説明

受信装置及び信号判定プログラム

【課題】 CNRが低い場合又はCNRがマイナスである場合であっても、信号を検出することが可能な受信装置と、この受信装置で用いられる信号判定プログラムとを提供する。
【解決手段】 受信装置は、アンテナ、RF変換部、アナログ−デジタル変換部、スライディングバッファ部、非線形処理部、直交変換部及び信号検出部を具備する。スライディングバッファ部は、アンテナ、RF変換部及びアナログ−デジタル変換部を介して変換されたデジタル信号を一時的に保持し、所定のサンプル数のサンプル群をスライディングさせながら出力する。非線形処理部は、出力されたサンプル群に対して非線形処理を行う。直交変換部は、非線形処理された処理信号に対して直交変換を行うことで、受信した電波に含まれる変調信号の信号成分を強調し、かつ、雑音成分を抑圧したスペクトラム分布を作成する。信号検出部は、スペクトラム分布に基づいて変調信号の出現又は消失を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受信した電波に所定の変調方式による変調信号が含まれているか否かを判定する受信装置と、この受信装置で用いられる信号判定プログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
違法電波監視技術は、国際電気通信連合条約及び国内法(電波法等)の遵守のために必要不可欠である。しかしながら、違法電波の発射は後を絶たず、正式に運用されているシステムへの重大な影響を及ぼす可能性が否定できない。
【0003】
ところで、違法電波監視技術としての電波の有無を自動検出する信号判定装置が提案されている。しかしながら、従来の信号判定装置では、CNR(Carrier to Noise Ratio)の低い信号を検出しようとすると雑音等により、誤検出の増加を招く虞がある。そのため、従来の信号判定装置では、雑音等による誤検出の影響を考慮して、CNRの高い信号を検出対象とするようにしている。
【0004】
さらに、昨今の無線通信技術の高度化により、電波に含まれる信号電力が雑音電力以下、つまりCNRがマイナスであっても、信号を十分に復調/復号が可能な場合もある。
【0005】
上述の事情を勘案すると、電波監視技術として、CNRの低い信号及びCNRがマイナスの信号を検出する技術が必要不可欠になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−257647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、CNRの低い信号及びCNRがマイナスの信号を検出することができる技術が要請されている。
【0008】
そこで、目的は、CNRが低い場合又はCNRがマイナスである場合であっても、信号を検出することが可能な受信装置と、この受信装置で用いられる信号判定プログラムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、受信装置は、アンテナ、RF変換部、アナログ−デジタル変換部、スライディングバッファ部、非線形処理部、直交変換部及び信号検出部を具備する。アンテナは、変調信号を含む電波を受信する。RF変換部は、前記電波を予め設定された周波数のベースバンド信号へ変換する。アナログ−デジタル変換部は、前記ベースバンド信号をデジタル信号へ変換する。スライディングバッファ部は、前記デジタル信号を一時的に保持し、第1のサンプル数のサンプル群を、第2のサンプル数ずつずらしながら出力する。非線形処理部は、前記スライディングバッファ部からのサンプル群に対して非線形処理を行う。直交変換部は、前記非線形処理部からの処理信号に対して直交変換を行うことで、前記変調信号の信号成分を強調し、かつ、雑音成分を抑圧したスペクトラム分布を作成する。信号検出部は、前記スペクトラム分布に基づいて前記変調信号の出現又は消失を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の受信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1のA/D変換部から信号処理部へ出力されるデジタル信号の一例を示す図である。
【図3】図1のFFT処理部で、非線形処理の算出結果に対してFFT処理を施した際のスペクトラム分析結果を示す図である。
