受信装置及び信号処理方法
【課題】
合理的に妨害信号の影響を低減し、高品質なコンテンツ再生を行う。
【解決手段】
パワースペクトル算出部191が、希望局から送信された希望波信号が所定周波数帯の希望局信号に変換された信号IFDのパワースペクトル分布を算出した後、最近の所定期間において得られたパワースペクトル分布の時間平均である平均パワースペクトル分布を算出する。引き続き、妨害信号分布検出部194が、希望局信号の中心周波数を対称中心として、平均パワースペクトル分布において、当該対称中心を含むとともに、周波数軸上で左右対称性が高いと評価される連続的な周波数範囲を、妨害信号無範囲と特定する。そして、可変BPF制御部195が、特定された妨害信号無範囲に基づいて、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定し、当該決定された周波数範囲の指定を可変BPFユニット130に対して行う。
合理的に妨害信号の影響を低減し、高品質なコンテンツ再生を行う。
【解決手段】
パワースペクトル算出部191が、希望局から送信された希望波信号が所定周波数帯の希望局信号に変換された信号IFDのパワースペクトル分布を算出した後、最近の所定期間において得られたパワースペクトル分布の時間平均である平均パワースペクトル分布を算出する。引き続き、妨害信号分布検出部194が、希望局信号の中心周波数を対称中心として、平均パワースペクトル分布において、当該対称中心を含むとともに、周波数軸上で左右対称性が高いと評価される連続的な周波数範囲を、妨害信号無範囲と特定する。そして、可変BPF制御部195が、特定された妨害信号無範囲に基づいて、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定し、当該決定された周波数範囲の指定を可変BPFユニット130に対して行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、信号処理方法及び信号処理プログラム、当該信号処理プログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、FM放送波等の放送波を受信して処理し、音声を再生する受信装置が車両等の移動体に搭載されている。こうした受信装置では、希望放送波の周波数帯に、周波数軸上で当該希望放送波に隣接する隣接局から送信された隣接放送波が混入する隣接妨害が発生し得る。
【0003】
かかる隣接妨害の影響を低減するための技術が提案されている。こうした提案技術の一つとして、希望放送波の中心周波数付近の信号レベルと、隣接放送波の中心周波数付近の信号レベルとを検出し、これらの検出結果に基づいて、希望波信号として採用する中間周波信号の周波数範囲を決定する技術がある(特許文献1参照:以下、「従来例」という)。
【0004】
この従来例の技術では、上述した検出結果に基づいて、希望放送波の信号レベルと、隣接放送波に由来する妨害波の信号レベルとの比(DU比)を求める。そして、求められたDU比の値に基づいて、中間周波信号が通過する中間周波フィルタにおける通過周波数範囲を決定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2007/000860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来例の技術では、隣接局からの隣接放送波の中心周波数付近の信号レベルを検出することが必要となるが、隣接放送波と希望放送波との周波数差は、地域によって異なり得る。この結果、妨害波となり得る隣接放送波の数は、地域によって異なる。このため、地域に依存せずに隣接放送波の信号レベルを検出しようとすると、検出用のバンドパスフィルタの数を妨害波となり得る隣接放送波の数だけ用意することが必要となり、回路規模が大きくなることが懸念される。
【0007】
また、希望放送波がFM放送波である場合には、放送局によって変調度が異なり得る。かかる変調度が大きな場合には、隣接放送波を受信していないにもかかわらず、希望放送波の一部を、隣接放送波として検出してしまうことが懸念される。
【0008】
このため、妨害波となり得る隣接放送波の周波数や、希望放送波の変調度が変化しても、妨害信号を適切に低減できる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、合理的に妨害信号の影響を低減し、高品質なコンテンツ再生を行うことができる受信装置及び信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、放送信号を受信する受信装置であって、希望局から送信された放送信号である希望波信号を所定周波数帯の信号に変換するフロントエンド部と;周波数範囲の指定に従って、前記フロントエンド部からの出力信号における前記指定された周波数範囲の成分を選択的に通過させるフィルタ部と;前記フロントエンド部からの出力信号に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を前記フィルタ部に対して指定する制御部と;を備え、前記制御部は、前記出力信号の時間周波数変換を行った後に、前記出力信号のパワースペクトル分布を算出し、前記希望波信号の中心周波数に対応する前記出力信号における周波数を対称中心として、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性が高いと評価される前記対称中心を含む連続的な周波数範囲に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定する、ことを特徴とする受信装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、希望局から送信された放送信号である希望波信号を所定周波数帯の信号に変換するフロントエンド部と;周波数範囲の指定に従って、前記フロントエンド部からの出力信号における前記指定された周波数範囲の成分を選択的に通過させるフィルタ部と;を備える受信装置において使用される信号処理方法であって、前記出力信号の時間周波数変換を行った後に、前記出力信号のパワースペクトル分布を算出する算出工程と;前記希望波信号の中心周波数に対応する前記出力信号における周波数を対称中心として、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性が高いと評価される前記対称中心を含む連続的な周波数範囲に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定し、前記決定された周波数範囲を前記フィルタ部に対して指定する制御工程と;を備えることを特徴とする信号処理方法である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の信号処理方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする信号処理プログラムである。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の信号処理プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図3】図2のパワースペクトル算出部による平均パワースペクトル分布の算出処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】平均パワースペクトル分布の例(その1)を示す図である。
【図5】図2の隣接局信号情報検出部による隣接局信号情報の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】隣接局信号の平均パワースペクトル分布の例を示す図である。
【図7】図2の希望局信号情報検出部による希望局信号情報の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】希望局信号の平均パワースペクトル分布の例を示す図である。
【図9】図2の妨害信号分布検出部による妨害信号分布の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】妨害信号分布の検出処理の中間段階で得られるパワー差分布の例を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図12】図11の制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図13】平均パワースペクトル分布の例(その2)を示す図である。
【図14】ビート信号の平均パワースペクトル分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を、図1〜図10を参照して説明する。なお、本第1実施形態では、FM放送波を受信して音声を再生する受信装置を例示して説明する。
【0017】
<構成>
図1には、第1実施形態に係る受信装置100Aの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図1に示されるように、受信装置100Aは、アンテナ110と、フロントエンド部としてのRF処理ユニット120とを備えている。また、受信装置100Aは、フィルタ部としての可変バンドパスフィルタ(BPF)ユニット130と、再生処理ユニット150とを備えている。さらに、受信装置100Aは、アナログ処理ユニット160と、スピーカユニット170と、操作入力ユニット180と、制御部としての制御ユニット190Aとを備えている。
【0018】
上記のアンテナ110は、放送波(受信信号)を受信する。アンテナ110による受信結果は、信号RFSとして、RF処理ユニット120へ送られる。
【0019】
上記のRF処理ユニット120は、制御ユニット190Aから送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局から送信された希望波信号を中間周波数帯の希望局信号とするための周波数変換処理を行い、周波数変換信号IFD(以下、「信号IFD」と呼ぶ)を、可変BPFユニット130及び制御ユニット190Aへ送る。このRF処理ユニット120は、入力フィルタと、高周波増幅器(RF−AMP:Radio Frequency-Amplifier)と、バンドパスフィルタ(以下、「RFフィルタ」と呼ぶ)とを備えている。また、RF処理ユニット120は、ミキサ(混合器)と、AD(Analogue to Digital)変換器と、局部発振回路(OSC)とを備えている。
【0020】
ここで、入力フィルタは、アンテナ110から送られた信号RFSの低周波成分を遮断するハイパスフィルタである。高周波増幅器は、入力フィルタを通過した信号を増幅する。RFフィルタは、高周波増幅器から出力された信号のうち、高周波帯の信号を選択的に通過させる。ミキサは、RFフィルタを通過した信号と、局部発振回路から供給された局部発振信号とを混合し、希望波信号が所定の中間周波帯の希望局信号となるように、周波数変換を行う。
【0021】
AD変換器は、ミキサから出力された信号をデジタル信号に変換する。この変換結果は、信号IFDとして、可変BPFユニット130及び制御ユニット190Aへ送られる。
【0022】
なお、局部発振回路は、電圧制御等により発振周波数の制御が可能な発振器等を備えて構成される。この局部発振回路は、制御ユニット190Aから送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局に対応する周波数の局部発振信号を生成し、ミキサへ供給する。
【0023】
上記の可変BPFユニット130は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、可変BPFユニット130は、制御ユニット190Aから送られた可変BPF制御指定VFCにより指定された周波数範囲の信号成分を通過させる。可変BPFユニット130を通過した信号成分は、信号BFDとして、再生処理ユニット150へ送られる。
【0024】
上記の再生処理ユニット150は、検波部と、ステレオ復調部とを備えている。ここで、検波部は、可変BPFユニット130から送られた信号BFDを受ける。そして、検波部は、信号BFDに対して検波処理を施し、検波結果の信号をステレオ復調部へ送る。
【0025】
ステレオ復調部は、検波部から送られた検波結果の信号を受ける。そして、ステレオ復調部は、当該検波結果の信号に対してステレオ復調処理を施す。このステレオ復調結果が、復調信号DMD(以下、「信号DMD」と呼ぶ)として、アナログ処理ユニット160へ送られる。なお、信号DMDは、レフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」)信号及びライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」)信号の2つの信号から構成されている。
【0026】
上記のアナログ処理ユニット160は、再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受ける。そして、アナログ処理ユニット160は、制御ユニット190Aによる制御のもとで、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る。
【0027】
かかる機能を有するアナログ処理ユニット160は、DA(Digital to Analogue)変換部と、音量調整部と、パワー増幅部とを備えて構成されている。ここで、DA変換部は、再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受ける。そして、DA変換部は、信号DMDをアナログ信号に変換する。なお、DA変換部は、信号DMDに含まれるLチャンネル信号及びRチャンネル信号に対応して、互いに同様に構成された2個のDA変換器を備えている。DA変換部によるアナログ変換結果の信号は音量調整部へ送られる。
【0028】
音量調整部は、DA変換部から送られたアナログ変換結果の信号を受ける。そして、音量調整部は、制御ユニット190Aから送られた音量調整指令VLCに従って、Lチャンネル及びRチャンネルのそれぞれに対応するアナログ変換結果の信号に対して音量調整処理を施す。なお、音量調整部は、本第1実施形態では、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個の電子ボリューム素子等を備えて構成されている。音量調整部による音量調整結果の信号は、パワー増幅部へ送られる。
【0029】
パワー増幅部は、音量調整部から送られたLチャンネル及びRチャンネルの音量調整結果の信号を受ける。そして、パワー増幅部は、音量調整結果の信号をパワー増幅する。なお、パワー増幅部は、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個のパワー増幅器を備えている。パワー増幅部による増幅結果である出力音声信号AOSは、スピーカユニット170へ送られる。
