説明

反応装置および反応方法

【課題】温度制御が可能であって、濃度の高い溶液を少量使用して固形物の表面に反応させるための反応装置および反応方法を提供する。
【解決手段】反応装置は、回転可能な円筒状の反応容器であり、上部に蓋を有する。反応容器は、その円筒面の底部に垂直な軸が水平に対して傾斜する。反応容器は、回転することにより収容する固形物および容液を遠心力により持ち上げ、回転を停止することにより、固形物および溶液を落下させて、混合して反応を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を固形物に接触させ表面処理反応をさせる反応装置および反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体または弾性体等の固形物の表面に反応させる表面処理を行うには、溶媒をすべての固形物が十分に浸るだけの量を入れる。そして、この溶液を攪拌して反応を行っていた(図7)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、固体物を浸漬するために溶液量Lqを同じにしながら、一回の反応に使用する薬剤を表面処理量の制御および経済的観点から少なくしようとすると、溶液の濃度が低くなり、単位面積の固体または弾性体等の固形物の表面に単位時間に接触する薬剤の量・頻度が下がってしまった。そのために反応時間が長くなるという問題があった。一回の反応に使用する溶媒の量を少なくして、尚且つ、少ない薬剤で、即ち高濃度の溶液を少量使用して、固体または弾性体等の固形物の表面への接触頻度を上げることが課題であった。単純に高濃度にして溶液量Lqを減らすと固形物が溶媒表面より上に出てしまい、均一に表面処理が出来ないという問題があった(図8)。
【0004】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、温度制御が可能であって、高濃度の溶液を少量使用して固形物の表面に十分反応させるための反応装置および反応方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る反応装置は、回転可能な円筒状の反応容器を有し、前記反応容器は、その円筒面の底部に垂直な軸が水平に対して傾斜する。
好ましくは、前記反応容器は、その円筒面の底部に垂直な軸に回転と停止を行うことができるように構成される。
好ましくは、前記反応容器が、反応処理中に回転方向の変更が可能なように構成される。
【0006】
好ましくは、前記反応器の正逆いずれの最小回転数も50rpmである。
好ましくは、前記反応器内の内容物の温度を制御するための温度制御装置を備える。
好ましくは、前記反応器の内面に凹凸が設けられる。
本発明に係る反応方法は、回転可能な円筒状の反応容器内で固形物および流体からなる反応物を反応させる反応方法であって、前記反応容器は、その円筒面の底部に垂直な軸が水平に対して傾斜し、回転する前記反応容器の遠心力により前記反応物を前記反応容器の内面に押しつけて持ち上げられる回転数で回転させ、かつ回転停止時を0度としたとき60度を超えて210度未満の角度位置まで回転し、その後回転を止め、前記反応物が前記反応容器の内面から離れて落下するようにし、その後、前記反応容器の回転を再開させ、この反応容器の回転の作動と停止を繰り返す。
【0007】
本発明に係る他の反応方法は、回転可能な円筒状の反応容器内で固形物および流体からなる反応物を反応させる反応方法であって、前記反応容器は、その円筒面の底部に垂直な軸が水平に対して傾斜し、回転する前記反応容器の遠心力により前記反応物を前記反応容器の内面に押しつけて持ち上げられる回転数で回転させ、かつ回転停止時を0度としたとき60度を超えて210度未満の角度位置まで回転し、その後回転を止め、前記反応物が前記反応容器の内面から離れて落下するようにし、その後、前記反応容器を逆回転させ、この反応容器の正逆回転動作を繰り返す。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、濃度の高い溶液を少量使用して固形物の表面に、時間をかけずに十分反応させるための反応装置および反応方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は反応装置の中に表面処理用固体と溶液を入れた図である。
【図2】図2は回転制御装置の概略図である。
【図3】図3は反応装置の中に表面処理用固体と溶液を入れた図である。
【図4】図4は反応容器内の固形物と液体との混合物の動きを示し、遠心力により固形物と液体が持ち上げられる図である。
