説明

口唇化粧料

【課題】唇のしわに色がにじみにくく、粉体を多量に含有しても、スティック表面に傷、小穴、色むらなどの外観の欠損が生じにくい口唇化粧料を提供する。
【解決手段】(A)25℃で液状の油剤 30〜80質量%、
(B)50〜80℃で加熱したときに、成分(A)の油剤と均一に溶解できる、ミリスチルメタクリレート重合体及びステアリルメタクリレート重合体から選ばれる1種以上のアルキル(メタ)アクリレート(共)重合体 0.5〜10質量%、
(C)全組成中に2〜5質量%の(D)有機球状粉体を含む粉体 15〜50質量%、
を含有する口唇化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唇のしわに色がにじみにくく、かつ外観の欠損がおこりにくい口唇化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅、リップグロス、リップクリーム等の口唇化粧料を唇に塗布して時間がたつと、唇の縦皺などに油がひろがって唇の境界が不鮮明になるにじみ現象がおこりがちである。このような口唇化粧料のにじみを抑制するため、例えばデキストリン脂肪酸や有機変性粘土鉱物などのオイルゲル化剤によってオイルを保持する方法(特許文献1、特許文献2)などが提案されている。また、効果的ににじみを抑制するために、粉体を多量に配合することが行われている。このように粉体を多量に配合した口唇化粧料においては、球状樹脂粉末を配合して、使用時の折れを防止したり(特許文献3)、デキストリン脂肪酸を配合し、製造時の形状保持性、充填成型性を改善して(特許文献4、特許文献5)、品質や性能の向上を図っている。
【0003】
ところで、スティック状口唇化粧料においては、スティック表面に傷や小穴あるいは色むらなどの欠損があると、著しく製品の魅力が損なわれてしまう。特に、粉体を多量に含んだ口唇化粧料においては、製造時に金型に流し込む際に粘度が高くなるため、金型に均一に流し込めないことにより生じる種々のスティック表面の欠損、例えば、顔料やパール剤が不均一に固まってしまうことによる色むらや、流し込み時に空気を巻き込んでしまうことにより生じる小穴、金型細部まで流し込めないことにより生じる傷などの問題が起こりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−193749号公報
【特許文献2】特開2003−183128号公報
【特許文献3】特開2002−187813号公報
【特許文献4】特開2003−300807号公報
【特許文献5】特開2003−300816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、唇のしわに色がにじみにくく、粉体を多量に含有しても、スティック表面に傷、小穴、色むらなどの外観の欠損が生じにくい口唇化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体を用いることにより、製造時に金型に流し込む際の粘度を低下させ、外観の欠損などが生じず、使用時ににじみにくい口唇化粧料が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、(A)25℃で液状の油剤 30〜80質量%、
(B)50〜80℃で加熱したときに、成分(A)の油剤と均一に溶解できる、ミリスチルメタクリレート重合体及びステアリルメタクリレート重合体から選ばれる1種以上のアルキル(メタ)アクリレート(共)重合体 0.5〜10質量%、
(C)全組成中に2〜5質量%の(D)有機球状粉体を含む粉体 15〜50質量%、
を含有する口唇化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口唇化粧料は、唇のしわに色がにじみにくく、粉体を多量に含有しても、スティック表面に傷、小穴、色むらなどの外観の欠損が生じにくいものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる成分(A)の油剤は、25℃で液状のものである。かかる油剤としては、例えば炭化水素油、エステル油、トリグリセライド、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。炭化水素油としては、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、スクワラン等が挙げられ;エステル油としては、リンゴ酸ジイソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ジミリスチン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸・イソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等が挙げられ;トリグリセライドとしては、ひまし油、マカデミアンナッツオイル、ホホバ油等の動植物油などが挙げられ:高級アルコールとしては、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられ;高級脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。更に、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーンオイル等のシリコーン油;パーフルオロポリエーテル等のフッ素油などが挙げられる。
