説明

収納ボックス

【課題】構造が簡単で使い勝手を向上させた収納ボックスを提供する。
【解決手段】物品ケース70が、インストルメントパネルIPに設けられた収納部14の内部に突出する第1姿勢および該第1姿勢より収納部14の壁面側に退避した第2姿勢に回動可能に配設される。物品ケース70および蓋体30の間には、蓋体30が開口16を開いた姿勢における物品ケース70の第2姿勢への姿勢変位を弛んで許容する紐状連係部材Wが設けられる。紐状連係部材Wは、開口16を閉じる方向へ蓋体30を姿勢変位すると物品ケース70を第2姿勢に向けて引っ張り、蓋体30が開口16を閉じた姿勢で物品ケース70を第2姿勢に支持すると共に、開口16を開く方向へ蓋体30を姿勢変位すると物品ケース70の第1姿勢に向けた姿勢変位を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内装部材に設けられた収納部と、この収納部を乗員室へ臨ませる開口を開閉する蓋体とを備えた収納ボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員室内には、例えばインストルメントパネル等の車両内装部材が配設されている。このインストルメントパネルには、車検証または身の回りの小間物を収納可能な収納ボックスとしてのグローブボックスが取り付けられている。このグローブボックスは、上方へ開口した物品収納部を備えて、インストルメントパネルに回転可能に配設された所謂「バケットタイプ」や、インストルメントパネルに取り付けられたボックス本体と、該ボックス本体の物品収納部を開閉する蓋体とを備えた所謂「ボックスタイプ」がある。
【0003】
またグローブボックスは、例えばETC車載装置、HDD装置またはCDチェンジャー等の小型車載電子装置を設置した物品ケースを備えているものもある(例えば、特許文献1)。前記物品ケースは、特許文献1に示されているように、物品収納部の上部に設けられている。
【0004】
ところで前記物品ケースは、物品収納部に対する蓋体の閉成に支障を来たさないようにするため、該物品収納部の開口から奥まった位置に配設せざるを得ない。従って物品ケースは、蓋体を開放してもシートに座った乗員からは視認され難く、乗員が上体を前または横に屈むようにしないと該物品ケースに設置した小型車載電子装置の操作を行ない難い問題があった。そこで、特許文献1に開示されているように、物品ケース(載置部)を、開口に向けてスライド可能に配設すると共に蓋体と連係させ、該蓋体の開放変位に連動して物品ケースを前方へスライドさせて開口に臨ませるようにした形態が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−214645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示の形態では、物品収納部に対する物品の出し入れ時に、手や腕が物品ケースに接触して該物品ケースが収納位置側へスライド移動すると、これに連動して蓋体が開放姿勢から閉成姿勢側へ姿勢変位して手や腕に接触するので、使い勝手が悪い欠点がある。このような不都合を回避するため、物品ケースを保持する大掛かりなロック機構を設ける必要があり、グローブボックスの構造が複雑になると共に製造コストが嵩む問題がある。
【0007】
そこで本発明は、蓋体と物品ケースとを連係する構造が簡単で、使い勝手を向上させた収納ボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を好適に達成するため、請求項1に記載の発明は、
車両内装部材に設けられた収納部と、この収納部を乗員室へ臨ませる開口を開閉する蓋体とを備えた収納ボックスにおいて、
前記収納部に、該収納部の内部に突出する第1姿勢および該第1姿勢より収納部の壁面側に退避した第2姿勢に回動可能に配設され、該第1姿勢に向けて付勢される物品ケースと、
前記物品ケースおよび蓋体の間に連結され、蓋体が前記開口を開いた姿勢における物品ケースの前記第2姿勢への姿勢変位を弛んで許容する紐状の連係部材とを備え、
前記開口を閉じる方向の前記蓋体の姿勢変位に連係して、前記連係部材で前記物品ケースを前記第2姿勢に向けて引っ張ると共に、蓋体が開口を閉じた姿勢において連係部材が物品ケースを前記第2姿勢に支持し、
前記開口を開く方向の前記蓋体の姿勢変位に連係して、前記第1姿勢への付勢下に前記物品ケースの該第1姿勢に向けた姿勢変位を前記連係部材が許容するよう構成したことを特徴とする。
【0009】
従って、請求項1に係る発明によれば、蓋体が開口を開いた姿勢においては、該蓋体および物品ケースの間に連結される紐状の連係部材が弛むことで、該物品ケースの第2姿勢側への姿勢変位が許容される。従って、物品ケースを第1姿勢に保持するロック機構を必要とせず、収納ボックスの構造が簡単になると共に製造コストも嵩まない。また、収納部に対する物品の出し入れ時に、手や腕が物品ケースに触れて該物品ケースが第2姿勢側へ姿勢変位しても、蓋体が開口を閉じる方向へ姿勢変位しないので該蓋体が手や腕に接触せず、使い勝手が好適に向上する。そして、開口を閉じる方向へ蓋体を姿勢変位すると、該蓋体に連結された連係部材が物品ケースを引っ張るので、該物品ケースは該蓋体の姿勢変位に従って第2姿勢へ姿勢変位する。また、開口を開く方向へ蓋体を姿勢変位すると、該蓋体に連結された連係部材が弛むようになり、収納部の内部へ突出する第1姿勢に向け付勢されている物品ケースが該第1姿勢へ姿勢変位する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
前記連係部材は、一端が前記蓋体の開閉支点から離れた蓋連結部に連結されると共に、他端が前記物品ケースの回動支点から離れたケース連結部に連結され、
前記蓋連結部は、前記開口を開く方向の前記蓋体の姿勢変位によりケース連結部に近づく方向へ移動し、開口を閉じる方向の蓋体の姿勢変位によりケース連結部から離れる方向へ移動することを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、蓋体が開口を開く方向へ姿勢変位すると蓋連結部がケース連結部に近づく方向へ移動するので、蓋連結部とケース連結部に連結された連係部材が弛むようになり、物品ケースの第2姿勢から第1姿勢へ回動変位が許容される。また、蓋体が開口を閉じる方向へ姿勢変位すると蓋連結部がケース連結部から離れる方向へ移動するので、蓋連結部とケース連結部に連結された連係部材が展張して物品ケースが引っ張られ、該物品ケースは第1姿勢から第2姿勢へ回動変位する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
