反発性ガイダンス分子(RGM)タンパク質ファミリーのタンパク質の骨形成タンパク質(BMP)結合ドメイン及びその機能的断片及びそれらの使用
本発明は、反発性ガイダンス分子(RGM)タンパク質ファミリーのメンバーの骨形成タンパク質(BMP)−結合ドメイン、それら由来のポリペプチド断片及び融合タンパク質の、同定及び使用に関する。本発明によるドメイン、即ちペプチド断片及び融合タンパク質は、個体の能動又は受動免疫付与のための物質として、又は、その原因もしくは進行において、RGMファミリーのメンバー及びこの分子と会合する細胞の受容体、例えば特にネオゲニン及び/又はBMPなどが関与する、疾病又は病期に対する使用のための診断及び治療用の薬剤として、適切である。本発明はさらに、本発明による結合ドメインに対する、及びそれら由来のポリペプチドに対するモノクローナル及びポリクローナル抗体、及び本発明による、ポリペプチド、融合タンパク質及び抗体を作製するための方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反発性ガイダンス分子(RGM)タンパク質ファミリーのメンバーの骨形成タンパク質(BMP)結合ドメイン及びそれ由来のポリペプチド断片及び融合タンパク質の同定及び使用に関する。本発明によるドメイン、即ちペプチド断片及び融合タンパク質は、個体の能動又は受動免疫付与のための物質として、又は、その原因もしくは進行においてRGMファミリーのメンバー及びこの分子(特にネオゲニン及び/又はBMPなど)に会合する細胞受容体が関与する疾病もしくは病期に対する使用のための診断及び治療薬として、適切である。本発明は、さらに、本発明による、結合ドメインに対する、及びそれら由来のポリペプチドに対する、モノクローナル及びポリクローナル抗体及び、本発明による、ポリペプチド、融合タンパク質及び抗体を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RGMタンパク質ファミリーのメンバーの機能は、最初、Monnier、P.P.ら、Nature、419、p392−395、2002により記載された。このファミリーには、RGM A、RGM B(DRAGONとも呼ばれる。)及びRGM C(ヘモジュベリンとも呼ばれる。)と呼ばれる3種類の既に公知のメンバーが含まれる(Niederkofler V.ら、J.Neurosci.24、808−18、2004)。これらは、脂質アンカーを介して原形質膜に結合する糖タンパク質である(グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー)。このタンパク質ファミリーのメンバーは、他のタンパク質に対して広範な配列相同性がなく、構造上の特色が基本的に次の領域、即ち、N−末端シグナルペプチド;RGD配列;GDPHアミノ酸配列のタンパク分解性切断部位;ウィルブランド因子ドメイン(vWF D)の構造的相同体;C末端の近傍の疎水性配列;及びC−末端GPIアンカーコンセンサス配列で同定されている(図2も参照)。
【0003】
ヒトにおいて、RGM Aに対するコード配列は第15染色体に、RGM Bは第5染色体に、RGM Cは第1染色体上に位置する。RGM A及びBは、特に成人の脳及び脊髄で、RGM Cは、特に骨格筋、肝臓及び心筋で、RGM Bはまた軟骨組織でも発現されるという、特徴的な発現パターンが観察される。
【0004】
RGMタンパク質は、元来、局所的ニューロン投射の形成において重要な役割を果たす候補タンパク質として同定された(Stahl B.ら、Neuron 5:735−43、1990;Mueller B.K.ら、Curr.Biol.6、1497−1502、1996;Mueller B.K、Molecular Basis of Axon Growth及びNerve Pattern Formation、H.Fujisawa編、Japan Scientific Societies Press、215−229、1997)。RGMタンパク質が神経線維成長を妨げるか又は阻害する能力は、その単離、クローニング及び特性評価において重要な役割を果たす重大な機能的特色であった。その活性は、単純な細胞測定系において容易に明らかにすることができた。RGMタンパク質は、2種類の異なる細胞アッセイにおいて、妨害又は阻害効果を有した。虚脱試験において、成長神経線維にRGMタンパク質が添加された。RGM及びRGM受容体の結合により、神経細胞成長円錐の全ての膜成分が収縮させられる活発な反応が誘導される。手を広げたような元の形態の成長円錐が細い糸状に変換される。RGMの存在下で、神経線維は阻害されたままであり、強く収縮し、もはや成長を続けることはできない。
【0005】
RGMタンパク質は、RGM受容体ネオゲニンと結合することによりそれらの効果の一部を発揮する(RajagopAlan S.ら、Nat Cell Biol.6、756−62、2004)。ネオゲニンは、大腸癌欠失遺伝子(DCC)受容体と密接な関連がある。両受容体とも、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、細胞外、膜貫通及び細胞内ドメインを有する。両方とも、別のリガンド、ネトリン−1の受容体として記載されているが、ネオゲニンのみがRGMタンパク質と結合し、DCCは結合しない。これらの受容体の細胞外ドメインは、4個の免疫グロブリン様ドメイン、それに続く6個のフィブロネクチン反復ドメインから構成される。
【0006】
神経系におけるRGM Aの機能は最もよく理解されており、非常に低い濃度で神経線維の増殖を阻害する効果は特筆すべきである。成長中のヒト及び成体ラットにおける中枢神経系への損傷の結果、損傷部位でRGMタンパク質が蓄積される(Schwab J.M.ら、Arch.Neurol、Vol.62、1561−1568、2005;Schwab J.M.ら、Eur.J.Neurosci.21:387−98、2005)。このようにして損傷神経線維の新たな増殖が阻止され、その結果、永久に、損傷部位の位置によって程度の差はあるものの、重篤な機能障害が発生する。このRGMの神経線維成長阻害活性には、受容体ネオゲニンへの結合が介在する(Rajagopalan S.ら、前出)。同じ受容体は、ネトリン−1の結合を介して媒介するが、神経線維成長を刺激する逆の効果も媒介する。
【0007】
ラットの脊髄損傷部位においてポリクローナル抗体によりRGM Aタンパク質が中和される場合、神経線維が損傷部位全体で再生し、新しいシナプス接触を形成し、その結果、顕著な機能的改善が起こる(Hata K.ら、J.Cell Biol.173、47−58、2006)。
【0008】
最近の知見は、RGMタンパク質が、中枢及び末梢神経系において、鉄代謝の制御において、腫瘍性疾患及び炎症過程において、及び、骨及び軟骨組織の形成においても、重要な役割を果たすことを示す。
【0009】
RGMファミリーのタンパク質の神経突起成長阻害ドメインは、WO2007/039256から知られている。顕著な阻害活性は、例えば、配列範囲260−290の、RGM Aに対して局在していた。
【0010】
RGM A、B及びCが、BMPファミリーの様々なメンバーと相互作用することができることも知られている。BMPは、多数の生理学的及び病態生理学的プロセスに関与する、リガンドのTGF−βスーパーファミリーのメンバーである。BMPは、特殊化したシグナル伝達経路を介してそれらの機能を果たし、この経路は、セリン/スレオニンキナーゼ受容体の2種類のタイプの組み合わせに対するBMPリガンドの結合から始まる。RGMとの相互作用は、既に、BMP−2、−4、−5、−6及び−12に対して示されている(例えば、Babitt、J.L.ら、Nature Genetics、2006、Vol.48、5、531−539;Babitt、J.L.ら、J.Biol.Chem.、2005、Vol.280、33、29820−29827;Babitt、J.L.ら、The Journal of Clinical Investigation、2007、Vol.117、7、1933−1939;Samad、T.A.ら、J.Biol.Chem.、2005、Vol.280、14、14122−14129;及びHalbrooksら、J.Molecular Signaling 2、4、2007(電子形態で公開)参照)。
【0011】
RGMタンパク質のBMP結合ドメインはこれ以前には記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Monnier、P.P.他、Nature、419、2002年、p.392−395
【非特許文献2】Niederkofler V.他、J.Neurosci.24、2004年、p.808−18
【非特許文献3】Stahl B.他、Neuron 5:1990年、p.735−43
【非特許文献4】Mueller B.K.他、Curr.Biol.6、1996年、p.1497−1502
【非特許文献5】Mueller B.K「Molecular Basis of Axon Growth and Nerve Pattern Formation」、H.Fujisawa編、Japan Scientific Societies Press、1997年、p.215−229
【非特許文献6】RajagopAlan S.他、Nat Cell Biol.6、2004年、p.756−62
【非特許文献7】Schwab J.M.他、Arch.Neurol.、Vol.62、2005年、p.1561−1568
【非特許文献8】Schwab J.M.他、Eur.J.Neurosci.、21、2005年、p.387−98
【非特許文献9】Hata K.他、J.Cell Biol.173、2006年、p.47−58
【非特許文献10】Babitt、J.L.他、Nature Genetics、Vol.48、5、2006年、p.531−539
【非特許文献11】Babitt、J.L.他、J.Biol.Chem.、Vol.280、33、2005年、p.29820−29827
【非特許文献12】Babitt、J.L.他、The Journal of Clinical Investigation、Vol.117、7、2007年、p.1933−1939
【非特許文献13】Samad、T.A.他、J.Biol.Chem.、Vol.280、14、2005年、p.14122−14129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、RGMタンパク質のBMP結合ドメインの局在及びその特徴を調べることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、上記の目的は、ヒトRGMタンパク質のBMP結合ドメイン、特にRGM A及びその活性ポリペプチド断片を単離し、特徴を調べることにより達成された。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、RGM A(GenBank#NP_064596.1)、RGM B(GenBank#NP_001012779)及びRGM C(GenBank#NP_998818.1)のヒト型の配列アラインメントを示す。
【図2】図2は、RGM分子の構造の略図を示す。N−末端シグナルペプチドとC−末端GPIアンカーとの間に示されるのは、RGD配列、フォンウィルブランド因子ドメイン(vWF D)及びアンカー領域の前のC−末端近傍における疎水性配列である。神経突起成長阻害ドメイン(OID)は、位置260−290周囲の範囲の、vWFDと疎水性領域との間にある。ヒトRGMに対する対応するアミノ酸位置は、下記の図で示され、ヒトRGM Aに対するタンパク質分解性切断部位は、アミノ酸168と169との間にある。
【図3】図3は、BMP4と様々な固定化RGM A−Fc融合タンパク質との間でのインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図4】図4は、BMP−4及びBMP−2との様々な固定化RGM A−Fc融合タンパク質の相互作用の比較のためのインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図5】図5は、固定化BMP−4と様々なRGM A−Fc融合タンパク質との間のインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図6A】図6は、固定化BMP−4と本発明による融合タンパク質47−90−Fc(図6A)、47−168−Fc(図6B)及び316−386−Fc(図6C)の様々な濃度との間のインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図6B】図6は、固定化BMP−4と本発明による融合タンパク質47−90−Fc(図6A)、47−168−Fc(図6B)及び316−386−Fc(図6C)の様々な濃度との間のインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図6C】図6は、固定化BMP−4と本発明による融合タンパク質47−90−Fc(図6A)、47−168−Fc(図6B)及び316−386−Fc(図6C)の様々な濃度との間のインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図7A】図7は、ヒト神経芽細胞腫細胞(図7AのSH−SY5Y、図7BのNTera)を用いた2種類の異なる神経突起成長試験の結果を示す。hRGM A断片、786(47−168)及び790(316−386)の両者とも、非常により強い影響を有する断片47−168−Fcとともに神経突起成長を阻害する。
【図7B】図7は、ヒト神経芽細胞腫細胞(図7AのSH−SY5Y、図7BのNTera)を用いた2種類の異なる神経突起成長試験の結果を示す。hRGM A断片、786(47−168)及び790(316−386)の両者とも、非常により強い影響を有する断片47−168−Fcとともに神経突起成長を阻害する。
【図8A】図8Aは、モノクローナル抗体4A9との免疫ブロッティング実験の結果を示す。MAB 4A9は、ヒトRGM Aの断片47−168(レーン5)を認識する。4A9はまた、さらなるhRGM A断片、70−120(レーン2)及び断片47−90(レーン4)とも結合し、全長hRGM A(47−422)(レーン6及び9)を認識する。分子量標準物質をレーン1で示す。
【図8B】図8Bは、ELISA実験の結果を示し、全長hRGM A及びhBMP−4の相互作用は、MAB4A9により用量依存的に完全に阻害される。
【図9】図9は、様々な濃度(0から50ng/mL)のrhBMP−2でのC3H−B12の処理後の結果であるルシフェラーゼ活性の用量依存性反応を示す。
【図10】図10は、24時間にわたり試験化合物の様々な濃度にC3H−B12を曝露し、個々の細胞ルシフェラーゼ活性の変化を監視することにより調べた場合の、BRE−Lucアッセイを用いたBMPシグナル伝達におけるhRGM Aのペプチド断片のアンタゴニスト効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.一般用語の説明
本明細書中で別段の定義がない限り、本発明に関して使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有する。これらの用語の意味及び範囲は明確であるが、しかし、何らかの潜在的な曖昧性がある場合には、本明細書中で提供される定義が、あらゆる辞書又は付帯的な定義よりも優先される。さらに、内容により必要とされない限り、単数形である語は、複数性を含み、複数形の語は単数性を含む。本願において、「又は」の使用は、別段の断りがない限り、「及び/又は」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語ならびに「含む(includes)」及び「含まれる(included)」などのその他の形態の使用は限定ではない。また、別段の断りがない限り、「要素」又は「成分」などの用語は、1単位を含む要素及び成分及び複数のサブユニットを含む要素及び成分の両方を包含する。
【0017】
一般に、本明細書中に記載の、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学及びタンパク質及び核酸化学及びハイブリッド形成と関連して使用される命名法及びそれらの技術は当技術分野で周知であり一般に使用されるものである。本発明の方法及び技術は、一般に、別段の指示がない限り、当技術分野で周知の従来法に従い、本願を通じて引用され考察される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載のように、行われる。酵素反応及び精製技術は、当技術分野で一般に完遂されるように又は本明細書中に記載のように、製造者の仕様書に従い行われる。本明細書中に記載の、分析化学、合成有機化学及び医学及び製薬化学と関連して使用される命名法及びそれらの検査法及び技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用される。化学合成、化学分析、医薬調製、処方及び送達ならびに患者の治療に対して標準的技術が使用される。
【0018】
本発明がより容易に理解され得るように、選択した用語を下記で定義する。
【0019】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書中で使用される場合、何らかのアミノ酸のポリマー鎖を指す。「ペプチド」及び「タンパク質」という用語はポリペプチドという用語と交換可能に使用され、また、アミノ酸のポリマー鎖も指す。「ポリペプチド」という用語は、ネイティブ又は人工タンパク質、タンパク質断片及びタンパク質配列のポリペプチド類似体を包含する。ポリペプチドは単量体又はポリマー性であり得る。
【0020】
「単離タンパク質」又は「単離ポリペプチド」という用語は、誘導物のその起源又は源に基づいて、そのネイティブの状態においてそれに付随する天然に会合される成分と会合していないタンパク質又はポリペプチドであるか;同じ種由来のその他のタンパク質を実質的に含まないか;異なる種由来の細胞により発現されるか;又は天然では生じないものである。このようにして、化学的に合成されるか又はそれが天然に由来する細胞とは異なる細胞株で合成されるポリペプチドは、その天然で会合する成分から「単離」されている。タンパク質はまた、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって、天然で会合する成分を実質的に含まないようにされているものであり得る。
【0021】
「回収する」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば当技術分野で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって、ポリペプチドなどの化学種が、天然に会合する成分を実質的に含まないようにされるプロセスを指す。
【0022】
本発明の範囲内で、「受容体」という用語は、特に、可溶性であるリガンドと相互作用することができる細胞膜に結合する表面分子を指し、例えば、この相互作用の結果、例えば細胞の内部に対するシグナル(又はシグナルカスケード(「シグナル伝達」とも呼ばれる。))を引き起こすことができる。
【0023】
「リガンド」は、天然、即ちインビボで生成されるか又は合成される、「受容体」に対する、低分子又は高分子結合パートナーを指す。リガンドは、好ましくは細胞外環境で自由に移動することができる。
【0024】
「免疫原」は、免疫原に対する抗体の形成を誘導するのに適切な、グリコシル化されているか又はグリコシル化されていない形態の本発明によるペプチド断片を指す。(ハプテンの形態の)免疫原の高分子基質への結合は有利であり得る。
【0025】
「エピトープ」又は抗原決定基は、抗体特異性を決定する、例えばタンパク質などの抗原の領域を指す。このエピトープがタンパク質のセグメントで新規に形成されるか又は例えば、タンパク質とリガンドの相互作用などの外部影響の結果として、接触可能な分子表面で発現される場合、これは特に「ネオエピトープ」と呼ばれ、「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリン又はT細胞受容体に特異的に結合することができるあらゆるポリペプチド決定基を含む。ある実施形態において、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニルなどの分子の化学的活性表面基を含み、ある実施形態において、特異的な三次元構造特性及び/又は特異的電荷特性を有し得る。エピトープは、抗体が結合する抗原の領域である。ある実施形態において、抗体は、タンパク質及び/又は巨大分子の複雑な混合物中で抗体がその標的抗原を選択的に認識する場合、抗原に特異的に結合すると言われる。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「中和する」という用語は、結合タンパク質が標的タンパク質に特異的に結合する場合、標的タンパク質の生物学的活性の中和を指す。好ましくは、結合タンパク質を中和することは、RGM A、B又はC分子への結合の結果、前記RGM分子の生物学的活性の阻害が起こる抗体を中和することである。好ましくは、中和結合タンパク質は、RGMに結合し、少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%以上、RGMの生物学的活性を低下させる。中和結合タンパク質によるRGMの生物学的活性の阻害は、当技術分野で周知のRGMの生物学的活性の1以上の指標を測定することにより評価され得る。
【0027】
「活性」という用語は、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性(例えばRGM抗原に結合する抗RGM抗体)及び/又は抗体の中和能(例えば、RGM Aへのその結合によりRGM Aの生物学的活性が阻害される、抗RGM A抗体)などの活性を含む。
【0028】
タンパク質又は抗体の「ドメイン」は、例えばα−ヘリックス及び/又はβシートエレメントなどの構造エレメントによって形成される、タンパク質内で区切られる複雑な構造を指す。
【0029】
別段の指示がない限り、「本発明によるRGMタンパク質」という用語は、BMP結合ドメインならびにポリペプチド、それらからの誘導体、RGM分子のファミリーメンバー、特にRGM A、B及びCを包含する。特に、BMPシグナル伝達経路を「刺激する」機能的ポリペプチド断片が含まれる。本発明によるポリペプチドはまた、「阻害性活性のある」ポリペプチド、特にネオゲニンに結合するもの、又は神経線維成長を阻害する活性を有するものも包含し得る。(本明細書中に記載の神経突起成長試験によって明らかにされる。)。
【0030】
本発明によるドメイン又はポリペプチドの「結合」は、例えばBMP又はネオゲニンなどの結合パートナーとの何らかのタイプの場合によっては時間の関数として限定される相互作用として最も広い意味で理解される。結合は、特異的又は非特異的、好ましくは特異的であり得る。このような結合は、本明細書中の実験セクションに記載の結合試験などの適切な結合アッセイを用いて検出される。特に、本発明によるドメイン又はポリペプチドは、例えばイオン性及び/又は疎水性相互作用などの共有又は非共有相互作用を形成することによって、特定の結合パートナーと接触させられ得る。特に、相互作用は、生物学的機能(例えば第三のパートナーとの結合パートナーの相互作用)などの結合パートナーが介在する特徴を促進するか又は部分的もしくは完全に阻害するように、調節する、即ち正又は負の影響を与えるのに十分であり得る。
【0031】
本発明による結合は、特に、様々な結合パートナー又は様々な結合パートナークラスの量が数的に制限される場合、「特異的」である。特に、この結合は、10(例えば1、2、3、4又は5など)を超えるの様々な結合パートナー又は様々な結合パートナークラスとは起こりえない。例えば、BMPは、結合パートナークラスを表す。複数の結合パートナーと相互作用が起こるが、その相互作用が、結合パートナーの限られた数とのみ上記の意味で生物学的機能に影響を及ぼすのに十分な強度を有する場合、特異性が同様に存在する。例えば、特にBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12から選択される少なくとも1つのBMPを含有する本発明によるドメイン又はポリペプチドが特にBMP−2及び/又はBMP−4に結合し;及び/又はネオゲニンに結合する場合、特異性が存在する。
【0032】
「阻害する」又は「阻害性活性」ポリペプチドは、本明細書中に記載の神経細胞成長試験における神経細胞の成長を低下させるか又は完全に阻害するものである。
【0033】
上述の「刺激する」及び「阻害性」活性は、ある一定のポリペプチドに対して独立して互いに特定化され得るが;しかし、BMPシグナル経路「刺激性」活性が常に存在し、神経細胞成長「阻害性」活性が存在するのは場合によるものであることが好ましい。
【0034】
「BMPシグナル伝達」刺激性活性は、BMP−2、−4、−5、−6及び−12から選択される少なくとも1つのBMPタンパク質により引き起こされ得る活性である。この刺激性活性は、本明細書中に記載のインビトロ結合試験により明らかにされる本発明によるBMP結合ポリペプチドが、BMP−2、−4、−5、−6及び−12から選択される少なくとも1つのBMP分子と相互作用する場合、存在する。
【0035】
別段の指示がない限り、「RGM」は、RGM A、B及びC、特にRGM Aを表す。
【0036】
「ネオゲニン」及び「ネオゲニン受容体」は同義語であり、特に、哺乳動物ネオゲニン、特にヒトネオゲニンを指す。
【0037】
別のアミノ酸配列とのBMP結合ドメイン又はBMP結合ポリペプチドの「機能的連結」は、特に、共有、例えば、BMP−2、−4、−5、−6及び−12及び/又はネオゲニンから選択される少なくとも1つのBMP分子へのドメイン又はポリペプチドの結合を可能にするペプチド性結合として理解されたい。「制御する(regulate)」及び「調節する(modulate)」という用語は交換可能に使用され、本明細書中で使用される場合、関心のある分子の活性(例えばRGM Aの生物学的活性)の変化又は変更を指す。調節は、関心のある分子のある種の活性又は機能の大きさの向上又は低下であり得る。分子の代表的な活性及び機能には、以下に限定されないが、結合特性、酵素活性、細胞受容体活性化及びシグナル伝達が含まれる。
【0038】
相応して、「調節物質」という用語は、本明細書中で使用される場合、関心のある分子の活性又は機能を変化又は変更させることができる化合物である(例えばRGM Aの生物学的活性)。例えば、調節物質は、その調節物質の非存在下で観察される活性又は機能の大きさと比較して、分子のある種の活性又は機能の大きさを向上又は低下をさせ得る。ある実施形態において、調節物質は阻害剤であり、これは、分子の少なくとも1つの活性又は機能の大きさを低下させる。代表的な阻害剤には、以下に限定されないが、タンパク質、ペプチド、抗体、ペプチボディ、炭水化物又は低分子の有機分子が含まれる。ペプチボディは例えば国際出願公開WO01/83525に記載されている。
【0039】
「アゴニスト」という用語は、本明細書中で使用される場合、関心のある分子と接触した場合に、アゴニストの非存在下で観察される活性又は機能の大きさと比較して、分子のある種の活性又は機能の大きさを向上させる調節物質を指す。関心のある特定のアゴニストには、以下に限定されないが、RGM Aポリペプチド又は、RGM Aに結合する、ポリペプチド、核酸、炭化水素又は何らかのその他の分子が含まれ得る。
【0040】
「アンタゴニスト」又は「阻害剤」という用語は、本明細書中で使用される場合、関心のある分子と接触した場合に、アンタゴニストの非存在下で観察される活性又は機能の大きさと比較して、分子のある種の活性又は機能の大きさを低下させる調節物質を指す。関心のある特定のアンタゴニストには、RGM Aの生物学的又は免疫学的活性を阻止又は調節するものが含まれる。RGM Aのアンタゴニスト及び阻害剤には、以下に限定されないが、RGM Aに結合する、タンパク質、核酸、炭化水素又は何らかのその他の分子が含まれ得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という用語は、疾患又はその1以上の症候の、重症度及び/又は持続時間を低下させるか又は改善するか、疾患の進行を予防するか、疾患の軽減を引き起こすか、疾患に付随する1以上の症候の再発、発現、発症もしくは進行を予防するか、疾患を検出するか、又は別の治療薬(例えば予防薬又は治療薬)の予防的もしくは治療的効果を促進もしくは向上させるのに十分である治療薬の量を指す。
【0042】
「試料」という用語は、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用される。「生体試料」とは、本明細書中で使用される場合、以下に限定されないが、生物由来の又は死亡した生物由来の物質の何らかの量が含まれる。このような生物には、以下に限定されないが、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギ及びその他の動物が含まれる。このような物質には、以下に限定されないが、血液、血清、尿、滑液、細胞、器官、組織、骨髄、リンパ節、脳脊髄液及び脾臓が含まれる。
【0043】
II.本発明の特定の主題
本発明の第一の目的は、グリコシル化又は特に非グリコシル化型における、好ましくは哺乳動物RGM由来の(例えば、ヒト、ラット又はマウス又は家禽例えばニワトリ)、骨形成タンパク質(BMP)結合ドメイン又は反発性ガイダンス分子(RGM)の結合ペプチド断片に関する。別段の指示がない限り、「結合ドメイン」という用語は、RGM由来の少なくとも1つのBMPに結合する何らかのポリペプチドを包含する。
【0044】
ある好ましい実施形態は、配列番号2に従うヒトRGM A、配列番号4に従うヒトRGM B又は配列番号6に従うヒトRGM C由来のBMP結合ドメインに関する。結合ドメインは、特に、RGMの、具体的にはvWFドメインに関してN末端の又はRGM(特にRGM Aなど)の神経線維成長阻害ドメイン(OID)に関してC末端の、アミノ酸配列範囲からの、又は配列アラインメントにより引き出され得るRGM B及びCの対応する配列範囲からの、170以下、例えば、125以下、100以下、80以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下又は10以下の好ましくは連続アミノ酸基の長さを有するアミノ酸配列を包含する。
【0045】
本発明の主題は、特に、およそ30から150連続アミノ酸基の長さを有するBMP結合ドメインならびに、異なる少なくとも1つのさらなるアミノ酸配列との機能的連結において少なくとも1つのBMP結合ドメインを含有するその機能的誘導体及び融合タンパク質に関する。
【0046】
本発明の主題は、また、配列番号7及び8に従う次の部分配列の少なくとも1つを特徴とするBMP結合ドメインにも関する:
X1C(K/R)IX2(K/R)CX3(S/T/A)(E/D)(F/Y)X4SX5T(配列番号7)
(式中、X1からX5は何らかのアミノ酸基を表す。);又は
X6CX7ALRX8YAX9CTX10RTX11(配列番号8)
(式中、X6からX11は何らかのアミノ酸基を表す。);
又は式:
(配列番号7)−Link1−(配列番号8)
の部分配列(式中、Link1は、10から45、例えば13から28の何らかの連続アミノ酸基を含有する配列番号7−及び8−架橋アミノ酸配列を表す。)。
【0047】
特に、
X1はPro又はGlnを表し、
X2はLeu又はGlnを表し、
X3はAsn又はThrを表し、
X4はVal又はTrpを表し、
X5はSer、Ala又はLeuを表し、
X6はPhe又はLeuを表し、
X7はAla、Lys又はArgを表し、
X8はSer又はAlaを表し、
X9はLeu又はGlyを表し、
X10はArg又はGlnを表し、及び/又は
X11はAla又はSerを表す。
【0048】
配列番号7の次の具体例を挙げる:
【0049】
【化1】
【0050】
配列番号8次の具体例を挙げる:
【0051】
【化2】
【0052】
Link1リンカーの次の具体例を挙げる:
【0053】
【化3】
【0054】
BMP結合ドメインの例には、配列番号2に従うアミノ酸位置30から180の範囲、配列番号4に従うアミノ酸位置80から230の範囲又は配列番号6に従うアミノ酸位置20から150の範囲のアミノ酸配列又はその機能的ネオゲニン受容体結合断片が含まれる。これらの結合ドメイン(及びそれ由来の断片)はまた、高親和性BMP結合ドメインとも呼ばれる。特に、高親和性BMP結合ドメインはまた、ネオゲニンとの高親和性相互作用も有し得、従って、高親和性ネオゲニン結合ドメインとも呼ばれ得る。一方、低親和性ネオゲニン結合ドメインの一例は、WO2007/039256(その開示は本明細書中で明示的に参照される。)に記載の配列番号2に従うRGM A断片218-284である。それらに限定されないが、例えばKD(解離定数)>1μM(例えば2から10μMなど)である場合は低親和性結合となり得;例えばKD<10nM(例えば1から9nM)である場合は高親和性結合となり得る。
【0055】
高親和性BMP結合ドメインの例は、配列番号2の次のアミノ酸配列の1つを含有するものである:
47前後から168前後もしくは41前後から168前後のアミノ酸位置
47前後から90前後もしくは41前後から90前後のアミノ酸位置又は
75前後から121前後のアミノ酸位置;
又は、配列番号4の次のアミノ酸配列の1つ:
94前後から209前後のアミノ酸位置
94前後から137前後のアミノ酸位置又は
122前後から168前後のアミノ酸位置;
配列番号6の次のアミノ酸配列の1つ:
36前後から172前後のアミノ酸位置
36前後から94前後のアミノ酸位置又は
80前後から125前後のアミノ酸位置;
又は、その機能的BMP結合断片、例えば上記配列の1つの断片(これに対して、BMP結合能(本明細書中に記載の結合試験で検出可能。)を喪失することなく、C及び/又はN末端において、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15又は20アミノ酸基が短縮され得る。)。
【0056】
本発明によるドメインのその他の具体例は、配列番号2に従う位置47前後から168前後の配列範囲からの、配列番号4に従う位置94前後から209前後の配列範囲からの、又は配列番号6に従う位置36前後から172前後の配列範囲からの、少なくとも10連続アミノ酸基、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、2、43、44又は45連続基を含有するBMP結合ドメイン又はその結合断片である。
【0057】
これは、さらに、配列番号2を参照することにより、明細書の最後に添付される表Aで例示される。
【0058】
アミノ酸位置60から120の範囲の適切な断片の例の非限定数を下記で述べる(最初及び最後のアミノ酸残基を与える。):
60−120、61−120、62−120、64−120、65−120、66−120、67−120、68−120、69−120、70−120;
60−119、61−119、62−119、64−119、65−119、66−119、67−119、68−119、69−119、70−119;
60−118、61−118、62−118、64−118、65−118、66−118、67−118、68−118、69−118、70−118;
60−117、61−117、62−117、64−117、65−117、66−117、67−117、68−117、69−117、70−117;
60−116、61−116、62−116、64−116、65−116、66−116、67−116、68−116、69−116、70−116;
60−115、61−115、62−115、64−115、65−115、66−115、67−115、68−115、69−115、70−115;
60−114、61−114、62−114、64−114、65−114、66−114、67−114、68−114、69−114、70−114;
60−90、61−90、62−90、64−90、65−90、66−90、67−90、68−90、69−90、70−90;
60−89、61−89、62−89、64−89、65−89、66−89、67−89、68−89、69−89、70−89;
60−88、61−88、62−88、64−88、65−88、66−88、67−88、68−88、69−88、70−88;
60−87、61−87、62−87、64−87、65−87、66−87、67−87、68−87、69−87、70−87;
60−86、61−86、62−86、64−86、65−86、66−86、67−86、68−86、69−86、70−119;
60−85、61−85、62−85、64−85、65−85、66−85、67−85、68−85、69−85、70−85;
60−84、61−84、62−84、64−84、65−84、66−84、67−84、68−84、69−84、70−84;
60−83、61−83、62−83、64−83、65−83、66−83、67−83、68−83、69−83、70−83;
60−82、61−82、62−82、64−82、65−82、66−82、67−82、68−82、69−82、70−82;
60−81、61−81、62−81、64−81、65−81、66−81、67−81、68−81、69−81、70−81;
60−80、61−80、62−80、64−80、65−80、66−80、67−80、68−80、69−80、70−80;
60−79、61−79、62−79、64−79、65−79、66−79、67−79、68−79、69−79、70−79;
60−78、61−78、62−78、64−78、65−78、66−78、67−78、68−78、69−78;
60−77、61−77、62−77、64−77、65−77、66−77、67−77、68−77;
60−76、61−76、62−76、64−76、65−76、66−76、67−76;
60−75、61−75、62−75、64−75、65−75、66−75;
60−74、61−74、62−74、64−74、65−74;
60−73、61−73、62−73、64−73;
60−72、61−72、62−72;
60−71、61−71;
60−70;
60−69。
【0059】
同様の断片は、同じようにして、図1の配列アラインメントに基づき、配列番号4及び配列番号6の対応する部分から誘導可能である。
【0060】
本発明のさらなる主題は、OIDに対して例えばC末端にあるBMP結合ドメインに関する(図2参照)。これらの結合ドメイン(及びそれら由来の断片)はまた低親和性BMP結合ドメインとも呼ばれるが、これは、上述の高親和性BMP結合ドメインに対するそれらの結合親和性が同等の試験条件下で低いものであり得るからである。
【0061】
従って、本発明の主題はまた、配列番号26及び27に従う次の部分配列の少なくとも1つを特徴とするBMP結合ドメインにも関する:
LX20LC(V/L)X21GCP(配列番号26)(式中、X20及びX21は何らかのアミノ酸基を表す。);又は
TAX22X23X24C(K/H)EX25(L/M)PV(E/K)DX26Y(F/Y)(Q/H)(A/S)CVFD(V/L)LX27(T/S)G(配列番号27)(式中、X22からX27は何らかのアミノ酸基を表す。);
又は式
(配列番号26)−Link2−(配列番号27)
の部分配列(式中、Link2は、10から45、例えば19前後から38の何らかの連続アミノ酸基を含有する、配列番号26及び27架橋アミノ酸配列を表す。)。
【0062】
特に、
X20は、Tyr又はGlnを表し
X21は、Arg、Asn又はGlyを表し
X22は、Arg、Asn又はValを表し、
X23は、Ala、Thr又はArgを表し
X24は、Lys、Gln又はLeuを表し
X25は、Lys又はGlyを表し
X26は、Leu、Ile又はAlaを表し、及び/又は
X27は、Thr又はIleを表す。
【0063】
配列番号26の次の具体例を挙げる:
【0064】
【化4】
【0065】
配列番号27の次の具体例を挙げる:
【0066】
【化5】
【0067】
Link2リンカーの次の具体例を挙げる:
【0068】
【化6】
【0069】
本発明による低親和性ドメインの例は、配列番号2に従う位置316前後から386前後の配列範囲からの、配列番号4に従う位置350前後から421前後の配列範囲からの、又は配列番号6に従う位置314前後から369の配列範囲からの、少なくとも10連続アミノ酸基を含有するBMP結合ドメイン又はその結合断片である。
【0070】
上述の「少なくとも10アミノ酸基を含有する結合断片」の例は、例えば、上述のペプチド又は配列範囲の1つからの、10−50、10−40、10−30、10−25、10−20又は10−15、特に10、11、12、13、14又は15連続アミノ酸基を含有するものである。
【0071】
本発明の主題は、特に、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12、特にBMP−2及び/又はBMP−4から選択される少なくとも1つのBMPに結合するBMP結合ドメイン;及びネオゲニンにも結合するBMP結合ドメインに関する。
【0072】
本発明のさらなる主題は、上記定義に従うBMP結合ドメインの抗原性ポリペプチド断片に関する。特に、免疫グロブリン分子を作製するために使用され得る及びBMP受容体分子へのRGMの結合を調節する、特に、ネオゲニンへの受容体の結合を部分的又は完全に刺激するか(agonize)又はこれに拮抗(antagonize)し、場合によっては調節する、特にこれに部分的又は完全に拮抗する、抗原性ポリペプチド断片は、本発明の主題に相当する。例として、配列番号2由来の又は同様に配列番号4又は6由来の、上記ペプチド又は添付の表Aで述べられるペプチドの1つの、少なくとも10、例えば10−30、10−25、10−20又は10−15、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45連続アミノ酸基を含有する抗原性ポリペプチド断片が挙げられる。
【0073】
本発明のさらなる主題は、RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体を作製するための、上記定義に従うBMP結合ドメインの使用又は上記定義に従うポリペプチド断片の使用に関し、この場合、抗血清又は抗体は、特に、ネオゲニン受容体に対するRGMの結合を、調節、好ましくはそれに部分的又は完全に拮抗する。
【0074】
本発明の主題はまた、診断又は治療用途に対する上記定義に従うRGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体にも関する。
【0075】
本発明のさらなる主題は、一価もしくは多価担体ポリペプチド又は第二の生物学的活性ポリペプチドから選択される第二のポリペプチドに操作可能に(即ちN又はC末端に)連結される、上記定義に従うBMP結合ドメインから選択される、少なくとも1つの第一の生物学的活性ポリペプチドを含有する融合タンパク質に関する。特に、多価担体は、特に哺乳動物からの(特にヒト免疫グロブリン由来など)、免疫グロブリンの少なくとも1つのFc又はFc’’分子を含有し、この場合、その2本のポリペプチド鎖のそれぞれは、上記定義に従う同じ又は異なるBMP結合ドメインに操作可能に連結される。
【0076】
本発明のさらなる主題は、ネオゲニンに対するRGMの結合(即ちネオゲニン受容体)を調節する、RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体を作製するための、上記定義に従うBMP結合ドメインの使用又は上記定義に従うポリペプチドの使用に関する。
【0077】
本発明の主題はまた、診断又は治療用途のための、上記定義に従うRGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体にも関する。
【0078】
本発明の主題はまた、ネオゲニン受容体(ネオゲニン)と、RGM又はRGM断片との相互作用が介在する疾病及び病期の診断又は治療用の医薬品を調製するための、上記定義に従うポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体の使用に関し、特に疾患又は病期は、
a)頭蓋骨、脳及び脊髄への機械的損傷、
b)神経変性、炎症又は自己免疫疾患から選択される慢性疾患、
c)神経再生、軸索発芽、神経突起伸展及び神経可塑性の疾患、
d)腫瘍性疾患及び腫瘍転移
から選択される。
【0079】
本発明の主題は、さらに、疾患又は病期が特に次のもの:
a)過剰な神経突起発芽及び/又は病的シナプス形成により引き起こされる精神状態及び慢性疼痛状態における神経突起生成プロセスの変化;
b)鉄代謝障害に関連する疾病;
c)骨の成長障害に関連する疾病;
d)軟骨の退行性変化に関連する疾病;
e)椎間板及び椎体への損傷に関連する疾病;
f)無秩序な無制御の細胞移動プロセスに関連する疾病
から選択される場合の、RGM又はRGM断片と関連受容体(例えば、ネオゲニン又はBMP)との相互作用の異常又は障害が介在する疾患又は病期の診断又は治療のための薬剤を調製するための、上記定義に従うBMP受容体結合ドメイン又は上記定義に従う融合タンパク質の使用に関する。
【0080】
本発明のさらなる主題は、(BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及び/又はBMP[−12]、特にBMP−2及び/又は4への結合による)BMPシグナル経路の刺激又は増幅により治療され得る疾病又は病期の診断又は治療用の、特に骨の成長障害を含む疾病の治療用の、又は骨折の治療用の薬剤を調製するための、上記定義に従うBMP結合ドメイン又はその結合断片又は上記定義に従う融合タンパク質の使用に関する。
【0081】
本発明のさらなる主題は、自己免疫疾患、特に、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、類天疱瘡、心筋ミオパチー、セリアック病、疱疹状皮膚炎、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、瘢痕性類天疱瘡、全身性硬化症(CREST症候群)、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚血管炎、デゴス病、皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、円板状紅斑性狼瘡、本態性混合性クリオグロブリン血症、線維筋痛、グッドパスチャー症候群、グレーブズ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、免疫グロブリンAニューロパシー、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、膜性糸球体腎炎、メニエール病、混合結合組織病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発筋炎、皮膚筋炎、原発性低γグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ロイター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、尋常性白斑及びウェゲナー肉芽腫症から選択されるもの;
又は脱毛性疾患、特に円形脱毛症、全頭脱毛症、全身性脱毛症、男性型脱毛症、休止期脱毛症、成長期脱毛症及び化学療法誘発脱毛症から選択されるものの、診断又は治療用の薬剤の調製のための、上記定義に従うBMP結合ドメイン又はその結合断片又は上記定義に従う融合タンパク質の使用に関する。
【0082】
本発明の主題はまた、RGM結合リガンドの検出又は同定のための標的としての、上記定義に従うBMP結合ドメインの使用にも関する。
【0083】
本発明のさらなる主題は、能動又は受動免疫付与のための免疫原としての、上記定義に従うBMP結合ドメインの使用又は上記定義に従う断片の使用に関する。
【0084】
本発明のさらなる主題は、上記定義に従うBMP結合ドメイン又は上記定義に従うポリペプチド断片の抗原量での哺乳動物の免疫付与により得ることができるポリクローナル抗血清に関する。
【0085】
本発明の主題はまた、上記定義に従うBMP結合ドメインに対するかもしくは上記定義に従うポリペプチド断片に対するモノクローナル抗体又はRGM Aへのその抗体の結合が上記で定義されるようなBMP結合ドメインにより又は上記で定義されるようなそのポリペプチド断片により調節されるモノクローナル抗RGM A抗体;又はその抗原結合断片(場合によってはヒト化形態)にも関する。本発明の主題は、
a)上記定義に従うBMP結合ドメイン、上記定義に従うポリペプチド断片又は上記定義に従う融合タンパク質、
b)上記定義に従うモノクローナル又はポリクローナル抗体
から選択される少なくとも1つの活性成分の医薬的に許容可能な担体を含有する医薬品に関する。
【0086】
本発明に従う特に適切なものは、髄腔内、静脈内、皮下(subcutaneous)、経口又は非経口、経皮、皮下(subdermal)、骨内(intraosseal)、鼻腔、体外及び吸入投与のための、医薬品である。
【0087】
本発明によるさらなる医薬品は、骨折の治療に適切であり、液体、半固形又は固形担体中の、少なくとも1つの上記定義に従うBMP結合ドメイン又は上記定義に従う融合タンパク質を含有する。
【0088】
本発明によるさらなる医薬品は、鉄代謝障害(例えば、慢性疾患に伴う貧血、若年型ヘモクロマトーシス)の治療に適切であり、液体、半固体又は固体担体中の、上記定義に従う少なくとも1つのBMP結合ドメイン又は上記定義に従う融合タンパク質を含有する。
【0089】
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つの制御核酸配列に操作可能に連結される、上記定義に従うBMP結合ドメイン、上記定義に従う融合タンパク質又は上記定義に従うポリペプチド断片に対する、少なくとも1つのコード核酸配列を含有する発現ベクターに関する。
【0090】
本発明は、さらに、次のものに関する。
【0091】
−上記定義に従う、少なくとも1つのベクターを含む組み換え微生物。
【0092】
−上記定義に従う、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株。上記定義に従うハイブリドーマ細胞株が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される。
【0093】
−上記定義に従う組み換え微生物が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される、上記定義に従うBMP結合ドメイン又は上記定義に従うポリペプチド断片もしくは融合タンパク質を産生させるための方法。
【0094】
本発明のさらなる主題は、上記定義に従うハイブリドーマ細胞株が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される、上記定義に従うモノクローナル抗体を産生させるための方法である。
【0095】
本発明のさらなる主題は、RGM受容体、特にネオゲニン、又はBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12から選択されるBMPを刺激するための医薬品を製造するための、上記定義に従うBMP結合ドメイン又は上記定義に従う融合タンパク質の使用に関する。
【0096】
最後に、本発明は、特にネオゲニンなどのRGM受容体の活性化を阻止するための医薬品を製造するための、上記定義に従うモノクローナル抗体の使用に関する。
【0097】
III.本発明を行うためのさらなる情報
1.ポリペプチド
本発明の主題は、特に、RGMファミリーのタンパク質のBMP結合ドメイン、及びこれらのドメイン由来のペプチド断片に関する。RGM A及びその結合ドメイン及びそれ由来の断片が本発明により特に詳細に調べられたが、本発明の主題はまた、相同的なタンパク質、例えば、特にRGM B及びRGM CなどのRGMファミリーの相同的なメンバーの対応するドメイン及び断片にも関する。
【0098】
本発明の範囲内で、具体的に開示されるRGMドメイン又はペプチドの「機能的同等物」又は類似体は、配列番号2、4又は6に従うタンパク質のBMP結合ドメインに対して100%未満の相同性であるポリペプチドなど、それらとは異なるが、所望の生物学的活性を有しているポリペプチドである。特に、これらの機能的同等物は、少なくとも1つのBMPと結合することができるべきであり、及び/又は本明細書に記載の結合試験において結合を示し、また、場合によっては、本明細書中に記載の神経線維成長試験で阻害効果を示し、神経繊維の増殖を統計学的に有意に(p<=0.05)、部分的又は完全に阻害する。
【0099】
本発明によると、「機能的同等物」は、特に、上述の特定の配列の配列位置の少なくとも1つにおいて、具体的に言及されるアミノ酸と異なるが、それにもかかわらず本明細書中で言及される生物学的活性の1つを有する異なる形態であるアミノ酸を含有する突然変異であると理解されたい。従って、「機能的同等物」は、1以上のアミノ酸の付加、置換、欠失及び/又は逆位を通じて得ることができる突然変異を包含し、この変化は、それらが、本発明に従う特性プロファイルを有する突然変異をもたらす限り、あらゆる配列位置において生じ得る。突然変異体と未変化ポリペプチドとの間の反応性パターンが定性的に一致する場合、特に機能的同等物が存在し、即ち、例えば、同一の生物学的効果が観察されるが、発現レベルが非常に異なっている。アミノ酸残基の適切な置換の具体例は以下の通りである。
【0100】
元の残基 置換の例
Ala Ser
Arg Lys
Asn Gln;His
Asp Glu
Cys Ser
Gln Asn
Glu Asp
Gly Pro
His Asn;Gln
Ile Leu;Val
Leu Ile;Val
Lys Arg;Gln;Glu
Met Leu;Ile
Phe Met;Leu;Tyr
Ser Thr
Thr Ser
Trp Tyr
Tyr Trp;Phe
Val Ile;Leu
【0101】
前記の意味における「機能的同等物」は、記載のペプチドの前駆体ならびにポリペプチドの機能的誘導体及び塩でもある。「塩」という用語は、本発明によるタンパク質分子のカルボキシル基の塩ならびにアミノ基の酸付加塩を意味すると理解されたい。カルボキシル基の塩は、それ自体公知の方法で調製され得、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄及び亜鉛塩、ならびに、有機塩基、例えばトリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジンなどのアミン、との塩が含まれる。酸付加塩、例えば塩酸又は硫酸などの鉱酸との塩及び酢酸及びシュウ酸などの有機酸との塩は、同様に本発明の主題である。本発明によるポリペプチドの「機能的誘導体」もまた、公知の技術を用いて、機能的アミノ酸側基、又はそのN−又はC−末端において提供され得る。このような誘導体には、例えば、カルボン酸基の脂肪族エステル、アンモニアとの、又は一級もしくは二級アミンとの反応によって得ることができるカルボン酸基のアミド;アシル基との反応によって調製される遊離アミノ基のN−アシル誘導体;又はアシル基との反応によって調製される遊離ヒドロキシ基のO−アシル誘導体が含まれる。
【0102】
言うまでもなく、「機能的同等物」にはまた、他の生物から得られるポリペプチドならびに天然の変異体も含まれる。例えば、相同配列の領域の範囲は、配列比較によって確認することができ、同等の酵素は、本発明の特定の要件に従い判定することができる。
【0103】
「機能的同等物」はまた、前記ポリペプチド配列又はそれに由来する機能的同等物の1つ、及び機能的N−又はC−末端結合においてそれらと機能的に異なる(即ち、融合タンパク質の一部の重要な相互機能障害)、少なくとも1つのさらなる異なる異種配列を有する融合タンパク質である。このような異種配列の非限定例には、酵素及び免疫グロブリンが含まれる。
【0104】
本発明により包含される「機能的同等物」には、具体的に開示されるタンパク質、即ちペプチドに対する相同体が含まれる。これらの機能的同等物は、少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%、例えば75%、又は特に少なくとも85%、例えば90%、95%又は99%の、例えば、Pearson及びLipman、Proc.Natl.Acad.、Sci.(USA)85(8)、1988、2444−2448により開発されたアルゴリズムに従い計算される、具体的に開示される配列の1つに対する相同性を有する。本発明による相同ポリペプチドの相同性のパーセンテージは、特に、本明細書中で具体的に開示されるアミノ酸配列の1つの完全長に対する、アミノ酸基の%同一性を意味する。
