説明

口腔内装着器具用洗浄剤及び口腔内装着器具用表面処理剤

【課題】 デンチャープラークに対する洗浄・殺菌効果に優れ、義歯等口腔内装着器具に悪影響を及ぼす可能性が低く、且つ保存安定性に優れた口腔内装着器具用洗浄剤及び口腔内装着器具用表面処理剤を提供する。
【解決手段】 塩化リゾチームを含有することを特徴とする、口腔内装着器具用洗浄剤及び/又は口腔内装着器具用表面処理剤;さらにカチオン性殺菌剤類、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール及びティートゥリーオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、上記口腔内装着器具用洗浄剤及び/又は口腔内装着器具用表面処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば総義歯、部分義歯、歯列矯正器具あるいはリテイナー等(以下これらを総称して「義歯等」ともいう。)といった口腔内装着器具を洗浄するための洗浄剤、及びこれらの表面を処理するための表面処理剤に関する。さらに詳しくはデンチャープラークに対する洗浄・殺菌効果に優れ、義歯等の口腔内装着器具に悪影響を及ぼさない、保存安定性に優れた口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
総義歯、部分義歯の使用者にとって、義歯に付着する汚れを効果的に除去することが衛生面の上から重要である。また歯列を矯正するための用具である歯列矯正器具や、歯列矯正終了後に整った歯列が基の状態に戻らないよう補助的に用いられるリテイナー等についても、義歯同様に汚れを効果的に除去することが必要である。
義歯等の汚れについてはステインと呼ばれる色素系の沈着物によるものと、デンチャープラークと呼ばれる微生物とその産生物によって形成されるものとがあるが、デンチャープラークについてはカンジタ症等の口腔疾患、誤嚥による感染症、内臓疾患或いは口臭を引き起こす要因となるため、このデンチャープラークの付着した義歯等については、充分な洗浄、殺菌が必要となる。
【0003】
このようなことから、現在様々な義歯用の洗浄剤が市販されている。その多くは洗浄剤中に過酸化物や次亜塩素酸を配合し、その化学的効果で洗浄を行うものである。例えば過酸化水素と特定の化合物を配合した液体義歯洗浄剤が提案されており(特許文献1参照。)、また、水中において過酸化水素と反応して有機過酸を発生する化合物を発生する特定の化合物を配合した義歯洗浄剤組成物が知られている(特許文献2参照。)。
しかしこのような過酸化物や次亜塩素酸を配合した義歯洗浄剤は、長期の使用によって義歯を傷める可能性があり、義歯に悪い影響を及ぼすという問題があった。また過酸化物や次亜塩素酸による洗浄は、漂白を伴うため、洗浄後、もとの義歯の色よりも白くなってしまうという問題もあった。これは部分義歯等の場合、義歯であることが目立たないように、天然歯に近い色に調整したものが、洗浄を続けるごとに天然歯と異なった色合いになってしまうということである。
【0004】
一方、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ等の酵素を配合した義歯洗浄剤も市販されている。例えばデキストラナーゼを含めた義歯洗浄剤が提案されている(特許文献3参照。)。これらの酵素配合義歯洗浄剤については、義歯へ悪影響を及ぼす可能性が低く漂白も起こらないが、殺菌力が弱い。また酵素の安定配合が難しく、特に液剤タイプの義歯洗浄剤には配合が困難であった。
そのため、酵素配合の義歯洗浄剤は粉末や顆粒、錠剤等の固形タイプが主であり、その結果として、固形である剤形を保つために、その他に配合する洗浄成分やコーティング成分、消臭成分などに制限が生じてしまう。
このようなことから、デンチャープラークに対する洗浄・殺菌効果に優れ、義歯等を傷つけることなく、且つ保存安定性に優れた義歯等用の洗浄剤及び表面処理剤が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−183942号公報
【特許文献2】特開平11−180842号公報
【特許文献3】特開平7−17842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、デンチャープラークに対する洗浄・殺菌効果に優れ、義歯等口腔内装着器具に悪影響を及ぼす可能性が低く、且つ保存安定性に優れた口腔内装着器具用洗浄剤及び口腔内装着器具用表面処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、多くの種類が存在する酵素の中で、溶菌作用を有する塩化リゾチームを配合することで、デンチャープラークに対する優れた洗浄・殺菌効果を示し、義歯等を傷つけることもない洗浄剤及び表面処理剤を提供することが可能であることを見出した。またカチオン性殺菌剤類、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール及びティートゥリーオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合することで、デンチャープラークに対する洗浄・殺菌力が向上することを見出した。さらには、セラックを配合することで、塩化リゾチームの保存安定性が向上し、また義歯等の表面へのコーティング効果もより付与させることができることをも見出した。さらには数平均分子量200〜20,000のポリエチレングリコール及び数平均分子量10,000〜600,000のポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種を配合することで、さらに洗浄効果が高まることをも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
