に相対する燃料導入路43と、改質路34に相対する改質路44と、CO除去用空気導入路35に相対するCO除去用空気導入路45と、一酸化炭素除去路36に相対する一酸化炭素除去路46とからなる。図2に示すように、改質路44の壁面には、改質触媒47が定着され、一酸化炭素除去路36の壁面には、選択酸化触媒48が定着されている。
【0037】
基板30と基板40が接合されることで、燃料導入路33が燃料導入路43に、改質路34が改質路44に、CO除去用空気導入路35がCO除去用空気導入路45に、一酸化炭素除去路36が一酸化炭素除去路46に重なる。反応装置本体11のうち改質路34,44が形成された部分が、図1に示した改質器2となる。反応装置本体11のうち一酸化炭素除去路36,46が形成された領域が、図1に示したCO除去器3となる。
【0038】
図2に示すように、基板40の下面には、電熱線によるヒータ70,71がパターニングされている。ヒータ70は、上又は下から投影視して改質路34,44の内側に収まるようにパターニングされていて、ヒータ71は、上又は下から投影視して一酸化炭素除去路36,46の内側に収まるようにパターニングされている。ヒータ70,71の電気的特性(例えば、電気抵抗)がその温度に依存し、ヒータ70,71の電流や電圧を測定することによりヒータ70,71の温度が求まるので、ヒータ70,71が温度センサとしても機能する。ヒータ70,71は、基板40と基板50との接合界面に形成された陽極接合用金属膜から電気的に絶縁されている。ヒータ70,71はリード線13に接続されている。
【0039】
図5は、図2の切断線V−Vに沿った面の矢視断面図である。図5に示すように、基板50の1つの角部には切欠き50aが形成されている。基板50には、貫通孔41に相対する矩形状の貫通孔51が形成されている。更に、貫通孔51の右側において、基板50の上面に凹部56が形成されている。基板50の上面、つまり、基板40との接合面には、溝52が凹設されている。溝52は、基板50の右縁から貫通孔31の左側へ至る燃料導入路53と、基板50の右縁から燃料導入路53に合流する、燃焼反応の酸化剤となる空気の導入路である空気導入路53bと、燃料導入路53の端部53aに通じるとともに貫通孔51の左側において葛折り状になった燃焼路54と、燃焼路54の端部54aから基板50の右縁に至る排出路55とからなる。
【0040】
基板50の上面が基板40の下面に接合されることによって、溝52が基板40により塞がれている。図2に示すように、ヒータ70は溝52の燃焼路54に収容され、ヒータ71は凹部56に収容されている。上から又は下から反応装置本体11を投影視すると、燃焼路54が改質路34,44に重なる。燃焼路54の壁面には、燃焼触媒57が定着されている。燃焼触媒57については、後に詳述する。反応装置本体11のうち燃焼路54が形成された部分が、図1に示した燃焼器4となる。このような反応装置本体11においては、改質器2が燃焼器4に重ねられている。
【0041】
これら基板30,40,50の接合体の右側面には、開口63〜68が形成され、開口63〜68のそれぞれに管14が嵌め込まれ、その嵌め込み部分において管14の周りが低融点ガラス封着剤で気密封止されている。開口63が燃料導入路53への燃焼燃料ガスの入口となり、開口64が空気導入路53bへの空気の入口となり、開口65がCO除去用空気導入路35への空気の入口となり、開口66が一酸化炭素除去路36からの発電に使われる改質ガスの出口となり、開口67が燃料導入路33への燃料ガスの入口となり、開口68が排出路55からの排ガスの出口となる。図1において気化器902から送られてきた燃料と水の混合気(燃料ガス)は開口67に流れ込み、発電に使われずに残った水素等の混合気(燃焼燃料ガス)であって発電セル903の陽極から送られてきた混合気は開口63に流れ込む。また、外部から送られてきた空気は開口64や開口65に流れ込む。燃焼器4の排ガス(水等)は、開口68から外部へ排出される。CO除去器3を経て得られた混合気(水素等)は、開口66から発電セル903の燃料極へ発電に使われる改質ガスとして送られる。
【0042】
