説明

口腔内速崩壊錠及びその製造法

【課題】本発明は、保存安定性が優れ、且つ充分な硬度が維持されながら良好な崩壊性を示し、且つ苦味が抑制された口腔内速崩壊錠の開発を目的とする。
【解決手段】医薬活性成分、及び賦形剤として有機水不溶性賦形剤(例えば結晶セルロース、デンプン)を含み、好ましくは更に崩壊剤を含み、実質的に水溶性賦形剤及び無機賦形剤を含まないことを特徴とする口腔内速崩壊錠に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖または糖アルコールなどの水溶性賦形剤及び無水リン酸水素カルシウム等の無機賦形剤を含まない、口腔内で速やかに崩壊する口腔内速崩壊錠、特にアムロジピン口腔内速崩壊錠及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会が進み、生理的諸機能の低下または老人性痴呆症などにより、食物摂取機能(咀嚼、嚥下など)の低下したまたは障害のある高齢者が増加している。また、高齢者の中には夜尿症患者も多く存在し、このような患者に対して錠剤を水で服用させた場合、服用困難あるいは、夜尿の懸念等の問題が生じてきている。一方、忙しい現代社会において時間および場所を選ばずに服用することができるという利点から、服用時に水を必要としない経口製剤の開発が求められている。
そこで、水なしでも服用可能な経口製剤の開発が種々なされており、その一つとして口腔内速崩壊錠が盛んに開発されている。口腔内速崩壊錠には口腔内で速やかに崩壊し、ざらつきを残さずに滑らかに服用可能な製剤が望まれる。口腔内速崩壊錠を製造するにあたっては、口腔内での速やかな崩壊性や溶解性を担保するため、賦形剤として一般的に糖及び/又は糖アルコールが用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には医薬成分、主賦形剤としてのマンニトール、助賦形剤及び結合性崩壊剤を含有する口腔内速崩壊錠が記載されている。
特許文献2には医薬成分、マンニトール及び乳糖等の水溶性賦形剤及び結合剤としてデンプンを含有する口腔内速崩壊錠が記載されている。
特許文献3には、医薬成分、エリスリトール、結晶セルロース及び崩壊剤を含有する口腔内速崩壊錠が記載されている。
特許文献4には、医薬成分、D−マンニトール、セルロース類及び崩壊剤を含有する口腔内速崩壊錠が記載されている。
【0004】
また、アムロジピンは独特の苦味を有することが知られており、苦味を有する医薬成分を口腔内速崩壊錠として製剤する場合には、錠剤を口腔内の唾液水分で崩壊もしくは溶解させて服用するという口腔内速崩壊錠の性質上、医薬成分の苦味が口腔内に暴露され、服用に困難を伴う。そのため、口腔内速崩壊錠などの水なしで服用する経口固形製剤における、薬物の苦味を抑制する方法が種々検討されている。
例えば特許文献5には、アムロジピン及び、水溶性高分子もしくは水不溶性の高分子などの連続層形成担体を含有する口腔内速崩壊錠が記載され、具体的にはD−マンニトール等の水溶性賦形剤と共に打錠した口腔内速崩壊錠が記載されている。また、特許文献6には、賦形剤と混合した苦味等の不快な味を有する薬物をエチルセルロースで造粒もしくは被覆してなる薬物含有顆粒と、糖及び糖アルコールを水に不溶であるが親水性の造粒成分で造粒もしくは被覆してなる薬物不含顆粒とを混合圧縮成形してなる口腔内速崩壊錠が記載されている。
また、糖類を含まない口腔内速崩壊錠としては、特許文献7に、実質的に、活性成分、結晶セルロース及び無機賦形剤からなる粉末を直接圧縮成形した口腔内速崩壊錠が開示されている。
【特許文献1】特開平10−298062
【特許文献2】再公表特許 WO00/47233
【特許文献3】特開平10−182436
【特許文献4】特開2001−58944
【特許文献5】特開2007−63263
【特許文献6】特開2005−60309
【特許文献7】WO 2005/123040