【0030】
上記のスピーカユニット170は、Lチャンネルスピーカ及びRチャンネルスピーカを備えている。このスピーカユニット170は、アナログ処理ユニット160から送られた出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
【0031】
上記の操作入力ユニット180は、受信装置100Aの本体部に設けられたキー部、あるいはキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、不図示の表示ユニットに設けられたタッチパネルを用いることができる。また、キー部を有する構成に代えて、音声入力する構成を採用することもできる。操作入力ユニット180への操作入力結果は、操作入力データIPDとして制御ユニット190Aへ送られる。
【0032】
上記の制御ユニット190Aは、受信装置100A全体の動作を制御する。この制御ユニット190Aは、図2に示されるように、パワースペクトル算出部191と、隣接局信号情報検出部192と、希望局信号情報検出部193と、妨害信号分布検出部194とを備えている。また、制御ユニット190Aは、可変BPF制御部195と、指令入力処理部199とを備えている。
【0033】
上記のパワースペクトル算出部191は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。引き続き、パワースペクトル算出部191は、所定時間長のフレーム期間ごとに、信号IFDに対する時間周波数変換を行った後、当該時間周波数変換の結果に基づいて、当該フレーム期間における個別パワースペクトル分布を算出する。そして、パワースペクトル算出部191は、最近の所定期間において得られた個別パワースペクトル分布の平均パワースペクトル分布を算出する。こうして算出された平均パワースペクトル分布は、パワースペクトル分布情報PSD(以下、「情報PSD」と呼ぶ)として、隣接局信号情報検出部192、希望局信号情報検出部193及び妨害信号分布検出部194へ送られる。
【0034】
なお、中間周波数帯に選局中の放送局に対応する信号しか存在しない場合には、当該信号のパワースペクトル分布の十分に長い期間長の期間における時間平均は、理論的上、周波数軸上において左右対称に近い形状となる。本発明では、かかる事実を利用するようになっている。
【0035】
このため、中間周波数帯に選局中の放送局に対応する信号しか存在しない場合に、算出される平均パワースペクトル分布が、周波数軸上において左右対称に近い形状となっている蓋然性が高いことが統計的に期待できるとの観点から、上記の「所定期間」は、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0036】
上記の隣接局信号情報検出部192は、パワースペクトル算出部191から送られた情報PSDを受ける。引き続き、隣接局信号情報検出部192は、情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から、隣接放送波に対応する中心周波数を中心とする予め定められた周波数幅の範囲におけるパワースペクトル分布を抽出する。こうして抽出されたパワースペクトル分布における個別パワースペクトルの和を算出することにより、隣接局信号情報検出部192は、隣接局信号パワーを検出する。こうして検出された隣接局信号パワーは、選局中の放送局から送信された希望波の中心周波数と隣接放送波の中心周波数との周波数差とともに、隣接局信号情報NBD(以下、「情報NBD」と呼ぶ)として、可変BPF制御部195へ送られる。
【0037】
なお、隣接局信号情報検出部192による抽出対象となる周波数範囲の「予め定められた周波数幅」は、希望波に対応する信号の混入度が十分に低いと見なせる周波数範囲にするとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0038】
上記の希望局信号情報検出部193は、パワースペクトル算出部191から送られた情報PSDを受ける。引き続き、希望局信号情報検出部193は、情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から希望波に対応する中心周波数を中心とする予め定められた周波数幅の範囲におけるパワースペクトル分布を抽出する。こうして抽出されたパワースペクトル分布の広がり(例えば、半値幅)に基づいて、希望局信号情報検出部193は、希望波の変調度を検出する。なお、本第1実施形態では、抽出されたパワースペクトル分布の半値幅に基づいて、希望波の変調度を検出するようになっている。
【0039】
また、希望局信号情報検出部193は、抽出されたパワースペクトル分布における個別パワースペクトルの和を算出することにより、希望局信号パワーを検出する。こうして、検出された希望局信号パワーは、上述のようにして検出された希望波の変調度とともに、希望局信号情報DBD(以下、「情報DBD」と呼ぶ)として、可変BPF制御部195へ送られる。
【0040】
なお、希望局信号情報検出部193による抽出対象となる周波数範囲の「予め定められた周波数幅」は、隣接波に対応する信号の混入度が十分に低いと見なせる周波数範囲にするとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0041】
上記の妨害信号分布検出部194は、パワースペクトル算出部191から送られた情報PSDを受ける。引き続き、妨害信号分布検出部194は、情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から、パワー差分布を導出する。ここで、妨害信号分布検出部194は、平均パワースペクトル分布における希望波に対応する中心周波数からの周波数差の絶対値が等しい2個の周波数におけるパワー値の差の絶対値の分布を、パワー差分布として導出する。そして、妨害信号分布検出部194は、当該希望波に対応する中心周波数を含み、パワー差の絶対値が所定値以下である連続的な周波数範囲を、妨害信号が無い範囲である妨害信号無範囲と特定する。こうして特定された妨害信号無範囲は、妨害信号分布情報NDT(以下、「情報NDT」と呼ぶ)として、可変BPF制御部195へ送られる。
【0042】
上記の可変BPF制御部195は、隣接局信号情報検出部192から送られた情報NBD、希望局信号情報検出部193から送られた情報DBD、及び、妨害信号分布検出部194から送られた情報NDTを受ける。引き続き、可変BPF制御部195は、これらの情報NBD,DBD,NDTに基づいて、信号IFDの信号成分の内で可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定する。そして、可変BPF制御部195は、決定された周波数範囲の信号成分を可変BPFユニット130に通過させるための制御情報を、可変BPF制御指定VFCとして、可変BPFユニット130へ送る。
【0043】
なお、可変BPF制御部195による処理の詳細については、後述する。
【0044】
上記の指令入力処理部199は、操作入力ユニット180から送られた操作入力データIPDを受ける。この操作入力データIPDの内容が選局指定であった場合には、指令入力処理部199は、指定された希望局に対応する選局指令CSLを生成して、RF処理ユニット120へ送る。また、操作入力データIPDの内容が音量調整指定であった場合には、指令入力処理部199は、指定された音量調整指定に対応する音量調整指令VLCを生成して、アナログ処理ユニット160へ送る。
<動作>
次に、以上のように構成された受信装置100Aの動作について、制御ユニット190Aによる可変BPFユニット130の制御のための処理に主に着目して説明する。
【0045】
前提として、操作入力ユニット180には既に利用者により選局指定が入力されており、指定された希望局に対応する選局指令CSLが、RF処理ユニット120へ送られているものとする。また、操作入力ユニット180には既に利用者により音量調整指定が入力されており、指定された音量調整指定に対応する音量調整指令VLCが、アナログ処理ユニット160へ送られているものとする(図1参照)。
【0046】
こうした状態で、アンテナ110で放送波を受信すると、信号RFSが、アンテナ110からRF処理ユニット120へ送られる。そして、RF処理ユニット120において、選局すべき希望局の信号が中間周波数帯の信号に変換された後、AD変換が行われる。このAD変換の結果が、信号IFDとして、可変BPFユニット130及び制御ユニット190Aへ送られる(図1参照)。
【0047】
信号IFDを受けた制御ユニット190Aでは、可変BPFユニット130の制御のための処理として、平均パワースペクトル分布算出処理、隣接局信号情報検出処理、希望局信号情報検出処理、妨害信号分布検出処理及び可変BPF制御処理が実行される。
【0048】
《平均パワースペクトル分布算出処理》
平均パワースペクトル分布算出処理は、パワースペクトル算出部191により実行される。
【0049】
この平均パワースペクトル分算出処理に際しては、図3に示されるように、まず、ステップS11において、パワースペクトル算出部191が、現在のフレーム期間、すなわち、信号IFDの現時点における個別パワースペクトル分布を算出するための信号IFDの収集期間が終了したか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS11:N)には、ステップS11の処理が繰り返される。
【0050】
現在のフレーム期間が終了し、ステップS11における判定の結果が肯定的となると(ステップS11:Y)、処理はステップS12へ進む。このステップS12では、パワースペクトル算出部191が、当該フレーム期間の信号IFDの個別パワースペクトル分布を算出する。
【0051】
かかる個別パワースペクトル分布の算出に際して、パワースペクトル算出部191は、まず、当該フレーム期間にRF処理部120から送られた信号IFDに対する時間周波数変換を行う。そして、パワースペクトル算出部191は、当該時間周波数変換の結果に基づいて、当該フレーム期間における信号IFDの個別パワースペクトル分布を算出する。
【0052】
次に、ステップS13において、パワースペクトル算出部191は、最近の所定期間において得られた個別パワースペクトル分布の平均パワースペクトル分布を算出する。そして、パワースペクトル算出部191は、算出された平均パワースペクトル分布を、情報PSDとして、隣接局信号情報検出部192、希望局信号情報検出部193及び妨害信号分布検出部194へ報告する(図2参照)。
【0053】
ステップS13の処理が終了すると、処理はステップS11へ戻る。以後、ステップS11〜S13の処理が繰り返されて、フレーム期間が終了するたびに、平均パワースペクトル分布の算出が行われ、算出された平均パワースペクトル分布が、情報PSDとして、隣接局信号情報検出部192、希望局信号情報検出部193及び妨害信号分布検出部194へ報告される。
【0054】
なお、上述したステップS13において算出された平均パワースペクトル分布の例が、平均パワースペクトル分布SPM(F)(F:周波数)として、図4に示されている。
【0055】
《隣接局信号情報検出処理》
隣接局信号情報検出処理は、隣接局信号情報検出部192により実行される。
【0056】
この隣接局信号情報検出処理に際しては、図5に示されるように、まず、ステップS21において、隣接局信号情報検出部192が、新たな情報PSDを受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS21:N)には、ステップS21の処理が繰り返される。
【0057】
新たな情報PSDを受け、ステップS21における判定の結果が肯定的となると(ステップS21:Y)、処理はステップS22へ進む。このステップS22では、隣接局信号情報検出部192が、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布に基づいて、希望局信号に対して最大の妨害信号の発生源となっている隣接局である最大妨害隣接局を特定できたか否かを判定する。
【0058】
かかる最大妨害隣接局の特定の判定を行うに際して、隣接局信号情報検出部192は、まず、希望局信号に対する妨害信号を発生している可能性がある隣接局(以下、「妨害隣接局候補」と呼ぶ)のそれぞれに対応する隣接局信号(以下、「妨害隣接局信号候補」と呼ぶ)の中心周波数におけるパワー値が所定隣接閾値以上となっているか否かの第1隣接局判定を行う。この第1隣接局判定の結果が肯定的となった妨害隣接局信号候補が無かった場合には、隣接局信号情報検出部192は、妨害隣接局は存在しないと判断する。この結果、ステップS22における判定の結果が否定的となり(ステップS22:N)、処理は、後述するステップS24へ進む。
【0059】
なお、「所定隣接閾値」は、隣接局信号が妨害波となり得るとの観点から、希望局信号の中心周波数FDCと妨害隣接局候補の中心周波数との周波数差に対応して、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。ここで、当該周波数差が小さいほど、「所定隣接閾値」は小さくなる。
【0060】
次に、隣接局信号情報検出部192は、第1隣接局判定の結果が肯定的であった妨害隣接局信号候補のパワースペクトル分布の広がり(例えば、半値幅)が、所定幅以上となっているか否かの第2隣接局判定を行う。この第2隣接局判定の結果が肯定的となった妨害隣接局信号候補が無かった場合には、隣接局信号情報検出部192は、妨害隣接局は存在しないと判断する。この結果、ステップS22における判定の結果が否定的となり(ステップS22:N)、処理は、後述するステップS24へ進む。
【0061】
なお、「所定幅」は、隣接局から送信された放送波に対応するパワー分布といえるか否かを判定するとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0062】
次いで、隣接局信号情報検出部192は、第2隣接局判定の結果が肯定的であった妨害隣接局信号候補である隣接局信号(以下、「妨害隣接局信号」と呼ぶ)の中心周波数におけるパワーと、当該周波数差との組み合わせに基づいて、希望局信号に対する影響度が最大となっていると考えられる最大妨害隣接局を特定する。この結果、ステップS22における判定の結果が肯定的となり(ステップS22:Y)、処理はステップS23へ進む。なお、ステップS22における判定の結果が肯定的となる場合には、最大妨害隣接局の情報として、希望局信号の中心周波数FDCと最大妨害隣接局信号の中心周波数との周波数差ΔFDN(図6参照)が得られる。
【0063】
