説明

受信装置及びその制御方法、プログラム、記録媒体

【課題】 データ伝送の信頼性が必ずしも確保されていない通信経路を介して、必要な信頼性を確保しながら画像データを伝送する技術を提供する。
【解決手段】 パケット通信により送信装置から送信された画像データを受信する受信装置は、前記画像データを伝送するためのパケットを受信する受信手段と、前記パケットの伝送エラーを検出する検出手段と、前記検出手段が伝送エラーを検出したパケットの再送要求を前記送信装置へ送信する送信手段と、を備え、前記送信手段は、前記画像データの予め設定された注目領域に対応するパケットの伝送エラーを前記検出手段が検出した場合、当該パケットの再送要求を、前記注目領域に対応しないパケットの伝送要求よりも優先して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置及びその制御方法、プログラム、記録媒体に関し、特に、パケット通信により画像を伝送する際のパケットの再送制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータシステムの高性能化や通信媒体の高速化に伴い、ネットワーク接続された情報機器間での動画像伝送が広く行われている。とりわけ、イーサネット(登録商標)とインターネットプロトコル(IP)を用いたネットワーク上での動画像伝送が普及している。
【0003】
こうした背景の下、高速ネットワーク機器が安価かつ容易に調達できるという理由から、情報機器を構成する部品間でも同様にIPを用いた動画像伝送が利用されはじめている。たとえば車載カメラシステムでは、イーサネット(登録商標)で接続されたカメラ部と画像処理部との間で動画像伝送が行われるようになっている。
【0004】
このような情報機器内部での動画像伝送を担うネットワークでは、汎用のコンピュータネットワークに比べ、ネットワークに接続されるノード数は限られることが多い。したがって、動画像を伝送してもなお通信帯域には余裕があることが一般的であった。そこで従来は、欠損パケット再送によるエラー訂正機能を持つ伝送制御プロトコル(TCP)を用いて機器内データ伝送の信頼性を確保してきた。
【0005】
しかし、扱う動画像の高フレームレート化や高解像度化が進むにつれて、通信帯域に余裕が無くなり、欠損パケット再送を完全に行うことが難しくなりつつある。特に、動画像の伝送開始から表示までの遅延を極力抑える必要がある場合、限られた時間と通信帯域の中で所定のフレームレートを達成するため、伝送されるデータの信頼性を犠牲にしなければならないことがある。
【0006】
こうした背景に鑑み、特許文献1には、再送回数の上限を設定することで、通信帯域に余裕がない状況に対応している構成が開示されている。この構成では、伝送するパケット毎に再送回数の上限を設定し、各パケットに対して再送がなされる機会を均等に与えている。
【0007】
また、特許文献2には、再送順序を制御することで、重要なパケットに対して再送がなされる機会をより多く与える構成が開示されている。
【特許文献1】特開平10−262256号公報
【特許文献2】特開2003−218934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先に述べた従来手法はいずれも、伝送されるデータの信頼性はベストエフォートで確保されるものであった。
【0009】
しかし現実には、データの信頼性を損ねることが許されない情報機器がある。たとえばX線画像診断装置のような、医用画像を扱う機器はそれに該当する。医用画像を扱う機器では、画像データの信頼性は医療行為の信頼性に直結するため、画像データの伝送は確実に行われなければならない。その上で、医師が診断を下すに足る情報を提供する必要がある。すなわち医用画像処理装置が扱う動画には高フレームレート、高解像度かつ撮影から表示までの遅延が小さいことが求められる。ところが従来手法では、このような要求に応えることはできなかった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、データ伝送の信頼性が必ずしも確保されていない通信経路を介して、必要な信頼性を確保しながら画像データを伝送する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明による受信装置は以下の構成を備える。即ち、
パケット通信により送信装置から送信された画像データを受信する受信装置であって、
前記画像データを伝送するためのパケットを受信する受信手段と、
前記パケットの伝送エラーを検出する検出手段と、
前記検出手段が伝送エラーを検出したパケットの再送要求を前記送信装置へ送信する送信手段と、
を備え、
前記送信手段は、
前記画像データの予め設定された注目領域に対応するパケットの伝送エラーを前記検出手段が検出した場合、当該パケットの再送要求を、前記注目領域に対応しないパケットの伝送要求よりも優先して送信する
ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による受信装置の制御方法は以下の構成を備える。即ち、
パケット通信により送信装置から送信された画像データを受信する受信装置の制御方法であって、
前記画像データを伝送するためのパケットを受信する受信工程と、
前記パケットの伝送エラーを検出する検出工程と、
前記検出工程において伝送エラーが検出されたパケットの再送要求を前記送信装置へ送信する送信工程と、
を備え、
前記送信工程においては、
前記画像データの予め設定された注目領域に対応するパケットの伝送エラーが前記検出工程において検出された場合、当該パケットの再送要求を、前記注目領域に対応しないパケットの伝送要求よりも優先して送信する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、データ伝送の信頼性が必ずしも確保されていない通信経路を介して、必要な信頼性を確保しながら画像データを伝送する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0015】
<実施形態1>
(X線画像診断装置)
本発明の第1の実施形態として、X線透視機能を持つ(デジタル)X線画像診断装置101について、図1を用いて説明する。なお、本装置は、時間的に連続して撮影した複数のX線画像をそれぞれフレームに対応づけて動画像を作成し、X線透視を実現している。
【0016】
図1は、本実施形態におけるX線画像診断装置101の構成を示すブロック図である。X線画像診断装置101は、X線画像を撮像するX線画像撮像装置102と、撮像により生成されたX線画像を表示するX線画像表示装置104とを有している。X線画像撮像装置102は画像データを伝送するためにパケットを送信する送信装置として動作し、X線画像表示装置104はパケット通信により送信装置から送信された画像データを受信する受信装置として動作する。ここで、X線画像撮像装置102とX線画像表示装置104との間で画像伝送を行うために画像伝送装置103が用いられている。
【0017】
図1のように、X線画像撮像装置102は、X線イメージセンサ105とパケット送信部106とを有する。
【0018】
X線イメージセンサ105は、外部から入射されたX線を光電変換することでX線画像データを作成する。パケット送信部106は、X線イメージセンサ105が作成したX線画像データをパケットに分割して伝送路107に送出する。当該パケットのヘッダ情報にはチェックサムなどの誤り検出符号が含まれる。さらに画像のライン境界やフレーム境界を判別するための情報を含めても構わない。
【0019】
本実施形態では、図2に示すように、TCP/IPに準ずる形式でパケットを構成する。図2は、パケット送信部106が作成するパケットの構成例を示す模式図である。
【0020】
本実施形態では、TCPヘッダ201に続く8バイトの領域にセグメント属性202を記録する形式を取る。ここでセグメント属性202は、フレーム先頭フラグ214、ライン先頭フラグ215、セグメント番号217、およびライン番号218を有する。
【0021】
ここで、フレーム先頭フラグ214が1であれば、当該セグメントに格納されたデータ219はフレームの先頭に位置することを意味する。同様にライン先頭フラグ215が1であれば、データ219はラインの先頭に位置することを意味する。またセグメント番号217は当該セグメントが所属するライン中におけるセグメント番号を示す。ライン番号218は当該セグメントが所属するラインのフレーム中の番号を示す。
【0022】
なお、発信元ポート番号203はパケット送信に使用されるポート番号を示し、宛先ポート番号204はパケット受信に使用されるポート番号を示す。シーケンス番号205はパケットの通し番号として使用されるシーケンス番号であり、確認応答番号206はパケットと確認応答信号(ACK)とを対応づける際に使用する確認応答番号である。
【0023】
ヘッダ長207は、当該パケットのヘッダの長さを示し、予約済み208および予約済み216は予約済み領域である。コードビット209はTCPセグメントの種類を示すために使用されるビットであり、ウインドウサイズ210はTCP通信におけるウインドウサイズを示す。チェックサム211は誤り訂正に用いられるチェックサム値であり、緊急ポインタ212は当該TCPセグメントに含まれる緊急データの末尾の位置を示す。また、オプション213はオプション領域である。
【0024】
伝送路107はX線画像撮像装置102とX線画像表示装置104とを接続する伝送路である。本実施形態では、伝送路107はイーサネット(登録商標)の規格に沿って実現され、通信プロトコルとしてTCP/IPを用いる。なお、再送を実施できるのならば、この他の規格に準拠したプロトコルであっても良い。
【0025】
パケット受信部108はパケット送信部106から伝送路107を介して伝送されたパケットを受信する。