【0105】
別段の指示がない限り、本発明に従い、「由来する」アミノ酸配列は、最初の配列と、少なくとも80%、又は少なくとも90%、特には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の同一性を有する配列を意味する。
【0106】
2つの配列間の「同一性」又は「相同性」は、個々の配列の全長にわたるアミノ酸残基の同一性、例えば、下記のパラメータでの、クラスタル法(Higgins D.G.及びSharp P.M.、Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer.Comput.Appl.Biosci.1989、5(2):151−1)を用いたInformax(米国)のVector NTI Suite 7.1ソフトウェアを用いた比較により計算される同一性を意味する:
複数のアラインメントパラメータ
ギャップオープニングペナルティ 10
ギャップエクステンションペナルティ 10
ギャップセパレーションペナルティ範囲 8
ギャップセパレーションペナルティ 切
アラインメントディレイに対する%同一性 40
残基特異的ギャップ 切
親水性残基ギャップ 切
遷移計量 0
ペアワイズ配列パラメータ:
FASTアルゴリズム 入
K−チュプルサイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウィンドウサイズ 5
最良のダイアゴナルの数 5。
【0107】
タンパク質のグリコシル化の可能性がある場合、同等物には、グリコシル化パターンを変化させることにより得られ得る、脱グリコシル化又はグリコシル化型の、及び修飾型の、上述のタイプのタンパク質が包含される。
【0108】
本発明によるペプチドの相同体は、例えば短縮型変異体の変異体のコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって同定され得る。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素連結などにより、核酸レベルでのコンビナトリアル突然変異誘発によりペプチド変異体の多様なライブラリが作製され得る。縮重オリゴヌクレオチド配列由来の潜在的な相同体のライブラリを作製するために使用され得る多数の方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、DNA合成装置により行われ得、次いで、合成遺伝子は、適切な発現ベクターにおいて連結され得る。縮重遺伝子のセットを使用することによって、混合物において調製されるべき潜在的なタンパク質配列に対する所望のセットをコードする全ての配列を供給することが可能になる。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当業者にとって公知である(例えば、Narang、S.A.(1983)Tetrahedron 39:3;Itakuraら(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakuraら(1984)Science 198:1056;Ikeら(1983)Nucleic Acids Res.11:477)。
【0109】
2.核酸
本発明のさらなる主題は、さらに、上述のBMP結合ドメイン及びポリペプチドに対するコード核酸配列、特に、上述のペプチド断片をコードする、配列番号1、3及び5ならびにそれら由来の核酸配列又は部分配列に関する。
【0110】
本発明による核酸配列は全て(1本鎖及び2本鎖DNA及びRNA配列、例えば、cDNA及びmRNA)、例えば、二重らせんの個々に重複する相補的な核酸構造単位の断片縮合によるヌクレオチド構造単位からの化学合成などを通じてそれ自体公知である。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えばホスホラミダイト法(Voet、Voet、第2版、Wiley Press New York、896−897頁)に従い、公知のように行われ得る。合成的オリゴヌクレオチドの付加及びDNAポリメラーゼのKlenow断片及び連結反応を用いたギャップの埋め込みならびに一般的クローニング法は、Sambrookら(1989)、Molecular Cloning:A laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0111】
別段の断りがない限り、本発明に従い、「由来する」核酸配列は、最初の配列と、少なくとも80%又は少なくとも90%、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の同一性を有する配列を意味する。
【0112】
2つの核酸間の「同一性」は、核酸の各全長にわたる核酸の同一性、特に、クラスタル法(上記参照)を用いたInformax(米国)からのVector NTI Suite 7.1ソフトウェアを用いた比較により計算される同一性を意味する。
【0113】
本発明の主題はまた、上記ペプチドの1つ及びその機能的同等物をコードし、例えば人工ヌクレオチド類似体を用いて得ることができる、核酸配列にも関する。
【0114】
本発明は、本発明による、ペプチド又はその生物学的活性セグメントをコードする単離核酸分子、ならびに、例えば本発明によるコード核酸を同定又は増幅するためのハイブリッド形成試料又はプライマーとして用いられ得る核酸断片に関する。
【0115】
本発明による核酸分子はまた、コード遺伝子領域の3’及び/又は5’末端の非翻訳配列も含有し得る。
【0116】
「単離(された)」核酸分子は、その核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離され、また、組み換え技術を用いて生成される場合、他の細胞物質又は培地を基本的に含み得ないか、又は化学合成される場合、化学的前駆体又は他の化学物質を含み得ない。
【0117】
本発明による核酸分子は、分子生物学の標準的技術、及び本発明により提供される配列情報を用いて単離され得る。例えば、cDNAはハイブリッド形成試料として具体的に開示される完全配列又はそのセグメントを用い、標準的ハイブリッド形成技術(例えば、Sambrook、J.、Fritsch、E.F.及びManiatis、T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載のものなど)を用いることにより、適切なcDNAライブラリから単離され得る。さらに、この配列に基づいて作製されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により、本発明による配列又はそのセグメントの1つを含む核酸分子が単離され得る。このようにして増幅された核酸を適切なベクターにクローニングし、DNA配列分析により特徴を調べ得る。本発明によるオリゴヌクレオチドはまた、標準合成方法を用いて、例えば、DNA合成装置を用いて作製することもできる。
【0118】
本発明はまた、具体的に記載されるヌクレオチド配列に相補的である核酸分子又はそのセグメントを包含する。
【0119】
本発明によるヌクレオチド配列によって、他の細胞タイプ及び生物において、相同配列を同定及び/又はクローニングするために用いられ得る試料及びプライマーを作製することが可能となる。このような試料又はプライマーは、通常、厳密な(ストリンジェントな)条件下で、本発明による核酸配列のセンス鎖又は対応するアンチセンス鎖の少なくともおよそ12、好ましくは少なくともおよそ25、例えばおよそ40、50又は75の連続ヌクレオチドとハイブリッド形成するヌクレオチド配列領域を含む。
【0120】
本発明によるその他の核酸配列は、本発明によるRGMドメイン及びペプチドに対するコード配列に由来し、1以上のヌクレオチドの付加、置換、挿入又は欠失によりそれらとは異なるが、所望の特性プロファイルを有するペプチドをコードしている。
【0121】
本発明は、いわゆるサイレント突然変異を含むか、又は元の特定の生物又は宿主生物、ならびに天然の変異体、例えばスプライス変異又は対立遺伝子多型のコドン使用に対応して、具体的に指定される配列と比較して修飾される核酸配列も含む。本発明の主題はまた、保存的ヌクレオチド置換により得られる配列(即ち、関連するアミノ酸の、同じ電荷、大きさ、極性及び/又は溶解性のアミノ酸による置換)にも関する。
【0122】
本発明の主題はまた、配列多型による具体的に開示される核酸に由来する分子に関する。これらの遺伝的多型は、自然変動による集団内の個体間で存在し得る。これらの自然変異の結果、通常、遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の変異が起こる。
【0123】
本発明はまた、上記コード配列とハイブリッド形成するか又はそれに相補的である核酸配列も包含する。これらのポリヌクレオチドは、ゲノム又はcDNAライブラリを標本抽出することにより見出すことができ、場合によっては、適切なプライマーを用いたPCRにより増幅させ、次いで適切な試料を用いてそれから単離され得る。別の可能性は、本発明によるポリヌクレオチド又はベクターを用いた適切な微生物の形質転換、微生物の増殖及び従ってポリヌクレオチドの増殖、及び続くその単離である。本発明によるポリヌクレオチドを化学的に合成することもできる。
【0124】
ポリヌクレオチドと「ハイブリッド形成」することができる特性は、厳密な(ストリンジェントな)条件下で、基本的に相補的な配列に結合するポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの能力を意味するが、一方、これらの条件下では非相補的パートナーの間の非特異的結合が起こらない。この目的のため、配列は、70〜100%、特に90〜100%、例えば、95%、96%、97%、98%又は99%相補的であるべきである。互いに特異的に結合する相補的配列の特性は、例えば、ノーザンもしくはサザンブロッティング法において、又はPCRもしくはRT−PCRにおけるプライマー結合において用いられる。この目的のために、30塩基対の長さで始まるオリゴヌクレオチドが通常は用いられる。「厳密な(ストリンジェントな)条件下」とは、例えば、ノーザンブロッティング法においては、非特異的にハイブリッド形成するcDNA試料又はオリゴヌクレオチドを溶出するためなどの50〜70℃、好ましくは60〜65℃の温度での、例えば、0.1%SDSを含む0.1xSSCバッファー(20xSSC:3M NaCl、0.3Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)などの洗浄溶液の使用を意味する。前述したように、相補性の程度が高い核酸のみが互いに結合したままである。厳密な(ストリンジェントな)条件の設定は当業者にとって公知であり、例えば、Ausbelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.(1989)、6.3.1−6.3.6で開示されている。
【0125】
本発明のさらなる態様はアンチセンス核酸に関する。アンチセンス核酸は、コード「センス」核酸に相補的であるヌクレオチド配列を含む。アンチセンス核酸は完全なコード鎖又はその一部とのみ相補的であり得る。さらなる実施態様において、アンチセンス核酸分子は、ヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域に対してアンチセンスである。「非コード領域」という用語は5’−及び3’−非翻訳領域と呼ばれる配列部分に関する。
【0126】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、およそ5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50ヌクレオチド長であり得る。本発明によるアンチセンス核酸は、当技術分野で公知の方法を用いて、化学合成及び酵素連結反応により構築され得る。アンチセンス核酸は、天然のヌクレオチド、又は、それらが分子の生物学的安定性を向上させるか又はアンチセンスとセンス核酸との間に形成される二重鎖の物理的安定性を向上させるような配列を有する多様に修飾されたヌクレオチドを用いて化学的に合成され得る。例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン−置換ヌクレオチドが使用され得る。アンチセンス核酸を作製するために用いられ得る修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)−ウラシル、(acp3)w及び2,6−ジアミノプリンが含まれる。アンチセンス核酸はまた、核酸がアンチセンス方向にサブクローニングされた発現ベクターを用いることにより、生物学的に作製され得る。
【0127】
3.発現コンストラクト及びベクター
本発明はのさらなる主題は、調節核酸配列の遺伝子制御下での、本発明によるRGMペプチド又は機能的同等物又は免疫グロブリンをコードする核酸配列を含有する発現コンストラクト;ならびにこれらの発現コンストラクトの少なくとも1つを含むベクターに関する。
【0128】
本発明によるこのようなコンストラクトは、好ましくは、特定のコード配列からの5’−上流のプロモーター及び場合によっては3’−下流の終結配列及びその他の一般的な制御エレメントを含み、特異的に、それぞれ、コード配列に操作可能に連結される。「操作可能な連結」は、各制御エレメントが、コード配列の発現においてその機能を適正に達成することができるような、プロモーター、コード配列、終結因子及び場合によってはその他の制御エレメントの連続した配列を意味する。操作可能に連結可能な配列の例は、標的配列ならびにエンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどである。さらなる制御エレメントには、選択可能マーカー、増幅シグナル、複製起点などが含まれる。適切な制御配列は、例えば、Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。
【0129】
人工的制御配列に加え、実際の構造遺伝子の前に天然の制御配列が存在し得る。必要であれば、この天然制御は遺伝子改変によって排除することができ、遺伝子の発現が増加又は減少し得る。しかし、遺伝子コンストラクトはまた、より簡単な構造も有し得、即ち、構造遺伝子の前にさらなる制御シグナルが挿入されず、その制御とともに天然のプロモーターが除去されない。代わりに、制御が起こらずに遺伝子発現が向上又は低下するように、天然の制御配列を突然変異させる。核酸配列は、遺伝子コンストラクト中の1以上のコピーに含有され得る。
【0130】
用いられ得るプロモーターの例は、次のとおりである:グラム陰性菌において好都合に使用される、cos、tac、trp、tet、trptet、lpp、lac、lpplac、laclq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ−PR又はλ−PLプロモーター;amy及びSPO2グラム陽性菌プロモーターに加えて、ADC1、MFα、AC、P−60、CYC1又はGAPDH酵母プロモーター、植物プロモーターCaMV/35S、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33又は非植物プロモーター又はユビキチン又はファセオリンプロモーターである。誘導性プロモーター、例えば、光、及び特に、PrPlプロモーターなどの温度誘導性プロモーターの使用が特に好ましい。原則として、それらの制御配列を有する全ての天然プロモーターが使用され得る。合成プロモーターもまた有利に使用され得る。
【0131】
前記制御配列は、核酸配列の標的とされる発現及びタンパク質発現を可能にするものを意図する。宿主生物に依存して、これは、例えば、遺伝子が誘導後にのみ発現もしくは過剰発現されるか又は遺伝子が直ちに発現及び/又は過剰発現されることを意味し得る。
【0132】
制御配列又は因子は、好ましくは正方向に影響し、従って発現を増加又は低下させる。従って、制御エレメントの増強は、プロモーター及び/又はエンハンサーのような強力な転写シグナルを用いることにより、転写レベルで有利に引き起こされ得る。しかし、例えば、mRNAの安定性を向上させることにより、転写を増強させることも可能である。
【0133】
適切なプロモーターを適切なコードヌクレオチド配列及び終結シグナル又はポリアデニル化シグナルに融合することにより、発現カセットが作製される。例えば、T.Maniatis、E.F.Fritsch及びJ.Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1989)及びT.J.Silhavy、M.L.Berman及びL.W.Enquist、Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1984)及びAusubel、F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Assoc.及びWiley Interscience(1987)に記載されるように、一般的組み換え及びクローニング技術がこの目的に用いられる。
【0134】
適切な宿主生物における発現のため、組み換え核酸コンストラクト即ち遺伝子コンストラクトが、宿主における遺伝子の最適な発現を可能にする宿主特異的ベクターに有利に挿入される。ベクターは当業者にとって周知であり、例えば、「Cloning Vectors」(Pouwels P.H.ら編、Elsevier、Amsterdam−New York−Oxford、1985)に記載されている。ベクターは、プラスミドのみならず、当業者にとって公知のその他の全てのベクター、例えば、ファージ、SV40、CMV、バキュロウイルス及びアデノウイルスなどのウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミド及び直鎖又は環状DNAを意味するものと理解されたい。これらのベクターは、宿主生物における自発的複製又は染色体複製を受け得る。
【0135】
適切な発現ベクターの例は次のとおりである:
グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE−結合タンパク質又はプロテインAが組み換え標的タンパク質に融合させられる、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith、D.B.及びJohnson、K.S.(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New Engl及びBiolabs、Beverly、MA)及びpRIT5(Pharmacia、Piscataway、NJ)などの従来の融合発現ベクター、
pTrc(Amannら(1988)Gene 69:301−315)及びpET 11d(Studierら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、California(1990)60−89)などの非融合タンパク質発現ベクター、
pYepSec1(Baldariら(1987)Embo J.6:229−234)、pMFa(Kurjan及びHerskowitz(1982)Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultzら(1987)Gene 54:113−123)及びpYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、CA)などのS.cerevisiae(S.セレビシエ)酵母における発現のための酵母発現ベクターである。糸状菌などのその他の真菌において用いるのに適切なベクター及びベクター構築法は、van den Hondel、C.A.M.J.J.及びPunt、PJ.(1991)「Gene transfer Systems and vector development for filamentous fungi」、Applied Molecular Genetics of Fungi、J.F.Peberdyら編、p.1−28、Cambridge University Press:Cambridgeに詳細に開示されるものを含む。
【0136】
培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)でのタンパク質の発現を可能にするバキュロウィルスベクターには、pAcシリーズ(Smithら(1983)Mol.Cell Biol.3:2156−2165)及びPVLシリーズ(Lucklow及びSummers(1989)Virology 170:31−39)が含まれる。
【0137】
Becker、D.、Kemper、E.、Schell、J.及びMasterson、R.(1992)「New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border」、Plant Mol.Biol.20:1195−1197;及びBevan、M.W.(1984)「Binary Agrobacterium vectors for plant transformation」Nucl.Acids Res.12:8711−8721)に詳細に開示されるものなどの植物発現ベクター。
【0138】
pCDM8(Seed、B.(1987)Nature 329:840)及びpMT2PC(Kaufmanら(1987)EMBO J.6:187−195)などの哺乳動物発現ベクター。
【0139】
原核及び真核細胞に対するさらなる適切な発現系は、Sambrook、J.、Fritsch、E.F.及びManiatis、T.、Molecular cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989の第16及び17章に記載されている。
【0140】
4.組み換え宿主生物
本発明によるベクターの使用により、例えば、本発明による少なくとも1つのベクターを用いて形質転換された組み換え生物を生成させ得、本発明によるドメイン又はポリペプチドを生成させるために使用し得る。本発明による上述の組み換えコンストラクトは、適切な宿主系に有利に導入され発現される。特定の発現系において前記の核酸の発現を誘発するために、当業者にとって公知の一般的なクローニング及び遺伝子移入法、例えば、共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルス遺伝子移入などが、好ましくは用いられる。適切な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology、F.Ausubelら編、Wiley Interscience、New York 1997又はSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載されている。
【0141】
原則として、適切な宿主生物は、本発明による核酸、その対立遺伝子多型、その機能的同等物又は誘導体を発現することができる全ての生物である。「宿主細胞」は、例えば、細菌、真菌、酵母又は植物もしくは動物細胞を意味するものと理解されたい。好ましい生物は、例えば、大腸菌などのエシェリキア属、ストレプトミセス属、バチルス属又はシュードモナス属などの細菌、サッカロミセス・セレビシエ、アスペルギルス属などの真核微生物、例えばSf9、CHO又はHEK293細胞などの、動物又は植物由来の高等真核細胞である。
【0142】
首尾よく形質転換された生物は、ベクター又は発現カセット中に同様に含有されるマーカー遺伝子の使用によって選択され得る。このようなマーカー遺伝子の例は、抗生物質耐性に対する遺伝子及び発色反応を触媒し、形質転換細胞の染色を生じる酵素に対する遺伝子である。次いで、これらのマーカー遺伝子は、自動細胞選別を用いて選択され得る。対応する抗生物質耐性遺伝子(例えばG418又はハイグロマイシン)を有するベクターで首尾よく形質転換された微生物は、適切な抗生物質を含有する培地又は培養液を用いて選択され得る。細胞表面に提示されるマーカータンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーを用いた選択に使用され得る。
【0143】
必要に応じて、遺伝子産物はまた、例えば、特にマウス、ヒツジなどの遺伝子移入動物、又は遺伝子移入植物などの遺伝子移入生物中で発現させられ得る。
【0144】
本発明のさらなる主題は、ペプチド産生組み換え宿主生物が培養され、場合によってはポリペプチドの発現が誘導され、これらのポリペプチドが培養物から単離される、本発明によるRGMドメイン又はポリペプチド、又はその機能的、生物学的活性断片の組み換え産生法に関する。必要に応じて、ペプチドは、この方法により工業的スケールで作製することもできる。
【0145】
組み換え宿主は、公知の方法に従い培養し発酵させ得る。細菌は、例えば、TB又はLB培地中で、20から40℃の温度及び6から9のpHで、増殖させ得る。適切な培養条件は、例えば、T.Maniatis、E.F.Fritsch及びJ.Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1989)で詳細に記載されている。
【0146】
ポリペプチドが培地中に分泌されない場合、細胞を破壊し、公知のタンパク質単離方法により溶解物から生成物が回収される。細胞は、場合によっては、高周波数超音波、高圧により(例えばフレンチプレッシャーセルを用いて)、浸透圧溶解により、界面活性剤、溶解酵素又は有機溶媒の作用を通じて、均質化により、又は上記方法のいくつかの組み合わせにより破壊され得る。
【0147】
ペプチドは、例えば、Q−セファロースクロマトグラフィーなどの分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性クロマトグラフィーなどの公知のクロマトグラフィー法及び、超遠心、結晶化、塩析、透析及び非変性ゲル電気泳動などのその他の通常の方法によって精製され得る。適切な方法は、例えば、Cooper、F.G.、Biochemische Arbeitsmethoden[Biochemical procedural methods]、Verlag Walter de Gruyter、Berlin、New York又はScopes、R.、Protein Purification、Springer Verlag、New York、Heidelberg、Berlinに記載されている。
【0148】
組み換えペプチドの分離のために、例えば、ある種のヌクレオチド配列によりcDNAを伸長し、それによって修飾ポリペプチド又は融合タンパク質(精製を容易にするために使用される。)をコードする、ベクター系又はオリゴヌクレオチドを使用することが特に適切である。この適切な修飾の例は、例えば、ヘキサ−ヒスチジンアンカーとして知られる修飾、又は抗体の抗原として同定され得るエピトープなどのアンカーとして作用する、いわゆるタグである(例えば、Harlow、E.及びLane、D.、1988、Anbitodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor(N.Y.)Pressに記載)。これらのアンカーは、クロマトグラフィーカラム中に充填され得るポリマーマトリクスなどの固定基質にペプチドを付着させるために使用し得るか、又は、マイクロタイタープレート又は何らかのその他の基質上で使用され得る。
【0149】
同時に、これらのアンカーは、ペプチドの同定のために使用され得る。ペプチドの同定の場合、蛍光色素などの従来のマーカー、基質との反応後に検出可能な反応生成物を形成する酵素マーカー又は放射標識マーカーを、単独で又はペプチドの誘導体化のためのアンカーと組み合わせて、使用し得る。
【0150】
5.免疫グロブリン
5.1定義
本発明の主題は、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物と特異的に結合するモノクローナル又はポリクローナル抗体、即ち、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対して特異性を有する抗体に関する。本発明の主題は、さらに、これらの抗体の一部、特にその抗原結合部位、即ち、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物と結合する抗体断片に関する。
【0151】
本発明による抗体は、好ましくは、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異的結合に対する特定の結合キネティクス(例えば、高親和性、低解離、低解離速度(koff)、強い中和活性)を有するように選択される。
【0152】
従って、本発によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対し、KD=10−6から10−12Mの範囲の親和力を有する抗体が提供され得る。
【0153】
さらなる態様によると、本発明による抗体は、0.1s−1以下のkoff速度定数でRGMタンパク質又はその誘導体/同等物にそれらが結合するように選択され得る。
【0154】
抗体は好ましくは単離抗体である。さらなる態様によると、抗体は中和抗体である。本発明による抗体には、特にモノクローナル及び組み換え抗体が含まれる。本発明による抗体は、完全に単一の種に由来し、従って例えばヒト抗体はラット抗体又はマウス抗体であり得るアミノ酸配列を含有し得る。さらなる実施態様によると、抗体は、キメラ抗体又はCDRグラフト抗体又はヒト化抗体のその他の形態でもあり得る。
【0155】
「抗体」という用語は、4本のポリペプチド鎖、即ち2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖から形成される免疫グロブリン分子を指す。この鎖は、通常、ジスルフィド結合によって互いに連結される。各重鎖は、この鎖の可変領域(本明細書においてHCVR又はVHと略される。)及び重鎖の定常領域から構成される。重鎖の定常領域は、3個のドメイン、CH1、CH2及びCH3から形成される。各軽鎖は、軽鎖の可変領域(本明細書においてLCVR又はVLと略される。)及び軽鎖の定常領域からなる。軽鎖の定常領域は、CLドメインから形成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分割され得、フレームワーク領域と呼ばれる保存領域(FR)が散在する。各VH及びVL領域は、3個のCDR及び4個のFRから形成され、N末端からC末端に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置される。
【0156】
抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対して特異性を有し、抗体の1以上の断片(断片は、RGMタンパク質又はその誘導体/同等物に特異的に結合する能力を有し続けている。)を指す。抗体の抗原結合機能が、完全抗体の断片から確認され得ることが分かった。抗体の「抗原結合部分」という用語の意味における結合断片の例は、(i)Fab断片、即ち、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、即ち、ジスルフィド架橋を介してヒンジ領域において互いに連結される2つのFab断片を含有する二価の断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメイン又はVH、CH1、CH2、DH3又はVH、CH2、CH3からなるdAb断片(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)である。Fv断片の2つのドメイン、即ちVL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされ、それらは、組み換え法に従う合成リンカーを用いて一緒に連結され得るが、この方法においては、VL及びVH領域が一価の分子を形成するために一緒に存在する場合に、単一のタンパク質鎖として産生され得る(単一鎖FV(ScFv)として知られる。例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照のこと。)。このような1本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される。「ダイアボディ」などの1本鎖抗体のその他の形態は、同様にその中に含まれる。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現され(2つのドメインが同じ鎖上で一緒に存在するには短すぎるリンカーを用いる場合を除く。)、それにより、これらのドメインが他の鎖の相補性ドメインと対形成させられ、2つの抗原部位が形成される、2価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger、P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;Poljak、R.J.ら(1994)Structure 2:1121−1123を参照)。
【0157】
さらに、抗体又はその抗原結合部分は、大きな免疫付着分子の一部であり得、これは、1以上のさらなるタンパク質又はペプチとの抗体又は抗体部分の共有又は非共有結合により形成される。このような免疫付着分子は、4量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用を含み(Kipriyanov、S.M.ら(1995)「Human Antibodies and Hybridomas」6:93−101)、二価及びビオチニル化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC−末端ポリヒスチジンタグの使用を含む(Kipriyanov、S.M.ら(1994)Mol.Immunol.13:1047−1058)。
【0158】
Fab及びF(ab’)2断片などの抗体部分は、パパイン又はペプシンを用いた消化などの従来の技術を用いることにより、全抗体から作製され得る。標準化組み換えDNA技術を用いることにより、抗体、抗体部分及び免疫付着分子を得ることもできる。「本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異性を有する単離抗体」は、基本的に異なる抗原特異性を有するその他の抗体を含まない、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異性を有する抗体を包含する。
【0159】
「中和抗体」という用語は、特定の抗原に対するその結合の結果、抗原の生物学的活性が阻害される抗体を表す。この、抗原の生物学的活性の阻害は、適切なインビトロ又はインビボアッセイを用いて、抗原の生物学的活性に対する1以上の指標を測定することにより評価され得る。
【0160】
「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマに由来する抗体(例えば、Kohler及びMilsteinによる標準化ハイブリドーマ法などのハイブリドーマ技術を用いて作製されるハイブリドーマにより分泌される抗体)を指す。従って、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異性を有し、ハイブリドーマに由来する抗体はモノクローナル抗体と呼ばれる。
【0161】
「組み換え抗体」という用語は、組み換え手段を用いて、発現、生成又は単離される抗体、例えば、宿主細胞に遺伝子移入される組み換え発現ベクターを使用して発現される抗体;組み換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離される抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子を用いて遺伝子導入された動物(例えば、マウス)から単離される抗体(例えば、Taylor、L.D.ら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295参照);又は特定の免疫グロブリン遺伝子配列(ヒト免疫グロブリン遺伝子配列など)がその他のDNA配列と組み合わせられる、何らかのその他の方法において、発現、生成又は単離される抗体を表す。組み換え抗体には、例えば、キメラ、CDRグラフト及びヒト化抗体が含まれる。
【0162】
「ヒト抗体」という用語は、例えばKabatらにより記載されるものなど、その可変及び定常領域が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に対応するか又はそれに由来する抗体を指す(Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242参照)。しかし、本発明によるヒト抗体は、例えば、CDR及び特にCDR3において、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸基を含有し得る(例えば、インビトロでの無作為もしくは部位特異的突然変異誘発又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)。本発明による組み換えヒト抗体は、可変領域を有し、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する定常領域を含有し得る(Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242を参照のこと。)。しかし、ある実施態様によると、このような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列のVH及びVL配列に関連するか又はそれらに由来するにしても組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列がインビボにおけるヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内で天然に存在しない配列であるように、インビトロにおける突然変異誘発を受ける(又はヒトIg配列のために遺伝子導入される動物が用いられる場合、体細胞に対してインビボ突然変異誘発が行われる。)。ある実施態様によると、このような組み換え抗体は、選択的変異誘発又は復帰突然変異又はその両方の結果である。
【0163】
「復帰突然変異」という用語は、ヒト抗体の体細胞突然変異アミノ酸のいくつか又は全てが、相同的な生殖細胞系列抗体配列の対応する生殖細胞系列残基により置換される方法を指す。最大の相同性を有する配列を同定するために、本発明によるヒト抗体の重鎖及び軽鎖に対する配列をVBASEデータベースの生殖細胞系列配列と別個に比較する。本発明によるヒト抗体における相違は、このような異なるアミノ酸をコードする定義されたヌクレオチド位置において突然変異させることによる生殖細胞系列配列に起因する。抗原結合に対する復帰突然変異のための候補としてこのように同定される各アミノ酸の直接的又は間接的重要性を調べ、変異後にヒト抗体の所望の特性を損なうアミノ酸は、最終的ヒト抗体に含めない。復帰突然変異のためのアミノ酸の数を最小限に留めるために、それらが次の生殖細胞系列配列とは異なるが、第二の生殖細胞系列の対応するアミノ酸配列と同一であるアミノ酸位置は不変のままであり得る(ただし、第二の生殖細胞系列配列は、本発明によるヒト抗体の配列に対して、問題となるアミノ酸の両方の側で、少なくとも10個、好ましくは12個のアミノ酸と、同一であり、同一線上である。)。復帰突然変異は、抗体最適化のあらゆる段階で行い得る。
【0164】
「キメラ抗体」という用語は、分子の個別の部分が異なる種由来である抗体を包含する。従って、キメラ抗体は、それらに限定されないが、例えば、1つの種由来の重鎖及び軽鎖の可変領域に対する配列を含有し、VH及び/又はVL由来のCDR領域の1以上の配列が別の種のCDR配列により置換される抗体である。このような抗体は、マウス由来の重鎖及び軽鎖の可変領域を含有し得、マウスCDR(例えばCDR3)の1以上がヒトCDR配列により置換される。
【0165】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ)由来の重鎖及び軽鎖の可変領域配列を含有する抗体を表すが、しかし、ここで、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部が、「ヒト様」になるように修飾されており、即ち、ヒト生殖細胞系列の可変領域により類似するように修飾されている。ヒト化抗体のあるタイプは、非ヒトVH及びVL配列にヒトCDR配列を挿入することによって対応する非ヒトCDR配列が置換されるCDRグラフト抗体である。
【0166】
抗体の結合反応速度を測定するためのある方法は、いわゆる表面プラズモン共鳴に基づく。「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBiaコアシステムを用いて、バイオセンサーマトリックスを用いたタンパク質濃度における変化を検出することにより、分析されるべき生物特異的相互作用を解析することを可能にする光学現象を指す(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden及びPiscataway、NJ)。さらなる情報については、Jonsson、U.ら(1993)Ann.Biol.Clin.51:19−26;Jonsson、U.ら(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnsson、B.ら(1995)J.Mol.Recognit.8:125−131;及びJohnnson、B.ら(1991)Anal.Biochem.198:268−277)を参照のこと。
【0167】
「Koff」という用語は、抗体/抗原複合体由来の抗体の解離についての解離速度定数を表す。
【0168】
「Kd」という用語は、ある種の抗体−抗原相互作用の解離定数を表す。
【0169】
本発明による抗体の結合親和性は、ELISA又はBiacore分析などの、標準化インビトロ免疫アッセイを用いることにより評価され得る。
【0170】
5.2 免疫グロブリンの作製
5.2.1 ポリクローナル抗体の作製
本発明は、本発明によるRGMドメイン及びポリペプチドに対するポリクローナル抗体、及びその作製に関する。
【0171】
この目的のため、本発明による少なくとも1つのRGMタンパク質又は誘導体/同等物で宿主に免疫付与し、免疫に対する反応としての抗体含有血清を宿主から回収する。
【0172】
用いられるべきRGMポリペプチドが免疫原性を有しないか免疫原性が弱い場合、それらの免疫原性は、担体、好ましくはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、リムラス・ポリフェムスヘモシアニン(LPH)、ウシ血清アルブミン(BSA)又はオボアルブミン(OVA)などの担体タンパク質とそれらをカップリングすることによって向上させ得る。一般に公知である多くのカップリングの選択肢が当業者にとって利用可能である。例えば水又は水性溶媒中で適切なペプチド又はペプチド混合物とRGMタンパク質を温置することによる、例えば、グルタルアルデヒドとの反応が実際的であり得る。この反応は、好都合に、大気温度(通常は室温を意味する。)で行われ得る。しかし、冷却又は穏やかな加熱を行うことは有用であり得る。この反応により、通常、数時間以内に所望の結果が得られ、例えば、2時間の反応時間は標準的な範囲である。グルタールアルデヒド濃度は通常、ppmから%の範囲であり、有利には10ppmから1%、好ましくは100ppmから0.5%である。反応パラメータの最適化は当業者の範囲内である。
【0173】
抗原に加え、組成物は通常、さらに補助物質、特に免疫化に通常用いられるアジュバント、例えば、フロイントのアジュバントを含有する。特に、最初の免疫付与に対してフロイントの完全アジュバントが用いられるが、一方、全てのさらなる免疫付与は、フロイントの不完全アジュバントを用いて行われる。免疫付与カクテルは、補助物質に対して抗原(免疫原)を好ましくは前述の成分混合物の形態で添加することにより調製される。この場合、通常、抗原は乳化される。
【0174】
げっ歯類又はウサギは特に宿主として適している。これらの、又はその他の適切な宿主に、免疫付与カクテルを好ましくは皮下注射する。抗体力価は免疫アッセイを用いて、例えば、宿主IgGに対するヒツジ抗血清及び標識されたRGMタンパク質を用いて競合的に測定することができる。従って、免疫付与終了時に、ある種の宿主が抗体回収に適しているか否かについて判定し得る。例えば、4回の免疫付与が行われる場合、3回目の免疫付与後に抗体力価を測定し、十分な抗体力価を示す動物から抗体を回収することができる。
【0175】
産生された抗体を回収するために、数週間又は数ヶ月にわたり、好ましくは宿主から採血する。次いで、宿主から全採血され得る。このように回収された血液から、所望の抗体を含有する血清をそれ自体公知の方法で回収し得る。その中に含有される抗体画分、特にRGMタンパク質認識抗体を濃縮するために、必要に応じて、この方法により得られた全血清を、当業者に公知の方法でさらに精製し得る。
【0176】
本発明の特定のある特定の実施態様によると、免疫原として用いられるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物を特異的に認識する血清から、少なくとも1種の抗体が選択される。これに関連し、「特異性」とは、特に免疫原関連であるその他のタンパク質に対するよりも免疫原に対して抗体の結合親和性がより高いことを意味する。
【0177】
5.2.2 モノクローナル抗体の作製
本発明により使用され得る免疫グロブリンは、それ自体公知の方法を用いて得ることができる。従って、ハイブリドーマ技術によって、関心のある抗原に対して単一特異性抗体を作製することが可能になる。さらに、抗体ライブラリのインビトロスクリーニングなどの組み換え抗体技術が開発され、これにより、このような特異抗体が同様に産生される。
【0178】
従って、例えば、関心のある抗原を有する動物に免疫付与し得る。このインビボアプローチはまた、動物のリンパ球又は脾臓細胞由来の一連のハイブリドーマを確立し、抗原に特異的に結合するある抗体を分泌するハイブリドーマを選択することもまた含み得る。免疫付与される動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ又はヒツジであり得るか、又は前記動物のトランスジェニック型、例えば、抗原刺激後にヒト抗体を産生するヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスであり得る。免疫付与され得る動物のその他のタイプには、ヒト末梢血単核球を用いるか(キメラhu−PBMC−SCIDマウス)又はリンパ球もしくはその前駆体を用いて再構成された重症複合型免疫不全症(SCID)罹患マウスならびに致死量で全身照射され、次いで重症複合型免疫不全症(SCID)罹患マウス由来の骨髄細胞を用いて放射線から保護し、次いで機能的ヒトリンパ球を移植したマウス(いわゆるトリメラ系)が含まれる。免疫付与されるべきさらなる動物のタイプは、そのゲノムにおいて、関心のある抗原をコードする内在性遺伝子が、抗原を用いて免疫付与した後にこの動物が抗原を外来物質として認識するように、例えば相同組み換えにより、排除されている(ノックアウト)動物(例えばマウス)である。この方法により作製されるポリクローナル又はモノクローナル抗体が、以下に限定されないがELISA技術を含む公知のスクリーニング方法を用いることにより特徴が調べられ、選択されることは当業者にとって明らかである。
【0179】
さらなる実施態様によると、抗原を用いて組み換え抗体ライブラリをスクリーニングする。組み換え抗体ライブラリは、例えば、バクテリオファージの表面、酵母細胞の表面又は細菌細胞の表面で発現され得る。組み換え抗体ライブラリは、例えばscFvライブラリ又はFabライブラリであり得る。さらなる実施態様によると、抗体ライブラリは、RNA−タンパク質融合物として発現され得る。
【0180】
本発明による抗体の産生のためのさらなるアプローチは、インビボ及びインビトロのアプローチの組み合わせを含む。例えば、インビボにおいて動物に抗原で免疫付与し、次いで、インビトロで抗原を用いて、動物のリンパ球細胞から産生された組み換え抗体ライブラリ、又は単一ドメイン抗体ライブラリ(例えば、重鎖及び/又は軽鎖を用いて)をスクリーニングすることにより、抗体レパートリー上で抗原が作用し得る。別のアプローチによると、インビボで動物に抗原で免疫付与し、次いで動物のリンパ球細胞から作製された組み換え抗体ライブラリ又は単一ドメイン抗体ライブラリを親和性成熟に供することによって、抗原が抗体レパートリーにおいて作用し得る。別のアプローチによると、インビボにおいて動物に抗原で免疫付与し、次いで、関心のある抗体を分泌する個々の抗体産生細胞を選択し、これらの選択された細胞から重鎖及び軽鎖の可変領域に対するcDNAを回収し(例えば、PCRを用いる。)、哺乳動物宿主細胞内でインビトロで重鎖及び軽鎖の可変領域を発現させ(リンパ球−抗体選択法、又はリンパ球抗体選択法(SLAM)と呼ばれる。)、選択された抗体遺伝子配列をさらに選択し、操作することにより、抗原が抗体レパートリーにおいて作用し得る。さらに、モノクローナル抗体は、哺乳動物細胞内で重鎖及び軽鎖に対する抗体遺伝子を発現させ、所望の結合親和性を有する抗体を分泌する哺乳動物細胞を選択することによる発現クローニングによって、選択され得る。
【0181】
本発明によると、定義された抗原は、RGM結合ドメイン又はポリペプチドの形態で、スクリーニング及びカウンタースクリーニングに対して提供される。従って、本発明によると、上記で定義されるような本発明に従う所望の特性プロファイルを有するポリクローナル及びモノクローナル抗体が選択され得る。
【0182】
本発明に従う方法を使用して、様々なタイプの抗体を作製し得る。これらには、基本的にヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びCDRグラフト抗体ならびにそれらの抗原結合部分が含まれる。
【0183】
本発明による抗体を作製するための方法を特に以下に記載する。この点について、インビボでのアプローチ、インビトロでのアプローチ又は両者の組み合わせを分ける。
【0184】
インビボでのアプローチ:
インビボで作製される抗体産生細胞から開始し、元々Kohler及びMilsteinにより記載されたハイブリドーマ技術などの標準化技術を用いて、モノクローナル抗体が作製され得る(1975、Nature 256:495−497)(Brownら(1981)J.Immunol 127:539−46;Brownら(1980)J Biol Chem 255:4980−83;Yehら(1976)PNAS 76:2927−31;及びYehら(1982)Int.J.Cancer 29:269−75を参照のこと。)。モノクローナル抗体ハイブリドーマを作製するための技術は周知である(一般的に、R.H.Kenneth、Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp.、New York、New York(1980);E.A.Lerner(1981)Yale J.Biol.Med.、54:387−402;M.L.Gefterら(1977)Somatic Cell Genet.、3:231−36を参照のこと)。この目的のために、不死化細胞株(通常は骨髄腫)を、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与した哺乳動物のリンパ球(通常、脾臓細胞、リンパ節細胞又は末梢血リンパ球)と融合させ、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対して特異性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するために、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングする。この目的のために、リンパ球及び不死化細胞株を融合するために、多くの公知のプロトコールの何れかのプロトコールを用い得る(G.Galfreら(1977)Nature 266:550−52;前出のGefterら、Somatic Cell Genet;前出のLerner、Yale J.Biol.Med.;前出のKenneth、Monoclonal Antibodiesを参照のこと。)。さらに、当業者は、同様に用いられ得るこのような方法の多くの変法を知っている。不死化細胞株(例えば骨髄腫細胞株)は通常、リンパ球と同じ哺乳動物種に由来する。例えば、本発明による免疫原性調製物で免疫付与したマウス由来のリンパ球を、不死化マウス細胞株と融合させることにより、マウスハイブリドーマが確立され得る。好ましい不死化細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有する培地(HAT培地)に対して感受性があるマウス骨髄腫細胞株である。多くのもののうち何れの骨髄腫細胞株も、標準的な方法で融合パートナーとして用いられ得る(例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653又はSp2/O−Ag14骨髄腫株)。これらの骨髄腫細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、MDから入手可能である。通常、HAT感受性マウス骨髄腫細胞は、ポチエチレングリコール(PEG)を用いてマウス脾臓細胞と融合される。次いで、HAT培地を用いて、融合により得られたハイブリドーマ細胞を選択し、これにより、非融合又は非産生融合骨髄腫細胞を死滅させる(非融合脾臓細胞は、形質転換されていないので、数日後に死滅する)。本発明によるRGMタンパク質又は誘導体/同等物を特異的に認識するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞は、例えば、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物と特異的に結合することができる抗体を選択するために標準的ELISAアッセイを用いることによってこのような抗体においてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより、同定される。
【0185】
所望の抗体のタイプに依存し、種々の宿主動物がインビボ免疫付与のために使用される。それ自身関心のある抗原の内在性の形態を発現する宿主が使用され得る。あるいは、関心のある抗原の内在性の形態を欠損するようにされた宿主が使用され得る。例えば、ある内在性タンパク質に対する対応する内在性遺伝子が相同組み換えにより欠損するようにされているマウス(即ちノックアウトマウス)は、マウスに免疫付与されたタンパク質に対する液性反応を引き起こし、その結果、そのタンパク質に対する高親和性のモノクローナル抗体を産生させるために使用され得ることが分かっている(例えば、Roes、J.ら(1995)J.Immunol.Methods 183:231−237;Lunn、M.P.ら(2000)J.Neurochem.75:404−412を参照のこと。)。
【0186】
本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する非ヒト抗体の産生の場合、抗体産生のための宿主として多くの非ヒト哺乳動物が適切である。これらには、マウス、ラット、ニワトリ、ラクダ、ウサギ及びヤギ(及びそれらのノックアウト形態)が含まれるが、ハイブリドーマ作製にはマウスが好ましい。さらに、二重特異性を有するヒト抗原に対する、基本的にヒト抗体の産生の場合、ヒト抗体レパートリーを発現する非ヒト宿主動物が使用され得る。このような非ヒト動物には、以下に詳細に記載する、ヒト免疫グロブリントランス遺伝子を有するトランスジェニック動物(例えばマウス)(hu−PBMC−SCIDキメラマウス)及びヒト/マウス放射線キメラが含まれる。
【0187】