前記連係部材を摺動可能に掛止して、付勢手段により前記連係部材の延在方向と交差する方向へ付勢される掛止部材を備えたことを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、蓋体の姿勢と物品ケースの姿勢との関係において連係部材に弛みが生じ得る場合には、付勢手段の付勢力により掛止部材が連係部材の延在方向と交差する方向へ移動することで、該連係部材を展張状態に保持し得る。
【0012】
請求項4に記載の発明は、
前記付勢手段の前記掛止部材に作用する付勢力は、第1姿勢に向けて付勢される前記物品ケースによって前記ケース連結部に作用する力より小さく設定されることを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、付勢手段の付勢力により、物品ケースが第2姿勢側へ回動変位することがない。
【0013】
請求項5に記載の発明は、
前記物品ケースにおける回動支点の軸線方向と、前記開口を開閉する前記蓋体における開閉支点の軸線方向とが同一であり、
前記物品ケースにおける回動支点の軸線方向と前記開口とが平行になっていることを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、開閉支点を中心とした蓋体の開閉変位と回動支点を中心とした物品ケースの回動変位とが同一方向となり、使い勝手がよくなる。また物品ケースは、開口側から押しても、該開口から離れる方向へ移動しない。従って、物品ケースに、開口側から操作する小型車載電子装置を載置してある場合に、該小型車体電子装置の操作を行ない易い。
【0014】
請求項6に記載の発明は、
前記物品ケースの前記第2姿勢側に巻掛部材が設けられ、
前記連係部材は、前記ケース連結部から前記巻掛部材に向け延在して、該巻掛部材で曲げられて前記蓋連結部に向け延在することを要旨とする。
従って、請求項6に係る発明によれば、蓋体が連係部材を引っ張る方向と、該連係部材が物品ケースを引っ張る方向とを、異なる方向となるようにし得る。
【0015】
請求項7に記載の発明は、
前記物品ケースを、前記開口を開く方向の前記蓋体の姿勢変位と関係なしに第2姿勢に保持するロック機構を備えたことを要旨とする。
従って、請求項7に係る発明によれば、開口が開く方向へ蓋体を姿勢変位させても、ロック機構により物品ケースを第2姿勢に保持することができる。従って、開口が開いた姿勢に蓋体を保持した際に、物品ケースが収納部の内部へ突出していないので、該収納部に対する物品の出し入れが行ない易くなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る収納ボックスによれば、蓋体と物品ケースとを連係する構造が簡単になると共に、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例のグローブボックスを、蓋体が開放姿勢に保持されると共に物品ケースが傾斜姿勢に保持された状態で示す側面図である。
【図2】実施例のグローブボックスを、図1の状態で示す斜視図である。
【図3】ボックス本体に取り付けられる支持部材と該支持部材に回動可能に配設した物品ケースを、該物品ケースの傾斜姿勢で示す斜視図である。
【図4】支持部材、物品ケース、連係機構、展張機構、ロック機構等を分解して示す斜視図である。
【図5】物品ケースを配設した支持部材を、該物品ケースの傾斜姿勢で示す正面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図であって、(a)は、ロック機構のロック状態を示し、(b)は、ロック機構のロック解除状態を示している。
【図7】実施例のグローブボックスを、蓋体が開放姿勢に保持されると共に物品ケースが収納姿勢に保持された状態で示す側面図である。
【図8】実施例のグローブボックスを、図7の状態を示す斜視図である。
【図9】図7の状態を示すグローブボックスを、後側斜め上方からみた部分斜視図である。
【図10】実施例のグローブボックスを、蓋体が閉成姿勢に保持されると共に物品ケースが収納姿勢に保持された状態で示す側面図である。
【図11】実施例のグローブボックスを、図10の状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る収納ボックスにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、収納ボックスとして、車両の乗員室前方に設置されるインストルメントパネルの助手席側に配設されるグローブボックスを例示する。なお、以下の説明において、前後とは、インストルメントパネルを基準として指称するものとし、インストルメントパネルの乗員席と対向する側(車両後方側)を前側とし、インストルメントパネルの後側(車両前方側)を後側とする。また、左右とは、インストルメントパネルを乗員席側から見た左右方向を基準として指称する。
【実施例】
【0019】
実施例のグローブボックスGBは、図1および図2に示すように、所謂「ボックスタイプ」であって、インストルメントパネルIPに設けた設置部150に取り付けられるボックス本体10と、このボックス本体10の前側に回転可能に取り付けられる蓋体30とを備えている。蓋体30は、ボックス本体10を閉成するとインストルメントパネルIPの外部意匠面の一部として構成され、インストルメントパネルIPから前方へ姿勢変位するとボックス本体10の前部分を開放して、ボックス本体10内に形成した物品収納部(収納部)14への物品の出し入れを可能とする。
【0020】
