受信装置
【課題】本発明は、SLBを用いることなく、間欠妨害波を抑圧可能な受信装置を提供する。
【解決手段】A/D変換された受信信号を時間軸上で順次記憶するメモリ13,23を備え、妨害波検出器5で検出した妨害波の占める時間の、範囲設定器8で設定した単位時間T内に占める比率が予め設定された値を超えたとき、制御器7は、その単位時間T内の検出妨害波に対応した受信ディジタル信号により、妨害波抑圧のウェイト値を算出するようにSLC6を制御する。
従って、パルス状の間欠妨害波でも、それが高い頻度で到来し受信される場合は、SLC6は、算出されたウェイト値に基づきヌル点を形成するように作用するので、受信ブランクを回避した間欠妨害波抑圧が行われ、目標信号検出が遮断されたり、間欠妨害波により受信が不安定となるのを回避できる。
【解決手段】A/D変換された受信信号を時間軸上で順次記憶するメモリ13,23を備え、妨害波検出器5で検出した妨害波の占める時間の、範囲設定器8で設定した単位時間T内に占める比率が予め設定された値を超えたとき、制御器7は、その単位時間T内の検出妨害波に対応した受信ディジタル信号により、妨害波抑圧のウェイト値を算出するようにSLC6を制御する。
従って、パルス状の間欠妨害波でも、それが高い頻度で到来し受信される場合は、SLC6は、算出されたウェイト値に基づきヌル点を形成するように作用するので、受信ブランクを回避した間欠妨害波抑圧が行われ、目標信号検出が遮断されたり、間欠妨害波により受信が不安定となるのを回避できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、妨害波抑圧機能を備え、レーダ機器等に採用して好適な受信装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイアンテナを備えたレーダ機器等における受信装置では、強い妨害波を抑圧ないしは除去し、微弱な所望受信信号を抽出し出力するために、サイドローブキャンセラー(SLC)やサイドローブブランカ(SLB)が組み込み採用される。(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
SLC及びSCBを備えた受信装置は、図8に示したように、アレイアンテナからなる主アンテナ11及び補助アンテナ21の出力が、それぞれ対応する主受信器12及び補助受信器22を介してSLC3に供給され、SLC3及び補助受信器22の各出力がSLB4に供給されるように構成されている。
【0004】
SLC3は、図9(a)に示した主アンテナ11におけるアンテナパターン1Aのサイドローブに連続妨害波Jcが到来したとき、補助アンテナ21のアンテナパターン2Aに対するウェイト制御により、アンテナパターン2Aの利得が主アンテナ11のサイドローブにおける利得に近づき、図9(b)に示したように、一致したときの減算により、連続妨害波Jc到来方向にヌル点が形成され、連続妨害波Jcは抑圧ないしは除去される。
【0005】
図10(a),(b)は、上記SLC3における連続妨害波Jcの抑圧操作を説明したもので、図10(a)に示したように、アンテナパターン1Aの主ローブにおける目標信号S1,S2よりも大きなレベルで連続妨害波Jcがサイドローブで同様に受信されたとしても、SLC3におけるウェイト制御によりヌル点が形成されるから、図10(b)に示したように、連続妨害波Jcは抑圧され、振幅レベルが小さく、微弱な目標信号S1,S2を検出できる。なお、アンテナパターン2Aに対するウェイト値の算出は、フィードバック制御によるものであるから、収束し、ヌル点が深く形成されるまでには若干時間を要する。
【0006】
次に、図11(a)に示したように、アンテナパターン1Aのサイドローブに到来するパルス状の間欠妨害波Jpに対しては、収束に時間を要するSLC3では、効果的な抑圧を受けることなく出力され、SLB4に供給される。
【0007】
SLB4は、図8に示したように、比較回路41とスイッチング回路42とで構成される。
【0008】
図11(b)は、SLC3から出力されSLB4に供給される主チャンネル(主CH)信号を示したものであり、図11(c)は、補助受信器22からSLB4に供給される補助チャンネル(補助CH)信号を示したものである。
【0009】
比較回路41はSLC3からの主チャンネル信号と、補助受信器22からの補助チャンネル信号とのアンテナ利得差に基づく振幅レベルの比較から、間欠妨害波Jpを検出し、スイッチング回路42をOFF動作させるので、図11(d)に示したように、SLC3を通過したパルス妨害、すなわち間欠妨害波Jpを遮断(カット)して、目標信号S1を出力する。
【0010】
なお、図9ないし図11では、主アンテナ11と補助アンテナ21とをそれぞれ設け、SLC3は、補助アンテナ21のアンテナパターン2Aに対するウェイト制御を行うように構成されているが、良く知られているように、アレイアンテナ自体を主及び補助に区別しないアダプティブアレイにおいては、アダプティブ演算によるSLC信号処理により連続妨害波の抑圧が可能である。
【0011】
図12は従来のアダプティブアレイアンテナを備えた受信装置の構成図で、複数のアレイアンテナ111,112,113,・・・11Nにそれぞれ受信器121,122,123,・・・12Nが対応接続され、各受信器121,122,123,・・・12Nからの各チャンネル受信信号CH1,CH2,CH3,・・・CHNがアダプティブ処理器3Aに供給され、アダプティブ処理器3AにおけるSLC処理、すなわちウェイト値の算出と算出されたウェイト値に基づくウェイト制御により連続妨害波Jcは抑圧される。
【0012】
なお、アダプティブ処理器3Aにおいて採用される妨害波抑圧アルゴリズムとして、例えばMSN(最大SN法)やグラムシュミットが知られている。(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照。)。
【0013】
すなわち、MSNによるアダプティブ演算においては、W(n)をn番目の反復回数のウェイト(n=1〜N)とし、出力をYoutとしたとき、W(n)のYoutは下記(1)式で得られる。
【数1】
但し、
g; 利得
a; 利得
Xin; 補助CH信号(複素信号I+jQ)
Yin; 主CH信号(複素信号I+jQ)
を表す。
【0014】
なお、上記アダプティブ演算では、直接解方式の一つであるSMI(Sampled Matrix Inversion)法も採用することができる。(例えば、非特許文献4参照。)。
【非特許文献1】吉田 孝 監修「改訂レーダ技術」 電子情報通信学会 (平成8年10月1日) pp.295−296
【非特許文献2】菊間信良著 「アレーアンテナによる適応信号処理」科学技術出版(1999) pp.67−86
【非特許文献3】Alfonso Farina著.「 Antenna-Based Signal Processing Techniques for Radar Systems 」 Artech House(1992)
【非特許文献4】菊間信良著 「アレーアンテナによる適応信号処理」科学技術出版(1999) pp.35−37,98−99
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の受信装置において、SLC3でのアンテナパターンに対するヌル点形成により連続妨害波は抑制され、SLC3を通過したパルス状の間欠妨害波は、SLB4におけるスイッチング操作により除去される。
【0016】
