説明

口中ケア組成物

【課題】口臭の原因となる口中の汚れを良好に清掃すると共に、口臭を効果的かつ持続的に抑制することにより、長時間口中を清潔な状態に保つことができ、かつ口腔粘膜に対して低刺激性で、良好な使用感(味)を有し、かつ経時での外観安定性が良好な口中ケア組成物を提供する。
【解決手段】(A)結晶セルロースを1〜30質量%、(B)ローズマリー又はセージの水溶性抽出物を0.01〜5質量%、(C)ラッカーゼを0.001〜3質量%、及び(D)非イオン界面活性剤を0.01〜5質量%含有し、成分(D)/成分(C)の質量比が0.005〜1,000であることを特徴とする口中ケア組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い口中の清掃効果及び口臭抑制効果により、長時間に亘って口中を清潔に保つことができ、かつ口腔粘膜に対して低刺激性で、良好な使用感(味)を有し、経時での外観安定性に優れた口中ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口臭の原因物質は、口中の汚れ(食物残渣、剥離粘膜など)が口臭の原因菌により分解されて発生するメチルメルカプタンや硫化水素等である。
【0003】
従来から、口臭を抑制する技術として消臭力を有する植物抽出物を配合することでメチルメルカプタンなどの口臭原因物質を補足・消臭する方法(特許文献1;特開昭57−204278号公報、特許文献2;特開昭61−240960号公報)、パパイン等のタンパク分解酵素などの酵素を配合し、口臭の原因となる口腔の汚れを除去する方法(特許文献3;特開昭52−38026号公報、特許文献4;特開昭60−58150号公報)、口臭抑制効果があることが知られているシンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒドなどの香料成分を活用する方法(特許文献5;特開平11−228367号公報)が提案されている。
【0004】
しかし、これらの消臭剤は、消臭力が弱く効果が未だ不十分であり、また、消臭成分を多量に配合すると着色、変色や、味覚の低下などの問題を生じる場合があり、保存安定性や使用感が十分とは言い難かった。
【0005】
更に、消臭力を有する紅藻植物、褐藻植物、裸子植物、被子植物やフェノール性化合物などに酸化還元酵素、酸化還元剤を組み合わせることで消臭活性を高め、少量の配合で高い消臭力を引き出す方法が提案されている(特許文献6;特公平7−53174号公報、特許文献7;特許第2600692号公報、特許文献8;特開2005−65750号公報、特許文献9;特開2008−43283号公報)。
しかし、これら成分の組合せでは、発生している口臭原因物質を捕捉する上では有効であるが、口臭抑制効果の持続性については不十分な場合があり、改善の余地があった。
【0006】
また、マルチトール、エリスリトール、イソマルトなどの調理済み糖を含むポリオールを含む菓子組成物、チューインガムベースにおいて、これらに配合可能な口中清涼剤の一例としてラッカーゼ等の酵素が配合可能であること、また、口腔湿潤成分の一例として微結晶セルロース、また、非イオン界面活性剤なども配合可能であることが開示されている(特許文献10;特表2008−541725号公報)。しかし、これらは各成分の組合せ及び配合量が不明確であり、十分な口臭抑制効果が得られるものではない。
【0007】
従って、高い口中の清掃効果や口臭抑制効果により、長時間口中を清潔に保つことができる上、口腔粘膜に対し低刺激性で、味が良く良好な使用感を有し、かつ経時での保存安定性が良好であり、更に携帯性や簡便性に優れた製剤とすることができる口中ケア組成物の開発が望まれるが、従来の技術ではこれらを全て満たすことは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−204278号公報
【特許文献2】特開昭61−240960号公報
【特許文献3】特開昭52−38026号公報
【特許文献4】特開昭60−58150号公報
【特許文献5】特開平11−228367号公報
【特許文献6】特公平7−53174号公報
【特許文献7】特許第2600692号公報
【特許文献8】特開2005−65750号公報
【特許文献9】特開2008−43283号公報
【特許文献10】特表2008−541725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、口臭の原因となる口中の汚れを良好に清掃すると共に口臭を効果的かつ持続的に抑制することにより、長時間口中を清潔な状態に保つことができ、かつ口腔粘膜に対して低刺激で、異味もほとんどない良好な使用感を有し、かつ経時安定性が良好な口中ケア組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(A)結晶セルロースを1〜30質量%、(B)ローズマリー又はセージの溶媒抽出物を0.01〜5質量%、(C)ラッカーゼを0.001〜3質量%、(D)非イオン界面活性剤を0.01〜5質量%含有し、成分(D)/成分(C)の質量比が0.005〜1,000である口中ケア組成物が、口中の清掃効果及び口臭抑制効果、使用感、保存安定性の全てに優れることを見出した。本発明によれば、口臭抑制効果が高くその持続性にも優れ、かつ口中の清掃効果に優れ、長時間に亘って口中を清潔に保つことができ、このため使用者が口臭抑制効果及び清掃効果を満足に実感できる上、口腔粘膜に対して低刺激性で、異味がほとんどなく良好な使用感を有し、しかも、経時での変色がほとんどなく製剤の外観安定性も良好に保持できる。更に、本発明組成物を錠菓又はキャンディとして調製することで、携帯性や簡便性にも優れた製剤を得ることができる。
