説明

受信電波品質推定装置及び方法、プログラム

【課題】鉄道高架橋のような構造物がある場合に、構造物だけの場合と構造物に列車が通過する場合とを考慮して、受信品質を推定する。
【解決手段】基準電界強度計算部で、送受信点間に何もない条件での受信電界強度を算出する。構造物回折波計算部で、構造物がある場合の受信電界強度を算出する。鉄道回折波計算部で、構造物と列車がある場合の受信電界強度を算出する。高架下電波推定部で、送受信点と構造物の位置関係から高架下を通過する電波があるかどうかを推定する。受信電界強度算出部で、高架下を通過して到来する電波の成分を合成する。変動幅算出部で、構造物の影響及び列車による影響を算出する。判定部で、列車が通過していないとき、列車が通過したときのC/N比を求め、受信障害を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に地上波ディジタルテレビジョン放送の受信品質の推定を行うのに用いて好適な受信電波品質推定装置及び方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上波ディジタルテレビジョン放送への完全移行に伴って、受信障害の発生に関する検証が重要になっている。そこで、例えば特許文献1に示すように、受信障害の発生が予測される地域をシミュレーションで知ることができるようにしたものが開発されている。
【0003】
受信障害の発生の可能性があるする場所としては、山やビル等が考えられる。さらに、受信障害の発生の可能性がある場所としては、鉄道沿線が考えられる。特に、高速鉄道網や人口密集地への鉄道の敷設においては、高架橋方式が多く採用されている。高架橋方式の場合には、地上高が高くなることから、クリアランスが十分にとれないと、送信点からの電波が高架橋に当たり、回折が起こり、直接波と回折波との干渉を起こす。また、この回折波の発生は、構造物のみの場合と、構造物に列車が通過しているときとでは、異なってくる。また、高架橋の構造物の場合には、高架橋の下に空間が生じている。したがって、電波が構造物に当たることによる回折波の他に、高架下を通過して到来する電波が存在する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−285923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の受信品質の推定手法は、ビルや山などの地上に固定されている地物による遮蔽や回折を考慮した手法であり、列車通過に伴う受信品質の変動は推定できなかった。そのため、従来では、このような一時的な受信品質の劣化は、実測でのみ計測されていた。しかしながら、列車通過に伴う受信品質の劣化の計測は、定常的な状態での受信品質の測定に比べて、多くの機材と時間、手間が必要になるという問題があった。
【0006】
また、高架橋の構造物の場合には、電波が構造物に当たることによる回折波の他に、高架下を通過して到来する電波が存在する場合があるが、従来の受信品質の推定手法では、このような高架下を通過して到来する電波の影響を考慮することができないという問題があった。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、構造物だけの場合と、構造物に列車が通過する場合とを考慮して、受信品質が容易に推定できる受信電波品質推定装置及び方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、送信点からの電波を受信点で受信し、該受信した電波の品質を推定する受信電波品質推定装置であって、前記送信点に関するパラメータと、前記受信点に関するパラメータと、前記送信点と前記受信点との間の構造物に関するパラメータとを入力するパラメータ入力手段と、前記送信点の座標を含む送信点オブジェクトと、前記受信点の座標を含む受信点オブジェクトと、前記構造物の座標を含む鉄道オブジェクトを生成するオブジェクト生成手段と、前記送信点と前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度を求める基準電界強度計算手段と、前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度を求める構造物回折波計算手段と、前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度を求める鉄道回折波計算手段と、前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物の高架下を電波が通過するかどうかを判定する高架下電波推定手段と、前記構造物回折波計算手段で求められた構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度と、前記鉄道回折波計算手段により求められた前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度と、前記高架下電波推定手段での判定結果を用いて、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度を算出する受信電界強度算出手段と、前記送信点と前記前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度とを比較して前記構造物の影響値を算出し、また、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度とを比較して、移動体通過時の変動幅を算出する変動幅算出手段と、前記構造物と前記受信点との距離に応じて、移動体通過時の雑音電力の上昇分を算出する雑音値推定計算手段と、前記移動体がないときの前記受信点での受信端子電圧と、前記変動幅算出手段で求められた前記移動体通過時の変動幅とから、前記移動体の通過時の前記受信点での受信端子電圧を算出し、該算出された受信端子電圧値と、前記雑音値推定計算手段で求められた雑音電力の推定値とからC/N比を算出し、該算出されたC/N比から受信時に障害が生じるかどうかを判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様は、上記の受信電波品質推定装置であって、前記高架下電波推定手段は、前記送信点と前記受信点と前記構造物の位置関係から、前記構造物の高架下を通過して受信点に到達する経路の有無を幾何学的に求めることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様は、上記の受信電波品質推定装置であって、前記判定手段は、前記移動体がないときの受信端子電圧として、実測値を用いることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、上記の受信電波品質推定装置であって、前記判定手段は、前記移動体がないときの受信端子電圧として、推定値を用いることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様は、情報処理装置を、送信点からの電波を受信点で受信し、該受信した電波の品質を推定する受信電波品質推定装置として機能させるためのコンピュータープログラムであって、前記送信点に関するパラメータと、前記受信点に関するパラメータと、前記送信点と前記受信点との間の構造物に関するパラメータとを入力する工程と、前記送信点の座標を含む送信点オブジェクトと、前記受信点の座標を含む受信点オブジェクトと、前記構造物の座標を含む鉄道オブジェクトを生成する工程と、前記送信点と前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度を求める工程と、前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度を求める工程と、前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度を求める工程と、前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物の高架下を電波が通過するかどうかを判定する工程と、前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度と、前記前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度と、前記高架下を電波が通過するかどうかの判定結果を用いて、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度を算出する工程と、前記送信点と前記前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度とを比較して前記構造物の影響値を算出し、また、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度とを比較して、移動体通過時の変動幅を算出する工程と、前記構造物と前記受信点との距離に応じて、移動体通過時の雑音電力の上昇分を算出する工程と、前記移動体がないときの前記受信点での受信端子電圧と、前記移動体通過時の変動幅とから、前記移動体が通過したときの前記受信点での受信端子電圧を算出し、該算出された受信端子電圧値と、前記雑音電力の推定値とからC/N比を算出し、該算出されたC/N比から受信時に障害が生じるかどうかを判定する工程とを前記情報処理装置に実行させる。