【0026】
伝送エラー検出部109は、パケット受信部108が受信したパケットについて伝送エラーの有無を検出する。伝送エラーは、例えば前述のチェックサム211など、パケットのヘッダとして付された誤り検出符号を用いて検出する。なお伝送エラーが生じる主な原因は伝送路107に対する外来ノイズである。
【0027】
伝送制御部110は、伝送エラー検出部109において伝送エラーが検出されたパケットについて、パケット送信部106に再送を求める機能を有する。再送実施の有無は、後述のパケット再送条件に基づいて決定する。
【0028】
画像補完部111は、受信したパケットから元のX線画像データを再構築するとともに、パケット受信部108が受信できなかったパケットに対応づけられる画像中の領域について画像補完処理を行う。
【0029】
X線画像表示部112は、画像補完部111により再構築されたX線画像を表示するとともに、注目領域設定部113により設定された注目領域も表示する。
【0030】
注目領域設定部113は、伝送される画像中に注目領域を設定する。一般に、診断に必要な部位、すなわち患部が注目領域に該当する。たとえば人体正面から撮影した胸部X線画像を用いて右肺の病巣を確認する場合は、画像の左半分が注目領域となる。なお本実施形態では、注目領域の設定は、後述のUI311を介して人手で行うものとする。
【0031】
図3は、X線画像診断装置101のハードウェア構成(回路ブロック)を示すブロック図である。
【0032】
図3のように、X線画像撮像装置102は、X線検出部301、CPU302、RAM303、ROM304、通信部306、およびこれらを接続するバス305を有する。
【0033】
X線検出部301は、X線源(不図示)から撮像対象を透過するように当該X線検出部301へ発せられたX線を検出して、X線画像のデジタルデータを生成する。CPU302は中央演算処理装置であり、アプリケーションプログラム、オペレーティングシステム(OS)や制御プログラム等を実行し、RAM303にプログラムの実行に必要な情報、ファイル等を一時的に格納する制御を行う。
【0034】
RAM303は各種データを一時記憶するための書き込み可能メモリであり、CPU302の主メモリ、ワークエリア等として機能する。ROM304は読み出し専用メモリであり、内部には基本I/Oプログラム等のプログラムや、基本処理において使用する各種データを記憶する。
【0035】
通信部306は、伝送路107を介してX線画像表示装置104と通信する通信インタフェースである。バス305は、X線画像撮像装置102内のデータの流れを司るものである。
【0036】
一方、X線画像表示装置104は、CPU307、通信部308、RAM309、ROM310、UI(ユーザーインターフェース)311、タイマ312、画像処理部314、ディスプレイ制御部315、およびこれらを接続するバス313を有する。
【0037】
CPU307、通信部308、RAM309、ROM310、バス313は、それぞれX線画像撮像装置102の、CPU302、通信部306、RAM303、ROM304、バス305と同様に動作する。
【0038】
UI(ユーザーインターフェース)311は、ユーザからの指示入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボードやポインティングデバイス(マウス等)、タッチパネル等により実現される。タイマ312は時刻を計時する装置であり、本実施形態では画像データのパケットの受信を開始してからの経過時間を計測する計測手段として動作する。タイマ312は、例えば、水晶振動子を用いて実現することができる。
【0039】
画像処理部314はX線画像撮像装置102から受信した画像を画像処理して、表示用画像を生成する。ディスプレイ制御部315は、画像処理部314が生成した表示用画像をモニタ(不図示)に出力して表示させる。
【0040】
これら各種ハードウェアやその上で動作するソフトウェアが協調動作することでX線画像診断装置101の機能が実現される。
【0041】
(受信処理)
次に、本実施形態における画像の受信処理フローについて、図4を用いて説明する。図4は、X線画像表示装置104が画像を受信する際の動作を示すフローチャートである。この受信処理はCPU307の制御に基づいて実行される。
【0042】
まず、ステップS401において、パケット受信部108によりX線画像データのパケットを受信する受信処理を行う。
【0043】
次に、ステップS402では、受信したパケットに伝送エラーが生じたか否かを判定する。伝送エラーが生じていなければ(ステップS402でNO)、ステップS407に進む。一方伝送エラーが生じていれば(ステップS402でYES)、ステップS403に進む。なお、この判定は、上述のようにチェックサム211等の誤り検出符号を用いたり、あるいは、シーケンス番号205の欠落を発見したりすることによって行うことができる。
【0044】