これらのうち、重質流動イソパラフィン、リンゴ酸ジイソステアリルが好ましく、特に、リンゴ酸ジイソステアリルが、油溶性アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体との混和性の点から好ましい。
【0010】
これらの油剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に30〜80質量%、特に35〜60質量%、更に40〜50質量%含有されるのが、塗布の感触の点から好ましい。
【0011】
本発明で用いる成分(B)は、50〜80℃で加熱したときに、成分(A)と均一に溶解できるものである。溶解条件は次のとおりである。成分(A)20gと成分(B)80gを50〜80℃に加熱し、ディスパーにて10分攪拌する。更に、加熱状態で30分間静置した際、溶け残りがなく、均一に溶解している状態、また屈折率差のある界面を生じない状態を意味し、目視によって判断する。
【0012】
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、炭素数12〜22のものが好ましく、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを、1種又は2種以上重合させて得られるホモポリマー、コポリマーが挙げられる。これらのうち、ラウリルメタクリレート重合体、ミリスチルメタクリレート重合体、パルミチルメタクリレート重合体、ステアリルメタクリレート重合体が好ましく、特に、ステアリルメタクリレート重合体が、金型への流し込み時の粘度を低下させる効果の点から好ましい。
また、アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体は、重量平均分子量が1万〜50万であるのが、同様に粘度の上昇を抑える効果の点から好ましい。
【0013】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜10質量%、特に1.5〜5質量%含有されるのが、充填時の粘度低下、使用感の点から好ましい。
【0014】
なお、特表2002-536391号公報に記載されているアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(商品名:ペムレンTR-1)のような親水基を有するポリマーや、化粧品に高持続性及びつやを出させる目的で汎用されている、アルキルメタクリレート・パーフルオロアルキルメタクリレート共重合体のような撥水性を有するポリマー(例えば、特開平10-72309号公報)には、本発明のような効果は認められないが、本発明の目的・効果を損なわない範囲で口唇化粧料中に含有させることができる。
【0015】
本発明の口唇化粧料は、発色性、色のにじみ防止、使用感向上のため、(C)粉体を含有することができる。粉体は、平均粒径が0.5〜20μm、特に2〜10μmであるのが、感触の点から好ましい。また、本発明においては、成分(C)の含有量が全組成中15〜50質量%、特に25〜45質量%であるのが、にじみにくさの点から好ましい。
【0016】
成分(C)の粉体としては、板状、球状等、いずれの形状でも良く、有機、無機のいずれの材質でもよい。通常化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、マイカ、タルク、ガラス末、セリサイト、シリカ、アルミナ等の無機板状粉体;ラウロイルタウリンカルシウム、ラウロイルリジン等の有機板状粉体;シリカ、アルミナ、ガラスビーズ等の無機球状粉体;シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等の有機球状粉体などを用いることができる。
【0017】
また、成分(C)は、(D)有機球状粉体を含有するのが好ましい。成分(D)は、成分(A)が表面に吸着することで、製造時に金型に流し込む際の粘度を下げる効果が高く好ましい。成分(D)は、平均粒径が0.5〜20μm、特に2〜10μmであるのが、感触の点から好ましい。
成分(D)は、全組成中に2〜10質量%、特に2.5〜5質量%含有されるのが、充填時の粘度低下、にじみを抑制する効果及び塗布時の感触の点から好ましい。
【0018】
成分(D)の市販品として、シリコーン樹脂のトスパール120、トスパール130、トスパール145A(以上、GE東芝シリコーン社製)、PMMAのマイクロスフェアーM、マイクロスフェアーM-100、マイクロスフェアーM-306(以上、松本油脂製薬社製)、セルロースのセルフローC-25、セルフローTA-25(以上、チッソ社製)等を用いることができる。
【0019】
本発明において、成分(B)と、成分(D)の質量比率は1/3〜2/1、特に2/3〜3/2であるのが、製造時に金型に流し込む際の粘度を下げる効果の点から好ましい。
また、成分(B)と成分(D)は、合計で全組成中に4〜15質量%含有されるのが、感触の点から好ましい。
【0020】
本発明の口唇化粧料は、上記以外に、(E)25℃で固体又は半固体の油性成分を含有することができる。具体的には、固体パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、低分子ポリエチレン、低分子ポリオレフィン、ワセリン等の炭化水素系ワックス類;ラノリン、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ラノリン等の天然ワックス類;ステアリン酸、ベヘニン酸等の長鎖脂肪酸;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;脂肪酸コレステリル、脂肪酸フィトステアリル、硬化ヒマシ油、12−ヒドロキシステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル;ジアルキルルリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム等のアルキルリン酸塩などが挙げられる。