しかしながら、上記従来の受信装置のSLB4におけるスイッチング動作は、比較回路41における主CHの妨害波と補助CHの妨害波との振幅レベルでの比較動作によるので、パルス状の間欠妨害波が高い頻度で到来する環境のもとでは、比較回路41が誤動作しやすく、また微妙なレベル差に起因して不安定なバタツキ現象が生ずる。その上、間欠妨害波は、受信装置における信号出力そのものをOFFさせるものであるから、高頻度での間欠妨害波の受信は、目標信号の受信動作に長いブランク(OFF)を発生させるので改善が要望されていた。
【0017】
そこで本発明は、間欠妨害波が高い頻度で継続的に受信される状況のもとにおいても、目標信号に対する受信期間にブランクを生じさせることなく、また、安定して間欠妨害波を抑圧可能な受信装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の受信装置は、到来した電波を受信するアレイアンテナと、このアレイアンテナに接続され、各アンテナからの受信信号をA/D変換する受信器と、この受信器でA/D変換された受信信号を時間軸上で順次記憶する記憶手段と、前記受信器でA/D変換された受信信号を検波し、その検波出力レベルが予め設定された閾値レベルを越えた信号を検出する検出手段と、この検出手段により検出された信号の単位時間に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、その基準値を超えたときの単位時間に対応する前記受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧のウェイト値を算出するように制御する制御手段と、この制御手段の制御により算出されたウェイト値を設定して、前記記憶手段から読み出された前記受信信号に対する妨害波抑圧操作を行う妨害波抑圧手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明の受信装置は、A/D変換された受信信号を時間軸上で順次記憶する記憶手段を有し、受信信号に含む妨害波を検出するとともに、制御手段がその検出された妨害波に関し、単位時間内における妨害波の占める比率が基準値を超えたとき、その基準値を超えた時間範囲内の受信信号に基づくウェイト値を算出するように制御信号を出力し、妨害波抑圧手段は、制御手段からの制御により算出したウェイト値を設定して妨害波抑圧する。
【0020】
このように、本発明の受信装置において、妨害波抑圧手段は、パルス状の間欠妨害波が高頻度で受信された場合は、制御手段から高頻度の受信信号のデータに基づくウェイト値に設定し、到来方向へのヌル点形成により妨害波を抑圧するので、受信OFF(ブランク)を回避して所望の目標信号を検出でき、連続妨害波はもとより、引き続き継続的に到来する間欠妨害波圧を適切に抑圧できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明による受信装置の第1の実施例を図1ないし図7を参照して詳細に説明する。なお、図8ないし図12に示した従来の受信装置と同一構成には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0022】
図1において、アレイアンテナからなる主アンテナ11で順次受信された受信信号(主CH信号)は、主受信器12に供給され、ここで周波数変換後及びA/D変換されて量子化受信ディジタル信号に変換され、記憶手段である主メモリ13、及び検出手段である妨害波検出器5に順次供給される。
【0023】
時間軸に沿って、主メモリ13に一旦記憶された受信ディジタル信号は、後述するタイミングで順次読み出され、SLC6の減算回路61及びウェイト演算回路62に供給される。
【0024】
一方、アレイアンテナからなる補助アンテナ21で受信された受信信号(補助CH信号)は補助受信器22に供給され、ここで周波数変換後及びA/D変換されて量子化受信ディジタル信号に変換され、記憶手段である補助メモリ23に供給され、同様に時間軸上に沿って順次記憶される。補助メモリ23に一旦記憶された受信ディジタル信号は、上記主メモリ13に同期したタイミングで順次読み出され、SLC6のウェイト演算回路62及び乗算回路63に供給される。
【0025】
主受信器12から受信ディジタル信号が供給される妨害波検出器5は、IQ検波回路と閾値(スレショルド)レベルL設定回路とを備え、IQ検波回路は、主受信器12からの受信ディジタル信号に対し、下記(2)式を用いて受信ディジタル信号のIQ検波信号Dを得て閾値レベルL設定回路に供給する。
【0026】
IQ検波信号Dの供給を受けた閾値レベルL設定回路は、通常の目標信号Sの受信レベルよりは高い閾値レベルLを設定し、その設定された閾値レベルLを越えた妨害波のIQ検波信号Dを検出して、図1に示した制御器7に供給する。
【数2】
但し、
I;I検波信号(複素信号の実部)
Q;Q検波信号(複素信号の虚部)
を表す。
【0027】
すなわち、妨害波検出器5は、受信ディジタル信号に含む閾値レベルLを超えた電圧の妨害波を逐次検出して制御器7に供給する。
【0028】
なお、上記(2)式において、IQ検波信号Dは、I検波信号の二乗とQ検波信号の二乗の和の平方根により、電圧の次元で検出したが、単にI検波信号の二乗とQ検波信号の二乗の和の、電力の次元で検出しても良い。また、I検波信号とQ検波信号のうちの少なくともいずれか一方を検出信号として出力しても良く、さらに妨害波検出器5は主CHからではなく、補助CH(補助受信器22)の受信信号から妨害波を検出するようにしても良い。
【0029】
そこで制御器7には、図1に示したように、範囲設定器8が接続されている。
【0030】
範囲設定器8は、SLC6のウェイト演算回路62がウェイト演算を行う時間範囲の長さを予め単位時間Tとして設定し、制御手段の制御器7に供給する。
【0031】
制御器7は、妨害波検出器5から順次供給される検出信号について、範囲設定器8から供給される単位時間Tに占める比率が予め定められた基準値Rt(例えば、単位時間Tに対して70%)を超えたとき、その基準値Rtを超えた前記単位時間Tに対応する受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧のウェイト値を算出するように、読み出し制御信号を主メモリ13及び補助メモリ23に、また演算制御信号をウェイト演算回路62に供給する。
【0032】
すなわち、制御器7は、妨害波検出器5から順次供給される検出信号に対し、範囲設定器8で設定された単位時間Tを時間軸に沿って順次スライドさせつつ、閾値レベルLを超えて単位時間T内に存在する受信信号(すなわち連続妨害波あるいは複数間欠妨害波)の時間の合計時間Σtをカウント(計数)し、その合計時間Σtが基準値Rtを超えたときに、すなわち個々の妨害波はパルス状であっても、間欠妨害波のつながりから連続妨害波であるとみなして演算するようにSLC6を制御する。
【0033】
従って、合計時間Σtが基準値Rtを超えた(Σt>Rt)とされたときのウェイト演算回路62におけるウェイト値の演算は、時刻を遡り、主メモリ13及び補助メモリ23に記憶された各受信ディジタル信号の信号データに基づき行われる。
【0034】
従ってまた、算出されたウェイト値によるSLC6における妨害波抑圧は、制御器7による主メモリ13及び補助メモリ23からの各受信ディジタル信号の読み出し制御に同期して実行される。
【0035】
妨害波抑圧手段であるSLC6のウェイト演算回路62は、範囲設定器8で設定された単位時間Tにおける間欠妨害波に占める比率から、高頻度で到来する間欠妨害波に関しては、主メモリ13及び補助メモリ23から読み出された各対応する受信信号に基づきウェイト値を算出する。
