説明

受光素子及び受光素子の製造方法、半導体装置

【課題】寄生容量を抑制しつつ、電磁波に対する遮蔽効果を十分に発揮することができるようにした受光素子及び受光素子の製造方法、半導体装置を提供する。
【解決手段】P−領域1と、P−領域1に接合されたN−領域3と、N−領域3の一方の面3b上に形成された光透過性を有する誘電体5と、誘電体5上に形成された光透過性を有する電磁シールド7と、を備え、電磁シールド7は、ポリシリコンからなる。受光素子10に入射してくる光は、電磁シールド7及び誘電体5を通ってPN接合面3aに到達する。このため、PN接合面3aでは、受光量の低下を抑えつつ、電磁波の到達を抑えることができる。また、電磁シールド7とN−領域3との間には誘電体5が介在するため、当該間の寄生容量を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子及び受光素子の製造方法、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものがあり、かかる文献には、PN接合を有する受光素子においての電磁シールドとして、3種類の構成が開示されている。具体的には、特許文献1に開示された第1の構成(以下、従来例1という。)は、受光素子の上方に金属メッシュを配置したものである。
また、特許文献1に開示された第2の構成(以下、従来例2という。)は、受光素子の表面に、この表面とは反対導電型の半導体層を全面的に配置したものである。例えば図9に示すように、受光素子の表面がN−領域103の場合は、このN−領域103上に電磁シールドとして、P+領域105を全面的に配置したものである。
【0003】
さらに、特許文献1に開示された第3の構成(以下、従来例3という。)は、受光素子の表面に、この表面とは反対導電型の半導体層を部分的に配置したものである。例えば図9に示すように、受光素子の表面がN−領域103の場合は、このN−領域103上に電磁シールドとして、格子状若しくはストライプ状にP−領域105を配置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−23023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来例1では、金属メッシュに光が当たると、その影が受光素子の表面に映る。そして、この影の分だけ、受光素子における受光量が減少してしまうという課題があった。また、従来例2では、P+領域105とN−領域103との接合容量(即ち、寄生容量)が大きいため、光電変換により出力される信号のS/N比が低下してしまうという課題があった。
【0006】
一方、従来例3では、従来例2と比べて、P+領域105とN−領域103との接合面積を小さくすることができ、接合容量を低減することができるため、S/N比の低下を抑制することができる。しかしながら、従来例3では、P+領域105が存在していない領域(即ち、平面視でN−領域103が露出している領域)にも電磁波が入射するため、この領域に入射した電磁波に対しては遮蔽効果を発揮することができないという課題があった。
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、寄生容量を抑制しつつ、電磁波に対する遮蔽効果を十分に発揮できるようにした受光素子及び受光素子の製造方法、半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る受光素子は、第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層に接合された第2導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層の前記第1半導体層と接合する第1の面の反対側にある第2の面上に形成された光透過性を有する誘電体と、前記誘電体上に形成された光透過性を有する電磁シールドと、を備え、前記電磁シールドは、半導体からなることを特徴とする。ここで、「第1導電型」はP型又はN型の一方であり、「第2導電型」はP型又はN型の他方である。また、誘電体上に形成される「半導体」としては、例えば、非晶質又は多結晶構造の半導体膜が挙げられる。
【0008】
このような構成であれば、受光素子に入射してくる光は、電磁シールド及び誘電体を通って第2半導体層の第1の面(即ち、第1半導体層と第2半導体層との接合面)に到達する。このため、第2半導体層の第1の面では、受光量の低下を抑えつつ、電磁波の到達を抑えることができる。また、電磁シールドと第2半導体層との間には誘電体が介在するため、当該間の寄生容量(即ち、意図しない容量成分)を低減することができる。このため、光電変換により出力される信号のS/N比を向上させることができる。なお、「第1半導体層」としては、例えば、後述するP−領域(P型のシリコン基板)1が該当する。「第2半導体層」としては、例えば、後述するN−領域3が該当する。