【0013】
本発明の一態様は、送信点からの電波を受信点で受信し、該受信した電波の品質を推定する受信電波品質推定方法であって、前記送信点に関するパラメータと、前記受信点に関するパラメータと、前記送信点と前記受信点との間の構造物に関するパラメータとを入力する工程と、前記送信点の座標を含む送信点オブジェクトと、前記受信点の座標を含む受信点オブジェクトと、前記構造物の座標を含む鉄道オブジェクトを生成する工程と、前記送信点と前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度を求める工程と、前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度を求める工程と、前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度を求める工程と、前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物の高架下を電波が通過するかどうかを判定する工程と、前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度と、前記前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度と、前記高架下を電波が通過するかどうかの判定結果を用いて、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度を算出する工程と、前記送信点と前記前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度とを比較して前記構造物の影響値を算出し、また、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度とを比較して、移動体通過時の変動幅を算出する工程と、前記構造物と前記受信点との距離に応じて、移動体通過時の雑音電力の上昇分を算出する工程と、前記移動体がないときの前記受信点での受信端子電圧と、前記移動体通過時の変動幅とから、前記移動体が通過したときの前記受信点での受信端子電圧を算出し、該算出された受信端子電圧値と、前記雑音電力の推定値とからC/N比を算出し、該算出されたC/N比から受信時に障害が生じるかどうかを判定する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、実測を伴うことなく、列車通過に伴った受信品質を容易に推定することが可能となる。また、本発明により、高架下を通過して電波を考慮した推定を行っているので、受信品質の推定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の概要の説明図である。
【図2】本発明の原理構成の説明図である。
【図3】本発明の原理構成の説明図である。
【図4】本発明の原理構成の説明図である。
【図5】本発明の実施形態の機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施形態が実現できるハードウェア構成のブロック図である。
【図7】本発明の実施形態の入力画面の説明図である。
【図8】本発明の実施形態の入力画面の説明図である。
【図9】本発明の実施形態の入力画面の説明図である。
【図10】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態におけるオブジェクトの説明図である。
【図12】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図17】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図18】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図20】本発明の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
1.原理構成
図1は、本発明の実施形態の原理構成を示すものである。図1において、送信点1は、地上波ディジタルテレビジョン放送の送信局のアンテナに相当する。受信点2は、地上波ディジタルテレビジョン放送を受信する家屋のアンテナに相当する。送信点1からの電波は、受信点2で受信される。ここで、送信点1と受信点2との間には、構造物3が設置されている。この構造物3には、列車(移動体)4a及び4bが通過する。
【0017】
このように、送信点1と受信点2との間に構造物3が設置されている場合、送信点1からの電波は構造物3の影響を受ける。また、構造物3に列車4a、4bがないときと、構造物3に列車4a、4bが通過しているときとでは、その影響が異なる。本発明の実施形態は、このように送信点1と受信点2との間に構造物3が設置され、構造物3に列車4a、4bが通過する又は通過しない状態で、送信点1からの電波の受信点2での受信状態を判定するものである。
【0018】
地上波ディジタルテレビジョン放送はUHF帯の電波で放送されている。UHF帯の電波では、地表波の減衰は大きく、また、電離層を突き抜けるため、図2に示すように、直接波と大地反射波が干渉して、受信点2に伝送される。したがって、送信点1と受信点2との間に何もない条件では、直接波A1の電界強度と反射波A2の電界強度から、受信電界強度を算出できる。すなわち、送信点1と受信点2との間に何もない条件での受信電界強度E_noneは、受信点2の自由空間での電界強度E0と、反射波の電界強度Erefとから、
E_none = E0 + Eref …(1)
として求めることができる。
【0019】
送信点1と受信点2との間に、構造物3がある場合には、図3に示すように、直接波A1が構造物3に当たり、回折が起こり、直接波と回折波との干渉を起こす。このときの回折損は、クリアランスから遮蔽係数を求め、フレネル積分により求めることができる。受信点2での受信電界強度は、自由空間電界と回折損とから算出できる。また、構造物3に列車4a、4bがある場合には、構造物3と列車4a、4bとが障害物となって、回折を起こす。
【0020】
送信点1と受信点2との間に構造物3のみある場合の受信電界強度E0_railは、回折損Ssと、自由空間電界強度E0とから、
E0_rail = Ss ×E0 …(2a)
として求めることができる。
【0021】
また、構造物3の送信側の線路に列車4aがある場合の受信電界強度E0_train_txは、回折損Stxと、自由空間電界強度E0とから、
E0_train_tx = Stx ×E0 …(2b)
として求めることができる。
【0022】
また、構造物3の受信側の線路に列車4bがある場合の受信電界強度E0_train_rxは、回折損Srxと、自由空間電界強度E0とから、
E0_train_rx = Srx ×E0 …(2c)
として求めることができる。
【0023】
また、構造物3の送信側と受信側の双方の線路に列車4a、4bがある場合の受信電界強度E0_train_bothは、回折損Sbothと、自由空間電界強度E0とから、
E0_train_both = Sboth ×E0 …(2d)
として求めることができる。
【0024】
また、構造物3が高架橋である場合、構造物3の下部は空間になっている。図4に示すように、下部が空間となっている構造物3の場合には、送信点1からの電波が構造物3の下部を通過して受信点2に届く反射波A3が存在する場合がある。この場合には、この構造物3の下部を通過する反射波A3を考慮する必要がある。構造物3の下部を通過する反射波A3の影響は、送信点1と受信点2と構造物3の位置関係から、高架下を通過して受信点2に到達する経路の有無を幾何的に求めることができる。すなわち、反射波A3の反射点6の座標と受信点2の座標とから、両点を結ぶ直線Lを求め、構造物3の下面の座標が直線Lより上にあるかどうかにより、構造物3の下部を反射波A3が通過するかどうかが判定できる。
【0025】
高架下を考慮する係数をCrefとし、構造物3の下部を反射波A3が通過する場合の係数Crefを「1」、通過しない場合の係数Crefを「0」とし、一部が通過する場合の係数Crefを「0.5」とする。この場合、送信点1と受信点2との間に構造物3のみある場合の受信電界強度E_railは、式(2a)で求められた受信電界強度E0_railと、反射波の電界強度Erefを合成して、
E_rail = E0_rail + Eref×Cref …(3a)
として求めることができる。
【0026】
また、高架下を考慮する係数をCrefとすると、構造物3の送信側の線路に列車4aがある場合の受信電界強度E_train_txは、式(2b)で求められた受信電界強度E0_train_txと、反射波の電界強度Erefを合成して、
E_train_tx = E0_train_tx + Eref×Cref …(3b)
