説明

収納ケースおよび金型装置

【課題】複数のアンダーカット形状が、内部の素電池収納空間に連通する貫通孔を設けずに形成された電池パックの収納ケースおよびそのような収納ケースを容易に製造できる金型装置を提供する。
【解決手段】電池パック10の収納ケース1には、係合部材2が填る溝4が形成されている。係合部材2は溝4に填って溝4内を摺動し、出口部6から外側に突き出す。溝4の出口部6近辺の上方には、係合部材2が溝4から外れることを防止するアンダーカット形状の外れ防止部材42が形成されている。溝4の出口部6から離れた奥側の側面43には、係合部材2の摺動を案内するアンダーカット形状の突起41が形成されている。溝側面43及び底面44には貫通孔が無く、収納ケース1の内部と外部とを隔離している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を収納して電気機器に装着する電池パック用の収納ケースおよび金型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の素電池を内蔵した電池パックを脱着可能に取り付けた小型の電気機器は従来より種々生産されていたが、近年の軽薄短小化の傾向に伴いノートパソコンや携帯電話など電池パックを取り付けた携帯可能な電気機器が大量に且つ多種類生産されるようになってきている。このような電気機器には特に、リチウムイオン電池に代表される非水系二次電池を素電池として内蔵する電池パックが利用されることが多くなっている。
【0003】
このように電池パックを取り付けた電気機器に関しては、電池パックを電気機器に対して脱着可能とするためにロック爪を利用し、電気機器ではなく電池パックにロック爪を設けることにより、ロック爪が故障したら電池パックを交換することで電気機器はそのまま使用できるようにする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に開示された技術では、ロック爪を摺動可能に電池パックに取り付けるために収納ケースに貫通孔が開けられている。従って、貫通孔を通ってゴミや埃、さらには脱落する部品が素電池やプリント基板の収納されている領域に混入することでショートしてしまう虞があり、それを防ぐために基板ホルダーなどの部品を別途設けている。
【0005】
しかしながら、電池パックが小型化しているため、基板ホルダーなどの貫通孔を塞ぐ部品を追加するスペースが確保できなくなっている。電池パック用の収納ケースは樹脂を材料とした射出成形により作製されるのが通常であるが、このような場合、ロック爪を摺動可能とするための収納ケース側の突起(アンダーカット形状となっている)を、貫通孔を設けることなく形成する方法として、金型にスライドコアを利用することが考えられる。
【0006】
また、アンダーカット形状となっている収納ケース側の突起(摺動ツバ)はロック爪が外れてしまわないように複数設ける必要があるが、双内方向にアンダーカット形状がある成形品を外力装置を用いずに離型させることができる射出成形用金型が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図13に示すように、特許文献2に開示されている射出成形用金型100は、固定側プレート102を挟んで移動側プレート101とランナストリッパプレート103とが、この固定側プレート102に対して接近・離反自在に配設されている。この射出成形用金型100では、図13(a)に示す型締め時には、固定側プレート102に設けられた2つのスライドコア104a,104bはスライドリターン用スプリング113a,113bによって内方(ロッキングブロック107側)に押圧力が加えられる。したがって、図13(b)に示す型開き時にはランナストリッパプレート103が固定側プレート102から離反し、ランナストリッパプレート103に設けられたアンギュラピン106a,106bが案内孔116a,116bを離脱する動作に連動して、2つのスライドコア104a,104bは互いに内方に摺動することにより、双内方向のアンダーカット105aは2つのスライドコア104a,104bからそれぞれ離型される構成となっている。
【特許文献1】特開2003−17018号公報