【0036】
このように、ウェイト演算回路62は、たとえ間欠妨害波であっても、高い頻度で到来する状況のもとでは、それらが連なって連続した妨害波(連続妨害波)であるかのようにしてウェイト値が算出され設定される。そして、SLC6は、その設定されたウェイト値により、間欠妨害波の到来方向へのヌル点形成を行うように作用するので、当該間欠妨害波はもとより、引き続き受信される間欠妨害波を的確に抑圧することができる。
【0037】
図2は、図1に示した受信装置における間欠妨害波抑圧動作の説明図である。
【0038】
すなわち、妨害波検出器5において、図2(a)に示したように、閾値レベルL以上の間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・が検出され、制御器7に供給されたとき、制御器7は、順次供給される間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・の占める時間長の、範囲設定器8により設定された単位時間Tでの比率が基準値(例えば、70%)を超えるか否か判定する。
【0039】
図2(a)では、単位時間Tでの間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3aの占める時間長、すなわち合計時間Σtが基準値(例えば、70%)を超えた状態を表したもので、このとき制御器7は、制御信号をSLC6のウェイト演算回路62及び主メモリ13及び補助メモリ23に供給する。
【0040】
ウェイト演算回路62は、制御器7からの制御信号を受け、同じく制御器7からの制御信号により同期して読み出された主メモリ13及び補助メモリ23からの受信信号、すなわち図2(b)に示した間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3aに対応した受信ディジタル信号の供給により、ウェイト値を算出し乗算回路63に供給する。
【0041】
その結果、SLC6は、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3aの到来方位においてヌル点が形成されるように、補助CHの信号(パターン)に対するウェイト制御が行われるので、図2(b)に点線Jcsで示した妨害波抑圧特性曲線が得られ、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3a,・・・は、その方位における全レンジセルにわたり、抑圧特性曲線に沿い抑圧される。
【0042】
なお、図2では、受信装置がレーダに組み込まれ、妨害波の受信がレーダの送信繰り返し周期(PRI)tに対応したタイミングで受信され、抑圧のための妨害波検出をレンジセル毎に行うことを示している。
【0043】
上記実施例において、妨害波検出器5は、IQ検波回路を採用し、IQ検波信号Dを得て閾値レベルL設定回路に供給する旨説明したが、上記(2)式に代え、下記(3)式を用いてIQmaxを算出し、算出したIQmaxを閾値レベルL設定回路に供給して、閾値レベル(スレッシヨルドレベル)Lを超える妨害波を検出しても良い。
【数3】
但し、
max ;最大値
abs ;絶対値(符号ビット以外の絶対値)
thr(*) ;*が閾値レベルLを越えた範囲(*=IQmax)
を表している。
また、上記(3)式におけるIQregionは、下記(4)式を用いて算出しても良い。
【数4】
を表している。
【0044】
また、図1及び図2を参照して説明したように、上記実施例のSLC6は、補助CH信号に対するウェイト制御を、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3a,・・・の到来方位の全レンジセルにわたり継続的して行なわれる旨説明したが、SLC6を図3に示したように構成することで、ウェイト演算回路62において算出されたウェイト値をウェイト制御の初期値として設定するとともに、補助CH伝送路及び出力帰還伝送路にそれぞれ間引き回路64,65を介挿接続することもできる。
【0045】
図3に示した構成のSLC6によれば、間引き回路64,65に対し、適宜のタイミングによるレンジセルの間引き操作により、フィードバックループによるウェイト制御の演算量を削減し、演算処理における負担軽減を図ることができる。
【0046】
次に、上記第1の実施例では、検出手段である妨害波検出器5は、主受信器12から出力される受信ディジタル信号を取り込み検波するとともに、その検波出力の振幅レベルが予め設定された閾値レベルLを越えた信号を妨害波として検出し、制御手段である制御器7は、供給された検出信号の予め設定された長さの単位時間Tに占める比率が基準値を超えたとき、その基準値を超えた単位時間Tに対応した受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出したが、制御器7は、単位時間Tを超えて拡張された時間内での検出信号を単位時間T内に再配列させ、その再配列により妨害波が占めた時間長の単位時間T内に占める比率が基準値を超えたとき、再配列された各検出信号に対応する受信ディジタル信号のデータに基づいて、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出するようにしても良い。
【0047】
すなわち、制御手段が、単位時間Tを越えた時間内での検出信号を単位時間T内に再配列させ、その再配列によって占められた時間長の単位時間T内に占める比率が基準値を超えたとき、再配列された各検出信号に対応する受信ディジタル信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出する本発明にかかる受信装置の第2の実施例を図4ないし図6を参照して説明する。なお、第1の実施例と同一構成には同一符号を付して詳細な説明は省略し、相違点のみを特に説明する。
【0048】
第2の実施例に係る受信装置は、図4に示したように、主メモリ13とSLC6、及び補助メモリ23とSLC6との間に、それぞれ再配列手段である連結(または加算)回路14,24を挿入し、主メモリ13及び補助メモリ23から出力されSLC6に供給される主CH信号及び補助CH信号が、ウェイト値の算出時に、制御器7により制御される連結(または加算)回路14,24の動作を経てSLC6に供給する。
【0049】
すなわち、妨害波検出器5において、図5に示したように、閾値レベルL以上の間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・が検出され、順次制御器7に供給されるとき、制御器7は、供給される間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・に対し、範囲設定器8により設定された単位時間Tを超えた、例えばその整数倍の時間で検出される妨害波を単位時間T内に再配列させ、その再配列によって占められた時間長の単位時間T内に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、再配列された検出信号に対応する受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出するように制御するものである。
【0050】