として求めることができる。
【0027】
また、高架下を考慮する係数をCrefとすると、構造物3の受信側の線路に列車4bがある場合の受信電界強度E_train_rxは、式(2c)で求められた受信電界強度E0_train_rxと、反射波の電界強度Erefを合成して、
E_train_rx = E0_train_rx + Eref×Cref …(3c)
として求めることができる。
【0028】
また、高架下を考慮する係数をCrefとすると、構造物3の送信側と受信側との双方の線路に列車4a、4bがある場合の受信電界強度E_train_bothは、式(2d)で求められた受信電界強度E0_train_bothと、反射波の電界強度Erefを合成して、
E_train_both = E0_train_both + Eref×Cref …(3d)
として求めることができる。
【0029】
(1)式で示される送信点1と受信点2との間に何もない条件での受信電界強度E_noneと、(3a)式で示される送信点1と受信点2との点間に構造物3のみある場合の受信電界強度E_railとから、構造物3による影響L_railは、以下のようにして求めることができる。
L_rail = 20log10(|E_rail|/|E_none| … (4a)
なお、影響L_railの単位はdBである。
【0030】
また、(3a)式で示される送信点1と受信点2との間に構造物3のみある場合の受信電界強度E_railと、(3b)式で示される送信側の線路に列車4aがある場合の受信電界強度E_train_txとから、送信側の線路に列車4aがある場合の影響L_train_txは、以下のようにして求めることができる。
L_train_tx = 20log10(|E_train_tx|/|E_rail| … (4b)
【0031】
また、(3a)式で示される送信点1と受信点2との間に構造物3のみある場合の受信電界強度E_railと、(3c)式で示される受信側の線路に列車4bがある場合の受信電界強度E_train_rxとから、受信側の線路に列車4bがある場合の影響L_train_rxは、以下のようにして求めることができる。
L_train_rx = 20log10(|E_train_rx|/|E_rail| … (4c)
【0032】
また、(3a)式で示される送信点1と受信点2との間に構造物3のみある場合の受信電界強度E_railと、(3d)式で示される送信側と受信側の双方の線路に列車4a、4bがある場合の受信電界強度E_train_bothとから、送信側と受信側の双方の線路に列車4a、4bがある場合の影響L_train_bothは、以下のようにして求めることができる。
L_train_both = 20log10(|E_train_both|/|E_rail| … (4d)
【0033】
列車通過による変動幅L_trainは、(4b)式、(4c)式、(4d)式の最大値により設定できる。
L_train = max(L_train_tx , L_train_rx, L_train_both) … (5)
【0034】
一方、雑音電力については、受信機のNF(雑音指数)、ブースターの利得とNFから、受信系のNFを求め、ITU−R(国際通信連合)の勧告(ITU−R P.372)に基づいて受信雑音電力を求め、構造物3の中心と受信点2との距離と、実測に基づく列車通過時の雑音強度の距離特性テーブルとから、列車通過時の雑音電力の上昇分が算出できる。
【0035】
以上の計算結果から、以下の2通りの方法で、受信点2でのC/N比が求められる。1つの方法は、無列車時の受信端子電圧の実測値を使って、列車が通過した状態での受信端子電圧を求め、これを用いてC/N比を求めるものである。もう一つの方法は、ビルや山の影響を考慮した推定計算によって得られた受信端子電圧の推定値を入力し、この受信端子電圧の推定値から、列車が通過した状態での受信端子電圧を求め、これを用いてC/N比を求めるものである。
【0036】
無列車時の受信端子電圧の実測値を使う方法の場合には、列車が通過していない状態での受信端子の電圧実測値V_railを測定し、この実測値V_railから、(5)式で求めた列車通過時の変動幅L_trainを用いて、列車が通過したときの受信端子電圧V_trainを求める。
V_train = V_rail + L_train … (6)
【0037】
電圧実測値V_railをdBm単位に換算し、受信雑音電力N_noneを減じることで、列車が通過しないときのC/N比を求めることができる。また、(6)式で求められた列車が通過したときの受信端子電圧V_trainをdBm単位に換算し、列車通過時の受信雑音電力N_trainを減じることで、列車通過時のC/N比を求めることができる。その結果から、以下の4段階の推定結果を導く。
【0038】
段階A:列車通過時のC/N比が37dB以上のときには、障害が出る可能性は極めて低い。
段階B:列車通過時のC/N比が28dB以上37dB未満のときには、障害が出る可能性は低い。
段階C:列車通過時のC/N比が28dB未満のときには、障害が出る可能性は高い。
段階D:列車が通過していないときのC/N比が28dB未満のときには、障害が出る可能性は極めて高い。
【0039】
なお、C/N比28dBは、変調方式64QAM、符号化率7/8で送信された放送波を固定受信した場合に、ビット誤り率が2×10−4以下となるための所要C/N(22dB)に対し、装置化マージン、干渉マージン、マルチパスマージンを加えて求められる値であり、地上波ディジタルテレビジョン放送の固定受信の場合の標準的な回線設計で使用されている値である。C/N比37dBは、上記のC/N比28dBに、マージン9dBを加算した値である。なお、他の送信条件もしくは他の受信条件の場合には、該当するC/Nを設定することにより、推定が可能である。
【0040】
推定計算によって得られた受信レベルの推定値を入力する方法の場合には、この受信端子電圧の推定値を用いて、上述と同様にして、列車が通過していないときのC/N比及び列車通過時のC/N比が求められる。
【0041】
2.機能ブロックについて
図5は、本発明の実施形態の受信電波品質推定装置の機能ブロック図を示すものである。受信電波品質推定装置は、パラメータ入力部111、オブジェクト生成部112、基準電界強度算出部113、構造物回折波114、鉄道回折波115、高架下電波推定部116、受信電界強度算出部117、変動幅算出部118、雑音電力推定計算部119、振幅特性テーブル120、判定部121、表示部122を備える。
【0042】
図5において、パラメータ入力部111には、各種のパラメータが入力される。送信点1に関するパラメータとしては、送信点1の位置(緯度、経度)、送信点1の地上高、送信出力、中心周波数、偏波面等が入力される。受信点2に関するパラメータとしては、受信点の位置(緯度、経度)、受信アンテナの地上高(最低高、最高高)、受信点名等が入力される。鉄道に関するパラメータとしては、受信点と構造物間の中心間距離(最小距離、最大距離)、距離変化ピッチ、レールレベル、高架橋桁底面、レールレベルと防音壁との間の距離、構造物の幅、起動中心間隔、防音壁の材質(金属、非金属)、構造物の種類(高架橋(見通し可/不可)、盛土)等が入力される。計算条件のパラメータとしては、列車通過による影響の推定に、無列車時の受信端末電圧を使うかどうかが入力される。
【0043】
オブジェクト生成部112は、送信点1と受信点2の緯度経度から、電波通路長、受信点2と送信点1との方向、見通し距離を求める。また、オブジェクト生成部112は、送信点1の座標を決定し、送信点オブジェクトを生成する。また、オブジェクト生成部112は、受信点2の座標を決定し、受信点オブジェクトを生成する。オブジェクト生成部112は、構造物3の座標を決定し、鉄道オブジェクトを生成する。
【0044】
基準電界強度計算部113は、送信点1と受信点2との間に何もない条件での受信電界強度を求める。基準電界強度計算部113では、送信点1及び受信点2の座標と送信電力とから自由空間での受信点2における電界強度を求め、送信点1及び受信点2の座標から、大地反射点の座標を求め、送信点1の座標と受信点2の座標と反射点の座標から、受信点2における反射波の電界強度を求める。そして、式(1)で示すように、直接波による自由空間での電界強度と反射波の電界強度から、送信点1と受信点2との間に何もない条件での受信電界強度を算出する。
【0045】
構造物回折波計算部114は、送信点1の座標と受信点2の座標と構造物3の頂点とからクリアランスを求め、フレネル積分により、回折損を求め、構造物3がある場合の回折波による受信電界強度を求める。そして、構造物3がある場合の受信電界強度を算出する。つまり、直接波が障害物に当たると、回折が起こり、直接波と回折波との干渉を起こし、フレネルゾーンが発生する。このフレネルゾーンを避ける空間的余裕がクリアランスである。そして、クリアランスから遮蔽係数φを求め、フレネル積分により回折損が求められる。この回折損Ssに自由空間での電界を乗じることで、式(2a)に示すように、構造物3のみがある場合の受信電界強度を求めることができる。
【0046】