ある実施態様によると、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与される動物は、抗原刺激後に非ヒト哺乳動物がヒト抗体を産生するように、ヒト免疫グロブリン遺伝子を用いてトランスジェニック化されている、非ヒト哺乳動物、好ましくはマウスである。通常、ヒト生殖細胞系列構成を有する重鎖及び軽鎖に対する免疫グロブリントランス遺伝子は、このような動物、重鎖及び軽鎖に対する内在性遺伝子座が不活性となるように修飾されている動物に挿入される。抗原により(例えばヒト抗原により)このような動物が刺激される場合、ヒト免疫グロブリン配列(即ちヒト抗体)由来の抗体が産生される。ヒトモノクローナル抗体は、標準化ハイブリドーマ技術を用いて、このような動物のリンパ球から産生され得る。ヒト免疫グロブリンを用いてトランスジェニック化されたマウス及びヒト抗体の産生におけるその使用についてのさらなる説明は、例えば、米国特許第5,939,598号、WO96/33735、WO96/34096、WO98/24893及びWO99/53049(Abgenix Inc.)及び米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、同第5,770,429号、同第5,814,318号、同第5,877,397号及びWO99/45962(Genpharm Inc.);同様にまた、MacQuitty、J.J.及びKay,R.M.(1992)Science 257:1188;Taylor、L.D.ら(1992)Nucleic Acids Res.20:6287−6295;Lonberg、N.ら(1994)Nature 368:856−859;Lonberg、N.及びHuszar、D.(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93;Harding、F.A.及びLonberg、N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536−546;Fishwild、D.M.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851;Mendez、M.J.ら(1997)Nature Genetics 15:146−156;Green、L.L.及びJakobovits、A.(1998;J.Exp.Med.188:483−495;Green、L.L.(1999)J.Immunol.Methods 231:11−23;Yang、X.D.ら(1999)J.Leukoc.Biol.66:401−410;Gallo、M.L.ら(2000)Eur.J.Immunol.30:534−540を参照のこと。
【0188】
さらなる実施態様によると、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与される動物は、ヒト末梢血単核球もしくはリンパ球細胞又はそれらの前駆体で再構成された重症複合型免疫不全症(SCID)罹患マウスであり得る。hu−PBMC−SCIDキメラマウスと呼ばれるこのようなマウスは、抗原刺激後に確かなヒト免疫グロブリン反応を引き起こす。これらのマウス及び抗体産生のためのそれらの使用のさらなる説明については、例えば、Leader、K.A.ら(1992)Immunology 76:229−234;Bombil、F.ら(1996)Immunobiol.195:360−375;Murphy、W.J.ら(1996)Semin.Immunol.8:233−241;Herz、U.ら(1997)Int.Arch.Allergy Immunol.113:150−152;Albert、S.E.ら(1997)J.Immunol.159:1393−1403;Nguyen、H.ら(1997)Microbiol.Immunol.41:901−907;Arai、K.ら(1998)J.Immunol.Methods 217:79−85;Yoshinari、K.及びArai、K.(1998)Hybridoma 17:41−45;Hutchins、W.A.ら(1999)Hybridoma 18:121−129;Murphy、W.J.ら(1999)Clin.Immunol.90:22−27;Smithson、S.L.ら(1999)Mol.Immunol.36:113−124;Chamat、S.ら(1999)J.Infect Diseases 180:268−277;及びHeard、C.ら(1999)Molec.Med.5:35−45を参照のこと。
【0189】
さらなる実施態様によると、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与される動物は、致死的全身照射を受け、次いで重症複合型免疫不全症(SCID)罹患マウス由来の骨髄細胞を用いて放射線から保護し、次いで、機能的ヒトリンパ球の移植を受けているマウスである。トリメラ系と呼ばれるこのキメラタイプは、関心のある抗原でマウスに免疫付与し、次いで、標準化ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を産生させることにより、ヒトモノクローナル抗体を産生させるために使用される。これらのマウス及び抗体産生のためのそれらの使用のさらなる説明については、例えば、Eren、R.ら(1998)Immunology 93:154−161;Reisner、Y.及びDagan、S.(1998)Trends Biotechnol.16:242−246;Ilan、E.ら(1999)Hepatology 29:553−562;及びBocher、W.O.ら(1999)Immunology 96:634−641を参照のこと。
【0190】
インビトロでのアプローチ:
免疫付与及び選択による本発明による抗体の産生についての代替法として、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対して特異的に結合する免疫グロブリンライブラリのメンバーを単離するために、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物を用いて組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリをスクリーニングすることによって、本発明による抗体が同定され単離され得る。ディスプレイライブラリを作製しスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、PharmaciaからのRecombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;及びStratageneからののSurfZAP(R)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。多くの実施態様において、ディスプレイライブラリはScFvライブラリ又はFabライブラリである。組み換え抗体ライブラリをスクリーニングするためのファージディスプレイは既に記載されている。抗体ディスプレイライブラリを作製し、スクリーニングするための特に有利な方法において使用され得る方法及び化合物の例は、McCaffertyら、WO92/01047、米国特許第5,969,108号及び欧州特許第589877号(特にsdFvのディスプレイを記載)、Ladnerら米国特許第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,571,698号、同第5,837,500号及び欧州特許第436597号(例えばPIII融合を記載。);Dowerら、WO91/17271、米国特許第5,427,908号、同第5,580,717号及び欧州特許第527839号(特にFabのディスプレイを記載。);Winterら、WO92/20791及び欧州特許第368,684号(特に免疫グロブリン可変ドメインに対する配列のクローニングを記載);Griffithsら、米国特許第5,885,793号及び欧州特許第589877号(特に組み換えライブラリを用いたヒト抗原に対するヒト抗体の単離を記載);Garrardら、WO92/09690(特にファージ発現技術を記載);Knappikら、WO97/08320(HuCalヒト組み換え型抗体ライブラリを記載);Salfeldら、WO97/29131(ヒト抗原(ヒト腫瘍壊死因子α)に対する組み換えヒト抗体の産生及び組み換え抗体のインビトロ親和性成熟を記載)及びSalfeldら、米国特許仮出願第60/126,603号及びそれに基づく特許出願(同様に、ヒト抗原(ヒトインターロイキン−12)に対する組み換えヒト抗体の産生及び組み換え抗体のインビトロ親和性成熟をを記載)で見出すことができる。
【0191】
組み換え抗体ライブラリのスクリーニングさらなる記載は、Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hayら(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81−85;Huseら(1989)Science 246:1275−1281;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734;Hawkinsら(1992)J Mol.Biol.226:889−896;Clarksonら(1991)Nature 352:624−628;Gramら(1992)PNAS 89:3576−3580;Garradら(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboomら(1991)Nuc.Acid.Res.19:4133−4137;Barbasら(1991)PNAS 88:7978−7982;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554;及びKnappikら(2000)J.Mol.Biol.296:57−86.などの科学刊行物で見出される。
【0192】
バクテリオファージディスプレイ系の使用の代替法として、酵母細胞又は細菌細胞の表面上で組み換え抗体ライブラリを発現させ得る。酵母細胞の表面上で発現されるライブラリを作製しスクリーニングするための方法は、WO99/36569に記載されている。細菌細胞の表面上で発現されるライブラリを作製しスクリーニングするための方法は、WO98/49286に詳細に記載されている。
【0193】
コンビナトリアルライブラリから関心のある抗体が同定されたらすぐに、分子生物学の標準化技術を用いて、例えば、ライブラリのスクリーニングの間に単離されたディスプレイパッケージ(例えばファージ)からのDNAのPCR増幅によって、抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAが単離される。PCRプライマーを作製するために使用され得る軽鎖及び重鎖抗体に対する遺伝子のヌクレオチド配列は、当業者にとって公知である。これらのタイプの多くの配列は、例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication 第91−3242号及びヒト生殖細胞系列の配列に対するVBASEデータベースに記載されている。
【0194】
本発明による抗体又は抗体部分は、宿主細胞において、軽鎖及び重鎖免疫グロブリンに対する遺伝子を組み換え発現させることよって作製され得る。抗体を組み換え発現させるために、宿主細胞中で軽鎖及び重鎖が発現され、好ましくは宿主細胞が培養される培地に分泌されるように、抗体の軽鎖及び重鎖免疫グロブリンをコードするDNA断片を有する1以上の組み換え発現ベクターが宿主細胞に遺伝子移入される。抗体は、この培地から回収され得る。重鎖及び軽鎖抗体に対する遺伝子を得て、これらの遺伝子を組み換え発現ベクターに挿入し、このベクターを宿主細胞に導入するために、標準化組み換えDNA法が使用される。このような方法は、例えば、Sambrook、Fritsch及びManiatis(編)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)、Ausubel、F.M.ら(編)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1989)及びBossらによる米国特許第4,816,397号に記載されている。
【0195】
関心のある抗体のVH及びVLセグメントをコードするDNA断片が得られたらすぐに、例えば、可変領域に対する遺伝子を、全長抗体鎖に対する遺伝子に、Fab断片に対する遺伝子に又はscFv遺伝子に変換するために、標準化組み換えDNA技術を用いて、これらのDNA断片がさらに操作され得る。これらの操作において、VL−又はVH−をコードするDNA断片は、別のタンパク質、例えば、抗体の定常領域又はフレキシブルリンカーをコードするさらなるDNA断片と操作可能に連結される。この場合、「操作可能に連結」という用語は、2個のDNA断片によってコードされるアミノ酸配列の読み枠がずれない(インフレーム)ように、2個のDNA断片が一緒に連結されることを意味する。
【0196】
VH領域をコードする単離DNAは、重鎖(CH1、CH2及びCH3)の定常領域をコードする別のDNA分子と、VH領域をコードするDNAを操作可能に連結することにより、全長重鎖に対する遺伝子に変換され得る。ヒトの重鎖の定常領域に対する遺伝子配列は周知であり(例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health及びHuman Services、NIH Publication No.91−3242を参照)、これらの領域にわたるDNA断片は、標準化PCR増幅を用いて得られ得る。重鎖の定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgDからなる定常領域であり得、IgG1又はIgG4からなる定常領域が好ましい。重鎖のFab断片に対する遺伝子を得るために、重鎖の定常領域CH1のみをコードするさらなるDNA分子とVHをコードするDNAを操作可能に連結し得る。
【0197】
軽鎖の定常領域CLをコードするさらなるDNA分子と、VLをコードするDNAを操作可能に連結することによって、VL領域をコードする単離DNAは、全長軽鎖に対する遺伝子(ならびにFab軽鎖に対する遺伝子)に変換され得る。ヒトの軽鎖の定常領域に対する遺伝子配列は周知であり(例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health及びHuman Services、NIH Publication No.91−3242を参照のこと。)、これらの領域にわたるDNA断片は、標準化PCR増幅によって得られ得る。軽鎖の定常領域は、定常κ又はλ領域であり得、定常κ領域が好ましい。
【0198】
scFV遺伝子を得るために、VH及びVL配列が、連続的な1本鎖タンパク質として発現され、VL及びVH領域がフレキシブルリンカーを介して連結されるように、フレキシブルリンカー、例えば、アミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコードするさらなるコード断片と、操作可能に連結され得る(Birdら(1988)Science 242:423−426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554を参照のこと。)。
【0199】
本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異性を有する、VH及びVLの単一ドメインは、前述の方法を用いることにより単一ドメインライブラリから単離され得る。所望の特異性を有する、2本のVH単一ドメイン鎖(CH1を有するか又は有しない。)又は2本のVL鎖又はVH鎖及びVL鎖からなるペアは、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物を結合させるために使用され得る。
【0200】
本発明による組み換え抗体又は抗体部分を発現させるために、部分的又は全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAを発現ベクターに挿入して、それにより、転写及び翻訳制御配列とその遺伝子を操作可能に連結させ得る。これに関連し、「操作可能に連結」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を制御するために意図される機能を満足するように、抗体遺伝子がベクターにおいて連結されることを意味する。
【0201】
発現ベクター及び発現制御配列は、それらが発現のために使用される宿主細胞と適合するように選択される。抗体の軽鎖に対する遺伝子及び抗体の重鎖に対する遺伝子は、異なるベクターに挿入され得るか、又は両方の遺伝子が同じ発現ベクターに挿入され得る(通常のケース)。抗体遺伝子は、標準化方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクターにおける相補的な制限切断部位の連結又は、制限切断部位が存在しない場合、平滑末端の連結)を用いて、発現ベクターに挿入される。発現ベクターは、軽鎖及び重鎖に対する配列が挿入される前に、抗体定常領域に対する配列を有し得る。例えば、あるアプローチにおいて、重鎖及び軽鎖に対する定常領域を既にコードする発現ベクターに配列を挿入する(それによりベクター内のCHセグメントとのVHセグメントの操作可能な連結及びまたベクター内のCLセグメントとのVLセグメントの操作可能な連結が得られる。)ことにより、VH及びVL配列が全長の抗体遺伝子に変換される。さらに又はあるいは、組み換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖に対する遺伝子は、ベクターにクローニングされ得、それにより、読み枠内でシグナルペプチドが抗体鎖に対する遺伝子のN末端に連結される。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。抗体鎖に対する遺伝子に加えて、本発明による発現ベクターは、宿主細胞内で抗体鎖に対する遺伝子の発現を制御する制御配列を有し得る。「制御配列」という用語は、抗体鎖に対する遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及びその他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を包含する。このような制御配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。制御配列の選択を含む発現ベクターの設計が形質転換されるべき宿主細胞の選択、タンパク質の所望の発現強度などの因子に依存し得ることは、当業者にとって公知である。哺乳動物宿主細胞における発現のための好ましい制御配列には、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(アデノウイルスの主要後期プロモーターについてAdMLP))及びポリオーマ由来のプロモーター及び/又はエンハンサーなどの、哺乳動物細胞において強力なタンパク質発現をもたらすウイルスエレメントが含まれる。ウイルス制御エレメント及びその配列についてのさらなる記載は、例えば、Stinskiの米国特許第5,168,062号、Bellらの同第4,510,245号、及びSchaffnerらの同第4,968,615号を参照のこと。
【0202】
抗体鎖及び制御配列に対する遺伝子に加えて、本発明による組み換え発現ベクターは、宿主細胞内でベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子などのさらなる配列を含有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を単純に促進する(例えば、全てAxelらの、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号及び同第5,179,017号を参照のこと。)。例えば、選択可能マーカー遺伝子が、ベクターが導入された宿主細胞を、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキセートなどの活性物質に対して耐性にすることは一般的である。好ましい選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHRF)に対する遺伝子(メトトレキセートを選択/増幅でのdhfr−宿主細胞における使用のため)及びneo遺伝子(G418の選択のため)が含まれる。
【0203】
軽鎖及び重鎖の発現のために、標準化技術を用いて、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを宿主細胞に遺伝子移入する。「遺伝子移入」という用語の種々の形態は、外来DNAを原核又は真核宿主細胞に導入するために通常用いられる多くの技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含する。原核又は真核宿主細胞の何れでも、本発明による抗体を発現させることは理論的に可能であるが、正確に折り畳まれ免疫学的に活性な抗体がこのような真核細胞、特に哺乳動物細胞において組み合わせられ分泌される可能性が原核細胞よりも高いので、真核細胞、特に哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が好ましい。抗体遺伝子の原核細胞発現に関して、活性抗体の高収量産生のためには効率的でないことが報告されている(Boss、M.A.及びWood、C.R.(1985)Immunology Today 6:12−13)。
【0204】
本発明による組み換え抗体の発現のために好ましい哺乳動物宿主細胞には、CHO細胞(Urlaub及びChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されており、例えば、R.J.Kaufman及びP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載の、DHFR選択可能マーカーとともにいられる、dhfr−CHOを含む。)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、宿主細胞内で抗体が発現されるまで、又は、好ましくは、宿主細胞が増殖する培地中に抗体が分泌されるまで宿主細胞を培養することにより、抗体が産生される。抗体は、タンパク質を精製するための標準化方法を用いることにより、培地から回収され得る。
【0205】
無傷抗体の一部、例えば、Fab断片又はscFv分子を作製するためにも宿主細胞が使用され得る。言うまでもなく、既に記載の手順の変法は本発明に包含される。例えば、本発明による抗体の軽鎖又は重鎖の何れか(両方ではない。)をコードするDNAで宿主細胞に遺伝子移入することが望ましいものであり得る。関心のある抗原の結合のために不必要である軽鎖又は重鎖が存在する場合、このような軽鎖又はこのような重鎖の何れか又はその両方をコードするDNAは、組み換えDNA技術を用いて部分的又は完全に除去され得る。このような短縮DNA分子により発現される分子は、同様に本発明による抗体に含まれる。さらに、1本の重鎖及び1本の軽鎖が本発明による抗体を構成する二官能性抗体が作製され得、標準化された化学的方法を用いて本発明による抗体を二次抗体と架橋することにより、他方の重鎖及び軽鎖は、関心のある抗原以外の抗原に対する特異性を有する。
【0206】
本発明による抗体、その抗原結合部分の組み換え発現のためのある好ましい系において、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターが、リン酸カルシウムが介在する遺伝子移入により、dhfr−CHO細胞に導入される。組み換え発現ベクター内で、遺伝子の強力な転写を達成するために、抗体重鎖及び軽鎖に対する遺伝子はそれぞれ調節性CMVエンハンサー/AdMLPプロモーターエレメントと操作可能に連結される。組み換え発現ベクターはまた、メトトレキセート選択/増幅を用いることにより、ベクターを遺伝子移入されるCHO細胞が選択され得るDHFR遺伝子も含む。抗体重鎖及び軽鎖が発現され、インタクト抗体が培地から回収されるように、選択された形質転換宿主細胞を培養する。組み換え発現ベクターを作製し、宿主細胞に遺伝子移入し、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収するために、分子生物学の標準化技術が使用される。従って、本発明は、本発明による組み換え抗体が合成されるまで適切な培地中で本発明による宿主細胞を培養することによる、本発明による組み換え抗体を合成するための方法に関する。この方法はまた、培地からの組み換え抗体の単離も含む。
【0207】
ファージディスプレイによる組み換え抗体ライブラリのスクリーニングの代替法として、本発明による抗体を同定するために、大きなコンビナトリアルライブラリのスクリーニングのために当業者に公知のその他の方法が使用され得る。その他の発現系のあるタイプにおいて、組み換え抗体ライブラリは、Szostak及びRobertsのWO98/31700及びRoberts、R.W.及びSzostak,J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:12297−12302に記載のように、RNA−タンパク質融体の形態で発現される。この系において、共有結合融合体は、mRNA及びそれがコードするペプチド又はタンパク質の間の、3’末端にペプチジルアクセプター抗生物質ピューロマイシンを有する合成mRNAのインビトロ翻訳によって作製される。従って、コードされるペプチド又はタンパク質(例えば抗体又はその一部)の特性、例えば、抗体又はその一部の、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する結合に基づき、mRNAの複合混合物由来の特異的mRNA(例えばコンビナトリアルライブラリ)が濃縮され得る。抗体又はその一部をコードし、このようなライブラリのスクリーニングから回収される核酸配列は、記載の方法で(例えば哺乳動物宿主細胞内で)組み換え手段を用いて発現され得、さらなる回においてmRNA−ペプチド融合体をスクリーニングするか(この場合、当初の選択された配列に変異が導入される。)、又は前述のように組み換え抗体のインビトロ親和性成熟のためのその他の方法を用いることにより、さらに、さらなる親和性成熟にも曝露され得る。
【0208】
インビボ及びインビトロアプローチの組み合わせ:
本発明による抗体はまた、インビボ及びインビトロにおけるアプローチの組み合わせ、例えば最初に本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物が、RGMタンパク質−又はその誘導体/同等物−結合抗体の産生を促進するために宿主動物においてインビボで抗体レパートリーに対して機能することを可能にし、次いで、さらなる抗体の選択及び/又は抗体成熟(即ち最適化)が、1以上のインビトロ技術を用いて行われる方法を使用することによっても作製され得る。ある実施態様によると、このような組み合わせ法は、最初に、抗原に対する抗体反応を刺激するために非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ又はそれらのトランスジェニック動物又はキメラマウス)を、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免役付与し、次いで、RGMタンパク質又はその誘導体/同等物の作用によりインビボで刺激されているリンパ球由来の免疫グログリン配列を用いてファージディスプレイ抗体ライブラリを作製及びスクリーニングすることを含み得る。この組み合わせ手順の最初の段階は、インビボアプローチに対して上記で述べたように行われ得るが、この手順の第二の段階は、インビトロアプローチに対して上記で述べたように行われ得る。刺激されたリンパ球から作製されたファージディスプレイライブラリのインビトロスクリーニングに続く、非ヒト動物の過剰免疫付与のための好ましい方法には、BioSite Inc.により記載される方法が含まれ、例えば、WO98/47343、WO91/17271、米国特許第5,427,908号及び同第5,580,717号を参照のこと。
【0209】
さらなる実施態様によると、組み合わせ法は、最初に、RGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する抗体反応を刺激するために非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ又はそれらのノックアウト及び/又はトランスジェニック動物又はキメラマウス)を、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与し、ハイブリドーマ(例えば免疫付与された動物から作製される。)をスクリーニングすることにより、所望の特異性を有する抗体を産生するリンパ球を選択することを含む。抗体又は単一ドメイン抗体に対する遺伝子は、選択されたクローンから単離され(逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応などの標準化クローニング法を用いて)、選択された抗体の結合特性を向上させるために、インビトロ親和性成熟を受ける。この手順の最初の段階は、インビボアプローチに対して上記で述べたように行い得るが、この手順の第二の段階は、インビトロアプローチに対して上記で述べたように、特に、WO97/29131及びWO00/56772に記載されたようなインビトロ親和性成熟のための方法を使用することにより行い得る。
【0210】
さらなる組み合わせ法において、組み換え抗体は、リンパ球抗体選択法(SLAM)として当業者に公知であり、米国特許第5,627,052号、WO92/02551及びBabcock、J.S.ら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843−7848に記載されている方法を用いることによって個々のリンパ球から作製される。この方法において、RGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する免疫反応を刺激するために、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ又はそれらのトランスジェニック動物又はキメラマウス)にインビボで最初に本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与し、次いで、抗原特異的溶血プラークアッセイ使用することによって関心のある個々の抗体分泌細胞を選択する。この目的のために、ビオチンなどのリンカーを用いて、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物、又は構造的に関連のある関心のある分子をヒツジ赤血球と結合することができ、それによって、溶血プラークアッセイを用いることにより適切な特異性の抗体を分泌する個々の細胞を同定することができる。関心のある抗体を分泌する細胞の同定後、軽鎖及び重鎖の可変領域に対するcDNAを逆転写酵素−PCRによって細胞から回収し、次いで、これらの可変領域を、適切な免疫グロブリン定常領域(例えばヒト定常領域)とともに、COS又はCHO細胞などの哺乳動物宿主細胞内で発現させ得る。次に、例えば遺伝子移入細胞を増殖させ、所望の特異性を有する抗体を発現させる細胞を単離することによって、インビボで選択するリンパ球に由来する増幅免疫グロブリンで遺伝子移入された宿主細胞をさらなるインビトロ分析及び選択に供する。増幅させた免疫グロブリン配列はさらにインビトロで操作され得る。
【0211】
6.医薬品
6.1 概略
本発明の主題はまた、本発明によるタンパク質(RGMタンパク質;RGMタンパク質結合リガンド、抗RGMタンパク質抗体など)又はコードRGMタンパク質核酸配列及び場合によっては医薬的に許容可能な担体を活性物質として含有する医薬品(組成物)にも関する。本発明による医薬組成物はまた、少なくとも1つのさらなる治療剤、例えば本明細書中に記載の疾病の1つを治療するための1以上のさらなる治療剤も含有し得る。
【0212】
医薬的に許容可能な担体には、生理学的適合性であるならば、全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などが含まれる。
【0213】
医薬的に許容可能な担体には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースが含まれる。製剤はまた、滑剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油など;湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤;保存剤、例えばメチル及びプロピルヒドロキシ安息香酸など;抗酸化剤;抗刺激剤;キレート剤;コーティング剤;乳化安定剤;フィルム形成剤;ゲル形成剤、臭気マスキング剤;香味料;樹脂:親水コロイド;溶媒;可溶化剤;中和剤;浸透促進剤;顔料;四級アンモニウム化合物;保湿剤及び皮膚軟化剤;軟膏、クリーム又は又は油基剤;シリコーン誘導体;展着助剤;安定化剤;滅菌剤;坐剤用基剤;錠剤用賦形剤、例えば、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤又はコーティングなどの;噴射剤;乾燥剤;乳白剤;増粘剤、ワックス;柔軟剤;ホワイトオイルなどの、薬学的に許容可能な担体又は一般的なアジュバントも含まれ得る。この点に関するデザインは、例えば、Fiedler、H.P.、Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie、Kosmetik und angrenzende Gebiete、第4版、Aulendorf:ECV−Editio−Cantor−Verlag、1996に記載のような熟練者の知識に基づく。また、Hager’s Handbuch der Pharmazeutoschen Praxis、Springer Verlag、Heidelbergを参照のこと。
【0214】
医薬組成物は、例えば、非経口投与に適切であり得る。この目的のために、活性物質、例えば抗体は、好ましくは0.1から250mg/mLの活性物質含有量を含む注射用溶液の形態で調製される。注射用溶液は、投与形態として、フリントガラス又はバイアル、アンプル又は充填注射器中の液体又は凍結乾燥形態で提供され得る。
【0215】
緩衝液は、L−ヒスチジン(1から50mM、好ましくは5から10mM)を含有し得、5.0から7.0、好ましくは6.0のpHを有し得る。以下に限定されないが、さらに適切な緩衝液には、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム又はコハク酸カリウム緩衝液が含まれる。
【0216】
溶液の浸透圧を調整するために、0から300mMの濃度まで(液体投与形態の場合、好ましくは150mM)塩化ナトリウムを使用し得る。凍結乾燥投与形態の場合、スクロース(例えば0から10%、好ましくは0.5から1.0%(w/w))などの抗凍結剤が組み込まれ得る。その他の適切な抗凍結剤には、トレハロース及びラクトースが含まれる。凍結乾燥投与形態の場合、マンニトール(例えば、1から10%、好ましくは2から4%(w/w))などの充填剤が組み込まれ得る。液体ならびに凍結乾燥投与形態で、L−メチオニン(例えば、51から50mM、好ましくは5から10mM)などの安定化剤を用いることもできる。その他の適切な充填剤には、グリシン及びアルギニンが含まれる。例えばポリソルベート80(例えば、0から0.05%、好ましくは0.005から0.01%(w/w))などの界面活性剤も使用され得る。その他の界面活性剤には、ポリソルベート20及びBrij界面活性剤が含まれる。
【0217】
本発明による組成物は、多くの種類の形態が想定され得る。これらには、液体、半固体及び固体投与形態、例えば、溶液(例えば、注射用及び輸液用溶液、ローション、点眼薬及び点耳薬)、リポソーム、分散剤又は懸濁液、固体形態、例えば、食餌、粉末、顆粒剤、錠剤、トローチ、サシェ、カプセル(cachets)、糖衣錠、カプセル(硬及び軟ゼラチンカプセルなど)、坐剤もしくは膣用製剤、又は半固体製剤形態、例えば、軟膏、クリーム、ヒドロゲル、ペースト又は硬膏などが含まれる。埋め込み送達装置も、本発明による活性物質を投与するために使用され得る。好ましい形態は、投与の意図する形態及び治療用途に依存する。通常、注射用又は輸液用溶液の形態における組成物が好ましい。ある適切な投与経路の例は非経口投与(例えば、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射)である。ある好ましい実施態様によると、活性物質は、静脈内点滴又は注射によって投与される。さらに好ましい実施態様によると、活性物質は、筋肉内又は皮下注射により投与される。
【0218】
治療用組成物は、通常、無菌であり、製造及び保管条件下で安定でなければならない。本組成物は、高活性物質濃度に対して適切な、溶液、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム構造又はその他の規則正しい構造の形態で処方され得る。滅菌注射用溶液は、場合によっては上記成分のの1つ又は組み合わせと共に、必要量の活性化合物(例えば抗体など)を適切な溶媒に導入し、次いでろ過滅菌を行うことによって、調製され得る。分散剤は、通常、基本的な分散媒体を含有し、場合によってはその他の必要な成分を含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を導入することによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するために、滅菌凍結乾燥粉末が使用される場合、既にろ過滅菌されている溶液から活性成分及び場合によってはその他の所望の成分の粉末を得るための好ましい製造方法は、真空乾燥及び噴霧乾燥である。溶液の適正な流動特性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって維持され得、分散剤の場合、必要な粒子サイズが維持されるか又は界面活性剤が使用される。注射用組成物の長期吸収は、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を組成物に導入することにより達成され得る。
【0219】
本発明による活性物質は、当業者にとって公知である多くの方法を用いて投与され得るが、多くの治療用途の場合、皮下注射、静脈内注射又は輸液が、多くの治療用途に対する好ましい投与タイプである。当業者は、投与の経路及び/又はタイプが所望の結果に依存することを認識する。ある実施態様によると、埋め込み、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達系を含む例えば制御放出製剤など、急速な放出から化合物を保護する担体を用いて活性化合物が調製され得る。エチレン−酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用し得る。このような製剤を調製するための方法は一般に当業者にとって公知であり、例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978を参照のこと。
【0220】
ある実施態様によると、本発明による活性物質は、例えば、不活性希釈剤又は吸収可能な食用担体中で、経口投与され得る。活性物質(及び必要に応じてその他の成分)はまた、硬又は軟ゼラチンカプセル中に封入されるか、錠剤に圧縮されるか、又は食物に直接加えることもできる。経口的治療投与の場合、活性物質は、賦形剤と混合し、噛み砕ける錠剤、口腔錠剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップなどの形態で使用され得る。本発明による活性物質が、非経口以外の経路を介して投与されようとする場合、活性物質の不活性化を防止する物質からコーティングを選択することが必要であり得る。
【0221】
本発明による活性物質は、上述の疾病の治療において適切である1以上のさらなる治療剤と一緒に投与され得る。
【0222】
本発明の医薬組成物は、通常、少なくとも1つの本発明による活性物質の治療的有効量又は予防的有効量を含有する。投与計画は、例えば、所望の処置又は治療的もしくは予防的処置が所望されるか否かに依存して選択及び適合することができる。例えば、治療状況の要求性に依存して、1回の投与、長時間にわたる複数回の分割投与、又は漸増用量又は減量投与量を投与し得る。投与を簡素化し、投与の均一性を確実にするために、特に単一投与形態での非経口的組成物を処方することは有利である。
【0223】
担当医師は、投与形態、投与のタイプ及び特定の治療及び特定の活性物質に最も適切な投与量を容易に決定することができる。
【0224】
本発明による活性物質の治療又は予防的有効量は、以下に限定されないが、例えば、0.1から20mg/kgの範囲、好ましくは1から10mg/kgであり得る。言うまでもなく、軽減すべき状態の性質及び重症度に依存してこれらの量は変化し得る。
【0225】
6.2 ワクチン
本発明によるRGMタンパク質及びその誘導体/同等物は、治療されるべき患者のワクチン接種のための免疫原として使用され得る。
【0226】
この目的のために、適切なワクチンは、一般に、少なくとも1つの本発明によるRGMタンパク質及び/又は少なくとも1つのそれらの誘導体/同等物を含有する医薬組成物である。この組成物は、生理学的に許容可能な担体及び場合によってはさらなるアジュバント、例えば免疫刺激剤も含有し得る。
【0227】
原則として適切な担体は所望のように選択することができるが、担体のタイプは一般に投与経路により決定される。従って本発明によるワクチンは、特に、非経口、例えば、静脈内投与、筋肉内投与及び皮下投与に適切な形態で処方され得る。これらの場合、担体は、好ましくは水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックス及び/又は緩衝液を含有する。
【0228】
本発明によるワクチンにおいて、何らかの多くの免疫刺激剤が使用され得る。例えば、アジュバントが組み込まれ得る。殆どのアジュバントは、急速な分解から抗原を保護するように意図されている物質、例えば、水酸化アルミニウム又は鉱油ならびに脂質A、百日咳菌又はヒト型結核菌由来のタンパク質を含有する。適切なアジュバントは、通常市販されており、例えば、完全もしくは不完全フロイントアジュバント;AS−2;水酸化アルミニウム(場合によってはゲル形態)もしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄又は亜鉛塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオン性又は陰イオン性誘導体化多糖類;ポリホスファゼン;生体分解性ミクロスフェア;又はモノホスホリル−脂質Aである。GM−CSF又はインターロイキン−2、−7又は−12などのサイトカインもまたアジュバントとして使用され得る。
【0229】
7.治療法
7.1.神経性疾患の治療
中枢神経系に対する損傷において、損傷部位でRGMタンパク質の蓄積が観察されることが先行技術(Schwabら(前出)を参照)から知られている。同時に、これにより、神経線維の新たな増殖が妨害される。ポリクローナルRGM A特異的抗体の使用によるラットでの脊髄損傷モデルにおけるRGM Aの中和の結果、再生及び機能回復が起こった(Hata K.ら、J.Cell.Biol.173:47−58、2006)。神経線維の増殖における損傷及び抑制効果には、受容体分子ネオゲニンへのRGM Aの結合が介在する(Conrad S.ら、J.Biol.Chem.282:16423−16433、2007)。従って、RGMと受容体分子ネオゲニンとの間の相互作用の調節、特に阻害は、神経線維の増殖におけるRGMの阻害活性を阻止するのに適している。
【0230】
7.2.腫瘍性疾患の治療
長い間、ネオゲニンが、腫瘍性疾患の発現及び/又は進行に原因として関係していることが示されてきた。例えば、Meyerhardtらは、Oncogene(1997)14、1129−1136において、研究した、膠芽細胞腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫細胞株を含む50種を超える様々な癌細胞株ならびに結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌及び子宮癌の細胞株においてネオゲニンが検出可能であることを報告した。ネオゲニンの過剰発現はまた、食道癌細胞株においても観察されている(Hueら、Clinical Cancer Research(2001)7、2213−2221)。211人の肺腺癌患者における3588個の遺伝子の発現プロフィールの最近の系統的な分析から、腫瘍性疾患の発現及び進行におけるネオゲニンの関与に関するさらなる情報が得られた(Berrarら、J.Comput.Biol.(2005)12(5)、534−544)。
【0231】
RGMは、腫瘍細胞に関連するネオゲニン受容体への結合によって細胞死を阻止することができるという潜在的な発癌促進効果を有することも知られているので(MatsunagaらNature Cell Biol.6、749−755、2004)、RGM−ネオゲニン相互作用を調節することにより、特に、特異的抗−RGM抗体を用いた相互作用の妨害によって、腫瘍性疾患の治療のための新規治療アプローチがもたらされ得る。
【0232】
一方、ネオゲニン受容体を活性化するヒトRGM Aタンパク質の断片は、腫瘍細胞移動又はネオゲニン陽性腫瘍細胞の転移を阻害し得る。この腫瘍細胞移動の阻害は、神経線維成長の阻害と同様に起こり得る。神経線維はまた侵襲性にも成長するが、腫瘍細胞とは異なり、一般に、制御される侵襲性である。これは、古典的ホジキンリンパ腫における潜在的腫瘍抑制因子候補として最近hRGM Aが同定されたことにより支持される(Feysら、Haematologica 2007、Vol.92、913−20)。
【0233】
7.3.鉄代謝障害の治療
ヘモジュベリンとしても知られるRGM Cは、ヒト及び動物の体内における鉄代謝に非常に重要である。若年性ヘモクロマトーシスは、生物における鉄の過剰負荷として現れる遺伝性の比較的稀な鉄代謝性障害である。この疾患は、ヘモジュベリン分子における突然変異によって起こる(Huangら、The Journal of Clinical Investigation(2005)115、2087−2091)。従って、本発明による機能RGMタンパク質又はその活性ドメインの投与は、このような鉄代謝障害を緩和するための有用な治療的アプローチである。慢性疾患における貧血の場合、炎症又は悪性経過の結果、例えば腫瘍壊死因子αなどのある一定のサイトカインの非常に大きな上方制御が起こる(Weiss M.D.及びGoodnough、L.T.、New Engl.J.Med.352:1011−1022、2005)。これらのサイトカインは、鉄代謝の最も重要な制御因子の強力な誘導因子、ペプチドホルモンヘプシジンであり、ヘプシジンの過剰産生又は蓄積は、慢性疾患における貧血の発症機序に対する重要な理由とみなされる。マウスに対する最近のインビボデータから、Fc−結合RGM C(Fcヘモジュベリン)がヘプシジン発現を阻害し、血清鉄レベルを上昇させることが示される(Babitt、J.L.ら、The Journal of Clinical Investigation、2007、Vol.117、7、1933−1939)。BMPタンパク質とのRGMタンパク質の相互作用は、この制御における重要な因子である(Babitt、J.L.ら、Nature Genetics、2006、Vol.48、5、531−539)。従って、BMPタンパク質と相互作用する、Fc結合RGM C又は、RGM C、RGM Aもしくは[RGM] BのFc結合断片は、慢性疾患における貧血の治療用の治療剤として使用され得る。
【0234】
7.4.骨組織形成の促進
先行技術から、DRAGONという名称でも知られているタンパク質のRGMファミリーのメンバー、即ちRGM Bが、骨の形態形成に関与しているという情報が得られている。例えば、Samadらは、JBC論文、2005、Vol.280.14122−14129において、DRAGONと、タイプI及びタイプIIの骨形成タンパク質(BMP)受容体との間の相互作用を記載する。従って、本発明によるRGMポリペプチドを投与することにより、骨成長促進効果、及びこれによる骨成長疾患又は骨損傷の治療のための新規治療アプローチが考えられ得る。3種類全てのRGMタンパク質(RGM A、B、C)は、様々なBMPファミリーのメンバーと相互作用し、BMPシグナル経路の活性化を向上させる(Babitt、J.L.ら、Nature Genetics、2006、Vol.48、5、531−539;Babitt、J.L.ら、J.Biol.Chem.、2005、Vol.280、33、29820−29827;Babitt、J.L.ら、The Journal of Clinical Investigation、2007、Vol.117、7、1933−1939;Samad、T.A.ら、J.Biol.Chem.、2005、Vol.280.14、14122−14129;Halbrooksら、J.Molecular Signaling 2、4:2007(電子形態で公開))。
【0235】
7.5 自己免疫疾患の治療
本発明による活性物質が自己免疫疾患の治療に適切であり得るという指摘は、次の刊行物で見出される:Uristら、Prog.Clin.Biol.Res.1985、Vol.187:77−96;Lories及びLuyten、Cytokine & Growth Factor Reviews 2005、Vol.16、287−298。
【0236】
8.診断方法
上記定義に従うRGMタンパク質及び誘導体/同等物ならびにこれらに対する抗体は、特に本発明による診断試薬と呼ばれる。
【0237】
従って、本発明は、疾患に典型的な抗原又は抗体を検出することにより、上記で定義される病的状態を、質的又は量的改善をもって決定することを可能にする。
【0238】
この決定は、好ましくは免疫学的方法を用いて行われる。原則として、これは、抗体が使用される何らかの分析的又は診断的試験方法を用いて達成され得る。これらには、凝集及び沈降技術、免疫学的アッセイ、免疫組織化学法及び、例えばウェスタンブロッティング又はドットブロット法などの免疫ブロッティング技術が含まれる。画像検査法などのインビボ法も含まれる。
【0239】
免疫アッセイにおける使用は有利である。競合的免疫アッセイ、即ち、抗体結合に対する抗原及び標識抗原(トレーサー)の競合ならびにサンドイッチ免疫アッセイ、即ち特異的抗体の抗原への結合は、通常は標識されている二次抗体を用いて検出される。これらのアッセイは、均一、即ち、固相及び液相に分離しないアッセイ、又は不均一、即ち、例えば固相に結合した抗体を用いて、結合した標識が非結合標識から分離されるものであり得る。様々な不均一及び均一免疫アッセイ形式は、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫測定アッセイ(ELISA)、蛍光免疫アッセイ(FIA)、発光免疫アッセイ(LIA)、時間分解FIA(TRFIA)、免疫活性化(IMAC)、酵素多型免疫試験(EMIT)、免疫比濁法(TIA)及び免疫−PCR(I−PCR)などの標識及び測定方法に依存して、特定のクラスに割り当てられる。
【0240】
競合的免疫アッセイは、本発明による抗原の検出に好ましい。標識された抗原(トレーサー)は、用いられる抗体に対する結合に対して定量化すべき試料抗原と競合する。試料中の抗原の量、即ち抗原量は、標準曲線を用いて、置換されたトレーサーの量から決定され得る。
【0241】
これらの目的のために利用可能な標識のうち、酵素が有利であることが分かった。例えば、ペルオキシダーゼ、特にホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びβ−D−ガラクトシダーゼに基づく系が使用され得る。これらの酵素について特異的な基質が利用可能であり、それらの反応は、例えば測光法により追跡され得る。適切な基質系は、アルカリホスファターゼに対して、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、ファーストレッド/ナフトールAS−TSホスフェート;ペルオキシダーゼに対して、2,2−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、o−ジアニシジン、5−アミノサリチル酸、3−ジメチルアミノ安息香酸(DMAB)及び3−メチル−2−ベンゾチアゾリンヒドラゾン(MBTH);β−D−ガラクトシダーゼに対して、o−ニトロフェニルβ−D−ガラクトシド(ONPG)、p−ニトロフェニルβ−D−ガラクトシド及び4−メチルウンベリフェニルβ−D−ガラクトシド(MUG)に基づく。多くの場合、これらの基質系は、即時使用状態で、例えば、有用な緩衝剤などのさらなる試薬も含有し得る錠剤の形態で市販されている。
【0242】
トレーサーを調製するためのペプチド又は抗体に標識をそれ自体公知のようにカップリングさせ得る。さらに、タンパク質に対する結合のために役立つように修飾された多くの標識、例えば、ビオチン、アビジン、エクストラアビジン又はストレプトアビジン−結合酵素、マレイミド−活性化酵素などが利用可能である。これらの標識は本発明に従って使用される分子と直接反応させ得る。
【0243】
不均一免疫アッセイ形式が選択される場合、分離の目的のために、例えば、担体に結合させた抗−イディオタイプ抗体、例えばウサギIgGに対する抗体などを用いて、抗原−抗体複合体を基質に結合させ得る。対応する抗体により被覆される支持層、特にマイクロタイタープレートは公知であり、市販されている。
【0244】
本発明のさらなる主題は、上述の少なくとも1つの抗体及びさらなる成分を含有する免疫アッセイセットに関する。これらのセットは、通常は、本発明による検出を行うための試薬のパッケージ化単位形態を集めたものである。可能な限り操作を簡素化するために、これらの試薬は、好ましくは、基本的に即時使用形態で提供される。ある有利な設計において、免疫アッセイはキットの形態で提供される。キットは、通常、成分を個別に提供するための複数の容器を含む。成分は全て、即時使用の希釈剤で、希釈のための濃縮物として、又は溶解もしくは縣濁のための凍結乾燥物として、提供され得、個々の成分又はこれら全ては、凍結状態であるか又は使用まで周囲温度で保管され得る。血清は、好ましくは−20℃で、好ましくは急速冷凍され、例えばこのような場合、免疫アッセイは好ましくは使用前に凍結温度で保存しなければならない。
【0245】
免疫アッセイとともに含まれ得るさらなる成分には、次のもの:標準タンパク質、トレーサー;対照血清、マイクロタイタープレート(好ましくは抗体で被覆)、緩衝液(例えば、試験用、洗浄用又は基質反応用)及び酵素基質そのものが含まれる。
【0246】
免疫アッセイの一般的原理及び抗体の作製及び使用研究及び臨床に役立つものとしての抗体の使用は、例えば、Antibodies、A Laboratory Manual(Harlow、E.及びLane、D.編、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、1988)に記載されている。
【0247】
9.スクリーニング法
本発明の主題はさらに、RGM受容体(ネオゲニン及び/又はBMP)のエフェクターを検出するための方法に関し、この方法において、エフェクターである疑いがある試料をRGMタンパク質又はポリペプチドと温置し、エフェクター−RGMタンパク質複合体の形成に関してアッセイが分析される。
【0248】
このようなエフェクターは、アゴニスト作用、部分的アゴニスト作用、アンタゴニスト作用又は逆アゴニスト作用を有し得る。これらは、合成低分子物質、合成ペプチド、天然もしくは合成抗体分子又は天然物質であり得る。
【0249】
本発明によるこのような方法は、通常、将来の使用に関して最も普及されると思われる物質が、多くの様々な物質から選択され得るインビトロスクリーニング法として行われる。
【0250】
例えば、コンビナトリアル化学によって、多数の潜在的な活性物質を含有する広範囲の物質ライブラリが作製され得る。所望の活性を有する物質に対してコンビナトリアル物質ライブラリのサンプリングを自動化することができる。好ましくはマイクロタイタープレート上で提供される個々のアッセイを効率的に評価するためにスクリーニングロボットが使用される。従って、本発明はまた、スクリーニング法、即ち、好ましくは、後述する少なくとも1つの方法が用いられる、一次及び二次スクリーニング法の両方にも関する。複数の方法が使用される場合、分析しようとする物質の1種の試料又は様々な試料に対して、同時に又は異なる時点で、これが行われ得る。
【0251】
このような方法を行うためのある効率的な技術は、活性物質のスクリーニングの分野において公知である、シンチレーション近接アッセイ(又はSPAと省略される。)である。このアッセイを行うためのキット及び成分は、例えば、Amersham Pharmacia Biotechから市販されている。本方法は、シンチレーション物質を含有する小さな蛍光ミクロスフェア上で可溶化されるか又は膜結合した受容体を固定化するという原則に基づき機能する。例えば、放射性リガンドが固定化受容体に結合する場合、シンチレーション物質及び放射性リガンドは空間的に近接しているので、シンチレーション物質が励起され発光する。