ボックス本体10は、図1および図2に示すように、横長で前側に開口した前面視で略矩形の箱体である。このボックス本体10は、前側に開口すると共に内部に物品収納部14を画成した収納箱部12と、この収納箱部12の乗員室に位置して該物品収納部14を該乗員室へ臨ませる開口16の周囲に設けられた額縁状の取付枠部20とを備え、複数の成形部材を互いに組み付けて構成されている。取付枠部20は、インストルメントパネルIPの形状に合わせて上方から下方に向かうにつれて後方へ漸次変位するよう斜めに形成されており、該取付枠部20がインストルメントパネルIPに固定される。収納箱部12と取付枠部20との境界部位における左側境界部および右側境界部には、前後に貫通した矩形の貫通口18,18が形成されており、蓋体30に設けたレバー部38,38が、該貫通口18,18を介して後方へ延出している。そして、収納箱部12の上部右側には、後述する物品ケース70を配設するための開口設置部22が、前後に長い略矩形状に形成されている。
【0021】
蓋体30は、図1、図2および図11等に示すように、ボックス本体10の取付枠部20に前側から整合し得る形状およびサイズに形成され、該蓋体30の左端および右端の下部には、側方へ延出してボックス本体10の左下部および右下部に設けた開閉支持孔(開閉支点)24,24に夫々嵌合する開閉支軸32,32が形成されている。これら開閉支持孔24,24は、左右方向に水平に延在する同一軸線上に位置するように形成されている。従って蓋体30は、各開閉支軸32,32を対応する開閉支持孔24,24に側方から夫々嵌合させることで、該ボックス本体10に対して上下方向での回転が可能に取り付けられる。これにより蓋体30は、開口16を閉じた姿勢(閉成姿勢)(図10、図11参照)と、ボックス本体10から前方へ略水平に延出して開口16を開いた姿勢(開放姿勢)(図1、図2参照)との間で、開閉支軸32,32を回動中心とした姿勢変位が可能となっている。なお、図11中の符号34は、開閉ロック機構における操作ノブであり、図1および図2中の符号36は、該操作ノブ34の操作に連動して出没変位してボックス本体10に係脱可能なロック片である。
【0022】
そして蓋体30には、図1および図2に示すように、左下部および右下部に、後方へ延出する前記レバー部38,38が設けられている。各レバー部38,38は、ボックス本体10に設けた前記貫通口18,18を介して収納箱部12の側外方へ延出している。そして各レバー部38,38は、蓋体30の開口16を閉じた閉成姿勢では後上方へ約45度の傾斜状に延出した姿勢(図10)となり、蓋体30の開口16を開いた開放姿勢では略垂直上方に延出した姿勢(図1、図7)となるようになっている。また各レバー部38,38は、蓋体30の開放姿勢において、対応する貫通口18,18の上端18Aに後方から当接して、該蓋体30の開放姿勢からの過開放を規制する。なお、蓋体30の右側に設けたレバー部38の先端には、後述するように、連係機構110における紐状の連係部材(以降「紐状連係部材」という)Wの一端が連結される蓋連結部39が、前記開閉支軸32,32から離れて設けられている。
【0023】
実施例のグローブボックスGBは、図1〜図4に示すように、前記ボックス本体10に、前記開口設置部22に上方から固定される支持部材40を備えている。この支持部材40は、ETC車載装置Mが載置可能な物品ケース70を回動可能に支持するためのものである。そして、前記蓋体30と物品ケース70とは、紐状連係部材Wを備えた連係機構110により連係されており、該蓋体30の開閉変位に対して該物品ケース70の回動変位を連動させ得るよう構成されている。
【0024】
支持部材40は、図1〜図4に示すように、前後に長い略矩形をなす底部42と、底部42の前端から上方へ延在する前板部44と、底部42の左端から上方へ延在する左側板部46を有している。そして支持部材40は、後方および右側方へ開放すると共に、底部42における前端から後方に向けて前後長の約2/3の領域に亘って開口48が形成されている。前板部44の上端および左側板部46の上端には、該前板部44から前方へ延出すると共に該左側板部46から左側外方へ延出する庇状の取付片部50が設けられている。これにより、取付片部50をボックス本体10における収納箱部12の上壁に上方から固定することで、該ボックス本体10に支持部材40が固定される。なお、前板部44の左下隅部には、後述するロック機構130を配設するための機構設置部54が設けられている。
【0025】
底部42には、図1〜図4に示すように、上方へ突出した一対の支持ステー部56,56が、左右方向(開口16から物品収納部14の奥側に向かう方向(前後方向)と交差する方向)で離間して立設されている。左側の支持ステー部56および右側の支持ステー部56には、物品ケース70に設けた後述する回動支持軸88が側方から嵌合する回動支持孔58が形成されている。左右の各回動支持孔58,58は、左右方向に水平に延在する同一軸線上に位置しており、これら支持ステー部56,56は、物品ケース70を支持部材40に回動可能に支持するためのものである。なお、実施例のグローブボックスGBでは、蓋体30を姿勢変位可能に支持する開閉支持孔24,24の軸心方向と、物品ケース70を回動変位可能に支持する回動支持孔58,58の軸心方向とは、左右方向に平行となる関係となっている。
【0026】
また底部42には、図3および図4に示すように、開口48の左側縁および右側縁から上方に延出した支持板部60,60が、左右方向で対向するように設けられている。各支持板部60,60は、その前端が前記前板部44に連設されており、底部42の前縁から該底部42の前後方向における略中間部位まで延在している。左側の支持板部60は、前記左側板部46と左右方向に所要の間隔をおいて離間して、該左側板部46と平行に立設されている。各支持板部60,60には、前記回動支持孔58,58を中心とする円弧状の第1ガイド溝62,62が形成されている。各第1ガイド溝62,62は、該1ガイド溝62が形成された支持板部60の上端に開放している。
【0027】
右側の支持板部60の右面において、上縁近傍の前後方向略中間でかつ第1ガイド溝62の後方には、該右面から右側方へ水平に延出する支軸64が設けられている。この支軸64には、紐状連係部材Wが巻き掛けられるプーリ(巻掛部材)66が、フリー回転可能に設けられている。更に、右側の支持板部60において、前記支軸64より後方には、該支軸64を中心とする円弧状の第2ガイド溝68が形成されている。なお、左側の支持板部60には、図3および図4に示すように、右側の支持板部60に設けた第2ガイド溝68と同じ形状の溝が、左右方向に対向して形成されている。
【0028】