【図4】第2の実施形態の受信装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る受信装置の機能構成を示すブロック図である。図1に示す受信装置は、アンテナ10、RF変換部20、A/D変換部30及び信号処理部40を具備する。
【0013】
アンテナ10は、外部から到来する電波を受信する。この電波は、CNR(Carrier to Noise Ratio)が低い信号であり、親局(図示せず)から送信された変調信号を含むとする。
【0014】
RF変換部20は、アンテナ10で受信された電波を所定の周波数のベースバンド信号に変換する。また、RF変換部20は、このベースバンド信号に対して、フィルタ処置等の受信処理を行う。
【0015】
A/D変換部30は、RF変換部20からのベースバンド信号を、デジタル形式のデジタル信号へ変換する。
【0016】
信号処理部40は、例えばマイクロプロセッサからなるCPU(Central Processing Unit)を備えたもので、アプリケーション・プログラムを上記CPUに実行させることにより以下の機能を有する。すなわち、信号処理部40は、スライディングバッファ部41、非線形処理部42、FFT処理部43及び信号検出部44を備える。
【0017】
スライディングバッファ部41は、A/D変換部30からのデジタル信号のサンプルを一時的に保持し、保持したサンプル群を非線形処理部42へ出力する。すなわち、スライディングバッファ部41は、連続するN個のサンプルを一群とするNサンプルの信号を、M個のサンプルずつスライディングさせながら非線形処理部42へ出力する。スライディングバッファ部41から出力されるNサンプルの信号x(l)は、A/D変換部30からのデジタル信号y(n)に基づいて、
【数1】

【0018】
と定義される。ここで、kは、スライディングバッファ部41から出力されるNサンプルの信号の番号であり、0から始まる連続した番号である。また、s(l)は信号成分を示し、n(l)は雑音成分を示す。
【0019】
非線形処理部42は、スライディングバッファ部41からのNサンプルの信号に対して非線形処理を行う。非線形処理は、非線形処理により得られた算出結果に後段のFFT処理を施すことにより、信号成分を強調し、雑音成分を抑圧するための処理である。非線形処理の一例として、以下の処理が挙げられる。
【数2】

【0020】
非線形処理部42は、非線形処理により得られた算出結果をFFT処理部43へ出力する。なお、ここでは非線形処理として、Nサンプルの信号に対して、複素共役を掛け合わせる処理を示したが、これに限定される訳ではない。非線形処理の方法は、入力される信号の種類に応じて様々な方法がある。
【0021】
FFT処理部43は、入力された信号に対して直交変換を行う直交変換部の一例である。FFT処理部43は、非線形処理部42からの算出結果に対して、FFT処理を行う。このFFT処理により、算出結果の周波数帯域が狭小化され、算出結果が平均化されることとなる。狭小化処理及び平均化処理により、式(2)に示す算出結果のうち第3項が抑圧される。これは、信号成分s(l)及び/又は雑音成分n(l)がランダムであることによる。つまり、十分に長いサンプル数であればFFT処理部43によるFFT処理では、式(2)に示す算出結果のうち、第1項及び第2項についてのスペクトラム分析が行われることとなる。
【0022】
ところで、非線形処理によりデジタル形式における位相変調及び周波数変調等では、シンボルの変化点が時系列信号に現れることになる。そのため、式(2)のスペクトラム分析結果としては、中央及びその両脇にスペクトラム成分が最小で3個現れることになる。このとき、中央のスペクトラム成分と、両脇のスペクトラム成分との差は、デジタル変調の場合には、ボーレートに対応する量である。
【0023】
なお、直交変換部は、FFT処理部43に限定される訳ではなく、離散コサイン変換、離散サイン変換又はウェーブレット変換等を行う部材であっても構わない。また、電波に含まれる変調信号の周波数帯が既知である場合には、スライディング平均を取る部材であっても構わない。
【0024】