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は保存安定性が良好で、口腔内で良好な崩壊性を示すとともに実用的な錠剤硬度を有し、且つ活性成分、例えばアムロジピン等の苦味等を抑制し、口腔内でのざらつき等の服用時の口当たりを改善した口腔内速崩壊錠の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的の口腔内速崩壊錠、特にアムロジピン口腔内速崩壊錠を開発すべく種々検討の結果、水溶性賦形剤及び無機賦形剤を含有させること無く、結晶セルロース、でんぷん等の粉末状の水不溶性賦形剤と活性成分粉末(例えばアムロジピン粉末)との混合物を、直接打錠などの方法で、圧縮成型して口腔内速崩壊錠とすることにより、本発明の目的とする口腔内速崩壊錠、例えばアムロジピン口腔内速崩壊錠を製造できることを見いだし、本発明を完成した。
即ち本発明は
(1) 医薬活性成分、及び賦形剤として有機水不溶性賦形剤を含み、実質的に水溶性賦形剤及び無機賦形剤を含まないことを特徴とする口腔内速崩壊錠、
(2) 医薬活性成分がアムロジピンまたはその薬学上許容される塩である上記(1)に記載の口腔内速崩壊錠、
(3) 有機水不溶性賦形剤が結晶セルロース及びデンプンから選ばれる少なくとも一種である上記(1)又は(2)に記載の口腔内速崩壊錠、
(4) 有機水不溶性賦形剤として結晶セルロース及びトウモロコシデンプンを含む上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の口腔内速崩壊錠、
(5) デンプンと結晶セルロースの使用割合がデンプン1質量部に対して、結晶セルロース5〜9質量部の割合である上記(3)〜(4)に記載の口腔内速崩壊錠、
(6) 有機水不溶性賦形剤の含有割合が、錠剤全体に対して70〜80%(質量)であり、口腔内での崩壊時間が30秒以内である上記(2)〜(5)項の何れか一項に記載の口腔内速崩壊錠、
(7) 更に崩壊剤を含み、有機水不溶性賦形剤と崩壊剤の使用割合が、有機水不溶性賦形剤1質量部に対して、崩壊剤が0.1〜4質量部の割合である上記(1)〜(6)の何れか一項に記載の口腔内速崩壊錠、
(8) 崩壊剤の平均粒子径が50μm以下、結晶セルロースの平均粒子径が90μm以下、デンプンの平均粒子径が50μm以下である上記(7)に記載の口腔内速崩壊錠、
(9) 有機水不溶性賦形剤として、結晶セルロースを含み、結晶セルロースの含量が錠剤全体に対して、65〜75質量%である上記(1)〜(8)の何れか一項に記載の口腔内速崩壊錠、
(10) デンプン含量が錠剤全体に対して、5〜15質量%である上記(1)〜(9)の何れか一項に記載の口腔内速崩壊錠、
(11) 医薬活性成分、及び賦形剤として有機水不溶性賦形剤を含み、実質的に水溶性賦形剤及び無機賦形剤を含まない粉末状混合物を、湿式造粒することなく、直接打錠法により圧縮成型することを特徴とする口腔内速崩壊錠の製造法、
(12) 直接打錠法が、内部滑沢打錠法又は外部滑沢打錠法であり、滑沢剤の使用量が錠剤全体に対して、0.5〜0.002%である上記(11)に記載の口腔内速崩壊錠の製造法、
(13) 口腔内速崩壊錠が、請求項2〜10に記載の口腔内速崩壊錠である、上記(11)又は(12)に記載の口腔内速崩壊錠の製造法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の口腔内速崩壊錠は、口腔内で良好な崩壊性を示すとともに実用的な錠剤硬度を有し、現在市販の口腔内速崩壊錠、例えばアムロジピン口腔内速崩壊錠に比して、保存安定性及び苦味等の抑制等において、優れるものである。
また、本発明の口腔内速崩壊錠は、打錠用の顆粒を使用しないことから、湿式造粒工程等を省略することが出来、該錠剤の製造工程が簡略され、また、該造粒工程で使用される結合剤を含まないことから、経時的に口腔内での崩壊性が悪くなると言った現象も無い等の利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を以下により詳しく説明する。
本発明の口腔内速崩壊錠は医薬活性成分、例えばアムロジピンまたはその薬学上許容される塩、及び賦形剤として有機水不溶性賦形剤を含み、実質的に水溶性賦形剤及び無機賦形剤を含まないことを特徴とする。