次に、ステップS23において、隣接局信号情報検出部192が、最大妨害隣接局に対応する隣接局信号パワーを算出する。かかる隣接局信号パワーの算出に際して、隣接局信号情報検出部192は、最大妨害隣接局信号の中心周波数を中心とする予め定められた周波数幅WN(図6参照)の範囲におけるパワースペクトル分布を抽出する。こうして抽出されたパワースペクトル分布における個別パワースペクトルの和を算出することにより、隣接局信号情報検出部192は、隣接局信号パワーを検出する。そして、処理はステップS24へ進む。
【0064】
ステップS24では、隣接局信号情報検出部192が、情報NBDを可変BPF制御部195へ報告する。かかる報告に際して、上述したステップS22において、妨害隣接局は存在しないと判断された場合には、隣接局信号情報検出部192は、その旨を、情報NBDとして可変BPF制御部195へ報告する。一方、ステップS22,S23において、周波数差ΔFDN及び隣接局信号パワーが得られた場合には、これらを、情報NBDとして可変BPF制御部195へ報告する(図2参照)。
【0065】
ステップS24の処理が終了すると、処理はステップS21へ戻る。以後、ステップS21〜S24の処理が繰り返されて、平均パワースペクトル分布が算出されるたびに、隣接局情報の検出が行われ、検出結果が、情報NBDとして可変BPF制御部195へ報告される。
【0066】
なお、図6には、ステップS24において抽出されたパワースペクトル分布の例が、パワースペクトル分布SPN(F)として示されている。
【0067】
《希望局信号情報検出処理》
希望局信号情報検出処理は、希望局信号情報検出部193により実行される。
【0068】
この希望局信号情報検出処理に際しては、図7に示されるように、まず、ステップS31において、希望局信号情報検出部193が、新たな情報PSDを受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS31:N)には、ステップS31の処理が繰り返される。
【0069】
新たな情報PSDを受け、ステップS31における判定の結果が肯定的となると(ステップS31:Y)、処理はステップS32へ進む。このステップS32では、希望局信号情報検出部193が、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布に基づいて、希望局信号の変調度を検出する。
【0070】
かかる変調度の検出に際して、希望局信号情報検出部193は、希望局信号に対応する中心周波数FDCを中心とする予め定められた希望局周波数幅WD(図8参照)の範囲におけるパワースペクトル分布を抽出する。引き続き、希望局信号情報検出部193は、抽出されたパワースペクトル分布の半値幅HW(図8参照)を求める。そして、希望局信号情報検出部193は、求められた半値幅HWに基づいて希望局信号の変調度を検出する。
【0071】
次に、ステップS33において、希望局信号情報検出部193が、希望局信号のパワーを算出する。かかる算出に際して、希望局信号情報検出部193は、ステップS32において抽出されたパワースペクトル分布における個別パワースペクトルの和を算出することにより、希望局信号パワーを算出する。
【0072】
次いで、ステップS34において、希望局信号情報検出部193が、上述のようにして得られた希望局信号の変調度及び信号パワーを、情報DBDとして、可変BPF制御部195へ報告する(図2参照)。
【0073】
ステップS34の処理が終了すると、処理はステップS31へ戻る。以後、ステップS31〜S34の処理が繰り返されて、平均パワースペクトル分布が算出されるたびに、希望局情報の検出が行われ、検出結果が、情報DBDとして可変BPF制御部195へ報告される。
【0074】
なお、図8には、ステップS32において抽出されたパワースペクトル分布の例が、パワースペクトル分布SPD(F)として示されている。
【0075】
《妨害信号分布検出処理》
妨害信号分布検出処理は、妨害信号分布検出部194により実行される。
【0076】
この妨害信号分布検出処理に際しては、図9に示されるように、まず、ステップS41において、妨害信号分布検出部194が、新たな情報PSDを受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS41:N)には、ステップS41の処理が繰り返される。
【0077】
新たな情報PSDを受け、ステップS41における判定の結果が肯定的となると(ステップS41:Y)、処理はステップS42へ進む。このステップS42では、妨害信号分布検出部194が、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布において、希望局信号の中心周波数FDCからの周波数差の絶対値が等しい2個の周波数におけるパワー値の差の絶対値の分布であるパワー差分布を算出する。
【0078】
次に、ステップS43において、妨害信号分布検出部194が、算出されたパワー差分布において、パワー差の絶対値が所定値ΔPTH(図10参照)以下である状態が、周波数差が「0」から継続している範囲WNN(図10参照)を特定する。この特定結果に基づいて、妨害信号分布検出部194は、当該希望局信号の中心周波数を含み、パワー差の絶対値が所定値ΔPTH以下である連続的な周波数軸上において左右対称な範囲を、妨害信号が無い範囲である妨害信号無範囲として検出する。
【0079】
次いで、ステップS44において、妨害信号分布検出部194は、上述のようにして得られた妨害信号無範囲を、情報NDTとして、可変BPF制御部195へ報告する(図2参照)。
【0080】
ステップS44の処理が終了すると、処理はステップS41へ戻る。以後、ステップS41〜S44の処理が繰り返されて、平均パワースペクトル分布が算出されるたびに、妨害信号無範囲の検出が行われ、検出結果が、情報NDTとして可変BPF制御部195へ報告される。
【0081】
なお、図10には、ステップS42において算出されたパワー差分布の例が、パワー差分布ΔP(ΔF)として示されている。この図10においては、希望局信号の中心周波数FDCと、最大妨害隣接局信号の中心周波数との差の絶対値が、「ΔFDN」として示されている。
【0082】
《可変BPF制御処理》
可変BPF制御処理は、新たな平均パワースペクトル分布が算出される度に検出された情報NBD,DBD,NDTを受けた可変BPF制御部195により実行される。
【0083】
この可変BPF制御処理に際して、可変BPF制御部195は、まず、新たに受けた情報NBD,DBD,NDTの内容を総合的に考慮して、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定する。かかる周波数範囲の決定に用いられるアルゴリズムは、再生音質の維持の観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0084】
なお、可変BPF制御部195は、妨害信号無範囲が広いほど、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲が広くなるように、当該周波数範囲を決定する。また、可変BPF制御部195は、変調度が高いほど、可変BPFユニット130が通過させるべき信号成分の周波数範囲が広くなるように、当該周波数範囲を決定する。
【0085】
さらに、可変BPF制御部195は、希望局信号の中心周波数FDCと最大妨害隣接局信号の中心周波数との周波数差ΔFDNが大きいほど、可変BPFユニット130が通過させるべき信号成分の周波数範囲が広くなるように、当該周波数範囲を決定する。また、可変BPF制御部195は、希望局信号のパワーと隣接局信号パワーとの比(いわゆる「DU比」)が大きくなるほど、可変BPFユニット130が通過させるべき信号成分の周波数範囲が広くなるように、当該周波数範囲を決定する。
【0086】
こうして、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲が決定されると、可変BPF制御部195は、決定された周波数範囲の信号成分を通過させるように可変BPFユニット130を設定するための可変BPF制御指定VFCを生成する。そして、可変BPF制御部195は、生成された可変BPF制御指定VFCを可変BPFユニット130へ送る(図2参照)。
【0087】
以上のようにして行われる制御ユニット190Aによる制御のもとで、上述したようにRF処理ユニット120から送られた信号IFDを受けた可変BPFユニット130は、制御ユニット190Aから送られた可変BPF制御指定VFCにより指定された周波数範囲の信号成分を通過させる。こうして可変BPFユニット130を通過した信号成分は、信号BFDとして、再生処理ユニット150へ送られる(図1参照)。
【0088】
信号BFDを受けた再生処理ユニット150では、検波部が、信号BFDに対して検波処理を施し、検波結果の信号をステレオ復調部へ送る。当該検波結果の信号を受けたステレオ復調部は、セパレーション処理を含めたステレオ復調処理を、当該検波結果の信号に対して施す。そして、ステレオ復調部は、ステレオ復調処理の結果を、信号DMDとして、アナログ処理ユニット160へ送る(図1参照)。
【0089】
再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受けたアナログ処理ユニット160では、DA変換部、音量調整部及びパワー増幅部が、順次、処理を行い、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る(図1参照)。そして、スピーカユニット170が、アナログ処理ユニット160からの出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
【0090】
以上説明したように、本第1実施形態では、パワースペクトル算出部191が、RF処理ユニット120により希望局から送信された希望波信号が所定周波数帯の希望局信号に変換された信号IFDの時間周波数変換を行う。引き続き、パワースペクトル算出部191は、信号IFDのパワースペクトル分布を算出する。そして、パワースペクトル算出部191が、最近の所定期間において得られたパワースペクトル分布の時間平均である平均パワースペクトル分布を算出する。
【0091】
次に、妨害信号分布検出部194が、希望局信号の中心周波数FDCを対称中心として、平均パワースペクトル分布において、当該対称中心を含むとともに、周波数軸上で左右対称性が高いと評価される連続的な周波数範囲を、妨害信号無範囲と特定する。ここで、妨害信号分布検出部194は、当該対称中心から等距離となる2個の周波数におけるパワースペクトル値間の差の絶対値の分布であるパワー差分布を算出したうえで、算出されたパワー差分布に基づいて、平均パワースペクトル分布の当該対称中心を中心とする周波数軸上で左右対称性を評価する。そして、可変BPF制御部195が、特定された妨害信号無範囲に基づいて、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定し、当該決定された周波数範囲の指定を可変BPFユニット130に対して行う。
【0092】
したがって、本第1実施形態によれば、簡易な構成で、合理的に妨害信号を低減しつつ、高品質な音声再生を行うことができる。
【0093】
また、本第1実施形態では、隣接局信号情報検出部192が、周波数軸上で希望局に隣接する隣接局から送信された放送信号に対応する隣接局信号の成分が所定レベル以上で信号IFDに含まれている場合に、当該隣接局成分のパワー、及び、希望局信号の中心周波数と隣接局信号の中心周波数との周波数差ΔFDNを検出する。また、希望局信号情報検出部193が、希望局信号のパワーを検出する。そして、可変BPF制御部195が、希望局信号のパワーと隣接局成分のパワーとの比、及び、周波数差ΔFDNを更に考慮して、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定する。このため、隣接妨害の低減を合理的に行うことができる。
【0094】
また、本第1実施形態では、希望局信号情報検出部193が、希望局信号の変調度を検出する。そして、可変BPF制御部195が、検出された変調度を更に考慮して、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定する。このため、希望局に関する信号歪の抑制をすることができる。
【0095】
[第2実施形態]
まず、本発明の第2実施形態を、図11〜図14を主に参照して説明する。なお、本第2実施形態では、上述した第1実施形態の場合と同様に、FM放送波を受信して音声を再生する受信装置を例示して説明する。
【0096】
<構成>
図11には、第2実施形態に係る受信装置100Bの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図11に示されるように、受信装置100Bは、上述した受信装置100Aと比べて、ノッチフィルタ部としてのノッチフィルタユニット140と、適応フィルタ部としての適応フィルタユニット145とを更に備える点、及び、上述した制御ユニット190Aに代えて、制御ユニット190Bを備える点が異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
【0097】
なお、ノッチフィルタユニット140へは、可変BPFユニット130から信号BFDが供給されるようになっている。また、適応フィルタユニット145は、再生処理ユニット150へ信号AFDを供給するようになっている。
【0098】
上記のノッチフィルタユニット140は、可変BPFユニット130から送られた信号BFDを受ける。そして、ノッチフィルタユニット140は、制御ユニット190Bから送られたノッチフィルタ制御指定NFCにより指定された周波数の近傍の信号成分を選択的に遮断する。ノッチフィルタユニット140を通過した信号成分は、信号NFDとして、適応フィルタユニット145へ送られる。
【0099】
上記の適応フィルタユニット145は、ノッチフィルタユニット140から受けた信号NFDを受ける。そして、適応フィルタユニット145は、信号NFDに対して適応的にフィルタリング処理を施す。適応フィルタユニット145によるフィルタリング処理の結果は、信号AFDとして、再生処理ユニット150へ送られる。
【0100】
なお、本第2実施形態では、FM放送波が本来は振幅一定であること考慮し、適応フィルタリング処理アルゴリズムとしてCMA(Constant Modulus Algorithm)を採用している。
【0101】
上記の制御ユニット190Bは、図12に示されるように、上述した制御ユニット190Aと比べて、ビート周波数検出部196と、ノッチフィルタ制御部197とを更に備える点が異なっている。
【0102】
上記のビート周波数検出部196は、パワースペクトル算出部191から送られた情報PSDを受ける。引き続き、ビート周波数検出部196は、情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から、幅が狭いピークを有するビート信号に対応するパワースペクトル分布であるビートパワー分布を抽出する。そして、ビート周波数検出部196は、ビートパワー分布の中心周波数を検出する。ビート周波数検出部196による検出結果は、ビート周波数情報BFD(以下、「情報BFD」と呼ぶ)として、ノッチフィルタ制御部197へ送られる。