信号検出部44は、FFT処理部43からのスペクトラム分析結果に基づいて、変調信号の出現/消滅の判定を行う。具体的には、信号検出部44は、スペクトラム分析結果におけるスペクトラムのレベル変化に基づいて変調信号の有無を判断する。つまり、信号検出部44は、k番目のNサンプルの信号についてのスペクトラム成分と、k+k’番目のNサンプルの信号についてのスペクトラム成分とを比較し、スペクトラム成分の変化量を検出することで変調信号の有無を判断する。なお、k’は、スペクトラム成分を比較する時間的な変化量に対応するものである。
【0025】
例えば、k番目のNサンプルの信号についてのスペクトラム成分における有意なピークの値をpsd(k,f)とする(psd:power spectrum density)。なお、fはFFT処理のbin番号に対応する。すると、スペクトラム成分のピークの変動Δ(k,f)は、
【数3】

【0026】
と表される。信号検出部44は、Δ(k,f)の符号が正であり、Δ(k,f)の絶対値が閾値を超える場合に、変調信号が出現したと判定する。同様に、信号検出部44は、Δ(k,f)の符号が負であり、Δ(k,f)の絶対値が閾値を超える場合に、変調信号が消滅したと判定する。なお、この判定方法は、一実施例であり、他の手法を適用しても構わない。信号検出部44は、変調信号が出現又は消滅した旨を示す出現/消滅情報を後段へ出力する。また、信号検出部44は、中央のスペクトラム成分と、両脇のスペクトラム成分との差に基づき、ボーレートを取得し、このボーレートに関する情報を後段へ出力するようにしても良い。なお、閾値は、固定値であっても、変動値であっても構わない。
【0027】
次に、上記構成の信号処理部40によるスペクトラム分析のシミュレーション結果を示す。
【0028】
図2は、A/D変換部30から信号処理部40へ出力されるデジタル信号の一例を示す図である。図2において、変調信号は、8PSKで変調され、ロールオフ率αは0.5であり、CNRは−10[dB]である。
【0029】
スライディングバッファ部41は、Mサンプルずつスライディングさせながら、図2に示すデジタル信号のサンプルをNサンプルずつ非線形処理部42へ出力する。非線形処理部42は、スライディングバッファ部41からのNサンプルの信号に対して、式(2)に示す非線形処理を実行する。非線形処理の算出結果は、FFT処理部43でFFT処理される。図3は、非線形処理の算出結果に対してFFT処理を施した際のスペクトラム分析結果を示す図である。図3に示すように、中央のスペクトラム成分と、この中央のスペクトラム成分の両脇のスペクトラム成分とが検出されることがわかる。なお、前述の通り、中央のスペクトラム成分と、両脇のスペクトラム成分との差は、ボーレートに対応する量となる。
【0030】
以上のように、上記第1の実施形態では、スライディングバッファ部41により、Nサンプルの信号を出力し、非線形処理部42により非線形処理を行なった後、FFT処理部43でFFT処理をするようにしている。FFT処理により受信周波数が狭小化され、かつ、受信周波数帯域内での受信エネルギーが平均化されるため、非線形処理が施されたデジタル信号の信号成分を強調し、雑音成分を抑圧することが可能となる。これにより、CNRが低い信号を受信した場合であっても、信号検出部44へは、信号成分が強調され、かつ、雑音成分が抑圧されたスペクトラム分析結果が供給されることとなる。
【0031】
また、上記第1の実施形態では、スライディングバッファ部41により、連続するN個のサンプルを一群とするNサンプルの信号を、M個のサンプルずつスライディングさせながら非線形処理部42へ出力するようにしている。これにより、FFT出力の各ビンの帯域幅やサンプリングレート等をコントロールすることが可能である。
【0032】
したがって、第1の実施形態に係る受信装置によれば、CNRが低い場合又はCNRがマイナスである場合であっても、信号を検出することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係わる受信装置の構成を示すブロック図である。図4に示す受信装置は、アンテナ10、RF変換部20、A/D変換部30及び信号処理部50を具備する。図4において図1と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分について説明する。
【0034】