従って本発明は、塩化リゾチームを含有することを特徴とする口腔内装着器具用洗浄剤及び/又は口腔内装着器具用表面処理剤に関する。
本発明はまた、さらにカチオン性殺菌剤類、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール及びティートゥリーオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する上記洗浄剤及び表面処理剤に関する。
本発明はまた、さらにセラックを含有する上記洗浄剤及び表面処理剤に関する。本発明はまた、さらに平均分子量200〜20,000のポリエチレングリコール及び数平均分子量10,000〜600,000のポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する上記洗浄剤及び表面処理剤に関する。
本発明はさらに、剤形が液体若しくは液状である上記洗浄剤及び表面処理剤に関する。
本発明はさらに、内容物を泡状に噴出することができる容器に上記液体若しくは液状洗浄剤及び表面処理剤を充填させた口腔内装着器具用洗浄剤及び口腔内装着器具用表面処理剤に関する。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤の好ましい実施態様として、塩化リゾチーム、トリクロサン、ティートゥリーオイル、セラック及びポリエチレングリコール400とを組み合わせた液体洗浄剤及び表面処理剤がある。
【0009】
本明細書中で口腔内装着器具とは総義歯、部分義歯、歯列矯正器具及び歯列矯正終了後に整った歯列が基の状態に戻らないように補助的に用いられる器具(リテイナーと称される)などを包含する。
口腔内装着器具用の表面処理剤とは、義歯等に使用するリンス剤のことであり、洗浄後の義歯等に作用させ、義歯等の表面に被膜を形成させることにより、義歯等への歯垢付着抑制効果を発揮し、且つ総義歯或いは部分義歯の場合には、使用済みの義歯安定剤の剥離を良好にする効果を付与するものである。
口腔内装着器具用洗浄剤は、洗浄剤に表面処理効果を付与したリンスイン洗浄剤をも包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤は、デンチャープラークに対して優れた洗浄・殺菌効果を発揮し、義歯等の口腔内装着器具に悪影響を及ぼさず、また、酵素成分の保存安定性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤の剤形としては、液体(乳化系、可溶化系)、液状(粘性の液体)、ゲル状、ペースト状、錠剤、発泡錠、粉末状、顆粒状などを包含する。また、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤の剤形は、望ましくは液体若しくは液状である。
【0012】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に用いる塩化リゾチームは、各種の生態粘液中に含まれるムコ多糖分解酵素であり、細菌の細胞壁を分解する溶菌作用を有している。また塩化リゾチームは、医療の分野においては眼、鼻、咽頭、耳等の粘膜部分において炎症を生じた場合に有効に使用される薬剤である。
このような塩化リゾチームは、医薬品を始めとして、化粧品・歯磨剤・健康食品・農芸化学品などに広く一般的に使用されるものであり、本発明においてはこれらに使用されている市販品を用いることができる。一般的には粉末形状で入手でき、例えば0.5g当り500mg力価を有する市販品がある。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤における塩化リゾチームの含有量は、目的とする効果が発揮され且つその安定性を考慮すると、該洗浄剤及び表面処理剤の全質量に対して0.05〜10質量%が適当であり、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0013】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤には、洗浄・殺菌効果をより向上させる点から、カチオン性殺菌剤類、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール及びティートゥリーオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。
カチオン性殺菌剤としては、第四級アンモニウム化合物及びビグアニド系化合物が好適である。
第四級アンモニウム化合物に属する殺菌剤としては、例えば塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。好ましくは塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムである。
【0014】