【0103】
上記のノッチフィルタ制御部197は、ビート周波数検出部196から送られた情報BFDを受ける。引き続き、ノッチフィルタ制御部197は、情報BFDとして得られた周波数に基づいて、ノッチフィルタユニット140が遮断すべき周波数を指定したノッチフィルタ制御指定NFCを生成する。そして、ノッチフィルタ制御部197は、生成されたノッチフィルタ制御指定NFCを、ノッチフィルタユニット140へ送る。
【0104】
<動作>
次に、以上のように構成された受信装置100Bの動作について、制御ユニット190Bによるノッチフィルタユニット140の制御のための処理に主に着目して説明する。
【0105】
前提として、操作入力ユニット180には既に利用者により選局指定が入力されており、指定された希望局に対応する選局指令CSLが、RF処理ユニット120へ送られているものとする。また、操作入力ユニット180には既に利用者により音量調整指定が入力されており、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCが、アナログ処理ユニット160へ送られているものとする(図11参照)。
【0106】
こうした状態で、アンテナ110で放送波を受信すると、上述した第1実施形態の場合と同様に、信号RFSが、アンテナ110からRF処理ユニット120へ送られる。そして、RF処理ユニット120において、選局すべき希望局の信号が中間周波数帯の信号に変換された後、AD変換が行われる。このAD変換の結果が、信号IFDとして、可変BPFユニット130及び制御ユニット190Bへ送られる(図11参照)。
【0107】
信号IFDを受けた制御ユニット190Bでは、上述した制御ユニット190Aの場合と同様に、可変BPFユニット130の制御のための処理として、平均パワースペクトル分布算出処理、隣接局信号情報検出処理、希望局信号情報検出処理及び妨害信号分布検出処理が実行される。また、信号IFDを受けた制御ユニット190Bでは、更に、ノッチフィルタユニット140の制御のための処理として、ビート周波数検出処理及びノッチフィルタ制御処理が実行される。
【0108】
《ビート周波数検出処理》
ビート周波数検出処理は、パワースペクトル算出部191から新たな情報PSDを受けたビート周波数検出部196により実行される。
【0109】
なお、図13には、パワースペクトル算出部191により算出された平均パワースペクトル分布の例が、平均パワースペクトル分布SPM’(F)として、示されている。
【0110】
このビート周波数検出処理に際しては、ビート周波数検出部196が、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から、ビート信号に対応するパワースペクトル分布を抽出する。かかるビート信号に対応するパワースペクトル分布の抽出に際して、ビート周波数検出部196が、幅が狭小であり、かつ、ピークパワー値が所定ピークパワー値PVTH(図14参照)以上のピーク部分を、平均パワースペクトル分布から抽出する。
【0111】
なお、「所定ピークパワー値」は、ビート信号が再生音質に対して無視できない悪影響を与えることになり得るとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0112】
次に、ビート周波数検出部196が、抽出されたパワースペクトル分布の中心周波数を特定する。そして、ビート周波数検出部196は、特定された周波数を、ビート周波数FBとして検出する。そして、ビート周波数検出部196は、検出結果を、情報BFDとして、ノッチフィルタ制御部197へ送る(図12参照)。
【0113】
以上のビート周波数検出処理が、新たな情報PSDを受ける度に、ビート周波数検出部196により実行され、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布におけるビート周波数FBが検出される。そして、検出されたビート周波数FBが、情報BFDとして、ノッチフィルタ制御部197へ報告される。
【0114】
なお、図14には、ビート信号に対応するパワースペクトル分布の抽出例が、パワースペクトル分布BPM(F)として、示されている。
【0115】
《ノッチフィルタ制御処理》
ノッチフィルタ制御処理は、新たな平均パワースペクトル分布が算出される度に検出された情報BFDを受けたノッチフィルタ制御部197により実行される。
【0116】
このノッチフィルタ制御処理に際して、ノッチフィルタ制御部197は、まず、新たに受けた情報BFDとして得られたビート周波数FBの近傍周波数の信号成分を遮断させるようにノッチフィルタユニット140を設定するためのノッチフィルタ制御指定NFCを生成する。そして、ノッチフィルタ制御部197は、生成されたノッチフィルタ制御指定NFCをノッチフィルタユニット140へ送る(図12参照)。
【0117】
第1実施形態の場合と同様に行われる制御ユニット190Bによる可変BPFユニット130に対する制御のもとで、上述したようにRF処理ユニット120から送られた信号IFDを受けた可変BPFユニット130は、制御ユニット190Bから送られた可変BPF制御指定VFCにより指定された周波数範囲の信号成分を通過させる。こうして可変BPFユニット130を通過した信号成分は、信号BFDとして、ノッチフィルタユニット140へ送られる(図11参照)。
【0118】
引き続き、上記のようにして行われる制御ユニット190Bによるノッチフィルタユニット140に対する制御のもとで、可変BPFユニット130を通過した信号BPFを受けたノッチフィルタユニット140は、制御ユニット190Bから送られたノッチフィルタ制御指定NFCにより指定された周波数の近傍の信号成分を選択的に遮断する。ノッチフィルタユニット140を通過した信号成分は、信号NFDとして、適応フィルタユニット145へ送られる(図11参照)。
【0119】
ノッチフィルタユニット140から送られた信号NFDを受けた適応フィルタユニット145は、信号NFDに対して適応的にフィルタリング処理を施す。適応フィルタユニット145によるフィルタリング処理の結果は、信号AFDとして、再生処理ユニット150へ送られる(図11参照)。
【0120】
信号AFDを受けた再生処理ユニット150では、第1実施形態の場合と同様に、検波部が、信号AFDに対して検波処理を施し、検波結果の信号をステレオ復調部へ送る。当該検波結果の信号を受けたステレオ復調部は、セパレーション処理を含めたステレオ復調処理を、当該検波結果の信号に対して施す。そして、ステレオ復調部は、ステレオ復調処理の結果を、信号DMDとして、アナログ処理ユニット160へ送る(図11参照)。
【0121】
再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受けたアナログ処理ユニット160では、第1実施形態の場合と同様に、DA変換部、音量調整部及びパワー増幅部が、順次、処理を行い、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る(図11参照)。そして、スピーカユニット170が、アナログ処理ユニット160からの出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
【0122】
以上説明したように、本第2実施形態では、上述した第1実施形態の場合と同様に、可変BPFユニット130が通過させるべき信号成分の周波数範囲の制御が行われる。したがって、本第2実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様に、簡易な構成で、合理的に隣接妨害の低減及び希望局に関する信号歪の抑制をすることができ、高品質な音声再生を行うことができる。
【0123】
また、本第2実施形態では、パワースペクトル算出部191により算出された平均パワースペクトル分布に基づいて、ビート周波数検出部196が、ビート周波数を検出する。そして、ノッチフィルタ制御部197が、検出されたビート周波数に基づいて、遮断されるべき信号成分の周波数の指定をノッチフィルタユニット140に対して行う。
【0124】
したがって、本第2実施形態によれば、マルチパスノイズのキャンセルに有効なCMAアルゴリズムによるフィルタリング処理を行う適応フィルタユニット145の動作を、ビート信号の影響を懸念して弱電界環境化で止める必要がなくなる。このため、更に合理的に隣接妨害の低減に加えて、非常に有効なマルチパスノイズのキャンセルを行うことができる。
【0125】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0126】
例えば、上記の第1及び第2実施形態では、平均パワースペクトルの算出に際して、個別パワースペクトル分布に関して、比較的長い期間についての時間平均を算出することを想定した。これに対し、時間平均の対象となる期間をより短くするとともに、妨害信号分布の検出に際して行われるパワー差の算出結果の有効数字の桁数を減らすようにしてもよい。
【0127】
また、上記の第1及び第2実施形態では、フィルタ部として可変バンドパスフィルタ(BPF)ユニットを用いるようにしたが、制御ユニットからの指定に応じて信号の通過帯域を可変できるようなローパスフィルタ等を用いるようにしてもよい。
【0128】
また、上記の第1及び第2実施形態における隣接局信号情報の検出に際しての最大妨害隣接局の特定方法は例示であり、他の特定方法を採用することもできる。例えば、希望局と妨害隣接局候補との周波数差が、地域によって定まっている場合には、受信装置の現在位置が属する地域を特定したうえで、最大妨害隣接局の特定を行うようにしてもよい。
【0129】
また、上記の第2実施形態では、可変BPFユニットと適応フィルタユニットとの間にノッチフィルタユニットを配置するようにしたが、RF処理ユニットと可変BPFユニットとの間にノッチフィルタユニットを配置するようにしてもよい。
【0130】
また、上記の第2実施形態における適応フィルタユニットを、IIR(Infinite Impulse Response)型のフィルタとして構成してもよいし、FIR(Finite Impulse Response)型のフィルタと構成してもよい。さらに、IIR型のフィルタとFIR型のフィルタとを中間周波信号のレベル検出結果等に応じて切換可能な構成としてもよい。
【0131】
また、上記の第2実施形態では、適応フィルタユニットで採用する適応フィルタリング処理のアルゴリズムをCMAとしたが、他の適応フィルタリング処理のアルゴリズムを採用してもよい。
【0132】
また、上記の実施形態では、FM受信装置に本発明を適用したが、他の種類の放送受信装置であっても本発明を適用できるのは、勿論である。
【0133】
なお、上記の第1及び第2実施形態における制御ユニット190A,190Bを、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行することにより、上記の第1及び第2実施形態における処理の一部又は全部を実行するようにしてもよい。このプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0134】
100A,100B … 受信装置
120 … RF処理ユニット(フロントエンド部)
130 … 可変BPFユニット(フィルタ部)
140 … ノッチフィルタユニット(ノッチフィルタ部)
145 … 適応フィルタユニット(適応フィルタ部)
190A,190B … 制御ユニット(制御部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、信号処理方法及び信号処理プログラム、当該信号処理プログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、FM放送波等の放送波を受信して処理し、音声を再生する受信装置が車両等の移動体に搭載されている。こうした受信装置では、希望放送波の周波数帯に、周波数軸上で当該希望放送波に隣接する隣接局から送信された隣接放送波が混入する隣接妨害が発生し得る。
【0003】
かかる隣接妨害の影響を低減するための技術が提案されている。こうした提案技術の一つとして、希望放送波の中心周波数付近の信号レベルと、隣接放送波の中心周波数付近の信号レベルとを検出し、これらの検出結果に基づいて、希望波信号として採用する中間周波信号の周波数範囲を決定する技術がある(特許文献1参照:以下、「従来例」という)。
【0004】
この従来例の技術では、上述した検出結果に基づいて、希望放送波の信号レベルと、隣接放送波に由来する妨害波の信号レベルとの比(DU比)を求める。そして、求められたDU比の値に基づいて、中間周波信号が通過する中間周波フィルタにおける通過周波数範囲を決定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2007/000860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来例の技術では、隣接局からの隣接放送波の中心周波数付近の信号レベルを検出することが必要となるが、隣接放送波と希望放送波との周波数差は、地域によって異なり得る。この結果、妨害波となり得る隣接放送波の数は、地域によって異なる。このため、地域に依存せずに隣接放送波の信号レベルを検出しようとすると、検出用のバンドパスフィルタの数を妨害波となり得る隣接放送波の数だけ用意することが必要となり、回路規模が大きくなることが懸念される。
【0007】
また、希望放送波がFM放送波である場合には、放送局によって変調度が異なり得る。かかる変調度が大きな場合には、隣接放送波を受信していないにもかかわらず、希望放送波の一部を、隣接放送波として検出してしまうことが懸念される。
【0008】