【特許文献2】特開平9−277314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の技術を使用しないで通常のスライドコアを用いて収納ケースの突起(摺動ツバ)を形成するには、複数の突起を形成するためスライドコアのスライド長さを大きくする必要があり、このため金型への樹脂充填時にスライドコアが撓んで製品寸法が許容値から外れたり、金型のスライドコア部分が破損したりするという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された金型は比較的大きな物品を成形するためのものであり、小型電気機器の電池パック収納ケースのロック爪部分のような寸法の小さい部分の複数のアンダーカット形状を形成することは非常に困難であった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のアンダーカット形状が、内部の素電池収納空間に連通する貫通孔を設けずに形成された電池パックの収納ケースおよびそのような収納ケースを容易に製造できる金型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願の収納ケースは、ケース本体と、電気機器に設けられた係合凹部に係合して電池パックを前記電気機器に固定する係合部材とを有し、前記ケース本体の外面には、前記係合部材が填る溝が形成されていて、前記溝は前記ケース本体の外縁部に、外部に向かって開放された出口部を有しており、前記係合部材は前記溝内を摺動して前記溝が伸びる方向に移動して、前記出口部において前記ケース本体から一部が突き出して前記係合凹部に係合し、前記出口部の近辺には、前記係合部材が前記溝から上方へ外れることを防止する外れ防止部材が前記溝上方に設けられており、前記溝の側面には、前記係合部材の移動を案内する突起が前記溝の伸びる方向において前記外れ防止部材から離間して形成されており、前記溝を構成する前記溝側面および底面によって、前記ケース本体の内部と外部とが隔離されている構成とした。
【0012】
ここで電池パックとは、二次電池である複数個の素電池を電気的に接続して形成した電池モジュールを収納ケースに収めたものである。電気機器としては、例えば携帯電話やノートパソコンなどを挙げることができる。また、ここで成形材料とは、熱硬化性の樹脂やこのような樹脂に補強材や添加剤を加えたもの、アルミニウムやマグネシウムなど金属(合金を含む)などを挙げることができる。溝を構成する溝側面および底面によって収納ケース本体の内部と外部とが隔離されているというのは、溝の部分には収納ケース本体の内部と外部とを連通させる孔がないことを意味する。従って溝の部分においては内部空間と外部空間とが遮断され、空気の行き来が無いことになる。
【0013】
前記溝には、前記溝の伸びる方向において前記突起と前記外れ防止部材との間に、前記外れ防止部材側よりも前記突起側の方が高くなっている段差が形成されている構成とすることもできる。
【0014】
前記段差は、0.02mm以上であって前記溝の部分における前記収納ケースの肉厚の半分以下とすることもできる。
【0015】
本願の金型装置は、固定側プレートと、移動側プレートと、ランナストリッパプレートとを備え、これらが組み合わされて閉じた状態である閉状態と、これらがそれぞれ離間した状態である開状態との間を往復させる射出成形用の金型装置であって、前記閉状態において前記3つのプレートの間には成形材料が射出されて成形製品が形成され、前記移動側プレートは、成形製品に第1のアンダーカット形状を形成するためのスライドコアを備えており、前記固定側プレートは、前記移動側プレートと前記ランナストリッパプレートとに挟まれているとともに、成形製品に第2のアンダーカット形状を形成するためのキャビスライドと、前記閉状態から開状態に移る際に前記スライドコアを成形製品から離間させる第1のアンギュラロックピンと、前記スライドコアを前記移動側プレートに押し付ける第1のロッキングブロックとを備えており、前記ランナストリッパプレートは、前記閉状態から開状態に移る際に前記キャビスライドを成形製品から離間させる第2のアンギュラピンと、前記キャビスライドを前記閉状態における位置に固定する第2のロッキングブロックとを備えている構成とした。ここでアンダーカット形状とは、金型による成形において、成形後に成形品を型開閉方向に取り出せないような形状のことで、型の開閉方向に対して垂直に突出している突起などを例示できる。
【0016】
前記スライドコアは、前記第1のロッキングブロックによって、前記閉状態において前記第2のロッキングブロックにも押し付けられている構成とすることもできる。
【0017】
前記閉状態において、前記第2のロッキングブロックの下面は前記キャビスライドの下面よりも下に位置している構成とすることもできる。
【0018】