【0009】
また、上記の受光素子において、前記誘電体及び前記電磁シールドによって、前記第2半導体層の前記第2の面は全て覆われていることを特徴としてもよい。このような構成であれば、電磁波の遮蔽効果をさらに高めることができる。
また、上記の受光素子において、前記第1半導体層及び前記第2半導体層が内部に形成されたシリコン基板、をさらに備え、前記誘電体は、前記シリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜からなり、前記電磁シールドは、前記シリコン酸化膜上に形成されたポリシリコン膜からなることを特徴としてもよい。このような構成であれば、例えば、シリコン酸化膜はシリコン基板を熱酸化することにより形成することができる。ポリシリコン膜はCVD法で形成することができる。従って、例えば、MOSトランジスタやポリシリコン抵抗体を作製するプロセスにおいて、特別な工程を追加しなくても、誘電体や電磁シールドを形成することが可能である。工程の兼用が可能であるため、製造コストの低減が可能である。
【0010】
また、上記の受光素子において、前記電磁シールドが接地電位に接続されることを特徴としてもよい。このような構成であれば、電磁シールドにおいて、電磁波を受けて生じる電荷を受光素子の外へ容易に逃がすことができる。また、電磁シールドの電位を接地電位に固定することにより、誘電体の下方に配置された第2半導体層に対して意図しない電気的影響を及ぼさないようにすることができる。例えば、電磁シールドの電位が変動した場合には、第2空乏層の第2の面の側で空乏層が伸縮する等の影響が生じるが、本態様では、電磁シールドの電位が接地電位に固定されているため、上記のような電磁シールドの電位による空乏層の伸縮を防ぐことができる。
【0011】
本発明の別の態様に係る受光素子の製造方法は、第1導電型の第1半導体層に接合された第2導電型の第2半導体層の、前記第1半導体層と接合する第1の面の反対側にある第2の面上に、光透過性を有する誘電体を形成する工程と、前記誘電体上に光透過性を有する電磁シールドを形成する工程と、を備え、前記電磁シールドを形成する工程では、当該電磁シールドとして半導体を形成することを特徴とする。このような方法であれば、寄生容量を抑制しつつ、電磁波に対する遮蔽効果を十分に発揮することができ、光電変換により出力される信号のS/N比を向上できるようにした受光素子を提供することができる。
【0012】
また、上記の受光素子の製造方法において、前記第1半導体層及び前記第2半導体層はシリコン基板の内部に形成されており、前記誘電体を形成する工程では、当該誘電体としてシリコン酸化膜を前記シリコン基板を熱酸化することにより形成し、前記電磁シールドを形成する工程では、当該電磁シールドとしてポリシリコン膜をCVD法で形成することを特徴としてもよい。このような方法であれば、例えば、MOSトランジスタやポリシリコン抵抗体を作製するプロセスにおいて、工程を追加しなくても、誘電体や電磁シールドを形成することが可能である。工程の兼用が可能であるため、コストの低減が可能である。
【0013】
本発明のさらに別の態様に係る半導体装置は、上記の受光素子と、前記受光素子と同一の基板に形成された能動素子又は受動素子と、を備えることを特徴とする。ここで、「能動素子」としては、例えば、MOSトランジスタやバイポーラトランジスタが挙げられる。「受動素子」としては、例えば、半導体からなる抵抗体や、半導体を下部電極又は上部電極とするキャパシタが挙げられる。このような構成であれば、上記の受光素子と同様、寄生容量を抑制しつつ、電磁波に対する遮蔽効果を十分に発揮することができる。従って、光電変換により出力される信号のS/N比を向上させたICや、LSIを実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、寄生容量を抑制しつつ、電磁波に対する遮蔽効果を十分に発揮することができる。これにより、光電変換により出力される信号のS/N比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る受光素子10の構成例を模式的に示す概念図。
【図2】受光素子10において電磁波を遮蔽するメカニズムを説明するための図。
【図3】電磁シールド7とPN接合面3aとにおけるエネルギーバンドを示す図。