このため、妨害波となり得る隣接放送波の周波数や、希望放送波の変調度が変化しても、妨害信号を適切に低減できる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、合理的に妨害信号の影響を低減し、高品質なコンテンツ再生を行うことができる受信装置及び信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、放送信号を受信する受信装置であって、希望局から送信された放送信号である希望波信号を所定周波数帯の信号に変換するフロントエンド部と;周波数範囲の指定に従って、前記フロントエンド部からの出力信号における前記指定された周波数範囲の成分を選択的に通過させるフィルタ部と;前記フロントエンド部からの出力信号に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を前記フィルタ部に対して指定する制御部と;を備え、前記制御部は、前記出力信号の時間周波数変換を行った後に、前記出力信号のパワースペクトル分布を算出し、前記希望波信号の中心周波数に対応する前記出力信号における周波数を対称中心として、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性が高いと評価される前記対称中心を含む連続的な周波数範囲に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定する、ことを特徴とする受信装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、希望局から送信された放送信号である希望波信号を所定周波数帯の信号に変換するフロントエンド部と;周波数範囲の指定に従って、前記フロントエンド部からの出力信号における前記指定された周波数範囲の成分を選択的に通過させるフィルタ部と;を備える受信装置において使用される信号処理方法であって、前記出力信号の時間周波数変換を行った後に、前記出力信号のパワースペクトル分布を算出する算出工程と;前記希望波信号の中心周波数に対応する前記出力信号における周波数を対称中心として、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性が高いと評価される前記対称中心を含む連続的な周波数範囲に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定し、前記決定された周波数範囲を前記フィルタ部に対して指定する制御工程と;を備えることを特徴とする信号処理方法である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の信号処理方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする信号処理プログラムである。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の信号処理プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図3】図2のパワースペクトル算出部による平均パワースペクトル分布の算出処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】平均パワースペクトル分布の例(その1)を示す図である。
【図5】図2の隣接局信号情報検出部による隣接局信号情報の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】隣接局信号の平均パワースペクトル分布の例を示す図である。
【図7】図2の希望局信号情報検出部による希望局信号情報の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】希望局信号の平均パワースペクトル分布の例を示す図である。
【図9】図2の妨害信号分布検出部による妨害信号分布の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】妨害信号分布の検出処理の中間段階で得られるパワー差分布の例を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図12】図11の制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図13】平均パワースペクトル分布の例(その2)を示す図である。
【図14】ビート信号の平均パワースペクトル分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を、図1〜図10を参照して説明する。なお、本第1実施形態では、FM放送波を受信して音声を再生する受信装置を例示して説明する。
【0017】
<構成>
図1には、第1実施形態に係る受信装置100Aの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図1に示されるように、受信装置100Aは、アンテナ110と、フロントエンド部としてのRF処理ユニット120とを備えている。また、受信装置100Aは、フィルタ部としての可変バンドパスフィルタ(BPF)ユニット130と、再生処理ユニット150とを備えている。さらに、受信装置100Aは、アナログ処理ユニット160と、スピーカユニット170と、操作入力ユニット180と、制御部としての制御ユニット190Aとを備えている。
【0018】
上記のアンテナ110は、放送波(受信信号)を受信する。アンテナ110による受信結果は、信号RFSとして、RF処理ユニット120へ送られる。
【0019】
上記のRF処理ユニット120は、制御ユニット190Aから送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局から送信された希望波信号を中間周波数帯の希望局信号とするための周波数変換処理を行い、周波数変換信号IFD(以下、「信号IFD」と呼ぶ)を、可変BPFユニット130及び制御ユニット190Aへ送る。このRF処理ユニット120は、入力フィルタと、高周波増幅器(RF−AMP:Radio Frequency-Amplifier)と、バンドパスフィルタ(以下、「RFフィルタ」と呼ぶ)とを備えている。また、RF処理ユニット120は、ミキサ(混合器)と、AD(Analogue to Digital)変換器と、局部発振回路(OSC)とを備えている。
【0020】
ここで、入力フィルタは、アンテナ110から送られた信号RFSの低周波成分を遮断するハイパスフィルタである。高周波増幅器は、入力フィルタを通過した信号を増幅する。RFフィルタは、高周波増幅器から出力された信号のうち、高周波帯の信号を選択的に通過させる。ミキサは、RFフィルタを通過した信号と、局部発振回路から供給された局部発振信号とを混合し、希望波信号が所定の中間周波帯の希望局信号となるように、周波数変換を行う。
【0021】
AD変換器は、ミキサから出力された信号をデジタル信号に変換する。この変換結果は、信号IFDとして、可変BPFユニット130及び制御ユニット190Aへ送られる。
【0022】
なお、局部発振回路は、電圧制御等により発振周波数の制御が可能な発振器等を備えて構成される。この局部発振回路は、制御ユニット190Aから送られた選局指令CSLに従って、選局すべき希望局に対応する周波数の局部発振信号を生成し、ミキサへ供給する。
【0023】
上記の可変BPFユニット130は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。そして、可変BPFユニット130は、制御ユニット190Aから送られた可変BPF制御指定VFCにより指定された周波数範囲の信号成分を通過させる。可変BPFユニット130を通過した信号成分は、信号BFDとして、再生処理ユニット150へ送られる。
【0024】
上記の再生処理ユニット150は、検波部と、ステレオ復調部とを備えている。ここで、検波部は、可変BPFユニット130から送られた信号BFDを受ける。そして、検波部は、信号BFDに対して検波処理を施し、検波結果の信号をステレオ復調部へ送る。
【0025】
ステレオ復調部は、検波部から送られた検波結果の信号を受ける。そして、ステレオ復調部は、当該検波結果の信号に対してステレオ復調処理を施す。このステレオ復調結果が、復調信号DMD(以下、「信号DMD」と呼ぶ)として、アナログ処理ユニット160へ送られる。なお、信号DMDは、レフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」)信号及びライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」)信号の2つの信号から構成されている。
【0026】
上記のアナログ処理ユニット160は、再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受ける。そして、アナログ処理ユニット160は、制御ユニット190Aによる制御のもとで、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る。
【0027】
かかる機能を有するアナログ処理ユニット160は、DA(Digital to Analogue)変換部と、音量調整部と、パワー増幅部とを備えて構成されている。ここで、DA変換部は、再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受ける。そして、DA変換部は、信号DMDをアナログ信号に変換する。なお、DA変換部は、信号DMDに含まれるLチャンネル信号及びRチャンネル信号に対応して、互いに同様に構成された2個のDA変換器を備えている。DA変換部によるアナログ変換結果の信号は音量調整部へ送られる。
【0028】
音量調整部は、DA変換部から送られたアナログ変換結果の信号を受ける。そして、音量調整部は、制御ユニット190Aから送られた音量調整指令VLCに従って、Lチャンネル及びRチャンネルのそれぞれに対応するアナログ変換結果の信号に対して音量調整処理を施す。なお、音量調整部は、本第1実施形態では、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個の電子ボリューム素子等を備えて構成されている。音量調整部による音量調整結果の信号は、パワー増幅部へ送られる。
【0029】
パワー増幅部は、音量調整部から送られたLチャンネル及びRチャンネルの音量調整結果の信号を受ける。そして、パワー増幅部は、音量調整結果の信号をパワー増幅する。なお、パワー増幅部は、Lチャンネル及びRチャンネルに対応して、互いに同様に構成された2個のパワー増幅器を備えている。パワー増幅部による増幅結果である出力音声信号AOSは、スピーカユニット170へ送られる。
【0030】
上記のスピーカユニット170は、Lチャンネルスピーカ及びRチャンネルスピーカを備えている。このスピーカユニット170は、アナログ処理ユニット160から送られた出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
【0031】
上記の操作入力ユニット180は、受信装置100Aの本体部に設けられたキー部、あるいはキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、不図示の表示ユニットに設けられたタッチパネルを用いることができる。また、キー部を有する構成に代えて、音声入力する構成を採用することもできる。操作入力ユニット180への操作入力結果は、操作入力データIPDとして制御ユニット190Aへ送られる。
【0032】
上記の制御ユニット190Aは、受信装置100A全体の動作を制御する。この制御ユニット190Aは、図2に示されるように、パワースペクトル算出部191と、隣接局信号情報検出部192と、希望局信号情報検出部193と、妨害信号分布検出部194とを備えている。また、制御ユニット190Aは、可変BPF制御部195と、指令入力処理部199とを備えている。
【0033】
上記のパワースペクトル算出部191は、RF処理ユニット120から送られた信号IFDを受ける。引き続き、パワースペクトル算出部191は、所定時間長のフレーム期間ごとに、信号IFDに対する時間周波数変換を行った後、当該時間周波数変換の結果に基づいて、当該フレーム期間における個別パワースペクトル分布を算出する。そして、パワースペクトル算出部191は、最近の所定期間において得られた個別パワースペクトル分布の平均パワースペクトル分布を算出する。こうして算出された平均パワースペクトル分布は、パワースペクトル分布情報PSD(以下、「情報PSD」と呼ぶ)として、隣接局信号情報検出部192、希望局信号情報検出部193及び妨害信号分布検出部194へ送られる。
【0034】
なお、中間周波数帯に選局中の放送局に対応する信号しか存在しない場合には、当該信号のパワースペクトル分布の十分に長い期間長の期間における時間平均は、理論的上、周波数軸上において左右対称に近い形状となる。本発明では、かかる事実を利用するようになっている。
【0035】
このため、中間周波数帯に選局中の放送局に対応する信号しか存在しない場合に、算出される平均パワースペクトル分布が、周波数軸上において左右対称に近い形状となっている蓋然性が高いことが統計的に期待できるとの観点から、上記の「所定期間」は、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0036】
上記の隣接局信号情報検出部192は、パワースペクトル算出部191から送られた情報PSDを受ける。引き続き、隣接局信号情報検出部192は、情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から、隣接放送波に対応する中心周波数を中心とする予め定められた周波数幅の範囲におけるパワースペクトル分布を抽出する。こうして抽出されたパワースペクトル分布における個別パワースペクトルの和を算出することにより、隣接局信号情報検出部192は、隣接局信号パワーを検出する。こうして検出された隣接局信号パワーは、選局中の放送局から送信された希望波の中心周波数と隣接放送波の中心周波数との周波数差とともに、隣接局信号情報NBD(以下、「情報NBD」と呼ぶ)として、可変BPF制御部195へ送られる。
【0037】
なお、隣接局信号情報検出部192による抽出対象となる周波数範囲の「予め定められた周波数幅」は、希望波に対応する信号の混入度が十分に低いと見なせる周波数範囲にするとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0038】
上記の希望局信号情報検出部193は、パワースペクトル算出部191から送られた情報PSDを受ける。引き続き、希望局信号情報検出部193は、情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から希望波に対応する中心周波数を中心とする予め定められた周波数幅の範囲におけるパワースペクトル分布を抽出する。こうして抽出されたパワースペクトル分布の広がり(例えば、半値幅)に基づいて、希望局信号情報検出部193は、希望波の変調度を検出する。なお、本第1実施形態では、抽出されたパワースペクトル分布の半値幅に基づいて、希望波の変調度を検出するようになっている。
【0039】
また、希望局信号情報検出部193は、抽出されたパワースペクトル分布における個別パワースペクトルの和を算出することにより、希望局信号パワーを検出する。こうして、検出された希望局信号パワーは、上述のようにして検出された希望波の変調度とともに、希望局信号情報DBD(以下、「情報DBD」と呼ぶ)として、可変BPF制御部195へ送られる。
【0040】
なお、希望局信号情報検出部193による抽出対象となる周波数範囲の「予め定められた周波数幅」は、隣接波に対応する信号の混入度が十分に低いと見なせる周波数範囲にするとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0041】