本発明における「口腔内速崩壊錠」とは、口腔内の唾液のみで90秒以内、好ましくは60秒以内、さらに好ましくは30秒以内、最も好ましくは20秒以内に崩壊し、水を摂取することなく口腔内で崩壊させて服用が可能な錠剤を意味する。また、この「口腔内速崩壊錠」は、錠剤のP T P取出し時において、割れ及び/または欠けを生じない程度の錠剤硬度を有するものがよい。
具体的には、7mm径の錠剤において、硬度が20N 以上、好ましくは30N以上、さらに好ましくは40N以上、最も好ましくは45N以上である口腔内速崩壊錠が挙げられる。さらに好ましくは、25℃相対湿度75%下1週間の条件で保存後の硬度が20N以上、好ましくは30N以上、さらに好ましくは40N以上、最も好ましくは45N以上である口腔内速崩壊錠が挙げられる。あまり固くなると口腔内での崩壊時間が長くなるおそれがあるので、好ましくは100N以下であり、より好ましくは80N以下、更に好ましくは60N以下である。従って最も好ましくは45〜55N程度である。
【0009】
本発明で使用する医薬活性成分として、特に限定されないが、好ましいものとして例えば、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン、イソプロピルアンチピリン等の解熱消炎剤、塩酸ジフェニルピラリン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸セチリジン、シメチジン、塩酸イソチペンジル等の抗ヒスタミン剤、塩酸フェニレフリン、塩酸プロカインアミド、硫酸キニジン、硝酸イソソルビド等の循環器用剤、ベシル酸アムロジピン、塩酸アロチノロール等の高血圧用剤、スルピリド、ジアゼパム、バルプロ酸、炭酸リチウム、クエン酸タンドスピロン等の精神安定剤、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、セファレキシン、アンピシリン等の抗生物質、オフロキサシン、レボフロキサシン等の抗菌剤、ファモチジン、レバミピド等の抗潰瘍剤、インスリン、バソプレッシン、インターフェロン、インターロイキン2、ウロキナーゼ、もしくはヒト成長ホルモン等の種々の成長因子などのペプタイドまたはタンパク、その他テオフィリン、カフェイン、クエン酸カルベタペンタン、塩酸フェニルプロパノールアミン、エチドロン酸二ナトリウム、リン酸ジメモルファン、塩酸プロピベリン、ドロキシドパ等の薬物が挙げられる。
【0010】
本発明においては以下、アムロジピンを代表例にして、詳しく説明するが、何れも他の医薬活性成分においても適用されるものである。
アムロジピンは、化学名は2−(2−アミノエトキシメチル)−4−(2−クロルフェニル)−1、4−ジヒドロ−6−メチルピリジン−3、5−ジカルボン酸 3−エチル 5−メチルであり、この化合物は光学活性中心を有するため、(S)−(−)−体および(R)−(+)体が存在するが、本発明ではそれらのいずれかまたは混合物を用いることができる。好ましくは(S)−(−)−体およびラセミ体が用いられる。
アムロジピンの薬学上許容される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。好ましくはベンゼンスルホン酸との塩、即ちベシル酸アムロジピンが挙げられる。
本発明で使用される活性成分、例えばアムロジピンまたはその塩は、平均粒子径は10〜200μm程度が好ましく、より好ましくは10〜125μm程度、更に好ましくは10〜100μm程度である。
【0011】
本発明で使用される有機水不溶性賦形剤としては、結晶セルロース及び/またはデンプンが好ましく、デンプンとしては、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン等が挙げられ、トウモロコシデンプンが好ましい。これらの賦形剤は単独でもよいが、二種以上併用することもでき、結晶セルロース及びトウモロコシデンプンの併用が好ましい。使用される有機水不溶性賦形剤の平均粒子径は125μm以下が好ましい。より好ましくは100μm以下であり、10μm以上である。更に好ましくは、結晶セルロースの場合、80μm以下、最も好ましくは60μm以下で、10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、デンプン類(好ましくはトウモロコシデンプン)の場合は、50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下で、10μm以上が好ましい。