信号処理部50は、例えばマイクロプロセッサからなるCPUを備えたもので、アプリケーション・プログラムを上記CPUに実行させることにより以下の機能を有する。すなわち、信号処理部50は、帯域分割処理部58、非線形処理部541〜54n、FFT処理部551〜55n、信号検出部561〜56n及び検出判定部57を備える。
【0035】
帯域分割処理部58は、スライディングバッファ部51、窓関数処理部52及び帯域分割部53を備える。
【0036】
スライディングバッファ部51は、連続するN個のサンプルを一群とするNサンプルの信号を、M個のサンプルずつスライディングさせながら窓関数処理部52へ出力する。これにより、帯域分割部53による帯域分割の周波数間隔、及び、帯域分割後のサンプリング周波数を調整することが可能となる。
【0037】
窓関数処理部52は、スライディングバッファ部51からのNサンプルの信号に対して所定の窓関数を乗算する。ここで、所定の窓関数は、帯域分割部53でのFFT処理により、Nサンプルの信号に対して周波数変換処理及びローパスフィルタ処理が行われるような特性を有する。窓関数処理部52は、窓関数を掛けたNサンプルの信号を帯域分割部53へ出力する。
【0038】
帯域分割部53は、FFTフィルタバンクにより構成される。帯域分割部53は、窓関数処理部52からのNサンプルの信号に対してFFT処理を行い、Nサンプルの信号に対する周波数変換処理及びローパスフィルタ処理が行われるようにする。これにより、受信周波数が、予め設定された幅の複数の周波数帯域に分割されることになる。このとき、各周波数帯は、隣り合う周波数帯と、周波数の一部がオーバラップするようになっている。
【0039】
帯域分割部53には、周波数帯域毎に非線形処理部541〜54nが接続されており、FFT処理後のデータが非線形処理部541〜54nのいずれかへ供給される。
【0040】
図4に示す受信装置では、帯域分割部53により、受信周波数がn個の周波数帯域に分割されるように設定されている。非線形処理部541〜54n、FFT処理部551〜55n及び信号検出部561〜56nは、帯域分割部53で分割された周波数帯域毎に設置される。非線形処理部541〜54n、FFT処理部551〜55n、信号検出部561〜56nの動作はそれぞれ同様であるため、以下では、非線形処理部541、FFT処理部551及び信号検出部561について説明する。
【0041】
非線形処理部541は、帯域分割部53からのNサンプルの信号に対して非線形処理を行う。非線形処理部541は、非線形処理により得られた算出結果をFFT処理部551へ出力する。
【0042】
FFT処理部551は、入力された信号に対して直交変換を行う直交変換部の一例である。FFT処理部551は、非線形処理部541からの算出結果に対して、FFT処理を行う。このFFT処理により、算出結果の周波数帯域が狭小化され、算出結果が平均化されることとなる。
【0043】
信号検出部561は、FFT処理部551からのスペクトラム分析結果に基づいて、検出情報を作成する。具体的には、信号検出部561は、k番目のNサンプルの信号についてのスペクトラム成分における有意なピークの値psd(k,f)、及び、スペクトラム成分のピークの変動Δ(k,f)を検出情報として作成し、検出判定部57へ出力する。なお、fはFFT処理のbin番号に対応する。
【0044】
検出判定部57は、信号検出部561〜56nからの検出情報に基づいて、変調信号の出現又は消滅、変調信号の帯域幅及び変調信号の出現周波数を推定する。
【0045】
例えば、検出判定部57は、Δ(k,f)に基づき、Δ(k,f)の符号が正であり、Δ(k,f)の絶対値が閾値を超える場合に、変調信号が出現したと判定する。同様に、信号検出部44は、Δ(k,f)の符号が負であり、Δ(k,f)の絶対値が閾値を超える場合に、変調信号が消滅したと判定する。また、検出判定部57は、周波数帯域がオーバラップしている部分については、オーバラップしている周波数帯域間でΔ(k,f)を算術平均し、その算術平均した結果を用いてスペクトラム成分の変化量を検出することで変調信号の出現/消滅を判定する。検出判定部57は、出現/消滅情報を後段へ出力する。
【0046】