鉄道回折波計算部115は、送信点1の座標と受信点2の座標と列車の頂点とからクリアランスを求め、クリアランスから遮蔽係数φを求め、フレネル積分により、回折損を求め、列車がある場合の回折波による受信電界強度を求める。この算出方法は、上述の構造物回折波計算部114と同様である。そして、式(2c)〜式(2d)に示すように、構造物3と列車4a、4bがある場合の受信電界強度を算出する。
【0047】
高架下電波推定部116は、送信点1からの電波が受信点2に到達する際に、高架下を通過するかどうかを判定するものである。これは、図4に示したように、送信点1と受信点2と構造物3との位置関係から、高架下を通過して受信点2に到達する経路の有無を幾何学的に求める。
【0048】
受信電界強度算出部117は、構造物回折波計算部114で求められた構造物3のみによる回折波の受信電界強度と、高架下電波推定部116での判定結果を用いて、式(3a)に示すように、送信点1と受信点2との間に構造物3のみがある場合の受信電界強度を算出する。また、受信電界強度算出部117は、式(3b)〜式(3d)に示すように、鉄道回折波計算部115により求められた構造物3に列車4a、4bが通過したときの回折波の受信電界強度と、高架下電波推定部116での判定結果を用いて、送信点1と受信点2との間に構造物3と列車4a、4bがある場合の受信電界強度を算出する。
【0049】
変動幅算出部118は、式(4a)に示すように、基準電界強度計算部113で求められた送信点1と受信点2との間に何もない条件での受信電界強度と、受信電界強度算出部117で求められた構造物3のみがある場合の受信電界強度とを比較して構造物3による影響を算出する。また、変動幅算出部118は、式(4b)〜(4d)及び式(5)に示すように、受信電界強度算出部117で求められた送信点1と受信点2との間に構造物3のみがある場合の受信電界強度と、送信点1と受信点2との間に構造物3と列車4a、4bがある場合の受信電界強度とを比較して、列車の通過時の変動幅を算出する。
【0050】
雑音値推定計算部119は、受信機のNF(雑音指数)、ブースターの利得とNFから、受信系のNFを求め、受信雑音電力を求める。また、構造物3の中心と受信点2との距離と、実測に基づく列車通過時の雑音強度の距離特性テーブル120とから、列車通過時の雑音電力の上昇分を算出する。
【0051】
判定部121は、列車が通過していないとき、列車が通過したときのC/N比を求め、列車が通過していないとき及び列車が通過したときの受信障害を判定する。このC/N比は、無列車時の受信端子電圧の実測値を使い、この無列車時の受信端子電圧の実測値と、変動幅算出部118で求められた列車通過時の変動幅とから、列車が通過したときの受信端子電圧を計算し、雑音値推定計算部119で求められた雑音電力の推定値とから計算する場合と、実測値を使わずに、推定値を用いる場合とが選択できる。実測値を使うか否かは、パラメータ入力部111からの実測値使用/不使用のオプションにより設定できる。そして、受信端子電圧と、雑音値推定計算部119で算出された雑音電力とにより、列車通過時及び無列車時のC/N比を算出する。このC/N比から、受信時に障害が生じるかどうかを判定する。表示部122は、推定結果を表示する。
【0052】
3.ハードウェアの構成
本発明の実施形態の受信電波品質推定装置は、図5に示すような機能を実現するハードウェアで構成できる他、図6に示すような制御装置10に上述のような動作を行うプログラムを実装することによって、ソフトウェアと協働するハードウェアとして実現することができる。
【0053】
図6において、CPU11は、バス12に接続される。CPU11は、コマンドを解釈して、実行を行う。このバス12に、ROM13、RAM14が接続される。ROM13には、BIOS等のブートプログラムが記憶されている。RAM14は、メインメモリとして用いられる。また、バス12には、HDDドライブ15が接続される。HDDドライブ15には、OSやアプリケーションのプログラムが記録される他、各種のファイルが記録される。
【0054】
また、バス12には、グラフィックス処理部17を介して、液晶ディスプレイ等の表示デバイス18が接続される。また、バス12には、オーディオ処理部19を介して、スピーカ26が接続される。また、バス12には、通信インターフェース25が接続される。通信インターフェース25は、LANやインターネット等により通信を行うためのものである。
【0055】
さらに、バス12には、汎用インターフェース20が接続される。汎用インターフェース20としては、例えば、USBインターフェースが用いられる。汎用インターフェース20には、キーボード21やマウス22等の入力装置が接続される。
【0056】
また、この汎用インターフェース20には、CDやDVD等の光ディスクドライブ23が接続される。さらに、汎用インターフェース20には、メモリカードドライブ24が接続される。この汎用インターフェースには、その他各種のデバイスを接続することができる。
【0057】
4.処理手順
次に、上述のような動作を行って受信品質を判定するプログラムについて、説明する。
4−1.入力値
受信品質の推定処理を行う際に、キーボード21やマウス22を使って、必要な情報が入力される。入力値としては、以下のものがある。
<送信点に関する入力値>
緯度:tx_n
経度:tx_e
標高:tx_hg
タワー地上高:tx_ha
出力(ERP):tx_erp
中心周波数:freq
偏波面:poler
<受信点に関する入力値>
標高:rx_hg
受信アンテナ最低高:rx_ha_min
受信アンテナ最高高:rx_ha_max
受信点名:rx_comment
アンテナ利得:rx_ant_gain
ケーブル長:rx_cable
受信機NF:rx_nf
ブースター利得:rx_boost
ブースターNF:rx_boost_nf
<構造物3に関する入力値>
緯度:rail_n
経度:rail_e
受信点〜構造物中心間最小距離:rail_d_min
受信点〜構造物中心間最大距離:rail_d_max
距離の変化ピッチ:rail_d_pitch
レールレベル:rl
高架橋桁底面〜レールレベル:btm_rl
地表面〜高架橋桁底面:gnd_btm
レールレベル〜防音壁:rl_wall
構造物の幅:width
軌道中心間隔:spacing
防音壁の材質:wallメニューから選択(金属製、非金属性、なし)
構造物の種類:structメニューから高架橋(見通し可)、 高架橋(見通し不可) 盛土)
<計算条件に関する入力>
無列車時の受信端子電圧の測定値を使う:meas_flag チェックボックスでYes/Noを設定
受信端子電圧の測定値:meas_v
【0058】
図7〜図9は、入力画面の例を示すものである。図7は、構造物3が一重構造の場合の例である。図8は、構造物3が二重構造の場合の例である。図9は、送信点1と受信点2との間に、山等の障害物がる場合の例である。
【0059】
4−2.座標換算とオブジェクト生成の処理
図10のステップS101〜S108は、座標換算とオブジェクト生成の処理を示している。
【0060】
ステップS101で、CPU11は、設定画面から計算条件を取得する。計算条件は、無列車時の受信端子電圧の測定値を使うかどうかが設定できる。これは、チェックボックスでYES/NOで設定でき、meas_flagで示される。
【0061】
ステップS102で、CPU11は、送信点1の緯度経度、構造物3の緯度経度から、電波通路長d、構造物3から送信点1への方向β、見通し距離dtを求める。
【0062】
ステップS103で、CPU11は、送信点1の高さ(tx_hg + TX_ha)から、見通し距離dtを求める。
【0063】
ステップS104で、CPU11は、電波通路長dと見通し距離dtとを比較し、見通し外かどうかを判定する。電波通路長dが見通し距離dtより大きい場合には、見通し外のため通信不可と判定し(ステップS105)、計算を終了する。
【0064】
ステップS106で、CPU11は、送信点1の座標を決定し、送信点オブジェクトtxを生成する。送信点1に関するパラメータとしては、送信点1の位置(x、y座標)、送信点1の地上高、送信出力、中心周波数、波長、偏波面等が設定される。図11に示すように、x座標は水平方向、y座標は垂直方向であり、送信点1のx座標tx.xは原点とされる。
tx.x = 0
送信点1のy座標tx.yは、送信点1の標高tx_hgと、タワーの地上高tx_haとから、tx.y = tx_hg + tx_ha
とされる。
出力tx.erpは入力値tx_erp、周波数tx.freqは入力値tx_freq、波長tx.lambdaは300/freq、偏波面tx.polは入力値polerとされる。
【0065】
ステップS107で、CPU11は、受信点2の座標を決定し、受信点オブジェクトrxを生成する。受信点2に関するパラメータとしては、受信点2の位置(x、y座標)、ゲイン、ケーブル長が設定される。図11に示すように、x座標は水平方向、y座標は垂直方向であり、受信点2のx座標rx.xは、送信点1からの距離
rx.x = d+rail_d_min
とされる。
受信点2のy座標rx.yは、受信点2の標高rx_hgと、受信点2の最低地上高rx_ha_minとから、
rx.y = rx_hg + rx_ha_min