【0012】
本発明においては、実質的に水溶性賦形剤及び無機賦形剤を含まないことを特徴にするもので、従来の口腔内速崩壊錠では一般的に含まれていた、水溶性糖類及び糖アルコール等の水溶性賦形剤及び特許文献7等に開示された無機賦形剤を含むことなく、目的とするアムロジピン口腔内速崩壊錠の開発に成功したものである。本発明において、実質的に含まないとは、含まないか、含んでもわずかであって実質的に賦形剤としての役割を果たさない程度のもので、本質的には含まれているとは認められない量を意味するものである。
また、本発明の好ましい製剤においては、造粒することなく、粉末の混合物を直接打錠するので、従来造粒工程で、使用される結合剤(親水性高分子)を含まない。従来の結合剤を含む口腔内速崩壊錠は長い間の保存によって、口腔内での崩壊性が次第に悪くなるという現象が生じる場合があった。しかしながら、本発明の口腔内速崩壊錠ではそのような現象が起らない。
なお、本発明では含まない結合剤としては、親水性高分子である、ゼラチン、グルテンなどの親水性天然高分子類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの親水性セルロース誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、酢酸ビニル樹脂などの親水性合成高分子等を挙げることが出来る。なお、本発明では賦形剤として含むデンプンは、親水性高分子に入るが、結合剤としての使用には該当しない。
【0013】
本発明の口腔内速崩壊錠は前記の有機水不溶性賦形剤と共に、従来錠剤等に使用される水不溶性の崩壊剤を含むのが好ましい。
本発明の口腔内速崩壊錠において使用される、水不溶性の崩壊剤の具体例としては、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらの崩壊剤は単独でもよいが、二種以上併用することもできる。好ましくはクロスポビドンである。
【0014】
本発明の口腔内速崩壊錠において、活性成分(例えばアムロジピンもしくはその塩)と有機水不溶性賦形剤の配合量は、容易に決定することができる。例えば、所望の量の活性成分(例えばアムロジピン)と有機水不溶性賦形剤を適宜混合した後、圧縮成形を行い、硬度と崩壊性を確認することにより、その適否は容易に判別することができる。
有機水不溶性賦形剤(好ましくは結晶セルロース及びトウモロコシデンプンの両者の合計)の配合量は通常活性成分(例えばアムロジピンもしくはその塩)1質量部に対し8〜30質量部、好ましくは10〜25質量部、更に好ましくは12〜19質量部(以下部は特に断りのない限り質量部を表す)である。また、錠剤の全質量に対して通常65〜85質量%、好ましくは70〜80質量%(以下%は特に断りのない限り質量%を表す)、更に好ましくは73〜77%である。
本発明における有機水不溶性賦形剤としては、結晶セルロース及びデンプン(好ましくはトウモロコシデンプン)を併用するのが好ましい。両者を併用する場合、両者の配合比率は、活性成分等により変わるが、通常は、質量割合で、デンプン(好ましくはトウモロコシデンプン)を1質量部とした場合、結晶セルロースは2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは6質量部以上、最も好ましくは6.5質量部以上であり、上限としては、通常9質量部以下、好ましくは8質量部以下、より好ましくは7.5質量部以下程度である。
結晶セルロース及びデンプン(好ましくはトウモロコシデンプン)を併用する場合、結晶セルロースの錠剤中における含量は、通常、錠剤全体に対して、55〜75%程度、より好ましくは60〜75%、更に好ましくは60〜70%である。また、デンプン(好ましくはトウモロコシデンプン)の錠剤中における含量は、通常、錠剤全体に対して、5〜15%、好ましくは7〜15%、より好ましくは7〜12%程度である。
さらに崩壊剤を含む場合、その配合量は通常活性成分(例えばアムロジピンもしくはその塩)1部に対し1.5〜8部、好ましくは2〜6部、より好ましくは2〜5.5部、特に好ましくは2.5〜4.9部である。