物品ケース70は、図4に示すように、上方に開放して前後に長い長方形のバケット状に形成されて、底壁部72、前壁部74、後壁部76、左壁部78および右壁部80を備え、ETC車載装置Mを上方から収納可能な装置収納部82を備えている。前壁部74には、ETC車載装置Mの前面操作部を開口16側(前側)へ露出させる操作口84が形成されている。また、後壁部76の外面には、後方へ延出する1対の支持レバー部86,86が、左右方向に対向して設けられている。右側の支持レバー部86には、後端側の右側面に左方へ水平に延出する回動支持軸88が突設され、この回動支持軸88は、前記右側の支持ステー部56に設けた回動支持孔58に嵌合する。また、左側の支持レバー部86には、後端側の左側面に左方へ水平に延出する回動支持軸88が突設され、この回動支持軸88は、前記左側の支持ステー部56に設けた回動支持孔58に嵌合する。従って物品ケース70は、左右方向に軸心が延在するように設けられた各回動支持軸88,88を、左右の支持ステー部56,56に設けた各回動支持孔58,58に嵌合させることで、前側が上下方向へ昇降する回動変位が可能に該支持部材40に配設される。これにより物品ケース70は、物品収納部14の内部へ突出した前下がりの傾斜姿勢(第1姿勢、図1〜図3)と、傾斜姿勢より物品収納部14の壁面側に退避した水平の収納姿勢(第2姿勢、図7〜図10)との間で回動変位が可能となっている。
【0029】
物品ケース70の右壁部80の外側には、図4に示すように、右方へ水平に延出する支持棒90が突設されていると共に、左壁部78の外側には左方へ水平に延出する支持棒90が突設されている。右壁部80に設けた支持棒90は、支持部材40の右側の支持板部60に設けた前記第1ガイド溝62に嵌合していると共に、左壁部78に設けた支持棒90は、支持部材40の左側の支持板部60に設けた前記第1ガイド溝62に嵌合している。両支持棒90,90は、物品ケース70の収納姿勢においては対応の第1ガイド溝62,62の開口近くに位置し(図7、図9、図10)、物品ケース70が収納姿勢から傾斜姿勢へ回動変位するに従って対応の第1ガイド溝62,62に沿って下方へ移動する。そして両支持棒90,90は、物品ケース70の傾斜姿勢においては、対応の第1ガイド溝62,62の下端に位置する(図1、図3)。なお、右壁部80に設けた支持棒90は、第1ガイド溝62を介して右の支持板部60より右方へ突出しており、該支持棒90の突出した先端には、紐状連係部材Wが連結されるケース連結部92が設けられている。
【0030】
右側の支持レバー部86の左側面には、図9に示すように、該支持レバー部86に設けた前記回動支持軸88と同一軸線上に位置する支持突部94が、左方へ水平に延出するように突設されている。この支持突部94には、第1捻りバネ(付勢手段)96が装着されている。第1捻りバネ96は、巻回部が支持突部94に外装され、一方の脚部96Aが支持部材40の底部42に掛止されると共に、他方の脚部96Bが物品ケース70の後壁部76の外面に掛止されている。これにより第1捻りバネ96は、物品ケース70を常に傾斜姿勢側へ弾力的に付勢している。すなわち物品ケース70は、該物品ケース70の重さ、該物品ケース70に載置されるETC車載装置Mの重さおよび第1捻りバネ96の付勢力により、傾斜姿勢に向けて付勢されている。
【0031】
左側の支持レバー部86の右側面には、図9に示すように、該支持レバー部86に設けた前記回動支持軸88と同一軸線上に位置する支持軸100が、右方へ水平に延出するよう突設されている。この支持軸100には、ロータリダンパ102が装着されている。ロータリダンパ102は、支持部材40の底部42に突設された掛止リブ104に掛止されており、物品ケース70が収納姿勢から傾斜姿勢へ回動変位する際に抵抗となってダンパー機能を発揮するようになっている。すなわちロータリダンパ102は、傾斜姿勢に向けて付勢されている物品ケース70が、収納姿勢から傾斜姿勢へ回動変位する際に回動速度が高まるのを規制して、該物品ケース70をゆっくりと回動変位させるよう機能するものである。
【0032】
次に、前記物品ケース70と前記蓋体30との間に連結される連係機構110について説明する。実施例の連係機構110は、蓋体30に設けた前記右側のレバー部38と、物品ケース70に設けた前記右側の支持棒90とを、前記紐状連係部材Wで連結した構成となっている。この紐状連係部材Wは、蓋体30が閉成姿勢で物品ケース70が収納姿勢の場合(図10)に展張状態となり、蓋体30が開放姿勢で物品ケース70が前下がりの傾斜姿勢の場合(図1)にも展張状態となる。そして紐状連係部材Wは、該蓋体30の開放姿勢から閉成姿勢への姿勢変位(開口16を閉じる方向の姿勢変位)に連係して物品ケース70を収納姿勢に向けて引っ張るようになっている。また紐状連係部材Wは、蓋体30の開放姿勢において物品ケース70が収納姿勢へ姿勢変位した場合(図7)には弛んだ状態となり得ると共に、物品ケース70が収納姿勢において蓋体30が開放姿勢へ姿勢変位した場合にも弛んだ状態となり得る。
【0033】
紐状連係部材Wは、例えば布・麻・化学繊維等の細糸を結った形成したものや、合成樹脂製のもので、太さは1mm程度のものが使用されている。何れの紐状連係部材Wにあっても、長手方向での伸縮性は殆どなく、短手方向での撓曲性や屈曲性は富んでおり、長手方向の何れの部位においても容易に曲がり得るようになっている。そして紐状連係部材Wは、図3および図4に示すように、長さ方向のおける一方の端部に第1係止環112が設けられ、他方の端部に第2係止環114が形成されている。第1係止環112は、蓋体30の右側のレバー部38において開閉支軸32から離れて設けた蓋連結部39に掛止され、第2係止環114は、物品ケース70の右側の支持棒90に設けたケース連結部92に掛止されている。そして紐状連係部材Wは、中間部位が前記プーリ66に巻き掛けられている。
【0034】
ここで、蓋体30に設けた蓋連結部39は、図1および図10を比較することで明らかなように、該蓋体30の閉成姿勢から開放姿勢への姿勢変位により、紐状連係部材Wの延在方向に沿う方向でケース連結部92に近づく方向へ移動する。また蓋連結部39は、蓋体30の開放姿勢から閉成姿勢への姿勢変位により、紐状連係部材Wの延在方向に沿う方向でケース連結部92から離れる方向へ移動する。従って紐状連係部材Wは、蓋体30の開放姿勢から閉成姿勢への姿勢変位において展張状態となることで、物品ケース70を傾斜姿勢から収納姿勢に向けて適切に引っ張ることができる。