図5に示したパターンでは、単位時間Tの3倍の時間長さにわたり、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・が閾値レベルLを超えて検出され、それらを単位時間T内の時間軸に沿って縦続して連結するように再配列させたもので、その再配列による妨害波の占める時間長の単位時間T内に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、再配列に供された検出信号(妨害波)に対応した受信ディジタル信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出するように制御される。
【0051】
もちろん、制御器7は、算出されたウェイト値による、主メモリ13及び補助メモリ23からの受信ディジタル信号の読み出しによる妨害波抑圧操作を、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・に対しても行うものとすれば、制御器7は、再配列によるウェイト値算出に要する時間だけ、読み出しタイミンの調整が行われてSLC6に供給される。
【0052】
上記説明は、連結(または加算)回路14,24が連結回路である場合を説明したが、連結(または加算)回路14,24を加算回路で構成した場合は、図6に示したように、単位時間Tにおける時刻位置で、各信号(対応する欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・)を重畳加算するものであり、この重畳加算によっても、同様な作用効果を得ることができる。
【0053】
このように、第2の実施例は、単位時間TをPRI(t)単位に対応させつつ、妨害波検出範囲を拡張することで、PRI(t)を超えた領域の妨害波を連結あるいは加算による再配列を行うことで、抑圧すべき間欠妨害波を検出し、ウェイト制御によるヌル点形勢により妨害波を全レンジセルにわたって抑圧することができる。
【0054】
また、上記第1及び第2の各実施例では、受信装置は、主アンテナ11と補助アンテナ21を設け、SLC3は、補助アンテナ21におけるアンテナパターン2Aに対するウェイト制御を行うように構成したが、本発明は、主アンテナと補助アンテナには区別しないアンテナ構成のアダプティブアレイの受信装置にも適用できる。
【0055】
すなわち、アダプティブアレイによる本発明の第3の実施例に係る受信装置を、上記第1の実施例の図1に対応した図を、図7に示して説明する。
【0056】
図7に示したアダプティブアレイからなる受信装置においても、従来と同様に、アダプティブな演算による信号処理により、SLCによる連続妨害波抑圧が可能である。
【0057】
第3の実施例に係る受信装置は、図示のように、各CHの受信器121,122,・・・12Nに対応接続された各メモリ131,132,・・・13Nを介してアダプティブ処理器6Aに接続されて構成され、妨害検出器5は、受信器121でA/D変換された受信信号を検波するとともに、その検波出力の振幅レベルが予め設定された閾値レベルを越えた信号を検出し、制御器7に供給する。
【0058】
制御器7は、範囲設定器8で予め設定された単位時間Tに占める妨害波検出器5からの検出信号の比率が予め定められた基準値を超えたとき、その基準値を超えた単位時間Tに対応する受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御の初期ウェイト値を算出し、以後順次、ウェイト値を更新することで、妨害方向に対して深いヌルを形成するように制御する。
【0059】
従って、図7に示した受信装置においても、連続妨害波はもとより、継続的に受信されるパルス状の間欠妨害波をもアンテナパターンのヌル点形成により的確に抑圧できる。
【0060】
なお、図7に示した構成では、従来と同様に、アダプティブ処理演算でのウェイト値の算出にはMSN(最大SN法)やグラムシュミットの妨害波抑圧アルゴリズムを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による受信装置の第1の実施例を示した構成図である。
【図2】図1に示した受信装置の動作説明図である。
【図3】図1に示したSLCの他の回路構成図である。
【図4】本発明による受信装置の第2の実施例を示した構成図である。
【図5】図4に示した受信装置における第1例の動作説明図である。
【図6】図4に示した受信装置における第2例の動作説明図である。
【図7】本発明による受信装置の第3の実施例を示した構成図である。
【図8】従来の受信装置を示した構成図である。
【図9】図8に示した受信装置のSLCの動作説明図である。
【図10】図9に示した動作における信号波形図である。
【図11】図8に示した受信装置のSLBの動作説明図である。
【図12】従来の他の受信装置の構成図である。
【符号の説明】
【0062】
11 主アンテナ
12 主受信器
13 主メモリ(記憶手段)
14 連結(または加算)回路(再配列手段)
21 補助アンテナ
22 補助受信器
23 補助メモリ(記憶手段)
24 連結(または加算)回路(再配列手段)
5 妨害波検出器(妨害波検出手段)
6 SLC(妨害波抑圧手段)
6A アダプティブ処理器(妨害波抑圧手段)
7 制御器(制御手段)
8 範囲設定器(制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、妨害波抑圧機能を備え、レーダ機器等に採用して好適な受信装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイアンテナを備えたレーダ機器等における受信装置では、強い妨害波を抑圧ないしは除去し、微弱な所望受信信号を抽出し出力するために、サイドローブキャンセラー(SLC)やサイドローブブランカ(SLB)が組み込み採用される。(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
SLC及びSCBを備えた受信装置は、図8に示したように、アレイアンテナからなる主アンテナ11及び補助アンテナ21の出力が、それぞれ対応する主受信器12及び補助受信器22を介してSLC3に供給され、SLC3及び補助受信器22の各出力がSLB4に供給されるように構成されている。
【0004】
SLC3は、図9(a)に示した主アンテナ11におけるアンテナパターン1Aのサイドローブに連続妨害波Jcが到来したとき、補助アンテナ21のアンテナパターン2Aに対するウェイト制御により、アンテナパターン2Aの利得が主アンテナ11のサイドローブにおける利得に近づき、図9(b)に示したように、一致したときの減算により、連続妨害波Jc到来方向にヌル点が形成され、連続妨害波Jcは抑圧ないしは除去される。
【0005】
図10(a),(b)は、上記SLC3における連続妨害波Jcの抑圧操作を説明したもので、図10(a)に示したように、アンテナパターン1Aの主ローブにおける目標信号S1,S2よりも大きなレベルで連続妨害波Jcがサイドローブで同様に受信されたとしても、SLC3におけるウェイト制御によりヌル点が形成されるから、図10(b)に示したように、連続妨害波Jcは抑圧され、振幅レベルが小さく、微弱な目標信号S1,S2を検出できる。なお、アンテナパターン2Aに対するウェイト値の算出は、フィードバック制御によるものであるから、収束し、ヌル点が深く形成されるまでには若干時間を要する。
【0006】
次に、図11(a)に示したように、アンテナパターン1Aのサイドローブに到来するパルス状の間欠妨害波Jpに対しては、収束に時間を要するSLC3では、効果的な抑圧を受けることなく出力され、SLB4に供給される。
【0007】
SLB4は、図8に示したように、比較回路41とスイッチング回路42とで構成される。
【0008】
