説明

取鍋乾燥用バーナ装置

【課題】製銑、製鋼工場で使用する溶銑鍋・溶鋼鍋内部の耐熱レンガを張り替えまたは補修後において、溶銑鍋・溶鋼鍋内部を乾燥させるためのバーナ装置を提供する。
【解決手段】バーナとバーナアームとリンクアームと前記バーナアームが連結される垂直柱と前記垂直柱を保持し、前記リンクアームが連結される架台を備え、前記バーナアームの一端は前記垂直柱に自在継手を介して連結され、他端には前記バーナを取り付け、前記バーナは吊り下げ用ワイヤによって前記垂直柱から吊り下げられ、前記リンクアームは、前記バーナの使用状態において、前記バーナアームに斜め下方から連結されるように、一端が前記バーナアームのバーナを取り付けた端部側に自在継手を介して連結され、他端が自在継手を介して前記架台と連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製銑、製鋼工場で使用する溶銑鍋・溶鋼鍋内部の耐熱レンガを張り替えまたは補修後において、溶銑鍋・溶鋼鍋内部を乾燥させるためのバーナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製銑、製鋼工場で、溶銑や溶鋼を運搬するための溶銑鍋・溶鋼鍋(以下、取鍋)は、鍋の鉄皮を保護するために、鍋内に耐熱レンガを貼り付けている。耐熱レンガは定期的に張り替えられるが、内部に水分が残った状態で使用すると溶銑、溶鋼に接触した際、水分が急激に膨張して爆裂するため、張り替えた後、取鍋内部をバーナ等で加熱して乾燥させることが必要である。
【0003】
特許文献1は、ランスバーナを用いた真空脱ガス槽の乾燥予熱方法に関し、乾燥予熱すべき槽内耐火物の状態により、ランスバーナ位置および燃焼量を設定した予熱パターンから最適なものを選択して槽内を均一、高温に保持することが記載されている。
【0004】
特許文献2は、取鍋に内張りされる耐火物の乾燥方法に関し、取鍋の蓋の外周部側面に容量が大小のオイルバーナを向かい合うように取り付け、その天井部分には攪拌翼を設けることにより鍋内部に旋回流を現出させ、内張りされた耐火物を均等に乾燥させることが記載されている。
【特許文献1】特開平7−268443号公報
【特許文献2】特開平10−139557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製銑、製鋼工場において取鍋を補修する場合、補修場所において取鍋内部の耐火物の張替え作業や、張替え後の乾燥作業のため、クレーンによる蓋の脱着作業が必要で、また、補修後は取鍋を工場内の本来の稼動位置に戻すためのクレーン作業も必要とされる。
【0006】
従って、補修後の耐火物の乾燥のため、取鍋内部を加熱する乾燥装置は、クレーンによる蓋の脱着や本体の移動の際、障害とならないことが必要であるが、特許文献1、2には記載がなく、特に、特許文献2記載の装置は、乾燥作業用の蓋を別途準備することが必要で、保管場所や、脱着作業が大掛かりとなり操業上の負担が大きい。
【0007】
そこで、本発明は簡便な構造で、且つ、補修作業やその後の取鍋移動の際にクレーン作業の障害とならない取鍋乾燥用バーナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題の以下の手段により達成可能である。
【0009】
1.垂直柱を備えた架台と前記垂直柱に自在継手を介して連結し、被移動体をその先端に取り付けた一のアームと前記一のアームと前記架台に自在継手を介して連結する他のアームを備えた旋回・昇降装置であって、前記被移動体は前記垂直柱から吊り下げワイヤによって吊り下げられ、前記他のアームは、前記吊り下げワイヤの巻き上げに伴い、前記一のアームが旋回・昇降するように、前記一のアームの斜め下方から前記架台に自在継手を介して連結されていることを特徴とする旋回・昇降装置。
2.バーナとバーナアームとリンクアームと前記バーナアームが連結される垂直柱と前記垂直柱を保持し、前記リンクアームが連結される架台を備えた取鍋乾燥用バーナ装置であって、前記バーナアームの一端は前記垂直柱に自在継手を介して連結され、他端には前記バーナを取り付け、前記バーナは吊り下げ用ワイヤによって前記垂直柱から吊り下げられ、前記リンクアームは、前記バーナの使用状態において、前記バーナアームに斜め下方から連結されるように、一端が前記バーナアームのバーナを取り付けた端部側に自在継手を介して連結され、他端が自在継手を介して前記架台と連結していることを特徴とする取鍋乾燥用バーナ装置。
3.前記バーナの使用状態において、前記バーナアームと前記リンクアームの架台における取り付け位置が水平面において、前記垂直軸の軸心を挟んで直角を成すことを特徴とする2記載の取鍋乾燥用バーナ装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、バーナの鍋蓋への移動、及び乾燥作業後の鍋蓋からの昇降と退避を、バーナアームとリンクアームが連結するリンク機構で行うので、サイクロ減速機とその制御装置が不要で、設備費と運転費を安価とすることが可能である。