燃焼触媒57について説明する。燃焼触媒57は、活性成分としての貴金属(例えば、白金)を含む触媒組成物が担持体(例えば、アルミナ)に担持されてなるものである。具体的には、燃焼触媒57が図6、図7に示すように設けられている。図6は、燃焼路54の一部の平面図であり、図6は、燃焼路54の幅方向に沿った面の断面図である。なお、図6では等間隔に燃焼触媒57が配置されているように示しているが、後述のようにドット密度を流路位置で変化するように配置してもよい。
【0043】
図6、図7に示すように、基材となる基板50の燃焼路54の壁面が、膜状の担持体57aによって被覆されている。担持体57aは、アルミナからなる。担持体57aは、ゾルゲル法により成膜されたものであり、具体的にはアルミナゾルを燃焼路54の壁面に塗布して乾燥によりゲル状にしたものである。
【0044】
膜状の担持体57aに、ドット状の触媒組成物57bが担持されている。平面視して、触媒組成物57bが間隔をあけて担持体57aの上に点在し、下地となる担持体57aの一部が触媒組成物57bの間で露出している。触媒組成物57bは、白金等の貴金属のほかに、アルミナ等の担体を含むものである。触媒組成物57bは、触媒含有スラリーを液滴状に多数回吐出する液滴吐出法(インクジェット法)によってドット状に担持されたものでもよいし、触媒含有スラリーをスポッタで多数回点着する方法によってドット状に担持されたものでもよい。なお、触媒組成物57bがドット状に設けられているが、網目状にパターニングされ、下地となる担持体57aの一部が露出しても良い。
【0045】
担持体57aが燃焼路54の底一面に成膜されているが、担持体57aが膜状でなく所定の形状にパターニングされてもよい。例えば、図8に示すように、下地となる基板50の一部が担持体57cの間で露出するようパターニングされてもよい。図8に示すように、平面視して、ドット状の担持体57cが間隔をあけて燃焼路54の底に点在し、下地となる燃焼路54の底の一部が担持体57cの間で露出している。それぞれの担持体57cに触媒組成物57dが担持され、平面視してドット状の触媒組成物57dが間隔をあけて点在し、燃焼路54の底の一部が触媒組成物57dの間で露出している。触媒組成物57bと触媒組成物57dは同じ成分であり、担持体57aと担持体57cは同じ成分である。なお、担持体57cがドット状に設けられているが、網目状にパターニングされ、更にその網目状の担持体に触媒組成物が担持されて、触媒組成物が網目状に設けられ、下地となる燃焼路54の底の一部が露出しても良い。
【0046】
ここで、後述のように、燃焼路54の始点53aから燃焼路54に沿った距離xの位置と、その位置における触媒組成物57b又は触媒組成物57dのドット密度iとの関係が、式(6)で表されるようにすることが望ましい。
【0047】
【数1】

【0048】
式(6)において、ドット密度iは、燃焼路54の始点53aから燃焼路54に沿った距離xの関数である。式(6)は、始点53aから距離xの位置には、ドット密度iの触媒組成物57bや触媒組成物57dが担持されている(分布している)ことを表している。
【0049】
ここで、式(6)において、W、X、αx、R1、Y、R2、DW、h、κ0、R、T、Ea、CO2、u、C0(H2)は以下のことを表す。
W:非反応時所定温度維持に必要な熱量であって、
マイクロ反応装置1の構成・構造で決まる値
X:改質反応で投入される反応物のモル量であって、仕様値
αx:距離xの位置の微小領域における改質反応の反応率であって、
反応条件、構成で決まる仕様値
1:改質反応の単位モルあたりの吸熱量であって、量論式から導かれる値
Y:触媒燃焼反応での反応物のモル量であって、仕様値
2:触媒燃焼反応の単位モルあたりの発熱量であって、量論式から導かれる値
W:1ドットあたりの重量
h:燃焼路54の深さ
κ0:頻度因子
R:気体定数
T:温度
Ea:活性化エネルギー
O2:酸素濃度
u:平均流速
0(H2):初期水素濃度
【0050】
式(6)について、以下に説明する。なお、ここでは単純化のために、CO除去器3での所定の温度で一酸化炭素除去反応を維持する為の熱収支の影響を考えない。
距離xの位置において、改質器2を所定の反応温度で運転するのに必要な熱量は、改質器2を反応温度に維持することと、改質反応による吸熱量の和であるから、式(7)で表される。これをグラフに表すと、例えば、図9の曲線Aのように表される。
【0051】
【数2】

【0052】
一方、距離xの位置において、燃焼触媒57の触媒燃焼により発生する熱量は、式(8)で表される。式(8)において、βxは、距離xの位置の微小領域における触媒燃焼反応の反応率であって、反応条件や構成で決まる仕様値である。
