説明

受信機

【課題】トータルのEVMを劣化させずに消費電力を低減させる。
【解決手段】受信機100は、受信信号の周波数変換を行うMixer106と、Mixer106での周波数変換に用いられる発振信号を生成するシンセサイザ110とを備える。また、受信機100は、周波数変換された受信信号のカットオフ周波数より高い周波数帯域を減衰させるLPF108と、周波数変換された受信信号から隣接チャネルの受信信号を抽出するBPF132とを備える。また、受信機100は、隣接チャネルの受信信号の強度を計測するRSSI検波部134を備える。また、受信機100は、隣接チャネルの受信信号の強度に応じてLPF108のカットオフ周波数を設定し、設定カットオフ周波数に応じてMixer106に流す電流値及びシンセサイザ110に流す電流値の少なくとも一方を設定する制御部140を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線信号を受信する携帯電話機などの受信機では、Mixerによって受信信号の周波数変換を行い、周波数変換された受信信号の高周波成分をLPF(Low Pass Filter)によって減衰させた後、ベースバンド処理等を行うことが知られている。なお、Mixerでの周波数変換に用いられる発振信号はシンセサイザによって生成される。
【0003】
このような受信機において、従来、無線信号の受信品質の指標としてEVM(Error Vector Magnitude)が用いられている。EVMの値は、例えば、Mixerで発生する直交誤差、シンセサイザで発生する位相雑音、及びLPFで発生する群遅延等のパラメータに基づいて決められる。
【0004】
ここで、従来の受信機では、受信信号のセグメント数に基づいて、発振信号の局発レベルを変えながら発振信号の周波数を変化させることにより、受信性能の劣化を抑制しつつ、低消費電力化を測ることが知られている。
【0005】
また、従来の受信機では、受信信号の品質が良好な場合には、デルタシグマADC(Analog to Digital Converter)のオーバーサンプリング周波数やディジタルフィルタの動作周波数を下げることにより、消費電力を削減させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−142819号公報
【特許文献2】特開2007−243504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記先行技術文献に開示されている技術は、トータルのEVMを劣化させずに受信機の消費電力を低減させることは考慮されていない。
【0008】
すなわち、従来技術では、受信信号の隣接チャネルの影響を受けないようにするため、隣接チャネルの使用状況に関係なく、帯域外の信号を十分に減衰できるようなカットオフ周波数が固定して使用されていた。
【0009】
このため、LPFにおけるフィルタ群遅延によるEVMは一定の値となる。また、従来技術は、シンセサイザに流す電流及びMixerに流す電流も固定されているため、シンセサイザの位相雑音によるEVM、及びMixerの直交誤差によるEVMも一定の値になる。よって、トータルのEVMは一定の値となる。
【0010】
この場合、トータルのEVMは一定の値に保たれるが、シンセサイザ及びMixerには、隣接チャネルの実際の使用状況に関係なく、隣接チャネルの信号強度が大きい状況を想定して設定された比較的大きな電流が流れる。このため、受信機の消費電力は比較的大きい状態で保たれるので、消費電力を低減させることが難しい。
【0011】
一方、単にシンセサイザに流す電流又はMixerに流す電流を小さくした場合には、消費電力は低減されるが、シンセサイザの位相雑音によるEVM又はMixerの直交誤差によるEVMが劣化することによって、トータルのEVMも劣化するおそれがある。
【0012】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、トータルのEVMを劣化させずに消費電力を低減させることができる受信機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の開示する受信機は、一つの態様において、受信信号の周波数変換を行う変換部と、前記ミキサの周波数変換に用いられる発振信号を生成する発振信号生成部とを備える。また、受信機は、前記ミキサによって周波数変換された受信信号のカットオフ周波数より高い周波数帯域を減衰させる減衰部と、前記ミキサによって周波数変換された受信信号から隣接チャネルの信号を抽出する抽出部とを備える。また、受信機は、前記抽出部によって抽出された隣接チャネルの信号の強度を計測する検波部を備える。また、受信機は、前記検波部によって計測された隣接チャネルの受信信号の強度に応じて前記減衰部のカットオフ周波数を設定するとともに、該設定されたカットオフ周波数に応じて前記変換部に流す第1の電流値及び前記発振信号生成部に流す第2の電流値の少なくとも一方を設定する制御部を備える。