【図4】受光素子10の具体的な構成例を示す断面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る半導体装置50の構成例を示す断面図。
【図6】半導体装置50の製造方法を示す工程図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る半導体装置60の構成例を示す断面図。
【図8】半導体装置60の製造方法を示す工程図。
【図9】本発明と従来例とにおける構造と、容量値とを比較した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合もある。
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る受光素子10の構成例を模式的に示す概念図である。図1に示すように、この受光素子10は、例えば、P型半導体(以下、P−領域ともいう。)1と、P−領域上に形成されたN型半導体(以下、N−領域ともいう。)3と、N−領域3上に形成された光透過性を有する誘電体5と、誘電体5上に形成された光透過性を有する電磁シールド7と、を備える。
【0017】
ここで、P−領域1及びN−領域3は直に接してフォトダイオード2を構成している。P−領域1は例えばP型の単結晶シリコン(Si)層からなり、N−領域3は例えばN型の単結晶シリコン層からなる。また、誘電体5は、N−領域3上(即ち、N−領域3のP−領域1と接している面(以下、PN接合面ともいう。)3aの反対側の面3b上)に形成されている。この誘電体5によって、N−領域3の一方の面3bは全て覆われており、フォトダイオード2と電磁シールド7との間は電気的に絶縁されている。誘電体5は、例えば、シリコン酸化(SiO2)膜からなる。
【0018】
電磁シールド7は、P−領域1とN−領域3とからなるフォトダイオード2のPN接合面3aに電磁波を到達させないようにするための膜であり、半導体からなる。一例を挙げると、電磁シールド7は、例えば、P型又はN型、或いはi型(即ち、不純物濃度が限りなくゼロに近い、真正)のポリシリコン膜からなる。この電磁シールド7によって、誘電体5上は全て覆われている。なお、この受光素子10において、P−領域1と電磁シールド7は例えば接地電位(GND)に接続されている。
【0019】
図2は、受光素子10において電磁波を遮蔽するメカニズムを説明するための図である。また、図3(a)は図2に示した電磁シールド7の領域Aにおけるエネルギーバンドを示す図であり、図3(b)は図2に示したPN接合面3aの領域Bにおけるエネルギーバンドを示す図である。
図2に示すように、この受光素子10では、電磁シールド7の側から光が入射してくるが、この入射してくる光(以下、入射光ともいう。)には、受光したい波長の光(例えば、波長が650nm〜850nm程度の可視光)だけでなく、これよりも短波長の光(例えば、X線等の電磁波)が含まれている場合がある。
【0020】
このような場合は、図3(a)に示すように、電磁シールド(ポリシリコン膜)7は、電磁波のエネルギーを受けて、その価電子帯から伝導体へ電子が励起される。これにより、電磁波はエネルギーを失うため、電磁波の電磁シールド7から先への伝播を抑えることができる。一方、可視光は電磁波よりも波長が短くエネルギーが小さいため、電磁シールド7における電子の励起にさほど寄与しない。このため、電磁波と比べて、可視光のエネルギーは温存される。また、電磁シールド7を構成しているポリシリコン膜中及び、誘電体5を構成しているシリコン酸化膜中では、波長が長い光ほどより遠くへ伝播し易い傾向がある。このため、電磁波が電磁シールド7で遮蔽されるのに対して、可視光は電磁シールド7と誘電体5とを通過してPN接合面3aに到達することができる。
【0021】
なお、図3(a)に示したように、伝導体に励起された電子の一部は、例えば発熱によりエネルギーを失って価電子帯に戻り、正孔と再結合する。また、電磁シールド7は接地電位に接続されているため、伝導体に励起された電子の一部は接地電位の側へ流れることもある。また、電磁シールド7の電位は接地電位に固定されているため、電磁シールド7において電子が多数励起された場合でも、誘電体5の下方に配置されたN−領域3に対して、意図しない電気的影響(例えば、N−領域3の一方の面3bとその近傍において、空乏層が伸縮する等の影響)を及ぼさないようにすることができる。
【0022】