【0011】
更に、(D)非イオン界面活性剤としては、脂肪酸の炭素数が10〜18であるショ糖脂肪酸エステル又は脂肪酸の炭素数が10〜18であるポリグリセリン脂肪酸エステル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜60のポリオキシエチレン硬化ひまし油から選ばれる1種以上が好ましい。
【0012】
また、本発明では、成分(A)を1〜15質量%、成分(B)を0.1〜3質量%、成分(C)を0.01〜3質量%、及び成分(D)を0.05〜3質量%含有し、成分(D)/成分(C)の質量比が0.02〜300であることで、上記した効果がより高い製剤を得ることができる。
【0013】
なお、本発明においては、後述する実施例からも明らかなように、成分(A)〜(D)を特定量で組み合わせて配合し、かつ成分(D)/成分(C)の質量比を適切にすることにより、上記のような優れた特性を全て兼ね備えた口中ケア組成物を得ることができるもので、このような本発明の作用効果は、上記必須要件のいずれかを欠く場合には達成できない。
【0014】
従って、本発明は下記の口中ケア組成物を提供する。
請求項1;
(A)結晶セルロースを1〜30質量%、(B)ローズマリー又はセージの溶媒抽出物を0.01〜5質量%、(C)ラッカーゼを0.001〜3質量%、及び(D)非イオン界面活性剤を0.01〜5質量%含有し、成分(D)/成分(C)の質量比が0.005〜1,000であることを特徴とする口中ケア組成物。
請求項2;
(D)非イオン界面活性剤が、脂肪酸の炭素数が10〜18であるショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸の炭素数が10〜18であるポリグリセリン脂肪酸エステル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜60のポリオキシエチレン硬化ひまし油から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の口中ケア組成物。
請求項3;
成分(A)を1〜15質量%、成分(B)を0.1〜3質量%、成分(C)を0.01〜3質量%、及び成分(D)を0.05〜3質量%含有し、成分(D)/成分(C)の質量比が0.02〜300であることを特徴とする請求項1又は2記載の口中ケア組成物。
請求項4;
錠菓又はキャンディとして調製されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の口中ケア組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の口中ケア組成物は、使用者が、口中の汚れや口臭が気になったときに口中に適用するだけで、口中の高い清掃効果と口臭抑制効果及びその持続性により、長時間口中を清潔に保つことができ、その効果を満足に実感できる。更に、本発明組成物は、口腔粘膜に対し低刺激性で、使用感(味)が良好であり、かつ経時での外観安定性も良好である。従って、本発明組成物は、口中ケア、例えば口臭抑制や口中清掃のための製剤として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明の口中ケア組成物は、(A)結晶セルロース、(B)ローズマリー又はセージの溶媒抽出物、(C)ラッカーゼ、(D)非イオン界面活性剤を含有し、成分(D)/成分(C)の質量比が特定範囲であることを特徴とする。
【0017】
(A)結晶セルロースは、口腔粘膜に刺激等の影響を与えることなしに口中の清掃効果を向上させ、かつ口臭抑制効果の持続性を向上させるために有効な成分である。
結晶セルロースは、従来から公知のものが使用でき、例えば、パルプを原料とし加水分解によりセルロース結晶領域を取り出して精製したものなどを使用することができる。
【0018】
結晶セルロースの平均粒径は20〜200μm、特に30〜100μmであることが好ましい。平均粒径が20μm未満では十分な口中の清掃効果が得られない場合があり、200μmを超えた場合は使用感が悪くなる場合がある。
なお、上記平均粒径は、各種目開きのふるいを用い、第15局改正日局(日本薬局方)の一般試験法第二法に準じて粒度分布を評価して、平均粒径(累積50%(質量%)粒径)を算出した。
【0019】
このような結晶セルロースとしては、市販品、例えば旭化成ケミカルズ(株)製の結晶性セルロース(商品名 セルフィア、セオラス)、アイエスピー・ジャパン(株)製の微結晶セルロース(商品名 QDシリーズ)などを用いることができる。
【0020】