また、ビグアニド系化合物に属する殺菌剤としては、例えばクロルヘキシジンおよびその塩を挙げることができる。ここでクロルヘキシジンの塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に制限されないが、例えば塩酸塩等の無機酸塩、グルコン酸塩等の有機酸塩を挙げることができる。好ましくはグルコン酸クロルヘキシジンおよび塩酸クロルヘキシジンである。
本発明では、これらカチオン性殺菌剤を1種あるいは2種以上使用することができる。
このようなカチオン性殺菌剤は医薬品や歯磨剤をはじめ、化粧品・食品・雑貨品など広く一般的に使用されるものであり、本発明においてはこれらに使用されている市販品を用いることができる。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤におけるカチオン性殺菌剤類の含有量は、目的とする効果を発揮させ且つ安定性の観点から、該洗浄剤及び表面処理剤の全質量に対して0.01〜5質量%が適当であり、好ましくは0.02〜1質量%である。
【0015】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に用いるトリクロサンとは、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテルとも言い、C127l32の化学式で表される。トリクロサンは広い抗菌スペクトルを有しており、低濃度でグラム陽性菌、陰性菌及びカビに対して効果を示す。
このようなトリクロサンは、医薬品を始めとして、化粧品・歯磨剤・健康食品・農芸化学品などに広く一般的に使用されるものであり、本発明においてはこれらに使用されている市販品を用いることができる。
口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤におけるトリクロサンの含有量は、目的とする効果を発揮させ且つ安定性の観点から、該洗浄剤及び表面処理剤の全質量に対して0.01〜5質量%が適当であり、好ましくは0.02〜1質量%である。
【0016】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に用いるイソプロピルメチルフェノールとは、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、ビオゾールとも言い、C1014Oの化学式で表される。このようなイソプロピルメチルフェノールは高い殺菌・防腐効果を有しており、医薬品を始めとして、化粧品・歯磨剤・健康食品・農芸化学品などに広く一般的に使用されるものであり、本発明においてはこれらに使用されている市販品を用いることができる。
口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤におけるイソプロピルメチルフェノールの含有量は、目的とする効果を発揮させ且つ安定性の観点から、該洗浄剤及び表面処理剤の全質量に対して0.01〜5質量%が適当であり、好ましくは0.02〜1質量%である。
【0017】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に用いるヒノキチオールとは、天然樹木である青森ヒバに含まれる特有成分で、結晶性酸性化合物である。ヒノキチオールを含有する他の樹種としては、台湾ヒノキ、北米のウエスタンレッドシダー等が挙げられる。ヒノキチオールは強い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを有しており、数少ない天然系殺菌剤のひとつである。
このようなヒノキチオールは食品や歯磨剤をはじめ、化粧品・医薬品・農芸用品・建築材料・餌類など広く一般的に使用されるものであり、本発明においてはこれらに使用されている市販品を用いることができる。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤におけるヒノキチオールの含有量は、目的とする効果を発揮させ且つ安定性の観点から、該洗浄剤及び表面処理剤の全質量に対して0.005〜5質量%が適当であり、好ましくは0.01〜1質量%である。
【0018】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に用いるティートゥリーオイルは、学名がメラルカアルターニフォリア(Melaleuca alternifolia)というオーストラリア原産のフトモモ科の木から取れる精油分のことである。
このようなティートゥリーオイルは食品や歯磨剤をはじめ、化粧品・医薬品・農芸用品・建築材料・餌類など広く一般的に使用されるものであり、本発明においてはこれらに使用されている市販品を用いることができる。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤におけるティートゥリーオイルの含有量は、目的とする効果を発揮させ且つ安定性の観点から、該洗浄剤及び表面処理剤の全質量に対して0.005〜5質量%が適当であり、好ましくは0.01〜1質量%である。