【発明の効果】
【0014】
本願の開示する受信機の一つの態様によれば、トータルのEVMを劣化させずに消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、受信機の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、Mixerとシンセサイザの電流選択の真理値表の一例を示す図である。
【図3】図3は、LPFのカットオフ設定選択の真理値表の一例を示す図である。
【図4】図4は、受信機のEVMパラメータ構成の概要を示す図である。
【図5】図5は、EVMパラメータの振り分けの一例を示す図である。
【図6】図6は、制御部の構成を示す図である。
【図7】図7は、選択回路における制御信号選択の真理値表の一例を示す図である。
【図8】図8は、制御テーブルの一例を示す図である。
【図9】図9は、受信機の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本願の開示する受信機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。例えば、以下の実施形態では、受信機の一例として携帯電話機を想定して説明するが、これに限らず、無線信号を受信可能な受信機であればよい。
【0017】
図1は、受信機の全体構成を示す図である。図1に示すように、受信機100は、アンテナ102、LNA(Low Noise Amplifier)104、Mixer106、LPF108、及びシンセサイザ110を備える。また、受信機100は、BGR(Band Gap Reference)112、定電流回路114,116,118、及び電流選択回路120を備える。また、受信機100は、カットオフ設定回路124,126,128、カットオフ選択回路130、BPF(Band Pass Filter)132、及びRSSI(Received Signal Strength Indicator)検波部134、及び制御部140を備える。
【0018】
LNA104は、アンテナ102を介して受信された無線信号を受信して増幅する低雑音増幅器である。LNA104は、増幅された受信信号をMixer106へ出力する。
【0019】
Mixer106は、LNA104で増幅された受信信号の周波数変換を行う周波数変換器である。また、Mixer106は、シンセサイザ110で生成された発振信号の入力を受ける。そして、Mixer106は、受信信号に対して発振信号を印加して、受信信号と発振信号を混合することにより、受信信号の周波数をベースバンド信号の周波数に変換する。Mixer106には、電流選択回路120によって選択された電流が供給され、供給された電流によって受信信号の周波数変換を行う。
【0020】
LPF108は、Mixer106によって周波数変換された受信信号のカットオフ周波数より高い周波数帯域を減衰させる減衰器である。LPF108は、カットオフ選択回路130によって選択されたカットオフ周波数に基づいて、高周波数帯域を減衰させる。
【0021】
シンセサイザ110は、Mixer106での周波数変換に用いられる発振信号を生成する。シンセサイザ110は、所定の周波数で発振させた発振信号をMixer106へ出力する。シンセサイザ110には、電流選択回路120によって選択された電流が供給され、供給された電流によって発振信号の生成を行う。
【0022】
BGR112は、Mixer106及びシンセサイザ110で用いられる電源用の基準電圧を生成する基準電圧発生回路である。BGR112で生成された基準電圧は、定電流回路114,116,118へ供給される。
【0023】
定電流回路114は、BGR112から供給された基準電圧に基づいて定電流Aを流す回路である。定電流回路116は、BGR112から供給された基準電圧に基づいて定電流Aよりも小さな定電流Bを流す回路である。定電流回路118は、BGR112から供給された基準電圧に基づいて定電流Bよりも小さな定電流Cを流す回路である。