図2に戻り、PN接合面3aに可視光が入射すると、図3(b)に示すように、可視光は空乏層内及び少数キャリアの拡散長内で電子−正孔対を発生させる。そして、これら電子−正孔対は、空乏層内の電界で分離し、電子はP−領域1からN−領域3へ移動し、ホールはN−領域3からP−領域1へ移動する。これにより、N−領域3からP−領域1へ(即ち、逆バイアスの方向へ)光電流Iが流れる。次に、受光素子10のより具体的な構成例について説明する。
【0023】
図4は、受光素子10の具体的な構成例を示す断面図である。図4に示すように、この受光素子10において、P−領域1は例えばP型のシリコン基板(Psub)からなり、N−領域3は例えばN型ウェル層(Nwell)からなる。また、誘電体5は例えばシリコン酸化膜からなり、電磁シールド7は例えばポリシリコン膜からなる。
また、この受光素子10は、誘電体5下から露出しているN−領域3の表面近傍に形成された高濃度のN型不純物層(N+層)9と、P−領域1の上方に形成された層間絶縁膜(図示せず)と、層間絶縁膜に設けられた開口部(図示せず)を埋め込むようにしてN+層9上に形成されたコンタクト電極11と、P−領域1の裏面側に形成された裏面電極13と、を備える。コンタクト電極11がフォトダイオード2のカソード電極であり、裏面電極13がフォトダイオード2のアノード電極である。PN接合面3aに例えば可視光が入射すると、裏面電極13から光電流Iを出力される。
【0024】
ここで、誘電体5であるシリコン酸化膜は、例えば、熱酸化の一方法である、局所的酸化(LOCOS)法により形成することができる。また、電磁シールド7であるポリシリコン膜は、例えば化学気相成長(CVD)法により形成することができる。LOCOS法やCVD法は、MOSトランジスタやポリシリコン抵抗体を作製する際に使用される汎用プロセスである。特別なプロセスを用いることなく汎用プロセスを用いて、電磁シールド7を備えた受光素子10を形成することができるため、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0025】
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、受光素子10に入射してくる光は、電磁シールド7及び誘電体5を通ってPN接合面3aに到達する。このため、PN接合面3aにおいて、受光量の低下を抑えつつ、電磁波の到達を抑えることができる。また、電磁シールド7とN−領域3との間には誘電体5が介在するため、当該間の寄生容量(即ち、意図しない容量成分)を低減することができる。このため、光電変換により出力される信号のS/N比を向上させることができる。
【0026】
(2)第2実施形態
ところで、本発明は、いわゆるディスクリート半導体(個別半導体)としての受光素子に限定されるものではない。本発明は、受光素子と能動素子とを混載したIC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)にも適用可能である。第2実施形態では、このような半導体装置について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置50の構成例を示す断面図である。図5に示すように、この半導体装置50は、受光素子10と、能動素子の一例となるMOSトランジスタ20とを同一の基板に備えたものである。
【0027】
これらの中で、受光素子10の構成は例えば図4に示した構成と同じである。なお、図5ではアノード電極の図示を省略しているが、図4の場合と同様、P−領域1の裏面側に裏面電極を設けてこれをアノード電極としても良い。或いは、図示しないが、P−領域1の表面近傍に高濃度のP型不純物を設け、このP型不純物層上にコンタクト電極を形成して、これをアノード電極としても良い。何れも場合も、光電変換により生じた光電流Iをアノード電極から出力することができる。
【0028】
一方、MOSトランジスタ20は、例えば、P−領域1上に形成されたゲート絶縁膜21と、ゲート絶縁膜21上に形成されたゲート電極23と、ゲート電極23の両側下のP−領域1に形成されたN+層25、26と、N+層25、26上にそれぞれ形成されたコンタクト電極27、28と、を有する。また、この半導体装置50は、受光素子10とMOSトランジスタ20との間を分離する素子分離膜29と、受光素子10及びMOSトランジスタ20を覆うように基板上に形成された層間絶縁膜(図示せず)と、を備える。N+層25がソースであり、N+層26がドレインである。また、コンタクト電極27がソース電極であり、コンタクト電極28がドレイン電極である。
【0029】