【0019】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤には、塩化リゾチームの保存安定性を向上させ、また義歯等の表面へのコーティング効果をより多く付与させる点で、セラックを配合することができる。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に用いるセラックとは、ラックカイガラムシ(Laccifer lacca Kerr(Coccidae))の分泌物から得られる天然樹脂である。硬くてもろく透明な淡レモン黄色〜茶色を帯びたオレンジ色の薄片、または粉末で、無臭またはわずかににおいがあり、無味である。また、水やアルコール以外の有機溶剤にはほとんど不溶または膨潤するだけであるが、常温でアルコールに簡単に溶解する。通常、医薬品の錠剤、糖衣錠、カプセルや菓子類の皮膜剤として、また歯科用ではベースプレート、スティッキーワックス等に用いられている。セラックは、通常溶剤に溶解させた状態で市販されており、本発明においてはこのような市販品を使用することができる。
口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤におけるセラックの含有量は、目的とする効果を発揮させ且つ安定性の観点から、該洗浄剤及び表面処理剤の全質量に対してセラックの原末として0.1〜20質量%が適当であり、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0020】
また、洗浄効果をより高める点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に、数平均分子量200〜20,000のポリエチレングリコール及び数平均分子量10,000〜600,000のポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に用いるポリエチレングリコールは、水またはエチレングリコールに酸化エチレンを付加させた重合体で、H(OCH2CH2nOHで表される。この重合体は酸化エチレンの付加量によって液状の低分子量のものから固体の高分子量のものまで各種分子量の重合物ができ、その生成物は、種々の重合度のものが混合している。ポリエチレングリコールはその平均分子量をもって分類され、200〜20,000程度まで存在する。また歯磨剤等の口腔用組成物には、タバコのやに等のステイン除去剤として配合される。本発明では、好ましくは数平均分子量200〜20,000のポリエチレングリコールを1種あるいは2種以上使用することができる。すなわち平均分子量が異なるものを2種以上使用してもよい。このようなポリエチレングリコールは、医薬品や化粧品をはじめ、繊維・ゴム・接着剤・金属・窯業・石油・印刷・インキ工業などに広く一般的に使用されるものであり、本発明においてはこれらに使用されている市販品を用いることができる。
口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤における1種あるいは2種以上のポリエチレングリコールの含有量は、目的とする効果を発揮させ且つ使用性の観点から、該洗浄剤及び表面処理剤の全質量に対して0.5〜30質量%が適当であり、好ましくは1〜20質量%である。
【0021】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤に用いるポリビニルピロリドンとは、アセチレンの高圧合成法レッペ反応による合成化合物の一種であり、ビニルピロリドンの直鎖重合体である。また、重合反応の触媒量、温度、時間などにより本品の数平均分子量は10,000〜700,000程度まで存在する。また歯磨剤等の口腔用組成物には、タバコのやに等のステイン除去剤として配合される。本発明では、好ましくは数平均分子量10,000〜600,000のポリビニルピロリドンを1種あるいは2種以上使用することができる。すなわち平均分子量が異なるものを2種以上使用してもよい。数平均分子量が10,000に満たないものは、期待される効果が発揮されず、一方数平均分子量が600,000を越えるものは、剤形上配合が困難となる。このようなポリビニルピロリドンは、医薬品や化粧品を始め、織物・紙業・印刷・インキ工業・保護塗料・飲料清澄剤・接着剤・農芸化学・プラスティック工業などに広く一般的に使用されるものであり、本発明においてはこれらに使用されている市販品を用いることができる。
口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤における1種あるいは2種以上のポリビニルピロリドンの含有量は、目的とする効果を発揮させ且つ使用性の観点から、該洗浄剤及び表面処理剤の全質量に対して0.1〜30質量%が適当であり、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0022】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤には、目的とする剤形に応じて適宜添加剤を含ませることができ、例えば界面活性剤、湿潤剤、増粘剤、溶剤、酸剤、防腐剤、賦形剤、香料などを使用することができる。これらの添加剤は、通常使用されている配合量で使用することができる。特に洗浄効果を付与した洗浄剤を企図するときには、例えば界面活性剤といった洗浄成分を比較的多く配合することができる。
【0023】
上記の添加剤の具体例としては、以下の成分が挙げられる。
<界面活性剤>
ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸モノグリセリンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、、N-アシルグルタメート等のN-アシルアミノ酸塩、マルチトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等