上記の妨害信号分布検出部194は、パワースペクトル算出部191から送られた情報PSDを受ける。引き続き、妨害信号分布検出部194は、情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から、パワー差分布を導出する。ここで、妨害信号分布検出部194は、平均パワースペクトル分布における希望波に対応する中心周波数からの周波数差の絶対値が等しい2個の周波数におけるパワー値の差の絶対値の分布を、パワー差分布として導出する。そして、妨害信号分布検出部194は、当該希望波に対応する中心周波数を含み、パワー差の絶対値が所定値以下である連続的な周波数範囲を、妨害信号が無い範囲である妨害信号無範囲と特定する。こうして特定された妨害信号無範囲は、妨害信号分布情報NDT(以下、「情報NDT」と呼ぶ)として、可変BPF制御部195へ送られる。
【0042】
上記の可変BPF制御部195は、隣接局信号情報検出部192から送られた情報NBD、希望局信号情報検出部193から送られた情報DBD、及び、妨害信号分布検出部194から送られた情報NDTを受ける。引き続き、可変BPF制御部195は、これらの情報NBD,DBD,NDTに基づいて、信号IFDの信号成分の内で可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定する。そして、可変BPF制御部195は、決定された周波数範囲の信号成分を可変BPFユニット130に通過させるための制御情報を、可変BPF制御指定VFCとして、可変BPFユニット130へ送る。
【0043】
なお、可変BPF制御部195による処理の詳細については、後述する。
【0044】
上記の指令入力処理部199は、操作入力ユニット180から送られた操作入力データIPDを受ける。この操作入力データIPDの内容が選局指定であった場合には、指令入力処理部199は、指定された希望局に対応する選局指令CSLを生成して、RF処理ユニット120へ送る。また、操作入力データIPDの内容が音量調整指定であった場合には、指令入力処理部199は、指定された音量調整指定に対応する音量調整指令VLCを生成して、アナログ処理ユニット160へ送る。
<動作>
次に、以上のように構成された受信装置100Aの動作について、制御ユニット190Aによる可変BPFユニット130の制御のための処理に主に着目して説明する。
【0045】
前提として、操作入力ユニット180には既に利用者により選局指定が入力されており、指定された希望局に対応する選局指令CSLが、RF処理ユニット120へ送られているものとする。また、操作入力ユニット180には既に利用者により音量調整指定が入力されており、指定された音量調整指定に対応する音量調整指令VLCが、アナログ処理ユニット160へ送られているものとする(図1参照)。
【0046】
こうした状態で、アンテナ110で放送波を受信すると、信号RFSが、アンテナ110からRF処理ユニット120へ送られる。そして、RF処理ユニット120において、選局すべき希望局の信号が中間周波数帯の信号に変換された後、AD変換が行われる。このAD変換の結果が、信号IFDとして、可変BPFユニット130及び制御ユニット190Aへ送られる(図1参照)。
【0047】
信号IFDを受けた制御ユニット190Aでは、可変BPFユニット130の制御のための処理として、平均パワースペクトル分布算出処理、隣接局信号情報検出処理、希望局信号情報検出処理、妨害信号分布検出処理及び可変BPF制御処理が実行される。
【0048】
《平均パワースペクトル分布算出処理》
平均パワースペクトル分布算出処理は、パワースペクトル算出部191により実行される。
【0049】
この平均パワースペクトル分算出処理に際しては、図3に示されるように、まず、ステップS11において、パワースペクトル算出部191が、現在のフレーム期間、すなわち、信号IFDの現時点における個別パワースペクトル分布を算出するための信号IFDの収集期間が終了したか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS11:N)には、ステップS11の処理が繰り返される。
【0050】
現在のフレーム期間が終了し、ステップS11における判定の結果が肯定的となると(ステップS11:Y)、処理はステップS12へ進む。このステップS12では、パワースペクトル算出部191が、当該フレーム期間の信号IFDの個別パワースペクトル分布を算出する。
【0051】
かかる個別パワースペクトル分布の算出に際して、パワースペクトル算出部191は、まず、当該フレーム期間にRF処理部120から送られた信号IFDに対する時間周波数変換を行う。そして、パワースペクトル算出部191は、当該時間周波数変換の結果に基づいて、当該フレーム期間における信号IFDの個別パワースペクトル分布を算出する。
【0052】
次に、ステップS13において、パワースペクトル算出部191は、最近の所定期間において得られた個別パワースペクトル分布の平均パワースペクトル分布を算出する。そして、パワースペクトル算出部191は、算出された平均パワースペクトル分布を、情報PSDとして、隣接局信号情報検出部192、希望局信号情報検出部193及び妨害信号分布検出部194へ報告する(図2参照)。
【0053】
ステップS13の処理が終了すると、処理はステップS11へ戻る。以後、ステップS11〜S13の処理が繰り返されて、フレーム期間が終了するたびに、平均パワースペクトル分布の算出が行われ、算出された平均パワースペクトル分布が、情報PSDとして、隣接局信号情報検出部192、希望局信号情報検出部193及び妨害信号分布検出部194へ報告される。
【0054】
なお、上述したステップS13において算出された平均パワースペクトル分布の例が、平均パワースペクトル分布SPM(F)(F:周波数)として、図4に示されている。
【0055】
《隣接局信号情報検出処理》
隣接局信号情報検出処理は、隣接局信号情報検出部192により実行される。
【0056】
この隣接局信号情報検出処理に際しては、図5に示されるように、まず、ステップS21において、隣接局信号情報検出部192が、新たな情報PSDを受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS21:N)には、ステップS21の処理が繰り返される。
【0057】
新たな情報PSDを受け、ステップS21における判定の結果が肯定的となると(ステップS21:Y)、処理はステップS22へ進む。このステップS22では、隣接局信号情報検出部192が、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布に基づいて、希望局信号に対して最大の妨害信号の発生源となっている隣接局である最大妨害隣接局を特定できたか否かを判定する。
【0058】
かかる最大妨害隣接局の特定の判定を行うに際して、隣接局信号情報検出部192は、まず、希望局信号に対する妨害信号を発生している可能性がある隣接局(以下、「妨害隣接局候補」と呼ぶ)のそれぞれに対応する隣接局信号(以下、「妨害隣接局信号候補」と呼ぶ)の中心周波数におけるパワー値が所定隣接閾値以上となっているか否かの第1隣接局判定を行う。この第1隣接局判定の結果が肯定的となった妨害隣接局信号候補が無かった場合には、隣接局信号情報検出部192は、妨害隣接局は存在しないと判断する。この結果、ステップS22における判定の結果が否定的となり(ステップS22:N)、処理は、後述するステップS24へ進む。
【0059】
なお、「所定隣接閾値」は、隣接局信号が妨害波となり得るとの観点から、希望局信号の中心周波数FDCと妨害隣接局候補の中心周波数との周波数差に対応して、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。ここで、当該周波数差が小さいほど、「所定隣接閾値」は小さくなる。
【0060】
次に、隣接局信号情報検出部192は、第1隣接局判定の結果が肯定的であった妨害隣接局信号候補のパワースペクトル分布の広がり(例えば、半値幅)が、所定幅以上となっているか否かの第2隣接局判定を行う。この第2隣接局判定の結果が肯定的となった妨害隣接局信号候補が無かった場合には、隣接局信号情報検出部192は、妨害隣接局は存在しないと判断する。この結果、ステップS22における判定の結果が否定的となり(ステップS22:N)、処理は、後述するステップS24へ進む。
【0061】
なお、「所定幅」は、隣接局から送信された放送波に対応するパワー分布といえるか否かを判定するとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0062】
次いで、隣接局信号情報検出部192は、第2隣接局判定の結果が肯定的であった妨害隣接局信号候補である隣接局信号(以下、「妨害隣接局信号」と呼ぶ)の中心周波数におけるパワーと、当該周波数差との組み合わせに基づいて、希望局信号に対する影響度が最大となっていると考えられる最大妨害隣接局を特定する。この結果、ステップS22における判定の結果が肯定的となり(ステップS22:Y)、処理はステップS23へ進む。なお、ステップS22における判定の結果が肯定的となる場合には、最大妨害隣接局の情報として、希望局信号の中心周波数FDCと最大妨害隣接局信号の中心周波数との周波数差ΔFDN(図6参照)が得られる。
【0063】
次に、ステップS23において、隣接局信号情報検出部192が、最大妨害隣接局に対応する隣接局信号パワーを算出する。かかる隣接局信号パワーの算出に際して、隣接局信号情報検出部192は、最大妨害隣接局信号の中心周波数を中心とする予め定められた周波数幅WN(図6参照)の範囲におけるパワースペクトル分布を抽出する。こうして抽出されたパワースペクトル分布における個別パワースペクトルの和を算出することにより、隣接局信号情報検出部192は、隣接局信号パワーを検出する。そして、処理はステップS24へ進む。
【0064】
ステップS24では、隣接局信号情報検出部192が、情報NBDを可変BPF制御部195へ報告する。かかる報告に際して、上述したステップS22において、妨害隣接局は存在しないと判断された場合には、隣接局信号情報検出部192は、その旨を、情報NBDとして可変BPF制御部195へ報告する。一方、ステップS22,S23において、周波数差ΔFDN及び隣接局信号パワーが得られた場合には、これらを、情報NBDとして可変BPF制御部195へ報告する(図2参照)。
【0065】
ステップS24の処理が終了すると、処理はステップS21へ戻る。以後、ステップS21〜S24の処理が繰り返されて、平均パワースペクトル分布が算出されるたびに、隣接局情報の検出が行われ、検出結果が、情報NBDとして可変BPF制御部195へ報告される。
【0066】
なお、図6には、ステップS24において抽出されたパワースペクトル分布の例が、パワースペクトル分布SPN(F)として示されている。
【0067】
《希望局信号情報検出処理》
希望局信号情報検出処理は、希望局信号情報検出部193により実行される。
【0068】
この希望局信号情報検出処理に際しては、図7に示されるように、まず、ステップS31において、希望局信号情報検出部193が、新たな情報PSDを受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS31:N)には、ステップS31の処理が繰り返される。
【0069】
新たな情報PSDを受け、ステップS31における判定の結果が肯定的となると(ステップS31:Y)、処理はステップS32へ進む。このステップS32では、希望局信号情報検出部193が、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布に基づいて、希望局信号の変調度を検出する。
【0070】
かかる変調度の検出に際して、希望局信号情報検出部193は、希望局信号に対応する中心周波数FDCを中心とする予め定められた希望局周波数幅WD(図8参照)の範囲におけるパワースペクトル分布を抽出する。引き続き、希望局信号情報検出部193は、抽出されたパワースペクトル分布の半値幅HW(図8参照)を求める。そして、希望局信号情報検出部193は、求められた半値幅HWに基づいて希望局信号の変調度を検出する。
【0071】
次に、ステップS33において、希望局信号情報検出部193が、希望局信号のパワーを算出する。かかる算出に際して、希望局信号情報検出部193は、ステップS32において抽出されたパワースペクトル分布における個別パワースペクトルの和を算出することにより、希望局信号パワーを算出する。
【0072】
次いで、ステップS34において、希望局信号情報検出部193が、上述のようにして得られた希望局信号の変調度及び信号パワーを、情報DBDとして、可変BPF制御部195へ報告する(図2参照)。
【0073】
ステップS34の処理が終了すると、処理はステップS31へ戻る。以後、ステップS31〜S34の処理が繰り返されて、平均パワースペクトル分布が算出されるたびに、希望局情報の検出が行われ、検出結果が、情報DBDとして可変BPF制御部195へ報告される。
【0074】
なお、図8には、ステップS32において抽出されたパワースペクトル分布の例が、パワースペクトル分布SPD(F)として示されている。
【0075】
《妨害信号分布検出処理》
妨害信号分布検出処理は、妨害信号分布検出部194により実行される。
【0076】
この妨害信号分布検出処理に際しては、図9に示されるように、まず、ステップS41において、妨害信号分布検出部194が、新たな情報PSDを受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS41:N)には、ステップS41の処理が繰り返される。
【0077】
新たな情報PSDを受け、ステップS41における判定の結果が肯定的となると(ステップS41:Y)、処理はステップS42へ進む。このステップS42では、妨害信号分布検出部194が、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布において、希望局信号の中心周波数FDCからの周波数差の絶対値が等しい2個の周波数におけるパワー値の差の絶対値の分布であるパワー差分布を算出する。
【0078】
次に、ステップS43において、妨害信号分布検出部194が、算出されたパワー差分布において、パワー差の絶対値が所定値ΔPTH(図10参照)以下である状態が、周波数差が「0」から継続している範囲WNN(図10参照)を特定する。この特定結果に基づいて、妨害信号分布検出部194は、当該希望局信号の中心周波数を含み、パワー差の絶対値が所定値ΔPTH以下である連続的な周波数軸上において左右対称な範囲を、妨害信号が無い範囲である妨害信号無範囲として検出する。
【0079】
次いで、ステップS44において、妨害信号分布検出部194は、上述のようにして得られた妨害信号無範囲を、情報NDTとして、可変BPF制御部195へ報告する(図2参照)。