とされる。アンテナ利得はrx_ant_gain、ケーブル長はrx_cable、受信機NFはrx_nfとされる。また、ブースター利得はrx_boost、ブースターNFはrx_boost_nfとされる。
【0066】
ステップS108で、CPU11は、構造物3の座標を決定し、構造物3オブジェクトrailを生成する。構造物3に関するパラメータとしては、構造物3の緯度経度および受信点2と構造物3間の中心間距離(最小距離、最大距離)、距離変化ピッチ、レールレベル、高架橋桁底面、レールレベルと防音壁との管の距離、構造物3の幅、起動中心間隔、防音壁の材質(金属、非金属)、構造物3の種類(高架橋(見通し可/不可)、盛土)等が設定される。図11に示すように、構造物3の送信側頂点の座標(rail.top_tx.x ,rail.top_tx.y)と、構造物3の送信側底部の座標(rail.btm_tx.x ,rail.btm_tx.y)と、構造物3の受信側頂点の座標(rail.top_rx.x ,rail.top_rx.y)と、構造物3の受信側底部の座標(rail.btm_rx.x ,rail.btm_rx.y)と、送信側線路の列車4aの内側頂点の座標(rail.train_tx_in.x ,rail.train_tx_in.y)と、送信側線路の列車4aの外側頂点の座標(rail.train_tx_out.x ,rail.train_tx_out.y)と、受信側線路の列車4bの内側頂点の座標(rail.train_rx_in.x ,rail.train_rx_in.y)と、受信側線路の列車4bの外側頂点の座標(rail.train_rx_out.x ,rail.train_rx_out.y)とからなる。なお、以下の説明では、x座標とy座標とを含めて、構造物3の受信側頂点の座標はrail_rx_top、構造物3の受信側底部の座標はrail_rx_btm、構造物3の送信側頂点の座標はrail_tx_top、構造物3の送信側底部の座標はrail_tx_btm、送信側線路の列車4aの内側頂点の座標はtrain_tx_in、送信側線路の列車4aの外側頂点の座標はtrain_tx_out、受信側線路の列車4bの内側頂点の座標はtrain_rx_in、受信側線路の列車4bの外側頂点の座標はtrain_rx_outとする。
【0067】
4−3.送受信点間に何もない条件での受信電界強度の計算処理
図12のステップS201〜S204は、送信点1と受信点2との間に何もない条件での受信強度を計算するものである。前述したように、UHFの電波では、地表波の減衰は大きく、また、電離層を突き抜けるため、送信点1と受信点2との間に何もない条件での受信電界強度は、直接波の電界強度と反射波の電界強度から算出できる。
【0068】
ステップS201で、CPU11は、送信点1の座標と、受信点2の座標と、送信電力とから、自由空間での受信電界強度E0を求める。ステップS202で、CPU11は、送信点1の座標と受信点2の座標から反射点の座標refを求める。ステップS203で、CPU11は、送信点1の座標と受信点2の座標から、受信点2における反射波の受信電界強度Erefを求める。
【0069】
ステップS204で、CPU11は、ステップS201で求められた受信電界強度E0と、ステップS203で求められた反射波の受信電界強度Erefから、送信点1と受信点2との間に何もない条件での受信電界強度E_noneを
E_none = E0 + Eref
として求める。
【0070】
4−4.送受信点間に構造物3のみある条件での回折波の計算処理
図13のステップS304〜S305は、送信点1及び受信点2間に構造物3のみある条件での回折波を計算するものである。この回折波は、送信点1及び受信点2の座標と構造物3の頂点とからクリアランスを求め、フレネル積分により、回折損を求めて算出できる。
【0071】
ステップS301で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標と、構造物3の送信点1側頂点の座標から、送信点1及び受信点2間の電波路と構造物3の送信点1側頂点とのクリアランスhc_txを求める。
【0072】
ステップS302で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標と、構造物3の受信点2側頂点の座標から、送信点1及び受信点2間の電波路と構造物3の受信点2側頂点とのクリアランスhc_rxを求める。
【0073】
ステップS303で、CPU11は、送信点1及び受信点2間の電波路と構造物3の送信点1側頂点とのクリアランスhc_txと、送信点1及び受信点2間の電波路と構造物3の受信点2側頂点とのクリアランスhc_rxとを比較し、小さい側のクリアランスを、構造物3のクリアランスhcとして代入する。
【0074】
ステップS304で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標、構造物3の座標、クリアランスhcから遮蔽係数φを求め、フレネル積分により回折損Ssを求める。
【0075】
ステップS305で、CPU11は、回折損Ssと自由空間電界強度E0とを乗じて、送信点1及び受信点2間に構造物3のみある条件での受信電界強度E0_railを求める。
【0076】
4−5.送受信点間に構造物3と列車がある条件での回折波の計算処理
図14のステップS401〜S413は、送信点1及び受信点2間に構造物3と列車4a、4bがある条件での回折波を計算するものである。この回折波は、送信点1及び受信点2の座標と、列車4a、4bの頂点とからクリアランスを求め、フレネル積分により、回折損を求めて算出できる。
【0077】
ステップS401で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標と、送信側線路の列車4aの外側頂点の座標から、送信点1及び受信点2間の電波路と送信側線路の列車4aの外側頂点とのクリアランスhc_1を求める。
【0078】
ステップS402で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標と、送信側線路の列車4aの内側頂点の座標から、送信点1及び受信点2間の電波路と送信側線路の列車4aの内側頂点とのクリアランスhc_2を求める。
【0079】
ステップS403で、CPU11は、送信側線路の列車4aの外側頂点クリアランスhc_1と、内側頂点のクリアランスhc_2とを比較し、小さい側のクリアランスを、送信側線路の列車4aクリアランスhc_txとして代入する。
【0080】
ステップS404で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標と、受信側線路の列車4bの外側頂点の座標から、送信点1及び受信点2間の電波路と受信側線路の列車4bの外側頂点とのクリアランスhc_1を求める。
【0081】
ステップS405で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標と、受信側線路の列車4bの内側頂点の座標から、送信点1及び受信点2間の電波路と受信側線路の列車4bの内側頂点とのクリアランスhc_2を求める。
【0082】
ステップS406で、CPU11は、受信側線路の列車4bの外側頂点クリアランスhc_1と、内側頂点のクリアランスhc_2とを比較し、小さい側のクリアランスを、受信側線路の列車4bクリアランスhc_rxとして代入する。
【0083】
ステップS407で、CPU11は、ステップS403で求められた送信側線路の列車4aクリアランスhc_txと、ステップS406で求められた受信側線路の列車4bクリアランスhc_rxとを比較し、小さい側のクリアランスを、送信側線路と受信側線路との双方に列車があるときのクリアランスhc_bothとして代入する。
【0084】
ステップS408で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標、送信側線路の列車4aの座標、クリアランスhc_txから遮蔽係数φを求め、フレネル積分により回折損Stxを求める。
【0085】
ステップS409で、CPU11は、回折損Stxと自由空間電界強度E0とを乗じて、送信側線路に列車4aがある条件での受信電界強度E0_trai_txを求める。
【0086】
ステップS410で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標、受信側線路の列車4bの座標、クリアランスhc_rxから遮蔽係数φを求め、フレネル積分により回折損Srxを求める。
【0087】
ステップS411で、CPU11は、回折損Srxと自由空間電界強度E0とを乗じて、受信側線路に列車4bがある条件での受信電界強度E0_trai_rxを求める。
【0088】
ステップS412で、CPU11は、送信点1及び受信点2の座標、送信側線路の列車4a又は受信側線路の列車4bの座標、クリアランスhc_bothから遮蔽係数φを求め、フレネル積分により回折損Sbothを求める。
【0089】
ステップS413で、CPU11は、回折損Sbothと自由空間電界強度E0とを乗じて、送信側及び受信側線路に列車4a,4bがある条件での受信電界強度E0_trai_bothを求める。