【0252】
このような方法を行うための別の効率的な技術は、活性物質のスクリーニングの分野において公知である、FlashPlate(R)技術である。このアッセイを行うためのキット及び成分は、例えば、NEN Life Science Productsから市販されている。操作の原理は、同様にシンチレーション物質で被覆されたマイクロタイタープレート(96ウェル又は384ウェル)に基づく。
【0253】
これらの方法を用いて同定され得る物質又は物質の混合物の一部は同様に本発明の主題である。
【0254】
以下の非限定的な生成及び使用の実施例を参照し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0255】
実験セクション
1.一般的手順
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
タンパク質の分子量に従い、SDSポリアクリルアミドゲルでタンパク質を分離した(4−20%トリスグリシンゲル:Invitrogen EC6025BOX;10−20%トリシンゲル:Invitrogen#EC6625BOX)。還元剤を用いてNuPage SDS試料緩衝液(4x)と試料を混合した。サーモミキサーにおいて95℃にて10分間温置した後、トリスグリシン又はトリシンSDSランニング緩衝液(Invitrogen)を用いて、125Vで試料を展開させた。See Blue又はBlue Plus 2(Invitrogen)を分子量標準タンパク質として使用した。クーマシー染色でゲルを染色するか又はニトロセルロース(ニトロセルロース膜ろ紙サンドイッチ(Invitrogen#LC2001))に転写した。
【0256】
クーマシー染色
ポリアクリルアミドゲルでのタンパク質の検出のために、ゲルに流した後、タンパク質をクーマシー染色により染色した。膜上で(0.2−μm孔)SimplyBlue Safestain染色溶液(Invitrogen)中で、又は、あるいは、コロイドクーマシー染色(0.25%クーマシーブルーR250/L、45%メタノール、10%酢酸)中で、1時間ゲルを染色した。タンパク質バンドが明確に見えるようになるまで、脱イオン水又は脱色液(40%メタノール、10%酢酸)を用いて脱色を行った。
【0257】
ウエスタンブロット
ろ紙及びニトロセルロースを20%メタノール入りのNovexトランスファー緩衝液に10分間浸した。室温で2時間にわたり、定電流(100mA)でNovexチャンバー中でブロッティング処理を行った。
【0258】
ドットブロット
TTBS緩衝液中の様々な濃度の2μLタンパク質を乾燥ニトロセルロース膜上に軽く叩くように添加した。次の希釈液を使用した:
希釈液:
a)100μg/mL=200ng/スポット
b)50μg/mL=100ng/スポット
c)10μg/mL=20ng/スポット
d)5μg/mL=10ng/スポット
e)1μg/mL=2ng/スポット
f)500μg/mL=1ng/スポット
試料添加後、室温で10分間膜を乾燥させ、その後免疫検出プロトコールを開始した。
【0259】
HEK293F細胞におけるRGM A断片の遺伝子移入及び発現
このために、HEK293F細胞の遺伝子移入に対してInvitrogenにより開発されたプロトコールを使用した。2−3日間にわたり、Free Style 293発現培地中で細胞を培養し、次いで400xgで遠心し、上清を捨てた。培地中で細胞ペレットを再懸濁し、28mLの新鮮培地中で3x107個の細胞になるように調整した。125mLエレンマイヤーフラスコに細胞ペレットを移し、150rpmのオービタル振盪機上で遺伝子移入混合液が生成するまで37℃、8%CO2の恒温槽中で温置した。
【0260】
293フェクチンDNA複合体との遺伝子移入混合液を次のように調製した:
(1)1000μLの総体積になるまで30μg DNAをOpti−MEM Iで希釈し、混合した(1000μL Opti−MEM Iを対照として使用した。)。
【0261】
(2)1000μLの総体積になるまで、35μL 293フェクチン(Invitrogen#12347−019;1mL)をOpti−MEM Iで希釈し、混合し、室温で5分間温置した。
【0262】
(3)段階1からのDNA混合液及び293フェクチン溶液を新しい試験チューブに移し、慎重に混合し、室温で25分間温置した後にエレンマイヤーフラスコ中の細胞に添加した。
【0263】
この細胞移入混合液とともに、150rpmのオービタル振盪機上の、37℃、8%CO2の恒温槽中で上述のように40時間から48時間、細胞を温置した。400xgで10分間遠心することによって、細胞上清を回収した。
【0264】
Niキレートアフィニティー(Ni−NTA)を用いたタンパク質の精製
Ni−NTA Superflowビーズ(Qiagen#1018611)を使用した。13,500rpmでビーズ上清を遠心することにより、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液(Invitrogen)中で3分間、ビーズを洗浄した。上清を捨て、新鮮PBS中でビーズを再懸濁した。細胞培養上清30mLに対してビーズ縣濁液200μLを使用した。ビーズをペレット化するために、振盪機(60rpm)上で、4℃で一晩、細胞培養上清とともにビーズを温置し、温置後遠心した(10分間、3000rpm)。上清を捨て、PBSで3回ビーズを洗浄した。250μL溶出緩衝液(PBS、160mM NaCl、150mM イミダゾール)を用いて、結合タンパク質をビーズから溶出した。振盪機上で室温にて30分間温置した後、遠心(3分間、13,500rpm)によってビーズをペレット化した。上清を回収した。さらなる分析のために、溶出タンパク質を−20℃で凍結した。
【0265】
免疫検出
ニトロセルロース上での固定化タンパク質の免疫検出のために、室温又は4℃で、TTBS(0.1%Tween20、トリス緩衝食塩水溶液(TBS))中で一晩、ブロットを1時間温置することによって、タンパク質の非特異的結合を阻止(ブロッキング処理)した。室温にて2時間にわたり、TTBS中の10μg/mの濃度で一次抗体を使用した。TTBS中で3回、ブロットを洗浄し、TTBS中1:5000の二次抗体(アルカリホスファターゼ結合抗マウスIgG抗体;Sigma)で希釈し、次いで室温で1時間温置した。TTBS中で3回、ブロットを洗浄し、染色溶液でブロットを被覆することにより、3分間、AP基質NBT/BCIP(Roche、10mL精製水により1錠の錠剤を溶解)で発色させた。ブロットに精製水を添加することにより染色反応を停止させた。
【0266】
試験方法1:SH−SY5Y細胞を用いた、神経突起成長アッセイにおけるRGMペプチドの効果の説明
SH−SY5Y細胞は、ヒト神経芽細胞腫細胞である。芽細胞腫は、組織及び器官形成中に由来する胚性腫瘍である。初期胚の状態では多くの細胞の分化がまだ未熟であるため、芽細胞腫細胞の起源は未知である場合が多く、即ち、芽細胞腫細胞は不均一な細胞集団である。神経芽と呼ばれる神経芽細胞腫の細胞は、自律神経組織からの神経堤(胚性状態の構造)由来であり、実際には未熟な段階で停止している。この場合の細胞は、神経芽細胞腫の転移がある4歳女児の骨髄バイオプシーで1970年に単離された神経上皮腫細胞株SK−N−SHのクローン性の継代培養由来であった[http://www.dsmz.de/human_and_animal_cell_lines]。
【0267】
【表1】
【0268】
Nunc500mLフィルターを用いて培地をろ過滅菌し、使用するまで4℃の冷蔵庫中で保存した。使用前に培地を水浴中で37℃に加熱した。
【0269】
SH−SY5Y細胞は、単層でゆっくりと接着性に成長し、100%のコンフルエンシーには到達しない(最大80%)、上皮、神経様細胞である。細胞培養物を週に2回、1:3に分割(継代)した。細胞の分離には、恒温槽中で1から3分間、トリプシンで温置することが必要である。
【0270】
これは、依然として未熟な前駆細胞の集団であるので、細胞のある一定の%が神経突起様の伸長を行うように、レチノイン酸を用いて細胞を分化させることが可能である。この目的のために、試験に応じて、3日間、培養皿又はフラスコ中で直接10μMレチノイン酸が添加された培地中で培養物を温置した。
【0271】
マイクロタイタープレート(96ウェル)(コラーゲン1被覆プレートを含有する。)をhRGM A断片でさらに被覆した。PBSで2回洗浄した後、細胞を播種した。18から24時間後、培養物を固定し、染色した。定量分析において、hRGM A断片上で成長させたSH−SY5Y細胞を、コラーゲンIのみの上で成長させたSH−SY5Yと比較した。細胞の神経突起の長さを自動的に測定し、分析に対して使用した。
【0272】
試験方法2:NTera−2細胞を用いた神経突起成長試験におけるRGMペプチドの効果の説明
細胞培養モデルとして、ヒト多能性癌細胞株NTera2(DSMZ ACC527)を確立する。神経突起は、細胞集合体から成長し、特定の集団の周囲で神経突起の冠を形成する。
【0273】
NTera−2細胞は、ヒト胚性奇形癌細胞である。癌腫は癌性腫瘍であり、奇形腫又は奇形癌は、様々な分化及び未分化組織から構成される生殖細胞の混合性腫瘍であり、従って、SH−SY5Y培養物の場合、不均一な集団を含む。腫瘍は通常、毛髪、皮膚、歯、筋肉及び神経組織などの様々なタイプの被嚢性形態で存在する。この腫瘍は、通常、卵巣、精巣、腹腔又は脳由来である。この細胞株は、22歳の白人男性の転移性奇形癌から得られたTera−2株からクローニングされた。[http://de.wikipedia.org/wiki/][http://www.dsmz.de/human_and_animal_cell_lines]。
【0274】
NTera−2細胞は、単層を形成する、上皮性の接着性に成長する細胞である。それらが含有する顆粒状粒子が大量であるゆえに、NTera−2細胞は、その他の細胞から容易に差別化され得る。週に2回1:5に分割(継代)することによって細胞を培養した。この混合培養物の細胞は、神経細胞においてレチノイン酸を用いて分化させ得る。
【0275】
【表2】
【0276】
Nunc500mLフィルターを用いて培地をろ過滅菌し、使用するまで、4℃の冷蔵庫中で保存した。使用前に培地を水浴中で37℃に加熱した。
【0277】
NTera−2の分化
細胞を分化させるために、細胞を同じ培養フラスコ中で3週間にわたり維持することから、細胞株の培地に抗生物質を導入することが必要であった。前もって、未分化培養物をトリプシン処理して剥離(detrypsinated)し、Neubauer計数チャンバーを用いて細胞数を調べた。25mL培地とともに2.5百万個の細胞を新しい培養フラスコに移した。薄暗い条件下で25μLのレチノイン酸(10μM)を培地に再び添加した。冷蔵庫中で分注して(10M)培養物を保存し、使用前にサーモミキサー中で22℃にて再懸濁した。
【0278】
【表3】
【0279】
5%CO2ガスの37℃の恒温槽中で培地を保存し、週の初めと終わりに培地を交換した。徐々に細胞が単層の形態ではもはや増殖しなくなったが、代わりに細胞集団の小さな積み重なりが形成され、光学顕微鏡を用いずに、細胞層上で光の点として見られた。さらなる培養に対して、古い培地を吸引除去し、10mL PBSで洗浄し、次いでレチノイン酸に25mLの新鮮な培地を添加することによって培地交換した。3週間後、細胞を分化させ、実験で使用できる状態にした。
【0280】
NTera−2に対するプレート被覆
ポリ−L−リジン/ラミニンで被覆することにより、培養皿のベースにおいてNTera−2細胞の成長が促進された。この試験に対して様々なプレート方式を使用した。タンパク質の単離のために、十分な量を回収するための6ウェルのプレートが必要であった。RNA単離及び免疫蛍光の場合は、24ウェルプレートが的確であり、一方、最初に96ウェルプレートでアッセイを確立した。表で示されるように、ウェルの収容能に対応して、コーティング及び洗浄液の様々な体積を使用した。
【0281】
最初に、ウェル中にポリ−L−リジン溶液(100μg/mL)を入れ、室温で15分間温置した。次に、溶液を吸引除去し、PBSで5−10分間、3回、ウェルを洗浄した。次いで、滅菌Millipore水を用いて洗浄段階を行った。
【0282】
洗浄後、ラミニン溶液(20μg/mL)をピペットで採取してウェルに入れ、37℃、5%CO2ガス状態で恒温槽中で2時間プレートを温置した。5−10分間もう一度3回、PBSでの洗浄を行い、最終的に、ペニシリン/ストレプトマイシンあり又は無しのニューロベーサル(neurobasal)液でPBSを置換した。
【0283】
【表4】
【0284】
NTera−2を用いた神経突起伸長
分化3週間後、神経細胞を選択するために、6本のフラスコへ培養物を1:6に分割(継代)した。この時点で、培地にはレチノイン酸を添加していなかった。次の2日間内に、及び第3日に、細胞を回収し、好ましくは、その他の非神経細胞上で神経細胞を沈降させるが、しかし、強力には接着しなかったので、トップ層としてそれらは容易に除去され得た。この目的のために、培地を除去し、およそ10mL PBSで洗浄し、10mL PBSをフラスコに再添加した。瓶の側面を軽く叩くと、細胞が徐々に払い落とされた。しかし、非神経細胞は接着し続けると想定されたので、光学顕微鏡下で目視チェックを場合によっては行った。それらの明るく光る縁及び非常に丸い形態によって神経細胞を同定した。神経細胞が過剰に強固に成長した場合、これらは、除去後、短い時間、神経突起を保持する。3本のフラスコのそれぞれの中のPBS−細胞溶液を50mL遠心管で合わせ、室温にて1000rpmで5分間、細胞を遠心した。次に、2本の試験管に上清を吸引除去して添加し、ニューロベーサル液10mL中でペレットを再懸濁し、即ち10mL中で混合した。
【0285】
Neubauer計数チャンバーを用いて細胞数を調べた。ニューロベーサル液は、既に分化したNTera−2細胞のさらなる培養に対して特化された培地である。
【0286】
【表5】
【0287】
分化したNTera−2を用いた集合体の形成
細胞集合体の形成のために、細胞数計数後、ニューロベーサル液中で剥離させた分化細胞(前出セクション参照)をおよそ百万個の細胞/mLの濃度になるようにニューロベーサル液で希釈した。この細胞縣濁液の20mLを100mLの使い捨て滅菌振盪フラスコに移し、37℃及び5%CO2ガスの恒温槽中で一定に撹拌させながら一晩温置した。液体の循環が起こらず、細胞が満足する集団を形成しないので、20mLの体積を超えないことは重要であった。
【0288】
ポリリジン/ラミニンで被覆された96ウェルプレートを、hRGM A断片でさらに被覆した。PBSで2回洗浄した後、NTera集団を播種した。18から24時間後、培養物を固定し染色した。定量分析において、hRGM A断片上で成長させたNTera集団を、ポリリジン/ラミニンのみの上で成長させたNTera集団と比較した。Lingorら(J.Neurochem、2007、電子形態で公開)により記載の方法に従い、NTera集団の神経突起の長さを自動的に測定した。
【0289】
試験しようとする物質の様々な濃度を添加することにより、RGMペプチド及び断片の阻害効果を分析した。あるいは、RGM断片を基質として提供した。
【0290】
試験方法3:RGM A-ネオゲニン結合試験
a)材料
・イムノプレート:Cert.Maxi Sorp F96(NUNC、439454)
・組み換えヒトRGM A、R&D Systems;Prod.#2495−RM(260μg/mL)
・組み換えヒトネオゲニンFc、Abbott;Ludwigshafen(ALU 1514/122;425μg/mL)
・ペルオキシダーゼ−結合、アフィニティ精製マウス抗−ヒトIgG Fc断片AK(Jackson Immuno Research、Code:209−035−098)(0.8mg/mL)
・現像剤基質:ImmunoPure TMB基質キット(Pierce、#34021)
・硫酸(Merck、#4.80354.1000)
b)方法:
1.イムノプレートへのRGM A結合:
・50mM Na2CO3中の2.5μg/mL RGM A(R&D)(50μL/ウェル)
・37℃で1時間温置
2.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄(100μL/ウェル)
3.非特異的結合部位のブロッキング処理:
・PBS/0.02%Tween中の3%BSAでのブロッキング処理(200μL/ウェル)
・37℃で1時間温置
4.ネオゲニン結合:
・1%BSA PBS/0.02%Tween中の希釈液(最初の濃度1μg/mL)中にネオゲニンの添加(最初の濃度1μg/mL)
・37℃で1時間温置
5.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄(100μL/ウェル)
6.結合ネオゲニンの抗体検出:
・HRPカップリングマウス抗−ヒトIgG Fc断片AK(PBS/1%BSA中で1:2500に希釈)の添加(50μL/ウェル)
・37℃で1時間温置
7.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄(100μL/ウェル)
8.現像
・50μL発色基質/ウェルの添加(ImmunoPure TMB基質、Pierce)
・室温で1〜30分間温置
・50μLの2.5M H2SO4/ウェルを用いて反応停止
【0291】
試験方法4:RGM A及びBMP−2及び−4の間の相互作用を調べるためのインビトロ相互作用試験
下記のように相互作用試験を行った:
変法A:BMP−2/又は−4タンパク質の固定化及び様々なRGM A−Fc融合タンパク質の結合の検出
1.プレート:
・Immunoplate Cert.MaxiSorp F96(Nunc、439454)
2.被覆:
組み換えヒトBMP−2、カタログ番号355−BM 会社:R&D Systems;組み換えヒトRGM A、R&D Systems;製品番号2495−RM又は組み換えヒトBMP−4、カタログ番号314−BM、会社:R&D Systems;
・濃度:10μg/mL
・使用量:Na2CO3中2.5μg/mL;添加:50μL/ウェル
・湿潤チャンバー中37℃で1時間
3.洗浄段階:
PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
4.ブロッキング処理:
・PBS/0.02%Tween中の3%BSA、湿潤チャンバー中、37℃で1時間;添加:200μL/ウェル
5.RGM Aペプチド:
RGM A−Fc断片
・1μg/mL開始濃度、次いでPBS/0.02%Tween20を用いて1:2に希釈。
・室温で1時間温置
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
6.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
7.抗体:
・ビオチン抗ヒトFc(R&D−Systems)、カタログ番号709065;1mg/mL;
・0.6%BAS/PBS−T(0.02%Tween)中で1:200
・添加:50μL/ウェル
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
8.二次抗体:Strep.POD(Roche);カタログ番号11089153001
・500U;0.6%BAS/PBS−T(0.02%Tween)中1:5000
・添加:50μL/ウェル
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
9.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
10.基質:
・ImmunoPure TMB基質キット;Pierce、#34021
・発色時間:およそ1−30分、PBS/0.02%Tween20の1:1混合物;添加:50μL/ウェル
11.停止:
・2.5M H2SO4;添加:50μL/ウェル
変法B:様々なRGM A−Fc融合タンパク質の固定化及びBMP−2/又は−4タンパク質の結合の検出
1.プレート:
Immunoplate Cert.MaxiSorp F6(Nunc、439454)
2.コーティング:
RGM A−Fc断片
・使用量:Na2CO3中2.5μg/mL;添加:50μL/ウェル、
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
3.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
4.ブロッキング処理:
・PBS/0.02%Tween中3%BSA、湿潤チャンバー中、37℃で1時間
・添加:200μL/ウェル、温置:湿潤チャンバー中、37℃で1時間
5.BMPペプチド:
組み換えヒトBMP−2、カタログ番号355−BM、会社:R&D Systems;又は組み換えヒトRGM A、R&D Systems;製品番号2495−RM、組み換えヒトBMP−4、カタログ番号314−BM、会社:R&D Systems;各場合の濃度:10μg/mL
希釈段階:各場合、PBS/0.02%Tween20で1:2
6.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
7.抗体:
抗ヒトBMP−4ビオチン抗体;カタログ番号BAM7572、1%BSA−PBS−T中1:200
8.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
9.二次抗体:
Strep.POD(Roche)
カタログ番号11089153001;500U;0.6%BAS/PBS−T(0.02%Tween)中1:5000
添加:50μL/ウェル
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
10.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
11.基質:
ImmunoPure TMB基質キット;(Pierce、#34021)
・発色時間:およそ1−30分間
・PBS/0.02%Tween20の1:1混合物;添加:50μL/ウェル
12.停止:
・2.5M H2SO4;添加:50μL/ウェル
変法C:MAB 4A9によるBMP−4への全長ヒトRGM Aの結合の阻害
1.プレート:Immuno Plate Cert.Maxi Sorp F96(Fa.NUNC、439454)
2.被覆:
組み換えヒトBMP−4 Canto.:314−BP
入手元:R&D Systems
濃度:10μg/mL
使用量:中2.5μg/mL(Na2CO3)/50μL/ウェル
湿潤チャンバー中、37℃で1時間温置
3.洗浄:3xPBS/0.02%Tween20
4.ブロッキング処理:PBS/0.02%Tween中3%BSA、湿潤チャンバー中、37℃で1時間温置、200μL/ウェル
5.hRGM A:
#788 RGMA(47−422)290μg/mL
ALU 2821/117 11.12.07断片0.5μg/mL一定(50μl)
+
MAB 4A9開始濃度:10μg/mL、1:2希釈(50μL)
6.洗浄:3xPBS/0.02%Tween20
7.一次検出抗体:
ビオチン抗ヒトFc 1mg/mL
Jackson Immuno Research(カタログ番号:709−065−149)1.5%BSA/PBS−T中で1:1000希釈、75μL/ウェル
湿潤チャンバー中、37℃で1時間温置
8.洗浄:3xPBS/0.02%Tween20
9.二次検出ツール:
ストレプトアビジンカップリングペルオキシダーゼ(Roche)
カタログ番号:11089153001、500U
1.5%BSA/PBS−T(0.02%Tween)75μL/ウェル中で1:5000、
湿潤チャンバー中、37℃で1時間温置
10.洗浄:3xPBS/0.02%Tween20
11.基質:Immuno Pure TMB基質キット(Pierce、#34021)発色時間:1−30分間、1:1混合
12.停止:2.5M H2SO4
【0292】
2.調製実施例
調製実施例1:哺乳動物細胞におけるRGM Aタンパク質断片の調製
活性RGM Aの特徴を調べるために、次のRGM A分子をFc融合タンパク質の形態で哺乳動物細胞(HEK293)において発現させた。
41−168/Xa
47−90
47−168
316−386
1−450
【0293】
この目的のために、ベクター:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/Xa/hIgGλ hc 257−停止)xHindIII/EcoRI/ホスファターゼ(Invitrogen)に、特定分子をコードするDNAをクローニングした。この目的のために、RZPDクローン(クローンAL136826(DKFZp434D0727);公開されたRZPD配列:BC015886、AL136826)から、PCRを用いて、特定の断片領域をコードするDNAを増幅した。この目的のために、下記で挙げられ、公開されたRGMA配列由来である、オリゴヌクレオチドプライマー(公開配列:NM_020211)を使用した。
【0294】
上述のRZPDクローンpSport−1DKFZp434D0727においてこれらのプライマー及びAccuPrimeポリメラーゼを用いて、各場合においてPCRを行った。PCR産物の精製、HindIII/EcoRIでの消化及び得られるバンドの溶出後、pcDNA3.1(+)Zeo IgK/Xa/hIgGλhc257−停止)xHindIII/EcoRI/ホスファターゼにおいて、所望の断片を結合(ライゲーション)した。NEBTurbo細胞(Invitrogen)又はTOP10細胞(Invitrogen)を形質転換するために、得られた産物を使用した。配列決定によって、得られた配列の正確さについて、得られたクローンを調べた。
【0295】
41−168/Xa:
AM131:
【0296】
【化7】
HindIIIセグメントを有するアミノ酸F41で始まるhRGM Aセンスプライマー。
【0297】
AM132:
【0298】
【化8】
第Xa因子及びEcoRI切断部位のあるアミノ酸D168までのhRGM Aアンチセンスプライマー。
【0299】
NEBTurbo細胞への形質転換;
プラスミド名:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/hRGM A 41−168/Xa/Xa/hIgGλ hc 257−停止(attなし)
47−90:
AM169:
【0300】
【化9】
HindIIIセグメントを有するアミノ酸P47で始まるhRGM Aセンスプライマー。
【0301】
AM171:
【0302】
【化10】
EcoRI切断部位があるアミノ酸A90までのhRGM Aアンチセンスプライマー
TOP10細胞、Laboratory journal ALU2163/5への形質転換
プラスミド名:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/hRGM A47−90/Xa/hIgGλ hc 257−停止(attなし)
47−168:
AM169:
【0303】
【化11】
HindIIIセグメントがあるアミノ酸P47で始まるhRGMAセンスプライマー
AM175:
【0304】
【化12】
EcoRI切断部位があるアミノ酸D168までのhRGMAアンチセンスプライマー
TOP10細胞への形質転換
プラスミド名:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/hRGMA47−168/Xa/hIgGλ hc 257−停止(attなし)
316−386:
AM181:
【0305】
【化13】
HindIIIセグメントがあるアミノ酸L316で始まるhRGMAセンスプライマー
AM182:
【0306】
【化14】
EcoRI切断部位があるアミノ酸G386までのhRGMAアンチセンスプライマー
TOP10細胞への形質転換
プラスミド名:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/hRGMA 166−386/Xa/hIgGλ hc 257−停止(attなし)
1−450:
Mey 744:
【0307】
【化15】
開始ATGがあるhRGMAプライマー。
【0308】
Mey745:
【0309】
【化16】
停止のないアミノ酸C450までのhRGMAアンチセンスプライマー。
【0310】
比較のために、さらなるRGMAを用いて同様にして次のFc融合タンパク質を作製したが、それらの作製は個別には説明しない。
【0311】
266−284
70−120
110−169
169−422
266−335
47−422 Myc His
HEK293F細胞(DSMZ番号ACC305)にプラスミドを遺伝子移入し、発現された融合タンパク質を上記のように単離した。
【0312】
上記の方法を用いて、タンパク質の分析及び濃度測定を行った。
【0313】
3.操作実施例
操作実施例1
BMP−4とのインビトロ相互作用アッセイ;RGMAとの様々なRGMA断片の比較
試験した融合タンパク質:
RGMA−Fc
47−168−Fc(「断片0」)
218−284−Fc(「断片2」)
266−335−Fc(「断片3」)
169−422−Fc(「断片6」)
上記の試験方法4、変法Bに従い、融合タンパク質(1mg/mL)の固定化によって、試験を行った。抗BMP−4ビオチン抗体を用いてBMP−4の結合を検出した。
【0314】
図3で結果を図示する。47−168断片との驚くべきより顕著な結合に加えて、RGMAとのBMP−4の顕著な結合が観察された。
【0315】
操作実施例2
BMP−4及びBMP−2とのインビトロ相互作用アッセイ;RGMAに対するRGMA断片47−168の比較
試験された融合タンパク質:
RGM A−Fc
47−168−Fc(「断片0」)
上記の試験方法4、変法Bに従い、融合タンパク質(1mg/mL)の固定化によって、試験を行った。抗BMP−4及び抗BMP−2ビオチン抗体をそれぞれ用いてBMP−4及び−2の結合を検出した。
【0316】
図4で結果を図示する。47−168断片との驚くべきより顕著な結合に加えて、RGMAとのBMP−4及び−2の顕著な結合が観察された。BMP−2及び4は、各場合で、ほぼ同じ強さで結合した。
【0317】
操作実施例3
BMP−4とのインビトロ相互作用アッセイ;様々なRGMA断片の比較
試験した融合タンパク質:
47−90−Fc(#785)
47−168−Fc(#786)
316−386−Fc(#790)
169−422−Fc(#769)
70−120−Fc(#779)
110−169−Fc(#780)
266−335−Fc(#789)
47−422MyC−HIS(#801)
上記の試験方法4、変法Aに従い、BMP−4(1mg/mL)の固定化によって、試験を行った。抗ヒトFc又は抗Myc抗ウサギ(Invitrogen)抗体を用いて、融合タンパク質の結合を検出した。
【0318】
添付の図5で結果を示す。
【0319】
本発明による、断片#785、#786及び#790の顕著な濃度依存性結合が観察されたが、#786結合が最も強かった。
【0320】
操作実施例4
BMP−4とのインビトロ相互作用アッセイ;様々な結合RGM A断片の比較
試験した融合タンパク質:
47−90−Fc(#785)
47−168−Fc(#786)
316−386−Fc(#790)
上記の試験方法4、変法Aに従い、BMP−4(1mg/mL)の固定化によって、試験を行った。抗ヒト抗体を用いて、融合タンパク質の結合を検出した。
【0321】
図6A、B及びCで結果を図示する。この結果は、例示的な実施形態3の知見の確証となるものである。
【0322】
操作実施例5
神経線維成長試験での合成RGMA断片の研究
ヒトNTera神経細胞又はヒトSH−SY5Y細胞を用いて、調製実施例1に従い作製される下記で挙げるRGMA断片:
47−168−Fc(#786)
316-386−Fc(#790)
を神経突起成長試験での阻害活性について試験した(上記試験方法1及び2参照)。図7A(SH−SY5Yに対して)及び7B(NTeraに対して)で結果を示す。
【0323】
47−168−Fc(#786)は、顕著により高い活性を示す。
【0324】
本説明セクションで引用される文書の開示を明確に参照する。
【0325】
操作実施例6
hRGM A断片47−168に結合するモノクローナル抗体4A9の作製及び特性評価
別段の断りがない限り、抗体作製及び特性評価の標準的な方法を使用した。
【0326】
a)作製及び免疫ブロッティング
全長ヒトRGM Aタンパク質を用いてラットに免疫付与した。
【0327】
Sprague−Dawleyラットに免疫付与し、ヒトRGM Aでの皮下注射により追加免疫した。完全フロイントアジュバント中25μgの最初の注射で開始し、不完全フロイントアジュバント中25μgの追加免疫注射を行い、動物に3週間ごとに注射した。融合の4日前に、融合のために選択されたラットに食塩水中の25μg hRGM Aを皮下注射した。免疫付与動物から脾臓を取り出し、単一細胞縣濁液を調製した。SP2/0骨髄腫細胞を培養物から回収し、洗浄した。標準的技術を使用して50%PEG3000を用いて、5:1の比で脾臓細胞及び腫瘍細胞を混合し、融合させた(Kohler及びMilstein、1975)。2.5x105個の脾臓細胞/ウェルの密度で、選択培地中で、96ウェルプレートに融合細胞を播種した。7から10日間、37℃で融合物を温置した。肉眼で見えるコロニーを観察し、上清を除去し、hRGM A ELISAで試験した。
【0328】
限界希釈法によって、所望の特徴を有するmAbを産生していたハイブリドーマをサブクローニングした。hRGM Aを遺伝子移入したHEK293細胞を用いて、ELISA及びFACsによって、hRGM Aへの結合について、サブクローンを含有する上清をアッセイした。
【0329】
全長ヒトRGM A及びその断片を用いたハイブリドーマスクリーニング後、ウエスタンブロットにおいてそれが断片47−168(レーン5)を認識するので、MAB 4F9を単離した(図8A)。この抗体は、固相ELISAアッセイにおいてBMP−4及び全長ヒトRGM Aの相互作用を阻止した(図8B)。
【0330】
b)4A9のエピトープマッピング
抗体の固定化:
MAB 4A9のエピトープを正確に説明するために、エピトープマッピング実験を行った。この目的に対して、4A9をCNBr−活性化セファロースレジンに結合させた。4A9溶液のおよそ5−6nmol(5.76mg/mLの141μL)を緩衝液A(100mM NaHCO3、500mM NaCl、pH8)中のセファロースレジン20mgに添加し、室温で4時間混合した。緩衝液B(100mM NaHCO3、100mM NaCl、pH8)で抗体結合レジンを3回洗浄した後、hRGM A断片47−168Fc(1.18mg/mL、1.5nmol)を200μL緩衝液Bとともにレジンに添加した。混合物を回転器上で4℃で一晩温置した。抗体4A9及び抗原hRGM A47−168を含有するレジンを緩衝液Bで3回洗浄し、トリプシンでのエピトープ切断に対して使用した。
【0331】
エピトープ切断:
この目的に対して、MAB及び抗原を含有するレジンを200μL緩衝液B中で縣濁した。0.1μg/μLの濃度になるように、再懸濁緩衝液(50mM HOAc)200μL中でトリプシン20μg(Promega、Madison WI)を溶解させた。それぞれトリプシン0.6μg及び0.35μgを用いて、1:100及び1:200の比(w/w)の酵素:抗原で、抗原切断を行った。GCオーブン中にて37℃で回転させながら、7.5時間、反応を行った。消化後、緩衝液Bでレジンを2回洗浄した。
【0332】
エピトープ放出:
2%ギ酸200μLずつで3回レジンを洗浄することによって、MABに依然として結合した残りの抗原ペプチドを放出させ、各溶出分画を個々に回収した(溶出液1、2及び3)。溶出された分画は、MAB 4A9エピトープを構成するペプチドを含有すると予想される。
【0333】
質量分析(MS)によるペプチド分析:
脱塩後、トリプシン消化からの溶出分画を質量分析に供した。α−シアノ−4−ヒドロキシけい皮酸(CHCA)マトリクス(飽和、50%アセトニトリル、0.3%TFA中)を用いて、Voyager DE−Pro(Applied Biosystems、Foster City、CA)においてマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)MSを行った。Agilent6510QTOF MSを用いて、LC−ESI−MS/MSを行った。8μLの注入を使用し、特定のMSシグナル基準に合致する上位3種類のイオンにおいてMS/MSを行った。MASCOT(Matrix Science)を用いてデータを検索したが、データの殆どは手動で判断した。
【0334】
全ての洗浄及び溶出分画を最初にLC−MS/MSにより分析し、多くのものをMALDI−MSにより分析したが、得られたデータは溶出1分画に相当する。
【0335】
結果:
トリプシンエピトープ切断実験の溶出1分画において、hRGM Aの断片47−168のペプチド50−89及び96−126を同定した。ヒトRGM AにおけるMAB4A9ペプチドの位置を下記に示す。hRGM Aの断片47−168を太字で示す。MAB 4A9保護ペプチドとして同定される2つのペプチドに下線を付す。これらのペプチドの1つの中に正確なエピトープが位置し、その他のペプチドがジスルフィド結合を介して連結され得る。
【0336】
>hRGMA−NP064596
【0337】
【化17】
【0338】
c)ペプチドスキャニングを介したエピトープマッピング
MAB 4A9のエピトープを同定するために、領域15から168に広がるネスト化された重複ペプチド15アミノ酸長を使用した。ELISAによってペプチドの結合を評価し、このために、このペプチドでポリスチレンプレートを被覆した。次に、MAB 4A9を用いてペプチドを調べ、ペルオキシダーゼ結合抗ラットFc抗体及びTMB基質を用いて、ELISAによって結合を可視化した。
【0339】
MAB 4A9に対してある反応性ペプチドが観察されたが、このペプチドを下記で示す。
【0340】
51 LKCNSEFWSA TSGSHAPASD DTPEFCAALR SYALCTRRTA RTCRGDLAYH SAVHGIEDLM SQHNCSKDGP TSQPRLRTLP PAGDSQERSD SPEICHYEKS FHKHSATPNY THCGLFGD 168
MAB 4A9は、太字で下線を付して強調した文字のペプチドに結合する。このペプチドはアミノ酸66−80内にあり、エピトープ切断及び質量分析解析により同定されるペプチドの1つによく合致した。
【0341】
操作実施例7
BRE−Lucアッセイを用いたBMPシグナル伝達におけるhRGM Aのアゴニスト性又はアンタゴニスト性効果の評価
a)材料:
・200μg/mLで3種類の化合物を提供した。
断片#785;断片#786及び断片#788(IgK/hRGM A47−422/Xa切断部位/Fc)
・R&D Systems Europe、Lille、Franceから、組み換えhBMP−2(CHO細胞より;#355−BM)及びモノクローナル抗ヒトBMP2/4抗体(#MAB3552)を得た。
・PromegaからBright−Gloルシフェラーゼアッセイキットを購入した。
【0342】
b)細胞培養:
BMP−反応性C3H10−B12(Logeart−Avramoglou D、Bourguignon M、Oudina K、Ten Dijke P、Petite H。分化プロモーター−ルシフェラーゼコンストラクトの阻害剤を遺伝子移入した細胞を用いた生物学的活性骨形成タンパク質の判定のためのアッセイ。Anal Biochem 2006;349:78−86)を4x104細胞/cm2の密度で96ウェルプレートに播種し、湿度を与えた37℃、5%CO2/95%大気環境中で24時間、BME(BME=イーグル基礎培地)(10%FBS添加)中で培養した。細胞をPBSで2回すすぎ、rhBMP−2(50ng/mL)あり又は無しで、試験される各AS化合物又は抗ヒトBMP2/4抗体(0.01から10,000ng/mL)の何れかを含有するBME/0.5%(w/v)BSA下で24時間培養し、その後、含有されるルシフェラーゼ活性についてアッセイした。実験は全て、トリプリケート(各3回測定)で行い、時間をおいて2回繰り返した。
【0343】
c)結果:
固相ELISA実験において、MAB 4A9は、BMP−4に対する全長ヒトRGM Aの結合を完全に阻止するが、これは、47−168ヒトRGM A断片内にある4A9のドメインがBMP−4との相互作用に重要であるという明確な例となる。
【0344】
細胞アッセイにおいて、様々な濃度(0から50ng/mL)のrhBMP−2でのC3H−B12の処理後に得られたルシフェラーゼ活性の用量依存性反応を図9で示す。
【0345】
試験化合物の様々な濃度にC3H−B12を24時間曝露し、個々の細胞ルシフェラーゼ活性の変化を監視することによって、BRE−Lucアッセイを用いたBMPシグナル伝達における試験ポリペプチドのアゴニスト性効果を調べた(図10)。3種類の試験化合物の何れも、それら自身においてルシフェラーゼ活性を誘導した。
【0346】
rhBMP−2(50ng/mL)と組み合わせられた場合、断片#785は、BMP−2−誘導性ルシフェラーゼ活性をあまり変化させなかった。対して、断片#786及び#788は、化合物が10μg/mLで使用された場合、rhBMP−2−誘導性活性の阻害の88%及び93%に達するルシフェラーゼ活性の用量依存性阻害を示した。断片#786及び#788は、BMP−2アンタゴニスト対照として使用される抗rhBMP−2抗体と同様の阻害効果を示した。断片#786及び#788及び抗−BMP−2Abに対する阻害の50%に対する同等用量(ED50)値は、それぞれ100ng/mL、〜80ng/mL及び〜50ng/mLであった。
【0347】
d)結論
それら自身における試験化合物はBMPシグナル伝達経路を誘導せず、結果として、BMPアゴニストとしてみなされ得ない。対して、rhBMP−2と組み合わせられた場合、これらのうち2つ(断片#786及び#788)は、用量依存的にrhBMP−2−誘導性活性を阻害した。BMP−2タンパク質とのこのような化合物の複合体形成は、細胞膜受容体へのBMP−2の結合が損なわれ得、続いて、BMP−介在シグナル伝達が阻止され得る。しかし、この実験に対して使用される細胞モデルを考慮すると、BMP−2シグナル伝達経路における試験化合物の直接的細胞内阻害効果は除外され得ない。
【0348】
本明細書中で引用される文献の開示は、参照により組み込まれる。
【0349】
【表6】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反発性ガイダンス分子(RGM)タンパク質ファミリーのメンバーの骨形成タンパク質(BMP)結合ドメイン及びそれ由来のポリペプチド断片及び融合タンパク質の同定及び使用に関する。本発明によるドメイン、即ちペプチド断片及び融合タンパク質は、個体の能動又は受動免疫付与のための物質として、又は、その原因もしくは進行においてRGMファミリーのメンバー及びこの分子(特にネオゲニン及び/又はBMPなど)に会合する細胞受容体が関与する疾病もしくは病期に対する使用のための診断及び治療薬として、適切である。本発明は、さらに、本発明による、結合ドメインに対する、及びそれら由来のポリペプチドに対する、モノクローナル及びポリクローナル抗体及び、本発明による、ポリペプチド、融合タンパク質及び抗体を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RGMタンパク質ファミリーのメンバーの機能は、最初、Monnier、P.P.ら、Nature、419、p392−395、2002により記載された。このファミリーには、RGM A、RGM B(DRAGONとも呼ばれる。)及びRGM C(ヘモジュベリンとも呼ばれる。)と呼ばれる3種類の既に公知のメンバーが含まれる(Niederkofler V.ら、J.Neurosci.24、808−18、2004)。これらは、脂質アンカーを介して原形質膜に結合する糖タンパク質である(グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー)。このタンパク質ファミリーのメンバーは、他のタンパク質に対して広範な配列相同性がなく、構造上の特色が基本的に次の領域、即ち、N−末端シグナルペプチド;RGD配列;GDPHアミノ酸配列のタンパク分解性切断部位;ウィルブランド因子ドメイン(vWF D)の構造的相同体;C末端の近傍の疎水性配列;及びC−末端GPIアンカーコンセンサス配列で同定されている(図2も参照)。
【0003】
ヒトにおいて、RGM Aに対するコード配列は第15染色体に、RGM Bは第5染色体に、RGM Cは第1染色体上に位置する。RGM A及びBは、特に成人の脳及び脊髄で、RGM Cは、特に骨格筋、肝臓及び心筋で、RGM Bはまた軟骨組織でも発現されるという、特徴的な発現パターンが観察される。
【0004】
RGMタンパク質は、元来、局所的ニューロン投射の形成において重要な役割を果たす候補タンパク質として同定された(Stahl B.ら、Neuron 5:735−43、1990;Mueller B.K.ら、Curr.Biol.6、1497−1502、1996;Mueller B.K、Molecular Basis of Axon Growth及びNerve Pattern Formation、H.Fujisawa編、Japan Scientific Societies Press、215−229、1997)。RGMタンパク質が神経線維成長を妨げるか又は阻害する能力は、その単離、クローニング及び特性評価において重要な役割を果たす重大な機能的特色であった。その活性は、単純な細胞測定系において容易に明らかにすることができた。RGMタンパク質は、2種類の異なる細胞アッセイにおいて、妨害又は阻害効果を有した。虚脱試験において、成長神経線維にRGMタンパク質が添加された。RGM及びRGM受容体の結合により、神経細胞成長円錐の全ての膜成分が収縮させられる活発な反応が誘導される。手を広げたような元の形態の成長円錐が細い糸状に変換される。RGMの存在下で、神経線維は阻害されたままであり、強く収縮し、もはや成長を続けることはできない。
【0005】
RGMタンパク質は、RGM受容体ネオゲニンと結合することによりそれらの効果の一部を発揮する(RajagopAlan S.ら、Nat Cell Biol.6、756−62、2004)。ネオゲニンは、大腸癌欠失遺伝子(DCC)受容体と密接な関連がある。両受容体とも、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、細胞外、膜貫通及び細胞内ドメインを有する。両方とも、別のリガンド、ネトリン−1の受容体として記載されているが、ネオゲニンのみがRGMタンパク質と結合し、DCCは結合しない。これらの受容体の細胞外ドメインは、4個の免疫グロブリン様ドメイン、それに続く6個のフィブロネクチン反復ドメインから構成される。
【0006】
神経系におけるRGM Aの機能は最もよく理解されており、非常に低い濃度で神経線維の増殖を阻害する効果は特筆すべきである。成長中のヒト及び成体ラットにおける中枢神経系への損傷の結果、損傷部位でRGMタンパク質が蓄積される(Schwab J.M.ら、Arch.Neurol、Vol.62、1561−1568、2005;Schwab J.M.ら、Eur.J.Neurosci.21:387−98、2005)。このようにして損傷神経線維の新たな増殖が阻止され、その結果、永久に、損傷部位の位置によって程度の差はあるものの、重篤な機能障害が発生する。このRGMの神経線維成長阻害活性には、受容体ネオゲニンへの結合が介在する(Rajagopalan S.ら、前出)。同じ受容体は、ネトリン−1の結合を介して媒介するが、神経線維成長を刺激する逆の効果も媒介する。
【0007】
ラットの脊髄損傷部位においてポリクローナル抗体によりRGM Aタンパク質が中和される場合、神経線維が損傷部位全体で再生し、新しいシナプス接触を形成し、その結果、顕著な機能的改善が起こる(Hata K.ら、J.Cell Biol.173、47−58、2006)。
【0008】
最近の知見は、RGMタンパク質が、中枢及び末梢神経系において、鉄代謝の制御において、腫瘍性疾患及び炎症過程において、及び、骨及び軟骨組織の形成においても、重要な役割を果たすことを示す。
【0009】
RGMファミリーのタンパク質の神経突起成長阻害ドメインは、WO2007/039256から知られている。顕著な阻害活性は、例えば、配列範囲260−290の、RGM Aに対して局在していた。
【0010】
RGM A、B及びCが、BMPファミリーの様々なメンバーと相互作用することができることも知られている。BMPは、多数の生理学的及び病態生理学的プロセスに関与する、リガンドのTGF−βスーパーファミリーのメンバーである。BMPは、特殊化したシグナル伝達経路を介してそれらの機能を果たし、この経路は、セリン/スレオニンキナーゼ受容体の2種類のタイプの組み合わせに対するBMPリガンドの結合から始まる。RGMとの相互作用は、既に、BMP−2、−4、−5、−6及び−12に対して示されている(例えば、Babitt、J.L.ら、Nature Genetics、2006、Vol.48、5、531−539;Babitt、J.L.ら、J.Biol.Chem.、2005、Vol.280、33、29820−29827;Babitt、J.L.ら、The Journal of Clinical Investigation、2007、Vol.117、7、1933−1939;Samad、T.A.ら、J.Biol.Chem.、2005、Vol.280、14、14122−14129;及びHalbrooksら、J.Molecular Signaling 2、4、2007(電子形態で公開)参照)。
【0011】
RGMタンパク質のBMP結合ドメインはこれ以前には記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Monnier、P.P.他、Nature、419、2002年、p.392−395
【非特許文献2】Niederkofler V.他、J.Neurosci.24、2004年、p.808−18
【非特許文献3】Stahl B.他、Neuron 5:1990年、p.735−43
【非特許文献4】Mueller B.K.他、Curr.Biol.6、1996年、p.1497−1502
【非特許文献5】Mueller B.K「Molecular Basis of Axon Growth and Nerve Pattern Formation」、H.Fujisawa編、Japan Scientific Societies Press、1997年、p.215−229
【非特許文献6】RajagopAlan S.他、Nat Cell Biol.6、2004年、p.756−62
【非特許文献7】Schwab J.M.他、Arch.Neurol.、Vol.62、2005年、p.1561−1568
【非特許文献8】Schwab J.M.他、Eur.J.Neurosci.、21、2005年、p.387−98
【非特許文献9】Hata K.他、J.Cell Biol.173、2006年、p.47−58
【非特許文献10】Babitt、J.L.他、Nature Genetics、Vol.48、5、2006年、p.531−539
【非特許文献11】Babitt、J.L.他、J.Biol.Chem.、Vol.280、33、2005年、p.29820−29827
【非特許文献12】Babitt、J.L.他、The Journal of Clinical Investigation、Vol.117、7、2007年、p.1933−1939
【非特許文献13】Samad、T.A.他、J.Biol.Chem.、Vol.280、14、2005年、p.14122−14129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、RGMタンパク質のBMP結合ドメインの局在及びその特徴を調べることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、上記の目的は、ヒトRGMタンパク質のBMP結合ドメイン、特にRGM A及びその活性ポリペプチド断片を単離し、特徴を調べることにより達成された。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、RGM A(GenBank#NP_064596.1)、RGM B(GenBank#NP_001012779)及びRGM C(GenBank#NP_998818.1)のヒト型の配列アラインメントを示す。
【図2】図2は、RGM分子の構造の略図を示す。N−末端シグナルペプチドとC−末端GPIアンカーとの間に示されるのは、RGD配列、フォンウィルブランド因子ドメイン(vWF D)及びアンカー領域の前のC−末端近傍における疎水性配列である。神経突起成長阻害ドメイン(OID)は、位置260−290周囲の範囲の、vWFDと疎水性領域との間にある。ヒトRGMに対する対応するアミノ酸位置は、下記の図で示され、ヒトRGM Aに対するタンパク質分解性切断部位は、アミノ酸168と169との間にある。
【図3】図3は、BMP4と様々な固定化RGM A−Fc融合タンパク質との間でのインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図4】図4は、BMP−4及びBMP−2との様々な固定化RGM A−Fc融合タンパク質の相互作用の比較のためのインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図5】図5は、固定化BMP−4と様々なRGM A−Fc融合タンパク質との間のインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図6A】図6は、固定化BMP−4と本発明による融合タンパク質47−90−Fc(図6A)、47−168−Fc(図6B)及び316−386−Fc(図6C)の様々な濃度との間のインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図6B】図6は、固定化BMP−4と本発明による融合タンパク質47−90−Fc(図6A)、47−168−Fc(図6B)及び316−386−Fc(図6C)の様々な濃度との間のインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図6C】図6は、固定化BMP−4と本発明による融合タンパク質47−90−Fc(図6A)、47−168−Fc(図6B)及び316−386−Fc(図6C)の様々な濃度との間のインビトロ相互作用アッセイの結果を示す。
【図7A】図7は、ヒト神経芽細胞腫細胞(図7AのSH−SY5Y、図7BのNTera)を用いた2種類の異なる神経突起成長試験の結果を示す。hRGM A断片、786(47−168)及び790(316−386)の両者とも、非常により強い影響を有する断片47−168−Fcとともに神経突起成長を阻害する。
【図7B】図7は、ヒト神経芽細胞腫細胞(図7AのSH−SY5Y、図7BのNTera)を用いた2種類の異なる神経突起成長試験の結果を示す。hRGM A断片、786(47−168)及び790(316−386)の両者とも、非常により強い影響を有する断片47−168−Fcとともに神経突起成長を阻害する。
【図8A】図8Aは、モノクローナル抗体4A9との免疫ブロッティング実験の結果を示す。MAB 4A9は、ヒトRGM Aの断片47−168(レーン5)を認識する。4A9はまた、さらなるhRGM A断片、70−120(レーン2)及び断片47−90(レーン4)とも結合し、全長hRGM A(47−422)(レーン6及び9)を認識する。分子量標準物質をレーン1で示す。
【図8B】図8Bは、ELISA実験の結果を示し、全長hRGM A及びhBMP−4の相互作用は、MAB4A9により用量依存的に完全に阻害される。
【図9】図9は、様々な濃度(0から50ng/mL)のrhBMP−2でのC3H−B12の処理後の結果であるルシフェラーゼ活性の用量依存性反応を示す。
【図10】図10は、24時間にわたり試験化合物の様々な濃度にC3H−B12を曝露し、個々の細胞ルシフェラーゼ活性の変化を監視することにより調べた場合の、BRE−Lucアッセイを用いたBMPシグナル伝達におけるhRGM Aのペプチド断片のアンタゴニスト効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.一般用語の説明