また、崩壊剤を含む場合、錠剤中に占める割合は、通常錠剤全体に対して、8〜35%程度、好ましくは10〜30%、更に好ましくは10〜25%程度である。有機水不溶性賦形剤(好ましくは結晶セルロース及びトウモロコシデンプン)と崩壊剤の配合比は1:0.1〜0.4、特に1:0.15〜0.3が望ましい。
【0015】
本発明の口腔内速崩壊錠は、さらに必要であれば錠剤の製造に一般に用いられる種々の添加剤を含んでいてもよい。例えば、錠剤全質量に対し0〜10%の範囲で適宜添加することが出来る。通常0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、更に好ましくは1〜3%の添加剤を含んでいてもよい。またこれらの添加剤は一種であっても、二種以上の併用であってもよい。
添加剤としては、例えば甘味剤、矯味剤、香料、滑沢剤、流動化剤、着色剤などが挙げられる。これらの成分は本発明の口腔内速崩壊錠における崩壊性、成形性を損なわない範囲であれば、通常、上記の範囲で任意の量を単独あるいは混合して使用することができる。
本発明において用いる甘味剤としては非糖質の天然甘味料や合成甘味料が好ましい。例えば、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、ステビア又はその塩、スクラロース、ソーマチンなどが挙げられる。これらの甘味剤は、錠剤全質量に対し0〜5%、好ましくは1〜3%程度添加される。
【0016】
矯味剤としては、例えば、アスコルビン酸及びその塩、グリシン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、希塩酸、クエン酸及びその塩、無水クエン酸、L−グルタミン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、酢酸、酒石酸及びその塩、炭酸水素ナトリウム、フマル酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、氷酢酸、イノシン酸二ナトリウム、ハチミツなどが挙げられる。
香料としては、着香剤といわれるものを含み、例えばオレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油などが挙げられる。
【0017】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明の好ましい口腔内速崩壊錠においては、滑沢剤が、錠剤全体に対して、0.01〜0.5%、より好ましくは0.02〜0.1%含むものが好ましい。
流動化剤としては、例えば含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、酸化チタンなどが挙げられる。流動化剤は、錠剤全体に対して、0〜1%、好ましくは0.02〜0.1%程度添加される。
着色剤としては、例えば、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号などの食用色素、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、褐色酸化鉄、黒酸化鉄、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、リボフラビン、抹茶末などが挙げられる。
【0018】
本発明の口腔内速崩壊錠では、賦形剤として本発明で使用されるデンプンを除き、錠剤においては一般的に使用されている結合剤を、より好ましくは含まない。
錠剤においては一般的に使用されている結合剤としては、アラビアゴム、アラビアゴム末、ゼラチン、カンテン、デキストリン、プルラン、ポビドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられるがこれらの結合剤は、本発明の口腔内速崩壊錠にはより好ましくは含まない。
【0019】
本発明の口腔内速崩壊錠は下記の方法で製造することが出来る。