【0035】
一方、物品ケース70に設けたケース連結部92は、図1および図10を比較することで明らかなように、該物品ケース70の収納姿勢から傾斜姿勢への姿勢変位により、紐状連係部材Wの延在方向に沿う方向で蓋連結部39に近づく方向へ移動する。またケース連結部92は、物品ケース70の傾斜姿勢から収納姿勢への姿勢変位により、紐状連係部材Wの延在方向に沿う方向で蓋連結部39から離れる方向へ移動する。従って紐状連係部材Wは、蓋体30の開放姿勢において、該物品ケース70を傾斜姿勢から収納姿勢へ回動変位させると弛むようになり、該蓋体30が開放姿勢に保持された状態で物品ケース70の回動変位を許容する。
【0036】
蓋連結部39、ケース連結部92およびプーリ66の位置関係は、次のようになっている。すなわちプーリ66は、物品ケース70の回動変位に関係なしに、蓋連結部39およびケース連結部92より常に該物品ケース70の収納姿勢側に位置するよう配設されている。換言すると、プーリ66は、物品ケース70が収納姿勢にあっても傾斜姿勢にあっても、蓋連結部39およびケース連結部92より常に上方に位置するよう配設されている。これにより紐状連係部材Wは、図1および図3に示すように、物品ケース70が収納姿勢にあっても傾斜姿勢にあっても、ケース連結部92からプーリ66に向け延在し、該プーリ66で曲げられ、蓋連結部39に向け延在するようになり、右側から見て略「ヘ字形」となる。
【0037】
また、実施例の連係機構110は、紐状連係部材Wに弛みが生ずるのを防止する展張機構116を備えている。この展張機構116は、紐状連係部材Wを摺動可能に掛止して前記右側の支持板部60に設けた前記第2ガイド溝68にスライド移動可能に配設された掛止部材118と、この掛止部材118を常に第2ガイド溝68の上端方向へ付勢する第2捻りバネ(付勢手段)124とを備えている。掛止部材118は、図1および図7に示すように、蓋体30の開放姿勢および物品ケース70の傾斜姿勢において、プーリ66と蓋連結部39との間に延在する紐状連係部材Wの延在ラインと、該延在ラインと交差する方向に離れた位置との間で、第2ガイド溝68にスライド移動可能に配設されている。このような掛止部材118は、紐状連係部材Wにおける前記レバー部38とプーリ66のと間に位置する部分を摺動可能に挿通させる紐状連係部材挿通部120と、第2ガイド溝68に嵌合して摺接する嵌合支持部122とを備えている。
【0038】
第2捻りバネ124は、図1、図3および図4に示すように、プーリ66を支持する前記支軸64に巻回部が装着されている。この第2捻りバネ124の一方の脚部124Aは、支持部材40における右側の支持板部60の外面に突設した掛止リブ126に掛止され、他方の脚部124Bが、掛止部材118に挿通して該掛止部材118を支持している。これにより第2捻りバネ124は、掛止部材118を、常には第2ガイド溝68の上端方向(紐状連係部材Wの延在方向と交差する方向)へ弾力的に付勢している。
【0039】
第2捻りバネ124の掛止部材118に作用する付勢力は、前下がりの傾斜姿勢に向けて付勢されている物品ケース70によってケース連結部92に作用する力より小さく設定されている。すなわち、第2捻りバネ124の付勢力が掛止部材118に作用すると、蓋連結部39とケース連結部92に連結された紐状連係部材Wが展張することで、ケース連結部92には、該ケース連結部92を上方へ引っ張る所謂「引上げ力」が発生する。一方、回動支持軸88から前側へ所要距離で離れて設けられているケース連結部92には、物品ケース70の重さ、ETC車載装置Mの重さおよび第1捻りバネ96の付勢力により、下方へ所定の回転モーメントが作用するので、該ケース連結部92には、該ケース連結部92を下方へ押し下げる所謂「押下げ力」が発生している。従って、第2捻りバネ124の掛止部材118に作用する付勢力は、ケース連結部92に作用する引上げ力が該ケース連結部92に作用する押下げ力より小さくなる大きさに設定されている。これにより物品ケース70は、第2捻りバネ124の付勢力により、前下がりの傾斜姿勢から収納姿勢へ勝手に回動変位することがない。
【0040】
実施例の物品ケース70は、図3〜図6に示すように、前記紐状連係部材Wが弛むことを利用して、蓋体30の姿勢変位と関係なしに物品ケース70を収納姿勢に保持するロック機構130を備えている。このロック機構130は、支持部材40における前板部44に設けた前記機構設置部54に配設された操作部材132と、この操作部材132に装着されたロックピン(ロック部材)134と、これら操作部材132およびロックピン134をロック位置に付勢するコイルバネ(付勢手段)136とを備えている。操作部材132は、支持部材40から前方に露出する操作プレート132Aと、この操作プレート132Aの裏側から後方へ延出して、機構設置部54に形成した貫通口を介して支持部材40における左側板部46と左側の支持板部60との間の空間へ突出するレバー部132Bとを備えている。そして、レバー部132Bの後端近傍には、左右方向へ貫通する装着孔132Cが形成されており、該装着孔132Cに対して、左側から右側へ貫通するように前記ロックピン134が挿通支持されている。
【0041】
また左側板部46には、水平に延在して右方へ開口したボス138が形成されており、このボス138内に前記コイルバネ136の左側部分が収容保持されている。なおロックピン134は、左側に開口しており、前記コイルバネ136が該ロックピン134の内部へ突入した状態となっている。更に、図4および図6に示すように、支持部材40における左側の支持板部60には、前記ロックピン134の挿通を許容する貫通孔140が、左右方向へ貫通するように形成されている。また更に、物品ケース70の左壁部78には、該物品ケース70が収納姿勢において前記貫通孔140に右側から整合する係止孔(係止部)142が形成されている。
【0042】