本明細書中で別段の定義がない限り、本発明に関して使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有する。これらの用語の意味及び範囲は明確であるが、しかし、何らかの潜在的な曖昧性がある場合には、本明細書中で提供される定義が、あらゆる辞書又は付帯的な定義よりも優先される。さらに、内容により必要とされない限り、単数形である語は、複数性を含み、複数形の語は単数性を含む。本願において、「又は」の使用は、別段の断りがない限り、「及び/又は」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語ならびに「含む(includes)」及び「含まれる(included)」などのその他の形態の使用は限定ではない。また、別段の断りがない限り、「要素」又は「成分」などの用語は、1単位を含む要素及び成分及び複数のサブユニットを含む要素及び成分の両方を包含する。
【0017】
一般に、本明細書中に記載の、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学及びタンパク質及び核酸化学及びハイブリッド形成と関連して使用される命名法及びそれらの技術は当技術分野で周知であり一般に使用されるものである。本発明の方法及び技術は、一般に、別段の指示がない限り、当技術分野で周知の従来法に従い、本願を通じて引用され考察される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載のように、行われる。酵素反応及び精製技術は、当技術分野で一般に完遂されるように又は本明細書中に記載のように、製造者の仕様書に従い行われる。本明細書中に記載の、分析化学、合成有機化学及び医学及び製薬化学と関連して使用される命名法及びそれらの検査法及び技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用される。化学合成、化学分析、医薬調製、処方及び送達ならびに患者の治療に対して標準的技術が使用される。
【0018】
本発明がより容易に理解され得るように、選択した用語を下記で定義する。
【0019】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書中で使用される場合、何らかのアミノ酸のポリマー鎖を指す。「ペプチド」及び「タンパク質」という用語はポリペプチドという用語と交換可能に使用され、また、アミノ酸のポリマー鎖も指す。「ポリペプチド」という用語は、ネイティブ又は人工タンパク質、タンパク質断片及びタンパク質配列のポリペプチド類似体を包含する。ポリペプチドは単量体又はポリマー性であり得る。
【0020】
「単離タンパク質」又は「単離ポリペプチド」という用語は、誘導物のその起源又は源に基づいて、そのネイティブの状態においてそれに付随する天然に会合される成分と会合していないタンパク質又はポリペプチドであるか;同じ種由来のその他のタンパク質を実質的に含まないか;異なる種由来の細胞により発現されるか;又は天然では生じないものである。このようにして、化学的に合成されるか又はそれが天然に由来する細胞とは異なる細胞株で合成されるポリペプチドは、その天然で会合する成分から「単離」されている。タンパク質はまた、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって、天然で会合する成分を実質的に含まないようにされているものであり得る。
【0021】
「回収する」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば当技術分野で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって、ポリペプチドなどの化学種が、天然に会合する成分を実質的に含まないようにされるプロセスを指す。
【0022】
本発明の範囲内で、「受容体」という用語は、特に、可溶性であるリガンドと相互作用することができる細胞膜に結合する表面分子を指し、例えば、この相互作用の結果、例えば細胞の内部に対するシグナル(又はシグナルカスケード(「シグナル伝達」とも呼ばれる。))を引き起こすことができる。
【0023】
「リガンド」は、天然、即ちインビボで生成されるか又は合成される、「受容体」に対する、低分子又は高分子結合パートナーを指す。リガンドは、好ましくは細胞外環境で自由に移動することができる。
【0024】
「免疫原」は、免疫原に対する抗体の形成を誘導するのに適切な、グリコシル化されているか又はグリコシル化されていない形態の本発明によるペプチド断片を指す。(ハプテンの形態の)免疫原の高分子基質への結合は有利であり得る。
【0025】
「エピトープ」又は抗原決定基は、抗体特異性を決定する、例えばタンパク質などの抗原の領域を指す。このエピトープがタンパク質のセグメントで新規に形成されるか又は例えば、タンパク質とリガンドの相互作用などの外部影響の結果として、接触可能な分子表面で発現される場合、これは特に「ネオエピトープ」と呼ばれ、「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリン又はT細胞受容体に特異的に結合することができるあらゆるポリペプチド決定基を含む。ある実施形態において、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニルなどの分子の化学的活性表面基を含み、ある実施形態において、特異的な三次元構造特性及び/又は特異的電荷特性を有し得る。エピトープは、抗体が結合する抗原の領域である。ある実施形態において、抗体は、タンパク質及び/又は巨大分子の複雑な混合物中で抗体がその標的抗原を選択的に認識する場合、抗原に特異的に結合すると言われる。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「中和する」という用語は、結合タンパク質が標的タンパク質に特異的に結合する場合、標的タンパク質の生物学的活性の中和を指す。好ましくは、結合タンパク質を中和することは、RGM A、B又はC分子への結合の結果、前記RGM分子の生物学的活性の阻害が起こる抗体を中和することである。好ましくは、中和結合タンパク質は、RGMに結合し、少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%以上、RGMの生物学的活性を低下させる。中和結合タンパク質によるRGMの生物学的活性の阻害は、当技術分野で周知のRGMの生物学的活性の1以上の指標を測定することにより評価され得る。
【0027】
「活性」という用語は、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性(例えばRGM抗原に結合する抗RGM抗体)及び/又は抗体の中和能(例えば、RGM Aへのその結合によりRGM Aの生物学的活性が阻害される、抗RGM A抗体)などの活性を含む。
【0028】
タンパク質又は抗体の「ドメイン」は、例えばα−ヘリックス及び/又はβシートエレメントなどの構造エレメントによって形成される、タンパク質内で区切られる複雑な構造を指す。
【0029】
別段の指示がない限り、「本発明によるRGMタンパク質」という用語は、BMP結合ドメインならびにポリペプチド、それらからの誘導体、RGM分子のファミリーメンバー、特にRGM A、B及びCを包含する。特に、BMPシグナル伝達経路を「刺激する」機能的ポリペプチド断片が含まれる。本発明によるポリペプチドはまた、「阻害性活性のある」ポリペプチド、特にネオゲニンに結合するもの、又は神経線維成長を阻害する活性を有するものも包含し得る。(本明細書中に記載の神経突起成長試験によって明らかにされる。)。
【0030】
本発明によるドメイン又はポリペプチドの「結合」は、例えばBMP又はネオゲニンなどの結合パートナーとの何らかのタイプの場合によっては時間の関数として限定される相互作用として最も広い意味で理解される。結合は、特異的又は非特異的、好ましくは特異的であり得る。このような結合は、本明細書中の実験セクションに記載の結合試験などの適切な結合アッセイを用いて検出される。特に、本発明によるドメイン又はポリペプチドは、例えばイオン性及び/又は疎水性相互作用などの共有又は非共有相互作用を形成することによって、特定の結合パートナーと接触させられ得る。特に、相互作用は、生物学的機能(例えば第三のパートナーとの結合パートナーの相互作用)などの結合パートナーが介在する特徴を促進するか又は部分的もしくは完全に阻害するように、調節する、即ち正又は負の影響を与えるのに十分であり得る。
【0031】
本発明による結合は、特に、様々な結合パートナー又は様々な結合パートナークラスの量が数的に制限される場合、「特異的」である。特に、この結合は、10(例えば1、2、3、4又は5など)を超えるの様々な結合パートナー又は様々な結合パートナークラスとは起こりえない。例えば、BMPは、結合パートナークラスを表す。複数の結合パートナーと相互作用が起こるが、その相互作用が、結合パートナーの限られた数とのみ上記の意味で生物学的機能に影響を及ぼすのに十分な強度を有する場合、特異性が同様に存在する。例えば、特にBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12から選択される少なくとも1つのBMPを含有する本発明によるドメイン又はポリペプチドが特にBMP−2及び/又はBMP−4に結合し;及び/又はネオゲニンに結合する場合、特異性が存在する。
【0032】
「阻害する」又は「阻害性活性」ポリペプチドは、本明細書中に記載の神経細胞成長試験における神経細胞の成長を低下させるか又は完全に阻害するものである。
【0033】
上述の「刺激する」及び「阻害性」活性は、ある一定のポリペプチドに対して独立して互いに特定化され得るが;しかし、BMPシグナル経路「刺激性」活性が常に存在し、神経細胞成長「阻害性」活性が存在するのは場合によるものであることが好ましい。
【0034】
「BMPシグナル伝達」刺激性活性は、BMP−2、−4、−5、−6及び−12から選択される少なくとも1つのBMPタンパク質により引き起こされ得る活性である。この刺激性活性は、本明細書中に記載のインビトロ結合試験により明らかにされる本発明によるBMP結合ポリペプチドが、BMP−2、−4、−5、−6及び−12から選択される少なくとも1つのBMP分子と相互作用する場合、存在する。
【0035】
別段の指示がない限り、「RGM」は、RGM A、B及びC、特にRGM Aを表す。
【0036】
「ネオゲニン」及び「ネオゲニン受容体」は同義語であり、特に、哺乳動物ネオゲニン、特にヒトネオゲニンを指す。
【0037】
別のアミノ酸配列とのBMP結合ドメイン又はBMP結合ポリペプチドの「機能的連結」は、特に、共有、例えば、BMP−2、−4、−5、−6及び−12及び/又はネオゲニンから選択される少なくとも1つのBMP分子へのドメイン又はポリペプチドの結合を可能にするペプチド性結合として理解されたい。「制御する(regulate)」及び「調節する(modulate)」という用語は交換可能に使用され、本明細書中で使用される場合、関心のある分子の活性(例えばRGM Aの生物学的活性)の変化又は変更を指す。調節は、関心のある分子のある種の活性又は機能の大きさの向上又は低下であり得る。分子の代表的な活性及び機能には、以下に限定されないが、結合特性、酵素活性、細胞受容体活性化及びシグナル伝達が含まれる。
【0038】
相応して、「調節物質」という用語は、本明細書中で使用される場合、関心のある分子の活性又は機能を変化又は変更させることができる化合物である(例えばRGM Aの生物学的活性)。例えば、調節物質は、その調節物質の非存在下で観察される活性又は機能の大きさと比較して、分子のある種の活性又は機能の大きさを向上又は低下をさせ得る。ある実施形態において、調節物質は阻害剤であり、これは、分子の少なくとも1つの活性又は機能の大きさを低下させる。代表的な阻害剤には、以下に限定されないが、タンパク質、ペプチド、抗体、ペプチボディ、炭水化物又は低分子の有機分子が含まれる。ペプチボディは例えば国際出願公開WO01/83525に記載されている。
【0039】
「アゴニスト」という用語は、本明細書中で使用される場合、関心のある分子と接触した場合に、アゴニストの非存在下で観察される活性又は機能の大きさと比較して、分子のある種の活性又は機能の大きさを向上させる調節物質を指す。関心のある特定のアゴニストには、以下に限定されないが、RGM Aポリペプチド又は、RGM Aに結合する、ポリペプチド、核酸、炭化水素又は何らかのその他の分子が含まれ得る。
【0040】
「アンタゴニスト」又は「阻害剤」という用語は、本明細書中で使用される場合、関心のある分子と接触した場合に、アンタゴニストの非存在下で観察される活性又は機能の大きさと比較して、分子のある種の活性又は機能の大きさを低下させる調節物質を指す。関心のある特定のアンタゴニストには、RGM Aの生物学的又は免疫学的活性を阻止又は調節するものが含まれる。RGM Aのアンタゴニスト及び阻害剤には、以下に限定されないが、RGM Aに結合する、タンパク質、核酸、炭化水素又は何らかのその他の分子が含まれ得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という用語は、疾患又はその1以上の症候の、重症度及び/又は持続時間を低下させるか又は改善するか、疾患の進行を予防するか、疾患の軽減を引き起こすか、疾患に付随する1以上の症候の再発、発現、発症もしくは進行を予防するか、疾患を検出するか、又は別の治療薬(例えば予防薬又は治療薬)の予防的もしくは治療的効果を促進もしくは向上させるのに十分である治療薬の量を指す。
【0042】
「試料」という用語は、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用される。「生体試料」とは、本明細書中で使用される場合、以下に限定されないが、生物由来の又は死亡した生物由来の物質の何らかの量が含まれる。このような生物には、以下に限定されないが、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギ及びその他の動物が含まれる。このような物質には、以下に限定されないが、血液、血清、尿、滑液、細胞、器官、組織、骨髄、リンパ節、脳脊髄液及び脾臓が含まれる。
【0043】
II.本発明の特定の主題
本発明の第一の目的は、グリコシル化又は特に非グリコシル化型における、好ましくは哺乳動物RGM由来の(例えば、ヒト、ラット又はマウス又は家禽例えばニワトリ)、骨形成タンパク質(BMP)結合ドメイン又は反発性ガイダンス分子(RGM)の結合ペプチド断片に関する。別段の指示がない限り、「結合ドメイン」という用語は、RGM由来の少なくとも1つのBMPに結合する何らかのポリペプチドを包含する。
【0044】
ある好ましい実施形態は、配列番号2に従うヒトRGM A、配列番号4に従うヒトRGM B又は配列番号6に従うヒトRGM C由来のBMP結合ドメインに関する。結合ドメインは、特に、RGMの、具体的にはvWFドメインに関してN末端の又はRGM(特にRGM Aなど)の神経線維成長阻害ドメイン(OID)に関してC末端の、アミノ酸配列範囲からの、又は配列アラインメントにより引き出され得るRGM B及びCの対応する配列範囲からの、170以下、例えば、125以下、100以下、80以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下又は10以下の好ましくは連続アミノ酸基の長さを有するアミノ酸配列を包含する。
【0045】
本発明の主題は、特に、およそ30から150連続アミノ酸基の長さを有するBMP結合ドメインならびに、異なる少なくとも1つのさらなるアミノ酸配列との機能的連結において少なくとも1つのBMP結合ドメインを含有するその機能的誘導体及び融合タンパク質に関する。
【0046】
本発明の主題は、また、配列番号7及び8に従う次の部分配列の少なくとも1つを特徴とするBMP結合ドメインにも関する:
X1C(K/R)IX2(K/R)CX3(S/T/A)(E/D)(F/Y)X4SX5T(配列番号7)
(式中、X1からX5は何らかのアミノ酸基を表す。);又は
X6CX7ALRX8YAX9CTX10RTX11(配列番号8)
(式中、X6からX11は何らかのアミノ酸基を表す。);
又は式:
(配列番号7)−Link1−(配列番号8)
の部分配列(式中、Link1は、10から45、例えば13から28の何らかの連続アミノ酸基を含有する配列番号7−及び8−架橋アミノ酸配列を表す。)。
【0047】
特に、
X1はPro又はGlnを表し、
X2はLeu又はGlnを表し、
X3はAsn又はThrを表し、
X4はVal又はTrpを表し、
X5はSer、Ala又はLeuを表し、
X6はPhe又はLeuを表し、
X7はAla、Lys又はArgを表し、
X8はSer又はAlaを表し、
X9はLeu又はGlyを表し、
X10はArg又はGlnを表し、及び/又は
X11はAla又はSerを表す。
【0048】
配列番号7の次の具体例を挙げる:
【0049】
【化1】
【0050】
配列番号8次の具体例を挙げる:
【0051】
【化2】
【0052】
Link1リンカーの次の具体例を挙げる:
【0053】
【化3】
【0054】
BMP結合ドメインの例には、配列番号2に従うアミノ酸位置30から180の範囲、配列番号4に従うアミノ酸位置80から230の範囲又は配列番号6に従うアミノ酸位置20から150の範囲のアミノ酸配列又はその機能的ネオゲニン受容体結合断片が含まれる。これらの結合ドメイン(及びそれ由来の断片)はまた、高親和性BMP結合ドメインとも呼ばれる。特に、高親和性BMP結合ドメインはまた、ネオゲニンとの高親和性相互作用も有し得、従って、高親和性ネオゲニン結合ドメインとも呼ばれ得る。一方、低親和性ネオゲニン結合ドメインの一例は、WO2007/039256(その開示は本明細書中で明示的に参照される。)に記載の配列番号2に従うRGM A断片218-284である。それらに限定されないが、例えばKD(解離定数)>1μM(例えば2から10μMなど)である場合は低親和性結合となり得;例えばKD<10nM(例えば1から9nM)である場合は高親和性結合となり得る。
【0055】
高親和性BMP結合ドメインの例は、配列番号2の次のアミノ酸配列の1つを含有するものである:
47前後から168前後もしくは41前後から168前後のアミノ酸位置
47前後から90前後もしくは41前後から90前後のアミノ酸位置又は
75前後から121前後のアミノ酸位置;
又は、配列番号4の次のアミノ酸配列の1つ:
94前後から209前後のアミノ酸位置
94前後から137前後のアミノ酸位置又は
122前後から168前後のアミノ酸位置;
配列番号6の次のアミノ酸配列の1つ:
36前後から172前後のアミノ酸位置
36前後から94前後のアミノ酸位置又は
80前後から125前後のアミノ酸位置;
又は、その機能的BMP結合断片、例えば上記配列の1つの断片(これに対して、BMP結合能(本明細書中に記載の結合試験で検出可能。)を喪失することなく、C及び/又はN末端において、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15又は20アミノ酸基が短縮され得る。)。
【0056】
本発明によるドメインのその他の具体例は、配列番号2に従う位置47前後から168前後の配列範囲からの、配列番号4に従う位置94前後から209前後の配列範囲からの、又は配列番号6に従う位置36前後から172前後の配列範囲からの、少なくとも10連続アミノ酸基、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、2、43、44又は45連続基を含有するBMP結合ドメイン又はその結合断片である。
【0057】
これは、さらに、配列番号2を参照することにより、明細書の最後に添付される表Aで例示される。
【0058】
アミノ酸位置60から120の範囲の適切な断片の例の非限定数を下記で述べる(最初及び最後のアミノ酸残基を与える。):
60−120、61−120、62−120、64−120、65−120、66−120、67−120、68−120、69−120、70−120;
60−119、61−119、62−119、64−119、65−119、66−119、67−119、68−119、69−119、70−119;
60−118、61−118、62−118、64−118、65−118、66−118、67−118、68−118、69−118、70−118;
60−117、61−117、62−117、64−117、65−117、66−117、67−117、68−117、69−117、70−117;
60−116、61−116、62−116、64−116、65−116、66−116、67−116、68−116、69−116、70−116;
60−115、61−115、62−115、64−115、65−115、66−115、67−115、68−115、69−115、70−115;
60−114、61−114、62−114、64−114、65−114、66−114、67−114、68−114、69−114、70−114;
60−90、61−90、62−90、64−90、65−90、66−90、67−90、68−90、69−90、70−90;
60−89、61−89、62−89、64−89、65−89、66−89、67−89、68−89、69−89、70−89;
60−88、61−88、62−88、64−88、65−88、66−88、67−88、68−88、69−88、70−88;
60−87、61−87、62−87、64−87、65−87、66−87、67−87、68−87、69−87、70−87;
60−86、61−86、62−86、64−86、65−86、66−86、67−86、68−86、69−86、70−119;
60−85、61−85、62−85、64−85、65−85、66−85、67−85、68−85、69−85、70−85;
60−84、61−84、62−84、64−84、65−84、66−84、67−84、68−84、69−84、70−84;
60−83、61−83、62−83、64−83、65−83、66−83、67−83、68−83、69−83、70−83;
60−82、61−82、62−82、64−82、65−82、66−82、67−82、68−82、69−82、70−82;
60−81、61−81、62−81、64−81、65−81、66−81、67−81、68−81、69−81、70−81;
60−80、61−80、62−80、64−80、65−80、66−80、67−80、68−80、69−80、70−80;
60−79、61−79、62−79、64−79、65−79、66−79、67−79、68−79、69−79、70−79;
60−78、61−78、62−78、64−78、65−78、66−78、67−78、68−78、69−78;
60−77、61−77、62−77、64−77、65−77、66−77、67−77、68−77;
60−76、61−76、62−76、64−76、65−76、66−76、67−76;
60−75、61−75、62−75、64−75、65−75、66−75;
60−74、61−74、62−74、64−74、65−74;
60−73、61−73、62−73、64−73;
60−72、61−72、62−72;
60−71、61−71;
60−70;
60−69。
【0059】
同様の断片は、同じようにして、図1の配列アラインメントに基づき、配列番号4及び配列番号6の対応する部分から誘導可能である。
【0060】
本発明のさらなる主題は、OIDに対して例えばC末端にあるBMP結合ドメインに関する(図2参照)。これらの結合ドメイン(及びそれら由来の断片)はまた低親和性BMP結合ドメインとも呼ばれるが、これは、上述の高親和性BMP結合ドメインに対するそれらの結合親和性が同等の試験条件下で低いものであり得るからである。
【0061】
従って、本発明の主題はまた、配列番号26及び27に従う次の部分配列の少なくとも1つを特徴とするBMP結合ドメインにも関する:
LX20LC(V/L)X21GCP(配列番号26)(式中、X20及びX21は何らかのアミノ酸基を表す。);又は
TAX22X23X24C(K/H)EX25(L/M)PV(E/K)DX26Y(F/Y)(Q/H)(A/S)CVFD(V/L)LX27(T/S)G(配列番号27)(式中、X22からX27は何らかのアミノ酸基を表す。);
又は式
(配列番号26)−Link2−(配列番号27)
の部分配列(式中、Link2は、10から45、例えば19前後から38の何らかの連続アミノ酸基を含有する、配列番号26及び27架橋アミノ酸配列を表す。)。
【0062】
特に、
X20は、Tyr又はGlnを表し
X21は、Arg、Asn又はGlyを表し
X22は、Arg、Asn又はValを表し、
X23は、Ala、Thr又はArgを表し
X24は、Lys、Gln又はLeuを表し
X25は、Lys又はGlyを表し
X26は、Leu、Ile又はAlaを表し、及び/又は
X27は、Thr又はIleを表す。
【0063】
配列番号26の次の具体例を挙げる:
【0064】
【化4】
【0065】
配列番号27の次の具体例を挙げる:
【0066】
【化5】
【0067】
Link2リンカーの次の具体例を挙げる:
【0068】
【化6】
【0069】
本発明による低親和性ドメインの例は、配列番号2に従う位置316前後から386前後の配列範囲からの、配列番号4に従う位置350前後から421前後の配列範囲からの、又は配列番号6に従う位置314前後から369の配列範囲からの、少なくとも10連続アミノ酸基を含有するBMP結合ドメイン又はその結合断片である。
【0070】
上述の「少なくとも10アミノ酸基を含有する結合断片」の例は、例えば、上述のペプチド又は配列範囲の1つからの、10−50、10−40、10−30、10−25、10−20又は10−15、特に10、11、12、13、14又は15連続アミノ酸基を含有するものである。
【0071】
本発明の主題は、特に、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12、特にBMP−2及び/又はBMP−4から選択される少なくとも1つのBMPに結合するBMP結合ドメイン;及びネオゲニンにも結合するBMP結合ドメインに関する。
【0072】
本発明のさらなる主題は、上記定義に従うBMP結合ドメインの抗原性ポリペプチド断片に関する。特に、免疫グロブリン分子を作製するために使用され得る及びBMP受容体分子へのRGMの結合を調節する、特に、ネオゲニンへの受容体の結合を部分的又は完全に刺激するか(agonize)又はこれに拮抗(antagonize)し、場合によっては調節する、特にこれに部分的又は完全に拮抗する、抗原性ポリペプチド断片は、本発明の主題に相当する。例として、配列番号2由来の又は同様に配列番号4又は6由来の、上記ペプチド又は添付の表Aで述べられるペプチドの1つの、少なくとも10、例えば10−30、10−25、10−20又は10−15、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45連続アミノ酸基を含有する抗原性ポリペプチド断片が挙げられる。
【0073】
本発明のさらなる主題は、RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体を作製するための、上記定義に従うBMP結合ドメインの使用又は上記定義に従うポリペプチド断片の使用に関し、この場合、抗血清又は抗体は、特に、ネオゲニン受容体に対するRGMの結合を、調節、好ましくはそれに部分的又は完全に拮抗する。
【0074】
本発明の主題はまた、診断又は治療用途に対する上記定義に従うRGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体にも関する。
【0075】
本発明のさらなる主題は、一価もしくは多価担体ポリペプチド又は第二の生物学的活性ポリペプチドから選択される第二のポリペプチドに操作可能に(即ちN又はC末端に)連結される、上記定義に従うBMP結合ドメインから選択される、少なくとも1つの第一の生物学的活性ポリペプチドを含有する融合タンパク質に関する。特に、多価担体は、特に哺乳動物からの(特にヒト免疫グロブリン由来など)、免疫グロブリンの少なくとも1つのFc又はFc’’分子を含有し、この場合、その2本のポリペプチド鎖のそれぞれは、上記定義に従う同じ又は異なるBMP結合ドメインに操作可能に連結される。
【0076】
本発明のさらなる主題は、ネオゲニンに対するRGMの結合(即ちネオゲニン受容体)を調節する、RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体を作製するための、上記定義に従うBMP結合ドメインの使用又は上記定義に従うポリペプチドの使用に関する。
【0077】
本発明の主題はまた、診断又は治療用途のための、上記定義に従うRGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体にも関する。
【0078】
本発明の主題はまた、ネオゲニン受容体(ネオゲニン)と、RGM又はRGM断片との相互作用が介在する疾病及び病期の診断又は治療用の医薬品を調製するための、上記定義に従うポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体の使用に関し、特に疾患又は病期は、
a)頭蓋骨、脳及び脊髄への機械的損傷、
b)神経変性、炎症又は自己免疫疾患から選択される慢性疾患、
c)神経再生、軸索発芽、神経突起伸展及び神経可塑性の疾患、
d)腫瘍性疾患及び腫瘍転移
から選択される。
【0079】
本発明の主題は、さらに、疾患又は病期が特に次のもの:
a)過剰な神経突起発芽及び/又は病的シナプス形成により引き起こされる精神状態及び慢性疼痛状態における神経突起生成プロセスの変化;
b)鉄代謝障害に関連する疾病;
c)骨の成長障害に関連する疾病;
d)軟骨の退行性変化に関連する疾病;
e)椎間板及び椎体への損傷に関連する疾病;
f)無秩序な無制御の細胞移動プロセスに関連する疾病
から選択される場合の、RGM又はRGM断片と関連受容体(例えば、ネオゲニン又はBMP)との相互作用の異常又は障害が介在する疾患又は病期の診断又は治療のための薬剤を調製するための、上記定義に従うBMP受容体結合ドメイン又は上記定義に従う融合タンパク質の使用に関する。
【0080】
本発明のさらなる主題は、(BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及び/又はBMP[−12]、特にBMP−2及び/又は4への結合による)BMPシグナル経路の刺激又は増幅により治療され得る疾病又は病期の診断又は治療用の、特に骨の成長障害を含む疾病の治療用の、又は骨折の治療用の薬剤を調製するための、上記定義に従うBMP結合ドメイン又はその結合断片又は上記定義に従う融合タンパク質の使用に関する。
【0081】
本発明のさらなる主題は、自己免疫疾患、特に、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、類天疱瘡、心筋ミオパチー、セリアック病、疱疹状皮膚炎、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、瘢痕性類天疱瘡、全身性硬化症(CREST症候群)、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚血管炎、デゴス病、皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、円板状紅斑性狼瘡、本態性混合性クリオグロブリン血症、線維筋痛、グッドパスチャー症候群、グレーブズ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、免疫グロブリンAニューロパシー、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、膜性糸球体腎炎、メニエール病、混合結合組織病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発筋炎、皮膚筋炎、原発性低γグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ロイター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、尋常性白斑及びウェゲナー肉芽腫症から選択されるもの;
又は脱毛性疾患、特に円形脱毛症、全頭脱毛症、全身性脱毛症、男性型脱毛症、休止期脱毛症、成長期脱毛症及び化学療法誘発脱毛症から選択されるものの、診断又は治療用の薬剤の調製のための、上記定義に従うBMP結合ドメイン又はその結合断片又は上記定義に従う融合タンパク質の使用に関する。
【0082】
本発明の主題はまた、RGM結合リガンドの検出又は同定のための標的としての、上記定義に従うBMP結合ドメインの使用にも関する。
【0083】
本発明のさらなる主題は、能動又は受動免疫付与のための免疫原としての、上記定義に従うBMP結合ドメインの使用又は上記定義に従う断片の使用に関する。
【0084】
本発明のさらなる主題は、上記定義に従うBMP結合ドメイン又は上記定義に従うポリペプチド断片の抗原量での哺乳動物の免疫付与により得ることができるポリクローナル抗血清に関する。
【0085】
本発明の主題はまた、上記定義に従うBMP結合ドメインに対するかもしくは上記定義に従うポリペプチド断片に対するモノクローナル抗体又はRGM Aへのその抗体の結合が上記で定義されるようなBMP結合ドメインにより又は上記で定義されるようなそのポリペプチド断片により調節されるモノクローナル抗RGM A抗体;又はその抗原結合断片(場合によってはヒト化形態)にも関する。本発明の主題は、
a)上記定義に従うBMP結合ドメイン、上記定義に従うポリペプチド断片又は上記定義に従う融合タンパク質、
b)上記定義に従うモノクローナル又はポリクローナル抗体
から選択される少なくとも1つの活性成分の医薬的に許容可能な担体を含有する医薬品に関する。
【0086】
本発明に従う特に適切なものは、髄腔内、静脈内、皮下(subcutaneous)、経口又は非経口、経皮、皮下(subdermal)、骨内(intraosseal)、鼻腔、体外及び吸入投与のための、医薬品である。
【0087】
本発明によるさらなる医薬品は、骨折の治療に適切であり、液体、半固形又は固形担体中の、少なくとも1つの上記定義に従うBMP結合ドメイン又は上記定義に従う融合タンパク質を含有する。
【0088】
本発明によるさらなる医薬品は、鉄代謝障害(例えば、慢性疾患に伴う貧血、若年型ヘモクロマトーシス)の治療に適切であり、液体、半固体又は固体担体中の、上記定義に従う少なくとも1つのBMP結合ドメイン又は上記定義に従う融合タンパク質を含有する。
【0089】
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つの制御核酸配列に操作可能に連結される、上記定義に従うBMP結合ドメイン、上記定義に従う融合タンパク質又は上記定義に従うポリペプチド断片に対する、少なくとも1つのコード核酸配列を含有する発現ベクターに関する。
【0090】
本発明は、さらに、次のものに関する。
【0091】
−上記定義に従う、少なくとも1つのベクターを含む組み換え微生物。
【0092】
−上記定義に従う、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株。上記定義に従うハイブリドーマ細胞株が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される。
【0093】
−上記定義に従う組み換え微生物が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される、上記定義に従うBMP結合ドメイン又は上記定義に従うポリペプチド断片もしくは融合タンパク質を産生させるための方法。
【0094】
本発明のさらなる主題は、上記定義に従うハイブリドーマ細胞株が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される、上記定義に従うモノクローナル抗体を産生させるための方法である。
【0095】
本発明のさらなる主題は、RGM受容体、特にネオゲニン、又はBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12から選択されるBMPを刺激するための医薬品を製造するための、上記定義に従うBMP結合ドメイン又は上記定義に従う融合タンパク質の使用に関する。
【0096】
最後に、本発明は、特にネオゲニンなどのRGM受容体の活性化を阻止するための医薬品を製造するための、上記定義に従うモノクローナル抗体の使用に関する。
【0097】
III.本発明を行うためのさらなる情報
1.ポリペプチド
本発明の主題は、特に、RGMファミリーのタンパク質のBMP結合ドメイン、及びこれらのドメイン由来のペプチド断片に関する。RGM A及びその結合ドメイン及びそれ由来の断片が本発明により特に詳細に調べられたが、本発明の主題はまた、相同的なタンパク質、例えば、特にRGM B及びRGM CなどのRGMファミリーの相同的なメンバーの対応するドメイン及び断片にも関する。
【0098】
本発明の範囲内で、具体的に開示されるRGMドメイン又はペプチドの「機能的同等物」又は類似体は、配列番号2、4又は6に従うタンパク質のBMP結合ドメインに対して100%未満の相同性であるポリペプチドなど、それらとは異なるが、所望の生物学的活性を有しているポリペプチドである。特に、これらの機能的同等物は、少なくとも1つのBMPと結合することができるべきであり、及び/又は本明細書に記載の結合試験において結合を示し、また、場合によっては、本明細書中に記載の神経線維成長試験で阻害効果を示し、神経繊維の増殖を統計学的に有意に(p<=0.05)、部分的又は完全に阻害する。
【0099】
本発明によると、「機能的同等物」は、特に、上述の特定の配列の配列位置の少なくとも1つにおいて、具体的に言及されるアミノ酸と異なるが、それにもかかわらず本明細書中で言及される生物学的活性の1つを有する異なる形態であるアミノ酸を含有する突然変異であると理解されたい。従って、「機能的同等物」は、1以上のアミノ酸の付加、置換、欠失及び/又は逆位を通じて得ることができる突然変異を包含し、この変化は、それらが、本発明に従う特性プロファイルを有する突然変異をもたらす限り、あらゆる配列位置において生じ得る。突然変異体と未変化ポリペプチドとの間の反応性パターンが定性的に一致する場合、特に機能的同等物が存在し、即ち、例えば、同一の生物学的効果が観察されるが、発現レベルが非常に異なっている。アミノ酸残基の適切な置換の具体例は以下の通りである。
【0100】
元の残基 置換の例
Ala Ser
Arg Lys
Asn Gln;His
Asp Glu
Cys Ser
Gln Asn
Glu Asp
Gly Pro
His Asn;Gln
Ile Leu;Val
Leu Ile;Val
Lys Arg;Gln;Glu
Met Leu;Ile
Phe Met;Leu;Tyr
Ser Thr
Thr Ser
Trp Tyr
Tyr Trp;Phe
Val Ile;Leu
【0101】
前記の意味における「機能的同等物」は、記載のペプチドの前駆体ならびにポリペプチドの機能的誘導体及び塩でもある。「塩」という用語は、本発明によるタンパク質分子のカルボキシル基の塩ならびにアミノ基の酸付加塩を意味すると理解されたい。カルボキシル基の塩は、それ自体公知の方法で調製され得、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄及び亜鉛塩、ならびに、有機塩基、例えばトリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジンなどのアミン、との塩が含まれる。酸付加塩、例えば塩酸又は硫酸などの鉱酸との塩及び酢酸及びシュウ酸などの有機酸との塩は、同様に本発明の主題である。本発明によるポリペプチドの「機能的誘導体」もまた、公知の技術を用いて、機能的アミノ酸側基、又はそのN−又はC−末端において提供され得る。このような誘導体には、例えば、カルボン酸基の脂肪族エステル、アンモニアとの、又は一級もしくは二級アミンとの反応によって得ることができるカルボン酸基のアミド;アシル基との反応によって調製される遊離アミノ基のN−アシル誘導体;又はアシル基との反応によって調製される遊離ヒドロキシ基のO−アシル誘導体が含まれる。
【0102】
言うまでもなく、「機能的同等物」にはまた、他の生物から得られるポリペプチドならびに天然の変異体も含まれる。例えば、相同配列の領域の範囲は、配列比較によって確認することができ、同等の酵素は、本発明の特定の要件に従い判定することができる。
【0103】
「機能的同等物」はまた、前記ポリペプチド配列又はそれに由来する機能的同等物の1つ、及び機能的N−又はC−末端結合においてそれらと機能的に異なる(即ち、融合タンパク質の一部の重要な相互機能障害)、少なくとも1つのさらなる異なる異種配列を有する融合タンパク質である。このような異種配列の非限定例には、酵素及び免疫グロブリンが含まれる。
【0104】
本発明により包含される「機能的同等物」には、具体的に開示されるタンパク質、即ちペプチドに対する相同体が含まれる。これらの機能的同等物は、少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%、例えば75%、又は特に少なくとも85%、例えば90%、95%又は99%の、例えば、Pearson及びLipman、Proc.Natl.Acad.、Sci.(USA)85(8)、1988、2444−2448により開発されたアルゴリズムに従い計算される、具体的に開示される配列の1つに対する相同性を有する。本発明による相同ポリペプチドの相同性のパーセンテージは、特に、本明細書中で具体的に開示されるアミノ酸配列の1つの完全長に対する、アミノ酸基の%同一性を意味する。
【0105】
別段の指示がない限り、本発明に従い、「由来する」アミノ酸配列は、最初の配列と、少なくとも80%、又は少なくとも90%、特には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の同一性を有する配列を意味する。
【0106】
2つの配列間の「同一性」又は「相同性」は、個々の配列の全長にわたるアミノ酸残基の同一性、例えば、下記のパラメータでの、クラスタル法(Higgins D.G.及びSharp P.M.、Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer.Comput.Appl.Biosci.1989、5(2):151−1)を用いたInformax(米国)のVector NTI Suite 7.1ソフトウェアを用いた比較により計算される同一性を意味する:
複数のアラインメントパラメータ
ギャップオープニングペナルティ 10
ギャップエクステンションペナルティ 10
ギャップセパレーションペナルティ範囲 8
ギャップセパレーションペナルティ 切
アラインメントディレイに対する%同一性 40
残基特異的ギャップ 切
親水性残基ギャップ 切
遷移計量 0
ペアワイズ配列パラメータ:
FASTアルゴリズム 入
K−チュプルサイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウィンドウサイズ 5
最良のダイアゴナルの数 5。
【0107】
タンパク質のグリコシル化の可能性がある場合、同等物には、グリコシル化パターンを変化させることにより得られ得る、脱グリコシル化又はグリコシル化型の、及び修飾型の、上述のタイプのタンパク質が包含される。
【0108】
本発明によるペプチドの相同体は、例えば短縮型変異体の変異体のコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって同定され得る。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素連結などにより、核酸レベルでのコンビナトリアル突然変異誘発によりペプチド変異体の多様なライブラリが作製され得る。縮重オリゴヌクレオチド配列由来の潜在的な相同体のライブラリを作製するために使用され得る多数の方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、DNA合成装置により行われ得、次いで、合成遺伝子は、適切な発現ベクターにおいて連結され得る。縮重遺伝子のセットを使用することによって、混合物において調製されるべき潜在的なタンパク質配列に対する所望のセットをコードする全ての配列を供給することが可能になる。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当業者にとって公知である(例えば、Narang、S.A.(1983)Tetrahedron 39:3;Itakuraら(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakuraら(1984)Science 198:1056;Ikeら(1983)Nucleic Acids Res.11:477)。
【0109】
2.核酸
本発明のさらなる主題は、さらに、上述のBMP結合ドメイン及びポリペプチドに対するコード核酸配列、特に、上述のペプチド断片をコードする、配列番号1、3及び5ならびにそれら由来の核酸配列又は部分配列に関する。
【0110】
本発明による核酸配列は全て(1本鎖及び2本鎖DNA及びRNA配列、例えば、cDNA及びmRNA)、例えば、二重らせんの個々に重複する相補的な核酸構造単位の断片縮合によるヌクレオチド構造単位からの化学合成などを通じてそれ自体公知である。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えばホスホラミダイト法(Voet、Voet、第2版、Wiley Press New York、896−897頁)に従い、公知のように行われ得る。合成的オリゴヌクレオチドの付加及びDNAポリメラーゼのKlenow断片及び連結反応を用いたギャップの埋め込みならびに一般的クローニング法は、Sambrookら(1989)、Molecular Cloning:A laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0111】
別段の断りがない限り、本発明に従い、「由来する」核酸配列は、最初の配列と、少なくとも80%又は少なくとも90%、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の同一性を有する配列を意味する。
【0112】
2つの核酸間の「同一性」は、核酸の各全長にわたる核酸の同一性、特に、クラスタル法(上記参照)を用いたInformax(米国)からのVector NTI Suite 7.1ソフトウェアを用いた比較により計算される同一性を意味する。
【0113】
本発明の主題はまた、上記ペプチドの1つ及びその機能的同等物をコードし、例えば人工ヌクレオチド類似体を用いて得ることができる、核酸配列にも関する。
【0114】
本発明は、本発明による、ペプチド又はその生物学的活性セグメントをコードする単離核酸分子、ならびに、例えば本発明によるコード核酸を同定又は増幅するためのハイブリッド形成試料又はプライマーとして用いられ得る核酸断片に関する。
【0115】
本発明による核酸分子はまた、コード遺伝子領域の3’及び/又は5’末端の非翻訳配列も含有し得る。
【0116】
「単離(された)」核酸分子は、その核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離され、また、組み換え技術を用いて生成される場合、他の細胞物質又は培地を基本的に含み得ないか、又は化学合成される場合、化学的前駆体又は他の化学物質を含み得ない。
【0117】
本発明による核酸分子は、分子生物学の標準的技術、及び本発明により提供される配列情報を用いて単離され得る。例えば、cDNAはハイブリッド形成試料として具体的に開示される完全配列又はそのセグメントを用い、標準的ハイブリッド形成技術(例えば、Sambrook、J.、Fritsch、E.F.及びManiatis、T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載のものなど)を用いることにより、適切なcDNAライブラリから単離され得る。さらに、この配列に基づいて作製されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により、本発明による配列又はそのセグメントの1つを含む核酸分子が単離され得る。このようにして増幅された核酸を適切なベクターにクローニングし、DNA配列分析により特徴を調べ得る。本発明によるオリゴヌクレオチドはまた、標準合成方法を用いて、例えば、DNA合成装置を用いて作製することもできる。
【0118】
本発明はまた、具体的に記載されるヌクレオチド配列に相補的である核酸分子又はそのセグメントを包含する。
【0119】
本発明によるヌクレオチド配列によって、他の細胞タイプ及び生物において、相同配列を同定及び/又はクローニングするために用いられ得る試料及びプライマーを作製することが可能となる。このような試料又はプライマーは、通常、厳密な(ストリンジェントな)条件下で、本発明による核酸配列のセンス鎖又は対応するアンチセンス鎖の少なくともおよそ12、好ましくは少なくともおよそ25、例えばおよそ40、50又は75の連続ヌクレオチドとハイブリッド形成するヌクレオチド配列領域を含む。
【0120】
本発明によるその他の核酸配列は、本発明によるRGMドメイン及びペプチドに対するコード配列に由来し、1以上のヌクレオチドの付加、置換、挿入又は欠失によりそれらとは異なるが、所望の特性プロファイルを有するペプチドをコードしている。
【0121】
本発明は、いわゆるサイレント突然変異を含むか、又は元の特定の生物又は宿主生物、ならびに天然の変異体、例えばスプライス変異又は対立遺伝子多型のコドン使用に対応して、具体的に指定される配列と比較して修飾される核酸配列も含む。本発明の主題はまた、保存的ヌクレオチド置換により得られる配列(即ち、関連するアミノ酸の、同じ電荷、大きさ、極性及び/又は溶解性のアミノ酸による置換)にも関する。
【0122】
本発明の主題はまた、配列多型による具体的に開示される核酸に由来する分子に関する。これらの遺伝的多型は、自然変動による集団内の個体間で存在し得る。これらの自然変異の結果、通常、遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の変異が起こる。
【0123】
本発明はまた、上記コード配列とハイブリッド形成するか又はそれに相補的である核酸配列も包含する。これらのポリヌクレオチドは、ゲノム又はcDNAライブラリを標本抽出することにより見出すことができ、場合によっては、適切なプライマーを用いたPCRにより増幅させ、次いで適切な試料を用いてそれから単離され得る。別の可能性は、本発明によるポリヌクレオチド又はベクターを用いた適切な微生物の形質転換、微生物の増殖及び従ってポリヌクレオチドの増殖、及び続くその単離である。本発明によるポリヌクレオチドを化学的に合成することもできる。
【0124】
ポリヌクレオチドと「ハイブリッド形成」することができる特性は、厳密な(ストリンジェントな)条件下で、基本的に相補的な配列に結合するポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの能力を意味するが、一方、これらの条件下では非相補的パートナーの間の非特異的結合が起こらない。この目的のため、配列は、70〜100%、特に90〜100%、例えば、95%、96%、97%、98%又は99%相補的であるべきである。互いに特異的に結合する相補的配列の特性は、例えば、ノーザンもしくはサザンブロッティング法において、又はPCRもしくはRT−PCRにおけるプライマー結合において用いられる。この目的のために、30塩基対の長さで始まるオリゴヌクレオチドが通常は用いられる。「厳密な(ストリンジェントな)条件下」とは、例えば、ノーザンブロッティング法においては、非特異的にハイブリッド形成するcDNA試料又はオリゴヌクレオチドを溶出するためなどの50〜70℃、好ましくは60〜65℃の温度での、例えば、0.1%SDSを含む0.1xSSCバッファー(20xSSC:3M NaCl、0.3Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)などの洗浄溶液の使用を意味する。前述したように、相補性の程度が高い核酸のみが互いに結合したままである。厳密な(ストリンジェントな)条件の設定は当業者にとって公知であり、例えば、Ausbelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.(1989)、6.3.1−6.3.6で開示されている。
【0125】
本発明のさらなる態様はアンチセンス核酸に関する。アンチセンス核酸は、コード「センス」核酸に相補的であるヌクレオチド配列を含む。アンチセンス核酸は完全なコード鎖又はその一部とのみ相補的であり得る。さらなる実施態様において、アンチセンス核酸分子は、ヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域に対してアンチセンスである。「非コード領域」という用語は5’−及び3’−非翻訳領域と呼ばれる配列部分に関する。
【0126】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、およそ5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50ヌクレオチド長であり得る。本発明によるアンチセンス核酸は、当技術分野で公知の方法を用いて、化学合成及び酵素連結反応により構築され得る。アンチセンス核酸は、天然のヌクレオチド、又は、それらが分子の生物学的安定性を向上させるか又はアンチセンスとセンス核酸との間に形成される二重鎖の物理的安定性を向上させるような配列を有する多様に修飾されたヌクレオチドを用いて化学的に合成され得る。例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン−置換ヌクレオチドが使用され得る。アンチセンス核酸を作製するために用いられ得る修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)−ウラシル、(acp3)w及び2,6−ジアミノプリンが含まれる。アンチセンス核酸はまた、核酸がアンチセンス方向にサブクローニングされた発現ベクターを用いることにより、生物学的に作製され得る。
【0127】
3.発現コンストラクト及びベクター
本発明はのさらなる主題は、調節核酸配列の遺伝子制御下での、本発明によるRGMペプチド又は機能的同等物又は免疫グロブリンをコードする核酸配列を含有する発現コンストラクト;ならびにこれらの発現コンストラクトの少なくとも1つを含むベクターに関する。
【0128】
本発明によるこのようなコンストラクトは、好ましくは、特定のコード配列からの5’−上流のプロモーター及び場合によっては3’−下流の終結配列及びその他の一般的な制御エレメントを含み、特異的に、それぞれ、コード配列に操作可能に連結される。「操作可能な連結」は、各制御エレメントが、コード配列の発現においてその機能を適正に達成することができるような、プロモーター、コード配列、終結因子及び場合によってはその他の制御エレメントの連続した配列を意味する。操作可能に連結可能な配列の例は、標的配列ならびにエンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどである。さらなる制御エレメントには、選択可能マーカー、増幅シグナル、複製起点などが含まれる。適切な制御配列は、例えば、Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。
【0129】
人工的制御配列に加え、実際の構造遺伝子の前に天然の制御配列が存在し得る。必要であれば、この天然制御は遺伝子改変によって排除することができ、遺伝子の発現が増加又は減少し得る。しかし、遺伝子コンストラクトはまた、より簡単な構造も有し得、即ち、構造遺伝子の前にさらなる制御シグナルが挿入されず、その制御とともに天然のプロモーターが除去されない。代わりに、制御が起こらずに遺伝子発現が向上又は低下するように、天然の制御配列を突然変異させる。核酸配列は、遺伝子コンストラクト中の1以上のコピーに含有され得る。
【0130】
用いられ得るプロモーターの例は、次のとおりである:グラム陰性菌において好都合に使用される、cos、tac、trp、tet、trptet、lpp、lac、lpplac、laclq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ−PR又はλ−PLプロモーター;amy及びSPO2グラム陽性菌プロモーターに加えて、ADC1、MFα、AC、P−60、CYC1又はGAPDH酵母プロモーター、植物プロモーターCaMV/35S、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33又は非植物プロモーター又はユビキチン又はファセオリンプロモーターである。誘導性プロモーター、例えば、光、及び特に、PrPlプロモーターなどの温度誘導性プロモーターの使用が特に好ましい。原則として、それらの制御配列を有する全ての天然プロモーターが使用され得る。合成プロモーターもまた有利に使用され得る。