例えば、好ましい方法として、活性成分(好ましくはアムロジピンまたはその薬学上許容される塩)と有機水不溶性賦形剤、好ましくは有機水不溶性賦形剤と崩壊剤を量り取り、V型混合機などの適当な混合機で混合した錠剤用混合末を直接圧縮成形して打錠する直接打錠法などが挙げられる。本発明においては、従来の錠剤の製造の際に使用される打錠用顆粒を経ることなく上記のように直接打錠するのが好ましい。本発明の上記の好ましい態様においては、打錠用顆粒を用いないことから、従来のように打錠用顆粒を製造のための湿式造粒工程を必要としない。その結果、湿式造粒の際に、変質し易い薬剤であっても容易に口腔内速崩壊錠とすることが出来るメリットがある。
【0020】
錠剤用混合末を製造する際には必要に応じ、矯味剤、流動化剤、滑沢剤、香料、甘味剤、着色剤などを混合してもよい。
また、本発明において用いられる成分、例えば活性成分(好ましくはアムロジピンまたはその薬学上許容される塩)、有機水不溶性賦形剤、崩壊剤等の成分はその平均粒子径は特に限定されないが、粒子径が小さい方が服用感に優れている。添加物の平均粒子径は、好ましくは125μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0021】
このようにして得られた錠剤用混合末を例えば単発打錠機、ロータリー式打錠機などを用いて2kN〜6kN/杵、好ましくは3kN〜5kN/杵の圧力を加え圧縮成形する。これより圧力が低いと錠剤硬度が不足し取扱上十分な硬度を確保できず、圧力が高いと崩壊が遅延するため好ましくない。
圧縮成形については、通常の打錠法を用いることができ、内部滑沢打錠法又は外部滑沢打錠法の何れもが使用することができる。本発明においては、滑沢剤の添加量を減らすことにより、さらに崩壊速度を早くし、かつ打錠硬度を向上させることができる。錠剤用混合末に滑沢剤を混合する通常の手法では100mgの錠剤に対して1〜10mgの滑沢剤が必要であるが、本発明では0.1mg以下での打錠が可能である。外部滑沢打錠を行う装置としては株式会社菊水製作所製のELSP1−タイプ■などがある。
本発明の口腔内速崩壊錠の成形に関しては、どのような形状も採用することができ、例えば丸形、楕円形、球形、棒状型、ドーナツ型の形状および積層錠、有核錠などであってもよく、さらにはコーティングによって被膜することもできる。また、識別性向上のためのマーク、文字などの刻印さらには分割用の割線を付けても良い。
【0022】
本発明の口腔内速崩壊錠は、唾液により、口腔内で速やかに崩壊し、ざらつきを残さずに滑らかに服用可能である。本発明の口腔内速崩壊錠の口溶けは、通常1〜90秒、好ましくは1〜60秒、さらに好ましくは1〜30秒、最も好ましくは1〜20秒程度である。
また硬度(錠剤硬度計による測定値)は、本発明の口腔内速崩壊錠は20〜80N(3.1〜8.2kgf)、好ましくは40〜70N(4.1〜7.1kgf)程度である。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例及び試験例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1
下記の様にして本発明の口腔内速崩壊錠を外部滑沢法により製造した。
アムロジピンベシル酸塩、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、クロスポビドン(商品名:Polyplasdone XL-10)、甘味料、着香剤・香料、流動化剤を表1の配合量に従って量り取り、V型混合機(株式会社筒井理科学機器製)を用いて混合し、得られた混合末(錠用混合粉末)に、表2に記載の量(1錠あたり0.05%)のステアリン酸マグネシウム(植物性)を添加した後に再度V型混合機で混合して打錠用粉末を作製した。
つぎに、外部滑沢装置(株式会社菊水製作所製)を装備したロータリー打錠機(株式会社菊水製作所製)を用い、1錠あたり85.3mgの錠剤を作製した。この時の杵の形状は丸型、直径は6.0mmを用い、打錠圧は4kNであった。
1錠当たりのアムロジピンベシル酸塩含量は3、47mg(アムロジピンとして2.5mg)であった。一錠当たりの成分含量を表3に示す。
なお、上記において、結晶セルロースとしては第十五改正 日本薬局方記載の結晶セルロース(301)を使用した。また、着香剤・香料及び流動化剤は医薬品添加物規格 2003に記載のものを使用した。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