【0011】
また、作業開始前のバーナを鍋蓋に取り付ける設置作業が短時間で済み、作業効率が向上し、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係るバーナ乾燥装置の構成を示す模式的外観図で、(a)は側面図で、(b)は要部の上面図、(c)は要部の正面図を示す。図において1はバーナ乾燥装置、2は垂直柱、3、3aはバーナアーム、4,4aはバーナ、5,5aは吊り下げワイヤ、6はリンクアーム、7は滑車、8はバーナアーム3と垂直柱2を連結する自在継手を構成する継手部材、9は垂直柱2を保持し、リンクアーム6が自在継手(図では省略)を介して連結される架台、10は取鍋を示す。
また、21はバーナアーム3と垂直柱2を連結する自在継手を支持するブラケット、22は滑車7を吊り下げる滑車支持部、91は架台9において垂直柱2を保持する保持部材、92は架台9でのリンクアーム3の支持部、93は架台9で、垂直柱2を保持する基礎部を示す。
【0013】
記号Aは垂直柱2とバーナアーム3の取り付け部、記号Bはバーナアーム3とリンクアーム6の取り付け部、記号Cはリンクアーム6と架台9の取り付け部を示す。尚、垂直柱2の構造、断面形状は特に規定しないが、中空角柱とするとブラケットなどの取り付けが容易で好ましい。
【0014】
図示したバーナ乾燥装置1は、垂直柱2と垂直柱2を保持部材91で保持する架台9とバーナ4を昇降、旋回させるリンク機構を備える。
【0015】
前記リンク機構はバーナ4を一方の端部に取り付け、他方の端部が垂直柱2に取り付けられるバーナアーム3と、バーナアーム3と架台9を連結するリンクアーム6と、垂直柱2の一部であって、バーナアーム3の取り付け部Aから架台9への基礎部93までの部分と、架台9の一部であって、基礎部93からリンクアーム6の支持部92までの部分で構成される。尚、バーナアーム3とリンクアーム6は固定長とする。
【0016】
上述したリンク機構において、リンクアーム6は、バーナ4を取鍋10の内部を乾燥させるため、取鍋10に装着した状態において、バーナアーム3に対して斜め下方の位置となるように架台9に設けられた支持部92で支持される(図1(b),(c))。
【0017】
バーナ4は、吊り下げワイヤ5によって、垂直柱2から吊り下げられる。取鍋内の乾燥作業後、バーナ4を上昇させる場合は、吊り下げワイヤ5を垂直柱2の滑車支持部22で支持される滑車7を通して巻き上げ機(図では省略)で巻き上げる。
【0018】
バーナアーム3は取り付け部Aを支点として鉛直面内を上方に向かって傾動しようとし、同時に、リンクアーム6もバーナ4に対して斜め下方となる架台9の支持部92を支点にバーナアーム3の動きに伴って上方に向かって傾動しようとする。
【0019】
しかし、リンクアーム6は、その長さが一定のため、バーナアーム3を矢印aの方向に旋回させ、バーナアーム3の先端に取り付けたバーナ4を取鍋内の乾燥作業のための設定位置である、巻き上げ開始位置から上昇(上昇角度θ)、旋回(旋回角度θ)させることが可能となる。
【0020】
バーナアーム3とリンクアーム6のこのような動きを可能とするため、取り付け部A,B,Cは自在継手とする。本発明では自在継手の構造は特に規定しない。図2は取り付け部Aの構造の一例を示す模式図で、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は上面図を示す。
【0021】
図において図1と同符号は同じものを指す。バーナアーム3の先端部31は継手部材8と連結ピン14で連結され、上下方向に回転可能とする。
【0022】
継手部材8の上下は垂直柱2のブラケット21で水平方向に回転可能なように支持し、垂直柱2に対してバーナアーム3が上下左右方向に回転可能な自在継手を構成する。
【0023】
図3は、取り付け部Bの構造の一例を示す図で、図において図1と同符号は同じものを指す。バーナアーム3の先端部近傍に取り付けたフック12と、リンクアーム6の先端部61は鎖13によって連結されている。
【0024】
図4は取り付け部Cの構造の一例を示す図で、図において図1と同符号は同じものを指す。リンクアーム6の架台9側の先端部62と、架台9の支持部92は孔加工が施され、鎖13によって連結されている。
本発明では、上述したリンク機構を構成する各部材の寸法は、バーナの脱着作業の際、バーナアームが架台側に退避し、クレーン作業を邪魔しないよう適宜選定すれば良く特に規定しない。
【0025】
上述したリンク機構は、バーナアーム3が取り付け部Aを支点に上方に引き上げられれば作動するので、吊り下げワイヤ5をバーナアーム3に取り付けても良い。但し、巻き上げる力は吊り下げワイヤ5の取り付け位置をバーナアーム3の先端にするほど少なくなり、バーナ4に取り付けることが好ましい。
【0026】