【数3】

【0053】
距離xの位置において式(7)と式(8)が等しければ、吸熱と発熱の均衡をとることができ、触媒燃焼により改質器2を所定の反応温度で運転することができる。
【0054】
ここで、微小領域空間での反応速度をγzとし、微小領域でのドット密度をiとすると、次式(9)の反応速度式が成り立つ。式(9)において、RTやCO2の次数は反応次数と呼ばれ、Pt/Al23を用いた水素燃焼反応で決まっている値であって実験値である。
【数4】

【0055】
また、物質収支から式(10)が成立する。
【数5】

【0056】
式(9)と式(10)から式(11)、つまり、ドット密度iは(12)のようになる。
【数6】

【数7】

式(12)から、式(8)の熱量が式(7)の熱量に等しくなるようにする条件より、ドット密度iは式(6)のように求まる。
【0057】
図9に対応するドット密度分布を模式的に示すと、図10のようになる。
図10に示すように、燃焼路54の上流側から下流側に向けてドット密度が密から疎に連続的に変化するような分布となる。したがって、燃焼路54の上流部(燃焼路54の始点53a近傍)に位置し且つ互いに隣接している触媒組成物57b(又は触媒組成物57d。以下、図10において同じ。)間の距離P1は、中流部に位置し且つ互いに隣接している触媒組成物57b間の距離P2より短く、中流部の触媒組成物57b間の距離P2は下流部(燃焼路54の終点端部54a近傍)に位置し且つ互いに隣接している触媒組成物57b間の距離P3より短い。
【0058】
以上のように、燃焼路54の中の或る位置において、単位面積当たりの触媒組成物57bや触媒組成物57dの量はその位置における改質器2への吸熱量に対応させる。具体的に単位面積当たりの量としてドット密度を用いると、燃焼路54の中の或る位置において単位面積当たりの触媒組成物57bや触媒組成物57dのドット密度を、式(6)に基づくようにその位置における改質器2への吸熱量(改質反応の反応率αx)に対応して配置することが望ましい。
【0059】
次に、マイクロ反応装置1の製造方法について説明する。
まず、基板40の両面に陽極接合用の金属膜をスパッタ法により成膜し、基板40の下面にヒータ70,71をフォトリソグラフィ法、エッチング法等により形状加工し、ヒータ70,71と金属膜を絶縁させる。次に、フォトリソグラフィ法、サンドブラスト法により基板30に貫通孔31及び溝32を加工する。貫通孔31については両面からサンドブラスト加工を行うことで形成する。基板40,50についても基板30と同様に貫通孔41,51及び溝42,52を形成する。そして、基板30,40,50をダイシング加工により切り出す。
【0060】
次に、基板30にドライフィルムフォトレジストを貼り付け、フォトリソグラフィ法にて溝32と同じ形状の加工をドライフィルムフォトレジストに加工する。次に、改質路34の壁面に改質触媒37を定着させ、一酸化炭素除去路36の壁面に選択酸化触媒38を定着させる。具体的には、触媒組成物(例えば、Cu/ZnO系触媒組成物)を溶媒に分散させた触媒分散液を改質路34の壁面にコーティングする。別の方法として、ゾルゲル法等により改質路34の壁面に酸化物(例えば、アルミナ)の密着性向上層を形成し、触媒分散液をその密着性向上層にコーティングする。選択酸化触媒38の定着方法として、触媒組成物(例えば、白金系触媒組成物)を溶媒に分散させた触媒分散液を一酸化炭素除去路36の壁面にコーティングする。別の方法として、ゾルゲル法等により一酸化炭素除去路36の壁面に酸化物(例えば、アルミナ)の密着性向上層を形成し、その密着性向上層に触媒分散液をコーティングする。
【0061】
基板40についても基板30と同様に、改質路44の壁面に改質触媒47を定着させ、一酸化炭素除去路46の壁面に選択酸化触媒48を定着させる。
【0062】
触媒の定着後、基板30,40を110℃のホットプレート上で1時間乾燥させて水を蒸発させる。その後、基板30,40が室温に冷却されたら、ドライフィルムフォトレジストをピーリング法により剥離する。
【0063】
基板50の燃焼路54の壁面に燃焼触媒57を定着させる方法について説明する。