【0131】
前記制御配列は、核酸配列の標的とされる発現及びタンパク質発現を可能にするものを意図する。宿主生物に依存して、これは、例えば、遺伝子が誘導後にのみ発現もしくは過剰発現されるか又は遺伝子が直ちに発現及び/又は過剰発現されることを意味し得る。
【0132】
制御配列又は因子は、好ましくは正方向に影響し、従って発現を増加又は低下させる。従って、制御エレメントの増強は、プロモーター及び/又はエンハンサーのような強力な転写シグナルを用いることにより、転写レベルで有利に引き起こされ得る。しかし、例えば、mRNAの安定性を向上させることにより、転写を増強させることも可能である。
【0133】
適切なプロモーターを適切なコードヌクレオチド配列及び終結シグナル又はポリアデニル化シグナルに融合することにより、発現カセットが作製される。例えば、T.Maniatis、E.F.Fritsch及びJ.Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1989)及びT.J.Silhavy、M.L.Berman及びL.W.Enquist、Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1984)及びAusubel、F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Assoc.及びWiley Interscience(1987)に記載されるように、一般的組み換え及びクローニング技術がこの目的に用いられる。
【0134】
適切な宿主生物における発現のため、組み換え核酸コンストラクト即ち遺伝子コンストラクトが、宿主における遺伝子の最適な発現を可能にする宿主特異的ベクターに有利に挿入される。ベクターは当業者にとって周知であり、例えば、「Cloning Vectors」(Pouwels P.H.ら編、Elsevier、Amsterdam−New York−Oxford、1985)に記載されている。ベクターは、プラスミドのみならず、当業者にとって公知のその他の全てのベクター、例えば、ファージ、SV40、CMV、バキュロウイルス及びアデノウイルスなどのウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミド及び直鎖又は環状DNAを意味するものと理解されたい。これらのベクターは、宿主生物における自発的複製又は染色体複製を受け得る。
【0135】
適切な発現ベクターの例は次のとおりである:
グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE−結合タンパク質又はプロテインAが組み換え標的タンパク質に融合させられる、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith、D.B.及びJohnson、K.S.(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New Engl及びBiolabs、Beverly、MA)及びpRIT5(Pharmacia、Piscataway、NJ)などの従来の融合発現ベクター、
pTrc(Amannら(1988)Gene 69:301−315)及びpET 11d(Studierら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、California(1990)60−89)などの非融合タンパク質発現ベクター、
pYepSec1(Baldariら(1987)Embo J.6:229−234)、pMFa(Kurjan及びHerskowitz(1982)Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultzら(1987)Gene 54:113−123)及びpYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、CA)などのS.cerevisiae(S.セレビシエ)酵母における発現のための酵母発現ベクターである。糸状菌などのその他の真菌において用いるのに適切なベクター及びベクター構築法は、van den Hondel、C.A.M.J.J.及びPunt、PJ.(1991)「Gene transfer Systems and vector development for filamentous fungi」、Applied Molecular Genetics of Fungi、J.F.Peberdyら編、p.1−28、Cambridge University Press:Cambridgeに詳細に開示されるものを含む。
【0136】
培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)でのタンパク質の発現を可能にするバキュロウィルスベクターには、pAcシリーズ(Smithら(1983)Mol.Cell Biol.3:2156−2165)及びPVLシリーズ(Lucklow及びSummers(1989)Virology 170:31−39)が含まれる。
【0137】
Becker、D.、Kemper、E.、Schell、J.及びMasterson、R.(1992)「New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border」、Plant Mol.Biol.20:1195−1197;及びBevan、M.W.(1984)「Binary Agrobacterium vectors for plant transformation」Nucl.Acids Res.12:8711−8721)に詳細に開示されるものなどの植物発現ベクター。
【0138】
pCDM8(Seed、B.(1987)Nature 329:840)及びpMT2PC(Kaufmanら(1987)EMBO J.6:187−195)などの哺乳動物発現ベクター。
【0139】
原核及び真核細胞に対するさらなる適切な発現系は、Sambrook、J.、Fritsch、E.F.及びManiatis、T.、Molecular cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989の第16及び17章に記載されている。
【0140】
4.組み換え宿主生物
本発明によるベクターの使用により、例えば、本発明による少なくとも1つのベクターを用いて形質転換された組み換え生物を生成させ得、本発明によるドメイン又はポリペプチドを生成させるために使用し得る。本発明による上述の組み換えコンストラクトは、適切な宿主系に有利に導入され発現される。特定の発現系において前記の核酸の発現を誘発するために、当業者にとって公知の一般的なクローニング及び遺伝子移入法、例えば、共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルス遺伝子移入などが、好ましくは用いられる。適切な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology、F.Ausubelら編、Wiley Interscience、New York 1997又はSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載されている。
【0141】
原則として、適切な宿主生物は、本発明による核酸、その対立遺伝子多型、その機能的同等物又は誘導体を発現することができる全ての生物である。「宿主細胞」は、例えば、細菌、真菌、酵母又は植物もしくは動物細胞を意味するものと理解されたい。好ましい生物は、例えば、大腸菌などのエシェリキア属、ストレプトミセス属、バチルス属又はシュードモナス属などの細菌、サッカロミセス・セレビシエ、アスペルギルス属などの真核微生物、例えばSf9、CHO又はHEK293細胞などの、動物又は植物由来の高等真核細胞である。
【0142】
首尾よく形質転換された生物は、ベクター又は発現カセット中に同様に含有されるマーカー遺伝子の使用によって選択され得る。このようなマーカー遺伝子の例は、抗生物質耐性に対する遺伝子及び発色反応を触媒し、形質転換細胞の染色を生じる酵素に対する遺伝子である。次いで、これらのマーカー遺伝子は、自動細胞選別を用いて選択され得る。対応する抗生物質耐性遺伝子(例えばG418又はハイグロマイシン)を有するベクターで首尾よく形質転換された微生物は、適切な抗生物質を含有する培地又は培養液を用いて選択され得る。細胞表面に提示されるマーカータンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーを用いた選択に使用され得る。
【0143】
必要に応じて、遺伝子産物はまた、例えば、特にマウス、ヒツジなどの遺伝子移入動物、又は遺伝子移入植物などの遺伝子移入生物中で発現させられ得る。
【0144】
本発明のさらなる主題は、ペプチド産生組み換え宿主生物が培養され、場合によってはポリペプチドの発現が誘導され、これらのポリペプチドが培養物から単離される、本発明によるRGMドメイン又はポリペプチド、又はその機能的、生物学的活性断片の組み換え産生法に関する。必要に応じて、ペプチドは、この方法により工業的スケールで作製することもできる。
【0145】
組み換え宿主は、公知の方法に従い培養し発酵させ得る。細菌は、例えば、TB又はLB培地中で、20から40℃の温度及び6から9のpHで、増殖させ得る。適切な培養条件は、例えば、T.Maniatis、E.F.Fritsch及びJ.Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1989)で詳細に記載されている。
【0146】
ポリペプチドが培地中に分泌されない場合、細胞を破壊し、公知のタンパク質単離方法により溶解物から生成物が回収される。細胞は、場合によっては、高周波数超音波、高圧により(例えばフレンチプレッシャーセルを用いて)、浸透圧溶解により、界面活性剤、溶解酵素又は有機溶媒の作用を通じて、均質化により、又は上記方法のいくつかの組み合わせにより破壊され得る。
【0147】
ペプチドは、例えば、Q−セファロースクロマトグラフィーなどの分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性クロマトグラフィーなどの公知のクロマトグラフィー法及び、超遠心、結晶化、塩析、透析及び非変性ゲル電気泳動などのその他の通常の方法によって精製され得る。適切な方法は、例えば、Cooper、F.G.、Biochemische Arbeitsmethoden[Biochemical procedural methods]、Verlag Walter de Gruyter、Berlin、New York又はScopes、R.、Protein Purification、Springer Verlag、New York、Heidelberg、Berlinに記載されている。
【0148】
組み換えペプチドの分離のために、例えば、ある種のヌクレオチド配列によりcDNAを伸長し、それによって修飾ポリペプチド又は融合タンパク質(精製を容易にするために使用される。)をコードする、ベクター系又はオリゴヌクレオチドを使用することが特に適切である。この適切な修飾の例は、例えば、ヘキサ−ヒスチジンアンカーとして知られる修飾、又は抗体の抗原として同定され得るエピトープなどのアンカーとして作用する、いわゆるタグである(例えば、Harlow、E.及びLane、D.、1988、Anbitodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor(N.Y.)Pressに記載)。これらのアンカーは、クロマトグラフィーカラム中に充填され得るポリマーマトリクスなどの固定基質にペプチドを付着させるために使用し得るか、又は、マイクロタイタープレート又は何らかのその他の基質上で使用され得る。
【0149】
同時に、これらのアンカーは、ペプチドの同定のために使用され得る。ペプチドの同定の場合、蛍光色素などの従来のマーカー、基質との反応後に検出可能な反応生成物を形成する酵素マーカー又は放射標識マーカーを、単独で又はペプチドの誘導体化のためのアンカーと組み合わせて、使用し得る。
【0150】
5.免疫グロブリン
5.1定義
本発明の主題は、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物と特異的に結合するモノクローナル又はポリクローナル抗体、即ち、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対して特異性を有する抗体に関する。本発明の主題は、さらに、これらの抗体の一部、特にその抗原結合部位、即ち、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物と結合する抗体断片に関する。
【0151】
本発明による抗体は、好ましくは、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異的結合に対する特定の結合キネティクス(例えば、高親和性、低解離、低解離速度(koff)、強い中和活性)を有するように選択される。
【0152】
従って、本発によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対し、KD=10−6から10−12Mの範囲の親和力を有する抗体が提供され得る。
【0153】
さらなる態様によると、本発明による抗体は、0.1s−1以下のkoff速度定数でRGMタンパク質又はその誘導体/同等物にそれらが結合するように選択され得る。
【0154】
抗体は好ましくは単離抗体である。さらなる態様によると、抗体は中和抗体である。本発明による抗体には、特にモノクローナル及び組み換え抗体が含まれる。本発明による抗体は、完全に単一の種に由来し、従って例えばヒト抗体はラット抗体又はマウス抗体であり得るアミノ酸配列を含有し得る。さらなる実施態様によると、抗体は、キメラ抗体又はCDRグラフト抗体又はヒト化抗体のその他の形態でもあり得る。
【0155】
「抗体」という用語は、4本のポリペプチド鎖、即ち2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖から形成される免疫グロブリン分子を指す。この鎖は、通常、ジスルフィド結合によって互いに連結される。各重鎖は、この鎖の可変領域(本明細書においてHCVR又はVHと略される。)及び重鎖の定常領域から構成される。重鎖の定常領域は、3個のドメイン、CH1、CH2及びCH3から形成される。各軽鎖は、軽鎖の可変領域(本明細書においてLCVR又はVLと略される。)及び軽鎖の定常領域からなる。軽鎖の定常領域は、CLドメインから形成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分割され得、フレームワーク領域と呼ばれる保存領域(FR)が散在する。各VH及びVL領域は、3個のCDR及び4個のFRから形成され、N末端からC末端に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置される。
【0156】
抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対して特異性を有し、抗体の1以上の断片(断片は、RGMタンパク質又はその誘導体/同等物に特異的に結合する能力を有し続けている。)を指す。抗体の抗原結合機能が、完全抗体の断片から確認され得ることが分かった。抗体の「抗原結合部分」という用語の意味における結合断片の例は、(i)Fab断片、即ち、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、即ち、ジスルフィド架橋を介してヒンジ領域において互いに連結される2つのFab断片を含有する二価の断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメイン又はVH、CH1、CH2、DH3又はVH、CH2、CH3からなるdAb断片(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)である。Fv断片の2つのドメイン、即ちVL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされ、それらは、組み換え法に従う合成リンカーを用いて一緒に連結され得るが、この方法においては、VL及びVH領域が一価の分子を形成するために一緒に存在する場合に、単一のタンパク質鎖として産生され得る(単一鎖FV(ScFv)として知られる。例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照のこと。)。このような1本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される。「ダイアボディ」などの1本鎖抗体のその他の形態は、同様にその中に含まれる。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現され(2つのドメインが同じ鎖上で一緒に存在するには短すぎるリンカーを用いる場合を除く。)、それにより、これらのドメインが他の鎖の相補性ドメインと対形成させられ、2つの抗原部位が形成される、2価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger、P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;Poljak、R.J.ら(1994)Structure 2:1121−1123を参照)。
【0157】
さらに、抗体又はその抗原結合部分は、大きな免疫付着分子の一部であり得、これは、1以上のさらなるタンパク質又はペプチとの抗体又は抗体部分の共有又は非共有結合により形成される。このような免疫付着分子は、4量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用を含み(Kipriyanov、S.M.ら(1995)「Human Antibodies and Hybridomas」6:93−101)、二価及びビオチニル化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC−末端ポリヒスチジンタグの使用を含む(Kipriyanov、S.M.ら(1994)Mol.Immunol.13:1047−1058)。
【0158】
Fab及びF(ab’)2断片などの抗体部分は、パパイン又はペプシンを用いた消化などの従来の技術を用いることにより、全抗体から作製され得る。標準化組み換えDNA技術を用いることにより、抗体、抗体部分及び免疫付着分子を得ることもできる。「本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異性を有する単離抗体」は、基本的に異なる抗原特異性を有するその他の抗体を含まない、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異性を有する抗体を包含する。
【0159】
「中和抗体」という用語は、特定の抗原に対するその結合の結果、抗原の生物学的活性が阻害される抗体を表す。この、抗原の生物学的活性の阻害は、適切なインビトロ又はインビボアッセイを用いて、抗原の生物学的活性に対する1以上の指標を測定することにより評価され得る。
【0160】
「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマに由来する抗体(例えば、Kohler及びMilsteinによる標準化ハイブリドーマ法などのハイブリドーマ技術を用いて作製されるハイブリドーマにより分泌される抗体)を指す。従って、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異性を有し、ハイブリドーマに由来する抗体はモノクローナル抗体と呼ばれる。
【0161】
「組み換え抗体」という用語は、組み換え手段を用いて、発現、生成又は単離される抗体、例えば、宿主細胞に遺伝子移入される組み換え発現ベクターを使用して発現される抗体;組み換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離される抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子を用いて遺伝子導入された動物(例えば、マウス)から単離される抗体(例えば、Taylor、L.D.ら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295参照);又は特定の免疫グロブリン遺伝子配列(ヒト免疫グロブリン遺伝子配列など)がその他のDNA配列と組み合わせられる、何らかのその他の方法において、発現、生成又は単離される抗体を表す。組み換え抗体には、例えば、キメラ、CDRグラフト及びヒト化抗体が含まれる。
【0162】
「ヒト抗体」という用語は、例えばKabatらにより記載されるものなど、その可変及び定常領域が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に対応するか又はそれに由来する抗体を指す(Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242参照)。しかし、本発明によるヒト抗体は、例えば、CDR及び特にCDR3において、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸基を含有し得る(例えば、インビトロでの無作為もしくは部位特異的突然変異誘発又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)。本発明による組み換えヒト抗体は、可変領域を有し、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する定常領域を含有し得る(Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242を参照のこと。)。しかし、ある実施態様によると、このような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列のVH及びVL配列に関連するか又はそれらに由来するにしても組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列がインビボにおけるヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内で天然に存在しない配列であるように、インビトロにおける突然変異誘発を受ける(又はヒトIg配列のために遺伝子導入される動物が用いられる場合、体細胞に対してインビボ突然変異誘発が行われる。)。ある実施態様によると、このような組み換え抗体は、選択的変異誘発又は復帰突然変異又はその両方の結果である。
【0163】
「復帰突然変異」という用語は、ヒト抗体の体細胞突然変異アミノ酸のいくつか又は全てが、相同的な生殖細胞系列抗体配列の対応する生殖細胞系列残基により置換される方法を指す。最大の相同性を有する配列を同定するために、本発明によるヒト抗体の重鎖及び軽鎖に対する配列をVBASEデータベースの生殖細胞系列配列と別個に比較する。本発明によるヒト抗体における相違は、このような異なるアミノ酸をコードする定義されたヌクレオチド位置において突然変異させることによる生殖細胞系列配列に起因する。抗原結合に対する復帰突然変異のための候補としてこのように同定される各アミノ酸の直接的又は間接的重要性を調べ、変異後にヒト抗体の所望の特性を損なうアミノ酸は、最終的ヒト抗体に含めない。復帰突然変異のためのアミノ酸の数を最小限に留めるために、それらが次の生殖細胞系列配列とは異なるが、第二の生殖細胞系列の対応するアミノ酸配列と同一であるアミノ酸位置は不変のままであり得る(ただし、第二の生殖細胞系列配列は、本発明によるヒト抗体の配列に対して、問題となるアミノ酸の両方の側で、少なくとも10個、好ましくは12個のアミノ酸と、同一であり、同一線上である。)。復帰突然変異は、抗体最適化のあらゆる段階で行い得る。
【0164】
「キメラ抗体」という用語は、分子の個別の部分が異なる種由来である抗体を包含する。従って、キメラ抗体は、それらに限定されないが、例えば、1つの種由来の重鎖及び軽鎖の可変領域に対する配列を含有し、VH及び/又はVL由来のCDR領域の1以上の配列が別の種のCDR配列により置換される抗体である。このような抗体は、マウス由来の重鎖及び軽鎖の可変領域を含有し得、マウスCDR(例えばCDR3)の1以上がヒトCDR配列により置換される。
【0165】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ)由来の重鎖及び軽鎖の可変領域配列を含有する抗体を表すが、しかし、ここで、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部が、「ヒト様」になるように修飾されており、即ち、ヒト生殖細胞系列の可変領域により類似するように修飾されている。ヒト化抗体のあるタイプは、非ヒトVH及びVL配列にヒトCDR配列を挿入することによって対応する非ヒトCDR配列が置換されるCDRグラフト抗体である。
【0166】
抗体の結合反応速度を測定するためのある方法は、いわゆる表面プラズモン共鳴に基づく。「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBiaコアシステムを用いて、バイオセンサーマトリックスを用いたタンパク質濃度における変化を検出することにより、分析されるべき生物特異的相互作用を解析することを可能にする光学現象を指す(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden及びPiscataway、NJ)。さらなる情報については、Jonsson、U.ら(1993)Ann.Biol.Clin.51:19−26;Jonsson、U.ら(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnsson、B.ら(1995)J.Mol.Recognit.8:125−131;及びJohnnson、B.ら(1991)Anal.Biochem.198:268−277)を参照のこと。
【0167】
「Koff」という用語は、抗体/抗原複合体由来の抗体の解離についての解離速度定数を表す。
【0168】
「Kd」という用語は、ある種の抗体−抗原相互作用の解離定数を表す。
【0169】
本発明による抗体の結合親和性は、ELISA又はBiacore分析などの、標準化インビトロ免疫アッセイを用いることにより評価され得る。
【0170】
5.2 免疫グロブリンの作製
5.2.1 ポリクローナル抗体の作製
本発明は、本発明によるRGMドメイン及びポリペプチドに対するポリクローナル抗体、及びその作製に関する。
【0171】
この目的のため、本発明による少なくとも1つのRGMタンパク質又は誘導体/同等物で宿主に免疫付与し、免疫に対する反応としての抗体含有血清を宿主から回収する。
【0172】
用いられるべきRGMポリペプチドが免疫原性を有しないか免疫原性が弱い場合、それらの免疫原性は、担体、好ましくはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、リムラス・ポリフェムスヘモシアニン(LPH)、ウシ血清アルブミン(BSA)又はオボアルブミン(OVA)などの担体タンパク質とそれらをカップリングすることによって向上させ得る。一般に公知である多くのカップリングの選択肢が当業者にとって利用可能である。例えば水又は水性溶媒中で適切なペプチド又はペプチド混合物とRGMタンパク質を温置することによる、例えば、グルタルアルデヒドとの反応が実際的であり得る。この反応は、好都合に、大気温度(通常は室温を意味する。)で行われ得る。しかし、冷却又は穏やかな加熱を行うことは有用であり得る。この反応により、通常、数時間以内に所望の結果が得られ、例えば、2時間の反応時間は標準的な範囲である。グルタールアルデヒド濃度は通常、ppmから%の範囲であり、有利には10ppmから1%、好ましくは100ppmから0.5%である。反応パラメータの最適化は当業者の範囲内である。
【0173】
抗原に加え、組成物は通常、さらに補助物質、特に免疫化に通常用いられるアジュバント、例えば、フロイントのアジュバントを含有する。特に、最初の免疫付与に対してフロイントの完全アジュバントが用いられるが、一方、全てのさらなる免疫付与は、フロイントの不完全アジュバントを用いて行われる。免疫付与カクテルは、補助物質に対して抗原(免疫原)を好ましくは前述の成分混合物の形態で添加することにより調製される。この場合、通常、抗原は乳化される。
【0174】
げっ歯類又はウサギは特に宿主として適している。これらの、又はその他の適切な宿主に、免疫付与カクテルを好ましくは皮下注射する。抗体力価は免疫アッセイを用いて、例えば、宿主IgGに対するヒツジ抗血清及び標識されたRGMタンパク質を用いて競合的に測定することができる。従って、免疫付与終了時に、ある種の宿主が抗体回収に適しているか否かについて判定し得る。例えば、4回の免疫付与が行われる場合、3回目の免疫付与後に抗体力価を測定し、十分な抗体力価を示す動物から抗体を回収することができる。
【0175】
産生された抗体を回収するために、数週間又は数ヶ月にわたり、好ましくは宿主から採血する。次いで、宿主から全採血され得る。このように回収された血液から、所望の抗体を含有する血清をそれ自体公知の方法で回収し得る。その中に含有される抗体画分、特にRGMタンパク質認識抗体を濃縮するために、必要に応じて、この方法により得られた全血清を、当業者に公知の方法でさらに精製し得る。
【0176】
本発明の特定のある特定の実施態様によると、免疫原として用いられるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物を特異的に認識する血清から、少なくとも1種の抗体が選択される。これに関連し、「特異性」とは、特に免疫原関連であるその他のタンパク質に対するよりも免疫原に対して抗体の結合親和性がより高いことを意味する。
【0177】
5.2.2 モノクローナル抗体の作製
本発明により使用され得る免疫グロブリンは、それ自体公知の方法を用いて得ることができる。従って、ハイブリドーマ技術によって、関心のある抗原に対して単一特異性抗体を作製することが可能になる。さらに、抗体ライブラリのインビトロスクリーニングなどの組み換え抗体技術が開発され、これにより、このような特異抗体が同様に産生される。
【0178】
従って、例えば、関心のある抗原を有する動物に免疫付与し得る。このインビボアプローチはまた、動物のリンパ球又は脾臓細胞由来の一連のハイブリドーマを確立し、抗原に特異的に結合するある抗体を分泌するハイブリドーマを選択することもまた含み得る。免疫付与される動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ又はヒツジであり得るか、又は前記動物のトランスジェニック型、例えば、抗原刺激後にヒト抗体を産生するヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスであり得る。免疫付与され得る動物のその他のタイプには、ヒト末梢血単核球を用いるか(キメラhu−PBMC−SCIDマウス)又はリンパ球もしくはその前駆体を用いて再構成された重症複合型免疫不全症(SCID)罹患マウスならびに致死量で全身照射され、次いで重症複合型免疫不全症(SCID)罹患マウス由来の骨髄細胞を用いて放射線から保護し、次いで機能的ヒトリンパ球を移植したマウス(いわゆるトリメラ系)が含まれる。免疫付与されるべきさらなる動物のタイプは、そのゲノムにおいて、関心のある抗原をコードする内在性遺伝子が、抗原を用いて免疫付与した後にこの動物が抗原を外来物質として認識するように、例えば相同組み換えにより、排除されている(ノックアウト)動物(例えばマウス)である。この方法により作製されるポリクローナル又はモノクローナル抗体が、以下に限定されないがELISA技術を含む公知のスクリーニング方法を用いることにより特徴が調べられ、選択されることは当業者にとって明らかである。
【0179】
さらなる実施態様によると、抗原を用いて組み換え抗体ライブラリをスクリーニングする。組み換え抗体ライブラリは、例えば、バクテリオファージの表面、酵母細胞の表面又は細菌細胞の表面で発現され得る。組み換え抗体ライブラリは、例えばscFvライブラリ又はFabライブラリであり得る。さらなる実施態様によると、抗体ライブラリは、RNA−タンパク質融合物として発現され得る。
【0180】
本発明による抗体の産生のためのさらなるアプローチは、インビボ及びインビトロのアプローチの組み合わせを含む。例えば、インビボにおいて動物に抗原で免疫付与し、次いで、インビトロで抗原を用いて、動物のリンパ球細胞から産生された組み換え抗体ライブラリ、又は単一ドメイン抗体ライブラリ(例えば、重鎖及び/又は軽鎖を用いて)をスクリーニングすることにより、抗体レパートリー上で抗原が作用し得る。別のアプローチによると、インビボで動物に抗原で免疫付与し、次いで動物のリンパ球細胞から作製された組み換え抗体ライブラリ又は単一ドメイン抗体ライブラリを親和性成熟に供することによって、抗原が抗体レパートリーにおいて作用し得る。別のアプローチによると、インビボにおいて動物に抗原で免疫付与し、次いで、関心のある抗体を分泌する個々の抗体産生細胞を選択し、これらの選択された細胞から重鎖及び軽鎖の可変領域に対するcDNAを回収し(例えば、PCRを用いる。)、哺乳動物宿主細胞内でインビトロで重鎖及び軽鎖の可変領域を発現させ(リンパ球−抗体選択法、又はリンパ球抗体選択法(SLAM)と呼ばれる。)、選択された抗体遺伝子配列をさらに選択し、操作することにより、抗原が抗体レパートリーにおいて作用し得る。さらに、モノクローナル抗体は、哺乳動物細胞内で重鎖及び軽鎖に対する抗体遺伝子を発現させ、所望の結合親和性を有する抗体を分泌する哺乳動物細胞を選択することによる発現クローニングによって、選択され得る。
【0181】
本発明によると、定義された抗原は、RGM結合ドメイン又はポリペプチドの形態で、スクリーニング及びカウンタースクリーニングに対して提供される。従って、本発明によると、上記で定義されるような本発明に従う所望の特性プロファイルを有するポリクローナル及びモノクローナル抗体が選択され得る。
【0182】
本発明に従う方法を使用して、様々なタイプの抗体を作製し得る。これらには、基本的にヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びCDRグラフト抗体ならびにそれらの抗原結合部分が含まれる。
【0183】
本発明による抗体を作製するための方法を特に以下に記載する。この点について、インビボでのアプローチ、インビトロでのアプローチ又は両者の組み合わせを分ける。
【0184】
インビボでのアプローチ:
インビボで作製される抗体産生細胞から開始し、元々Kohler及びMilsteinにより記載されたハイブリドーマ技術などの標準化技術を用いて、モノクローナル抗体が作製され得る(1975、Nature 256:495−497)(Brownら(1981)J.Immunol 127:539−46;Brownら(1980)J Biol Chem 255:4980−83;Yehら(1976)PNAS 76:2927−31;及びYehら(1982)Int.J.Cancer 29:269−75を参照のこと。)。モノクローナル抗体ハイブリドーマを作製するための技術は周知である(一般的に、R.H.Kenneth、Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp.、New York、New York(1980);E.A.Lerner(1981)Yale J.Biol.Med.、54:387−402;M.L.Gefterら(1977)Somatic Cell Genet.、3:231−36を参照のこと)。この目的のために、不死化細胞株(通常は骨髄腫)を、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与した哺乳動物のリンパ球(通常、脾臓細胞、リンパ節細胞又は末梢血リンパ球)と融合させ、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対して特異性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するために、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングする。この目的のために、リンパ球及び不死化細胞株を融合するために、多くの公知のプロトコールの何れかのプロトコールを用い得る(G.Galfreら(1977)Nature 266:550−52;前出のGefterら、Somatic Cell Genet;前出のLerner、Yale J.Biol.Med.;前出のKenneth、Monoclonal Antibodiesを参照のこと。)。さらに、当業者は、同様に用いられ得るこのような方法の多くの変法を知っている。不死化細胞株(例えば骨髄腫細胞株)は通常、リンパ球と同じ哺乳動物種に由来する。例えば、本発明による免疫原性調製物で免疫付与したマウス由来のリンパ球を、不死化マウス細胞株と融合させることにより、マウスハイブリドーマが確立され得る。好ましい不死化細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有する培地(HAT培地)に対して感受性があるマウス骨髄腫細胞株である。多くのもののうち何れの骨髄腫細胞株も、標準的な方法で融合パートナーとして用いられ得る(例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653又はSp2/O−Ag14骨髄腫株)。これらの骨髄腫細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、MDから入手可能である。通常、HAT感受性マウス骨髄腫細胞は、ポチエチレングリコール(PEG)を用いてマウス脾臓細胞と融合される。次いで、HAT培地を用いて、融合により得られたハイブリドーマ細胞を選択し、これにより、非融合又は非産生融合骨髄腫細胞を死滅させる(非融合脾臓細胞は、形質転換されていないので、数日後に死滅する)。本発明によるRGMタンパク質又は誘導体/同等物を特異的に認識するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞は、例えば、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物と特異的に結合することができる抗体を選択するために標準的ELISAアッセイを用いることによってこのような抗体においてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより、同定される。
【0185】
所望の抗体のタイプに依存し、種々の宿主動物がインビボ免疫付与のために使用される。それ自身関心のある抗原の内在性の形態を発現する宿主が使用され得る。あるいは、関心のある抗原の内在性の形態を欠損するようにされた宿主が使用され得る。例えば、ある内在性タンパク質に対する対応する内在性遺伝子が相同組み換えにより欠損するようにされているマウス(即ちノックアウトマウス)は、マウスに免疫付与されたタンパク質に対する液性反応を引き起こし、その結果、そのタンパク質に対する高親和性のモノクローナル抗体を産生させるために使用され得ることが分かっている(例えば、Roes、J.ら(1995)J.Immunol.Methods 183:231−237;Lunn、M.P.ら(2000)J.Neurochem.75:404−412を参照のこと。)。
【0186】
本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する非ヒト抗体の産生の場合、抗体産生のための宿主として多くの非ヒト哺乳動物が適切である。これらには、マウス、ラット、ニワトリ、ラクダ、ウサギ及びヤギ(及びそれらのノックアウト形態)が含まれるが、ハイブリドーマ作製にはマウスが好ましい。さらに、二重特異性を有するヒト抗原に対する、基本的にヒト抗体の産生の場合、ヒト抗体レパートリーを発現する非ヒト宿主動物が使用され得る。このような非ヒト動物には、以下に詳細に記載する、ヒト免疫グロブリントランス遺伝子を有するトランスジェニック動物(例えばマウス)(hu−PBMC−SCIDキメラマウス)及びヒト/マウス放射線キメラが含まれる。
【0187】
ある実施態様によると、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与される動物は、抗原刺激後に非ヒト哺乳動物がヒト抗体を産生するように、ヒト免疫グロブリン遺伝子を用いてトランスジェニック化されている、非ヒト哺乳動物、好ましくはマウスである。通常、ヒト生殖細胞系列構成を有する重鎖及び軽鎖に対する免疫グロブリントランス遺伝子は、このような動物、重鎖及び軽鎖に対する内在性遺伝子座が不活性となるように修飾されている動物に挿入される。抗原により(例えばヒト抗原により)このような動物が刺激される場合、ヒト免疫グロブリン配列(即ちヒト抗体)由来の抗体が産生される。ヒトモノクローナル抗体は、標準化ハイブリドーマ技術を用いて、このような動物のリンパ球から産生され得る。ヒト免疫グロブリンを用いてトランスジェニック化されたマウス及びヒト抗体の産生におけるその使用についてのさらなる説明は、例えば、米国特許第5,939,598号、WO96/33735、WO96/34096、WO98/24893及びWO99/53049(Abgenix Inc.)及び米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、同第5,770,429号、同第5,814,318号、同第5,877,397号及びWO99/45962(Genpharm Inc.);同様にまた、MacQuitty、J.J.及びKay,R.M.(1992)Science 257:1188;Taylor、L.D.ら(1992)Nucleic Acids Res.20:6287−6295;Lonberg、N.ら(1994)Nature 368:856−859;Lonberg、N.及びHuszar、D.(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93;Harding、F.A.及びLonberg、N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536−546;Fishwild、D.M.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851;Mendez、M.J.ら(1997)Nature Genetics 15:146−156;Green、L.L.及びJakobovits、A.(1998;J.Exp.Med.188:483−495;Green、L.L.(1999)J.Immunol.Methods 231:11−23;Yang、X.D.ら(1999)J.Leukoc.Biol.66:401−410;Gallo、M.L.ら(2000)Eur.J.Immunol.30:534−540を参照のこと。
【0188】
さらなる実施態様によると、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与される動物は、ヒト末梢血単核球もしくはリンパ球細胞又はそれらの前駆体で再構成された重症複合型免疫不全症(SCID)罹患マウスであり得る。hu−PBMC−SCIDキメラマウスと呼ばれるこのようなマウスは、抗原刺激後に確かなヒト免疫グロブリン反応を引き起こす。これらのマウス及び抗体産生のためのそれらの使用のさらなる説明については、例えば、Leader、K.A.ら(1992)Immunology 76:229−234;Bombil、F.ら(1996)Immunobiol.195:360−375;Murphy、W.J.ら(1996)Semin.Immunol.8:233−241;Herz、U.ら(1997)Int.Arch.Allergy Immunol.113:150−152;Albert、S.E.ら(1997)J.Immunol.159:1393−1403;Nguyen、H.ら(1997)Microbiol.Immunol.41:901−907;Arai、K.ら(1998)J.Immunol.Methods 217:79−85;Yoshinari、K.及びArai、K.(1998)Hybridoma 17:41−45;Hutchins、W.A.ら(1999)Hybridoma 18:121−129;Murphy、W.J.ら(1999)Clin.Immunol.90:22−27;Smithson、S.L.ら(1999)Mol.Immunol.36:113−124;Chamat、S.ら(1999)J.Infect Diseases 180:268−277;及びHeard、C.ら(1999)Molec.Med.5:35−45を参照のこと。
【0189】
さらなる実施態様によると、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与される動物は、致死的全身照射を受け、次いで重症複合型免疫不全症(SCID)罹患マウス由来の骨髄細胞を用いて放射線から保護し、次いで、機能的ヒトリンパ球の移植を受けているマウスである。トリメラ系と呼ばれるこのキメラタイプは、関心のある抗原でマウスに免疫付与し、次いで、標準化ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を産生させることにより、ヒトモノクローナル抗体を産生させるために使用される。これらのマウス及び抗体産生のためのそれらの使用のさらなる説明については、例えば、Eren、R.ら(1998)Immunology 93:154−161;Reisner、Y.及びDagan、S.(1998)Trends Biotechnol.16:242−246;Ilan、E.ら(1999)Hepatology 29:553−562;及びBocher、W.O.ら(1999)Immunology 96:634−641を参照のこと。
【0190】
インビトロでのアプローチ:
免疫付与及び選択による本発明による抗体の産生についての代替法として、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対して特異的に結合する免疫グロブリンライブラリのメンバーを単離するために、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物を用いて組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリをスクリーニングすることによって、本発明による抗体が同定され単離され得る。ディスプレイライブラリを作製しスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、PharmaciaからのRecombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;及びStratageneからののSurfZAP(R)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。多くの実施態様において、ディスプレイライブラリはScFvライブラリ又はFabライブラリである。組み換え抗体ライブラリをスクリーニングするためのファージディスプレイは既に記載されている。抗体ディスプレイライブラリを作製し、スクリーニングするための特に有利な方法において使用され得る方法及び化合物の例は、McCaffertyら、WO92/01047、米国特許第5,969,108号及び欧州特許第589877号(特にsdFvのディスプレイを記載)、Ladnerら米国特許第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,571,698号、同第5,837,500号及び欧州特許第436597号(例えばPIII融合を記載。);Dowerら、WO91/17271、米国特許第5,427,908号、同第5,580,717号及び欧州特許第527839号(特にFabのディスプレイを記載。);Winterら、WO92/20791及び欧州特許第368,684号(特に免疫グロブリン可変ドメインに対する配列のクローニングを記載);Griffithsら、米国特許第5,885,793号及び欧州特許第589877号(特に組み換えライブラリを用いたヒト抗原に対するヒト抗体の単離を記載);Garrardら、WO92/09690(特にファージ発現技術を記載);Knappikら、WO97/08320(HuCalヒト組み換え型抗体ライブラリを記載);Salfeldら、WO97/29131(ヒト抗原(ヒト腫瘍壊死因子α)に対する組み換えヒト抗体の産生及び組み換え抗体のインビトロ親和性成熟を記載)及びSalfeldら、米国特許仮出願第60/126,603号及びそれに基づく特許出願(同様に、ヒト抗原(ヒトインターロイキン−12)に対する組み換えヒト抗体の産生及び組み換え抗体のインビトロ親和性成熟をを記載)で見出すことができる。
【0191】
組み換え抗体ライブラリのスクリーニングさらなる記載は、Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hayら(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81−85;Huseら(1989)Science 246:1275−1281;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734;Hawkinsら(1992)J Mol.Biol.226:889−896;Clarksonら(1991)Nature 352:624−628;Gramら(1992)PNAS 89:3576−3580;Garradら(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboomら(1991)Nuc.Acid.Res.19:4133−4137;Barbasら(1991)PNAS 88:7978−7982;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554;及びKnappikら(2000)J.Mol.Biol.296:57−86.などの科学刊行物で見出される。
【0192】
バクテリオファージディスプレイ系の使用の代替法として、酵母細胞又は細菌細胞の表面上で組み換え抗体ライブラリを発現させ得る。酵母細胞の表面上で発現されるライブラリを作製しスクリーニングするための方法は、WO99/36569に記載されている。細菌細胞の表面上で発現されるライブラリを作製しスクリーニングするための方法は、WO98/49286に詳細に記載されている。
【0193】
コンビナトリアルライブラリから関心のある抗体が同定されたらすぐに、分子生物学の標準化技術を用いて、例えば、ライブラリのスクリーニングの間に単離されたディスプレイパッケージ(例えばファージ)からのDNAのPCR増幅によって、抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAが単離される。PCRプライマーを作製するために使用され得る軽鎖及び重鎖抗体に対する遺伝子のヌクレオチド配列は、当業者にとって公知である。これらのタイプの多くの配列は、例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication 第91−3242号及びヒト生殖細胞系列の配列に対するVBASEデータベースに記載されている。
【0194】
本発明による抗体又は抗体部分は、宿主細胞において、軽鎖及び重鎖免疫グロブリンに対する遺伝子を組み換え発現させることよって作製され得る。抗体を組み換え発現させるために、宿主細胞中で軽鎖及び重鎖が発現され、好ましくは宿主細胞が培養される培地に分泌されるように、抗体の軽鎖及び重鎖免疫グロブリンをコードするDNA断片を有する1以上の組み換え発現ベクターが宿主細胞に遺伝子移入される。抗体は、この培地から回収され得る。重鎖及び軽鎖抗体に対する遺伝子を得て、これらの遺伝子を組み換え発現ベクターに挿入し、このベクターを宿主細胞に導入するために、標準化組み換えDNA法が使用される。このような方法は、例えば、Sambrook、Fritsch及びManiatis(編)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)、Ausubel、F.M.ら(編)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1989)及びBossらによる米国特許第4,816,397号に記載されている。
【0195】
関心のある抗体のVH及びVLセグメントをコードするDNA断片が得られたらすぐに、例えば、可変領域に対する遺伝子を、全長抗体鎖に対する遺伝子に、Fab断片に対する遺伝子に又はscFv遺伝子に変換するために、標準化組み換えDNA技術を用いて、これらのDNA断片がさらに操作され得る。これらの操作において、VL−又はVH−をコードするDNA断片は、別のタンパク質、例えば、抗体の定常領域又はフレキシブルリンカーをコードするさらなるDNA断片と操作可能に連結される。この場合、「操作可能に連結」という用語は、2個のDNA断片によってコードされるアミノ酸配列の読み枠がずれない(インフレーム)ように、2個のDNA断片が一緒に連結されることを意味する。
【0196】
VH領域をコードする単離DNAは、重鎖(CH1、CH2及びCH3)の定常領域をコードする別のDNA分子と、VH領域をコードするDNAを操作可能に連結することにより、全長重鎖に対する遺伝子に変換され得る。ヒトの重鎖の定常領域に対する遺伝子配列は周知であり(例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health及びHuman Services、NIH Publication No.91−3242を参照)、これらの領域にわたるDNA断片は、標準化PCR増幅を用いて得られ得る。重鎖の定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgDからなる定常領域であり得、IgG1又はIgG4からなる定常領域が好ましい。重鎖のFab断片に対する遺伝子を得るために、重鎖の定常領域CH1のみをコードするさらなるDNA分子とVHをコードするDNAを操作可能に連結し得る。
【0197】
軽鎖の定常領域CLをコードするさらなるDNA分子と、VLをコードするDNAを操作可能に連結することによって、VL領域をコードする単離DNAは、全長軽鎖に対する遺伝子(ならびにFab軽鎖に対する遺伝子)に変換され得る。ヒトの軽鎖の定常領域に対する遺伝子配列は周知であり(例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health及びHuman Services、NIH Publication No.91−3242を参照のこと。)、これらの領域にわたるDNA断片は、標準化PCR増幅によって得られ得る。軽鎖の定常領域は、定常κ又はλ領域であり得、定常κ領域が好ましい。
【0198】
scFV遺伝子を得るために、VH及びVL配列が、連続的な1本鎖タンパク質として発現され、VL及びVH領域がフレキシブルリンカーを介して連結されるように、フレキシブルリンカー、例えば、アミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコードするさらなるコード断片と、操作可能に連結され得る(Birdら(1988)Science 242:423−426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554を参照のこと。)。
【0199】
本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する特異性を有する、VH及びVLの単一ドメインは、前述の方法を用いることにより単一ドメインライブラリから単離され得る。所望の特異性を有する、2本のVH単一ドメイン鎖(CH1を有するか又は有しない。)又は2本のVL鎖又はVH鎖及びVL鎖からなるペアは、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物を結合させるために使用され得る。
【0200】