【0024】
電流選択回路120は、定電流回路114,116,118によって流される定電流A,B,Cの中から、制御部140から送信される制御信号S1及びS2に基づいて、Mixer106へ供給する電流を選択する。また、電流選択回路120は、定電流回路114,116,118によって流される定電流A,B,Cの中から、制御部140から送信される制御信号S3及びS4に基づいて、シンセサイザ110へ供給する電流を選択する。
【0025】
カットオフ設定回路124は、LPF108で用いられるカットオフ周波数Aを設定する回路である。カットオフ設定回路126は、LPF108で用いられ、カットオフ周波数Aよりも高い周波数であるカットオフ周波数Bを設定する回路である。カットオフ設定回路128は、LPF108で用いられ、カットオフ周波数Bよりも高い周波数であるカットオフ周波数Cを設定する回路である。
【0026】
カットオフ選択回路130は、カットオフ設定回路124,126,128によって設定されるカットオフ周波数A,B,Cの中から、制御部140から送信される制御信号S5,S6に基づいて、LPF108で用いるカットオフ周波数を選択する。
【0027】
BPF132は、Mixer106によって周波数変換された受信信号から隣接チャネルの周波数帯域の信号のみを通過させる帯域通過フィルタである。BPF132は、隣接チャネルの周波数帯域の信号のみを通過させることにより、隣接チャネルの受信信号を抽出する。BPF132は、抽出された隣接チャネルの受信信号をRSSI検波部134へ出力する。なお、隣接チャネルとは、例えば、あるキャリアに割り当てられた周波数帯域を複数に分割した各チャネルのうち、受信機100が受信すべき周波数帯域のチャネルに隣接する周波数帯域のチャネルのことである。
【0028】
RSSI検波部134は、BPF132によって抽出された隣接チャネルの受信信号の強度を計測する。RSSI検波部134は、計測された隣接チャネルの受信信号の強度を制御部140へ出力する。
【0029】
制御部140は、RSSI検波部134によって計測された隣接チャネルの受信信号の強度に応じて、LPF108で用いられるカットオフ周波数を設定する。また、制御部140は、設定されたカットオフ周波数に応じて、Mixer106に流す第1の電流値、シンセサイザ110に流す第2の電流値を設定する。例えば、制御部140は、RSSI検波部134によって計測された隣接チャネルの受信信号の強度に応じて、制御信号S1,S2,S3,及びS4を設定して電流選択回路120へ出力する。また、制御部140は、RSSI検波部134によって計測された隣接チャネルの受信信号の強度に応じて、制御信号S5及びS6を設定してカットオフ選択回路130へ出力する。制御部140の詳細は後述する。
【0030】
図2は、Mixerとシンセサイザの電流選択の真理値表の一例を示す図である。図2に示すように、電流選択用の真理値表300は、Mixer用電流302に対応して制御信号S1及びS2の真理値が設定され、シンセサイザ用電流304に対応して制御信号S3及びS4の真理値が設定されている。
【0031】
真理値表300に示すように、制御部140は、Mixer106に定電流Aを流す場合には、制御信号S1を「0」とする。この場合、制御部140は、制御信号S2を「0」又は「1」のいずれに設定することもできる。また、制御部140は、Mixer106に定電流Bを流す場合には、制御信号S1を「1」とし、制御信号S2を「0」とする。また、制御部140は、Mixer106に定電流Cを流す場合には、制御信号S1を「1」とし、制御信号S2を「1」とする。
【0032】
また、制御部140は、シンセサイザ110に定電流Aを流す場合には、制御信号S3を「0」とする。この場合、制御部140は、制御信号S4を「0」又は「1」のいずれに設定することもできる。また、制御部140は、シンセサイザ110に定電流Bを流す場合には、制御信号S3を「1」とし、制御信号S4を「0」とする。また、制御部140は、シンセサイザ110に定電流Cを流す場合には、制御信号S3を「1」とし、制御信号S4を「1」とする。
【0033】
図3は、LPFのカットオフ設定選択の真理値表の一例を示す図である。図3に示すように、LPF108で用いられるカットオフ周波数選択の真理値表400は、カットオフ設定402に対応して制御信号S5及びS6の真理値が設定されている。
【0034】