まず、JRC−ALO−6(日揮製)を粉砕し、空気流通のもと500℃で1時間焼成処理を行い、担体となるアルミナを調製する。純水とアルミナをヘキサクロロ白金(IV)酸・6水和物水溶液に入れ、水を蒸発させてアルミナに白金を担持させ、その後水素還元することで調製し、白金の担持量が0.1wt%のPt/Al23触媒組成物を得る。このように調整したPt/Al23触媒組成物(重量比1)と純水(重量比10〜30)とヒドロキシエチルセルロース(重量比0.1)を混合してスラリーを得る。
【0064】
図11に示す工程図は、図7に示した形態の燃焼触媒57を定着させる工程を示したものである。
図11(a)に示すように、基板50の燃焼路54の壁面にアルミナゾルを塗布して、ゾルゲル法によりアルミナの担持体57aを成膜する。次に、この基板50を図12に示すような位置決め装置(例えば、XYステージ)91の上に固定する。基板50の表面に対して直交する方向に往復移動可能なスポッタ92を有する駆動治具を配置し、制御装置により駆動治具を制御する。図11(b)に示すように、Pt/Al23触媒組成物を含有したスラリーの液滴58をスポッタ92の先端に付着させ、図11(c)に示すように、スポッタ92の先端を燃焼路54の壁面に接触させてスラリーの液滴58を担持体57aに付着させる。位置決め装置91で基板50を移動させながら、スポッタ92の上下動を繰り返すことで、多数の液滴58を担持体57aに付着させる(図11(d),(e)参照)。この時には液滴58の間隔をあけて、下地となる担持体57aの一部が露出するように液滴58を分布させる。また、始点53aから距離xの位置における液滴58のドット密度を式(6)のようにその位置における吸熱量(改質反応の反応率αx)によって決めるようにスラリーの液滴58を分布させることが望ましい。多数の液滴58を点着したら、基板50を100℃のホットプレート上に1時間載せて、液滴58の水分の蒸発乾燥を行うと、液滴58が触媒組成物57bになる(図7参照)。このような方法によれば、液滴58を離間した状態で点着しているので液滴58が滲んでも凝集せず、触媒組成物57bも離間した状態で点在させることができる。
【0065】
図13に示す工程図は、図8に示した形態の燃焼触媒57を定着させる工程を示したものである。以下、図13により、燃焼触媒57を定着させる方法について説明する。
基板50を位置決め装置91の上に固定する。次に、位置決め装置91で基板50を移動させながら、スポッタ92の先端にアルミナゾルを付着させ、スポッタ92の上下動を繰り返すことで、アルミナゾルの多数の液滴59を燃焼路54の壁面に付着させる(図13(a))。この時には液滴59の間隔をあけて、下地となる基板50の一部が露出するように液滴59を分布させる。また、始点53aから距離xの位置における液滴59のドット密度を式(6)のようにその位置における吸熱量(改質反応の反応率αx)によって決めるようにアルミナゾルの液滴59を分布させることが望ましい。多数の液滴59を点着したら、基板50を100℃のホットプレート上に1時間載せて、液滴59の水分の蒸発乾燥を行うと、液滴59が担持体57cになる(図13(b))。次に、Pt/Al23触媒組成物を含有したスラリー60を燃焼路54の全体に塗布し、スラリー60で担持体57cを被覆する(図13(c))。そして、塗布したスラリー60をブロワー等によって吹き飛ばすと、担持体57cに定着したスラリー60が残留し、他の部分は除去される(図13(d))。続いて、基板50を100℃のホットプレート上に1時間載せて、スラリー60の水分の蒸発乾燥を行うと、スラリー60が触媒組成物57dになる。
図13に示す方法によれば、触媒組成物57dが凝集せずに離間した状態で点在するようにできる。更に、スラリー60を液滴状でない状態で塗布しているので、スラリー60の物性(粘性等)を特段調製する必要がなく、物性調製の為の添加剤による反応阻害発生の可能性をなくすことができる。
【0066】
以下、図8に示した形態の燃焼触媒57を定着させる別の方法について、図14を用いて説明する。