ステップS403では、伝送エラーが生じたパケットが注目領域に対応するパケットか否かを判定する。もし注目領域に対応しないパケットだった場合(ステップS403でNO)、ステップS406に進む。一方注目領域に対応するパケットだった場合(ステップS403でYES)、ステップS404に進む。なお、注目領域は、UI311を介して予め設定されている。ステップS403では、伝送エラーを生じたパケットがこの注目領域に含まれる画像のデータを伝送する場合、そのパケットは注目領域に対応すると判定する。
【0045】
ステップS404では、伝送制御部110がパケット送信部106に対し、伝送されたパケットに伝送エラーが検出されたことを通知する。これに応じてパケット送信部106は当該パケットの再送を行う。
【0046】
ステップS405では、パケット受信部108が再送されたパケットの受信を行う。そして再送されたパケットに再び伝送エラーが生じていないかどうかを確認するため、ステップS402に戻る。
【0047】
ステップS406では、伝送エラーが生じたパケットに対応づけられる画像中の領域について、画像補完処理を行う。すなわち、注目領域に対応しないパケットについては、再送要求を行わない。
【0048】
ステップS407では、1つの画像(フレーム)に対応する全パケットを受信し終えたか否かを判定する。受信が完了した場合(ステップS407でYES)、ステップS410に進み、そこで画像を表示した後、ステップS401へ戻って次の画像データの受信開始に備える。一方、受信が完了していない場合(ステップS407でNO)、ステップS408に進む。
【0049】
ステップS408では、実行中の受信処理がタイムアウトしたか否かを判定する。タイムアウトした場合(ステップS408でYES)、ステップS409に進み、現在取得中の画像に係るパケットの受信処理を中止する。受信処理の中止に際しては、受信されなかったパケットに対応づけられる画像中の領域について画像補完処理を行う。その上でステップS410に進んで画像を表示した後、ステップS401へ戻って、次の画像データの受信開始に備える。
【0050】
一方、ステップS408でタイムアウトしていなかった場合(ステップS408でNO)は、後続パケットを受信するため、ステップS401に戻る。
【0051】
なお、タイムアウト時間は、X線透視を行う際の動画像のフレームレートに基づいて設定される。例えば、1つ前のフレームを受信してから、(フレーム間隔+所定値)に相当する時間が経過した場合に、タイムアウトしたと判定することができる。なお、タイムアウトの判定は、タイマ312を用いて行われる。
【0052】
(動作例)
次に、上述の機能構成ならびに処理フローによって画像を伝送した場合の効果を、図5を用いて説明する。図5はヒトの胸部X線画像を伝送した際、伝送エラーを訂正しない場合とする場合との伝送結果の違いを示す図である。
【0053】
図5(a)は、注目領域設定部113により、右肺部を注目領域502として設定した例を示している。
【0054】
注目領域設定補助画像501は、ユーザによる注目領域502の設定を補助するためにX線画像503の伝送に先立って表示する画像である。注目領域502はX線画像503の伝送前に設定される必要があるが、どのような画像が伝送されるかを知らずに注目領域を的確に設定することは一般的に困難である。そこで本実施形態では、注目領域設定補助画像501として、たとえばX線画像503の直前フレームのX線画像や、撮影部位の典型的なX線画像を表示する。注目領域設定補助画像501を表示することで、ユーザは、X線画像503の概要を画像伝送前に予測することができ、ひいては注目領域502を容易に設定することができる。
【0055】
図5(b)は、伝送エラーを訂正しない場合に得られるX線画像503の例を示している。この例では、X線画像503中に、伝送エラーを生じたパケットに対応する画像中の領域504が虫食い状に点在している。
【0056】
一方、図5(c)は、図4のフローチャートに基づいて伝送エラーを訂正した場合に得られるX線画像503の例を示している。伝送エラーを生じたパケットに対応づけられる画像中の領域のうち、注目領域502に対応する領域505には、再送によるエラー訂正がなされる。このため、注目領域502では、仮に伝送エラーが生じた場合であっても、信頼性の高い画像を表示することができる。
【0057】
他方、注目領域502に対応しない領域506には、画像補完処理がなされる。また、領域507は、タイムアウトが生じたため受信されなかったパケットに対応づけられる領域であるが、領域507にも画像補完処理がなされる。このため、注目領域502の外部では、注目領域502の内部に比べて信頼性の低い画像を表示することになる。タイムアウトが生じる原因としては、領域505に対応するパケットの再送を実行するために生じた遅延などが挙げられる。
【0058】