【図5】図5は反応容器の回転が止まり固形物および液体が落下する図である。
【図6】図6は反応容器から固形物および液体を取り出している図である。
【図7】図7は攪拌槽による反応の図である。
【図8】図8は攪拌槽による反応の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は反応装置1の中に表面処理用固体と溶液を入れた概略図である。図2は回転制御装置の概略図である。
反応装置1は、反応容器2、駆動装置3、回転制御装置4、温度制御装置および反応容器回転装置からなる。
回転制御装置4は、主に電動機の動作を制御するものであり、制御部41およびサーボアンプ42等からなる。
【0011】
制御部41は、種々の演算処理を行うCPU、電動機31の動作条件の記憶およびサーボアンプ42を制御するためのプログラム等を記憶する不揮発性メモリ、電動機31動作時に発生するデータを記憶するRAM、電動機31の動作条件等を入力しかつ反応装置1(電動機31)の動作状況等を表示させる入出力装置および異常を知らせる警報装置等からなる。
【0012】
制御部41は、予め入力された反応容器2の回転速度(回転数で設定される)、反応容器2の回転・停止およびまたは正逆切り替え条件等に従って、サーボアンプ42に対し電動機31の制御を指示する。なお、入出力装置から入力される反応容器2の回転速度は、電動機31の駆動軸に取り付けられたタイミングプーリーと反応容器2外周に固定された大径歯車との間の減速比に基づいて電動機31の回転数に換算され、不揮発性メモリに記録される。制御部41は、反応容器2の回転が適正な位置で止まるように、稼働後の電動機31の停止位置を指示する。また、制御部41は、温度制御装置に対して、反応容器2内の制御温度を温度コントローラに指示する。入出力装置は、マンマシンインターフェースとしての操作盤を有する。
【0013】
反応容器2の正逆回転のいずれの最小回転数も50rpmである。
反応容器2が反応の促進のために回転を始めると、固形物Sdおよび溶液Lqは、遠心力により容器本体13の内面に押しつけられ、回転する容器本体13の内面とともに上昇する(図4)。
反応容器2が略180度回転し、止まると、容器本体13の内面に張り付いた固形物Sdおよび溶液Lqは、その重さのために容器本体13の内面から引き剥がされて下方に落下する(図5)。反応容器2が回転・停止を繰り返している間、内部の固形物Sdおよび溶液Lqは、上昇と落下とを繰り返し、固形物Sdの溶液Lqに対する相対位置が変化し、溶液Lqに接触する固形物Sdの面がランダムに変わる。これにより、固体物Sdの表面に均一に溶液Lqが接触し、反応して表面処理される。反応容器2に配管・配線等が接続され、かつ回転しすぎるとそれらが切断される恐れのあるときは、回転の正逆を繰り返すことにより、切断等の不具合を防ぐ。その恐れのないときは一方向に回転の作動・停止の繰り返しでもよい。
【0014】
回転による容器本体13の内面に張り付いた固形物Sdおよび液体の持ち上げ、および回転の程度は、最も下の持ち上げがないとき(水平)を0度としたとき、回転方向に対する角度が60度を超えて210度未満であることが好ましい。
反応容器2は、その回転数が50rpm以下では十分な遠心力が働かず、例えば表面処理したい固形物Sdと溶液Lqが下部の周辺に溜まったままとなり、均一処理ができない。
【0015】
反応容器2内における固形物Sdおよび溶液Lqは、反応容器2の回転に伴って上記のように移動し循環するのが好ましい。固形物Sdおよび溶液Lqを反応容器2内でこのように移動させる適正回転数は、予め試験を行い求めておく。試験は、反応(または表面処理等)を行う固形物Sdとこれに作用させる溶液Lqとを、反応を抑制する条件下で、ガスが発生する場合は、ガス抜き装置をつける。
【0016】
回転する反応容器2が内部の固形物Sdおよび液体を遠心力で持ち上げやすくするためには、容器本体13の内面に凹凸を設けることが効果的である。
前記凹凸は、ディンプル形状や、円弧形のへこみを持つ形状の繰り返し体からなる。
反応容器2による固形物Sdおよび液体の混合は、主に遠心力により固形物Sdと溶液Lqの持ち上げ、落下により行われ、攪拌羽根P等の回転体による混合に伴う、固形物への衝撃を与えないようにしている。回転体による衝撃の方が、落下に伴う衝撃よりも局所的に大きな力をともなうことがあるため破損の可能性が高い。
【0017】