真理値表400に示すように、制御部140は、LPF108で用いられるカットオフ周波数を周波数Aに設定する場合には、制御信号S5を「0」とする。この場合、制御部140は、制御信号S6を「0」又は「1」のいずれに設定することもできる。また、制御部140は、LPF108で用いられるカットオフ周波数を周波数Bに設定する場合には、制御信号S5を「1」とし、制御信号S6を「0」とする。また、制御部140は、LPF108で用いられるカットオフ周波数を周波数Cに設定する場合には、制御信号S5を「1」とし、制御信号S6を「1」とする。
【0035】
図4は、受信機のEVMパラメータ構成の概要を示す図である。図4において、EVM200は、従来の一般的な受信機におけるEVMの概念を表し、EVM250は本実施形態の受信機100におけるEVMの概念を表すものである。
【0036】
まず、EVM200に示すように、従来の一般的な受信機では、シンセサイザの位相雑音のパラメータ202と、Mixerの直交誤差のパラメータ204と、LPFのフィルタ群遅延パラメータ206の二乗和平方根によって、トータルのEVMが求められる。つまり、トータルのEVM=SQRT((シンセサイザの位相雑音のパラメータ202)^2+(Mixerの直交誤差のパラメータ204)^2+(LPFのフィルタ群遅延パラメータ206)^2)となる。
【0037】
一方、本実施形態の受信機100は、制御部140によって、例えば隣接チャネルが使用されておらず隣接チャネルの受信信号の強度が低い場合には、LPFのカットオフ周波数を高く設定する。これにより、LPFのフィルタ群遅延パラメータが改善されて小さくなるので、LPFのフィルタ群遅延パラメータ206´は、LPFのフィルタ群遅延パラメータ206よりも小さくなる。
【0038】
したがって、LPFのフィルタ群遅延パラメータ206´の改善分だけ、シンセサイザの位相雑音のパラメータ202´と、Mixerの直交誤差のパラメータ204´とが悪化したとしても、トータルのEVMは変わらない。言い換えれば、例えばシンセサイザ110及びMixer106に流す電流を少なくすることにより、シンセサイザの位相雑音のパラメータ202´と、Mixerの直交誤差のパラメータ204´とが悪化したとしても、トータルのEVMは変わらない。そこで、受信機100は、例えば以下の図5に示すように、制御部140によって、シンセサイザ110及びMixer106に流す電流を少なくすることにより、トータルのEVMを維持しながら(劣化させずに)、受信機100の消費電力を低減することができる。
【0039】
図5は、EVMパラメータの振り分けの一例を示す図である。図5は、Mixer106に流す電流、シンセサイザ110に流す電流、及びLPF108のカットオフ周波数の各パラメータをいずれも固定した場合の固定例452と、各パラメータを変更した変更例454,456,458を示している。変更例454は、隣接チャネルの信号強度が予め設定された閾値より小さく、隣接チャネルが未使用である場合にLPF108のカットオフ周波数を変更した場合の例である。変更例456は、変更例454の状態から、シンセサイザ110の位相雑音の特性の劣化を許容してシンセサイザ110に流す電流を削減させた場合の例である。変更例458は、変更例454の状態から、Mixer106の直交誤差の特性の劣化を許容してMixer106に流す電流を削減させた場合の例である。
【0040】
まず、固定例452では、Mixer直交誤差によるEVMが3.2(%rms)、シンセサイザ位相雑音によるEVMが2.2(%rms)、LPF群遅延によるEVMが5.8(%rms)であり、トータルのEVMが7.0(%rms)であるとする。これに対して、変更例454では、LPF108のカットオフ周波数を高くすることにより、LPF108の群遅延が小さくなった結果、LPF群遅延によるEVMが2.9(%rms)になる。つまり、変更例454は、固定例452に比べて、LPF群遅延によるEVMが2.9(%rms)分改善する。よって、トータルのEVMも2.2(%rms)分改善した結果、4.8(%rms)になる。
【0041】