【0080】
ステップS44の処理が終了すると、処理はステップS41へ戻る。以後、ステップS41〜S44の処理が繰り返されて、平均パワースペクトル分布が算出されるたびに、妨害信号無範囲の検出が行われ、検出結果が、情報NDTとして可変BPF制御部195へ報告される。
【0081】
なお、図10には、ステップS42において算出されたパワー差分布の例が、パワー差分布ΔP(ΔF)として示されている。この図10においては、希望局信号の中心周波数FDCと、最大妨害隣接局信号の中心周波数との差の絶対値が、「ΔFDN」として示されている。
【0082】
《可変BPF制御処理》
可変BPF制御処理は、新たな平均パワースペクトル分布が算出される度に検出された情報NBD,DBD,NDTを受けた可変BPF制御部195により実行される。
【0083】
この可変BPF制御処理に際して、可変BPF制御部195は、まず、新たに受けた情報NBD,DBD,NDTの内容を総合的に考慮して、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定する。かかる周波数範囲の決定に用いられるアルゴリズムは、再生音質の維持の観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0084】
なお、可変BPF制御部195は、妨害信号無範囲が広いほど、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲が広くなるように、当該周波数範囲を決定する。また、可変BPF制御部195は、変調度が高いほど、可変BPFユニット130が通過させるべき信号成分の周波数範囲が広くなるように、当該周波数範囲を決定する。
【0085】
さらに、可変BPF制御部195は、希望局信号の中心周波数FDCと最大妨害隣接局信号の中心周波数との周波数差ΔFDNが大きいほど、可変BPFユニット130が通過させるべき信号成分の周波数範囲が広くなるように、当該周波数範囲を決定する。また、可変BPF制御部195は、希望局信号のパワーと隣接局信号パワーとの比(いわゆる「DU比」)が大きくなるほど、可変BPFユニット130が通過させるべき信号成分の周波数範囲が広くなるように、当該周波数範囲を決定する。
【0086】
こうして、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲が決定されると、可変BPF制御部195は、決定された周波数範囲の信号成分を通過させるように可変BPFユニット130を設定するための可変BPF制御指定VFCを生成する。そして、可変BPF制御部195は、生成された可変BPF制御指定VFCを可変BPFユニット130へ送る(図2参照)。
【0087】
以上のようにして行われる制御ユニット190Aによる制御のもとで、上述したようにRF処理ユニット120から送られた信号IFDを受けた可変BPFユニット130は、制御ユニット190Aから送られた可変BPF制御指定VFCにより指定された周波数範囲の信号成分を通過させる。こうして可変BPFユニット130を通過した信号成分は、信号BFDとして、再生処理ユニット150へ送られる(図1参照)。
【0088】
信号BFDを受けた再生処理ユニット150では、検波部が、信号BFDに対して検波処理を施し、検波結果の信号をステレオ復調部へ送る。当該検波結果の信号を受けたステレオ復調部は、セパレーション処理を含めたステレオ復調処理を、当該検波結果の信号に対して施す。そして、ステレオ復調部は、ステレオ復調処理の結果を、信号DMDとして、アナログ処理ユニット160へ送る(図1参照)。
【0089】
再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受けたアナログ処理ユニット160では、DA変換部、音量調整部及びパワー増幅部が、順次、処理を行い、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る(図1参照)。そして、スピーカユニット170が、アナログ処理ユニット160からの出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
【0090】
以上説明したように、本第1実施形態では、パワースペクトル算出部191が、RF処理ユニット120により希望局から送信された希望波信号が所定周波数帯の希望局信号に変換された信号IFDの時間周波数変換を行う。引き続き、パワースペクトル算出部191は、信号IFDのパワースペクトル分布を算出する。そして、パワースペクトル算出部191が、最近の所定期間において得られたパワースペクトル分布の時間平均である平均パワースペクトル分布を算出する。
【0091】
次に、妨害信号分布検出部194が、希望局信号の中心周波数FDCを対称中心として、平均パワースペクトル分布において、当該対称中心を含むとともに、周波数軸上で左右対称性が高いと評価される連続的な周波数範囲を、妨害信号無範囲と特定する。ここで、妨害信号分布検出部194は、当該対称中心から等距離となる2個の周波数におけるパワースペクトル値間の差の絶対値の分布であるパワー差分布を算出したうえで、算出されたパワー差分布に基づいて、平均パワースペクトル分布の当該対称中心を中心とする周波数軸上で左右対称性を評価する。そして、可変BPF制御部195が、特定された妨害信号無範囲に基づいて、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定し、当該決定された周波数範囲の指定を可変BPFユニット130に対して行う。
【0092】
したがって、本第1実施形態によれば、簡易な構成で、合理的に妨害信号を低減しつつ、高品質な音声再生を行うことができる。
【0093】
また、本第1実施形態では、隣接局信号情報検出部192が、周波数軸上で希望局に隣接する隣接局から送信された放送信号に対応する隣接局信号の成分が所定レベル以上で信号IFDに含まれている場合に、当該隣接局成分のパワー、及び、希望局信号の中心周波数と隣接局信号の中心周波数との周波数差ΔFDNを検出する。また、希望局信号情報検出部193が、希望局信号のパワーを検出する。そして、可変BPF制御部195が、希望局信号のパワーと隣接局成分のパワーとの比、及び、周波数差ΔFDNを更に考慮して、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定する。このため、隣接妨害の低減を合理的に行うことができる。
【0094】
また、本第1実施形態では、希望局信号情報検出部193が、希望局信号の変調度を検出する。そして、可変BPF制御部195が、検出された変調度を更に考慮して、可変BPFユニット130が通過させるべき周波数範囲を決定する。このため、希望局に関する信号歪の抑制をすることができる。
【0095】
[第2実施形態]
まず、本発明の第2実施形態を、図11〜図14を主に参照して説明する。なお、本第2実施形態では、上述した第1実施形態の場合と同様に、FM放送波を受信して音声を再生する受信装置を例示して説明する。
【0096】
<構成>
図11には、第2実施形態に係る受信装置100Bの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図11に示されるように、受信装置100Bは、上述した受信装置100Aと比べて、ノッチフィルタ部としてのノッチフィルタユニット140と、適応フィルタ部としての適応フィルタユニット145とを更に備える点、及び、上述した制御ユニット190Aに代えて、制御ユニット190Bを備える点が異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
【0097】
なお、ノッチフィルタユニット140へは、可変BPFユニット130から信号BFDが供給されるようになっている。また、適応フィルタユニット145は、再生処理ユニット150へ信号AFDを供給するようになっている。
【0098】
上記のノッチフィルタユニット140は、可変BPFユニット130から送られた信号BFDを受ける。そして、ノッチフィルタユニット140は、制御ユニット190Bから送られたノッチフィルタ制御指定NFCにより指定された周波数の近傍の信号成分を選択的に遮断する。ノッチフィルタユニット140を通過した信号成分は、信号NFDとして、適応フィルタユニット145へ送られる。
【0099】
上記の適応フィルタユニット145は、ノッチフィルタユニット140から受けた信号NFDを受ける。そして、適応フィルタユニット145は、信号NFDに対して適応的にフィルタリング処理を施す。適応フィルタユニット145によるフィルタリング処理の結果は、信号AFDとして、再生処理ユニット150へ送られる。
【0100】
なお、本第2実施形態では、FM放送波が本来は振幅一定であること考慮し、適応フィルタリング処理アルゴリズムとしてCMA(Constant Modulus Algorithm)を採用している。
【0101】
上記の制御ユニット190Bは、図12に示されるように、上述した制御ユニット190Aと比べて、ビート周波数検出部196と、ノッチフィルタ制御部197とを更に備える点が異なっている。
【0102】
上記のビート周波数検出部196は、パワースペクトル算出部191から送られた情報PSDを受ける。引き続き、ビート周波数検出部196は、情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から、幅が狭いピークを有するビート信号に対応するパワースペクトル分布であるビートパワー分布を抽出する。そして、ビート周波数検出部196は、ビートパワー分布の中心周波数を検出する。ビート周波数検出部196による検出結果は、ビート周波数情報BFD(以下、「情報BFD」と呼ぶ)として、ノッチフィルタ制御部197へ送られる。
【0103】
上記のノッチフィルタ制御部197は、ビート周波数検出部196から送られた情報BFDを受ける。引き続き、ノッチフィルタ制御部197は、情報BFDとして得られた周波数に基づいて、ノッチフィルタユニット140が遮断すべき周波数を指定したノッチフィルタ制御指定NFCを生成する。そして、ノッチフィルタ制御部197は、生成されたノッチフィルタ制御指定NFCを、ノッチフィルタユニット140へ送る。
【0104】
<動作>
次に、以上のように構成された受信装置100Bの動作について、制御ユニット190Bによるノッチフィルタユニット140の制御のための処理に主に着目して説明する。
【0105】
前提として、操作入力ユニット180には既に利用者により選局指定が入力されており、指定された希望局に対応する選局指令CSLが、RF処理ユニット120へ送られているものとする。また、操作入力ユニット180には既に利用者により音量調整指定が入力されており、指定された音量調整態様に対応する音量調整指令VLCが、アナログ処理ユニット160へ送られているものとする(図11参照)。
【0106】
こうした状態で、アンテナ110で放送波を受信すると、上述した第1実施形態の場合と同様に、信号RFSが、アンテナ110からRF処理ユニット120へ送られる。そして、RF処理ユニット120において、選局すべき希望局の信号が中間周波数帯の信号に変換された後、AD変換が行われる。このAD変換の結果が、信号IFDとして、可変BPFユニット130及び制御ユニット190Bへ送られる(図11参照)。
【0107】
信号IFDを受けた制御ユニット190Bでは、上述した制御ユニット190Aの場合と同様に、可変BPFユニット130の制御のための処理として、平均パワースペクトル分布算出処理、隣接局信号情報検出処理、希望局信号情報検出処理及び妨害信号分布検出処理が実行される。また、信号IFDを受けた制御ユニット190Bでは、更に、ノッチフィルタユニット140の制御のための処理として、ビート周波数検出処理及びノッチフィルタ制御処理が実行される。
【0108】
《ビート周波数検出処理》
ビート周波数検出処理は、パワースペクトル算出部191から新たな情報PSDを受けたビート周波数検出部196により実行される。
【0109】
なお、図13には、パワースペクトル算出部191により算出された平均パワースペクトル分布の例が、平均パワースペクトル分布SPM’(F)として、示されている。
【0110】
このビート周波数検出処理に際しては、ビート周波数検出部196が、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布から、ビート信号に対応するパワースペクトル分布を抽出する。かかるビート信号に対応するパワースペクトル分布の抽出に際して、ビート周波数検出部196が、幅が狭小であり、かつ、ピークパワー値が所定ピークパワー値PVTH(図14参照)以上のピーク部分を、平均パワースペクトル分布から抽出する。
【0111】
なお、「所定ピークパワー値」は、ビート信号が再生音質に対して無視できない悪影響を与えることになり得るとの観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0112】
次に、ビート周波数検出部196が、抽出されたパワースペクトル分布の中心周波数を特定する。そして、ビート周波数検出部196は、特定された周波数を、ビート周波数FBとして検出する。そして、ビート周波数検出部196は、検出結果を、情報BFDとして、ノッチフィルタ制御部197へ送る(図12参照)。
【0113】
以上のビート周波数検出処理が、新たな情報PSDを受ける度に、ビート周波数検出部196により実行され、新たな情報PSDとして得られた平均パワースペクトル分布におけるビート周波数FBが検出される。そして、検出されたビート周波数FBが、情報BFDとして、ノッチフィルタ制御部197へ報告される。
【0114】
なお、図14には、ビート信号に対応するパワースペクトル分布の抽出例が、パワースペクトル分布BPM(F)として、示されている。
【0115】
《ノッチフィルタ制御処理》
ノッチフィルタ制御処理は、新たな平均パワースペクトル分布が算出される度に検出された情報BFDを受けたノッチフィルタ制御部197により実行される。
【0116】
このノッチフィルタ制御処理に際して、ノッチフィルタ制御部197は、まず、新たに受けた情報BFDとして得られたビート周波数FBの近傍周波数の信号成分を遮断させるようにノッチフィルタユニット140を設定するためのノッチフィルタ制御指定NFCを生成する。そして、ノッチフィルタ制御部197は、生成されたノッチフィルタ制御指定NFCをノッチフィルタユニット140へ送る(図12参照)。
【0117】
第1実施形態の場合と同様に行われる制御ユニット190Bによる可変BPFユニット130に対する制御のもとで、上述したようにRF処理ユニット120から送られた信号IFDを受けた可変BPFユニット130は、制御ユニット190Bから送られた可変BPF制御指定VFCにより指定された周波数範囲の信号成分を通過させる。こうして可変BPFユニット130を通過した信号成分は、信号BFDとして、ノッチフィルタユニット140へ送られる(図11参照)。