【0024】
<湿潤剤>
グリセリン、ジグリセリン、ソルビット、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、マルチトール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、キシリトール等の多価アルコール等
<増粘剤>
カラギーナン(ι、λ、κ)、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルシウム含有アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩及びその誘導体、グァーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等
【0025】
<溶剤>
水、エタノール等
<酸剤>
過酸化ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、無水クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸等
<防腐剤>
パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール等
<賦形剤>
シリカゲル、沈降性シリカ、火成性シリカ、含水ケイ酸、無水ケイ酸、ゼオライト、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第二リン酸カルシウム二水和物、第二リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、合成樹脂系研磨剤等
<その他>
香料、青色1号等の色素、酸化チタン等の顔料、エデト酸、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、塩化ナトリウム、チャ乾留液、グルタミン酸ナトリウム等
【0026】
上記成分を組み合わせた本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤の製法は、目的とする剤形に応じて常法に準じて製造できるものであり、特に限定されるものではない。
また、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤は、プラスチック、ガラス、金属等のボトル、アルミニウム、ラミネート、ガラス蒸着、プラスチック等のチューブ、エアゾール容器、ソフトカプセル等に充填されて使用することができる。
本発明の義歯等洗浄剤及び表面処理剤は、通常の義歯洗浄剤と同様に使用することができる。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤は、その剤形に応じて、例えば液体、液状、ゲル状、ペースト状などの剤形であればそのまま、あるいは用時、適量の水に溶解又は希釈し、義歯等へ塗布する、又はそこへ義歯等を浸漬するといった態様で適用できる。溶解・希釈するには、例えば2〜3g程度の錠剤、顆粒或いは液体などを水200〜500g程度に溶解若しくは希釈して使用することができる。本発明の口腔内装着器具用表面処理剤は、義歯等を従来の洗浄剤で洗浄した後、その義歯等に直接塗布するか、又はその義歯等を表面処理剤に浸漬させるといった態様で使用することができる。浸漬時間は10秒〜1晩程度であるが、それ以上でもよい。本発明の口腔内装着器具用洗浄剤または表面処理剤を義歯等の口腔内装着器具に上記のように適用した後、水で軽く洗い流せばよい。
【0027】
本発明の好ましい実施態様の1つとして、内容物を泡状に噴出することができる容器に充填された液体若しくは液状の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤がある。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤を泡状にする手段としては、液体あるいは液状の製剤を用い、内容物に押圧力を与えることにより、内容物を空気とを混合して噴出口より泡状に内容物を噴出させるプッシュ式ディスペンサーを装着したフォームボトルや、容器胴体部分を押してディスペンサーより泡を噴出させるスクイズボトルに充填した仕様とすることや、エアゾール仕様とするなどがあり、そのような容器として各種市販品を使用することができる。
その使用方法は、義歯等に直接泡を吹きかける方法や、コップ等に泡を充満し、その中に義歯等を入れる方法などがある。こうして泡状とすることによって、少量の洗浄剤及び表面処理剤で義歯等を処理することができ経済的である。
【実施例】
【0028】
以下、実験例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。表1〜2に示す組成(単位:質量%)にて常法により各種液体口腔内装着器具用洗浄剤/表面処理剤を調製し、以下の試験に供した。
<酵素安定性定量試験>
表1及び表2に示す洗浄剤を調製後、下記条件にて過酷保存を行った。
過酷保存条件:
1.60℃の恒温槽中に、1ヶ月間保存
2.50℃の恒温槽中に、2ヶ月間保存
調製後、及び過酷保存終了後の各々の時点で、各種洗浄剤(試料)中の酵素である塩化リゾチームあるいはプロテアーゼについて吸光度法による定量試験を行い、各試料中の酵素の量を測定した。