一方、変更例456では、LPF群遅延によるEVMの改善分と等価分まで、シンセサイザ110の制御電流を削減する。シンセサイザ110の制御電流を削減すると、位相雑音などのEVMパラメータが劣化するが、LPF108でのEVM改善分を合わせると、トータル的なEVM値は一定(劣化無し)となるような制御を行う。つまり、シンセサイザ位相雑音によるEVMが3.3(%rms)分悪化して5.5(%rms)になるまでシンセサイザ110に流す電流を低減させる。これは、シンセサイザ110の位相雑音換算で7.8(dB)まで特性の劣化を許容することになる。この結果、トータルのEVMは、固定例452の場合と同じ値に保ちながら、言い換えるとトータルのEVMを固定例452の場合と比べて劣化させずに、シンセサイザ110に流す電流を低減させることができる。
【0042】
また、変更例458では、LPF群遅延によるEVMの改善分と等価分まで、Mixer106の制御電流を削減する。Mixer106の制御電流を削減すると、直交誤差などのEVMパラメータが劣化するが、LPF108でのEVM改善分を合わせると、トータル的なEVM値は一定(劣化無し)となるような制御を行う。つまり、Mixer直交誤差によるEVMが2.8(%rms)分悪化して6.0(%rms)になるまでMixer106に流す電流を低減させる。これは、Mixer106の直交誤差SSB(Single Side Band)換算で5.5(dB)まで特性の劣化を許容することになる。この結果、トータルのEVMは、固定例452の場合と同じ値に保ちながら、言い換えるとトータルのEVMを固定例452の場合と比べて劣化させずに、Mixer106に流す電流を低減させることができる。
【0043】
図6は、制御部の構成を示す図である。図6に示すように、制御部140は、プロセッサ142、読み出し部144、書き込み部146、制御テーブル148、メモリ150、及び選択回路152を備える。
【0044】
プロセッサ142は、RSSI検波部134から出力された隣接チャネルの信号強度を示すパワー信号141を受信する。そして、プロセッサ142は、パワー信号141で示される隣接チャネルの信号強度に基づいて、Mixer106に流す電流値、シンセサイザ110に流す電流値、及びLPF108のカットオフ周波数を演算する。プロセッサ142は、演算されたMixer106に流す電流値、シンセサイザ110に流す電流値、及びLPF108のカットオフ周波数に基づいて、図2,3に示した真理値表にしたがって制御信号S1〜S6を生成して出力する。
【0045】
読み出し部144は、RSSI検波部134から出力された隣接チャネルの信号強度を示すパワー信号141を受信する。そして、読み出し部144は、書き込み部146によってメモリ150に格納された制御テーブル148から、パワー信号141で示される隣接チャネルの信号強度に対応するMixer制御電流値(Mixer106に流す電流値)を読み出す。また、読み出し部144は、書き込み部146によってメモリ150に格納された制御テーブル148から、パワー信号141で示される隣接チャネルの信号強度に対応するシンセサイザ制御電流値(シンセサイザ110に流す電流値)を読み出す。さらに、読み出し部144は、書き込み部146によってメモリ150に格納された制御テーブル148から、パワー信号141で示される隣接チャネルの信号強度に対応するLPFカットオフ周波数(LPF108のカットオフ周波数)を読み出す。そして、読み出し部144は、読み出されたMixer106に流す電流値、シンセサイザ110に流す電流値、及びLPF108のカットオフ周波数に基づいて、図2,3に示した真理値表にしたがって制御信号S1〜S6を生成して出力する。
【0046】
書き込み部146は、制御テーブル148をメモリ150に書き込む。メモリ150は、制御テーブル148の他、受信機100の各種機能を実行するためのデータ、及び各種機能を実行するための各種プログラムが格納される。制御テーブル148の詳細は後述する。
【0047】
選択回路152は、選択信号162を受信する。選択回路152は、受信した選択信号162に基づいて、プロセッサ142によって演算された制御信号S1〜S6又は読み出し部144によって読み出された制御信号S1〜S6の一方を選択して出力する。
【0048】
図7は、選択回路における制御信号選択の真理値表の一例を示す図である。図7に示すように、制御信号選択の真理値表160は、制御信号S1〜S6の選択方法に対応して、選択信号162の真理値が設定されている。例えば、選択回路152は、選択信号162として「0」が入力されたら、プロセッサ142によって演算された制御信号S1〜S6を出力する。一方、選択回路152は、選択信号162として「1」が入力されたら、読み出し部144によって制御テーブル148から読み出された制御信号S1〜S6を出力する。
【0049】