また、検出判定部57は、信号検出部561〜56nからのΔ(k,f)の最大ピークから周波数軸方向に対してX[dB]低下する点を周波数帯域の両側から周波数方向にサーチし、発見した点間の幅を、変調信号の帯域幅として推定する。また、検出判定部57は、周波数帯域がオーバラップしている部分に関しては、オーバラップしている周波数帯域のΔ(k,f)を算術平均し、算術平均したΔ(k,f)の最大ピークからX[dB]低下する点を周波数帯域の両側から周波数方向にサーチする。そして、発見した点間の幅を、変調信号の帯域幅として推定する。検出判定部57は、帯域幅情報を後段へ出力する。
【0047】
また、検出判定部57は、Δ(k,f)の最大ピークからX[dB]低下する点を変調信号の出現周波数として推定する。また、検出判定部57は、周波数帯域がオーバラップしている部分に関しては、オーバラップしている周波数帯域のΔ(k,f)を算術平均し、算術平均したΔ(k,f)の最大ピークからX[dB]低下する点を変調信号の出現周波数として推定する。検出判定部57は、出現周波数情報を後段へ出力する。
【0048】
また、信号検出部561は、中央のスペクトラム成分と、両脇のスペクトラム成分との差についての情報を検出判定部57へ出力しても構わない。検出判定部57は、スペクトラム間の差についての情報に基づき、ボーレートを推定する。
【0049】
以上のように、上記第2の実施形態では、帯域分割部53により受信周波数を複数の周波数帯域に分割し、周波数帯毎にNサンプルの信号に対して非線形処理を行い、非線形処理の算出結果に対してFFT処理を行うようにしている。FFT処理により受信周波数が狭小化され、かつ、受信周波数帯域内での受信エネルギーが平均化されるため、非線形処理が施されたデジタル信号の信号成分を強調し、雑音成分を抑圧することが可能となる。これにより、CNRが低い信号を受信した場合であっても、信号検出部561〜56nへは、信号成分が強調され、かつ、雑音成分が抑圧されたスペクトラム分析結果が供給されることとなる。これにより、各周波数帯域単位で変調信号の出現及び消失を判定することが可能となる。
【0050】
また、上記第2の実施形態では、各周波数帯域でスペクトラム分析を行うようにしている。これにより、変調信号が出現した周波数帯、及び、出現した変調信号の帯域幅を推定することが可能となる。
【0051】
また、第2の実施形態では、非線形処理部541〜54n、FFT処理部551〜55n及び信号検出部561〜56nは、周波数帯域毎に各処理を行う。これにより、電波に複数の周波数帯域の変調信号が含まれている場合であっても、各周波数帯域で検出することが可能となる。
【0052】
また、第2の実施形態では、各周波数帯域は隣り合う周波数帯域と、一部の周波数がオーバラップするように設定されている。そして、検出判定部57は、オーバラップしている周波数については、スペクトラムの状態を算術平均し、算術平均した結果を用いて変調信号の出現/消滅を判定するようにしている。これにより、変調信号の出現帯域が、複数の周波数帯域に及ぶ場合であっても、変調信号の出現/消滅を判定することが可能となる。
【0053】
したがって、第2の実施形態に係る受信装置によれば、CNRが低い場合又はCNRがマイナスである場合であっても、信号を検出することができる。
【0054】
なお、第2の実施形態に係る受信装置では、帯域分割処理部58は、スライディングバッファ部51、窓関数処理部52及び帯域分割部53を備え、デジタル信号を複数の周波数帯域に分割する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定される訳ではない。例えば、帯域分割処理部58は、スライディングバッファ部51、窓関数処理部52及び帯域分割部53の代わりに、複数の直交検波器と複数のLPF(Low Pass Filter)とを備えていても構わない。
【0055】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
10…アンテナ
20…RF変換部
30…A/D変換部
40,50…信号処理部
41,51…スライディングバッファ部
42,541〜54n…非線形処理部
43,551〜55n…FFT処理部
44,561〜56n…信号検出部
52…窓関数処理部
53…帯域分割部
57…検出判定部
58…帯域分割処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調信号を含む電波を受信するアンテナと、
前記電波を予め設定された周波数のベースバンド信号へ変換するRF変換部と、