このような構成であっても、第1実施形態で説明した受光素子10と同様、寄生容量を抑制しつつ、電磁波に対する遮蔽効果を十分に発揮することができる。これにより、光電変換により出力される信号のS/N比を向上させることができる。また、この半導体装置50では、受光素子10を作製するプロセスとMOSトランジスタ20を作製するプロセスとの間で、工程の兼用が可能である。次に、この点について具体的に説明する。
【0030】
図6(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置50の製造方法を示す工程図である。図6(a)に示すように、まず始めに、受光素子10を形成する領域(以下、受光素子領域ともいう。)のP−領域(Psub)1に、N−領域(N型ウェル層)3を形成する。次に、図6(b)に示すように、例えばLOCOS法により、N−領域3に誘電体(シリコン酸化膜)5を形成すると同時に、受光素子領域とMOSトランジスタ20を形成する領域(以下、トランジスタ領域ともいう。)との境界に素子分離膜(シリコン酸化膜)29を形成する。次に、誘電体5下及び素子分離膜29下から露出しているP−領域1の表面を熱酸化して、ゲート絶縁膜21を形成する。
【0031】
次に、ゲート絶縁膜21が形成された基板の上方全面に、CVD法によりノンドープのポリシリコン膜を形成し、これをパターニングする。これにより、図6(c)に示すように、受光素子領域の誘電体5上に電磁シールド7を形成すると同時に、トランジスタ領域のゲート絶縁膜21上にゲート電極23を形成する。
次に、この電磁シールド7及びゲート電極23をマスクにして、N−領域3に例えばヒ素等のN型不純物をイオン注入して、N+層9、25、26を形成する。このイオン注入によって、電磁シールド7及びゲート電極23の導電性はそれぞれN型となる。そして、電磁シールド7及びゲート電極23を覆うように、基板の上方全面に層間絶縁膜(図示せず)を形成し、この層間絶縁膜にコンタクトホール(図示せず)を形成する。続いて、このコンタクトホールに、例えばアルミニウム等の金属膜を埋め込んでコンタクト電極11、27、28(図5参照。)を形成する。このようにして、図5に示した半導体装置50を完成させる。
【0032】
以上説明したように、本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、その作製に際しては、誘電体5と素子分離膜29とを同一プロセスで同時に形成することができる。また、電磁シールド7とゲート電極23とを同一プロセスで同時に形成することができる。工程の兼用が可能であるため、半導体装置の製造コストの低減が可能である。
【0033】
(3)第3実施形態
また、本発明は、能動素子だけでなく、受動素子と受光素子とを混載したIC、LSIにも適用可能である。第3実施形態では、このような半導体装置について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置60の構成例を示す断面図である。図7に示すように、この半導体装置60は、受光素子10と、受動素子の一例となるポリシリコン抵抗体30とを同一の基板に備えたものである。
これらの中で、受光素子10の構成は例えば図4に示した構成と同じである。なお、図7ではアノード電極の図示を省略しているが、図4の場合と同様、P−領域1に裏面側に裏面電極を設けてこれをアノード電極としても良い。或いは、図示しないが、P−領域1の表面近傍に高濃度のP型不純物を設け、このP型不純物層上にコンタクト電極を形成して、これをアノード電極としても良い。何れも場合も、光電変換により生じた光電流Iをアノード電極から出力することができる。
【0034】
一方、ポリシリコン抵抗体30は、例えば、素子分離膜31を介して、P−領域1上に形成されたポリシリコン膜33と、このポリシリコン膜33の両端上にそれぞれ形成されたコンタクト電極35、36と、を有する。また、この半導体装置60は、受光素子10及びポリシリコン抵抗体30を覆うように基板上に形成された層間絶縁膜(図示せず)と、を備える。
このような構成であっても、第1実施形態で説明した受光素子10と同様、寄生容量を抑制しつつ、電磁波に対する遮蔽効果を十分に発揮することができる。これにより、光電変換により出力される信号のS/N比を向上させることができる。また、この半導体装置60では、受光素子10を作製するプロセスとポリシリコン抵抗体30とを作製するプロセスとの間で、工程の兼用が可能である。次に、この点について具体的に説明する。
【0035】
図8(a)〜(c)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置60の製造方法を示す工程図である。図8(a)において、N−領域(N型ウェル層)3を形成する工程までは第2実施形態と同じである。次に、例えばLOCOS法により、受光素子領域に誘電体(シリコン酸化膜)5を形成すると同時に、ポリシリコン抵抗体30を形成する領域(以下、抵抗体領域ともいう。)に素子分離膜(シリコン酸化膜)31を形成する。