なお、図5では、注目領域502の境界と画像をパケット分割した際のセグメント境界とが一致しているが、一般には両者は一致していなくても構わない。両者が一致していない場合、あるパケットに対応づけられる領域の一部が注目領域502と重複していれば、当該パケットは注目領域502に対応していると見なすことができる。また重複の程度によって当該パケットが注目領域502に対応していると見なすか否かを区別してもよい。
【0059】
上記のように、X線画像表示装置104は、画像データを伝送するためのパケットを受信し、パケットの伝送エラーを検出し、伝送エラーが検出されたパケットの再送要求をX線画像撮像装置102へ送信する。ここで、画像データの予め設定された注目領域に対応するパケットの伝送エラーが検出された場合、当該パケットの再送要求は、注目領域に対応しないパケットの伝送要求よりも優先して送信される。このため、本実施形態の構成によれば、通信経路のデータ伝送の信頼性が必ずしも確保されていない場合であっても、画像伝送のリアルタイム性を保ちつつ、注目領域に関して伝送する画像の信頼性を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態では、注目領域に対応しないパケットの伝送エラーが検出された場合には、当該パケットの再送要求は送信しない。このため、本実施形態の構成によれば、通信経路に十分な通信帯域が確保されていない場合でも、注目領域について画像の信頼性を保つことができる。
【0061】
また、本実施形態では、タイマ312を用いて画像データのパケットの受信を開始してからの経過時間を計測し、この経過時間が予め定められた上限値を超えた場合、パケットの受信を中止して、画像表示を行う。このため、本実施形態の構成によれば、動画像のリアルタイムな伝送を好適に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態では、ユーザの指示に応じて注目領域を設定するため、データ伝送の信頼性確保が必要な注目領域をユーザの用途に合わせて適切に設定することができる。
【0063】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態(実施形態2)におけるX線画像診断装置101について説明する。本実施形態に係る構成は、パケットの再送回数に上限を設けることで、伝送エラーが発生し続けた場合にパケット再送要求を不必要に出し続けることを防止する。
【0064】
本実施形態におけるX線画像診断装置101は、第1の実施形態におけるX線画像診断装置101と同様の前提条件や構成(図1、図2、図3)を持つ。そこで、図6を用いて実施形態1と相違する部分について説明を行い、共通する部分は説明を省略する。
【0065】
(受信処理)
図6は、X線画像表示装置104が画像を受信する際の動作を示すフローチャートである。図4に示したフローチャートとは、図6がステップS601を含む点で異なる。すなわち、本実施形態では、ステップS403で、伝送エラーが生じたパケットが注目領域に対応するパケットと判定された場合(ステップS403でYES)は、ステップS601へ進む。
【0066】
ステップS601では、パケット一つあたりの再送回数が予め定められた許容回数以内であるか否かを判定する。許容回数以内である場合(ステップS601でYES)、ステップS404に進み、そこで再送を実行する。一方、許容回数を超える場合(ステップS601でNO)、ステップS406に進み、そこで再送を中止して画像補完処理を行う。なお、再送回数の計数は、伝送制御部110で行う。
【0067】
ここで再送許容回数は、再送に伴う遅延によってタイムアウトが生じ、後続のパケット伝送が行えなくなる可能性を低減するために設定する。しかし設定した再送許容回数が少なすぎると、注目領域に関する画像の信頼性確保が十分に行えなくなってしまう。そこで本実施形態では、医師やX線画像診断装置101の整備担当者などが上記トレードオフを検討した上で適切な許容再送回数を設定する、という運用形態を取ることができる。
【0068】
上記のように、本実施形態においては、再送要求を送信した回数をパケット毎に計数する。そして、伝送エラーが検出された場合、伝送エラーがなくパケットを受信するか、または、当該パケットについて計数した回数が予め定められた上限値を超えるまで、当該パケットの再送要求の送信を繰り返す。このため、本実施形態の構成によれば、伝送エラーが発生し続けた場合に、再送要求を無限に出し続けることを回避することができる。
【0069】
<実施形態3>
次に、本発明の第3の実施形態(実施形態3)におけるX線画像診断装置101について説明する。本実施形態に係る構成は、注目領域に対応するパケットが全て正常に伝送でき、かつタイムアウト時間を満足する場合に、注目領域に対応しないパケットについても再送を行うことで、画像全体の信頼性を維持する。
【0070】