前記閉状態において、前記第2のロッキングブロックの側面は前記キャビスライドの側面よりも突き出している構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の収納ケースでは、係合部材を填める収納ケースの溝に、係合部材が外れるのを防止する外れ防止部材と移動を案内する突起との2種類のアンダーカット形状を備えていると共に、溝側面と底面とによって収納ケース本体の内部と外部とを隔離していて、収納ケース本体内に溝からゴミや埃などがはいることが無く、プリント基板や素電池の短絡を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
−電池パック−
図1は実施形態1に係る電池パック10の斜視図である。ここでは説明をしやすくするため、係合部材2,2と溝4,4に被せる蓋3,3とを収納ケース1のケース本体1cから外した状態としている。図2に示すように、収納ケース1内に素電池である複数本のリチウムイオン電池(非水系二次電池)5,5,…と保護回路が載せられたプリント基板(不図示)とが収納されており、これら全体で電池パック10を構成している。ケース上部1aとケース下部1bとが嵌合して形成されているケース本体1cの内部に密閉空間を形成するように、収納ケース1は構成されている。
【0021】
本実施形態の電池パック10は、図3に示すように電気機器12に装着されて使用される。装着の際は、電気機器12に設けられている係合凹部14に、電池パック10に取り付けられている係合部材2の爪部2aが係合して電池パック10が電気機器12に固定される。つまり、収納ケース1の溝4に填められた係合部材2のうち、爪部2aが溝4の出口部6から突出しており、この爪部2aが係合凹部14の中に入り込んで係合する。なお、係合部材2は、図4に示すように、溝4内に填っているときにはスプリング7に付勢されてケース本体1cから突き出しているので、電気機器12から電池パック10を外す場合は、収納ケース1から蓋3を取り外してスプリング7を縮めるように係合部材2を溝4内に摺動させて爪部2aを溝4内に収納すればよい。
【0022】
収納ケース1の外面に設けられた溝4には、図6,7,8に示すように、出口部6のところに外れ防止部材42と、この外れ防止部材42から溝4が伸びる方向において離れた位置の側面43に突起41,41が形成されている。後述するようにケース上部1aは射出成形により成形されるので、外れ防止部材42と突起41,41とがそれぞれ第1及び第2のアンダーカット形状である。出口部6は、溝4の側面43および底面44,外れ防止部材42に囲まれていて、ケース本体1cの外部に向かって開放された開口である。なお、図1においてケース本体1cの上側に存する溝4上方の開口は開口部とする。
【0023】
外れ防止部材42は、係合部材2が溝4から上方へ外れてしまうことを防ぐための部材であり、溝4の上に跨って溝4の一部を覆うように形成されている。一方突起41,41は、図5に示すように、係合部材2の下部突出部2b,2bを溝底面44に押さえて係合部材2が溝4内を移動することを案内する部材である。この突起41,41により係合部材2は上下方向にぶれることなく溝4内を移動する。なお、突起41,41直下の溝底面44には収納ケース1内部に連通する貫通孔は開いていない。
【0024】
本実施形態では、外れ防止部材42と突起41,41とは共に係合部材2の外れ防止と係合部材2摺動移動の案内との両方の役割を果たしており、そのため、両者は溝4の伸びる方向において離れて形成されている。もし両者が同じ位置に形成されていると、係合部材2が溝4から外れやすくなり、また摺動移動もスムースには行われなくなる。
【0025】
また、溝4の伸びる方向における中間部には段差45が形成されている。この段差45は、溝4の伸びる方向において突起41,41と外れ防止部材42との間に存しており、突起41,41に近い側の方が外れ防止部材42に近い側よりも高くなっている。段差45の量は0.02mm以上が好ましく、上限は溝底面44のケース厚みの1/2である。
【0026】
上述のように、本実施形態の収納ケース1には係合部材2が溝4から外れずに滑らかに摺動するように外れ防止部材42と突起41,41とが設けられていると共に、アンダーカット形状のこれら外れ防止部材42と突起41,41とが設けられているにもかかわらず、溝側面43および溝底面44には貫通孔が無く、溝4の構成面が収納ケース1の内部と外部とを隔離していて、外部から収納ケース1内にゴミや埃、組立時に細かな部品が入り込むことを確実に防止している。
【0027】
−ケース上部の製造方法−
上述のケース本体1cは、成形材料であるPC(ポリカーボネート)またはABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂を用いて射出成形により成形されている。以下にケース上部1aの製造方法について図9,10,11,12を参照して説明する。