【0029】
[吸光度法による定量試験]
上記調製後、及び過酷保存後の各種洗浄剤を試料として、その所定量を採取し、塩化ナトリウム溶液を加えて時々振り混ぜながら30分間放置した後、上澄液にリン酸緩衝液を加えて試料溶液とする。別に、酵素標準品にリン酸緩衝液を加えて標準溶液とする。
試験管3本に基質液を入れ、加温し、これに予め加温した試料溶液、標準溶液及び空試験としてのリン酸緩衝液をそれぞれ加え、10分間放置した後、空試験であるリン酸緩衝液を対照として、波長640nmにおける吸光度を測定し、次式より試料中の酵素の量〔mg(力価)〕を求めた。
試料中の酵素の量〔mg(力価)〕=
標準品の採取量〔mg(力価)〕×{(空試験の吸光度−試料溶液の吸光度)/(空試験の吸光度−標準溶液の吸光度)}×100/試料の採取量(g)
さらに上記で求めた試料中の酵素の量を用いて、塩化リゾチーム及びプロテアーゼの残存率は次の式(1)より求めた。
式(1):
残存率(%)=[(上記過酷保存後の塩化リゾチーム或いはプロテアーゼの量)/(調製時の塩化リゾチーム或いはプロテアーゼの量)]×100
こうして、過酷保存品において塩化リゾチーム或いはプロテアーゼの残存率が80%以上であった場合、塩化リゾチーム又はプロテアーゼは安定であり、90%以上であった場合は極めて安定であると判断した。
【0030】
<洗浄力試験>
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤の、デンチャープラーク(バイオフィルム)除去効果を検証するため、プラークモデルを作成してin vitroにおける評価を行った。
Brain Heart Infusion(BHI)液体培地で37℃、24時間前培養したC.albicansとS.mutansを収菌し、それぞれ菌懸濁液を調製した。各懸濁液を1:1で混合したものをC.albicans−S.mutans混合菌液とした。
24穴マイクロプレートに重合レジンを厚さ1〜2mmに塗布し、人工唾液を0.5ml添加し、37℃で1時間放置した。人工唾液を除去し、C.albicans−S.mutans混合菌液をレジン表面に0.5ml接種し、37℃で2時間インキュベーションした。BHI液体培地を2ml添加して37℃で3日間培養してバイオフィルムの形成を行った。
表1及び表2の各例に示す液体洗浄剤を3%水溶液になるように希釈し、試料溶液とした。各レジンに各試料溶液を1ml添加し、室温でインキュベーションした。試料溶液添加60分後に試料溶液を除去し、滅菌精製水で3回洗浄した。重合レジン表面のC.albicansとS.mutansを化学発光検出器によりATP量を測定し、残存したバイオフィルムの量とした。
洗浄力は以下の数式(2)より、試料溶液添加前のバイオフィルム量に対して除去された割合を洗浄率として求めた。
数式(2):
洗浄率(%)=[(試料溶液添加前のバイオフィルム量−試料溶液添加後のバイオフィルム量)/(試料溶液添加前のバイオフィルム量)]×100
【0031】
<義歯を構成する材料に対する影響を調べる試験>
表1及び表2の各例に示す洗浄剤を3%水溶液になるように希釈し、試料溶液とした。
容量300mlのビーカーに以下に示す銀合金片と、各試料溶液を入れ、15日間放置した。試料溶液は毎日交換した。15日後の劣化状態を目視にて、下記の評価基準に基づいて評価した。
「評価基準」
銀合金劣化度合い
○・・・・・劣化していない。
×・・・・・劣化している(酸化している)。

















【0032】
【表1】






















【0033】
【表2】

【0034】
以上の実験結果から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤は、デンチャープラークに対する洗浄・殺菌効果に優れ、義歯等に悪影響を与えることなく、また、経時的に酵素が安定保存されていることが判る。
【0035】
以下に、実施例5〜13の口腔内装着器具用洗浄剤及び表面処理剤を示す。単位は質量%である。
実施例5(液体)
塩化リゾチーム 2.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO:60) 5.0
エタノール 10.0
チャ乾留液 1.0
パラベン 0.1
香料 0.1
精製水 残り
計 100.0%
【0036】
実施例6(液体)
塩化リゾチーム 2.0
トリクロサン 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.5
セラック(原末) 3.0
ポリビニルピロリドン(数平均分子量:40,000) 0.5
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO:60) 5.0
エタノール 10.0
チャ乾留液 1.0
パラベン 0.1
香料 0.1
精製水 残り
計 100.0%
【0037】
実施例7(液体)
塩化リゾチーム 2.0
ヒノキチオール 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.5
セラック(原末) 3.0
ポリエチレングリコール400 0.5
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO:60) 5.0
エタノール 10.0
柿タンニン 0.5