図8は、制御テーブルの一例を示す図である。図8に示すように、制御テーブル148は、複数の隣接チャネルパワーモニタ値164それぞれに、LPFカットオフ周波数166、シンセサイザ制御電流168、及びMixer制御電流170が対応付けられている。例えば、隣接チャネルパワーモニタ値164が△△dBm以上○○dBm未満の場合は、読み出し部144は、LPFカットオフ周波数166として周波数Bを読み出し、シンセサイザ制御電流168として定電流Aを読み出し、Mixer制御電流170として定電流Bを読み出す。
【0050】
図9は、受信機の制御処理を示すフローチャートである。図9に示すように、まず、RSSI検波部134は、BPF132から出力された隣接チャネルの信号強度(パワー)をモニタする(ステップS101)。続いて、制御部140は、隣接チャネルの信号強度が予め設定された閾値以上であるか否かによって、隣接チャネルが未使用であるか否かを判定する(ステップS102)。例えば、制御部140は、隣接チャネルの信号強度が予め設定された閾値以上であれば、隣接チャネルが使用されていると判定し、隣接チャネルの信号強度が予め設定された閾値未満であれば、隣接チャネルが使用されていないと判定する。
【0051】
制御部140は、隣接チャネルが未使用でないと判定されたら(ステップS102、No)、ステップS101へ戻って処理を繰り返す。一方、制御部140は、隣接チャネルが未使用であると判定されたら(ステップS102、Yes)、隣接チャネルの信号強度に応じて、LPFカットオフ周波数、シンセサイザ制御電流、及びMixer制御電流を選択する(ステップS103)。例えば、制御部140は、隣接チャネルの信号強度が□□dBm未満の場合は、LPFカットオフ周波数166として周波数Cを選択し、シンセサイザ制御電流168として定電流Cを選択し、Mixer制御電流170として定電流Cを選択する。
【0052】
そして、制御部140は、選択されたLPFカットオフ周波数、シンセサイザ制御電流、及びMixer制御電流と、図2,3の真理値表とに基づいて、制御信号S1〜S6を出力する(ステップS104)。例えば、制御部140は、隣接チャネルの信号強度が□□dBm未満の場合は、制御信号S1〜S6をいずれも「1」に設定して出力する。
【0053】
続いて、カットオフ選択回路130は、制御信号S5,S6と、図3の真理値表400とに基づいて、LPF108のカットオフ周波数を設定する(ステップS105)。また、電流選択回路120は、制御信号S3及びS4と、図2の真理値表300とに基づいて、シンセサイザ110に流す電流を設定する(ステップS106)。また、電流選択回路120は、制御信号S1及びS2と、図2の真理値表300とに基づいて、Mixer106に流す電流を設定する(ステップS107)。
【0054】
制御部140は、受信機100の受信処理が継続されるか否かを判定する(ステップS108)。そして、制御部140は、受信処理が継続されると判定された場合には(ステップS108、Yes)、ステップS101へ戻って処理を繰り返す。一方、制御部140は、受信処理が継続されない判定された場合には(ステップS108、No)、処理を終了する。
【0055】
以上、本実施形態の受信機100によれば、トータルのEVMを劣化させずに消費電力を低減させることができる。すなわち、受信機100は、LPF108のカットオフ周波数を固定にするのではなく、隣接チャネルの受信信号の強度に応じてLPF108のカットオフ周波数を可変に設定する。例えば、受信機100は、隣接チャネルの受信信号の強度が低くなるにつれて、LPF108のカットオフ周波数を高く設定する。これにより、LPF108の群遅延によるEVMが改善される。そして、受信機100は、このEVMの改善分に相当して、シンセサイザ110の位相雑音によるEVM又はMixerの直交誤差によるEVMが悪化するまで、シンセサイザ110又はMixer106に流す電流を小さくする。その結果、受信機100は、トータルのEVMを劣化させずに消費電力を低減させることができる。
【0056】