実施例2
下記の表4に示す処方を用いる以外は実施例1と同様にして、一錠当たり120.4mgの本発明の口腔内速崩壊錠を外部滑沢法により製造した。得られた1錠あたりのアムロジピンベシル酸塩の含量は6.93mg(アムロジピンとして5mg)であった。一錠当たりの成分含量を表5に示す。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
実施例3
下記の様にして本発明の口腔内速崩壊錠を内部滑沢法により製造した。
アムロジピンベシル酸塩、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、クロスポビドン、甘味料、着香剤・香料、流動化剤を表1の配合量に従って量り取り、ステアリン酸マグネシウム2.04gと共に、V型混合機(株式会社筒井理科学機器製)を用いて混合し、錠剤用混合粉末を作製した。つぎにこの錠剤用混合粉末を、超小型錠剤機(株式会社菊水製作所製)を用いて打錠し、1錠当たり85.3mgの口腔内速崩壊錠を作製した。この時の杵の形状は丸型、直径は6.0mmを用い、打錠圧は4kNであった。1錠当たりのアムロジピンベシル酸塩含量は3.47mg(アムロジピンとして2.5mg)であった。
【0032】
実施例4
表4に示す処方を用いる以外は実施例3と同様にして、本発明の口腔内速崩壊錠を内部滑沢法により製造し、1錠当たり120.4mgの口腔内速崩壊錠を得た。得られた1錠あたりのアムロジピンベシル酸塩の含量は6.93mg(アムロジピンとして5mg)であった。
【0033】
試験例1
実施例1〜4において得られた錠剤及び比較製剤(市販のアムロジピン口腔内速崩壊錠(2.5mg錠、5mg錠))(比較例)について、下記試験法によって安定性試験を行った。なお比較製剤における2.5mg錠及び5mg錠は、アムロジピン含量がそれぞれ2.5mg及び5mgの錠剤であることを示し、表中における比較例2.5mg錠等の記載も同じ意味を示す。
(1)安定性試験
実施例1〜2の製剤及び比較製剤を、(a)60℃で2週間、(b)40℃、湿度75%、3週間保存した後、保存後の各製剤を、(a)のものについては、各6錠、(b)のものについては各3錠を取り出し、それぞれに水/アセトニトリル混液(1:1)を加えて10mLとし、振り混ぜた。この液を遠心分離し、上澄液を試料溶液とした。試料溶液10μLを正確にとり、液体クロマトグラフ法により純度試験を実施して、それぞれの製剤の安定性を確認した。
実施例1の錠剤及び比較製剤の安定性試験の結果を表6、実施例2の錠剤及び比較製剤の安定性試験の結果を表7に示した。
なお、実施例3及び4においても同等な結果であった。
【0034】
【表6】

【0035】
【表7】

【0036】
試験例2〜4:
実施例1〜4において得られた錠剤及び比較製剤(市販のアムロジピン口腔内速崩壊錠(2.5mg錠及び5mg錠))(比較例)について、下記試験法によって、摩損度、錠剤硬度及び崩壊試験、官能試験を行った。
摩損度、錠剤硬度及び崩壊試験の結果を表8に示した。
(2)摩損度試験
錠剤摩損度試験器(萱垣医理科工業株式会社)を用い、日局(参考情報)の錠剤の摩損度試験法に準じて実施した。
(3)硬度試験
モンサント硬度計を用いて測定した。試験は6錠で行い、その平均値を示す。
(4)崩壊試験
崩壊試験器は口腔内崩壊試験器(富山産業株式会社)を用いて測定した。試験は3錠で行い、その崩壊時間の平均値を示す。
【0037】
【表8】

【0038】
試験例5:
(5)味覚の官能試験
錠剤の口腔内での苦味を健康な成人8名により測定し、以下の判定基準で苦味減少度合を評価し、その平均値を示す。なお官能試験においては、試験用の口腔内速崩壊錠を、目隠しした状態で服用してもらい、下記の基準で判定してもらい、平均合計値を第9表に示した。
苦味の判定基準
苦味を全く感じない 5
苦味をほとんど感じない 4
やや苦い 3
苦い 2
非常に苦い 1
【0039】
【表9】

以上の試験結果から、本発明の口腔内速崩壊錠は、過酷試験での保存安定性に優れると共に、摩損度や硬度において勝りながら、崩壊時間においても勝っており、物性的に優れた製剤であることが判る。