尚、本発明に係るバーナ乾燥装置において、吊り下げワイヤの巻き上げに伴うバーナの動きは、バーナアームにおけるリンクアームの取り付け位置が一定の場合、垂直柱におけるバーナアームの取り付け高さ(水平面から取り付け位置までの距離)と、架台9上の支持部92と垂直柱2の基礎部93の距離とによって決定される。
【0027】
また、通常の操業においては、バーナ4が取鍋内の乾燥作業時の位置(取鍋取り付け状態)から、旋回角度(角度θ)が90度、上昇角度(角度θ)が80度となるようにリンク機構を選定することが好ましい。
【0028】
例えば、旋回角度(角度θ)を90度とした場合、リンク機構は図6で模式的に表され、バーナを吊り下げる吊り下げワイヤを巻き上げた場合のバーナの位置を求めることが可能である。
【0029】
図5は図1に示すリンク機構の展開図で、図5においてA,B,Cは図1における取り付け部A,取り付け部B,取り付け部Cを示し、Dは図1におけるリンクアーム6の支持部92からの垂線と取り付け部Aからの水平線との交点でyがその距離、Eは図1においてバーナ先端部の旋回停止位置を近似する、取り付け部Bの旋回停止位置を示し、xは図1における垂直柱2の基盤部93から取り付け部Bまでの距離の水平方向分を示し、zは支持部92から前記Dまでの距離(上昇時における垂直方向の距離)を示す。
【0030】
また、aは図1におけるバーナアーム3の長さで取り付け部Aから取り付け部Bまでの距離、bは図1における取り付け部Aから取り付け部Bまでの直線距離、cは図1におけるリンクアーム6の長さを示し、角度θはバーナアーム3を上昇旋回させた時の水平からの傾き角度80度、βはバーナアーム3を上昇旋回させた時の鉛直方向からの角度を示す(垂直柱2だからθ+βは90°)。
【0031】
図5において、バーナアーム3の取り付け部Bとして表されるバーナ4の上昇旋回後の位置(x、θ)は、x=z×a/√(y+z)、sinβ=z/bでθ=90°ーβとして求められる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明例で(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は上面図。
【図2】図1の本発明例における自在継手の構造を説明する図で(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は上面図を示す図。
【図3】図1の本発明例における自在継手の構造を説明する図。
【図4】図1の本発明例における自在継手の構造を説明する図。
【図5】本発明に係るリンク機構の構成を説明する図。
【符号の説明】
【0033】
1 バーナ乾燥装置
2 垂直柱
3、3a バーナアーム
4,4a バーナ
5,5a 吊り下げワイヤ
6 リンクアーム
7 滑車
8 継手部材
9 架台
10 取鍋
12 フック
13 鎖
14 連結ピン
21 ブラケット
22 滑車支持部
91 保持部材
92 支持部
93 基礎部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直柱を備えた架台と前記垂直柱に自在継手を介して連結し、被移動体をその先端に取り付けた一のアームと前記一のアームと前記架台に自在継手を介して連結する他のアームを備えた旋回・昇降装置であって、前記被移動体は前記垂直柱から吊り下げワイヤによって吊り下げられ、前記他のアームは、前記吊り下げワイヤの巻き上げに伴い、前記一のアームが旋回・昇降するように、前記一のアームの斜め下方から前記架台に自在継手を介して連結されていることを特徴とする旋回・昇降装置。
【請求項2】
バーナとバーナアームとリンクアームと前記バーナアームが連結される垂直柱と前記垂直柱を保持し、前記リンクアームが連結される架台を備えた取鍋乾燥用バーナ装置であって、前記バーナアームの一端は前記垂直柱に自在継手を介して連結され、他端には前記バーナを取り付け、前記バーナは吊り下げ用ワイヤによって前記垂直柱から吊り下げられ、前記リンクアームは、前記バーナの使用状態において、前記バーナアームに斜め下方から連結されるように、一端が前記バーナアームのバーナを取り付けた端部側に自在継手を介して連結され、他端が自在継手を介して前記架台と連結していることを特徴とする取鍋乾燥用バーナ装置。
【請求項3】
前記バーナの使用状態において、前記バーナアームと前記リンクアームの架台における取り付け位置が水平面において、前記垂直軸の軸心を挟んで直角を成すことを特徴とする請求項2記載の取鍋乾燥用バーナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−154215(P2007−154215A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346443(P2005−346443)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サイクロ
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】