成分(A)の結晶セルロースの配合量は、組成物全体の(以下、配合量については特に断らない限り組成物全体に対する量である。)1〜30%(質量%、以下同様)であり、好ましくは1〜15%、より好ましくは3〜10%である。1%未満では口中の清掃効果が十分でなく、更に口臭抑制効果が十分に持続しないことがあり、30%を超えると使用感が悪くなったり、刺激等の違和感を感じる場合がある。
【0021】
本発明では、口臭抑制及び口臭抑制の持続性の点で、(B)ローズマリー及び/又はセージの溶媒抽出物が配合されるもので、これらは1種単独でも2種を併用してもよい。これらの成分は、従来から公知のものが使用できる。
【0022】
例えば、ローズマリー、セージの葉及び茎を原料としたものを粉砕し粉状にしたものを植物原料として使用でき、上記植物を極性溶媒及び/又は非極性溶媒(例えば、水、エチルエーテル、エチレンクロライド、ジオキサン、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、プロピレングリコール等の極性溶媒、あるいはn−ヘキサン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、トルエン、ベンゼン等の非極性溶媒、又はこれらの混合溶媒)で抽出することにより得られた抽出エキス及びその抽出残渣から選ばれる原料に対し溶媒抽出処理を行って得られた抽出物、並びに、上記植物より単離されるカルノソール、カルノジン酸、7,11,12−トリヒドロキシ−6,10−(エポキシメタノ)アビエタ−8,11,13−トリエン−20−オン(ロズマノール)、及びこれらの塩等の消臭有効成分(特開昭57−203445号公報、特開昭57−204278号公報、特開昭59−103665号公報参照)などである。
【0023】
なお、上記溶媒抽出処理に用いる溶媒は、上記公報に記載されているように、有機溶媒でも無機溶媒でも差し支えなく、また有機溶媒と無機溶媒との混合溶媒でもよい。有機溶媒の具体例としては、エチルエーテル、エチレンクロライド、ジオキサン、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、プロピレングリコール、n−ヘキサン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
また、無機溶媒としては水、あるいは酸、アルカリ又はこれらの塩の水溶液が使用でき、具体的には塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。なお、これらの酸、アルカリ、又はこれらの塩は2モル以下の濃度で使用することが好ましい。好ましい溶媒は、水、炭素数1〜3の低級アルコール、多価アルコールである。特に、抽出溶媒は、水、エタノール、又は水/エタノール混合液が好ましい。溶媒の使用量は、原料に対し等容量以上とすることが好ましい。
【0024】
成分(B)の配合量は、純分換算で0.01〜5%であり、好ましくは0.1〜3%、より好ましくは0.2〜2%である。0.01%未満では十分な口臭抑制効果及び口臭抑制効果の持続性が得られず、5%を超えると使用感(味)及び経時での外観安定性の点で問題が生ずる場合がある。
更に、これらの抽出物はデキストリン、エリスリトール、トレハロースなどで賦形して使用することも可能である。
成分(B)の例としては、特に限定されるものではないが、豊玉香料(株)製の市販品などが使用可能である。
【0025】
成分(C)のラッカーゼは、口臭抑制効果及び持続性を向上させるのに有効な成分である。
ラッカーゼはE.C.1.10.3.2に分類される酵素である。代表的な酵素反応例として、漆樹液中のラッカーゼによってウルシオールが酸化され、漆が形成されることが知られている。ラッカーゼは、漆以外にも多くの植物、微生物中に広く存在し、芳香族化合物の酸化反応を触媒する酵素である。本発明において、ラッカーゼはその起源に関わりなく使用することができる。
【0026】
ラッカーゼとしては、市販品として、例えば天野エンザイム(株)製のラッカーゼダイワY120等を用いることができる。これは、360,000単位/gのラッカーゼ純分を30%含有し、残り70%をデキストリンで賦形したものである。
また、ラッカーゼは、安定化のためカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等のカルボン酸基をもつ高分子化合物などでコーティングしたもの、ゼラチンなどでカプセル化したものなどを用いることもできる。
【0027】
成分(C)のラッカーゼの配合量は、成分(B)の口臭抑制効果及びその持続性を高める点で、3〜10,000単位/g、特に30〜10,000単位/g、とりわけ30〜3,500単位/gであることが好ましい。3単位/g未満の場合、満足な配合効果が発揮されない場合があり、10,000単位/gを超えると安定性が十分でなくなる場合がある。
360,000単位/g品を基準とした場合、ラッカーゼの配合量は、純分換算で0.001〜3%であり、好ましくは0.01〜3%、より好ましくは0.1〜2%である。0.001%未満では口臭抑制効果及びその持続性が十分に向上せず、3%を超えると使用感(味)や経時での外観安定性で問題が生ずることがある。
【0028】