上述の実施形態において、反応容器2が回転するときに遠心力により固形物Sdおよび溶液Lqを容器本体13の内面とともに上昇しやすくするために、反応容器2の内面に凹凸を設けるのが好ましい。反応容器2の傾斜角度を略30度としたが、反応容器2の傾斜角度は、0度を超え60度未満であれば、適正な傾斜角度を選択することができる。反応容器2の好ましい傾斜角度は、10度以上45度以下である。傾斜角を低くすれば、固形物Sdと溶液Lqを持ち上げるのに、より速い回転が必要であり、かつ落下に伴う衝撃が大きくなり不利であるが、固形物Sdと溶液Lqの混合はよく行われる。傾斜角を大きくすれば、固形物Sdと溶液Lqを持ち上げるのは、より遅い回転でよく、かつ落下に伴う衝撃も、底面を滑り落ちることによる制動力が働き、小さくなり有利であるが、混合という点では、十分に固形物・固形物、固形物・溶液の相対位置が変わらず不利である。このため、固形物Sdの材質・硬さ・弾性率と、望む反応時間に応じて傾斜角・回転角等を適切に選ぶことができる。
【0018】
その他、反応装置1、および反応装置1の各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。さらに、反応容器2内およびまたは、溶液内の酸素の除去のための窒素ガスやアルゴンガスの導入を行うためのノズル26を設けることもできる。また、このノズル26は、回転を伴う反応中は、反応容器2から外すことにより、反応容器2の回転の障害を取り除くこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、本発明は、溶液を固形物に接触させ反応させる反応装置および反応方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 反応装置
2 反応容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な円筒状の反応容器を有し、
前記反応容器は、その円筒面の底部に垂直な軸が水平に対して傾斜する
ことを特徴とする反応装置。
【請求項2】
前記反応容器は、その円筒面の底部に垂直な軸に回転と停止を行うことができるように 構成された
請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記反応容器が、反応処理中に回転方向の変更が可能なように構成された
請求項2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記反応容器の正逆いずれの最小回転数も50rpmである
請求項2または請求項3に記載の反応装置。
【請求項5】
前記反応容器内の内容物の温度を制御するための温度制御装置を備えた
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項6】
前記反応容器の内面に凹凸が設けられた
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項7】
回転可能な円筒状の反応容器内で固形物および流体からなる反応物を反応させる反応方法であって、
前記反応容器は、その円筒面の底部に垂直な軸が水平に対して傾斜し、
回転する前記反応容器の遠心力により前記反応物を前記反応容器の内面に押しつけて持ち上げられる回転数で回転させ、かつ回転停止時を0度としたとき60度を超えて210度未満の角度位置まで回転し、その後回転を止め、前記反応物が前記反応容器の内面から離れて落下するようにし、その後、前記反応容器の回転を再開させ、
この反応容器の回転の作動と停止を繰り返す
ことを特徴とする反応方法。
【請求項8】
回転可能な円筒状の反応容器内で固形物および流体からなる反応物を反応させる反応方法であって、
前記反応容器は、その円筒面の底部に垂直な軸が水平に対して傾斜し、
回転する前記反応容器の遠心力により前記反応物を前記反応容器の内面に押しつけて持ち上げられる回転数で回転させ、かつ回転停止時を0度としたとき60度を超えて210度未満の角度位置まで回転し、その後回転を止め、前記反応物が前記反応容器の内面から離れて落下するようにし、その後、前記反応容器を逆回転させ、
この反応容器の正逆回転動作を繰り返す
ことを特徴とする反応方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239996(P2012−239996A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113476(P2011−113476)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】