説明

収容タンクの断熱材

【課題】破損しやすく取り扱いが難しい真空断熱材を、取り扱いが容易で破損し難いように加工し、更に接合部分からの放熱を阻止した収容タンクの断熱材を提供する。
【解決手段】液体を収容する収容タンク4、5の外周を覆う断熱材13を、真空断熱材15と発泡断熱材14とを組み合わせて形成し、更にこの断熱材13は複数に分割したものを接合して収容タンク4、5を断熱するもので、前記断熱材13同志の接合部は、真空断熱材15が重合するようにしたことにより、断熱材13が真空断熱材15と発泡断熱材14との組み合わせで形成されているので、断熱効果はより向上し、しかも取り扱い容易で、組立やすくて作業効率も上がるものであり、ダブルの断熱材による効果で長期に渡って良好な断熱効果を得ることが出来るものであり、更に接合部は二重の真空断熱材15で断熱され、接合部からの熱の放出を確実に防止出来るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気温水器やヒートポンプ式給湯機等の湯水を貯湯する収容タンクの断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものでは、断熱性の優れた断熱体として、真空断熱体がある。これは容器中を真空或いは減圧にすることによって熱伝導率を更に低下させたものであって、極めて高い断熱性を有する。この真空断熱体の構造及び材料として、金属・プラスチックスラミネートフィルムやプラスチック多層フィルムなどのガスバリヤー性の高い容器中に、パーライト、シリカ等の無機系微粒状断熱粉体やウレタンフォーム、ハニカム等を吸着剤とともにコア材として入れ真空封止したものがあった。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平2−772293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの従来のものでは、真空部を構成するフィルム部分が傷付きやすく、傷付き孔が空き真空状態が破壊されることで、断熱効果が10分の1に低下するものであり、又傷付きやすいことにより、取り扱いが難しく、組立性に大きな問題を有するものであった。
【0004】
又断熱材自体取り扱い易くする為に、複数に分割しこれを接合するようにしたものもあるが、この接合部分に隙間が生じてここから熱が逃げて、断熱効果が低下するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明はこの点に着目し上記欠点を解決する為、特にその構成を、液体を収容する収容タンクの外周を覆う断熱材を、真空断熱材と発泡断熱材とを組み合わせて形成し、更にこの断熱材は複数に分割したものを接合して収容タンクを断熱するものに於いて、前記断熱材同志の接合部は、真空断熱材が重合するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、断熱材が真空断熱材と発泡断熱材との組み合わせで形成されているので、断熱効果はより向上し、しかも取り扱い容易で、組立やすくて作業効率も上がるものであり、又傷も付きにくくなり、孔空きよる真空破損の心配もなく、ダブルの断熱材による効果で長期に渡って良好な断熱効果を得ることが出来るものであり、更に接合部は二重の真空断熱材で断熱され、接合部からの熱の放出を確実に防止出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次にこの発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は温水を貯湯するタンクユニット、2はヒートポンプ式の加熱器で、加熱した温水をタンクユニット1に貯湯し、給湯要求があった時に給湯栓3から給湯するものである。
【0008】
次に、前記タンクユニット1について図2の分解斜視図に基づいて説明すると、4は第一収容タンク、5は第二収容タンク、6は第一収容タンク4を支える第一支持脚、7は第二収容タンク5を支える第二支持脚、8は第二収容タンク5下部に接続された給水管、9は第一収容タンク4上部と第二収容タンク5下部とを接続するタンク接続管、10は第一収容タンク4上部と給湯栓3を接続する給湯管、11は第二収容タンク5下部と加熱器2の流入側を接続する加熱器往管、12は第一収容タンク4上部と加熱器2の流出側を接続する加熱器復管であり、給水管8から給水され第一収容タンク4と第二収容タンク5に貯められた水は、循環ポンプ(図示せず)の駆動により第二収容タンク5下部の加熱器往管11を流れて加熱器2に流入し、高温に加熱された後に加熱器復管12を流れて第一収容タンク4の上部から徐々に貯湯され、そして給湯栓3が開かれれば給水圧により第一収容タンク4の上部に貯められた温水が第一収容タンク4の上部の給湯管10を流れて給湯栓3から給湯されるものである。