なお、ラッカーゼ1単位とは、4−アミノアンチピリンとフェノールにpH4.5、30℃で作用するとき、ラッカーゼが触媒する酸化縮合反応により生成するキノンイミン色素の505nmにおける吸光度を、反応初期1分間に0.1増加させるのに必要な酵素量を1単位とする。
【0029】
成分(D)の非イオン界面活性剤は、口臭抑制効果と口臭抑制効果の持続性及び口中の清掃効果を向上させると共に製剤の経時での外観安定性を維持するのに有効な成分である。
成分(D)の非イオン界面活性剤としては、糖又は糖アルコールの脂肪酸エステルであるショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、マルトトリイトール脂肪酸エステル、マルトテトレイトール脂肪酸エステル、マルトペンタイトール脂肪酸エステル、マルトヘキサイトール脂肪酸エステル、マルトヘプタイトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどや、グリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが使用できる。これらの中でも、味などの使用感、口腔粘膜刺激性など点から、脂肪酸の炭素数が10〜18のショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸の炭素数が10〜18のポリグリセリン脂肪酸エステル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜60のポリオキシエチレン硬化ひまし油が好ましい。とりわけ、錠菓として調製する場合は錠剤の成型性の点から、脂肪酸の炭素数が10〜18のショ糖脂肪酸エステルがより好ましい。
これらの非イオン界面活性剤は1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0030】
成分(D)の非イオン界面活性剤の配合量は0.01〜5%であり、好ましくは0.05〜3%、より好ましくは0.05〜2%である。0.01%未満では十分な口臭抑制効果及び十分な清掃効果が得られない場合や製剤中の成分の均一性が不十分となり経時での外観安定性を維持できない場合があり、5%を超えて配合した場合には使用感が悪くなり、口臭抑制効果の持続性が満足に得られない。
【0031】
非イオン界面活性剤は市販品を使用でき、例えばショ糖脂肪酸エステルはショ糖ステアリン酸エステルなどとして、ポリグリセリン脂肪酸エステルはデカグリセリンステアリン酸エステルなどとして、三菱化学フーズ(株)より入手することができ、ポリオキシエチレン硬化ひまし油はNIKKOL HCO−20などとして日光ケミカルズ(株)より入手することができる。
【0032】
また、成分(D)/成分(C)の質量比は、360,000単位/g品のラッカーゼを基準とした場合に質量比で0.005〜1,000であり、好ましくは0.02〜300である。質量比が0.005未満では、製剤中での成分(C)の分散性が悪くなり、このため保存時に変色し易く外観安定性に劣り、1,000を超えると、成分(C)が口中に留まり難くなり、このため口臭抑制効果の持続性が十分発現しない。
【0033】
本発明組成物の剤型は特に限定されず、口腔内に適用できるものであればよいが、菓子・食品形態であることが好ましく、いつでもどこでも使用可能な簡便性、携帯性の点から錠菓、キャンディのいずれかであることが特に好ましい。
【0034】
本発明において錠菓とは、糖質を主原料とし、打錠機等で圧縮成型したものであり、糖衣されていてもよい。錠菓の製造方法は特に限定されず、常法で製造でき、例えば各成分を混合し、打錠機等で5〜20kNの条件で圧縮することにより製造できる。
【0035】
また、キャンディとしては、キャラメル、ヌガー等のソフトキャンディ、ドロップ、タフィ等のハードキャンディなどが挙げられ、特に限定されないが、安定性等の点からハードキャンディが好ましい。ハードキャンディは常法で製造することができ、例えば、成分(A)〜(D)及び香料以外の原料に水を加えて140〜200℃で溶融した後、約80〜130℃まで冷却し、成分(A)〜(D)及び香料を添加し、更に冷却、成型する方法で製造することができる。
【0036】
錠菓及びキャンディの主原料は、賦形剤、甘味剤等であり、更に必要により香料や後述の各種成分などを添加できる。
【0037】
賦形剤としては、スクロース、グルコース、デキストロース、転化糖、フラクトース、デキストリン等の糖類、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース、還元水飴等の糖アルコール、パラチノース、トレハロース、オリゴ糖などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。中でも、非う蝕性である点から糖アルコールが好ましい。特に、錠菓では、成型性、風味の点からソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、還元パラチノースから選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましい。キャンディでは、低吸湿性の点から還元パラチノース、還元水飴から選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましい。これら賦形剤の配合量は50〜99%、特に65〜99%が望ましい。