また、苦味も抑えられており、その点で服用しやすい製剤となっている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の口腔内速崩壊錠においては、保存安定性が優れ、且つ充分な硬度が維持されながら良好な崩壊性を示し、且つ苦味が抑制された口腔内速崩壊錠であり、高齢者にとって易服用性となるだけでなく、多忙な現代社会人がどこへでも手軽に携帯し、水を摂取せず、苦痛を伴うことなくあらゆる場面で容易に必要な薬剤(例えばアムロジピン等)を服用することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬活性成分、及び賦形剤として有機水不溶性賦形剤を含み、実質的に水溶性賦形剤及び無機賦形剤を含まないことを特徴とする口腔内速崩壊錠。
【請求項2】
医薬活性成分がアムロジピンまたはその薬学上許容される塩である請求項1に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項3】
有機水不溶性賦形剤が結晶セルロース及びデンプンから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項4】
有機水不溶性賦形剤として結晶セルロース及びトウモロコシデンプンを含む請求項1〜3の何れか1項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項5】
デンプンと結晶セルロースの使用割合がデンプン1質量部に対して、結晶セルロース5〜9質量部の割合である請求項3〜4に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項6】
有機水不溶性賦形剤の含有割合が、錠剤全体に対して70〜80%(質量)であり、口腔内での崩壊時間が30秒以内である請求項2〜5項の何れか一項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項7】
更に崩壊剤を含み、有機水不溶性賦形剤と崩壊剤の使用割合が、有機水不溶性賦形剤1質量部に対して、崩壊剤が0.1〜4質量部の割合である請求項1〜6の何れか一項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項8】
崩壊剤の平均粒子径が50μm以下、結晶セルロースの平均粒子径が90μm以下、デンプンの平均粒子径が50μm以下である請求項7項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項9】
有機水不溶性賦形剤として、結晶セルロースを含み、結晶セルロースの含量が錠剤全体に対して、65〜75質量%である請求項1〜8の何れか一項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項10】
デンプン含量が錠剤全体に対して、5〜15質量%である請求項1〜9の何れか一項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項11】
医薬活性成分、及び賦形剤として有機水不溶性賦形剤を含み、実質的に水溶性賦形剤及び無機賦形剤を含まない粉末状混合物を、湿式造粒することなく、直接打錠法により圧縮成型することを特徴とする口腔内速崩壊錠の製造法。
【請求項12】
直接打錠法が内部滑沢打錠法又は外部滑沢打錠法であり、滑沢剤の使用量が錠剤全体に対して、0.5〜0.002%である請求項11に記載の口腔内速崩壊錠の製造法。
【請求項13】
口腔内速崩壊錠が、請求項2〜10に記載の口腔内速崩壊錠である、請求項11又は12に記載の口腔内速崩壊錠の製造法。

【公開番号】特開2009−196940(P2009−196940A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40938(P2008−40938)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000169880)高田製薬株式会社 (33)
【Fターム(参考)】