本発明による組み換え抗体又は抗体部分を発現させるために、部分的又は全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAを発現ベクターに挿入して、それにより、転写及び翻訳制御配列とその遺伝子を操作可能に連結させ得る。これに関連し、「操作可能に連結」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を制御するために意図される機能を満足するように、抗体遺伝子がベクターにおいて連結されることを意味する。
【0201】
発現ベクター及び発現制御配列は、それらが発現のために使用される宿主細胞と適合するように選択される。抗体の軽鎖に対する遺伝子及び抗体の重鎖に対する遺伝子は、異なるベクターに挿入され得るか、又は両方の遺伝子が同じ発現ベクターに挿入され得る(通常のケース)。抗体遺伝子は、標準化方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクターにおける相補的な制限切断部位の連結又は、制限切断部位が存在しない場合、平滑末端の連結)を用いて、発現ベクターに挿入される。発現ベクターは、軽鎖及び重鎖に対する配列が挿入される前に、抗体定常領域に対する配列を有し得る。例えば、あるアプローチにおいて、重鎖及び軽鎖に対する定常領域を既にコードする発現ベクターに配列を挿入する(それによりベクター内のCHセグメントとのVHセグメントの操作可能な連結及びまたベクター内のCLセグメントとのVLセグメントの操作可能な連結が得られる。)ことにより、VH及びVL配列が全長の抗体遺伝子に変換される。さらに又はあるいは、組み換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖に対する遺伝子は、ベクターにクローニングされ得、それにより、読み枠内でシグナルペプチドが抗体鎖に対する遺伝子のN末端に連結される。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。抗体鎖に対する遺伝子に加えて、本発明による発現ベクターは、宿主細胞内で抗体鎖に対する遺伝子の発現を制御する制御配列を有し得る。「制御配列」という用語は、抗体鎖に対する遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及びその他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を包含する。このような制御配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。制御配列の選択を含む発現ベクターの設計が形質転換されるべき宿主細胞の選択、タンパク質の所望の発現強度などの因子に依存し得ることは、当業者にとって公知である。哺乳動物宿主細胞における発現のための好ましい制御配列には、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(アデノウイルスの主要後期プロモーターについてAdMLP))及びポリオーマ由来のプロモーター及び/又はエンハンサーなどの、哺乳動物細胞において強力なタンパク質発現をもたらすウイルスエレメントが含まれる。ウイルス制御エレメント及びその配列についてのさらなる記載は、例えば、Stinskiの米国特許第5,168,062号、Bellらの同第4,510,245号、及びSchaffnerらの同第4,968,615号を参照のこと。
【0202】
抗体鎖及び制御配列に対する遺伝子に加えて、本発明による組み換え発現ベクターは、宿主細胞内でベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子などのさらなる配列を含有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を単純に促進する(例えば、全てAxelらの、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号及び同第5,179,017号を参照のこと。)。例えば、選択可能マーカー遺伝子が、ベクターが導入された宿主細胞を、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキセートなどの活性物質に対して耐性にすることは一般的である。好ましい選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHRF)に対する遺伝子(メトトレキセートを選択/増幅でのdhfr−宿主細胞における使用のため)及びneo遺伝子(G418の選択のため)が含まれる。
【0203】
軽鎖及び重鎖の発現のために、標準化技術を用いて、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを宿主細胞に遺伝子移入する。「遺伝子移入」という用語の種々の形態は、外来DNAを原核又は真核宿主細胞に導入するために通常用いられる多くの技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含する。原核又は真核宿主細胞の何れでも、本発明による抗体を発現させることは理論的に可能であるが、正確に折り畳まれ免疫学的に活性な抗体がこのような真核細胞、特に哺乳動物細胞において組み合わせられ分泌される可能性が原核細胞よりも高いので、真核細胞、特に哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が好ましい。抗体遺伝子の原核細胞発現に関して、活性抗体の高収量産生のためには効率的でないことが報告されている(Boss、M.A.及びWood、C.R.(1985)Immunology Today 6:12−13)。
【0204】
本発明による組み換え抗体の発現のために好ましい哺乳動物宿主細胞には、CHO細胞(Urlaub及びChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されており、例えば、R.J.Kaufman及びP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載の、DHFR選択可能マーカーとともにいられる、dhfr−CHOを含む。)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、宿主細胞内で抗体が発現されるまで、又は、好ましくは、宿主細胞が増殖する培地中に抗体が分泌されるまで宿主細胞を培養することにより、抗体が産生される。抗体は、タンパク質を精製するための標準化方法を用いることにより、培地から回収され得る。
【0205】
無傷抗体の一部、例えば、Fab断片又はscFv分子を作製するためにも宿主細胞が使用され得る。言うまでもなく、既に記載の手順の変法は本発明に包含される。例えば、本発明による抗体の軽鎖又は重鎖の何れか(両方ではない。)をコードするDNAで宿主細胞に遺伝子移入することが望ましいものであり得る。関心のある抗原の結合のために不必要である軽鎖又は重鎖が存在する場合、このような軽鎖又はこのような重鎖の何れか又はその両方をコードするDNAは、組み換えDNA技術を用いて部分的又は完全に除去され得る。このような短縮DNA分子により発現される分子は、同様に本発明による抗体に含まれる。さらに、1本の重鎖及び1本の軽鎖が本発明による抗体を構成する二官能性抗体が作製され得、標準化された化学的方法を用いて本発明による抗体を二次抗体と架橋することにより、他方の重鎖及び軽鎖は、関心のある抗原以外の抗原に対する特異性を有する。
【0206】
本発明による抗体、その抗原結合部分の組み換え発現のためのある好ましい系において、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターが、リン酸カルシウムが介在する遺伝子移入により、dhfr−CHO細胞に導入される。組み換え発現ベクター内で、遺伝子の強力な転写を達成するために、抗体重鎖及び軽鎖に対する遺伝子はそれぞれ調節性CMVエンハンサー/AdMLPプロモーターエレメントと操作可能に連結される。組み換え発現ベクターはまた、メトトレキセート選択/増幅を用いることにより、ベクターを遺伝子移入されるCHO細胞が選択され得るDHFR遺伝子も含む。抗体重鎖及び軽鎖が発現され、インタクト抗体が培地から回収されるように、選択された形質転換宿主細胞を培養する。組み換え発現ベクターを作製し、宿主細胞に遺伝子移入し、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収するために、分子生物学の標準化技術が使用される。従って、本発明は、本発明による組み換え抗体が合成されるまで適切な培地中で本発明による宿主細胞を培養することによる、本発明による組み換え抗体を合成するための方法に関する。この方法はまた、培地からの組み換え抗体の単離も含む。
【0207】
ファージディスプレイによる組み換え抗体ライブラリのスクリーニングの代替法として、本発明による抗体を同定するために、大きなコンビナトリアルライブラリのスクリーニングのために当業者に公知のその他の方法が使用され得る。その他の発現系のあるタイプにおいて、組み換え抗体ライブラリは、Szostak及びRobertsのWO98/31700及びRoberts、R.W.及びSzostak,J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:12297−12302に記載のように、RNA−タンパク質融体の形態で発現される。この系において、共有結合融合体は、mRNA及びそれがコードするペプチド又はタンパク質の間の、3’末端にペプチジルアクセプター抗生物質ピューロマイシンを有する合成mRNAのインビトロ翻訳によって作製される。従って、コードされるペプチド又はタンパク質(例えば抗体又はその一部)の特性、例えば、抗体又はその一部の、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する結合に基づき、mRNAの複合混合物由来の特異的mRNA(例えばコンビナトリアルライブラリ)が濃縮され得る。抗体又はその一部をコードし、このようなライブラリのスクリーニングから回収される核酸配列は、記載の方法で(例えば哺乳動物宿主細胞内で)組み換え手段を用いて発現され得、さらなる回においてmRNA−ペプチド融合体をスクリーニングするか(この場合、当初の選択された配列に変異が導入される。)、又は前述のように組み換え抗体のインビトロ親和性成熟のためのその他の方法を用いることにより、さらに、さらなる親和性成熟にも曝露され得る。
【0208】
インビボ及びインビトロアプローチの組み合わせ:
本発明による抗体はまた、インビボ及びインビトロにおけるアプローチの組み合わせ、例えば最初に本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物が、RGMタンパク質−又はその誘導体/同等物−結合抗体の産生を促進するために宿主動物においてインビボで抗体レパートリーに対して機能することを可能にし、次いで、さらなる抗体の選択及び/又は抗体成熟(即ち最適化)が、1以上のインビトロ技術を用いて行われる方法を使用することによっても作製され得る。ある実施態様によると、このような組み合わせ法は、最初に、抗原に対する抗体反応を刺激するために非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ又はそれらのトランスジェニック動物又はキメラマウス)を、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免役付与し、次いで、RGMタンパク質又はその誘導体/同等物の作用によりインビボで刺激されているリンパ球由来の免疫グログリン配列を用いてファージディスプレイ抗体ライブラリを作製及びスクリーニングすることを含み得る。この組み合わせ手順の最初の段階は、インビボアプローチに対して上記で述べたように行われ得るが、この手順の第二の段階は、インビトロアプローチに対して上記で述べたように行われ得る。刺激されたリンパ球から作製されたファージディスプレイライブラリのインビトロスクリーニングに続く、非ヒト動物の過剰免疫付与のための好ましい方法には、BioSite Inc.により記載される方法が含まれ、例えば、WO98/47343、WO91/17271、米国特許第5,427,908号及び同第5,580,717号を参照のこと。
【0209】
さらなる実施態様によると、組み合わせ法は、最初に、RGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する抗体反応を刺激するために非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ又はそれらのノックアウト及び/又はトランスジェニック動物又はキメラマウス)を、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与し、ハイブリドーマ(例えば免疫付与された動物から作製される。)をスクリーニングすることにより、所望の特異性を有する抗体を産生するリンパ球を選択することを含む。抗体又は単一ドメイン抗体に対する遺伝子は、選択されたクローンから単離され(逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応などの標準化クローニング法を用いて)、選択された抗体の結合特性を向上させるために、インビトロ親和性成熟を受ける。この手順の最初の段階は、インビボアプローチに対して上記で述べたように行い得るが、この手順の第二の段階は、インビトロアプローチに対して上記で述べたように、特に、WO97/29131及びWO00/56772に記載されたようなインビトロ親和性成熟のための方法を使用することにより行い得る。
【0210】
さらなる組み合わせ法において、組み換え抗体は、リンパ球抗体選択法(SLAM)として当業者に公知であり、米国特許第5,627,052号、WO92/02551及びBabcock、J.S.ら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843−7848に記載されている方法を用いることによって個々のリンパ球から作製される。この方法において、RGMタンパク質又はその誘導体/同等物に対する免疫反応を刺激するために、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ又はそれらのトランスジェニック動物又はキメラマウス)にインビボで最初に本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物で免疫付与し、次いで、抗原特異的溶血プラークアッセイ使用することによって関心のある個々の抗体分泌細胞を選択する。この目的のために、ビオチンなどのリンカーを用いて、本発明によるRGMタンパク質又はその誘導体/同等物、又は構造的に関連のある関心のある分子をヒツジ赤血球と結合することができ、それによって、溶血プラークアッセイを用いることにより適切な特異性の抗体を分泌する個々の細胞を同定することができる。関心のある抗体を分泌する細胞の同定後、軽鎖及び重鎖の可変領域に対するcDNAを逆転写酵素−PCRによって細胞から回収し、次いで、これらの可変領域を、適切な免疫グロブリン定常領域(例えばヒト定常領域)とともに、COS又はCHO細胞などの哺乳動物宿主細胞内で発現させ得る。次に、例えば遺伝子移入細胞を増殖させ、所望の特異性を有する抗体を発現させる細胞を単離することによって、インビボで選択するリンパ球に由来する増幅免疫グロブリンで遺伝子移入された宿主細胞をさらなるインビトロ分析及び選択に供する。増幅させた免疫グロブリン配列はさらにインビトロで操作され得る。
【0211】
6.医薬品
6.1 概略
本発明の主題はまた、本発明によるタンパク質(RGMタンパク質;RGMタンパク質結合リガンド、抗RGMタンパク質抗体など)又はコードRGMタンパク質核酸配列及び場合によっては医薬的に許容可能な担体を活性物質として含有する医薬品(組成物)にも関する。本発明による医薬組成物はまた、少なくとも1つのさらなる治療剤、例えば本明細書中に記載の疾病の1つを治療するための1以上のさらなる治療剤も含有し得る。
【0212】
医薬的に許容可能な担体には、生理学的適合性であるならば、全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などが含まれる。
【0213】
医薬的に許容可能な担体には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースが含まれる。製剤はまた、滑剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油など;湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤;保存剤、例えばメチル及びプロピルヒドロキシ安息香酸など;抗酸化剤;抗刺激剤;キレート剤;コーティング剤;乳化安定剤;フィルム形成剤;ゲル形成剤、臭気マスキング剤;香味料;樹脂:親水コロイド;溶媒;可溶化剤;中和剤;浸透促進剤;顔料;四級アンモニウム化合物;保湿剤及び皮膚軟化剤;軟膏、クリーム又は又は油基剤;シリコーン誘導体;展着助剤;安定化剤;滅菌剤;坐剤用基剤;錠剤用賦形剤、例えば、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤又はコーティングなどの;噴射剤;乾燥剤;乳白剤;増粘剤、ワックス;柔軟剤;ホワイトオイルなどの、薬学的に許容可能な担体又は一般的なアジュバントも含まれ得る。この点に関するデザインは、例えば、Fiedler、H.P.、Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie、Kosmetik und angrenzende Gebiete、第4版、Aulendorf:ECV−Editio−Cantor−Verlag、1996に記載のような熟練者の知識に基づく。また、Hager’s Handbuch der Pharmazeutoschen Praxis、Springer Verlag、Heidelbergを参照のこと。
【0214】
医薬組成物は、例えば、非経口投与に適切であり得る。この目的のために、活性物質、例えば抗体は、好ましくは0.1から250mg/mLの活性物質含有量を含む注射用溶液の形態で調製される。注射用溶液は、投与形態として、フリントガラス又はバイアル、アンプル又は充填注射器中の液体又は凍結乾燥形態で提供され得る。
【0215】
緩衝液は、L−ヒスチジン(1から50mM、好ましくは5から10mM)を含有し得、5.0から7.0、好ましくは6.0のpHを有し得る。以下に限定されないが、さらに適切な緩衝液には、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム又はコハク酸カリウム緩衝液が含まれる。
【0216】
溶液の浸透圧を調整するために、0から300mMの濃度まで(液体投与形態の場合、好ましくは150mM)塩化ナトリウムを使用し得る。凍結乾燥投与形態の場合、スクロース(例えば0から10%、好ましくは0.5から1.0%(w/w))などの抗凍結剤が組み込まれ得る。その他の適切な抗凍結剤には、トレハロース及びラクトースが含まれる。凍結乾燥投与形態の場合、マンニトール(例えば、1から10%、好ましくは2から4%(w/w))などの充填剤が組み込まれ得る。液体ならびに凍結乾燥投与形態で、L−メチオニン(例えば、51から50mM、好ましくは5から10mM)などの安定化剤を用いることもできる。その他の適切な充填剤には、グリシン及びアルギニンが含まれる。例えばポリソルベート80(例えば、0から0.05%、好ましくは0.005から0.01%(w/w))などの界面活性剤も使用され得る。その他の界面活性剤には、ポリソルベート20及びBrij界面活性剤が含まれる。
【0217】
本発明による組成物は、多くの種類の形態が想定され得る。これらには、液体、半固体及び固体投与形態、例えば、溶液(例えば、注射用及び輸液用溶液、ローション、点眼薬及び点耳薬)、リポソーム、分散剤又は懸濁液、固体形態、例えば、食餌、粉末、顆粒剤、錠剤、トローチ、サシェ、カプセル(cachets)、糖衣錠、カプセル(硬及び軟ゼラチンカプセルなど)、坐剤もしくは膣用製剤、又は半固体製剤形態、例えば、軟膏、クリーム、ヒドロゲル、ペースト又は硬膏などが含まれる。埋め込み送達装置も、本発明による活性物質を投与するために使用され得る。好ましい形態は、投与の意図する形態及び治療用途に依存する。通常、注射用又は輸液用溶液の形態における組成物が好ましい。ある適切な投与経路の例は非経口投与(例えば、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射)である。ある好ましい実施態様によると、活性物質は、静脈内点滴又は注射によって投与される。さらに好ましい実施態様によると、活性物質は、筋肉内又は皮下注射により投与される。
【0218】
治療用組成物は、通常、無菌であり、製造及び保管条件下で安定でなければならない。本組成物は、高活性物質濃度に対して適切な、溶液、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム構造又はその他の規則正しい構造の形態で処方され得る。滅菌注射用溶液は、場合によっては上記成分のの1つ又は組み合わせと共に、必要量の活性化合物(例えば抗体など)を適切な溶媒に導入し、次いでろ過滅菌を行うことによって、調製され得る。分散剤は、通常、基本的な分散媒体を含有し、場合によってはその他の必要な成分を含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を導入することによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するために、滅菌凍結乾燥粉末が使用される場合、既にろ過滅菌されている溶液から活性成分及び場合によってはその他の所望の成分の粉末を得るための好ましい製造方法は、真空乾燥及び噴霧乾燥である。溶液の適正な流動特性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって維持され得、分散剤の場合、必要な粒子サイズが維持されるか又は界面活性剤が使用される。注射用組成物の長期吸収は、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を組成物に導入することにより達成され得る。
【0219】
本発明による活性物質は、当業者にとって公知である多くの方法を用いて投与され得るが、多くの治療用途の場合、皮下注射、静脈内注射又は輸液が、多くの治療用途に対する好ましい投与タイプである。当業者は、投与の経路及び/又はタイプが所望の結果に依存することを認識する。ある実施態様によると、埋め込み、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達系を含む例えば制御放出製剤など、急速な放出から化合物を保護する担体を用いて活性化合物が調製され得る。エチレン−酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用し得る。このような製剤を調製するための方法は一般に当業者にとって公知であり、例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978を参照のこと。
【0220】
ある実施態様によると、本発明による活性物質は、例えば、不活性希釈剤又は吸収可能な食用担体中で、経口投与され得る。活性物質(及び必要に応じてその他の成分)はまた、硬又は軟ゼラチンカプセル中に封入されるか、錠剤に圧縮されるか、又は食物に直接加えることもできる。経口的治療投与の場合、活性物質は、賦形剤と混合し、噛み砕ける錠剤、口腔錠剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップなどの形態で使用され得る。本発明による活性物質が、非経口以外の経路を介して投与されようとする場合、活性物質の不活性化を防止する物質からコーティングを選択することが必要であり得る。
【0221】
本発明による活性物質は、上述の疾病の治療において適切である1以上のさらなる治療剤と一緒に投与され得る。
【0222】
本発明の医薬組成物は、通常、少なくとも1つの本発明による活性物質の治療的有効量又は予防的有効量を含有する。投与計画は、例えば、所望の処置又は治療的もしくは予防的処置が所望されるか否かに依存して選択及び適合することができる。例えば、治療状況の要求性に依存して、1回の投与、長時間にわたる複数回の分割投与、又は漸増用量又は減量投与量を投与し得る。投与を簡素化し、投与の均一性を確実にするために、特に単一投与形態での非経口的組成物を処方することは有利である。
【0223】
担当医師は、投与形態、投与のタイプ及び特定の治療及び特定の活性物質に最も適切な投与量を容易に決定することができる。
【0224】
本発明による活性物質の治療又は予防的有効量は、以下に限定されないが、例えば、0.1から20mg/kgの範囲、好ましくは1から10mg/kgであり得る。言うまでもなく、軽減すべき状態の性質及び重症度に依存してこれらの量は変化し得る。
【0225】
6.2 ワクチン
本発明によるRGMタンパク質及びその誘導体/同等物は、治療されるべき患者のワクチン接種のための免疫原として使用され得る。
【0226】
この目的のために、適切なワクチンは、一般に、少なくとも1つの本発明によるRGMタンパク質及び/又は少なくとも1つのそれらの誘導体/同等物を含有する医薬組成物である。この組成物は、生理学的に許容可能な担体及び場合によってはさらなるアジュバント、例えば免疫刺激剤も含有し得る。
【0227】
原則として適切な担体は所望のように選択することができるが、担体のタイプは一般に投与経路により決定される。従って本発明によるワクチンは、特に、非経口、例えば、静脈内投与、筋肉内投与及び皮下投与に適切な形態で処方され得る。これらの場合、担体は、好ましくは水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックス及び/又は緩衝液を含有する。
【0228】
本発明によるワクチンにおいて、何らかの多くの免疫刺激剤が使用され得る。例えば、アジュバントが組み込まれ得る。殆どのアジュバントは、急速な分解から抗原を保護するように意図されている物質、例えば、水酸化アルミニウム又は鉱油ならびに脂質A、百日咳菌又はヒト型結核菌由来のタンパク質を含有する。適切なアジュバントは、通常市販されており、例えば、完全もしくは不完全フロイントアジュバント;AS−2;水酸化アルミニウム(場合によってはゲル形態)もしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄又は亜鉛塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオン性又は陰イオン性誘導体化多糖類;ポリホスファゼン;生体分解性ミクロスフェア;又はモノホスホリル−脂質Aである。GM−CSF又はインターロイキン−2、−7又は−12などのサイトカインもまたアジュバントとして使用され得る。
【0229】
7.治療法
7.1.神経性疾患の治療
中枢神経系に対する損傷において、損傷部位でRGMタンパク質の蓄積が観察されることが先行技術(Schwabら(前出)を参照)から知られている。同時に、これにより、神経線維の新たな増殖が妨害される。ポリクローナルRGM A特異的抗体の使用によるラットでの脊髄損傷モデルにおけるRGM Aの中和の結果、再生及び機能回復が起こった(Hata K.ら、J.Cell.Biol.173:47−58、2006)。神経線維の増殖における損傷及び抑制効果には、受容体分子ネオゲニンへのRGM Aの結合が介在する(Conrad S.ら、J.Biol.Chem.282:16423−16433、2007)。従って、RGMと受容体分子ネオゲニンとの間の相互作用の調節、特に阻害は、神経線維の増殖におけるRGMの阻害活性を阻止するのに適している。
【0230】
7.2.腫瘍性疾患の治療
長い間、ネオゲニンが、腫瘍性疾患の発現及び/又は進行に原因として関係していることが示されてきた。例えば、Meyerhardtらは、Oncogene(1997)14、1129−1136において、研究した、膠芽細胞腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫細胞株を含む50種を超える様々な癌細胞株ならびに結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌及び子宮癌の細胞株においてネオゲニンが検出可能であることを報告した。ネオゲニンの過剰発現はまた、食道癌細胞株においても観察されている(Hueら、Clinical Cancer Research(2001)7、2213−2221)。211人の肺腺癌患者における3588個の遺伝子の発現プロフィールの最近の系統的な分析から、腫瘍性疾患の発現及び進行におけるネオゲニンの関与に関するさらなる情報が得られた(Berrarら、J.Comput.Biol.(2005)12(5)、534−544)。
【0231】
RGMは、腫瘍細胞に関連するネオゲニン受容体への結合によって細胞死を阻止することができるという潜在的な発癌促進効果を有することも知られているので(MatsunagaらNature Cell Biol.6、749−755、2004)、RGM−ネオゲニン相互作用を調節することにより、特に、特異的抗−RGM抗体を用いた相互作用の妨害によって、腫瘍性疾患の治療のための新規治療アプローチがもたらされ得る。
【0232】
一方、ネオゲニン受容体を活性化するヒトRGM Aタンパク質の断片は、腫瘍細胞移動又はネオゲニン陽性腫瘍細胞の転移を阻害し得る。この腫瘍細胞移動の阻害は、神経線維成長の阻害と同様に起こり得る。神経線維はまた侵襲性にも成長するが、腫瘍細胞とは異なり、一般に、制御される侵襲性である。これは、古典的ホジキンリンパ腫における潜在的腫瘍抑制因子候補として最近hRGM Aが同定されたことにより支持される(Feysら、Haematologica 2007、Vol.92、913−20)。
【0233】
7.3.鉄代謝障害の治療
ヘモジュベリンとしても知られるRGM Cは、ヒト及び動物の体内における鉄代謝に非常に重要である。若年性ヘモクロマトーシスは、生物における鉄の過剰負荷として現れる遺伝性の比較的稀な鉄代謝性障害である。この疾患は、ヘモジュベリン分子における突然変異によって起こる(Huangら、The Journal of Clinical Investigation(2005)115、2087−2091)。従って、本発明による機能RGMタンパク質又はその活性ドメインの投与は、このような鉄代謝障害を緩和するための有用な治療的アプローチである。慢性疾患における貧血の場合、炎症又は悪性経過の結果、例えば腫瘍壊死因子αなどのある一定のサイトカインの非常に大きな上方制御が起こる(Weiss M.D.及びGoodnough、L.T.、New Engl.J.Med.352:1011−1022、2005)。これらのサイトカインは、鉄代謝の最も重要な制御因子の強力な誘導因子、ペプチドホルモンヘプシジンであり、ヘプシジンの過剰産生又は蓄積は、慢性疾患における貧血の発症機序に対する重要な理由とみなされる。マウスに対する最近のインビボデータから、Fc−結合RGM C(Fcヘモジュベリン)がヘプシジン発現を阻害し、血清鉄レベルを上昇させることが示される(Babitt、J.L.ら、The Journal of Clinical Investigation、2007、Vol.117、7、1933−1939)。BMPタンパク質とのRGMタンパク質の相互作用は、この制御における重要な因子である(Babitt、J.L.ら、Nature Genetics、2006、Vol.48、5、531−539)。従って、BMPタンパク質と相互作用する、Fc結合RGM C又は、RGM C、RGM Aもしくは[RGM] BのFc結合断片は、慢性疾患における貧血の治療用の治療剤として使用され得る。
【0234】
7.4.骨組織形成の促進
先行技術から、DRAGONという名称でも知られているタンパク質のRGMファミリーのメンバー、即ちRGM Bが、骨の形態形成に関与しているという情報が得られている。例えば、Samadらは、JBC論文、2005、Vol.280.14122−14129において、DRAGONと、タイプI及びタイプIIの骨形成タンパク質(BMP)受容体との間の相互作用を記載する。従って、本発明によるRGMポリペプチドを投与することにより、骨成長促進効果、及びこれによる骨成長疾患又は骨損傷の治療のための新規治療アプローチが考えられ得る。3種類全てのRGMタンパク質(RGM A、B、C)は、様々なBMPファミリーのメンバーと相互作用し、BMPシグナル経路の活性化を向上させる(Babitt、J.L.ら、Nature Genetics、2006、Vol.48、5、531−539;Babitt、J.L.ら、J.Biol.Chem.、2005、Vol.280、33、29820−29827;Babitt、J.L.ら、The Journal of Clinical Investigation、2007、Vol.117、7、1933−1939;Samad、T.A.ら、J.Biol.Chem.、2005、Vol.280.14、14122−14129;Halbrooksら、J.Molecular Signaling 2、4:2007(電子形態で公開))。
【0235】
7.5 自己免疫疾患の治療
本発明による活性物質が自己免疫疾患の治療に適切であり得るという指摘は、次の刊行物で見出される:Uristら、Prog.Clin.Biol.Res.1985、Vol.187:77−96;Lories及びLuyten、Cytokine & Growth Factor Reviews 2005、Vol.16、287−298。
【0236】
8.診断方法
上記定義に従うRGMタンパク質及び誘導体/同等物ならびにこれらに対する抗体は、特に本発明による診断試薬と呼ばれる。
【0237】
従って、本発明は、疾患に典型的な抗原又は抗体を検出することにより、上記で定義される病的状態を、質的又は量的改善をもって決定することを可能にする。
【0238】
この決定は、好ましくは免疫学的方法を用いて行われる。原則として、これは、抗体が使用される何らかの分析的又は診断的試験方法を用いて達成され得る。これらには、凝集及び沈降技術、免疫学的アッセイ、免疫組織化学法及び、例えばウェスタンブロッティング又はドットブロット法などの免疫ブロッティング技術が含まれる。画像検査法などのインビボ法も含まれる。
【0239】
免疫アッセイにおける使用は有利である。競合的免疫アッセイ、即ち、抗体結合に対する抗原及び標識抗原(トレーサー)の競合ならびにサンドイッチ免疫アッセイ、即ち特異的抗体の抗原への結合は、通常は標識されている二次抗体を用いて検出される。これらのアッセイは、均一、即ち、固相及び液相に分離しないアッセイ、又は不均一、即ち、例えば固相に結合した抗体を用いて、結合した標識が非結合標識から分離されるものであり得る。様々な不均一及び均一免疫アッセイ形式は、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫測定アッセイ(ELISA)、蛍光免疫アッセイ(FIA)、発光免疫アッセイ(LIA)、時間分解FIA(TRFIA)、免疫活性化(IMAC)、酵素多型免疫試験(EMIT)、免疫比濁法(TIA)及び免疫−PCR(I−PCR)などの標識及び測定方法に依存して、特定のクラスに割り当てられる。
【0240】
競合的免疫アッセイは、本発明による抗原の検出に好ましい。標識された抗原(トレーサー)は、用いられる抗体に対する結合に対して定量化すべき試料抗原と競合する。試料中の抗原の量、即ち抗原量は、標準曲線を用いて、置換されたトレーサーの量から決定され得る。
【0241】
これらの目的のために利用可能な標識のうち、酵素が有利であることが分かった。例えば、ペルオキシダーゼ、特にホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びβ−D−ガラクトシダーゼに基づく系が使用され得る。これらの酵素について特異的な基質が利用可能であり、それらの反応は、例えば測光法により追跡され得る。適切な基質系は、アルカリホスファターゼに対して、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、ファーストレッド/ナフトールAS−TSホスフェート;ペルオキシダーゼに対して、2,2−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、o−ジアニシジン、5−アミノサリチル酸、3−ジメチルアミノ安息香酸(DMAB)及び3−メチル−2−ベンゾチアゾリンヒドラゾン(MBTH);β−D−ガラクトシダーゼに対して、o−ニトロフェニルβ−D−ガラクトシド(ONPG)、p−ニトロフェニルβ−D−ガラクトシド及び4−メチルウンベリフェニルβ−D−ガラクトシド(MUG)に基づく。多くの場合、これらの基質系は、即時使用状態で、例えば、有用な緩衝剤などのさらなる試薬も含有し得る錠剤の形態で市販されている。
【0242】
トレーサーを調製するためのペプチド又は抗体に標識をそれ自体公知のようにカップリングさせ得る。さらに、タンパク質に対する結合のために役立つように修飾された多くの標識、例えば、ビオチン、アビジン、エクストラアビジン又はストレプトアビジン−結合酵素、マレイミド−活性化酵素などが利用可能である。これらの標識は本発明に従って使用される分子と直接反応させ得る。
【0243】
不均一免疫アッセイ形式が選択される場合、分離の目的のために、例えば、担体に結合させた抗−イディオタイプ抗体、例えばウサギIgGに対する抗体などを用いて、抗原−抗体複合体を基質に結合させ得る。対応する抗体により被覆される支持層、特にマイクロタイタープレートは公知であり、市販されている。
【0244】
本発明のさらなる主題は、上述の少なくとも1つの抗体及びさらなる成分を含有する免疫アッセイセットに関する。これらのセットは、通常は、本発明による検出を行うための試薬のパッケージ化単位形態を集めたものである。可能な限り操作を簡素化するために、これらの試薬は、好ましくは、基本的に即時使用形態で提供される。ある有利な設計において、免疫アッセイはキットの形態で提供される。キットは、通常、成分を個別に提供するための複数の容器を含む。成分は全て、即時使用の希釈剤で、希釈のための濃縮物として、又は溶解もしくは縣濁のための凍結乾燥物として、提供され得、個々の成分又はこれら全ては、凍結状態であるか又は使用まで周囲温度で保管され得る。血清は、好ましくは−20℃で、好ましくは急速冷凍され、例えばこのような場合、免疫アッセイは好ましくは使用前に凍結温度で保存しなければならない。
【0245】
免疫アッセイとともに含まれ得るさらなる成分には、次のもの:標準タンパク質、トレーサー;対照血清、マイクロタイタープレート(好ましくは抗体で被覆)、緩衝液(例えば、試験用、洗浄用又は基質反応用)及び酵素基質そのものが含まれる。
【0246】
免疫アッセイの一般的原理及び抗体の作製及び使用研究及び臨床に役立つものとしての抗体の使用は、例えば、Antibodies、A Laboratory Manual(Harlow、E.及びLane、D.編、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、1988)に記載されている。
【0247】
9.スクリーニング法
本発明の主題はさらに、RGM受容体(ネオゲニン及び/又はBMP)のエフェクターを検出するための方法に関し、この方法において、エフェクターである疑いがある試料をRGMタンパク質又はポリペプチドと温置し、エフェクター−RGMタンパク質複合体の形成に関してアッセイが分析される。
【0248】
このようなエフェクターは、アゴニスト作用、部分的アゴニスト作用、アンタゴニスト作用又は逆アゴニスト作用を有し得る。これらは、合成低分子物質、合成ペプチド、天然もしくは合成抗体分子又は天然物質であり得る。
【0249】
本発明によるこのような方法は、通常、将来の使用に関して最も普及されると思われる物質が、多くの様々な物質から選択され得るインビトロスクリーニング法として行われる。
【0250】
例えば、コンビナトリアル化学によって、多数の潜在的な活性物質を含有する広範囲の物質ライブラリが作製され得る。所望の活性を有する物質に対してコンビナトリアル物質ライブラリのサンプリングを自動化することができる。好ましくはマイクロタイタープレート上で提供される個々のアッセイを効率的に評価するためにスクリーニングロボットが使用される。従って、本発明はまた、スクリーニング法、即ち、好ましくは、後述する少なくとも1つの方法が用いられる、一次及び二次スクリーニング法の両方にも関する。複数の方法が使用される場合、分析しようとする物質の1種の試料又は様々な試料に対して、同時に又は異なる時点で、これが行われ得る。
【0251】
このような方法を行うためのある効率的な技術は、活性物質のスクリーニングの分野において公知である、シンチレーション近接アッセイ(又はSPAと省略される。)である。このアッセイを行うためのキット及び成分は、例えば、Amersham Pharmacia Biotechから市販されている。本方法は、シンチレーション物質を含有する小さな蛍光ミクロスフェア上で可溶化されるか又は膜結合した受容体を固定化するという原則に基づき機能する。例えば、放射性リガンドが固定化受容体に結合する場合、シンチレーション物質及び放射性リガンドは空間的に近接しているので、シンチレーション物質が励起され発光する。
【0252】
このような方法を行うための別の効率的な技術は、活性物質のスクリーニングの分野において公知である、FlashPlate(R)技術である。このアッセイを行うためのキット及び成分は、例えば、NEN Life Science Productsから市販されている。操作の原理は、同様にシンチレーション物質で被覆されたマイクロタイタープレート(96ウェル又は384ウェル)に基づく。
【0253】
これらの方法を用いて同定され得る物質又は物質の混合物の一部は同様に本発明の主題である。
【0254】
以下の非限定的な生成及び使用の実施例を参照し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0255】
実験セクション
1.一般的手順
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
タンパク質の分子量に従い、SDSポリアクリルアミドゲルでタンパク質を分離した(4−20%トリスグリシンゲル:Invitrogen EC6025BOX;10−20%トリシンゲル:Invitrogen#EC6625BOX)。還元剤を用いてNuPage SDS試料緩衝液(4x)と試料を混合した。サーモミキサーにおいて95℃にて10分間温置した後、トリスグリシン又はトリシンSDSランニング緩衝液(Invitrogen)を用いて、125Vで試料を展開させた。See Blue又はBlue Plus 2(Invitrogen)を分子量標準タンパク質として使用した。クーマシー染色でゲルを染色するか又はニトロセルロース(ニトロセルロース膜ろ紙サンドイッチ(Invitrogen#LC2001))に転写した。
【0256】
クーマシー染色
ポリアクリルアミドゲルでのタンパク質の検出のために、ゲルに流した後、タンパク質をクーマシー染色により染色した。膜上で(0.2−μm孔)SimplyBlue Safestain染色溶液(Invitrogen)中で、又は、あるいは、コロイドクーマシー染色(0.25%クーマシーブルーR250/L、45%メタノール、10%酢酸)中で、1時間ゲルを染色した。タンパク質バンドが明確に見えるようになるまで、脱イオン水又は脱色液(40%メタノール、10%酢酸)を用いて脱色を行った。
【0257】
ウエスタンブロット
ろ紙及びニトロセルロースを20%メタノール入りのNovexトランスファー緩衝液に10分間浸した。室温で2時間にわたり、定電流(100mA)でNovexチャンバー中でブロッティング処理を行った。
【0258】
ドットブロット
TTBS緩衝液中の様々な濃度の2μLタンパク質を乾燥ニトロセルロース膜上に軽く叩くように添加した。次の希釈液を使用した:
希釈液:
a)100μg/mL=200ng/スポット
b)50μg/mL=100ng/スポット
c)10μg/mL=20ng/スポット
d)5μg/mL=10ng/スポット
e)1μg/mL=2ng/スポット
f)500μg/mL=1ng/スポット
試料添加後、室温で10分間膜を乾燥させ、その後免疫検出プロトコールを開始した。
【0259】
HEK293F細胞におけるRGM A断片の遺伝子移入及び発現
このために、HEK293F細胞の遺伝子移入に対してInvitrogenにより開発されたプロトコールを使用した。2−3日間にわたり、Free Style 293発現培地中で細胞を培養し、次いで400xgで遠心し、上清を捨てた。培地中で細胞ペレットを再懸濁し、28mLの新鮮培地中で3x107個の細胞になるように調整した。125mLエレンマイヤーフラスコに細胞ペレットを移し、150rpmのオービタル振盪機上で遺伝子移入混合液が生成するまで37℃、8%CO2の恒温槽中で温置した。
【0260】
293フェクチンDNA複合体との遺伝子移入混合液を次のように調製した:
(1)1000μLの総体積になるまで30μg DNAをOpti−MEM Iで希釈し、混合した(1000μL Opti−MEM Iを対照として使用した。)。
【0261】
(2)1000μLの総体積になるまで、35μL 293フェクチン(Invitrogen#12347−019;1mL)をOpti−MEM Iで希釈し、混合し、室温で5分間温置した。
【0262】
(3)段階1からのDNA混合液及び293フェクチン溶液を新しい試験チューブに移し、慎重に混合し、室温で25分間温置した後にエレンマイヤーフラスコ中の細胞に添加した。
【0263】
この細胞移入混合液とともに、150rpmのオービタル振盪機上の、37℃、8%CO2の恒温槽中で上述のように40時間から48時間、細胞を温置した。400xgで10分間遠心することによって、細胞上清を回収した。
【0264】
Niキレートアフィニティー(Ni−NTA)を用いたタンパク質の精製
Ni−NTA Superflowビーズ(Qiagen#1018611)を使用した。13,500rpmでビーズ上清を遠心することにより、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液(Invitrogen)中で3分間、ビーズを洗浄した。上清を捨て、新鮮PBS中でビーズを再懸濁した。細胞培養上清30mLに対してビーズ縣濁液200μLを使用した。ビーズをペレット化するために、振盪機(60rpm)上で、4℃で一晩、細胞培養上清とともにビーズを温置し、温置後遠心した(10分間、3000rpm)。上清を捨て、PBSで3回ビーズを洗浄した。250μL溶出緩衝液(PBS、160mM NaCl、150mM イミダゾール)を用いて、結合タンパク質をビーズから溶出した。振盪機上で室温にて30分間温置した後、遠心(3分間、13,500rpm)によってビーズをペレット化した。上清を回収した。さらなる分析のために、溶出タンパク質を−20℃で凍結した。
【0265】
免疫検出
ニトロセルロース上での固定化タンパク質の免疫検出のために、室温又は4℃で、TTBS(0.1%Tween20、トリス緩衝食塩水溶液(TBS))中で一晩、ブロットを1時間温置することによって、タンパク質の非特異的結合を阻止(ブロッキング処理)した。室温にて2時間にわたり、TTBS中の10μg/mの濃度で一次抗体を使用した。TTBS中で3回、ブロットを洗浄し、TTBS中1:5000の二次抗体(アルカリホスファターゼ結合抗マウスIgG抗体;Sigma)で希釈し、次いで室温で1時間温置した。TTBS中で3回、ブロットを洗浄し、染色溶液でブロットを被覆することにより、3分間、AP基質NBT/BCIP(Roche、10mL精製水により1錠の錠剤を溶解)で発色させた。ブロットに精製水を添加することにより染色反応を停止させた。
【0266】
試験方法1:SH−SY5Y細胞を用いた、神経突起成長アッセイにおけるRGMペプチドの効果の説明
SH−SY5Y細胞は、ヒト神経芽細胞腫細胞である。芽細胞腫は、組織及び器官形成中に由来する胚性腫瘍である。初期胚の状態では多くの細胞の分化がまだ未熟であるため、芽細胞腫細胞の起源は未知である場合が多く、即ち、芽細胞腫細胞は不均一な細胞集団である。神経芽と呼ばれる神経芽細胞腫の細胞は、自律神経組織からの神経堤(胚性状態の構造)由来であり、実際には未熟な段階で停止している。この場合の細胞は、神経芽細胞腫の転移がある4歳女児の骨髄バイオプシーで1970年に単離された神経上皮腫細胞株SK−N−SHのクローン性の継代培養由来であった[http://www.dsmz.de/human_and_animal_cell_lines]。
【0267】
【表1】
【0268】
Nunc500mLフィルターを用いて培地をろ過滅菌し、使用するまで4℃の冷蔵庫中で保存した。使用前に培地を水浴中で37℃に加熱した。
【0269】
SH−SY5Y細胞は、単層でゆっくりと接着性に成長し、100%のコンフルエンシーには到達しない(最大80%)、上皮、神経様細胞である。細胞培養物を週に2回、1:3に分割(継代)した。細胞の分離には、恒温槽中で1から3分間、トリプシンで温置することが必要である。
【0270】
これは、依然として未熟な前駆細胞の集団であるので、細胞のある一定の%が神経突起様の伸長を行うように、レチノイン酸を用いて細胞を分化させることが可能である。この目的のために、試験に応じて、3日間、培養皿又はフラスコ中で直接10μMレチノイン酸が添加された培地中で培養物を温置した。
【0271】
マイクロタイタープレート(96ウェル)(コラーゲン1被覆プレートを含有する。)をhRGM A断片でさらに被覆した。PBSで2回洗浄した後、細胞を播種した。18から24時間後、培養物を固定し、染色した。定量分析において、hRGM A断片上で成長させたSH−SY5Y細胞を、コラーゲンIのみの上で成長させたSH−SY5Yと比較した。細胞の神経突起の長さを自動的に測定し、分析に対して使用した。
【0272】
試験方法2:NTera−2細胞を用いた神経突起成長試験におけるRGMペプチドの効果の説明
細胞培養モデルとして、ヒト多能性癌細胞株NTera2(DSMZ ACC527)を確立する。神経突起は、細胞集合体から成長し、特定の集団の周囲で神経突起の冠を形成する。
【0273】
NTera−2細胞は、ヒト胚性奇形癌細胞である。癌腫は癌性腫瘍であり、奇形腫又は奇形癌は、様々な分化及び未分化組織から構成される生殖細胞の混合性腫瘍であり、従って、SH−SY5Y培養物の場合、不均一な集団を含む。腫瘍は通常、毛髪、皮膚、歯、筋肉及び神経組織などの様々なタイプの被嚢性形態で存在する。この腫瘍は、通常、卵巣、精巣、腹腔又は脳由来である。この細胞株は、22歳の白人男性の転移性奇形癌から得られたTera−2株からクローニングされた。[http://de.wikipedia.org/wiki/][http://www.dsmz.de/human_and_animal_cell_lines]。
【0274】
NTera−2細胞は、単層を形成する、上皮性の接着性に成長する細胞である。それらが含有する顆粒状粒子が大量であるゆえに、NTera−2細胞は、その他の細胞から容易に差別化され得る。週に2回1:5に分割(継代)することによって細胞を培養した。この混合培養物の細胞は、神経細胞においてレチノイン酸を用いて分化させ得る。
【0275】
【表2】
【0276】
Nunc500mLフィルターを用いて培地をろ過滅菌し、使用するまで、4℃の冷蔵庫中で保存した。使用前に培地を水浴中で37℃に加熱した。
【0277】
NTera−2の分化
細胞を分化させるために、細胞を同じ培養フラスコ中で3週間にわたり維持することから、細胞株の培地に抗生物質を導入することが必要であった。前もって、未分化培養物をトリプシン処理して剥離(detrypsinated)し、Neubauer計数チャンバーを用いて細胞数を調べた。25mL培地とともに2.5百万個の細胞を新しい培養フラスコに移した。薄暗い条件下で25μLのレチノイン酸(10μM)を培地に再び添加した。冷蔵庫中で分注して(10M)培養物を保存し、使用前にサーモミキサー中で22℃にて再懸濁した。
【0278】
【表3】
【0279】
5%CO2ガスの37℃の恒温槽中で培地を保存し、週の初めと終わりに培地を交換した。徐々に細胞が単層の形態ではもはや増殖しなくなったが、代わりに細胞集団の小さな積み重なりが形成され、光学顕微鏡を用いずに、細胞層上で光の点として見られた。さらなる培養に対して、古い培地を吸引除去し、10mL PBSで洗浄し、次いでレチノイン酸に25mLの新鮮な培地を添加することによって培地交換した。3週間後、細胞を分化させ、実験で使用できる状態にした。
【0280】
NTera−2に対するプレート被覆
ポリ−L−リジン/ラミニンで被覆することにより、培養皿のベースにおいてNTera−2細胞の成長が促進された。この試験に対して様々なプレート方式を使用した。タンパク質の単離のために、十分な量を回収するための6ウェルのプレートが必要であった。RNA単離及び免疫蛍光の場合は、24ウェルプレートが的確であり、一方、最初に96ウェルプレートでアッセイを確立した。表で示されるように、ウェルの収容能に対応して、コーティング及び洗浄液の様々な体積を使用した。
【0281】
最初に、ウェル中にポリ−L−リジン溶液(100μg/mL)を入れ、室温で15分間温置した。次に、溶液を吸引除去し、PBSで5−10分間、3回、ウェルを洗浄した。次いで、滅菌Millipore水を用いて洗浄段階を行った。
【0282】
洗浄後、ラミニン溶液(20μg/mL)をピペットで採取してウェルに入れ、37℃、5%CO2ガス状態で恒温槽中で2時間プレートを温置した。5−10分間もう一度3回、PBSでの洗浄を行い、最終的に、ペニシリン/ストレプトマイシンあり又は無しのニューロベーサル(neurobasal)液でPBSを置換した。
【0283】
【表4】
【0284】
NTera−2を用いた神経突起伸長
分化3週間後、神経細胞を選択するために、6本のフラスコへ培養物を1:6に分割(継代)した。この時点で、培地にはレチノイン酸を添加していなかった。次の2日間内に、及び第3日に、細胞を回収し、好ましくは、その他の非神経細胞上で神経細胞を沈降させるが、しかし、強力には接着しなかったので、トップ層としてそれらは容易に除去され得た。この目的のために、培地を除去し、およそ10mL PBSで洗浄し、10mL PBSをフラスコに再添加した。瓶の側面を軽く叩くと、細胞が徐々に払い落とされた。しかし、非神経細胞は接着し続けると想定されたので、光学顕微鏡下で目視チェックを場合によっては行った。それらの明るく光る縁及び非常に丸い形態によって神経細胞を同定した。神経細胞が過剰に強固に成長した場合、これらは、除去後、短い時間、神経突起を保持する。3本のフラスコのそれぞれの中のPBS−細胞溶液を50mL遠心管で合わせ、室温にて1000rpmで5分間、細胞を遠心した。次に、2本の試験管に上清を吸引除去して添加し、ニューロベーサル液10mL中でペレットを再懸濁し、即ち10mL中で混合した。
【0285】
Neubauer計数チャンバーを用いて細胞数を調べた。ニューロベーサル液は、既に分化したNTera−2細胞のさらなる培養に対して特化された培地である。
【0286】
【表5】
【0287】
分化したNTera−2を用いた集合体の形成
細胞集合体の形成のために、細胞数計数後、ニューロベーサル液中で剥離させた分化細胞(前出セクション参照)をおよそ百万個の細胞/mLの濃度になるようにニューロベーサル液で希釈した。この細胞縣濁液の20mLを100mLの使い捨て滅菌振盪フラスコに移し、37℃及び5%CO2ガスの恒温槽中で一定に撹拌させながら一晩温置した。液体の循環が起こらず、細胞が満足する集団を形成しないので、20mLの体積を超えないことは重要であった。
【0288】
ポリリジン/ラミニンで被覆された96ウェルプレートを、hRGM A断片でさらに被覆した。PBSで2回洗浄した後、NTera集団を播種した。18から24時間後、培養物を固定し染色した。定量分析において、hRGM A断片上で成長させたNTera集団を、ポリリジン/ラミニンのみの上で成長させたNTera集団と比較した。Lingorら(J.Neurochem、2007、電子形態で公開)により記載の方法に従い、NTera集団の神経突起の長さを自動的に測定した。
【0289】
試験しようとする物質の様々な濃度を添加することにより、RGMペプチド及び断片の阻害効果を分析した。あるいは、RGM断片を基質として提供した。
【0290】
試験方法3:RGM A-ネオゲニン結合試験
a)材料
・イムノプレート:Cert.Maxi Sorp F96(NUNC、439454)
・組み換えヒトRGM A、R&D Systems;Prod.#2495−RM(260μg/mL)
・組み換えヒトネオゲニンFc、Abbott;Ludwigshafen(ALU 1514/122;425μg/mL)