【0038】
錠菓及びキャンディには、上記賦形剤に加えてステビア、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等の甘味剤を配合することができる。配合量は0.001〜3%であることが望ましい。
【0039】
香料としては、天然香料、合成香料などの油脂香料や粉末香料を1種又は2種以上使用することができる。例えば天然香料として、マスティック油、パセリ油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、メントール油、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、コリアンダー油、オレンジ油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローレル油、カモミール油、カルダモン油、キャラウェイ油、ベイ油、レモングラス油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー、シトラス油、ミックスフルーツ油、ストロベリー油、シナモン油、クローブ油、グレープ油等が挙げられる。
【0040】
単品香料としては、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルアンスラニレート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチノンアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルフェイド、シクロテン、フルフラールトリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルリオアセテート等が挙げられる。単品香料及び/又は天然香料も含む調合香料として、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、フルーツミックスフレーバー、ハーブミントフレーバー、ウメフレーバー等が挙げられる。また、香料の形態は、精油、抽出物、固形物、又はこれらを噴霧乾燥した粉体でも構わない。
香料の配合量は0.001〜15%、特に0.001〜10%が好ましい。0.001%未満では満足な嗜好性が得られない場合があり、15%を超えると組成物の香味やテクスチャーを損なう場合がある。
【0041】
本発明の口中ケア組成物には、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、高分子化合物、成分(B)及び成分(C)以外の機能成分(有効成分)、酸味料、光沢剤、滑沢剤、pH調整剤、着色剤、保存料、除電剤等を、更に錠菓には崩壊剤、結合剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加してもよい。
【0042】
高分子化合物としては、ポリグルタミン酸、納豆菌ガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、カチオン化ヒアルロン酸ナトリウムなどを配合することができる。これら高分子化合物を配合する場合、その配合量は0.01〜5%が好ましい。
【0043】
機能成分(有効成分)としては、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼなどの酵素類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムなどの殺菌成分、ユッカ抽出物、キラヤ抽出物などのサポニン類、フッ化ナトリウム、グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛などを配合することが可能である。これら機能成分を配合する場合、その配合量は本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができるが、0.001〜3%が好ましい。
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸を配合できる。酸味料を配合する場合、その配合量は0.001〜5%が好ましい。
【0044】
着色剤としては、ベニバナ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、シソ色素、紅麹色素、赤キャベツ色素、ニンジン色素、ハイビスカス色素、カカオ色素、スピルリナ青色素、クマリンド色素などの天然色素や赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号などの法定色素、リボフラビン、銅クロロフィンナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸などの有機酸とそのナトリウム塩やカリウム塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなどのリン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩などが挙げられる。
保存料としては、安息香酸及びその塩、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類(パラオキシ安息香酸エステル)、ソルビン酸及びその塩などが挙げられる。
光沢剤としては、シェラック、カルナウバロウ、キャンデリラロウなどのワックス類及びステアリン酸カルシウムなどが挙げられ、更に、除電剤、流動化剤として微粒子ニ酸化ケイ素などを配合することができる。滑沢剤としては、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、セラック、カルナウバウロウなどのワックス類、セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類などを配合できる。
これらの配合は任意であるが、配合する場合、着色剤は0.00001〜3%、その他の成分は0.01〜5%配合することが好ましい。
【0045】
更に錠菓においては、崩壊剤としてアルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、クロスポピドンなど、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カラヤガムなどを配合することができる。これらを配合する場合、配合量は0.1〜10%が好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0047】
〔実施例、比較例〕
表1〜10に示す組成の口中ケア組成物を下記方法で錠菓又はキャンディの剤型に調製し、下記方法で評価した。結果を表1〜10に示す。なお、成分(B)及び成分(C)の配合量(%)の表中の記載については、上段に配合量を、下段に純分換算値を示す。また、成分(D)/成分(C)は、成分(C)についてはその純分換算値を用いて計算した値を示す。
【0048】
<錠菓組成物の調製>
表1〜5に示す組成に従い、全成分を均一に混合した後、打錠機((株)富士薬品機械製)を用いて、約10kNの圧力で質量約1g、直径13mmφの錠菓を200g作製した。
【0049】
<キャンディ組成物の調製>
表6〜10に示す組成に従い、成分(A)〜(D)及び香料以外の各成分を混合し、賦形剤量の50%程度の水を加え、加熱溶解し、更に約180℃で加熱し、濃縮した。その後、ゆっくりとかき混ぜながら放冷し、約100℃にて成分(A)〜(D)及び香料を加えて均一に混合し、約3g/粒となるように成型し、キャンディを200g作製した。
【0050】
<口中ケア組成物の評価>
口臭の強い男女20名を対象に、サンプルとして錠菓又はキャンディ約3gを使用して、サンプル摂取前、サンプルを使用中や適用した後、以下の評価を行った。
評価法、評価基準は以下の通りである。
【0051】
(1)使用直後の消臭効果
サンプルとして錠菓又はキャンディ約3gを使用し、口中から無くなった直後に口閉じし、1分後の口腔内の呼気をテドラーバックに200mL採取した。得られた呼気について、専門評価者1名により、口臭の強さを、錠菓又はキャンディを摂取前の呼気の臭気強度と比較して、以下の評点基準に従って消臭効果(口臭抑制効果)を評価した。
5点:著しく抑制した
4点:抑制した
3点:わずかに抑制した
2点:変わらなかった
1点:摂取前より臭気が強くなった
以上の基準にて評価した結果より平均点を算出し、下記基準で評価した。評価が○以上を良好なレベルと判断した。
◎:4.5点以上
○:4点以上4.5点未満
△:3点以上4点未満
×:3点未満
【0052】
(2)口臭抑制効果の持続性評価
サンプルとして錠菓又はキャンディ約3gを使用し、口中から無くなった後から60分後の口臭抑制実感を下記の評点基準にて評価した。
7点:非常に感じる
6点:かなり感じる
5点:やや感じる
4点:どちらともいえない
3点:あまり感じない
2点:ほとんど感じない
1点:全く感じない
以上の基準にて評価した結果より平均点を算出し、下記基準にて評価した。評価が○以上を良好なレベルと判断した。
◎:6点以上
○:5点以上6点未満
△:4点以上5点未満
×:4点未満
【0053】
(3)清掃効果の評価:
サンプルとして錠菓又はキャンディ約3gを使用し、使用中及び使用直後の口中の清掃実感を以下の規準で評価した。
7点:非常に感じる
6点:かなり感じる
5点:やや感じる
4点:どちらともいえない
3点:あまり感じない
2点:ほとんど感じない
1点:全く感じない
以上の基準にて評価した結果より平均点を算出し、以下の基準にて評価し、○以上を良好なレベルと判断した。
◎:6点以上
○:5点以上6点未満
△:4点以上5点未満
×:4点未満
【0054】
(4)使用感(味)の評価
使用中の異味を以下の評点基準で評価した。
5点:全く異味を感じない
4点:ほとんど異味を感じない
3点:わずかに異味を感じる
2点:やや異味を感じる
1点:非常に異味を感じる
以上の基準にて評価した結果より平均点を算出し、下記基準で評価した。評価が○以上を良好なレベルと判断した。
◎:4.5点以上
○:4点以上4.5点未満