この方法においては、Pt/Al23触媒組成物を含有したスラリーを用いるのではなく、Pt/Al23触媒組成物を粉末状にして用いる。まず、基板50を位置決め装置91の上に固定する。次に、位置決め装置91で基板50を移動させながら、スポッタ92の先端にアルミナゾルを付着させ、スポッタ92の上下動を繰り返すことで、アルミナゾルの多数の液滴59を燃焼路54の壁面に付着させる(図14(a))。この時には液滴59の間隔をあけて、下地となる基板50の一部が露出するように液滴59を分布させることが望ましい。また、始点53aから距離xの位置における液滴59のドット密度を式(6)のようにその位置における吸熱量(改質反応の反応率αx)によって決めるようにアルミナゾルの液滴59を分布させることが望ましい。多数の液滴59を点着したら、粉末状のPt/Al23触媒組成物61を燃焼路54の全体に塗布し、触媒組成物61で液滴59を被覆する(図14(b))。そして、Pt/Al23触媒組成物61をブロワー等によって吹き飛ばすと、液滴59に付着したPt/Al23触媒組成物61が残留し、他の部分は除去される(図14(c))。吹き飛ばした触媒組成物61は回収して再利用することができる。続いて、基板50を100℃のホットプレート上に1時間載せて、Pt/Al23触媒組成物61に混じった水分や液滴59の水分の蒸発乾燥を行うと、液滴59が担持体57cになり、液滴59に付着したPt/Al23触媒組成物61が触媒組成物57dになる。
図14に示す方法によれば、触媒組成物57dが凝集せずに離間した状態で点在させることができる。更に、粉末状の触媒組成物61を塗布しているので、触媒組成物61に何らかを添加する必要はなく、反応阻害発生の可能性がなく、更に、触媒組成物61の回収も可能のため、低コストである。
【0067】
以上の説明においては、スポッタ92により点着することによってドット状の液滴58や液滴59を分布させたが、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)から液滴58や液滴59を多数回吐出することによってドット状の液滴58や液滴59を分布させても良い。
【0068】
触媒の定着後、基板30と基板40を重ねて、基板40の金属膜を陽極とするとともに基板30側を陰極として電圧を印加し、基板30と基板40の陽極接合を行う。続いて、ヒータ70,71の両端部の薄膜ヒータパッドにリード線13を抵抗溶接する。続いて、基板40と基板50を重ねて、基板40の金属膜を陽極とするとともに基板50側を陰極として電圧を印加し、基板40と基板50の陽極接合を行う。なお、陽極接合の際には、接触端子を切欠き30a,50aの部分から金属膜に接し、金属膜に電圧を印加する。
【0069】
続いて、開口63〜68に管14を差し込み、開口63〜68の隙間を低融点ガラス封着剤で気密封止する。基板30,40,50の接合体及び図示しないゲッターポンプをガラス容器21,22の中に収容し、ガラス容器21,22の溝に管14やリード線13を嵌め込み、ガラス容器21,22を合わせて、低融点ガラスによりガラス容器21,22を接着する。これにより断熱パッケージ12を組み立てる。管14やリード線13と断熱パッケージ12との隙間を低融点ガラスにより封止する。また、断熱パッケージ12には、真空引き管を取り付けるための図示しない穴が形成されており、その穴に真空引き管を挿入し、真空引き管も低融点ガラスを用いて断熱パッケージ12に封止する。最後に、真空引き管に真空ポンプを取り付け、真空ポンプで断熱パッケージ12の空気を排気して真空状態にしながら、真空引き管の封止を行う。
【0070】
次に、マイクロ反応装置1の動作について説明する。
起動時にはヒータ70,71が電圧により発熱した状態で、定常運転時には発電セル903の燃料極から発電に使われずに残った水素等が開口63に供給される。また、外部の空気が開口64に供給され、燃料導入路53において水素と空気が混合する。水素と空気等の混合気が燃焼路54に流れ込み、その混合気が燃焼路54を流れている時に、水素が燃焼して、燃焼熱が発生する。その燃焼熱は改質器2に吸熱される。燃焼により生成された水等は排出路55を通って開口68から外部に排出される。一方、燃料と水の混合気が気化器902から開口67に供給され、燃料と水が改質路34,44を流れている時に改質反応が起きる。改質反応は吸熱反応であり、燃焼器4における燃焼熱が用いられる。また、外部の空気が開口65に供給され、生成された水素や一酸化炭素等と混合し、その混合気が一酸化炭素除去路36,46を流れる。一酸化炭素除去路36,46においては、一酸化炭素が酸化されて除去される。生成された水素等は開口67から発電セル903の燃料極に供給される。
【0071】
本実施形態によれば、触媒組成物57b,57dが間隔をあけて点着されているので、触媒組成物57b,57dが凝集することなく、水素が局所的に燃焼せず、局所的に高温になることがない。そのため、高温による燃焼器4等の熱破壊を抑えることができる。