【0009】
13は第一収容タンク4及び第二収容タンク5の外郭のほぼ全面を覆い保温・断熱を行う断熱材で、耐熱性発泡ポリスチレンからなる発泡断熱材14と真空断熱材15との一体成形品から構成され、型内に予め真空断熱材15を挿入しておき、そこに発泡樹脂を流し込むことで、発泡断熱材14のほぼ中央に真空断熱材15が位置した成型断熱材を収容タンク4、5に合わせて複数に成型加工したものである。
【0010】
上記真空断熱材15は、芯材と、該芯材を覆うガスバリア性のラミネートフィルムからなる外被材とからなり、その内部圧力が1Pa〜200Paとなるように減圧し、密閉封止したもので、公知の方法で作製出来るものである。
【0011】
この複数の成型断熱材は、底部断熱材131、前下部断熱材132、前上左部断熱材133、前上右部断熱材134、後部断熱材135、天部断熱材136に分割構成され、それぞれ第一収容タンク4及び第二収容タンク5に接する部分には第一収容タンク4および第二収容タンク5の外郭に沿った形状のタンク用窪部16を有しており、これらのタンク用窪部16を第一収容タンク4及び第二収容タンク5の外郭に密着し、それぞれ隣り合う断熱材13同士が互いに接する面を密着して取り付けられるものである。
【0012】
このように収容タンク4、5を複数の断熱材13で覆い、且つ真空断熱材15が中に埋め込まれていることで、保温・断熱効果が断熱材13自体が薄くても飛躍的に向上するものであり、製造組立時にはこの複数の断熱材13を適切な位置にはめ込むように取り付けるだけで良く、効率的な作業を行うことができ製造組立の工数がかからずコストを抑えることができると共に、メンテナンス時の脱着作業も非常に容易になり作業性が向上するものであり、更に真空が破壊されることにより、保温・断熱効果が急激に低下する真空断熱材15が発泡断熱材14の中に一体成形されているので、破壊の心配がなく取り扱いも容易で安心して使用出来るものである。
【0013】
又複数の断熱材13のそれぞれ互いに接する面には、それぞれ位置決め用の嵌合凹凸部17を設けているので、複数の断熱材13の位置決めが正確になると共に、複数の断熱材13相互の密着度も高くなり複数の断熱材13間の隙間を空気が流動することによる放熱を防ぐことができ、特に前上左部断熱材133と前上右部断熱材134と後部断熱材135の上面と、天部断熱材136の底面を嵌合凹凸部17によって確実に密着させたことによって、垂直方向の分割面(前上左部断熱材133と前上右部断熱材134と後部断熱材135の互いに接する面)および水平方向の分割面(前上左部断熱材133と前上右部断熱材134と後部断熱材135の上面と、天部断熱材136の底面の接する面)の隙間の発生を確実に防ぎこの隙間やタンク用窪部16から温度差により対流が発生して空気が流動して放熱してしまうのを確実に防止することができ、保温・断熱性能が大きく向上する。
【0014】
又前記複数の断熱材13の互いに接する面に、前記第一収容タンク4及び第二収容タンク5に接続された給水管8、給湯管10等の複数の配管を収める配管用溝部18を設けてこれら配管の保温・断熱を行っており、具体的に説明すると、前記底部断熱材131には、その前下部断熱材132または後部断熱材135に接する上面に前記第二収容タンク5の下部に接続された給水管8と加熱器往管11と第一収容タンク4下部に接続されたタンク接続管9が収められる複数の配管用溝部18が設けられ、前記後部断熱材135には、その前上左部断熱材133または前上右部断熱材134に接する面に第一収容タンク4と第二収容タンク5とを連通するタンク連通管9および第一収容タンク4上部に接続された加熱器復管12が収められる複数の配管用溝部18が設けられ、前記天部断熱材136には、第一収容タンク4と第二収容タンク5とを連通するタンク連通管9と第一収容タンク4上部に接続された給湯管10が収められる複数の配管用溝部18が設けられている。
【0015】
これにより、収容タンク4、5を保温・断熱するための複数の断熱材13を適切な位置にはめ込むように取り付けるだけで、収容タンク4、5の保温・断熱だけでなく、それぞれの収容タンク4、5に接続された複数の配管8、9、10、11、12も複数の断熱材13の互いに接する面に設けられた配管用溝部16にそれぞれはまり込んで収められて保温・断熱が行われるため、配管専用の断熱材が必要なくなると共に脱着作業も容易で作業性が良く製造組立時の工数も減りかつメンテナンス時の作業性も大幅に向上し、配管の保温・断熱にかかるコストを大幅に下げることができる。
【0016】