次に、誘電体5及び素子分離膜31が形成された基板の上方全面に、CVD法によりノンドープのポリシリコン膜を形成し、これをパターニングする。これにより、図8(b)に示すように、受光素子領域の誘電体5上に電磁シールド7を形成すると同時に、抵抗体領域の素子分離膜31上にノンドープのポリシリコン膜33´を形成する。
【0036】
次に、ノンドープのポリシリコン膜33´を例えばレジスト37で覆い、このレジスト37と電磁シールド7とをマスクにして、N−領域3に例えばヒ素等のN型不純物を高濃度にイオン注入して、N+層9を形成する。このイオン注入によって、電磁シールド7にもN型不純物が高濃度に導入されてN+型のポリシリコンとなるが、ノンドープのポリシリコン膜33´はレジスト37で覆われているためN型不純物は導入されない。次に、レジスト37を除去する。その後、図8(c)に示すように、ノンドープのポリシリコン膜に例えばリン等のN型不純物を低濃度にイオン注入する。これにより、ノンドープのポリシリコン膜はN型又はN−型となり、所望の抵抗値に調整されたポリシリコン膜33を得ることができる。
【0037】
次に、電磁シールド7及びポリシリコン膜33を覆うように、基板の上方全面に層間絶縁膜(図示せず)を形成し、この層間絶縁膜にコンタクトホール(図示せず)を形成する。続いて、このコンタクトホールに、例えばアルミニウム等の金属膜を埋め込んでコンタクト電極11、35、36(図7参照。)を形成する。このようにして、図7に示した半導体装置60を完成させる。
【0038】
以上説明したように、本発明の第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、その作製に際しては、誘電体5と素子分離膜31とを同一プロセスで同時に形成することができる。また、電磁シールド7とノンドープのポリシリコン膜33´とを同一プロセスで同時に形成することができる。工程の兼用が可能であるため、半導体装置の製造コストの低減が可能である。
(4)その他
なお、上記の第1〜第3実施形態では、電磁シールド7を構成する「半導体」として、ポリシリコン膜を用いる場合について説明した。しかしながら、本発明において、電磁シールド7を構成する半導体はこれに限られることはない。例えば、電磁シールド7を構成する半導体は非晶質(アモルファス)のシリコン膜であってもよい。また、その材質はシリコンに限定されるものではなく、例えば、ゲルマニウム(Ge)やシリコンゲルマニウム(SiGe)であっても良い。本発明の「第1半導体層」「第2半導体層」の各材質も同様に、シリコンに限定されるものではなく、例えば、ゲルマニウムやシリコンゲルマニウムであってもよい。このような構成であっても、上記の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、上記の第1〜第3実施形態では、本発明の「第1導電型」がP型で「第2導電型」がN型の場合について説明したが、本発明はこれに限られることはない。第1導電型がN型で第2導電型がP型であってもよい。即ち、PN接合からなるフォトダイオードのP型領域上に誘電体を介して電磁シールドが形成されていてもよい。このような構成であっても、上記の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
(5)本発明と従来例との比較
図9は、本発明と従来例とにおける構造と、容量値とを比較した図である。図9に示すように、この比較では、P−領域1、101における不純物濃度をそれぞれ3×1014[cm-3]、N−領域3、103における不純物濃度をそれぞれ2×1016[cm-3]、P+領域105における不純物濃度をそれぞれ3×1019[cm-3]に設定した。また、誘電体(シリコン酸化膜)5の厚さを5000[Å]、電磁シールド(ポリシリコン膜)7の厚さを2500[Å]に設定した。さらに、従来例3では、P+領域105とN−領域103の平面視による面積比を1:1に設定した。このような設定下で、本発明者は、従来例2、3と本発明とについてそれぞれ容量を計算した。
【0041】