図11(b)は、SLC3から出力されSLB4に供給される主チャンネル(主CH)信号を示したものであり、図11(c)は、補助受信器22からSLB4に供給される補助チャンネル(補助CH)信号を示したものである。
【0009】
比較回路41はSLC3からの主チャンネル信号と、補助受信器22からの補助チャンネル信号とのアンテナ利得差に基づく振幅レベルの比較から、間欠妨害波Jpを検出し、スイッチング回路42をOFF動作させるので、図11(d)に示したように、SLC3を通過したパルス妨害、すなわち間欠妨害波Jpを遮断(カット)して、目標信号S1を出力する。
【0010】
なお、図9ないし図11では、主アンテナ11と補助アンテナ21とをそれぞれ設け、SLC3は、補助アンテナ21のアンテナパターン2Aに対するウェイト制御を行うように構成されているが、良く知られているように、アレイアンテナ自体を主及び補助に区別しないアダプティブアレイにおいては、アダプティブ演算によるSLC信号処理により連続妨害波の抑圧が可能である。
【0011】
図12は従来のアダプティブアレイアンテナを備えた受信装置の構成図で、複数のアレイアンテナ111,112,113,・・・11Nにそれぞれ受信器121,122,123,・・・12Nが対応接続され、各受信器121,122,123,・・・12Nからの各チャンネル受信信号CH1,CH2,CH3,・・・CHNがアダプティブ処理器3Aに供給され、アダプティブ処理器3AにおけるSLC処理、すなわちウェイト値の算出と算出されたウェイト値に基づくウェイト制御により連続妨害波Jcは抑圧される。
【0012】
なお、アダプティブ処理器3Aにおいて採用される妨害波抑圧アルゴリズムとして、例えばMSN(最大SN法)やグラムシュミットが知られている。(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照。)。
【0013】
すなわち、MSNによるアダプティブ演算においては、W(n)をn番目の反復回数のウェイト(n=1〜N)とし、出力をYoutとしたとき、W(n)のYoutは下記(1)式で得られる。
【数1】
但し、
g; 利得
a; 利得
Xin; 補助CH信号(複素信号I+jQ)
Yin; 主CH信号(複素信号I+jQ)
を表す。
【0014】
なお、上記アダプティブ演算では、直接解方式の一つであるSMI(Sampled Matrix Inversion)法も採用することができる。(例えば、非特許文献4参照。)。
【非特許文献1】吉田 孝 監修「改訂レーダ技術」 電子情報通信学会 (平成8年10月1日) pp.295−296
【非特許文献2】菊間信良著 「アレーアンテナによる適応信号処理」科学技術出版(1999) pp.67−86
【非特許文献3】Alfonso Farina著.「 Antenna-Based Signal Processing Techniques for Radar Systems 」 Artech House(1992)
【非特許文献4】菊間信良著 「アレーアンテナによる適応信号処理」科学技術出版(1999) pp.35−37,98−99
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の受信装置において、SLC3でのアンテナパターンに対するヌル点形成により連続妨害波は抑制され、SLC3を通過したパルス状の間欠妨害波は、SLB4におけるスイッチング操作により除去される。
【0016】
しかしながら、上記従来の受信装置のSLB4におけるスイッチング動作は、比較回路41における主CHの妨害波と補助CHの妨害波との振幅レベルでの比較動作によるので、パルス状の間欠妨害波が高い頻度で到来する環境のもとでは、比較回路41が誤動作しやすく、また微妙なレベル差に起因して不安定なバタツキ現象が生ずる。その上、間欠妨害波は、受信装置における信号出力そのものをOFFさせるものであるから、高頻度での間欠妨害波の受信は、目標信号の受信動作に長いブランク(OFF)を発生させるので改善が要望されていた。
【0017】
そこで本発明は、間欠妨害波が高い頻度で継続的に受信される状況のもとにおいても、目標信号に対する受信期間にブランクを生じさせることなく、また、安定して間欠妨害波を抑圧可能な受信装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の受信装置は、到来した電波を受信するアレイアンテナと、このアレイアンテナに接続され、各アンテナからの受信信号をA/D変換する受信器と、この受信器でA/D変換された受信信号を時間軸上で順次記憶する記憶手段と、前記受信器でA/D変換された受信信号を検波し、その検波出力レベルが予め設定された閾値レベルを越えた信号を検出する検出手段と、この検出手段により検出された信号の単位時間に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、その基準値を超えたときの単位時間に対応する前記受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧のウェイト値を算出するように制御する制御手段と、この制御手段の制御により算出されたウェイト値を設定して、前記記憶手段から読み出された前記受信信号に対する妨害波抑圧操作を行う妨害波抑圧手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明の受信装置は、A/D変換された受信信号を時間軸上で順次記憶する記憶手段を有し、受信信号に含む妨害波を検出するとともに、制御手段がその検出された妨害波に関し、単位時間内における妨害波の占める比率が基準値を超えたとき、その基準値を超えた時間範囲内の受信信号に基づくウェイト値を算出するように制御信号を出力し、妨害波抑圧手段は、制御手段からの制御により算出したウェイト値を設定して妨害波抑圧する。
【0020】
このように、本発明の受信装置において、妨害波抑圧手段は、パルス状の間欠妨害波が高頻度で受信された場合は、制御手段から高頻度の受信信号のデータに基づくウェイト値に設定し、到来方向へのヌル点形成により妨害波を抑圧するので、受信OFF(ブランク)を回避して所望の目標信号を検出でき、連続妨害波はもとより、引き続き継続的に到来する間欠妨害波圧を適切に抑圧できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明による受信装置の第1の実施例を図1ないし図7を参照して詳細に説明する。なお、図8ないし図12に示した従来の受信装置と同一構成には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0022】
図1において、アレイアンテナからなる主アンテナ11で順次受信された受信信号(主CH信号)は、主受信器12に供給され、ここで周波数変換後及びA/D変換されて量子化受信ディジタル信号に変換され、記憶手段である主メモリ13、及び検出手段である妨害波検出器5に順次供給される。
【0023】
時間軸に沿って、主メモリ13に一旦記憶された受信ディジタル信号は、後述するタイミングで順次読み出され、SLC6の減算回路61及びウェイト演算回路62に供給される。
【0024】
一方、アレイアンテナからなる補助アンテナ21で受信された受信信号(補助CH信号)は補助受信器22に供給され、ここで周波数変換後及びA/D変換されて量子化受信ディジタル信号に変換され、記憶手段である補助メモリ23に供給され、同様に時間軸上に沿って順次記憶される。補助メモリ23に一旦記憶された受信ディジタル信号は、上記主メモリ13に同期したタイミングで順次読み出され、SLC6のウェイト演算回路62及び乗算回路63に供給される。