安息香酸ナトリウム 0.1
香料 0.1
精製水 残り
計 100.0%
【0038】
実施例8(液状)
塩化リゾチーム 1.0
塩化セチルピリジニウム 0.5
セラック(30%エタノール溶液) 3.0
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-
ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン 5.0
カラギーナン 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO:60) 1.0
酢酸トコフェロール 0.1
パラベン 0.1
香料 0.5
精製水 残り
計 100.0%
【0039】
実施例9(液状)
塩化リゾチーム 0.5
塩酸クロルヘキシジン 0.5
ティートゥリーオイル 0.01
セラック(30%エタノール溶液) 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO:60) 5.0
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.3
キサンタンガム 0.1
チャ乾留液 0.1
パラベン 0.1
香料 0.5
精製水 残り
計 100.0%
【0040】
実施例10(錠剤)
塩化リゾチーム 5.0
塩化セチルピリジニウム 0.5
セラック(原末) 3.0
ポリビニルピロリドン(数平均分子量:40,000) 3.0
過炭酸ナトリウム 18.4
過硼酸ナトリウム 18.4
炭酸水素ナトリウム 18.4
無水クエン酸 10.0
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0
コーンスターチ 5.0
ステアリン酸マグネシウム 0.5
石けん 1.0
タルク 0.5
無水硫酸ナトリウム 14.0
香料 0.3
計 100.0%
【0041】
実施例11(ペースト)
塩化リゾチーム 1.0
イソプロピルメチルフェノール 0.01
トリクロサン 0.01
セラック(30%エタノール溶液) 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.7
濃グリセリン 30.0
水酸化ナトリウム 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO:60) 1.0
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液 2.0
エタノール 1.0
パラベン 0.1
香料 0.3
精製水 残り
計 100.0%
【0042】
実施例12(ペースト)
塩化リゾチーム 0.05
トリクロサン 0.5
セラック(30%エタノール溶液) 3.0
ポリエチレングリコール400 30.0
濃グリセリン 10.0
無水ケイ酸 7.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.5
チャエキス 1.0
パラベン 0.1
香料 0.3
精製水 残り
計 100.0%
【0043】
実施例13(液体)
塩化リゾチーム 1.0
トリクロサン 0.5
ティートゥリーオイル 0.3
セラック(30%エタノール溶液) 3.0
ポリオキシエチレングリコール400 5.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO:60) 5.0
エタノール 10.0
パラベン 0.1
香料 0.1
精製水 残り
計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化リゾチームを含有することを特徴とする、口腔内装着器具用洗浄剤及び/又は口腔内装着器具用表面処理剤。
【請求項2】
さらにカチオン性殺菌剤類、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール及びティートゥリーオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1記載の口腔内装着器具用洗浄剤及び/又は口腔内装着器具用表面処理剤。
【請求項3】
さらにセラックを含有する請求項1又は2記載の口腔内装着器具用洗浄剤及び/又は口腔内装着器具用表面処理剤。
【請求項4】
さらに数平均分子量200〜20,000のポリエチレングリコール及び数平均分子量10,000〜600,000のポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の口腔内装着器具用洗浄剤及び/又は口腔内装着器具用表面処理剤。
【請求項5】
剤形が液体若しくは液状である請求項1〜4のいずれか1項記載の口腔内装着器具用洗浄剤及び/又は口腔内装着器具用表面処理剤。
【請求項6】
内容物を泡状に噴出することができる容器に充填された請求項5記載の口腔内装着器具用洗浄剤及び/又は口腔内装着器具用表面処理剤。

【公開番号】特開2006−117600(P2006−117600A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308527(P2004−308527)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(391066490)日本ゼトック株式会社 (31)
【Fターム(参考)】