その結果は、図9に示す通りである。従来例2では、P+領域105とN−領域103との間の接合容量CP+N-は0.420[fF/μm2]であり、N−領域103とP−領域101との間の接合容量CN-P-は0.043[fF/μm2]であり、接合容量の合計Ctotalは0.463[fF/μm2]であった。また、従来例3では、P+領域105とN−領域103との間の接合容量CP+N-は0.210[fF/μm2]であり、N−領域103とP−領域101との間の接合容量CN-P-は0.043[fF/μm2]であり、接合容量の合計Ctotalは0.253[fF/μm2]であった。従来例3は、従来例2と比較して、接合容量CP+N-は50%低い値である。
【0042】
これに対して、本発明では、誘電体5を挟んで電磁シールド7とN−領域3との間の接合容量Coxideは0.058[fF/μm2]であり、N−領域3とP−領域1との間の接合容量CN-P-は0.043[fF/μm2]であり、接合容量の合計Ctotalは0.101[fF/μm2]であった。
以上のように、本発明に係る構造によれば、電磁シールド効果を十分に発揮し、接合容量を従来例2に対して80%、従来例3に対して45%削減することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 P−領域(P型のシリコン基板)
2 フォトダイオード
3 N−領域(N型ウェル層)
3a PN接合面
3b (PN接合面とは反対側にある)面
5 誘電体
7 電磁シールド
9 N+層
10 受光素子
11 コンタクト電極
13 裏面電極
20 トランジスタ
21 ゲート絶縁膜
23 ゲート電極
25 N+層(ソース)
26 N+層(ドレイン)
27 コンタクト電極(ソース電極)
28 コンタクト電極(ドレイン電極)
29、31 素子分離膜
30 ポリシリコン抵抗体
33 (N型の)ポリシリコン膜
33´ (ノンドープの)ポリシリコン膜
35、36 コンタクト電極
37 レジスト
50、60 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層に接合された第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の前記第1半導体層と接合する第1の面の反対側にある第2の面上に形成された光透過性を有する誘電体と、
前記誘電体上に形成された光透過性を有する電磁シールドと、を備え、
前記電磁シールドは、半導体からなることを特徴とする受光素子。
【請求項2】
前記誘電体及び前記電磁シールドによって、前記第2半導体層の前記第2の面は全て覆われていることを特徴とする請求項1に記載の受光素子。
【請求項3】
前記第1半導体層及び前記第2半導体層が内部に形成されたシリコン基板、をさらに備え、
前記誘電体は、前記シリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜からなり、
前記電磁シールドは、前記シリコン酸化膜上に形成されたポリシリコン膜からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の受光素子。
【請求項4】
前記電磁シールドが接地電位に接続されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の受光素子。
【請求項5】
第1導電型の第1半導体層に接合された第2導電型の第2半導体層の、前記第1半導体層と接合する第1の面の反対側にある第2の面上に、光透過性を有する誘電体を形成する工程と、
前記誘電体上に光透過性を有する電磁シールドを形成する工程と、を備え、
前記電磁シールドを形成する工程では、当該電磁シールドとして半導体を形成することを特徴とする受光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1半導体層及び前記第2半導体層はシリコン基板の内部に形成されており、
前記誘電体を形成する工程では、当該誘電体としてシリコン酸化膜を前記シリコン基板を熱酸化することにより形成し、
前記電磁シールドを形成する工程では、当該電磁シールドとしてポリシリコン膜をCVD法で形成することを特徴とする請求項5に記載の受光素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の受光素子と、
前記受光素子と同一の基板に形成された能動素子又は受動素子と、を備えることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−89796(P2012−89796A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237518(P2010−237518)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】