【0025】
主受信器12から受信ディジタル信号が供給される妨害波検出器5は、IQ検波回路と閾値(スレショルド)レベルL設定回路とを備え、IQ検波回路は、主受信器12からの受信ディジタル信号に対し、下記(2)式を用いて受信ディジタル信号のIQ検波信号Dを得て閾値レベルL設定回路に供給する。
【0026】
IQ検波信号Dの供給を受けた閾値レベルL設定回路は、通常の目標信号Sの受信レベルよりは高い閾値レベルLを設定し、その設定された閾値レベルLを越えた妨害波のIQ検波信号Dを検出して、図1に示した制御器7に供給する。
【数2】
但し、
I;I検波信号(複素信号の実部)
Q;Q検波信号(複素信号の虚部)
を表す。
【0027】
すなわち、妨害波検出器5は、受信ディジタル信号に含む閾値レベルLを超えた電圧の妨害波を逐次検出して制御器7に供給する。
【0028】
なお、上記(2)式において、IQ検波信号Dは、I検波信号の二乗とQ検波信号の二乗の和の平方根により、電圧の次元で検出したが、単にI検波信号の二乗とQ検波信号の二乗の和の、電力の次元で検出しても良い。また、I検波信号とQ検波信号のうちの少なくともいずれか一方を検出信号として出力しても良く、さらに妨害波検出器5は主CHからではなく、補助CH(補助受信器22)の受信信号から妨害波を検出するようにしても良い。
【0029】
そこで制御器7には、図1に示したように、範囲設定器8が接続されている。
【0030】
範囲設定器8は、SLC6のウェイト演算回路62がウェイト演算を行う時間範囲の長さを予め単位時間Tとして設定し、制御手段の制御器7に供給する。
【0031】
制御器7は、妨害波検出器5から順次供給される検出信号について、範囲設定器8から供給される単位時間Tに占める比率が予め定められた基準値Rt(例えば、単位時間Tに対して70%)を超えたとき、その基準値Rtを超えた前記単位時間Tに対応する受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧のウェイト値を算出するように、読み出し制御信号を主メモリ13及び補助メモリ23に、また演算制御信号をウェイト演算回路62に供給する。
【0032】
すなわち、制御器7は、妨害波検出器5から順次供給される検出信号に対し、範囲設定器8で設定された単位時間Tを時間軸に沿って順次スライドさせつつ、閾値レベルLを超えて単位時間T内に存在する受信信号(すなわち連続妨害波あるいは複数間欠妨害波)の時間の合計時間Σtをカウント(計数)し、その合計時間Σtが基準値Rtを超えたときに、すなわち個々の妨害波はパルス状であっても、間欠妨害波のつながりから連続妨害波であるとみなして演算するようにSLC6を制御する。
【0033】
従って、合計時間Σtが基準値Rtを超えた(Σt>Rt)とされたときのウェイト演算回路62におけるウェイト値の演算は、時刻を遡り、主メモリ13及び補助メモリ23に記憶された各受信ディジタル信号の信号データに基づき行われる。
【0034】
従ってまた、算出されたウェイト値によるSLC6における妨害波抑圧は、制御器7による主メモリ13及び補助メモリ23からの各受信ディジタル信号の読み出し制御に同期して実行される。
【0035】
妨害波抑圧手段であるSLC6のウェイト演算回路62は、範囲設定器8で設定された単位時間Tにおける間欠妨害波に占める比率から、高頻度で到来する間欠妨害波に関しては、主メモリ13及び補助メモリ23から読み出された各対応する受信信号に基づきウェイト値を算出する。
【0036】
このように、ウェイト演算回路62は、たとえ間欠妨害波であっても、高い頻度で到来する状況のもとでは、それらが連なって連続した妨害波(連続妨害波)であるかのようにしてウェイト値が算出され設定される。そして、SLC6は、その設定されたウェイト値により、間欠妨害波の到来方向へのヌル点形成を行うように作用するので、当該間欠妨害波はもとより、引き続き受信される間欠妨害波を的確に抑圧することができる。
【0037】
図2は、図1に示した受信装置における間欠妨害波抑圧動作の説明図である。
【0038】
すなわち、妨害波検出器5において、図2(a)に示したように、閾値レベルL以上の間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・が検出され、制御器7に供給されたとき、制御器7は、順次供給される間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・の占める時間長の、範囲設定器8により設定された単位時間Tでの比率が基準値(例えば、70%)を超えるか否か判定する。
【0039】
図2(a)では、単位時間Tでの間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3aの占める時間長、すなわち合計時間Σtが基準値(例えば、70%)を超えた状態を表したもので、このとき制御器7は、制御信号をSLC6のウェイト演算回路62及び主メモリ13及び補助メモリ23に供給する。
【0040】
ウェイト演算回路62は、制御器7からの制御信号を受け、同じく制御器7からの制御信号により同期して読み出された主メモリ13及び補助メモリ23からの受信信号、すなわち図2(b)に示した間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3aに対応した受信ディジタル信号の供給により、ウェイト値を算出し乗算回路63に供給する。
【0041】
その結果、SLC6は、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3aの到来方位においてヌル点が形成されるように、補助CHの信号(パターン)に対するウェイト制御が行われるので、図2(b)に点線Jcsで示した妨害波抑圧特性曲線が得られ、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3a,・・・は、その方位における全レンジセルにわたり、抑圧特性曲線に沿い抑圧される。
【0042】
なお、図2では、受信装置がレーダに組み込まれ、妨害波の受信がレーダの送信繰り返し周期(PRI)tに対応したタイミングで受信され、抑圧のための妨害波検出をレンジセル毎に行うことを示している。
【0043】
上記実施例において、妨害波検出器5は、IQ検波回路を採用し、IQ検波信号Dを得て閾値レベルL設定回路に供給する旨説明したが、上記(2)式に代え、下記(3)式を用いてIQmaxを算出し、算出したIQmaxを閾値レベルL設定回路に供給して、閾値レベル(スレッシヨルドレベル)Lを超える妨害波を検出しても良い。
【数3】
但し、
max ;最大値
abs ;絶対値(符号ビット以外の絶対値)
thr(*) ;*が閾値レベルLを越えた範囲(*=IQmax)
を表している。
また、上記(3)式におけるIQregionは、下記(4)式を用いて算出しても良い。
【数4】
を表している。
【0044】
また、図1及び図2を参照して説明したように、上記実施例のSLC6は、補助CH信号に対するウェイト制御を、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3a,・・・の到来方位の全レンジセルにわたり継続的して行なわれる旨説明したが、SLC6を図3に示したように構成することで、ウェイト演算回路62において算出されたウェイト値をウェイト制御の初期値として設定するとともに、補助CH伝送路及び出力帰還伝送路にそれぞれ間引き回路64,65を介挿接続することもできる。