前述のように構成されたロック機構130は、図6(a)に示すように、コイルバネ136の付勢力によりロックピン134および操作部材132が右方へ付勢され、ロックピン134が貫通孔140内へ突入する。そして、物品ケース70が収納姿勢となっている場合には、コイルバネ136の付勢力により、ロックピン134が貫通孔140から右方へ突出し、該ロックピン134が物品ケース70の係止孔142に突入するようになっている。従って物品ケース70は、操作部材132の非操作時にはロックピン134が係止孔142に突入することで、収納姿勢に保持されると共に該収納姿勢から前下がりの傾斜姿勢への回動が規制される。
【0043】
一方、図6(b)に示すように、操作部材132を、コイルバネ136の付勢力に抗して左側へスライド移動すると、ロックピン134が左方へ移動して係止孔142から退避して、ロックピン134と該係止孔142との係止が解除されるようになっている。従って、蓋体30が開放姿勢に保持されていると共に物品ケース70が収納姿勢に保持されている状態において、操作部材132を左方へスライド移動させると、物品ケース70の重さ、ETC車載装置Mの重さおよび前記第1捻りバネ96の付勢力により、該物品ケース70は、収納姿勢から前下がりの傾斜姿勢への回動変位が許容される。
【0044】
前述のように構成された実施例のグローブボックスGBは、閉成姿勢の蓋体30を、操作ノブ34を操作して開放姿勢に向け姿勢変位すると、該蓋体30のレバー部38が後方傾斜状態から垂直状態へ変位する。この際に、ロック機構130により物品ケース70が収納姿勢に保持されていないと仮定すると、蓋体30の開放姿勢への姿勢変位に従って蓋連結部39が紐状連係部材Wの延在方向においてケース連結部92に近づくように移動し、紐状連係部材Wがケース連結部92側へ移動する。これにより物品ケース70は、該物品ケース70の重さ、ETC車載装置Mの重さおよび前記第1捻りバネ96の付勢力により、収納姿勢から傾斜姿勢に回動変位する。すなわち物品ケース70は、紐状連係部材Wに押されて回動変位するものではなく、傾斜姿勢側へ作用している付勢力により該物品ケース70自体が回動変位する。なお、物品ケース70の回動速度はロータリダンパ102により制御されているから、該物品ケース70の回動速度よりも蓋体30の開放速度が速い場合には紐状連係部材Wに一時的に弛みが生じ得る状態になるが、展張機構116の掛止部材118が第2ガイド溝68に沿って適宜移動することで該紐状連係部材Wの弛みは実質的に発生しない。
【0045】
また、閉成姿勢の蓋体30を、操作ノブ34を操作して開放姿勢に向け姿勢変位する際に、ロック機構130により物品ケース70が収納姿勢に保持されている場合には、該蓋体30の開放変位に従って蓋連結部39が上方へ移動することで、蓋連結部39が紐状連係部材Wの延在方向においてケース連結部92に近づくようになるから、紐状連係部材Wに弛みが生じ得る状態になる。しかし、展張機構116の掛止部材118が第2捻りバネ124により付勢されているので、紐状連係部材Wに弛みが生じそうになると該掛止部材118が第2ガイド溝68に沿って上方へ移動するので、紐状連係部材Wは展張状態に保持される。そして、蓋体30が開放姿勢まで変位しても、物品ケース70は、ロック機構130により収納姿勢に保持されて前下がりの傾斜姿勢に回動変位しない。従って、図7および図8に示すように、物品ケース70がボックス本体10の物品収納部14内へ突出しないので、該物品ケース70の前壁部74が乗員から視認されず、該物品ケース70に載置されているETC車載装置Mの前部が露出することを防止し得る。また、物品ケース70が開口16および物品収納部14内へ突出していないので、該物品収納部14に対する物品の出し入れに際して該物品ケース70が邪魔にならない。
【0046】
また、蓋体30の開放姿勢において、ロック機構130による物品ケース70のロックを解除すると、物品ケース70は、物品ケース70の重さ、ETC車載装置Mの重さおよび第1捻りバネ96の付勢力と、紐状連係部材Wの変形とにより、第2捻りバネ124の付勢力に抗して収納姿勢から前下がりの傾斜姿勢へゆっくりと回動変位する。そして、左側の支持棒90および右側の支持棒90が対応する第1ガイド溝62の下端に当接することで、物品ケース70は前下がりの傾斜姿勢に保持される。なお、物品ケース70の回動変位に伴って右側の支持棒90が第1ガイド溝62に沿って下方へ移動することで、プーリ66に巻き掛けられた紐状連係部材Wがケース連結部92により引っ張られるが、掛止部材118が第2ガイド溝68に沿って下方へ移動するので、蓋体30が閉成姿勢に向けて姿勢変位することはない。そして、前下がりの傾斜姿勢となった物品ケース70は、図1および図2に示すように、前壁部74が支持部材40の下方へ露出して、該前壁部74に設けた操作口84を介してETC車載装置Mの前面がグローブボックスGBの開口16に臨むようになるから、該ETC車載装置Mに対する操作が可能となる。しかも、物品ケース70の前壁部74が支持部材40の下方に位置するようになり、運転席および助手席の乗員は、上体を屈めなくてもETC車載装置Mの前面を視認することができ、ETC車載装置Mに対する操作を容易に行ない得る。
【0047】
一方、物品ケース70が前下がりの傾斜姿勢となっている状態において、開口16を介して物品収納部14に対する物品の出し入れを行なう際に該物品ケース70の前部下方に手や腕が接触した際には、該物品ケース70は傾斜姿勢から収納姿勢側へ適宜回動変位する。これにより、ケース連結部92が、物品ケース70の回動変位に伴って第1ガイド溝62に沿って上方へ移動する。このとき、ケース連結部92と蓋連結部39との紐状連係部材Wに沿う方向での距離が小さくなるから該紐状連係部材Wに弛みが生じ得るようになるが、掛止部材118が第2捻りバネ124の付勢力により第2ガイド溝68に沿って移動するので、紐状連係部材Wは展張状態に保持されて弛みが生ずることが防止される。そして、物品ケース70が収納姿勢側に向けて回動変位しても、紐状連係部材Wは変形するだけで蓋連結部39が下方へ押されることはないので、蓋体30は開放姿勢に保持される。従って、物品ケース70が収納姿勢側へ回動変位しても、蓋体30が閉成姿勢側へ姿勢変位しないので、手や腕に該蓋体30が接触することがない。
【0048】
物品ケース70が収納姿勢に保持されている状態において、蓋体30を開放姿勢から閉成姿勢へ姿勢変位させた場合には、該蓋体30のレバー部38が垂直姿勢から傾斜姿勢へ移動することにより、紐状連係部材Wが下方へ引っ張られる。この際に、第2捻りバネ124により第2ガイド溝68の上端に位置していた掛止部材118は、紐状連係部材Wにより第2ガイド溝68に沿って下方へ移動するため、蓋体30の閉成姿勢へ向けた姿勢変位が許容され、該蓋体30は閉成姿勢に姿勢変位して該閉成姿勢に保持される。