・ペルオキシダーゼ−結合、アフィニティ精製マウス抗−ヒトIgG Fc断片AK(Jackson Immuno Research、Code:209−035−098)(0.8mg/mL)
・現像剤基質:ImmunoPure TMB基質キット(Pierce、#34021)
・硫酸(Merck、#4.80354.1000)
b)方法:
1.イムノプレートへのRGM A結合:
・50mM Na2CO3中の2.5μg/mL RGM A(R&D)(50μL/ウェル)
・37℃で1時間温置
2.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄(100μL/ウェル)
3.非特異的結合部位のブロッキング処理:
・PBS/0.02%Tween中の3%BSAでのブロッキング処理(200μL/ウェル)
・37℃で1時間温置
4.ネオゲニン結合:
・1%BSA PBS/0.02%Tween中の希釈液(最初の濃度1μg/mL)中にネオゲニンの添加(最初の濃度1μg/mL)
・37℃で1時間温置
5.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄(100μL/ウェル)
6.結合ネオゲニンの抗体検出:
・HRPカップリングマウス抗−ヒトIgG Fc断片AK(PBS/1%BSA中で1:2500に希釈)の添加(50μL/ウェル)
・37℃で1時間温置
7.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄(100μL/ウェル)
8.現像
・50μL発色基質/ウェルの添加(ImmunoPure TMB基質、Pierce)
・室温で1〜30分間温置
・50μLの2.5M H2SO4/ウェルを用いて反応停止
【0291】
試験方法4:RGM A及びBMP−2及び−4の間の相互作用を調べるためのインビトロ相互作用試験
下記のように相互作用試験を行った:
変法A:BMP−2/又は−4タンパク質の固定化及び様々なRGM A−Fc融合タンパク質の結合の検出
1.プレート:
・Immunoplate Cert.MaxiSorp F96(Nunc、439454)
2.被覆:
組み換えヒトBMP−2、カタログ番号355−BM 会社:R&D Systems;組み換えヒトRGM A、R&D Systems;製品番号2495−RM又は組み換えヒトBMP−4、カタログ番号314−BM、会社:R&D Systems;
・濃度:10μg/mL
・使用量:Na2CO3中2.5μg/mL;添加:50μL/ウェル
・湿潤チャンバー中37℃で1時間
3.洗浄段階:
PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
4.ブロッキング処理:
・PBS/0.02%Tween中の3%BSA、湿潤チャンバー中、37℃で1時間;添加:200μL/ウェル
5.RGM Aペプチド:
RGM A−Fc断片
・1μg/mL開始濃度、次いでPBS/0.02%Tween20を用いて1:2に希釈。
・室温で1時間温置
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
6.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
7.抗体:
・ビオチン抗ヒトFc(R&D−Systems)、カタログ番号709065;1mg/mL;
・0.6%BAS/PBS−T(0.02%Tween)中で1:200
・添加:50μL/ウェル
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
8.二次抗体:Strep.POD(Roche);カタログ番号11089153001
・500U;0.6%BAS/PBS−T(0.02%Tween)中1:5000
・添加:50μL/ウェル
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
9.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
10.基質:
・ImmunoPure TMB基質キット;Pierce、#34021
・発色時間:およそ1−30分、PBS/0.02%Tween20の1:1混合物;添加:50μL/ウェル
11.停止:
・2.5M H2SO4;添加:50μL/ウェル
変法B:様々なRGM A−Fc融合タンパク質の固定化及びBMP−2/又は−4タンパク質の結合の検出
1.プレート:
Immunoplate Cert.MaxiSorp F6(Nunc、439454)
2.コーティング:
RGM A−Fc断片
・使用量:Na2CO3中2.5μg/mL;添加:50μL/ウェル、
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
3.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
4.ブロッキング処理:
・PBS/0.02%Tween中3%BSA、湿潤チャンバー中、37℃で1時間
・添加:200μL/ウェル、温置:湿潤チャンバー中、37℃で1時間
5.BMPペプチド:
組み換えヒトBMP−2、カタログ番号355−BM、会社:R&D Systems;又は組み換えヒトRGM A、R&D Systems;製品番号2495−RM、組み換えヒトBMP−4、カタログ番号314−BM、会社:R&D Systems;各場合の濃度:10μg/mL
希釈段階:各場合、PBS/0.02%Tween20で1:2
6.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
7.抗体:
抗ヒトBMP−4ビオチン抗体;カタログ番号BAM7572、1%BSA−PBS−T中1:200
8.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
9.二次抗体:
Strep.POD(Roche)
カタログ番号11089153001;500U;0.6%BAS/PBS−T(0.02%Tween)中1:5000
添加:50μL/ウェル
・湿潤チャンバー中、37℃で1時間
10.洗浄段階:
・PBS/0.02%Tween20で3回洗浄
11.基質:
ImmunoPure TMB基質キット;(Pierce、#34021)
・発色時間:およそ1−30分間
・PBS/0.02%Tween20の1:1混合物;添加:50μL/ウェル
12.停止:
・2.5M H2SO4;添加:50μL/ウェル
変法C:MAB 4A9によるBMP−4への全長ヒトRGM Aの結合の阻害
1.プレート:Immuno Plate Cert.Maxi Sorp F96(Fa.NUNC、439454)
2.被覆:
組み換えヒトBMP−4 Canto.:314−BP
入手元:R&D Systems
濃度:10μg/mL
使用量:中2.5μg/mL(Na2CO3)/50μL/ウェル
湿潤チャンバー中、37℃で1時間温置
3.洗浄:3xPBS/0.02%Tween20
4.ブロッキング処理:PBS/0.02%Tween中3%BSA、湿潤チャンバー中、37℃で1時間温置、200μL/ウェル
5.hRGM A:
#788 RGMA(47−422)290μg/mL
ALU 2821/117 11.12.07断片0.5μg/mL一定(50μl)
+
MAB 4A9開始濃度:10μg/mL、1:2希釈(50μL)
6.洗浄:3xPBS/0.02%Tween20
7.一次検出抗体:
ビオチン抗ヒトFc 1mg/mL
Jackson Immuno Research(カタログ番号:709−065−149)1.5%BSA/PBS−T中で1:1000希釈、75μL/ウェル
湿潤チャンバー中、37℃で1時間温置
8.洗浄:3xPBS/0.02%Tween20
9.二次検出ツール:
ストレプトアビジンカップリングペルオキシダーゼ(Roche)
カタログ番号:11089153001、500U
1.5%BSA/PBS−T(0.02%Tween)75μL/ウェル中で1:5000、
湿潤チャンバー中、37℃で1時間温置
10.洗浄:3xPBS/0.02%Tween20
11.基質:Immuno Pure TMB基質キット(Pierce、#34021)発色時間:1−30分間、1:1混合
12.停止:2.5M H2SO4
【0292】
2.調製実施例
調製実施例1:哺乳動物細胞におけるRGM Aタンパク質断片の調製
活性RGM Aの特徴を調べるために、次のRGM A分子をFc融合タンパク質の形態で哺乳動物細胞(HEK293)において発現させた。
41−168/Xa
47−90
47−168
316−386
1−450
【0293】
この目的のために、ベクター:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/Xa/hIgGλ hc 257−停止)xHindIII/EcoRI/ホスファターゼ(Invitrogen)に、特定分子をコードするDNAをクローニングした。この目的のために、RZPDクローン(クローンAL136826(DKFZp434D0727);公開されたRZPD配列:BC015886、AL136826)から、PCRを用いて、特定の断片領域をコードするDNAを増幅した。この目的のために、下記で挙げられ、公開されたRGMA配列由来である、オリゴヌクレオチドプライマー(公開配列:NM_020211)を使用した。
【0294】
上述のRZPDクローンpSport−1DKFZp434D0727においてこれらのプライマー及びAccuPrimeポリメラーゼを用いて、各場合においてPCRを行った。PCR産物の精製、HindIII/EcoRIでの消化及び得られるバンドの溶出後、pcDNA3.1(+)Zeo IgK/Xa/hIgGλhc257−停止)xHindIII/EcoRI/ホスファターゼにおいて、所望の断片を結合(ライゲーション)した。NEBTurbo細胞(Invitrogen)又はTOP10細胞(Invitrogen)を形質転換するために、得られた産物を使用した。配列決定によって、得られた配列の正確さについて、得られたクローンを調べた。
【0295】
41−168/Xa:
AM131:
【0296】
【化7】
HindIIIセグメントを有するアミノ酸F41で始まるhRGM Aセンスプライマー。
【0297】
AM132:
【0298】
【化8】
第Xa因子及びEcoRI切断部位のあるアミノ酸D168までのhRGM Aアンチセンスプライマー。
【0299】
NEBTurbo細胞への形質転換;
プラスミド名:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/hRGM A 41−168/Xa/Xa/hIgGλ hc 257−停止(attなし)
47−90:
AM169:
【0300】
【化9】
HindIIIセグメントを有するアミノ酸P47で始まるhRGM Aセンスプライマー。
【0301】
AM171:
【0302】
【化10】
EcoRI切断部位があるアミノ酸A90までのhRGM Aアンチセンスプライマー
TOP10細胞、Laboratory journal ALU2163/5への形質転換
プラスミド名:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/hRGM A47−90/Xa/hIgGλ hc 257−停止(attなし)
47−168:
AM169:
【0303】
【化11】
HindIIIセグメントがあるアミノ酸P47で始まるhRGMAセンスプライマー
AM175:
【0304】
【化12】
EcoRI切断部位があるアミノ酸D168までのhRGMAアンチセンスプライマー
TOP10細胞への形質転換
プラスミド名:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/hRGMA47−168/Xa/hIgGλ hc 257−停止(attなし)
316−386:
AM181:
【0305】
【化13】
HindIIIセグメントがあるアミノ酸L316で始まるhRGMAセンスプライマー
AM182:
【0306】
【化14】
EcoRI切断部位があるアミノ酸G386までのhRGMAアンチセンスプライマー
TOP10細胞への形質転換
プラスミド名:pcDNA3.1(+)Zeo IgK/hRGMA 166−386/Xa/hIgGλ hc 257−停止(attなし)
1−450:
Mey 744:
【0307】
【化15】
開始ATGがあるhRGMAプライマー。
【0308】
Mey745:
【0309】
【化16】
停止のないアミノ酸C450までのhRGMAアンチセンスプライマー。
【0310】
比較のために、さらなるRGMAを用いて同様にして次のFc融合タンパク質を作製したが、それらの作製は個別には説明しない。
【0311】
266−284
70−120
110−169
169−422
266−335
47−422 Myc His
HEK293F細胞(DSMZ番号ACC305)にプラスミドを遺伝子移入し、発現された融合タンパク質を上記のように単離した。
【0312】
上記の方法を用いて、タンパク質の分析及び濃度測定を行った。
【0313】
3.操作実施例
操作実施例1
BMP−4とのインビトロ相互作用アッセイ;RGMAとの様々なRGMA断片の比較
試験した融合タンパク質:
RGMA−Fc
47−168−Fc(「断片0」)
218−284−Fc(「断片2」)
266−335−Fc(「断片3」)
169−422−Fc(「断片6」)
上記の試験方法4、変法Bに従い、融合タンパク質(1mg/mL)の固定化によって、試験を行った。抗BMP−4ビオチン抗体を用いてBMP−4の結合を検出した。
【0314】
図3で結果を図示する。47−168断片との驚くべきより顕著な結合に加えて、RGMAとのBMP−4の顕著な結合が観察された。
【0315】
操作実施例2
BMP−4及びBMP−2とのインビトロ相互作用アッセイ;RGMAに対するRGMA断片47−168の比較
試験された融合タンパク質:
RGM A−Fc
47−168−Fc(「断片0」)
上記の試験方法4、変法Bに従い、融合タンパク質(1mg/mL)の固定化によって、試験を行った。抗BMP−4及び抗BMP−2ビオチン抗体をそれぞれ用いてBMP−4及び−2の結合を検出した。
【0316】
図4で結果を図示する。47−168断片との驚くべきより顕著な結合に加えて、RGMAとのBMP−4及び−2の顕著な結合が観察された。BMP−2及び4は、各場合で、ほぼ同じ強さで結合した。
【0317】
操作実施例3
BMP−4とのインビトロ相互作用アッセイ;様々なRGMA断片の比較
試験した融合タンパク質:
47−90−Fc(#785)
47−168−Fc(#786)
316−386−Fc(#790)
169−422−Fc(#769)
70−120−Fc(#779)
110−169−Fc(#780)
266−335−Fc(#789)
47−422MyC−HIS(#801)
上記の試験方法4、変法Aに従い、BMP−4(1mg/mL)の固定化によって、試験を行った。抗ヒトFc又は抗Myc抗ウサギ(Invitrogen)抗体を用いて、融合タンパク質の結合を検出した。
【0318】
添付の図5で結果を示す。
【0319】
本発明による、断片#785、#786及び#790の顕著な濃度依存性結合が観察されたが、#786結合が最も強かった。
【0320】
操作実施例4
BMP−4とのインビトロ相互作用アッセイ;様々な結合RGM A断片の比較
試験した融合タンパク質:
47−90−Fc(#785)
47−168−Fc(#786)
316−386−Fc(#790)
上記の試験方法4、変法Aに従い、BMP−4(1mg/mL)の固定化によって、試験を行った。抗ヒト抗体を用いて、融合タンパク質の結合を検出した。
【0321】
図6A、B及びCで結果を図示する。この結果は、例示的な実施形態3の知見の確証となるものである。
【0322】
操作実施例5
神経線維成長試験での合成RGMA断片の研究
ヒトNTera神経細胞又はヒトSH−SY5Y細胞を用いて、調製実施例1に従い作製される下記で挙げるRGMA断片:
47−168−Fc(#786)
316-386−Fc(#790)
を神経突起成長試験での阻害活性について試験した(上記試験方法1及び2参照)。図7A(SH−SY5Yに対して)及び7B(NTeraに対して)で結果を示す。
【0323】
47−168−Fc(#786)は、顕著により高い活性を示す。
【0324】
本説明セクションで引用される文書の開示を明確に参照する。
【0325】
操作実施例6
hRGM A断片47−168に結合するモノクローナル抗体4A9の作製及び特性評価
別段の断りがない限り、抗体作製及び特性評価の標準的な方法を使用した。
【0326】
a)作製及び免疫ブロッティング
全長ヒトRGM Aタンパク質を用いてラットに免疫付与した。
【0327】
Sprague−Dawleyラットに免疫付与し、ヒトRGM Aでの皮下注射により追加免疫した。完全フロイントアジュバント中25μgの最初の注射で開始し、不完全フロイントアジュバント中25μgの追加免疫注射を行い、動物に3週間ごとに注射した。融合の4日前に、融合のために選択されたラットに食塩水中の25μg hRGM Aを皮下注射した。免疫付与動物から脾臓を取り出し、単一細胞縣濁液を調製した。SP2/0骨髄腫細胞を培養物から回収し、洗浄した。標準的技術を使用して50%PEG3000を用いて、5:1の比で脾臓細胞及び腫瘍細胞を混合し、融合させた(Kohler及びMilstein、1975)。2.5x105個の脾臓細胞/ウェルの密度で、選択培地中で、96ウェルプレートに融合細胞を播種した。7から10日間、37℃で融合物を温置した。肉眼で見えるコロニーを観察し、上清を除去し、hRGM A ELISAで試験した。
【0328】
限界希釈法によって、所望の特徴を有するmAbを産生していたハイブリドーマをサブクローニングした。hRGM Aを遺伝子移入したHEK293細胞を用いて、ELISA及びFACsによって、hRGM Aへの結合について、サブクローンを含有する上清をアッセイした。
【0329】
全長ヒトRGM A及びその断片を用いたハイブリドーマスクリーニング後、ウエスタンブロットにおいてそれが断片47−168(レーン5)を認識するので、MAB 4F9を単離した(図8A)。この抗体は、固相ELISAアッセイにおいてBMP−4及び全長ヒトRGM Aの相互作用を阻止した(図8B)。
【0330】
b)4A9のエピトープマッピング
抗体の固定化:
MAB 4A9のエピトープを正確に説明するために、エピトープマッピング実験を行った。この目的に対して、4A9をCNBr−活性化セファロースレジンに結合させた。4A9溶液のおよそ5−6nmol(5.76mg/mLの141μL)を緩衝液A(100mM NaHCO3、500mM NaCl、pH8)中のセファロースレジン20mgに添加し、室温で4時間混合した。緩衝液B(100mM NaHCO3、100mM NaCl、pH8)で抗体結合レジンを3回洗浄した後、hRGM A断片47−168Fc(1.18mg/mL、1.5nmol)を200μL緩衝液Bとともにレジンに添加した。混合物を回転器上で4℃で一晩温置した。抗体4A9及び抗原hRGM A47−168を含有するレジンを緩衝液Bで3回洗浄し、トリプシンでのエピトープ切断に対して使用した。
【0331】
エピトープ切断:
この目的に対して、MAB及び抗原を含有するレジンを200μL緩衝液B中で縣濁した。0.1μg/μLの濃度になるように、再懸濁緩衝液(50mM HOAc)200μL中でトリプシン20μg(Promega、Madison WI)を溶解させた。それぞれトリプシン0.6μg及び0.35μgを用いて、1:100及び1:200の比(w/w)の酵素:抗原で、抗原切断を行った。GCオーブン中にて37℃で回転させながら、7.5時間、反応を行った。消化後、緩衝液Bでレジンを2回洗浄した。
【0332】
エピトープ放出:
2%ギ酸200μLずつで3回レジンを洗浄することによって、MABに依然として結合した残りの抗原ペプチドを放出させ、各溶出分画を個々に回収した(溶出液1、2及び3)。溶出された分画は、MAB 4A9エピトープを構成するペプチドを含有すると予想される。
【0333】
質量分析(MS)によるペプチド分析:
脱塩後、トリプシン消化からの溶出分画を質量分析に供した。α−シアノ−4−ヒドロキシけい皮酸(CHCA)マトリクス(飽和、50%アセトニトリル、0.3%TFA中)を用いて、Voyager DE−Pro(Applied Biosystems、Foster City、CA)においてマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)MSを行った。Agilent6510QTOF MSを用いて、LC−ESI−MS/MSを行った。8μLの注入を使用し、特定のMSシグナル基準に合致する上位3種類のイオンにおいてMS/MSを行った。MASCOT(Matrix Science)を用いてデータを検索したが、データの殆どは手動で判断した。
【0334】
全ての洗浄及び溶出分画を最初にLC−MS/MSにより分析し、多くのものをMALDI−MSにより分析したが、得られたデータは溶出1分画に相当する。
【0335】
結果:
トリプシンエピトープ切断実験の溶出1分画において、hRGM Aの断片47−168のペプチド50−89及び96−126を同定した。ヒトRGM AにおけるMAB4A9ペプチドの位置を下記に示す。hRGM Aの断片47−168を太字で示す。MAB 4A9保護ペプチドとして同定される2つのペプチドに下線を付す。これらのペプチドの1つの中に正確なエピトープが位置し、その他のペプチドがジスルフィド結合を介して連結され得る。
【0336】
>hRGMA−NP064596
【0337】
【化17】
【0338】
c)ペプチドスキャニングを介したエピトープマッピング
MAB 4A9のエピトープを同定するために、領域15から168に広がるネスト化された重複ペプチド15アミノ酸長を使用した。ELISAによってペプチドの結合を評価し、このために、このペプチドでポリスチレンプレートを被覆した。次に、MAB 4A9を用いてペプチドを調べ、ペルオキシダーゼ結合抗ラットFc抗体及びTMB基質を用いて、ELISAによって結合を可視化した。
【0339】
MAB 4A9に対してある反応性ペプチドが観察されたが、このペプチドを下記で示す。
【0340】
51 LKCNSEFWSA TSGSHAPASD DTPEFCAALR SYALCTRRTA RTCRGDLAYH SAVHGIEDLM SQHNCSKDGP TSQPRLRTLP PAGDSQERSD SPEICHYEKS FHKHSATPNY THCGLFGD 168
MAB 4A9は、太字で下線を付して強調した文字のペプチドに結合する。このペプチドはアミノ酸66−80内にあり、エピトープ切断及び質量分析解析により同定されるペプチドの1つによく合致した。
【0341】
操作実施例7
BRE−Lucアッセイを用いたBMPシグナル伝達におけるhRGM Aのアゴニスト性又はアンタゴニスト性効果の評価
a)材料:
・200μg/mLで3種類の化合物を提供した。
断片#785;断片#786及び断片#788(IgK/hRGM A47−422/Xa切断部位/Fc)
・R&D Systems Europe、Lille、Franceから、組み換えhBMP−2(CHO細胞より;#355−BM)及びモノクローナル抗ヒトBMP2/4抗体(#MAB3552)を得た。
・PromegaからBright−Gloルシフェラーゼアッセイキットを購入した。
【0342】
b)細胞培養:
BMP−反応性C3H10−B12(Logeart−Avramoglou D、Bourguignon M、Oudina K、Ten Dijke P、Petite H。分化プロモーター−ルシフェラーゼコンストラクトの阻害剤を遺伝子移入した細胞を用いた生物学的活性骨形成タンパク質の判定のためのアッセイ。Anal Biochem 2006;349:78−86)を4x104細胞/cm2の密度で96ウェルプレートに播種し、湿度を与えた37℃、5%CO2/95%大気環境中で24時間、BME(BME=イーグル基礎培地)(10%FBS添加)中で培養した。細胞をPBSで2回すすぎ、rhBMP−2(50ng/mL)あり又は無しで、試験される各AS化合物又は抗ヒトBMP2/4抗体(0.01から10,000ng/mL)の何れかを含有するBME/0.5%(w/v)BSA下で24時間培養し、その後、含有されるルシフェラーゼ活性についてアッセイした。実験は全て、トリプリケート(各3回測定)で行い、時間をおいて2回繰り返した。
【0343】
c)結果:
固相ELISA実験において、MAB 4A9は、BMP−4に対する全長ヒトRGM Aの結合を完全に阻止するが、これは、47−168ヒトRGM A断片内にある4A9のドメインがBMP−4との相互作用に重要であるという明確な例となる。
【0344】
細胞アッセイにおいて、様々な濃度(0から50ng/mL)のrhBMP−2でのC3H−B12の処理後に得られたルシフェラーゼ活性の用量依存性反応を図9で示す。
【0345】
試験化合物の様々な濃度にC3H−B12を24時間曝露し、個々の細胞ルシフェラーゼ活性の変化を監視することによって、BRE−Lucアッセイを用いたBMPシグナル伝達における試験ポリペプチドのアゴニスト性効果を調べた(図10)。3種類の試験化合物の何れも、それら自身においてルシフェラーゼ活性を誘導した。
【0346】
rhBMP−2(50ng/mL)と組み合わせられた場合、断片#785は、BMP−2−誘導性ルシフェラーゼ活性をあまり変化させなかった。対して、断片#786及び#788は、化合物が10μg/mLで使用された場合、rhBMP−2−誘導性活性の阻害の88%及び93%に達するルシフェラーゼ活性の用量依存性阻害を示した。断片#786及び#788は、BMP−2アンタゴニスト対照として使用される抗rhBMP−2抗体と同様の阻害効果を示した。断片#786及び#788及び抗−BMP−2Abに対する阻害の50%に対する同等用量(ED50)値は、それぞれ100ng/mL、〜80ng/mL及び〜50ng/mLであった。
【0347】
d)結論
それら自身における試験化合物はBMPシグナル伝達経路を誘導せず、結果として、BMPアゴニストとしてみなされ得ない。対して、rhBMP−2と組み合わせられた場合、これらのうち2つ(断片#786及び#788)は、用量依存的にrhBMP−2−誘導性活性を阻害した。BMP−2タンパク質とのこのような化合物の複合体形成は、細胞膜受容体へのBMP−2の結合が損なわれ得、続いて、BMP−介在シグナル伝達が阻止され得る。しかし、この実験に対して使用される細胞モデルを考慮すると、BMP−2シグナル伝達経路における試験化合物の直接的細胞内阻害効果は除外され得ない。
【0348】
本明細書中で引用される文献の開示は、参照により組み込まれる。
【0349】
【表6】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反発性ガイダンス分子(RGM)の骨形成タンパク質(BMP)結合ドメイン。
【請求項2】
哺乳動物のRGM由来の、請求項1に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項3】
配列番号2に従うヒトRGM A、配列番号4に従うヒトRGM B又は配列番号6に従うヒトRGM C由来の、請求項1又は請求項2に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項4】
およそ170以下の長さ及びRGM Aのフォンウィルブランド因子ドメインに対するN末端を有するアミノ酸配列範囲に位置する、請求項1から請求項3の一項に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項5】
少なくとも1つのさらなる異なるアミノ酸配列との機能的連結において少なくとも1つのBMP結合ドメインを含有する、およそ30から150アミノ酸基の長さを有する請求項4に記載のBMP結合ドメイン、その機能的誘導体及び融合タンパク質。
【請求項6】
配列番号7及び8に従う次の部分的配列の少なくとも1つを特徴とする、請求項1から請求項5の一項に記載のBMP結合ドメイン:
X1C(K/R)IX2(K/R)CX3(S/T/A)(E/D)(F/Y)X4SX5T(配列番号7)
(式中、X1からX5は、何らかのアミノ酸基を表す。);又は
X6CX7ALRX8YAX9CTX10RTX11(配列番号8)
(式中、X6からX11は何らかのアミノ酸基を表す。);
又は式:
(配列番号7)−Link1−(配列番号8)
の部分配列(式中、Link1は、13から28個の何らかの連続アミノ酸基を含有する配列番号7−及び8−架橋アミノ酸配列を表す。)。
【請求項7】
配列番号2の次のアミノ酸配列の1つ:
47前後から168前後のアミノ酸位置
47前後から90前後のアミノ酸位置もしくは
75前後から121前後のアミノ酸位置;
又は配列番号4の次のアミノ酸配列の1つ:
94前後から209前後のアミノ酸位置
94前後から137前後のアミノ酸位置もしくは
122前後から168前後のアミノ酸位置;
配列番号6の次のアミノ酸配列の1つ:
36前後から172前後のアミノ酸位置
36前後から94前後のアミノ酸位置もしくは
80前後から125前後のアミノ酸位置;
を含有する、請求項1から請求項6の一項に記載のBMP結合ドメイン又はその機能的BMP結合断片。
【請求項8】
配列番号2に従う位置316前後から386前後の配列範囲からの、配列番号4に従う位置350前後から421前後の配列範囲からの、又は配列番号6に従う位置314前後から369前後の配列範囲からの、少なくとも10連続アミノ酸基を含有する、請求項1から請求項3の一項に記載のBMP結合ドメイン又はその結合断片。
【請求項9】
配列番号2に従う位置47前後から168前後の配列範囲からの、配列番号4に従う位置94前後から209前後の配列範囲からの、又は配列番号6に従う位置36前後から172前後の配列範囲からの、少なくとも10連続アミノ酸基を含有する、請求項7に記載のBMP結合ドメイン又はその結合断片。
【請求項10】
BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12から選択される少なくとも1つのBMPに結合する、特にBMP−2及び/又はBMP−4に結合する、請求項1から請求項9の一項に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項11】
ネオゲニンにも結合する、請求項10に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項12】
請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインの抗原性ポリペプチド断片。
【請求項13】
BMP及び/又はネオゲニンへのRGMの結合を調節する、免疫グロブリン分子の産生のために使用され得る、請求項12に記載の抗原性ポリペプチド断片。
【請求項14】
配列番号2、4又は6に従う配列の1つを有するペプチドの少なくとも10連続アミノ酸基を含有する、請求項12又は請求項13に記載の抗原性ポリペプチド断片。
【請求項15】
一価もしくは多価担体ポリペプチド又は第二の生物学的活性ポリペプチドから選択される第二のポリペプチドに操作可能に連結される、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインから選択される少なくとも1つの第一の生物学的活性ポリペプチドを含有する、融合タンパク質
【請求項16】
多価担体が少なくとも1つのFc又はFc’’を含有し、その2本のポリペプチド鎖のそれぞれが、請求項1から請求項10の一項に記載の同じ又は異なるBMP結合ドメインに操作可能に連結される、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体を産生させるための、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインの使用又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片の使用。
【請求項18】
抗血清又は抗体が、ネオゲニン(ネオゲニン受容体)へのRGMの結合を調節する、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
診断又は治療用途のための、請求項17及び請求項18の一項での定義に従う、RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体。
【請求項20】
RGM又はRGM断片とのネオゲニン受容体(ネオゲニン)の相互作用が介在する疾病又は病期の診断又は治療のための医薬品を調製するための、請求項19に記載のポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体の使用。
【請求項21】
疾病又は病期が、
a)頭蓋骨、脳及び脊髄への機械的損傷、
b)神経変性、炎症又は自己免疫疾患から選択される慢性疾患、
c)神経再生、軸索発芽、神経突起伸展及び神経可塑性の疾患、
d)腫瘍性疾患及び腫瘍転移
から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
関連する受容体(ネオゲニン又はBMP)とのRGMもしくはRGM断片の相互作用の異常又は障害が介在する疾病又は病期の診断又は治療用の薬剤を調製するための、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインの使用又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項23】
疾病又は病期が、
a)過剰な神経突起発芽及び/又は病的シナプス形成により引き起こされる精神状態及び慢性疼痛状態における神経突起生成プロセスの変化;
b)慢性疾患に伴う貧血、若年型ヘモクロマトーシスなどの鉄代謝障害に関連する疾患;
c)骨の成長障害に関連する疾患;
d)軟骨の退行性変化に関連する疾患;
e)椎間板及び椎体への損傷に関連する疾患;
f)無秩序で無制御の細胞移動プロセスに関連する疾患
から選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
(BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及び/又はBMP−12への、特にBMP−2及び/又は4への結合による)BMPシグナル経路の刺激又は増幅により治療され得る疾患又は病期の診断用又は治療用の薬剤を調製するための、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインもしくはその結合断片の使用又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項25】
骨成長障害が関与する疾患の治療のための、又は骨折の治療のための、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
自己免疫疾患、特に、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、類天疱瘡、心筋ミオパチー、セリアック病、疱疹状皮膚炎、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、瘢痕性類天疱瘡、全身性硬化症(CREST症候群)、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚血管炎、デゴス病、皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、円板状紅斑性狼瘡、本態性混合性クリオグロブリン血症、線維筋痛、グッドパスチャー症候群、グレーブズ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、免疫グロブリンAニューロパシー、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、膜性糸球体腎炎、メニエール病、混合結合組織病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発筋炎、皮膚筋炎、原発性低γグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ロイター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、尋常性白斑及びウェゲナー肉芽腫症から選択されるもの;
又は脱毛性疾患、特に、円形脱毛症、全頭脱毛症、全身性脱毛症、男性型脱毛症、休止期脱毛症、成長期脱毛症及び化学療法誘発脱毛症から選択されるもの、の診断又は治療のための薬剤を調製するための、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインもしくはその結合断片の使用又は請求項15及び16の一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項27】
RGM結合リガンドの検出又は同定のための標的としての、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインの使用。
【請求項28】
能動又は受動免疫付与のための免疫原としての、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン又は請求項12から請求項14の一項に記載の断片の使用。
【請求項29】
請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片の抗原量で哺乳動物に免疫付与をすることにより獲得可能な、ポリクローナル抗血清。
【請求項30】
請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインに対するかもしくは請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片に対するモノクローナル抗体;又はモノクローナル抗RGM A抗体(RGM Aへの該抗体の結合は、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインによるか又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片により調節される。);又は場合によってはヒト化型のその抗原結合断片。
【請求項31】
a)請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質、
b)請求項29及び請求項30の一項に記載のモノクローナル又はポリクローナル抗体
から選択される少なくとも1つの活性成分の医薬的に許容可能な担体を含有する、医薬品。
【請求項32】
髄腔内、静脈内、皮下(subcutaneous)、経口又は非経口、経皮、皮下(subdermal)、骨内(intraosseal)、鼻腔、体外及び吸入投与のための、請求項31に記載の医薬品。
【請求項33】
液体、半固体又は固体担体中の、請求項1から請求項11の一項に記載の少なくとも1つのBMP結合ドメイン又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質を含有する、骨折の治療のための医薬品。
【請求項34】
少なくとも1つの制御核酸配列に操作可能に連結される、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン、請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片に対する少なくとも1つのコード核酸配列を含有する発現ベクター。
【請求項35】
請求項34に記載の少なくとも1つのベクターを有する組み換え微生物。
【請求項36】
請求項30に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株。
【請求項37】
請求項35に記載の組み換え微生物が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン、請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片を作製するための方法。
【請求項38】
請求項36に記載のハイブリドーマ細胞株が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される、請求項30に記載のモノクローナル抗体を作製するための方法。
【請求項39】
RGM受容体、特にネオゲニンの受容体又はBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12から選択される少なくとも1つのBMPを刺激するための医薬品を調製するための、請求項1から請求項16の一項に記載のBMP結合ドメイン又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項40】
特にネオゲニンなどのRGMの受容体の活性化を阻止するための医薬品を調製するための、請求項30に記載のモノクローナル抗体の使用。
【請求項1】
反発性ガイダンス分子(RGM)の骨形成タンパク質(BMP)結合ドメイン。
【請求項2】
哺乳動物のRGM由来の、請求項1に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項3】
配列番号2に従うヒトRGM A、配列番号4に従うヒトRGM B又は配列番号6に従うヒトRGM C由来の、請求項1又は請求項2に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項4】
およそ170以下の長さ及びRGM Aのフォンウィルブランド因子ドメインに対するN末端を有するアミノ酸配列範囲に位置する、請求項1から請求項3の一項に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項5】
少なくとも1つのさらなる異なるアミノ酸配列との機能的連結において少なくとも1つのBMP結合ドメインを含有する、およそ30から150アミノ酸基の長さを有する請求項4に記載のBMP結合ドメイン、その機能的誘導体及び融合タンパク質。
【請求項6】
配列番号7及び8に従う次の部分的配列の少なくとも1つを特徴とする、請求項1から請求項5の一項に記載のBMP結合ドメイン:
X1C(K/R)IX2(K/R)CX3(S/T/A)(E/D)(F/Y)X4SX5T(配列番号7)
(式中、X1からX5は、何らかのアミノ酸基を表す。);又は
X6CX7ALRX8YAX9CTX10RTX11(配列番号8)
(式中、X6からX11は何らかのアミノ酸基を表す。);
又は式:
(配列番号7)−Link1−(配列番号8)
の部分配列(式中、Link1は、13から28個の何らかの連続アミノ酸基を含有する配列番号7−及び8−架橋アミノ酸配列を表す。)。
【請求項7】
配列番号2の次のアミノ酸配列の1つ:
47前後から168前後のアミノ酸位置
47前後から90前後のアミノ酸位置もしくは
75前後から121前後のアミノ酸位置;
又は配列番号4の次のアミノ酸配列の1つ:
94前後から209前後のアミノ酸位置
94前後から137前後のアミノ酸位置もしくは
122前後から168前後のアミノ酸位置;
配列番号6の次のアミノ酸配列の1つ:
36前後から172前後のアミノ酸位置
36前後から94前後のアミノ酸位置もしくは
80前後から125前後のアミノ酸位置;
を含有する、請求項1から請求項6の一項に記載のBMP結合ドメイン又はその機能的BMP結合断片。
【請求項8】
配列番号2に従う位置316前後から386前後の配列範囲からの、配列番号4に従う位置350前後から421前後の配列範囲からの、又は配列番号6に従う位置314前後から369前後の配列範囲からの、少なくとも10連続アミノ酸基を含有する、請求項1から請求項3の一項に記載のBMP結合ドメイン又はその結合断片。
【請求項9】
配列番号2に従う位置47前後から168前後の配列範囲からの、配列番号4に従う位置94前後から209前後の配列範囲からの、又は配列番号6に従う位置36前後から172前後の配列範囲からの、少なくとも10連続アミノ酸基を含有する、請求項7に記載のBMP結合ドメイン又はその結合断片。
【請求項10】
BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12から選択される少なくとも1つのBMPに結合する、特にBMP−2及び/又はBMP−4に結合する、請求項1から請求項9の一項に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項11】
ネオゲニンにも結合する、請求項10に記載のBMP結合ドメイン。
【請求項12】
請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインの抗原性ポリペプチド断片。
【請求項13】
BMP及び/又はネオゲニンへのRGMの結合を調節する、免疫グロブリン分子の産生のために使用され得る、請求項12に記載の抗原性ポリペプチド断片。
【請求項14】
配列番号2、4又は6に従う配列の1つを有するペプチドの少なくとも10連続アミノ酸基を含有する、請求項12又は請求項13に記載の抗原性ポリペプチド断片。
【請求項15】
一価もしくは多価担体ポリペプチド又は第二の生物学的活性ポリペプチドから選択される第二のポリペプチドに操作可能に連結される、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインから選択される少なくとも1つの第一の生物学的活性ポリペプチドを含有する、融合タンパク質
【請求項16】
多価担体が少なくとも1つのFc又はFc’’を含有し、その2本のポリペプチド鎖のそれぞれが、請求項1から請求項10の一項に記載の同じ又は異なるBMP結合ドメインに操作可能に連結される、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体を産生させるための、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインの使用又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片の使用。
【請求項18】
抗血清又は抗体が、ネオゲニン(ネオゲニン受容体)へのRGMの結合を調節する、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
診断又は治療用途のための、請求項17及び請求項18の一項での定義に従う、RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体。
【請求項20】
RGM又はRGM断片とのネオゲニン受容体(ネオゲニン)の相互作用が介在する疾病又は病期の診断又は治療のための医薬品を調製するための、請求項19に記載のポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体の使用。
【請求項21】
疾病又は病期が、
a)頭蓋骨、脳及び脊髄への機械的損傷、
b)神経変性、炎症又は自己免疫疾患から選択される慢性疾患、
c)神経再生、軸索発芽、神経突起伸展及び神経可塑性の疾患、
d)腫瘍性疾患及び腫瘍転移
から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
関連する受容体(ネオゲニン又はBMP)とのRGMもしくはRGM断片の相互作用の異常又は障害が介在する疾病又は病期の診断又は治療用の薬剤を調製するための、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインの使用又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項23】
疾病又は病期が、
a)過剰な神経突起発芽及び/又は病的シナプス形成により引き起こされる精神状態及び慢性疼痛状態における神経突起生成プロセスの変化;
b)慢性疾患に伴う貧血、若年型ヘモクロマトーシスなどの鉄代謝障害に関連する疾患;
c)骨の成長障害に関連する疾患;
d)軟骨の退行性変化に関連する疾患;
e)椎間板及び椎体への損傷に関連する疾患;
f)無秩序で無制御の細胞移動プロセスに関連する疾患
から選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
(BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及び/又はBMP−12への、特にBMP−2及び/又は4への結合による)BMPシグナル経路の刺激又は増幅により治療され得る疾患又は病期の診断用又は治療用の薬剤を調製するための、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインもしくはその結合断片の使用又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項25】
骨成長障害が関与する疾患の治療のための、又は骨折の治療のための、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
自己免疫疾患、特に、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、類天疱瘡、心筋ミオパチー、セリアック病、疱疹状皮膚炎、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、瘢痕性類天疱瘡、全身性硬化症(CREST症候群)、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚血管炎、デゴス病、皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、円板状紅斑性狼瘡、本態性混合性クリオグロブリン血症、線維筋痛、グッドパスチャー症候群、グレーブズ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、免疫グロブリンAニューロパシー、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、膜性糸球体腎炎、メニエール病、混合結合組織病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発筋炎、皮膚筋炎、原発性低γグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ロイター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、尋常性白斑及びウェゲナー肉芽腫症から選択されるもの;
又は脱毛性疾患、特に、円形脱毛症、全頭脱毛症、全身性脱毛症、男性型脱毛症、休止期脱毛症、成長期脱毛症及び化学療法誘発脱毛症から選択されるもの、の診断又は治療のための薬剤を調製するための、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインもしくはその結合断片の使用又は請求項15及び16の一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項27】
RGM結合リガンドの検出又は同定のための標的としての、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインの使用。
【請求項28】
能動又は受動免疫付与のための免疫原としての、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン又は請求項12から請求項14の一項に記載の断片の使用。
【請求項29】
請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片の抗原量で哺乳動物に免疫付与をすることにより獲得可能な、ポリクローナル抗血清。
【請求項30】
請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインに対するかもしくは請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片に対するモノクローナル抗体;又はモノクローナル抗RGM A抗体(RGM Aへの該抗体の結合は、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメインによるか又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片により調節される。);又は場合によってはヒト化型のその抗原結合断片。
【請求項31】
a)請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質、
b)請求項29及び請求項30の一項に記載のモノクローナル又はポリクローナル抗体
から選択される少なくとも1つの活性成分の医薬的に許容可能な担体を含有する、医薬品。
【請求項32】
髄腔内、静脈内、皮下(subcutaneous)、経口又は非経口、経皮、皮下(subdermal)、骨内(intraosseal)、鼻腔、体外及び吸入投与のための、請求項31に記載の医薬品。
【請求項33】
液体、半固体又は固体担体中の、請求項1から請求項11の一項に記載の少なくとも1つのBMP結合ドメイン又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質を含有する、骨折の治療のための医薬品。
【請求項34】
少なくとも1つの制御核酸配列に操作可能に連結される、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン、請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片に対する少なくとも1つのコード核酸配列を含有する発現ベクター。
【請求項35】
請求項34に記載の少なくとも1つのベクターを有する組み換え微生物。
【請求項36】
請求項30に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株。
【請求項37】
請求項35に記載の組み換え微生物が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される、請求項1から請求項11の一項に記載のBMP結合ドメイン、請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質又は請求項12から請求項14の一項に記載のポリペプチド断片を作製するための方法。
【請求項38】
請求項36に記載のハイブリドーマ細胞株が培養され、産生されるタンパク質産物が培養物から単離される、請求項30に記載のモノクローナル抗体を作製するための方法。
【請求項39】
RGM受容体、特にネオゲニンの受容体又はBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−12から選択される少なくとも1つのBMPを刺激するための医薬品を調製するための、請求項1から請求項16の一項に記載のBMP結合ドメイン又は請求項15及び請求項16の一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項40】
特にネオゲニンなどのRGMの受容体の活性化を阻止するための医薬品を調製するための、請求項30に記載のモノクローナル抗体の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−537655(P2010−537655A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523336(P2010−523336)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007339
【国際公開番号】WO2009/030500
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(502104228)アボット ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (89)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007339
【国際公開番号】WO2009/030500
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(502104228)アボット ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (89)
【Fターム(参考)】
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