25℃で固体又は半固体の油性成分は、全組成中10〜30質量%、特に15〜25質量%含有されるのが、スティックの保型性の点から好ましい。
【0021】
本発明の口唇化粧料には、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば着色顔料、染料、体質顔料、界面活性剤、酸化防止剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤等を含有させることができる。
【0022】
本発明の口唇化粧料は、例えば、油溶性アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体、油剤、ワックスを混合し、加熱融解して均一に混合する。これに、色材、粉体を分散した油剤を加え、例えばロールミルを用いて全成分均一に成るまで混合し、これを加熱溶解状態で金型に流し込み、冷却固化することにより製造することができる。
【0023】
本発明の口唇化粧料は、固形状で、例えば口紅、リップクリーム、リップグロス、口紅用下地、口紅オーバーコートなどとして、適用することができる。
【実施例】
【0024】
合成例1
ステアリルメタクリレート50g、トルエン50gを溶解混合し、これに2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1gを加え、窒素雰囲気下、65℃で5時間、さらに80℃で1時間重合させた。
得られたステアリルメタクリレート重合体は、リンゴ酸ジイソステアリルに65℃で溶解した。
【0025】
合成例2
ミリスチルメタクリレートを用いる以外は合成例1と同様に重合を行なった。
得られたミリスチルメタクリレート重合体は、リンゴ酸ジイソステアリルに55℃で溶解した。
【0026】
実施例1
表1に示す組成のスティック状口紅を製造した。得られた口紅について、溶融状態での粘度と、得られたスティックの外観欠損の発生率及び実使用時のにじみにくさを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0027】
(製法)
表1の成分をロールミルで混合し、90℃に加熱する。更に、ホモミキサーで、1時間90℃で攪拌し、顔料や粉体が均一に分散されたことを目視にて確認した後、脱泡した。80℃で溶解状態の粘度を測定した後、これを金型に流し込み、室温まで冷却して、スティック状口紅を得た。
【0028】
(評価方法)
(1)溶解状態での粘度:
成型用金型への流し込み時の粘度を評価するため、口紅が固化する温度よりもやや高い60℃での粘度を、音叉型振動式粘度計により測定した。
【0029】
(2)外観欠損の発生率:
50本のスティックを成型した際に、スティック表面にピンホールや傷などの欠損が発生した本数の割合(%)を求めた。
【0030】
(3)口紅のにじみにくさ:
専門パネル10名が実際に唇を塗布し、3時間後のにじみ程度を自己評価した。にじみが起きていないと評価した専門パネルの人数を示した。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃で液状の油剤 30〜80質量%、
(B)50〜80℃で加熱したときに、成分(A)の油剤と均一に溶解できる、ミリスチルメタクリレート重合体及びステアリルメタクリレート重合体から選ばれる1種以上のアルキル(メタ)アクリレート(共)重合体 0.5〜10質量%、
(C)全組成中に2〜5質量%の(D)有機球状粉体を含む粉体 15〜50質量%
を含有する口唇化粧料。
【請求項2】
固形状である請求項1記載の口唇化粧料。
【請求項3】
成分(D)の有機球状粉体と、成分(B)の油溶性アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体が、合計で全組成中に4〜15質量%含有される請求項1又は2記載の口唇化粧料。
【請求項4】
成分(B)の油溶性アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体と、成分(D)の有機球状粉体の質量比率が、1/3〜2/1である請求項1〜3のいずれか1項記載の口唇化粧料。
【請求項5】
成分(D)が、シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート及びセルロースから選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の口唇化粧料。
【請求項6】
成分(B)の油溶性アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体と、成分(D)の有機球状粉体の質量比率が、1/3〜1/1である請求項1〜5のいずれか1項記載の口唇化粧料。

【公開番号】特開2010−168401(P2010−168401A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108596(P2010−108596)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【分割の表示】特願2004−295656(P2004−295656)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】