【0049】
また、物品ケース70が傾斜姿勢に保持されている状態において、蓋体30を開放姿勢から閉成姿勢へ姿勢変位させた場合には、該蓋体30のレバー部38が垂直姿勢から傾斜姿勢へ移動することにより、蓋連結部39が紐状連係部材Wの延在方向においてケース連結部92から離間するようになるので、紐状連係部材Wが下方へ引っ張られる。これにより、ケース連結部92が第1ガイド溝62に沿って上方へ引っ張られるので、蓋体30の閉成姿勢への姿勢変位に連係して、物品ケース70は傾斜姿勢から収納姿勢へ回動変位する。なお掛止部材118は、第2ガイド溝68の下端近傍に位置していたので、第2ガイド溝68に沿って殆ど移動することなくほぼ停止状態に保持される。
【0050】
従って、実施例のグローブボックスGBは、蓋体30と物品ケース70とを、長手方向での伸縮変形が不能で短手方向での撓曲変形が可能な紐状連係部材Wで連係した構成としたことで、次のような作用効果が得られる。すなわち、閉成姿勢の蓋体30を開口16を開く開放姿勢へ姿勢変位すると、該蓋体30に連結された紐状連係部材Wが弛むようになるので、物品収納部14の内部へ突出する傾斜姿勢に向けて付勢されている物品ケース70は、該傾斜姿勢に向けて回動変位する。従って、蓋体30を開放姿勢にすることで、開口16を介して物品ケース70の前側に臨むETC車載装置Mに対する操作が可能となる。また、開放姿勢の蓋体30を、開口16を閉じる閉成姿勢へ姿勢変位すると、該蓋体30に連結された紐状連係部材Wが物品ケース70を引っ張るので、該物品ケース70を、該蓋体30の姿勢変位に連係して収納姿勢へ回動変位させることができる。
【0051】
そして、蓋体30の開放姿勢において、傾斜姿勢の物品ケース70が収納姿勢側へ回動変位しても、紐状連係部材Wが弛むようになるので、蓋体Wは開口16を開いた開放姿勢に保持される。従って、物品ケース70を傾斜姿勢に保持するロック機構を必要とせず、グローブボックスGBの構造が簡単になると共に製造コストも嵩まない。また、物品収納部14に対する物品の出し入れ時に、手や腕が物品ケース70に触れて該物品ケース70が収納姿勢側へ回動変位しても、蓋体30が開口を閉じる閉成姿勢へ姿勢変位しないので該蓋体30が手や腕に接触せず、使い勝手が好適に向上する。
【0052】
蓋体30のレバー部38に設けた蓋連結部39は、蓋体30が開放姿勢に姿勢変位すると、物品ケース70の支持棒90に設けたケース連結部92に近づく方向へ移動する。従って、蓋体30の開放姿勢への姿勢変位時には、蓋連結部39とケース連結部92に連結された紐状連係部材Wが弛むようになり、物品ケース70の収納姿勢から傾斜姿勢へ回動変位が許容される。また蓋連結部39は、蓋体30が閉成姿勢に姿勢変位すると、ケース連結部92から離れる方向へ移動する。従って、蓋体30の閉成姿勢への姿勢変位時には、蓋連結部39とケース連結部92に連結された紐状連係部材Wが展張するようになり、物品ケース70は上方へ引っ張られて傾斜姿勢から収納姿勢へ回動変位する。
【0053】
蓋体30の姿勢と物品ケース70の姿勢との関係において、紐状連係部材Wに弛みが生じ得る場合には、第2捻りバネ124の付勢力により、掛止部材118が第2ガイド溝68に沿って紐状連係部材Wの延在方向と交差する方向へ移動することで、該紐状連係部材Wを常に展張状態に保持し得る。例えば、物品ケース70を収納姿勢に保持した状態で、蓋体30を閉成姿勢から開放姿勢へ姿勢変位した際には、紐状連係部材Wに弛みが生じそうになると、第2捻りバネ124の付勢力により掛止部材118が第2ガイド溝68に沿って上方へ移動することで、該紐状連係部材Wは展張状態に保持される。また、蓋体30を開放姿勢に保持した状態で、物品ケース70を傾斜姿勢から収納姿勢へ回動変位した場合には、紐状連係部材Wに弛みが生じそうになると、第2捻りバネ124の付勢力により掛止部材118が第2ガイド溝68に沿って上方へ移動することで、該紐状連係部材Wは展張状態に保持される。従って、紐状連係部材Wに弛みが生ずることにより、該紐状連係部材Wが絡まったり捻れることが防止される。そして、第2捻りバネ124の付勢力では、物品ケース70が収納姿勢側へ回動変位させることができないから、物品ケース70の傾斜姿勢においてETC車載装置Mを操作する際に、該物品ケース70が不用意に回動変位することを防止し得る。
【0054】
そして、開閉支持孔24,24の軸心方向と回動支持孔58,58の軸心方向とが左右方向で平行となっているので、蓋体30の開閉方向と物品ケース70の回動方向とが同一方向となり、グローブボックスGBの使い勝手がよくなる。また物品ケース70は、開口16側から物品収納部14の奥側へ押しても、該開口16から離間する奥側へ移動しない。従って、物品ケース70に載置したETC車載装置Mを開口16側から操作する際に、該物品ケース70が不用意に物品収納部14の奥側へ移動することを規制でき、該ETC車載装置Mの操作を行ない易くなって、使い勝手がよい。そして、物品ケース70が物品収納部14の奥側へ移動するのを規制する別途のロック機構も必要としない。
【0055】
また、蓋連結部39とケース連結部92とに連結された紐状連係部材Wは、プーリ66により途中で曲げられた状態で展張されるので、蓋体30が該紐状連係部材Wを引っ張る方向が下方であるのに対し、該紐状連係部材Wが物品ケース70を引っ張る方向が上方となっている。すなわち、蓋体30が紐状連係部材Wを引っ張る方向と該紐状連係部材Wが物品ケース70を引っ張る方向とを異なるようにすることで、蓋体30の開閉方向と物品ケース70の回動方向とを逆にし得る。
【0056】
更に、ロック機構130により物品ケース70を収納姿勢に保持しておくことで、蓋体30を開放姿勢へ姿勢変位させても、物品ケース70を収納姿勢に保持させることができる。従って、物品ケース70に設置したETC車載装置Mに対する操作を必要としない時には、ロック機構130により物品ケース70を収納姿勢に保持しておくことで、蓋体30を開放姿勢に保持した際に物品ケース70が物品収納部14の内部へ突出していないので、該物品収納部14に対する物品の出し入れが行ない易くなり、使い勝手が向上する。