【0072】
上記実施形態では、吸熱を起こす処理器として改質器2を例として挙げたが、他の吸熱反応を起こす反応器を改質器2の代わりに設けても良い。更に、液体を気化させることにより吸熱を起こす気化器を改質器2の代わりに設けても良い。
【実施例1】
【0073】
図11に示した方法で、間隔をあけて触媒をガラス基板の燃焼路壁面に定着させ、1.3Wの発熱に必要な水素量を空気と混合して、燃焼器4の燃焼路54に供給した。ヒータ70,71による発熱と、燃焼路54における燃焼熱とを併用し、改質器2を300℃、CO除去器3を100℃に制御し、1時間の運転を行った。この結果、マイクロ反応装置1を分解すると、燃焼によるマイクロ反応装置1の破壊を確認することができなかった。また、酸化剤(空気中の酸素)の供給量に対する燃焼エネルギーの結果を図15に示す。図15において、縦軸が燃焼効率又は燃焼エネルギーを表し、「燃焼効率=(改質器2に寄与した燃焼エネルギー)÷(反応に寄与する水素のエネルギー)」の関係を持つ。また、横軸は、「2×(酸素のモル流量)÷(供給した水素のモル流量)」で表したものである。図15から明からなように、空気に含まれる酸素量を水素量の量論以上に供給した場合に、約1.05Wの燃焼エネルギーを安定的に確保することができた。またこの時、燃焼後排気される気体をマイクロガスクロマグラフィーCP2002(バリアン製、カラムMolsieve5A、キャリアガスAr)で測定したところ、水素は検出されず、水素が全て燃焼したことを確認することができた。
【0074】
また、ディップコート法で上記とほぼ同じ量だけ燃焼触媒を定着したものを燃焼触媒57の代わりに用いたマイクロ反応装置について、1.3Wの発熱に必要な水素量を空気と混合して、燃焼器4の燃焼路54に供給した。ヒータ70,71による発熱と、燃焼路54における燃焼熱とを併用し、改質器2を300℃、CO除去器3を100℃に制御し、1時間の運転を行った(比較例)。運転中又は運転終了後の降温中に燃焼器4の破壊と思われる真空断熱の断熱効果がなくなり、マイクロ反応装置を分解すると、ガラス基板の燃焼路54のクラックが発生していることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明を適用したマイクロ反応装置を具備した発電装置及びそれを備えた電子機器のブロック図である。
【図2】マイクロ反応装置の断面図である。
【図3】図2の切断線III−IIIに沿った面の矢視断面図である。
【図4】図2の切断線IV−IVに沿った面の矢視断面図である。
【図5】図2の切断線V−Vに沿った面の矢視断面図である。
【図6】マイクロ反応装置に形成された燃焼路の平面図である。
【図7】図6の切断線VII−VIIに沿った面の矢視断面図である。
【図8】図7とは別の形態における断面図である。
【図9】距離xでの吸熱量を示すとともに、距離xと必要燃焼熱量との関係を示したグラフである。
【図10】図9に対応するドット密度分布を模式的に示す図である。
【図11】図7に示した形態の燃焼触媒の定着方法を示した工程図である。
【図12】燃焼触媒の定着方法に用いる装置を示した図面である。
【図13】図8に示した形態の燃焼触媒の定着方法を示した工程図である。
【図14】図8に示した形態の別の燃焼触媒の定着方法を示した工程図である。
【図15】酸化剤の供給量に対する燃焼エネルギー及び燃焼効率の結果を示したグラフである。
【図16】(a)は従来の燃焼器の部分断面図であり、(b)はその燃焼器における燃焼路の平面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 マイクロ反応装置(反応装置)
2 改質器(処理器)
54 燃焼路
57 燃焼触媒
57a、57c 担持体
57b、57d 触媒組成物
900 発電装置
1000 電子機器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱を起こす処理器と、
前記処理器に重ねられ、燃焼燃料と酸化剤が流れる燃焼路を形成した燃焼器と、を備え、
活性成分としての触媒組成物が間隔をあけて前記燃焼路の壁面に定着されていることを特徴とする反応装置。
【請求項2】