本実施形態におけるX線画像診断装置101は、第1の実施形態におけるX線画像診断装置101と同様の前提条件や構成(図1、図2、図3)を持つ。そこで、図7を用いて実施形態1と相違する部分について説明を行い、共通する部分は説明を省略する。
【0071】
(受信処理)
図7は、X線画像表示装置104が画像を受信する際の動作を示すフローチャートである。図4に示したフローチャートとは、図7がステップS701を含む点で異なる。すなわち、本実施形態では、ステップS403で、伝送エラーが生じたパケットが注目領域に対応するパケットではないと判定された場合(ステップS403でNO)は、ステップS701へ進む。
【0072】
実施形態2でのステップS601(図6)と同様に、ステップS701では、あるパケットの再送回数が許容回数以内であるか否かの判定を行う。再送処理回数の設定については、実施形態2と同様に行う。
【0073】
ここで、実施形態2では、注目領域に対応するパケットの伝送エラーに対してステップS701が実施されていた。これに対し、本実施形態では注目領域に対応しないパケットの伝送エラーに対してステップS701を実行する点が実施形態2と異なる。つまり本実施形態においては、注目領域に対応するパケットは伝送が成功するまで無限に繰り返し再送され、一方注目領域に対応しないパケットは設定された再送許容回数の範囲で再送される。このため、注目領域の画像の信頼性を優先しつつ、画像全体の画像の信頼性をも高めることができる。
【0074】
なお、実施形態2と本実施形態を組み合わせ、注目領域に対応するパケットと注目領域に対応しないパケットのそれぞれに対して個別に再送許容回数を設定する形態をとっても良い。
【0075】
本実施形態ではパケット再送の上限値は、注目領域に対応するパケットと、対応しないパケットとのそれぞれについて定められる。ここで、注目領域に対応するパケットについての上限値は、注目領域に対応しないパケットについての前記上限値よりも大きい。このため、本実施形態の構成によれば、注目領域について高い信頼性を確保しつつ、注目領域以外の領域についても極力信頼性を高めることができる。
【0076】
<その他の実施形態>
本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをシステムあるいは装置で実行することによっても達成されることは言うまでもない。この場合、プログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することとなり、そのプログラムコードは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0077】
プログラムコードは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録してシステムあるいは装置に供給することができる。そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUまたはMPU)は、記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、本発明の目的を達成することができる。従って、そのプログラムコードを記憶した記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0078】
プログラムコードを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVDなどを用いることができる。
【0079】
なお、プログラムコードは、コンピュータが当該プログラムコードを読み出し実行することにより前述した実施形態の機能を実現するための、全ての要素を備えたものに限られない。即ち、プログラムコードには、コンピュータに組み込まれたソフトウェア及びハードウェアの少なくともいずれかと協働することにより目的を達成するプログラムコードも含まれる。
【0080】
例えば、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も、そのプログラムコードは本発明の技術的範囲に含まれる。ただし、OSはオペレーティングシステム(Operating System)の略称である。
【0081】
あるいは、例えば、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータに挿入又は接続された機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合がある。このような場合も、そのプログラムコードは本発明の技術的範囲に含まれる。なお、機能拡張ボードや機能拡張ユニットは、それらが備えるメモリにプログラムコードを読み込み、実行することでこのような処理を行うことができる。
【0082】