【0028】
図9は、樹脂を射出する直前での金型装置の一部の断面を示す模式的な斜視図である。金型装置は、移動側プレート52とランナストリッパプレート53と、これら両者に挟まれた固定側プレート51とを備えている。これらの3つのプレート51,52,53が組み合わされた閉じた状態(閉状態)が図9に示す状態である。閉状態において3つのプレート51,52,53の間に形成されているキャビティ50(閉じている空間)に成形材料が射出される。
【0029】
移動側プレート52はスライドコア56を備えている。スライドコア56は移動側プレート52の本体に対して移動可能に取り付けられている。なお、スライドコア56の移動方向は、移動側プレート52の開閉方向に垂直な方向である。
【0030】
固定側プレート51は、キャビスライド54と、スライドコア56を移動させる第1のアンギュラロックピン60と、スライドコア56を閉状態に保持する第1のロッキングブロック58とを有している。キャビスライド54は固定側プレート51の本体に対して移動可能に取り付けられている。なお、キャビスライド54の移動方向は、移動側プレート52の開閉方向に垂直な方向である。
【0031】
ランナストリッパプレート53は、キャビスライド54を移動させる第2のアンギュラロックピン57と、キャビスライド54を閉状態に保持する第2のロッキングブロック55を有している。
【0032】
また、スライドコア56は閉状態において移動側プレート52の一部と第2のロッキングブロック55の一部に、第1のロッキングブロック58によって押し付けられている。キャビスライド54は閉状態において固定側プレート51の一部に、第2のロッキングブロック55によって押し付けられている。
【0033】
図10はキャビティ50に成形材料が射出されて、成形製品であるケース上部1aが成形された状態を示している。ここでは、金型装置は閉状態である。ケース上部1aは図7に示されている部分が図に表示されている。溝底面44は、固定側プレート51の本体部分と、キャビスライド54の下面と、第1のロッキングブロック55の下面とによって形作られている。また、外れ防止部材42はスライドコア56の上面と固定側プレート51の一部の下面とに挟まれ形作られている。
【0034】
図11は、閉状態の金型装置からランナストリッパプレート53だけが離間した状態を示している。ランナストリッパプレート53は、閉状態においては固定側プレート51と接触している。ランナストリッパプレート53が固定側プレート51から離れていくと、第2のアンギュラロックピン57がキャビスライド54を閉状態における位置から移動させていく。即ち、第2のアンギュラロックピン57はランナストリッパプレート53の離間方向に対して斜めに伸びており、キャビスライド54に設けられた穴59に対して填り込んで穴59内壁に接触しているので、ランナストリッパプレート53が離間していくときには第2のアンギュラロックピン57がキャビスライド54の穴59から抜けながらキャビスライド54を固定側プレート51の一部から離していく。キャビスライド54は、閉状態において第2のロッキングブロック55によって固定側プレート51の一部に押し付けられているが、第2のロッキングブロック55がキャビスライド54に接触している面は、第2のアンギュラロックピン57と平行に伸びているので、キャビスライド54の固定側プレート51の一部から離れる動きを妨げない。キャビスライド54はランナストリッパプレート53が離間する方向に対して垂直な方向に移動するように固定側プレート51に取り付けられているので、第2のアンギュラロックピン57が穴59の内壁を押す力の水平分力によってキャビスライド54が図の右側へと移動する。なお、ランナストリッパプレート53の離間方向と移動側プレート52の離間方向とは同じ方向である。
【0035】
この時、図11では固定側プレート51に隠れていて見えないが、キャビスライド54のハッチングを付した面に対向する奥側の面に設けられた凹みによってケース上部1aに形成された突起41がキャビスライド54から離れて、キャビスライド54が垂直上方に移動しても突起41に引っかからないようになっている。このようにして第2のアンダーカット形状である突起41はその下方の溝底面44に貫通孔を形成することなく溝側面43に形成される。
【0036】