【0090】
4−6.高架下を通過する電波が受信点2に到達するか否かの判定処理
図15のステップS501〜S509は、構造物3の高架橋の下側を通過する電波が受信点2に到達するか否かを判定する処理である。これは、図4に示したように、反射波A3が反射点6から受信点2に向かう経路の直線Lが高架橋の下側を通過するかどうかを幾何学的に求めることで判定できる。
【0091】
ステップS501で、CPU11は、高架下を考慮する係数Crefを(Cref=0)に初期化する。ステップS502で、CPU11は、反射点6の座標refと受信点2の座標とから、両点を結ぶ直線Lを求める。
【0092】
ステップS503で、CPU11は、構造物3の下面の送信側の座標rail.btm_tx.vと直線Lとを比較し、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lより上にあるかどうかを判定する。
【0093】
ステップS503で、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lより上にあると判定された場合には、ステップS504で、CPU11は、高架下を考慮する係数Crefを(Cref=1)に設定する。
【0094】
ステップS503で、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lより上にないと判定された場合には、ステップS505で、CPU11は、構造物3の下面の送信側の座標rail.btm_tx.vと直線Lとを比較し、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lの上にあるかどうかを判定する。構造物3の下面の送信側の座標が直線Lの上にあれば、ステップS505で、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lの上にあると判定された場合には、ステップS506で、CPU11は、高架下を考慮する係数Crefを(Cref=0.5)に設定する。ステップS505で、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lの上にないと判定された場合には、高架下を考慮する係数Crefは初期値のままに設定する。
【0095】
ステップS507で、CPU11は、構造物3の下面の受信側の座標rail.btm_rx.vと直線Lとを比較し、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lより上にあるかどうかを判定する。
【0096】
ステップS507で、構造物3の下面の受信側の座標が直線Lより上にあると判定された場合には、高架下を考慮する係数Crefはそのままとする。
【0097】
ステップS507で、構造物3の下面の受信側の座標が直線Lより上にないと判定された場合には、ステップS508で、CPU11は、構造物3の下面の送信側の座標rail.btm_tx.vと直線Lとを比較し、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lの上にあるかどうかを判定する。ステップS508で、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lの上にあれば、ステップS509で、高架下を考慮する係数Crefを(Cref=0.5)に設定する。ステップS508で、構造物3の下面の送信側の座標が直線Lの上にないと判定された場合には、高架下を考慮する係数Crefは初期値のままに設定する。
【0098】
4−7.受信電界強度の変動幅の算出処理
図16のステップS601〜S609は、構造物3の下側を通過する電波を合成して、構造物3がある場合、及び構造物3に列車4a、4bが通過する場合の受信電界を求め、構造物3に列車4a、4bが通過することによる変動幅を求めるものである。
【0099】
ステップS601で、先ず、CPU11は、送信点1及び受信点2の間に構造物3のみがある場合の受信電界強度E_railを求める。送信点1及び受信点2の間に構造物3のみがある場合の回折波の受信電界強度E0_railは、ステップS305で求められている。また、前述したように、反射点からの電波が高架下を通過する場合がある。これは、前述の高架下を考慮する係数Crefによって示される。よって、送信点1及び受信点2の間に構造物3のみがある場合の受信電界強度E_railは、回折波の受信電界強度E0_railと、係数Crefを乗じた高架下を通過する電波の受信電界強度Eref×Crefとを合成したものとなり、
E_rail = E0_rail + Eref×Cref
として求められる。
【0100】
ステップS602で、CPU11は、送信点1及び受信点2の間に構造物3があり、送信点1側の線路に列車4aが通過している場合の受信電界強度E_train_txを求める。送信点1側の線路に列車4aが通過している場合の回折波の受信電界強度は、ステップS409に、 E0_train_txとして求められている。よって、CPU11は、送信点1及び受信点2の間に構造物3があり、送信点1側の線路に列車4aが通過している場合の受信電界強度E_train_txは、回折波の受信電界強度 E0_train_txと、係数Crefを乗じた高架下を通過する電波の受信電界強度Eref×Crefとを合成したものとなり、
E_train_tx = E0_train_tx + Eref×Cref
として求められる。
【0101】
ステップS603で、CPU11は、送信点1及び受信点2の間に構造物3があり、受信点2側の線路に列車4bが通過している場合の受信電界強度E_trai_rxを求める。受信点2側の線路に列車4bが通過している場合の回折波の受信電界強度は、ステップS411に、 E0_train_rxとして求められている。よって、CPU11は、送信点1及び受信点2の間に構造物3があり、受信点2側の線路に列車4bが通過している場合の受信電界強度E_train_rxは、回折波の受信電界強度 E0_train_rxと、係数Crefを乗じた高架下を通過する電波の受信電界強度Eref×Crefとを合成したものとなり、
E_train_rx = E0_train_rx + Eref×Cref
として求められる。
【0102】
ステップS604で、CPU11は、送信点1及び受信点2の間に構造物3があり、送信点1側及び受信点2側の線路の双方に列車4a,4bが通過している場合の受信電界強度E_trai_both求める。送信点1側及び受信点2側の双方の線路に列車4a、4bが通過している場合の回折波の受信電界強度は、ステップS413に、 E0_train_bothとして求められている。よって、CPU11は、送信点1及び受信点2の間に構造物3があり、送信点1側及び受信側の双方の線路に列車4a、4bが通過している場合の受信電界強度E_train_bothは、回折波の受信電界強度 E0_train_bothと、係数Crefを乗じた高架下を通過する電波の受信電界強度Eref×Crefとを合成したものとなり、
E_train_both = E0_train_both + Eref×Cref
として求められる。
【0103】
ステップS605で、CPU11は、送信点1及び受信点2の間に何もない条件での受信電界強度と、構造物3がある条件での受信電界強度とを比較して、構造物3による影響L_railを求める。送信点1及び受信点2の間に何もない条件での受信電界強度E_noneは、ステップS204で求められている。構造物3がある条件での受信電界強度E_railは、ステップS601で求められている。構造物3による影響L_railをデシベルで表すと、
20log10(|E_rail|/|E_none|)
として求められる。
【0104】
ステップS606で、CPU11は、構造物3のみがある条件での受信電界強度と、送信点1側の線路に列車4aがある条件での受信電界強度とを比較して、送信点1側の線路の列車4aによる影響L_train_txを求める。構造物3のみがある条件での受信電界強度E_railは、ステップS601で求められている。送信点1側の線路に列車4aがある条件での受信電界強度E_train_txは、ステップS602で求められている。送信点1側の線路に列車4aがあるときの影響L_train_txをデシベルで表すと、
20log10(|E_train_tx|/|E_rail|)
として求められる。
【0105】
ステップS607で、CPU11は、構造物3のみがある条件での受信電界強度と、受信点2側の線路に列車4bがある条件での受信電界強度とを比較して、受信点2側の線路の列車4bによる影響L_train_rxを求める。構造物3のみがある条件での受信電界強度E_railは、ステップS601で求められている。受信点2側の線路に列車4bがある条件での受信電界強度E_train_rxは、ステップS603で求められている。受信点2側の線路に列車4bがあるときの影響L_train_rxをデシベルで表すと、
20log10(|E_train_rx|/|E_rail|)
として求められる。
【0106】