【0045】
図3に示した構成のSLC6によれば、間引き回路64,65に対し、適宜のタイミングによるレンジセルの間引き操作により、フィードバックループによるウェイト制御の演算量を削減し、演算処理における負担軽減を図ることができる。
【0046】
次に、上記第1の実施例では、検出手段である妨害波検出器5は、主受信器12から出力される受信ディジタル信号を取り込み検波するとともに、その検波出力の振幅レベルが予め設定された閾値レベルLを越えた信号を妨害波として検出し、制御手段である制御器7は、供給された検出信号の予め設定された長さの単位時間Tに占める比率が基準値を超えたとき、その基準値を超えた単位時間Tに対応した受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出したが、制御器7は、単位時間Tを超えて拡張された時間内での検出信号を単位時間T内に再配列させ、その再配列により妨害波が占めた時間長の単位時間T内に占める比率が基準値を超えたとき、再配列された各検出信号に対応する受信ディジタル信号のデータに基づいて、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出するようにしても良い。
【0047】
すなわち、制御手段が、単位時間Tを越えた時間内での検出信号を単位時間T内に再配列させ、その再配列によって占められた時間長の単位時間T内に占める比率が基準値を超えたとき、再配列された各検出信号に対応する受信ディジタル信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出する本発明にかかる受信装置の第2の実施例を図4ないし図6を参照して説明する。なお、第1の実施例と同一構成には同一符号を付して詳細な説明は省略し、相違点のみを特に説明する。
【0048】
第2の実施例に係る受信装置は、図4に示したように、主メモリ13とSLC6、及び補助メモリ23とSLC6との間に、それぞれ再配列手段である連結(または加算)回路14,24を挿入し、主メモリ13及び補助メモリ23から出力されSLC6に供給される主CH信号及び補助CH信号が、ウェイト値の算出時に、制御器7により制御される連結(または加算)回路14,24の動作を経てSLC6に供給する。
【0049】
すなわち、妨害波検出器5において、図5に示したように、閾値レベルL以上の間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・が検出され、順次制御器7に供給されるとき、制御器7は、供給される間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・に対し、範囲設定器8により設定された単位時間Tを超えた、例えばその整数倍の時間で検出される妨害波を単位時間T内に再配列させ、その再配列によって占められた時間長の単位時間T内に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、再配列された検出信号に対応する受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出するように制御するものである。
【0050】
図5に示したパターンでは、単位時間Tの3倍の時間長さにわたり、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・が閾値レベルLを超えて検出され、それらを単位時間T内の時間軸に沿って縦続して連結するように再配列させたもので、その再配列による妨害波の占める時間長の単位時間T内に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、再配列に供された検出信号(妨害波)に対応した受信ディジタル信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出するように制御される。
【0051】
もちろん、制御器7は、算出されたウェイト値による、主メモリ13及び補助メモリ23からの受信ディジタル信号の読み出しによる妨害波抑圧操作を、間欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・に対しても行うものとすれば、制御器7は、再配列によるウェイト値算出に要する時間だけ、読み出しタイミンの調整が行われてSLC6に供給される。
【0052】
上記説明は、連結(または加算)回路14,24が連結回路である場合を説明したが、連結(または加算)回路14,24を加算回路で構成した場合は、図6に示したように、単位時間Tにおける時刻位置で、各信号(対応する欠妨害波Jp1,Jp2,Jp3,・・・)を重畳加算するものであり、この重畳加算によっても、同様な作用効果を得ることができる。
【0053】
このように、第2の実施例は、単位時間TをPRI(t)単位に対応させつつ、妨害波検出範囲を拡張することで、PRI(t)を超えた領域の妨害波を連結あるいは加算による再配列を行うことで、抑圧すべき間欠妨害波を検出し、ウェイト制御によるヌル点形勢により妨害波を全レンジセルにわたって抑圧することができる。
【0054】
また、上記第1及び第2の各実施例では、受信装置は、主アンテナ11と補助アンテナ21を設け、SLC3は、補助アンテナ21におけるアンテナパターン2Aに対するウェイト制御を行うように構成したが、本発明は、主アンテナと補助アンテナには区別しないアンテナ構成のアダプティブアレイの受信装置にも適用できる。
【0055】
すなわち、アダプティブアレイによる本発明の第3の実施例に係る受信装置を、上記第1の実施例の図1に対応した図を、図7に示して説明する。
【0056】
図7に示したアダプティブアレイからなる受信装置においても、従来と同様に、アダプティブな演算による信号処理により、SLCによる連続妨害波抑圧が可能である。
【0057】
第3の実施例に係る受信装置は、図示のように、各CHの受信器121,122,・・・12Nに対応接続された各メモリ131,132,・・・13Nを介してアダプティブ処理器6Aに接続されて構成され、妨害検出器5は、受信器121でA/D変換された受信信号を検波するとともに、その検波出力の振幅レベルが予め設定された閾値レベルを越えた信号を検出し、制御器7に供給する。
【0058】
制御器7は、範囲設定器8で予め設定された単位時間Tに占める妨害波検出器5からの検出信号の比率が予め定められた基準値を超えたとき、その基準値を超えた単位時間Tに対応する受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御の初期ウェイト値を算出し、以後順次、ウェイト値を更新することで、妨害方向に対して深いヌルを形成するように制御する。
【0059】
従って、図7に示した受信装置においても、連続妨害波はもとより、継続的に受信されるパルス状の間欠妨害波をもアンテナパターンのヌル点形成により的確に抑圧できる。
【0060】
なお、図7に示した構成では、従来と同様に、アダプティブ処理演算でのウェイト値の算出にはMSN(最大SN法)やグラムシュミットの妨害波抑圧アルゴリズムを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による受信装置の第1の実施例を示した構成図である。
【図2】図1に示した受信装置の動作説明図である。
【図3】図1に示したSLCの他の回路構成図である。
【図4】本発明による受信装置の第2の実施例を示した構成図である。
【図5】図4に示した受信装置における第1例の動作説明図である。