【0057】
なお、連係機構110を紐状連係部材Wで構成したので、ボックス本体10の側方に紐状連係部材Wが展張状態で延在し得るスペースだけを確保すればよく、リンク機構やギア機構等からなる連係機構に比べて配設スペースを小さくし得る。従って、連係機構110の配設に際して、ボックス本体10の側方に大きなスペースを確保するために、物品収納部14の容積を小さくする必要がない。また、連係機構110の構造がシンプルであるから、リンク機構やギア機構等に比べて軽量に構成され、スムーズに作動して作動音も殆ど発生せず、更には作動不良による故障等も発生し難い。
【0058】
(変更例)
本願発明に係る収納ボックスは、前述した各実施例のものに限られるものではなく、種々の変更が可能である。
(1)実施例では、インストルメントパネルIPに取り付けられたボックス本体10と、該ボックス本体10における物品収納部14を乗員室へ臨ませる開口16を蓋体30で開閉する「ボックスタイプ」のグローブボックスを例示したが、本願発明に係る収納ボックスは、インストルメントパネルIPの設置部150に回転可能に配設された「バケットタイプ」のグローブボックスも対象とし得る。このバケットタイプのグローブボックスは、物品収納部(収納部)が形成されて設置部150内に収容された物品収納本体と、設置部150の前記物品収納部を乗員室に臨ませる開口を開閉する蓋体とが一体に構成され、物品収納本体に前記支持部材40が配設されて、該支持部材40に物品ケース70が回動変位可能に配設される。
(2)実施例では、ボックス本体10の上側に物品ケース70が配設され、蓋体30が上下方向に開閉変位して、物品ケース70が上下方向に回動変位する形態を例示したが、蓋体30の開閉方向および物品ケース70の回動方向はこれに限定されるものではない。例えば、蓋体30が水平方向に開閉変位するものであってもよく、また物品ケース70は、回動支持軸88の軸心方向が上下方向となっていて水平方向に回動変位するものであってもよい。また、物品ケース70の配設位置は、ボックス本体10の底壁や、左右の側壁であってもよい。
(3)付勢手段96および付勢手段124は、捻りバネに限定されるものではなく、板バネやコイルバネ等であってもよい。同様に、付勢手段136は、コイルバネに限定されるものではなく、板バネやコイルバネ等であってもよい。
(4)実施例では、ETC車載装置Mが載置される物品ケース70を例示したが、該物品ケース70は、これ以外のHDD装置またはCDチェンジャー等の各種小型車載電子装置を載置し得るものであってもよい。また物品ケース70は、小型車載電子装置を載置するものに限定されず、小型物品(ペン、携帯電話、カード等)を前壁部74に設けた開口(前記操作口84)を介して出し入れ可能なものであってもよい。
(5)実施例では、収納ボックスとして、インストルメントパネルに配設されるグローブボックスを例示したが、本願が対象とする収納ボックスはこれに限定されるものではなく、フロアコンソールやドアパネル等の各種車両内装部材に配設される収納ボックスであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
14 物品収納部(収納部),16 開口,24 開閉支持孔(開閉支点),30 蓋体
39 蓋連結部,58 回動支持孔(回動支点),66 プーリ(巻掛部材),70 物品ケース
92 ケース連結部,118 掛止部材,124 第2捻りバネ(付勢手段)
130 ロック機構,IP インストルメントパネル(車両内装部材)
W 紐状連係部材(紐状の連係部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装部材に設けられた収納部と、この収納部を乗員室へ臨ませる開口を開閉する蓋体とを備えた収納ボックスにおいて、
前記収納部に、該収納部の内部に突出する第1姿勢および該第1姿勢より収納部の壁面側に退避した第2姿勢に回動可能に配設され、該第1姿勢に向けて付勢される物品ケースと、
前記物品ケースおよび蓋体の間に連結され、蓋体が前記開口を開いた姿勢における物品ケースの前記第2姿勢への姿勢変位を弛んで許容する紐状の連係部材とを備え、
前記開口を閉じる方向の前記蓋体の姿勢変位に連係して、前記連係部材で前記物品ケースを前記第2姿勢に向けて引っ張ると共に、蓋体が開口を閉じた姿勢において連係部材が物品ケースを前記第2姿勢に支持し、
前記開口を開く方向の前記蓋体の姿勢変位に連係して、前記第1姿勢への付勢下に前記物品ケースの該第1姿勢に向けた姿勢変位を前記連係部材が許容するよう構成した
ことを特徴とする収納ボックス。
【請求項2】
前記連係部材は、一端が前記蓋体の開閉支点から離れた蓋連結部に連結されると共に、他端が前記物品ケースの回動支点から離れたケース連結部に連結され、
前記蓋連結部は、前記開口を開く方向の前記蓋体の姿勢変位によりケース連結部に近づく方向へ移動し、開口を閉じる方向の蓋体の姿勢変位によりケース連結部から離れる方向へ移動する請求項1記載の収納ボックス。
【請求項3】
前記連係部材を摺動可能に掛止して、付勢手段により前記連係部材の延在方向と交差する方向へ付勢される掛止部材を備えた請求項1または2記載の収納ボックス。
【請求項4】
前記付勢手段の前記掛止部材に作用する付勢力は、第1姿勢に向けて付勢される前記物品ケースによって前記ケース連結部に作用する力より小さく設定される請求項3記載の収納ボックス。
【請求項5】
前記物品ケースにおける回動支点の軸線方向と、前記開口を開閉する前記蓋体における開閉支点の軸線方向とが同一であり、
前記物品ケースにおける回動支点の軸線方向と前記開口とが平行になっている請求項1〜4の何れか一項に記載の収納ボックス。
【請求項6】
前記物品ケースの前記第2姿勢側に巻掛部材が設けられ、
前記連係部材は、前記ケース連結部から前記巻掛部材に向け延在して、該巻掛部材で曲げられて前記蓋連結部に向け延在する請求項1〜5の何れか一項に記載の収納ボックス。
【請求項7】
前記物品ケースを、前記開口を開く方向の前記蓋体の姿勢変位と関係なしに第2姿勢に保持するロック機構を備えた請求項1〜6の何れか一項に記載の収納ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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