また、ケース上部1aに形成されている段差45は、第2のロッキングブロック55の下面が閉状態においてキャビスライド54の下面よりも下側(移動側プレート52に近い側)にあること(つまり第2のロッキングブロック55の下面の方が閉状態においてキャビスライド54の下面よりもキャビティ50内に突き出していること)と、第2のロッキングブロック55の側面がキャビスライド54の側面よりも突き出していること(キャビティ50内に)とにより形成される。ここで、第2のロッキングブロック55およびキャビスライド54のそれぞれの側面は、閉状態においてキャビティ50に面している側の面である。
【0037】
第2のロッキングブロック55およびキャビスライド54がこのような構成であるので、ランナストリッパプレート53が離間してキャビスライド54が移動する時に、キャビスライド54の下面及び側面が移動先において、ケース上部1aに接触せず段差45の量だけ離れることになり、キャビスライド54の角部でケース上部1aが削られて削りくずが出るという事態は発生しない。削りくずが出ると、頻繁に金型を清掃する必要があり生産効率が下がるが、本実施形態の金型装置では生産効率を高く保つことができる。なお、このように削りくずが出ないようにするためには段差45量が0.02mm以上あればよい。また段差45量が大きくなると溝底面44が薄くなりすぎ強度不足となるので、段差45量は溝底面44のケース厚みの1/2以下であることが好ましい。
【0038】
次に図12に示すように、移動側プレート52が固定側プレート51から離れる。このとき固定側プレート51に設けられた第1のアンギュラロックピン60がスライドコア56から抜けていき、この第1のアンギュラロックピン60の抜ける動きに伴いスライドコア56が図の右側に移動してケース上部1aの第1のアンダーカット形状である外れ防止部材42から離間する。従って、成形製品であるケース上部1aを容易に金型から取り出すことができる。スライドコア56は移動側プレート52の本体部分に対して、移動側プレート52の離間方向に垂直な方向に移動可能に取り付けられている。
【0039】
第1のアンギュラロックピン60は、第2のアンギュラロックピン54と同様に、移動側プレート52が離れる動きの方向に対して斜めに伸びているので、上述した第2のロッキングブロック55およびキャビスライド54と同様の動作を第1のアンギュラロックピン60およびスライドコア56が行うので、ここでは説明を省略する。また、第1のロッキングブロック58の作用も第2のロッキングブロック55の作用と同じである。なお、キャビスライド54が移動して突起41から離間する移動の向きとスライドコア56が移動して外れ防止部材42から離間する移動の向きとは同じである。
【0040】
本実施形態においては、キャビスライド54とスライドコア56とを巧みに組み合わせて、極近い位置にある2つのアンダーカット形状を精度良く形成している。また、キャビスライド54とスライドコア56とを移動させるのに、いずれもアンギュラロックピン57,60を用いているので、別途駆動装置を設ける必要が無く、金型装置を簡単で小型なものにできる。
【0041】
(その他の実施形態)
上記の実施形態は本発明の例示であって本発明はこの例に限定されない。例えば電気機器はノートPCや携帯電話など、電池パックを取り付けて使用するものであればどのようなものでもよいし、形状も図3に示される形状に限定されず、どのような形状であってもよい。電池パックの形状も同様にどのような形状でもよい。
【0042】
溝はU字溝やV字溝など、横断面がどのような形状であってもよい。なお、V字溝の場合は溝底面は無く、側面のみとなる。
【0043】
外れ防止部材は、出口部のところに存していてもよいし、出口部の近辺であって出口部よりも溝の奥側の方に存していてもよい。ただし、電池パックを電気機器から取り外す際に係合部材を溝内で摺動させる動作の妨げにならないよう、出口部の近くに設けられることが好ましい。また、外れ防止部材を、溝に橋を架けるように形成しても良いし、溝の開口外縁から突き出すように形成する、即ち溝に跨っていなくても良い。
【0044】
アンギュラロックピンの形状はピン形状であっても良いし、ブロック形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明に係る電池パックの収納ケースは、外部からゴミや埃が内部に入ることを確実に防ぐので、電気機器に装着する電池パック等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態1に係る電池パックの斜視図
【図2】電池パックの一部破断図
【図3】電池パックと電気機器との斜視図
【図4】電池パックの別の一部破断図
【図5】図1のA−A線断面図
【図6】収納ケースの溝近辺の拡大図
【図7】図6のB−B線断面図
【図8】図6のC−C線断面図
【図9】ケース上部を成形する金型装置の一部の断面を示す模式的な斜視図