【0118】
引き続き、上記のようにして行われる制御ユニット190Bによるノッチフィルタユニット140に対する制御のもとで、可変BPFユニット130を通過した信号BPFを受けたノッチフィルタユニット140は、制御ユニット190Bから送られたノッチフィルタ制御指定NFCにより指定された周波数の近傍の信号成分を選択的に遮断する。ノッチフィルタユニット140を通過した信号成分は、信号NFDとして、適応フィルタユニット145へ送られる(図11参照)。
【0119】
ノッチフィルタユニット140から送られた信号NFDを受けた適応フィルタユニット145は、信号NFDに対して適応的にフィルタリング処理を施す。適応フィルタユニット145によるフィルタリング処理の結果は、信号AFDとして、再生処理ユニット150へ送られる(図11参照)。
【0120】
信号AFDを受けた再生処理ユニット150では、第1実施形態の場合と同様に、検波部が、信号AFDに対して検波処理を施し、検波結果の信号をステレオ復調部へ送る。当該検波結果の信号を受けたステレオ復調部は、セパレーション処理を含めたステレオ復調処理を、当該検波結果の信号に対して施す。そして、ステレオ復調部は、ステレオ復調処理の結果を、信号DMDとして、アナログ処理ユニット160へ送る(図11参照)。
【0121】
再生処理ユニット150から送られた信号DMDを受けたアナログ処理ユニット160では、第1実施形態の場合と同様に、DA変換部、音量調整部及びパワー増幅部が、順次、処理を行い、出力音声信号AOSを生成し、スピーカユニット170へ送る(図11参照)。そして、スピーカユニット170が、アナログ処理ユニット160からの出力音声信号AOSに従って、音声を再生出力する。
【0122】
以上説明したように、本第2実施形態では、上述した第1実施形態の場合と同様に、可変BPFユニット130が通過させるべき信号成分の周波数範囲の制御が行われる。したがって、本第2実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様に、簡易な構成で、合理的に隣接妨害の低減及び希望局に関する信号歪の抑制をすることができ、高品質な音声再生を行うことができる。
【0123】
また、本第2実施形態では、パワースペクトル算出部191により算出された平均パワースペクトル分布に基づいて、ビート周波数検出部196が、ビート周波数を検出する。そして、ノッチフィルタ制御部197が、検出されたビート周波数に基づいて、遮断されるべき信号成分の周波数の指定をノッチフィルタユニット140に対して行う。
【0124】
したがって、本第2実施形態によれば、マルチパスノイズのキャンセルに有効なCMAアルゴリズムによるフィルタリング処理を行う適応フィルタユニット145の動作を、ビート信号の影響を懸念して弱電界環境化で止める必要がなくなる。このため、更に合理的に隣接妨害の低減に加えて、非常に有効なマルチパスノイズのキャンセルを行うことができる。
【0125】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0126】
例えば、上記の第1及び第2実施形態では、平均パワースペクトルの算出に際して、個別パワースペクトル分布に関して、比較的長い期間についての時間平均を算出することを想定した。これに対し、時間平均の対象となる期間をより短くするとともに、妨害信号分布の検出に際して行われるパワー差の算出結果の有効数字の桁数を減らすようにしてもよい。
【0127】
また、上記の第1及び第2実施形態では、フィルタ部として可変バンドパスフィルタ(BPF)ユニットを用いるようにしたが、制御ユニットからの指定に応じて信号の通過帯域を可変できるようなローパスフィルタ等を用いるようにしてもよい。
【0128】
また、上記の第1及び第2実施形態における隣接局信号情報の検出に際しての最大妨害隣接局の特定方法は例示であり、他の特定方法を採用することもできる。例えば、希望局と妨害隣接局候補との周波数差が、地域によって定まっている場合には、受信装置の現在位置が属する地域を特定したうえで、最大妨害隣接局の特定を行うようにしてもよい。
【0129】
また、上記の第2実施形態では、可変BPFユニットと適応フィルタユニットとの間にノッチフィルタユニットを配置するようにしたが、RF処理ユニットと可変BPFユニットとの間にノッチフィルタユニットを配置するようにしてもよい。
【0130】
また、上記の第2実施形態における適応フィルタユニットを、IIR(Infinite Impulse Response)型のフィルタとして構成してもよいし、FIR(Finite Impulse Response)型のフィルタと構成してもよい。さらに、IIR型のフィルタとFIR型のフィルタとを中間周波信号のレベル検出結果等に応じて切換可能な構成としてもよい。
【0131】
また、上記の第2実施形態では、適応フィルタユニットで採用する適応フィルタリング処理のアルゴリズムをCMAとしたが、他の適応フィルタリング処理のアルゴリズムを採用してもよい。
【0132】
また、上記の実施形態では、FM受信装置に本発明を適用したが、他の種類の放送受信装置であっても本発明を適用できるのは、勿論である。
【0133】
なお、上記の第1及び第2実施形態における制御ユニット190A,190Bを、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行することにより、上記の第1及び第2実施形態における処理の一部又は全部を実行するようにしてもよい。このプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0134】
100A,100B … 受信装置
120 … RF処理ユニット(フロントエンド部)
130 … 可変BPFユニット(フィルタ部)
140 … ノッチフィルタユニット(ノッチフィルタ部)
145 … 適応フィルタユニット(適応フィルタ部)
190A,190B … 制御ユニット(制御部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号を受信する受信装置であって、
希望局から送信された放送信号である希望波信号を所定周波数帯の信号に変換するフロントエンド部と;
周波数範囲の指定に従って、前記フロントエンド部からの出力信号における前記指定された周波数範囲の成分を選択的に通過させるフィルタ部と;
前記フロントエンド部からの出力信号に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を前記フィルタ部に対して指定する制御部と;を備え、
前記制御部は、
前記出力信号の時間周波数変換を行った後に、前記出力信号のパワースペクトル分布を算出し、
前記希望波信号の中心周波数に対応する前記出力信号における周波数を対称中心として、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性が高いと評価される前記対称中心を含む連続的な周波数範囲に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定する、
ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の周波数軸上で前記対称中心から等距離となる2周波数におけるパワースペクトル値間の相違に基づいて、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性を評価する、ことを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
周波数軸上で前記希望局に隣接する隣接局から送信された放送信号に対応する隣接局成分が所定レベル以上で前記出力信号に含まれている場合に、前記算出されたパワースペクトル分布に基づいて、前記出力信号における前記希望波信号に対応する成分のレベルと、前記隣接局成分のレベルとの比の値を算出し、
前記算出された比の値を更に考慮して、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記希望波信号はFM放送信号であり、
前記制御部は、
前記算出されたパワースペクトル分布に基づいて、前記希望波信号の変調度を算出し、
前記算出された変調度を更に考慮して、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
レベル低減周波数の指定に従って、前記出力信号又は前記フィルタ部を通過した信号に含まれる前記指定されたレベル低減周波数の成分を低減させるノッチフィルタ部と;
前記フィルタ部及び前記ノッチフィルタ部の双方を通過した信号に対して適応的にフィルタリング処理を施す適応フィルタ部と;を更に備え、
前記制御部は、前記出力信号中にビート信号が含まれる場合には、前記ビート信号の周波数を特定し、前記特定した周波数を前記ノッチフィルタ部に対して指定する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項6】
希望局から送信された放送信号である希望波信号を所定周波数帯の信号に変換するフロントエンド部と;周波数範囲の指定に従って、前記フロントエンド部からの出力信号における前記指定された周波数範囲の成分を選択的に通過させるフィルタ部と;を備える受信装置において使用される信号処理方法であって、
前記出力信号の時間周波数変換を行った後に、前記出力信号のパワースペクトル分布を算出する算出工程と;
前記希望波信号の中心周波数に対応する前記出力信号における周波数を対称中心として、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性が高いと評価される前記対称中心を含む連続的な周波数範囲に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定し、前記決定された周波数範囲を前記フィルタ部に対して指定する制御工程と;
を備えることを特徴とする信号処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の信号処理方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の信号処理プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。
【請求項1】
放送信号を受信する受信装置であって、
希望局から送信された放送信号である希望波信号を所定周波数帯の信号に変換するフロントエンド部と;
周波数範囲の指定に従って、前記フロントエンド部からの出力信号における前記指定された周波数範囲の成分を選択的に通過させるフィルタ部と;
前記フロントエンド部からの出力信号に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を前記フィルタ部に対して指定する制御部と;を備え、
前記制御部は、
前記出力信号の時間周波数変換を行った後に、前記出力信号のパワースペクトル分布を算出し、
前記希望波信号の中心周波数に対応する前記出力信号における周波数を対称中心として、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性が高いと評価される前記対称中心を含む連続的な周波数範囲に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定する、
ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の周波数軸上で前記対称中心から等距離となる2周波数におけるパワースペクトル値間の相違に基づいて、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性を評価する、ことを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
周波数軸上で前記希望局に隣接する隣接局から送信された放送信号に対応する隣接局成分が所定レベル以上で前記出力信号に含まれている場合に、前記算出されたパワースペクトル分布に基づいて、前記出力信号における前記希望波信号に対応する成分のレベルと、前記隣接局成分のレベルとの比の値を算出し、
前記算出された比の値を更に考慮して、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記希望波信号はFM放送信号であり、
前記制御部は、
前記算出されたパワースペクトル分布に基づいて、前記希望波信号の変調度を算出し、
前記算出された変調度を更に考慮して、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
レベル低減周波数の指定に従って、前記出力信号又は前記フィルタ部を通過した信号に含まれる前記指定されたレベル低減周波数の成分を低減させるノッチフィルタ部と;
前記フィルタ部及び前記ノッチフィルタ部の双方を通過した信号に対して適応的にフィルタリング処理を施す適応フィルタ部と;を更に備え、
前記制御部は、前記出力信号中にビート信号が含まれる場合には、前記ビート信号の周波数を特定し、前記特定した周波数を前記ノッチフィルタ部に対して指定する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項6】
希望局から送信された放送信号である希望波信号を所定周波数帯の信号に変換するフロントエンド部と;周波数範囲の指定に従って、前記フロントエンド部からの出力信号における前記指定された周波数範囲の成分を選択的に通過させるフィルタ部と;を備える受信装置において使用される信号処理方法であって、
前記出力信号の時間周波数変換を行った後に、前記出力信号のパワースペクトル分布を算出する算出工程と;
前記希望波信号の中心周波数に対応する前記出力信号における周波数を対称中心として、前記算出されたパワースペクトル分布の時間平均の左右対称性が高いと評価される前記対称中心を含む連続的な周波数範囲に基づいて、前記フィルタ部が通過させるべき周波数範囲を決定し、前記決定された周波数範囲を前記フィルタ部に対して指定する制御工程と;
を備えることを特徴とする信号処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の信号処理方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の信号処理プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−199739(P2012−199739A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62034(P2011−62034)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
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