ステップS608で、CPU11は、構造物3のみがある条件での受信電界強度と、送信点1側と受信点2側の双方の線路に列車4a、4bがある条件での受信電界強度とを比較して、送信点1側と受信点2側の双方の線路の列車4a、4bによる影響L_train_bothを求める。構造物3のみがある条件での受信電界強度E_railは、ステップS601で求められている。送信点1側と受信点2側の双方の線路に列車4a、4bがある条件での受信電界強度E_train_bothは、ステップS604で求められている。送信点1側と受信点2側の双方の線路に列車4a、4bがあるときの影響L_train_rxをデシベルで表すと、
20log10(|E_train_both|/|E_rail|)
として求められる。
【0107】
ステップS609で、CPU11は、ステップS606で求められた送信点1側の線路の列車4aによる影響L_train_txと、ステップS607で求められた受信点2側の線路の列車4bによる影響L_train_rxと、ステップS608で求められた送信点1側と受信点2側の双方の線路の列車4a、4bによる影響L_train_bothの中の最大値を選び、列車通過による変動幅L_trainを設定する。
L_train = max(L_train_tx, L_train_rx, L_train_both)
【0108】
4−8.雑音電力の推定計算処理
図17のステップS701〜S704は、雑音電力の推定計算を行うものである。
【0109】
ステップS701で、CPU11は、受信点2にある受信機のNF(雑音指数、rx_nf)、ブースターの利得(rx_boost)とNF(rx_boost_nf)とから、受信系のNFを求める。ステップS702で、CPU11は、ITU−R(国際通信連合)の勧告ITU−R P.372に基づいて、列車が通過していないときの受信雑音電力N_noneを求める。N_noneの単位はdBmである。
【0110】
ステップS703で、CPU11は、構造物3の中心と受信点2との距離と、実測に基づく列車通過時の雑音強度の距離特性テーブルから、列車通過時の雑音電力の上昇分dNを算出する。dNの単位はdBである。
【0111】
ステップS704で、CPU11は、列車通過時の受信雑音電力N_trainを求める。列車通過時の受信雑音電力N_trainは、一般的な受信雑音電力N_noneに、列車通過時の雑音電力の上昇分dNを加算したものになり、
N_train = N_none + dN
として算出できる。N_trainの単位はdBmである。
【0112】
4−9.列車通過による影響の推定と出力処理
図18及び図19のステップS801〜S812は、列車通過による影響受けた場合のC/N比と、判断結果の出力処理を示すものである。
【0113】
ステップS801で、CPU11は、入力オプションから、無列車時の受信端子電圧の実測値を使うかどうかを判定する。無列車時の受信端子電圧の実測値を使う場合には、ステップS802で、送信点1及び受信点2の間に構造物3のみある条件で、受信端子電圧を実測し、受信端子電圧V_railに測定値を設定する。
【0114】
ステップS803で、CPU11は、送信点1と受信点2との間に列車4a、4bが通過したときの受信端子電圧V_trainを求める。これは、測定値に基づく受信端子電圧V_railと、ステップS609で求められた列車通過時の変動幅L_trainとから、
V_train = V_rail + L_train
として求められる。
【0115】
ステップS804で、CPU11は、ステップS802で設定した構造物3のみあるときの受信端子電圧VrailをdBm単位に換算し、一般的な受信雑音電力N_noneを減じて、無列車時のC/N比をCN_railとして求める。
【0116】
ステップS805で、CPU11は、ステップS803で算出した列車通過時の受信端子電圧VtrainをdBm単位に換算し、列車通過時の受信雑音電力N_trainを減じて、列車通過時のC/N比N_trainとして求める。
【0117】
ステップS806で、CPU11は、ステップS804で求められた無列車時のC/N比CN_railが28dB以下かどうかを判定する。なお、C/N比28dBは、変調方式64QAM、符号化率7/8で送信された放送波を固定受信した場合に、ビット誤り率が2×10−4以下となるための所要C/N(22dB)に対し、装置化マージン、干渉マージン、マルチパスマージンを加えて求められる値であり、地上波ディジタルテレビジョン放送での固定受信の場合の標準的な回線設計で使用されている値である。なお、他の送信条件もしくは他の受信条件の場合には、該当するC/Nを設定することにより、推定が可能である。無列車時のC/N比が28dB以下なら、列車通過時に障害が発生する可能性が極めて高いと判定される(ステップS807)。
【0118】
無列車時のC/N比が28dB以下でなければ、ステップS808で、CPU11は、ステップS805で求められた列車通過時のC/N比CN_trainが28dB以下かどうかを判定する。列車通過時のC/N比が28dB以下なら、列車通過時に障害が発生する可能性が高いと判定される(ステップS809)。
【0119】
列車通過時のC/N比が28dB以下でなければ、ステップS810で、CPU11は、ステップS805で求められた列車通過時のC/N比CN_trainが37dB以下かどうかを判定する。なお、C/N比37dBは、上記のC/N比28dBに、マージン9dBを加算した値である。なお、他の送信条件もしくは他の受信条件の場合には、該当するC/Nを設定することにより、推定が可能である。列車通過時のC/N比が37dB以下なら、列車通過時に障害が発生する可能性が低いと判定される(ステップS811)。列車通過時のC/N比が37dB以下でなければ、列車通過時に障害が発生する可能性は極めて低いと判定される(ステップS812)。
【0120】
ステップS801で、無列車時の受信端子電圧の実測値を使用しない場合には、図19のステップS813で、CPU11は、列車通過時にもC/N比28dBを確保するための最低限必要な受信端子電圧V_trainを以下のようにして求める。
V_train = C/N + N_train + L_train + 108.8
【0121】
そして、ステップS814で、CPU11は、ビルや山の影響を考慮して推定計算により得られた無列車時の受信電圧の推定値を入力し、この推定計算により得られた無列車時の受信電圧がステップS813で求められたV_trainを確保しているかどうかを判定する。
【0122】
なお、無列車時の受信端子電圧の実測値を使用しない場合にも、推定した受信電圧を用いて、ステップS802〜ステップS812と同様な処理を行い、4段階で推定結果を示すようにしても良い。
【0123】
4−10.計算の反復、終了の判定処理
図20のステップS901〜S905は、計算の反復、終了判定処理を示すものである。
【0124】
ステップS901で、CPU11は、受信点2の座標rx.xを、所定ピッチrail_d_pitchだけ増加する。
【0125】
ステップS902で、CPU11は、受信点2の座標rx.xが、最大値d+rail.d_maxを越えているかどうかを判定する。最大値を越えていなければ、ステップS201にリターンし、処理を反復する。
【0126】
ステップS902で、受信点2の座標rx.xが、最大値d+rail.d_maxを越えていると判定された場合には、ステップS903で、CPU11は、受信点2の座標rx.xを最小値d+rail.d_minに戻す。そして、ステップS904で、CPU11は、受信アンテナ高rx_haと受信点2のy座標rx.yを1m増やす。そして、CPU11は、ステップS905で、受信点2のy座標が標高rx_hgと受信アンテナ最高高rx_ha_maxとの加算値より大ききかどうかを判定し、大きければ、ステップS201にリターンし、処理を反復する。受信点2のy座標が標高rx_hgと受信アンテナ最高高rx_ha_maxとの加算値より小さくなったら、処理を終了する。
【0127】
以上説明したように、本発明の実施形態では、構造物3だけの場合と、構造物3に列車4a、4bが通過する場合とを考慮して、受信品質が推定できる。また、構造物3が高架橋の場合に、高架下を通過する電波も考慮にいれて、受信品質を推定できる。
【0128】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0129】
なお、ソースとなるプログラムは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体で提供される。また、ソースとなるプログラムは、コンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されても良い。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、ソースとなるプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0130】