【図10】ケース上部が成形されている閉状態の金型装置の一部の断面を示す模式的な斜視図
【図11】閉状態からランナストリッパプレート53だけが離間した金型装置の一部の断面を示す模式的な斜視図
【図12】ケース上部が成形されている開状態の金型装置の一部の断面を示す模式的な斜視図
【図13】従来の成形用金型の断面図
【符号の説明】
【0047】
1 収納ケース
1c ケース本体
2 係合部材
4 溝
6 出口部
10 電池パック
12 電気機器
14 係合凹部
41 突起
42 外れ防止部材
43 溝側面
44 溝底面
45 段差
51 固定側プレート
52 移動側プレート
53 ランナストリッパプレート
54 キャビスライド
55 第2のロッキングブロック
56 スライドコア
57 第2のアンギュラロックピン
58 第1のロッキングブロック
60 第1のアンギュラロックピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を収納して電気機器に装着する電池パック用の収納ケースであって、
ケース本体と、電気機器に設けられた係合凹部に係合して電池パックを前記電気機器に固定する係合部材とを有し、
前記ケース本体の外面には、前記係合部材が填る溝が形成されていて、前記溝は前記ケース本体の外縁部に、外部に向かって開放された出口部を有しており、
前記係合部材は前記溝内を摺動して前記溝が伸びる方向に移動して、前記出口部において前記ケース本体から一部が突き出して前記係合凹部に係合し、
前記出口部の近辺には、前記係合部材が前記溝から上方へ外れることを防止する外れ防止部材が前記溝上方に設けられており、
前記溝の側面には、前記係合部材の移動を案内する突起が前記溝の伸びる方向において前記外れ防止部材から離間して形成されており、
前記溝を構成する前記溝側面および底面によって、前記ケース本体の内部と外部とが隔離されていることを特徴とする収納ケース。
【請求項2】
前記溝には、該溝の伸びる方向において前記突起と前記外れ防止部材との間に、前記外れ防止部材側よりも前記突起側の方が高くなっている段差が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の収納ケース。
【請求項3】
前記段差は、0.02mm以上であって前記溝の部分における前記収納ケースの肉厚の半分以下であることを特徴とする請求項2に記載の収納ケース。
【請求項4】
固定側プレートと、移動側プレートと、ランナストリッパプレートとを備え、これらが組み合わされて閉じた状態である閉状態と、これらがそれぞれ離間した状態である開状態との間を往復させる射出成形用の金型装置であって、
前記閉状態において前記3つのプレートの間には成形材料が射出されて成形製品が形成され、
前記移動側プレートは、成形製品に第1のアンダーカット形状を形成するためのスライドコアを備えており、
前記固定側プレートは、前記移動側プレートと前記ランナストリッパプレートとに挟まれているとともに、成形製品に第2のアンダーカット形状を形成するためのキャビスライドと、前記閉状態から開状態に移る際に前記スライドコアを成形製品から離間させる第1のアンギュラロックピンと、前記スライドコアを前記移動側プレートに押し付ける第1のロッキングブロックとを備えており、
前記ランナストリッパプレートは、前記閉状態から開状態に移る際に前記キャビスライドを成形製品から離間させる第2のアンギュラピンと、前記キャビスライドを前記閉状態における位置に固定する第2のロッキングブロックとを備えていることを特徴とする金型装置。
【請求項5】
前記スライドコアは、前記第1のロッキングブロックによって、前記閉状態において前記第2のロッキングブロックにも押し付けられていることを特徴とする請求項4に記載の金型装置。
【請求項6】
前記閉状態において、前記第2のロッキングブロックの下面は前記キャビスライドの下面よりも下に位置していることを特徴とする請求項4または5に記載の金型装置。
【請求項7】
前記閉状態において、前記第2のロッキングブロックの側面は前記キャビスライドの側面よりも突き出していることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の金型装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−293823(P2008−293823A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138799(P2007−138799)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】