【図6】図4に示した受信装置における第2例の動作説明図である。
【図7】本発明による受信装置の第3の実施例を示した構成図である。
【図8】従来の受信装置を示した構成図である。
【図9】図8に示した受信装置のSLCの動作説明図である。
【図10】図9に示した動作における信号波形図である。
【図11】図8に示した受信装置のSLBの動作説明図である。
【図12】従来の他の受信装置の構成図である。
【符号の説明】
【0062】
11 主アンテナ
12 主受信器
13 主メモリ(記憶手段)
14 連結(または加算)回路(再配列手段)
21 補助アンテナ
22 補助受信器
23 補助メモリ(記憶手段)
24 連結(または加算)回路(再配列手段)
5 妨害波検出器(妨害波検出手段)
6 SLC(妨害波抑圧手段)
6A アダプティブ処理器(妨害波抑圧手段)
7 制御器(制御手段)
8 範囲設定器(制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
到来した電波を受信するアレイアンテナと、
このアレイアンテナに接続され、各アンテナからの受信信号をA/D変換する受信器と、
この受信器でA/D変換された受信信号を時間軸上で順次記憶する記憶手段と、
前記受信器でA/D変換された受信信号を検波し、その検波出力レベルが予め設定された閾値レベルを越えた信号を検出する検出手段と、
この検出手段により検出された信号の単位時間に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、その基準値を超えたときの単位時間に対応する前記受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧のウェイト値を算出するように制御する制御手段と、
この制御手段の制御により算出されたウェイト値を設定して、前記記憶手段から読み出された前記受信信号に対する妨害波抑圧操作を行う妨害波抑圧手段と
を具備することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記妨害波抑圧のウェイト値算出操作に対応して、前記記憶手段に記憶された受信信号を読み出し制御することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記妨害波抑圧手段は、サイドローブキャンセラーで構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記検出手段は、受信信号に対するI検波信号とQ検波信号のうちの少なくともいずれか一方を検出信号として出力することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記単位時間よりも長い期間にわたって前記検出手段により検出された信号を前記単位時間内に再配列させたとき、その再配列によって占められた検出信号の単位時間内に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、前記再配列された検出信号に対応する前記受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出するように制御し、
前記妨害波抑圧手段は、前記制御手段による制御により算出されたウェイト値を設定して妨害波を抑圧する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記制御手段における再配列は、前記検出された信号の時間軸上での縦続連結、または前記検出された信号を時間軸上における対応時刻位置への置き換えによる重畳加算によるものであることを特徴とする請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
前記妨害波抑圧手段は、前記制御手段による制御により算出された前記ウェイト値を、MSN、グラムシュミットの妨害波抑圧アルゴリズムに従い、レンジセル毎または間引いたレンジセル毎に更新するように構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項1】
到来した電波を受信するアレイアンテナと、
このアレイアンテナに接続され、各アンテナからの受信信号をA/D変換する受信器と、
この受信器でA/D変換された受信信号を時間軸上で順次記憶する記憶手段と、
前記受信器でA/D変換された受信信号を検波し、その検波出力レベルが予め設定された閾値レベルを越えた信号を検出する検出手段と、
この検出手段により検出された信号の単位時間に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、その基準値を超えたときの単位時間に対応する前記受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧のウェイト値を算出するように制御する制御手段と、
この制御手段の制御により算出されたウェイト値を設定して、前記記憶手段から読み出された前記受信信号に対する妨害波抑圧操作を行う妨害波抑圧手段と
を具備することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記妨害波抑圧のウェイト値算出操作に対応して、前記記憶手段に記憶された受信信号を読み出し制御することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記妨害波抑圧手段は、サイドローブキャンセラーで構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記検出手段は、受信信号に対するI検波信号とQ検波信号のうちの少なくともいずれか一方を検出信号として出力することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記単位時間よりも長い期間にわたって前記検出手段により検出された信号を前記単位時間内に再配列させたとき、その再配列によって占められた検出信号の単位時間内に占める比率が予め定められた基準値を超えたとき、前記再配列された検出信号に対応する前記受信信号のデータに基づき、妨害波抑圧制御のウェイト値を算出するように制御し、
前記妨害波抑圧手段は、前記制御手段による制御により算出されたウェイト値を設定して妨害波を抑圧する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記制御手段における再配列は、前記検出された信号の時間軸上での縦続連結、または前記検出された信号を時間軸上における対応時刻位置への置き換えによる重畳加算によるものであることを特徴とする請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
前記妨害波抑圧手段は、前記制御手段による制御により算出された前記ウェイト値を、MSN、グラムシュミットの妨害波抑圧アルゴリズムに従い、レンジセル毎または間引いたレンジセル毎に更新するように構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1項に記載の受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−240415(P2007−240415A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65551(P2006−65551)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]