前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物の単位面積当たりの量がその位置における前記処理器への吸熱量に対応していることを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記触媒組成物がドット状となって前記燃焼路の壁面に点在し、
前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物のドット密度がその位置における前記処理器への吸熱量に対応していることを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項4】
前記燃焼路の壁面に担持体が膜状に成膜され、前記触媒組成物が前記担持体に担持されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の反応装置。
【請求項5】
前記燃焼路の壁面に担持体がドット状に点着され、前記触媒組成物が前記担持体に担持されることで前記触媒組成物がドット状に点在し、
前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物のドット密度がその位置における前記処理器への吸熱量に対応していることを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の反応装置と、前記反応装置により生成された燃料により発電を行う発電セルとを備えることを特徴とする発電装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発電装置と、
前記発電装置によって発電された電気により動作する電子機器本体と、を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
吸熱を起こす処理器に、燃焼燃料と酸化剤が流れる燃焼路を形成した燃焼器を重ねてなる反応装置において、活性成分としての触媒組成物を、間隔をあけて前記燃焼路の壁面に定着させることを特徴とする触媒定着方法。
【請求項9】
前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物の単位面積当たりの量をその位置における前記処理器への吸熱量に対応させるように前記触媒組成物を分布させることを特徴とする請求項8に触媒定着方法。
【請求項10】
前記触媒組成物をドット状に前記燃焼路の壁面に点在させ、
前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物のドット密度をその位置における前記処理器への吸熱量に対応させるように前記触媒組成物を分布させることを特徴とする請求項8に記載の触媒定着方法。
【請求項11】
前記燃焼路の壁面に担持体を膜状に成膜した後に、前記触媒組成物を前記担持体に担持させることを特徴とする請求項8から10の何れか一項に記載の触媒定着方法。
【請求項12】
前記燃焼路の壁面に担持体をドット状に点着させ、前記担持体を被覆するように触媒組成物を塗布した後に、前記担持体に担持された触媒組成物を除いて前記触媒組成物を除去することによって前記触媒組成物をドット状に点在させることを特徴とする請求項8に記載の触媒定着方法。
【請求項13】
前記燃焼路の壁面にゾル状の担持体をドット状に点着させ、前記担持体の乾燥後に触媒組成物を含有したスラリーを塗布して前記担持体を被覆することを特徴とする請求項12に記載の触媒定着方法。
【請求項14】
前記燃焼路の壁面にゾル状の担持体をドット状に点着させ、前記担持体の乾燥前に粉末状の触媒組成物を塗布して前記担持体を被覆することを特徴とする請求項12に記載の触媒定着方法。
【請求項15】
前記燃焼路の或る位置における前記触媒組成物のドット密度をその位置における前記処理器への吸熱量に対応させるように前記触媒組成物を分布させることを特徴とする請求項12から14の何れか一項に記載の触媒定着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−63177(P2008−63177A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241692(P2006−241692)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】