また、本実施形態は、主に受信機を中心に説明したが、これに限らず、あらかじめ用意された受信制御プログラムをコンピュータで実行することによって、上述の実施形態と同様の機能を実現することができる。すなわち、受信制御プログラムは、受信機に、無線信号を受信し、前記受信された受信信号の周波数変換を行い、前記周波数変換された受信信号から隣接チャネルの受信信号を抽出し、前記抽出された隣接チャネルの受信信号の強度を計測する処理を実行させる。また、受信制御プログラムは、受信機に、前記計測された隣接チャネルの受信信号の強度に応じて前記周波数変換された受信信号の高周波数帯域を減衰させる減衰部のカットオフ周波数を設定するとともに、該設定されたカットオフ周波数に応じて前記受信された受信信号の周波数変換を行う変換部に流す電流値及び前記周波数変換に用いられる発振信号を生成する発振信号生成部に流す電流値の少なくとも一方を設定する処理を実行させる。なお、受信制御プログラムは、インターネットなどの通信ネットワークを介してコンピュータに配布することができる。また、受信制御プログラムは、受信機に設けられたメモリ、ハードディスク、その他のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【符号の説明】
【0057】
100 受信機
104 LNA
106 Mixer
108 LPF
110 シンセサイザ
114,116,118 定電流回路
120 電流選択回路
124,126,128 カットオフ設定回路
134 RSSI検波部
140 制御部
141 パワー信号
142 プロセッサ
144 読み出し部
148 制御テーブル
150 メモリ
152 選択回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号の周波数変換を行う変換部と、
前記変換部での周波数変換に用いられる発振信号を生成する発振信号生成部と、
前記変換部によって周波数変換された受信信号のカットオフ周波数より高い周波数帯域を減衰させる減衰部と、
前記変換部によって周波数変換された受信信号から隣接チャネルの受信信号を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された隣接チャネルの受信信号の強度を計測する検波部と、
前記検波部によって計測された隣接チャネルの受信信号の強度に応じて前記減衰部のカットオフ周波数を設定するとともに、該設定されたカットオフ周波数に応じて前記変換部に流す第1の電流値及び前記発振信号生成部に流す第2の電流値の少なくとも一方を設定する制御部と、
を備えることを特徴とする受信機。
【請求項2】
前記制御部は、前記検波部によって計測された隣接チャネルの受信信号の強度が低くなるにつれて、前記減衰部のカットオフ周波数を高く設定するとともに、前記第1の電流値及び前記第2の電流値の少なくとも一方を低く設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記制御部は、前記検波部によって計測された隣接チャネルの受信信号の強度が低くなるにつれて、前記減衰部のカットオフ周波数を高く設定するとともに、該カットオフ周波数の設定によるEVMの改善分に相当して前記変換部におけるEVMが悪化するまで前記第1の電流を低く設定するか、前記カットオフ周波数の設定によるEVMの改善分に相当して前記発振信号生成部におけるEVMが悪化するまで前記第2の電流を低く設定するか、又は前記カットオフ周波数の設定によるEVMの改善分に相当して前記変換部及び前記発振信号生成部におけるEVMが悪化するまで前記第1及び第2の電流を低く設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の受信機。
【請求項4】
前記制御部は、前記検波部によって計測された隣接チャネルの受信信号の強度に基づいて、前記減衰部のカットオフ周波数と、前記第1の電流値及び前記第2の電流値の少なくとも一方とを演算する演算部と、
前記隣接チャネルの受信信号の強度に応じて前記減衰部のカットオフ周波数と前記第1の電流値及び前記第2の電流値の少なくとも一方とが対応付けられた制御テーブルから、前記検波部によって計測された隣接チャネルの受信信号の強度に対応する前記減衰部のカットオフ周波数と前記第1の電流値及び前記第2の電流値の少なくとも一方とを読み出す読み出し部と、
前記演算部によって演算された結果又は前記読み出し部によって読み出された結果の一方を選択する選択部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−244475(P2012−244475A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113673(P2011−113673)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】