△:3点以上4点未満
×:3点未満
【0055】
(5)製剤の外観安定性の評価
製剤の外観安定性は下記方法で評価した。
錠菓は容量が約30mL、キャンディは約50mLのポット型ポリエチレン容器にそれぞれ10粒入れて、40℃で75%RH、−5℃にてそれぞれ3ヶ月保存した。40℃で75%RH保存品の変色の有無を、−5℃保存品を対照品として下記の基準で目視評価し、○以上を良好なレベルと判断した。
◎:対照品と比較して変色が認められない
○:対照品と比較してごくわずかに変色があるが、単独での識別困難で問題ないレベル
△:対照品と比較してわずかに変色があり、識別可能なレベルである
×:対照品と比較して著しい変色が認められる
【0056】
(6)口腔粘膜の刺激性の評価
サンプルとして錠菓又はキャンディ約3gを使用し、使用中の口腔粘膜(舌)に対する刺激性を以下の評点基準で評価した。
5点:全く刺激を感じない
4点:ほとんど刺激を感じない
3点:わずかに刺激を感じる
2点:やや刺激を感じる
1点:非常に刺激を感じる
以上の基準にて評価した結果より平均点を算出し、下記基準で評価した。評価が○以上を良好なレベルと判断した。
◎:4.5点以上
○:4点以上4.5点未満
△:3点以上4点未満
×:3点未満
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
【表8】

【0065】
【表9】

【0066】
【表10】

【0067】
結晶セルロース:旭化成ケミカル(株)製(平均粒径:50μm)
リン酸水素カルシウム:東ソー(株)製(平均粒径:75μm)
ローズマリー抽出物:豊玉香料(株)製
(水抽出物で、デキストリンで賦形。80%品)
セージ抽出物:豊玉香料(株)製
(水抽出物で、デキストリンで賦形。50%品)
ラッカーゼ:天野エンザイム(株)製 ラッカーゼダイワY120
(360,000単位/gの純分30%を70%のデキストリンで賦形。
108,000単位/g品)
デカグリセリンステアリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル:三菱化学フーズ(株)製
セスキステアリン酸ソルビタン:日光ケミカルズ(株)製
ポリオキシエチレン硬化ひまし油(E.O.40):
日光ケミカルズ(株)製(エチレンオキサイドの平均付加モル数 40)
なお、上記平均粒径は、各種目開きのふるいを用い、第15局改正日局の一般試験法第二法に準じて粒度分布を測定し、平均粒径(累積50%(質量%)粒径)を算出したものである。
【0068】
表1〜10の結果より、本発明の口中ケア組成物は、口中の清掃効果、口臭抑制効果が高く、長時間口中を清潔に保つことができ、口腔粘膜に対して低刺激で、良好な使用感を有し、経時安定性の良い製剤であることが確認できた。
【0069】
次に、表11に示す錠菓組成、表12に示すキャンディ組成の製剤をそれぞれ上記と同様の成分を用い、同様の製法にて調製し、上記と同様の評価法にて評価を行った。結果を表11、12に示す。
【0070】
【表11】

【0071】
【表12】

【0072】
表11、12の結果より、本発明の口中ケア組成物は、口中の清掃効果と口臭抑制効果及びその持続性に優れ、長時間口中を清潔に保つことができ、口腔粘膜に対して低刺激性で、良好な使用感を有し、かつ経時安定性の良い製剤であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)結晶セルロースを1〜30質量%、(B)ローズマリー又はセージの溶媒抽出物を0.01〜5質量%、(C)ラッカーゼを0.001〜3質量%、及び(D)非イオン界面活性剤を0.01〜5質量%含有し、成分(D)/成分(C)の質量比が0.005〜1,000であることを特徴とする口中ケア組成物。
【請求項2】
(D)非イオン界面活性剤が、脂肪酸の炭素数が10〜18であるショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸の炭素数が10〜18であるポリグリセリン脂肪酸エステル、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜60のポリオキシエチレン硬化ひまし油から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の口中ケア組成物。
【請求項3】
成分(A)を1〜15質量%、成分(B)を0.1〜3質量%、成分(C)を0.01〜3質量%、及び成分(D)を0.05〜3質量%含有し、成分(D)/成分(C)の質量比が0.02〜300であることを特徴とする請求項1又は2記載の口中ケア組成物。
【請求項4】
錠菓又はキャンディとして調製されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の口中ケア組成物。

【公開番号】特開2011−244703(P2011−244703A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118313(P2010−118313)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】