19は底板191、前板192、後板193、天板194から構成された収容タンク1の外装体である。
【0017】
この外装体19の内面には前記複数の断熱材13の外面の少なくとも一部が当接しており、外装体19をしっかりと組み付けることにより前記複数の断熱材13が内側に押しつけられて互いに接する面がより密着して保温・断熱性能が向上すると共に、タンク支持脚6、7にかかる収容タンク4、5の荷重の一部を支え、外装体19内部での収容タンク4、5の傾き・転倒防止を行う。
【0018】
尚、ここで前記複数の断熱材13は、少なくとも底部断熱材と天部断熱材と前面断熱材と背面断熱材の4つに分割構成されていれば、脱着作業性よくコスト安に保温・断熱性能を向上することができるもので、メンテナンス時に取り外すことの多い前面断熱材をさらに上下に分割することで、さらにメンテナンス性を向上することができるものである。
【0019】
次に図5は分割された断熱材13の接合部分を説明するもので、一方の断熱材13の中央に位置する真空断熱材15の両端を突出部20とし、他方の断熱材13の対応する端部の真空断熱材15は位置をずらして凹部21を形成し、組立時には図6に示すように、凹部21に突出部20が嵌合して真空断熱材15が重合するものであり、接合部に隙間が形成されず、しかも断熱効果が高い真空断熱材15による塞ぎなので、ここからの放熱を確実に阻止出来、分割したことにより取り扱い易くなっても、断熱効果を低下させる心配がなく、常に安心して使用出来るものである。
【0020】
次に図7に示す他の実施形態について説明すれば、発泡断熱材14の内側に真空断熱材15を貼り付けて分割した断熱材13を形成したもので、ここでも上記と同じように接合部では、内側の一方の真空断熱材15両端には突出部20が備えられ、又これと対応する他方の内側の端部の真空断熱材15は位置をずらして凹部21を形成し、組立時には突出部20を凹部21に嵌合し、真空断熱材15を重合して接合部を塞ぐことが出来、断熱効果を低下させる心配がなく、常に安心して使用出来るものである。
【0021】
次に図8、9に示す他の実施形態について説明すれば、発泡断熱材14の中央に真空断熱材15が位置するもので、分割した断熱材13の真空断熱材15の端部に凹部21を形成し、組立時にこの両方の凹部21に別部材の真空断熱材15をはめ込んで、真空断熱材15の重合部分を形成するようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施形態の貯湯式給湯機の概略構成図。
【図2】同一実施形態の収容タンクの分解斜視図。
【図3】同一実施形態の収容タンクの要部断面図。
【図4】同断熱材の斜視図。
【図5】同断熱材の接合の説明図。
【図6】同接合部分の説明図。
【図7】他の実施形態を示す説明図。
【図8】他の接合部分の説明図。
【図9】同接合状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0023】
1 タンクユニット
4 第一収容タンク(収容タンク)
5 第二収容タンク(収容タンク)
8 給水管(配管)
9 缶体接続管(配管)
10 給湯管(配管)
11 加熱器往管(配管)
12 加熱器復管(配管)
13 断熱材
14 発泡断熱材
15 真空断熱材
20 突出部
21 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する収容タンクの外周を覆う断熱材を、真空断熱材と発泡断熱材とを組み合わせて形成し、更にこの断熱材は複数に分割したものを接合して収容タンクを断熱するものに於いて、前記断熱材同志の接合部は、真空断熱材が重合するようにした事を特徴とする収容タンクの断熱材。
【請求項2】
前記断熱材は、真空断熱材を発泡断熱材で挟み込んだ形に一体成形し、接合部は一方の真空断熱材の端部を突出部とし、他方の真空断熱材の端部の凹部に嵌合するようにした事を特徴とする請求項1記載の収容タンクの断熱材。
【請求項3】
前記断熱材は、内側の真空断熱材に外側の発泡断熱材を貼り付けて形成した事を特徴とする請求項1記載の収容タンクの断熱材。
【請求項4】
前記断熱材の接合部は、別部材の真空断熱材で重合するようにした事を特徴とする請求項1及び3記載の収容タンクの断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−139072(P2007−139072A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333522(P2005−333522)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】