前記ベースバンド信号をデジタル信号へ変換するアナログ−デジタル変換部と、
前記デジタル信号を一時的に保持し、第1のサンプル数のサンプル群を、第2のサンプル数ずつずらしながら出力するスライディングバッファ部と、
前記スライディングバッファ部からのサンプル群に対して非線形処理を行う非線形処理部と、
前記非線形処理部からの処理信号に対して直交変換を行うことで、前記変調信号の信号成分を強調し、かつ、雑音成分を抑圧したスペクトラム分布を作成する直交変換部と、
前記スペクトラム分布に基づいて前記変調信号の出現又は消失を判定する信号検出部と
を具備することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記直交変換部は、FFT(Fast Fourier Transform)処理を行うことで、前記直交変換を行うことを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
変調信号を含む電波を受信するアンテナと、
前記電波を予め設定された周波数のベースバンド信号へ変換するRF変換部と、
前記ベースバンド信号をデジタル信号へ変換するアナログ−デジタル変換部と、
受信周波数を複数の周波数帯域に分割し、前記デジタル信号を前記複数の周波数帯域のうちいずれかへ割り当てる帯域分割処理を行う帯域分割処理部と、
前記複数の周波数帯域毎に設置され、前記複数の周波数帯域毎に割り当てられたデジタル信号に対して非線形処理を行う複数の非線形処理部と、
前記複数の非線形処理部毎に設置され、前記非線形処理が施された処理信号に対して直交変換を行うことで、前記変調信号の信号成分を強調し、かつ、雑音成分を抑圧したスペクトラム分布を作成する複数の直交変換部と、
前記複数の直交変換部毎に設置され、前記スペクトラム分布に基づいて検出情報を作成する複数の信号検出部と、
前記複数の信号検出部それぞれから前記検出情報を受け取り、前記複数の検出情報に基づいて前記変調信号の出現又は消失を判定する検出判定部と
を具備することを特徴とする受信装置。
【請求項4】
前記直交変換部は、FFT処理を行うことで、前記直交変換を行うことを特徴とする請求項3記載の受信装置。
【請求項5】
前記帯域分割処理部は、
前記デジタル信号を一時的に保持し、第1のサンプル数のサンプル群を、第2のサンプル数ずつずらしながら出力するスライディングバッファ部と、
前記スライディングバッファ部からのサンプル群に対して予め設定された窓関数を乗算する窓関数処理部と、
前記窓関数処理部からのサンプル群に対してFFT処理を行うことで、前記サンプル群に対して前記帯域分割処理を行う帯域分割部と
を備えることを特徴とする請求項3記載の受信装置。
【請求項6】
前記帯域分割処理部は、前記複数の周波数帯域のうち隣接する周波数帯同士の一部の周波数が互いにオーバラップするように設定し、
前記検出判定部は、オーバラップした周波数における検出情報を算術平均して前記変調信号の出現又は消失を判定することを特徴とする請求項3記載の受信装置。
【請求項7】
変調信号を含む電波を受信するアンテナと、
前記電波を予め設定された周波数のベースバンド信号へ変換するRF変換部と、
前記ベースバンド信号をデジタル信号へ変換するアナログ−デジタル変換部と、
前記デジタル信号に対して信号判定処理を行う信号処理部と
を具備する受信装置で用いられる信号判定プログラムであって、
前記デジタル信号を一時的に保持し、第1のサンプル数のサンプル群を、第2のサンプル数ずつずらしながら出力する処理と、
前記第1のサンプル数のサンプル群に対して非線形処理を行う処理と、
前記非線形処理が施された処理信号に対して直交変換を行うことで、前記変調信号の信号成分を強調し、かつ、雑音成分を抑圧したスペクトラム分布を作成する処理と、
前記スペクトラム分布に基づいて前記変調信号の出現又は消失を判定する処理と
を前記信号処理部のコンピュータに実行させることを特徴とする信号判定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−191413(P2012−191413A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52809(P2011−52809)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】