既述のように、一般に、パケット通信により画像を伝送する際、生じた伝送エラーに対して再送を行わない場合は画像の信頼性が低下し、再送を行った場合には遅延が発生するという課題がある。これに対し既存技術では、リアルタイム制約上、再送を行うための遅延が許容されない場合、画像の信頼性低下を避けられなかった。これに対して、上記の各実施形態の構成では、画像の観察者にとって興味のある領域(注目領域)に対応するパケットと注目領域に対応しないパケットとで再送の実施有無を変更する。さらに、注目領域に対応するパケットの再送を注目領域に対応しないパケットの伝送より優先する。このため、上記の構成によれば、画像伝送のリアルタイム性を保ちつつ、注目領域に関して、伝送する画像の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】X線画像診断装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】パケット送信部が作成するパケットの構成例を示す模式図である。
【図3】X線画像診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】X線画像表示装置が画像を受信する際の動作を示すフローチャートである。
【図5】伝送エラーを訂正しない場合とする場合との伝送結果の違いの例を示す図である。
【図6】X線画像表示装置が画像を受信する際の動作を示すフローチャートである。
【図7】X線画像表示装置が画像を受信する際の動作を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット通信により送信装置から送信された画像データを受信する受信装置であって、
前記画像データを伝送するためのパケットを受信する受信手段と、
前記パケットの伝送エラーを検出する検出手段と、
前記検出手段が伝送エラーを検出したパケットの再送要求を前記送信装置へ送信する送信手段と、
を備え、
前記送信手段は、
前記画像データの予め設定された注目領域に対応するパケットの伝送エラーを前記検出手段が検出した場合、当該パケットの再送要求を、前記注目領域に対応しないパケットの伝送要求よりも優先して送信する
ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記送信手段が前記再送要求を送信した回数をパケット毎に計数する計数手段をさらに備え、
前記送信手段は、伝送エラーが検出された場合、伝送エラーがなくパケットを前記受信手段が受信するか、または、当該パケットについて前記計数手段が計数した前記回数が予め定められた上限値を超えるまで、当該パケットの再送要求の送信を繰り返す
ことを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記上限値は、前記注目領域に対応するパケットと、対応しないパケットとのそれぞれについて定められ、
前記注目領域に対応するパケットについての前記上限値は、前記注目領域に対応しないパケットについての前記上限値よりも大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記送信手段は、前記注目領域に対応しないパケットの伝送エラーが検出された場合には、当該パケットの再送要求は送信しない
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記画像データに関するパケットの受信を開始してからの経過時間を計測する計測手段をさらに備え、
前記受信手段は、前記計測手段が計測した前記経過時間が予め定められた上限値を超えた場合、前記パケットの受信を中止する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項6】
ユーザの指示に応じて前記注目領域を設定する設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項7】
パケット通信により送信装置から送信された画像データを受信する受信装置の制御方法であって、
前記画像データを伝送するためのパケットを受信する受信工程と、
前記パケットの伝送エラーを検出する検出工程と、
前記検出工程において伝送エラーが検出されたパケットの再送要求を前記送信装置へ送信する送信工程と、
を備え、
前記送信工程においては、
前記画像データの予め設定された注目領域に対応するパケットの伝送エラーが前記検出工程において検出された場合、当該パケットの再送要求を、前記注目領域に対応しないパケットの伝送要求よりも優先して送信する
ことを特徴とする受信装置の制御方法。
【請求項8】
コンピュータを請求項1から6のいずれか1項に記載の受信装置として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−56964(P2010−56964A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220503(P2008−220503)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】