1…送信点, 2…受信点, 3…構造物, 4a,4b…列車, 111…パラメータ入力部, 112…オブジェクト生成部, 113…基準電界強度計算部, 114…構造物回折波計算部, 115…鉄道回折波計算部, 116…高架下電波推定部, 117…受信電界強度算出部, 118…変動幅算出部, 119…雑音値推定計算部, 121…判定部, 122…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信点からの電波を受信点で受信し、該受信した電波の品質を推定する受信電波品質推定装置であって、
前記送信点に関するパラメータと、前記受信点に関するパラメータと、前記送信点と前記受信点との間の構造物に関するパラメータとを入力するパラメータ入力手段と、
前記送信点の座標を含む送信点オブジェクトと、前記受信点の座標を含む受信点オブジェクトと、前記構造物の座標を含む鉄道オブジェクトを生成するオブジェクト生成手段と、
前記送信点と前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度を求める基準電界強度計算手段と、
前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度を求める構造物回折波計算手段と、
前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度を求める鉄道回折波計算手段と、
前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物の高架下を電波が通過するかどうかを判定する高架下電波推定手段と、
前記構造物回折波計算手段で求められた構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度と、前記鉄道回折波計算手段により求められた前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度と、前記高架下電波推定手段での判定結果を用いて、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度を算出する受信電界強度算出手段と、
前記送信点と前記前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度とを比較して前記構造物の影響値を算出し、また、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度とを比較して、移動体通過時の変動幅を算出する変動幅算出手段と、
前記構造物と前記受信点との距離に応じて、移動体通過時の雑音電力の上昇分を算出する雑音値推定計算手段と、
前記移動体がないときの前記受信点での受信端子電圧と、前記変動幅算出手段で求められた前記移動体通過時の変動幅とから、前記移動体の通過時の前記受信点での受信端子電圧を算出し、該算出された受信端子電圧値と、前記雑音値推定計算手段で求められた雑音電力の推定値とからC/N比を算出し、該算出されたC/N比から受信時に障害が生じるかどうかを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする受信電波品質推定装置。
【請求項2】
前記高架下電波推定手段は、前記送信点と前記受信点と前記構造物の位置関係から、前記構造物の高架下を通過して受信点に到達する経路の有無を幾何学的に求めることを特徴とする請求項1に記載の受信電波品質推定装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記移動体がないときの受信端子電圧として、実測値を用いることを特徴とする請求項1に記載の受信電波品質推定装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記移動体がないときの受信端子電圧として、推定値を用いることを特徴とする請求項1に記載の受信電波品質推定装置。
【請求項5】
情報処理装置を、送信点からの電波を受信点で受信し、該受信した電波の品質を推定する受信電波品質推定装置として機能させるためのコンピュータープログラムであって、
前記送信点に関するパラメータと、前記受信点に関するパラメータと、前記送信点と前記受信点との間の構造物に関するパラメータとを入力する工程と、
前記送信点の座標を含む送信点オブジェクトと、前記受信点の座標を含む受信点オブジェクトと、前記構造物の座標を含む鉄道オブジェクトを生成する工程と、
前記送信点と前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度を求める工程と、
前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度を求める工程と、
前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度を求める工程と、
前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物の高架下を電波が通過するかどうかを判定する工程と、
前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度と、前記前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度と、前記高架下を電波が通過するかどうかの判定結果を用いて、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度を算出する工程と、
前記送信点と前記前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度とを比較して前記構造物の影響値を算出し、また、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度とを比較して、移動体通過時の変動幅を算出する工程と、
前記構造物と前記受信点との距離に応じて、移動体通過時の雑音電力の上昇分を算出する工程と、
前記移動体がないときの前記受信点での受信端子電圧と、前記移動体通過時の変動幅とから、前記移動体が通過したときの前記受信点での受信端子電圧を算出し、該算出された受信端子電圧値と、前記雑音電力の推定値とからC/N比を算出し、該算出されたC/N比から受信時に障害が生じるかどうかを判定する工程と
を前記情報処理装置に実行させるためのコンピュータープログラム。
【請求項6】
送信点からの電波を受信点で受信し、該受信した電波の品質を推定する受信電波品質推定方法であって、
前記送信点に関するパラメータと、前記受信点に関するパラメータと、前記送信点と前記受信点との間の構造物に関するパラメータとを入力する工程と、
前記送信点の座標を含む送信点オブジェクトと、前記受信点の座標を含む受信点オブジェクトと、前記構造物の座標を含む鉄道オブジェクトを生成する工程と、
前記送信点と前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度を求める工程と、
前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度を求める工程と、
前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度を求める工程と、
前記送信点からの電波が前記受信点に到達する際に、前記構造物の高架下を電波が通過するかどうかを判定する工程と、
前記構造物のみにより生じる回折波の受信電界強度と、前記前記構造物に移動体が通過したときに生じる回折波の受信電界強度と、前記高架下を電波が通過するかどうかの判定結果を用いて、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度を算出する工程と、
前記送信点と前記前記受信点との間に何もない条件での受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度とを比較して前記構造物の影響値を算出し、また、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物のみがある場合の受信電界強度と、前記送信点と前記受信点との間に前記構造物と移動体がある場合の受信電界強度とを比較して、移動体通過時の変動幅を算出する工程と、
前記構造物と前記受信点との距離に応じて、移動体通過時の雑音電力の上昇分を算出する工程と、
前記移動体がないときの前記受信点での受信端子電圧と、前記移動体通過時の変動幅とから、前記移動体が通過したときの前記受信点での受信端子電圧を算出し、該算出された受信端子電圧値と、前記雑音電力の推定値とからC/N比を算出し、該算出されたC/N比から受信時に障害が生じるかどうかを判定する工程と
を含むことを特徴とする受信電波品質推定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2010−239173(P2010−239173A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81770(P2009−81770)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】