説明

口腔用組成物

【課題】飽きることがなく、継続して使用する意向が高まる口腔用組成物を提供する。
【解決手段】(A)カシア油、カモミール油、ナツメグ油、ジンジャー油、ウインターグリーン油、クローブ油、又はユーカリ油と、
(B)カプシカムオレオレジン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ピペリン、サンショウオール、マウンテンペッパー、ジアリルジサルファイド、アリルイソチオシアネート、又はマスタードと、
(C)キジツ、クララ、チンピ、ホップ、ジュウヤク、アルニカ、リョクチャ、ゲンチアナ、グレープフルーツ油、トラネキサム酸、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、カフェイン、フェノキシエタノール、又はドデシルジアミノエチルグリシンとを特定量含む口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継続して使用しても飽きることがなく、さらに継続して使用する意向が高まる口腔用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、う蝕又は歯周病の原因であるプラークを除去したり、口腔内の清浄化のために歯磨きや洗口剤等の口腔用組成物が用いられ、口腔ケアがなされている。しかしながら、口腔ケアは継続し習慣化してこそ意味があるものの、口腔ケアの継続によって、使用する口腔用組成物に飽きてしまい、口腔ケアの継続が中断してしまうことがある。
【0003】
以上のことから、口腔用組成物の使用当初の使用感にかかわらず、一定期間継続して使用しても口腔用組成物に飽きることがなく、さらに継続して使用する意向が高まり、長く使用し続けられるものが望まれていた。なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−268851号公報
【特許文献2】特開2000−26260号公報
【特許文献3】特開2001−19992号公報
【特許文献4】特開2004−357596号公報
【非特許文献1】吉田倫幸、香りの心理生理作用と有用性の評価、「AROMA RESEARCH」、2001年、No.1,p38−43
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、一定期間継続して使用しても飽きることがなく、さらに継続して使用する意向が高まり、口腔ケアを継続させ習慣化しやすくする口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、カシア油、カモミール油、ナツメグ油、ジンジャー油、ウインターグリーン油、クローブ油、及びユーカリ油が、脳波と自律神経の双方に何らかの効果を与え、心理生理的効果があることを知見した。さらに、このような(A)心理的効果を与える特定の成分と、(B)刺激を与える特定の成分と、(C)苦味を有する特定の成分とを、それぞれ特定量配合し、香味面から改良することにより、一定期間継続使用しても飽きることがなく、さらに継続して使用する意向が高まること(以下、高継続使用意向と略す場合がある。)を知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は(A)カシア油、カモミール油、ナツメグ油、ジンジャー油、ウインターグリーン油、クローブ油、及びユーカリ油から選ばれる1種又は2種以上を組成物中0.0001〜3質量%と、
(B)カプシカムオレオレジン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ピペリン、サンショウオール、マウンテンペッパー、ジアリルジサルファイド、アリルイソチオシアネート、及びマスタードから選ばれる1種又は2種以上を組成物中0.0005〜1質量%と、
(C)キジツ抽出物、クララ抽出物、チンピ抽出物、ホップ抽出物、ジュウヤク抽出物、アルニカ抽出物、リョクチャ抽出物、ゲンチアナ抽出物、グレープフルーツ油、トラネキサム酸、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、カフェイン、フェノキシエタノール、及びドデシルジアミノエチルグリシンから選ばれる1種又は2種以上を組成物中0.001〜3質量%とを含む口腔用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔用組成物によれば、一定期間継続使用しても飽きることがなく、さらに継続して使用する意向を高め、口腔ケアを継続させ習慣化しやすくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の口腔用組成物は、下記(A)成分0.0001〜3質量%と、(B)成分0.0005〜1質量%と、(C)成分0.001〜3質量%とを含む口腔用組成物である。
【0010】
(A)成分は、カシア油、カモミール油、ナツメグ油、ジンジャー油、ウインターグリーン油、クローブ油、及びユーカリ油から選ばれる1種又は2種以上である。これらの成分は、脳波(快・不快、鎮静・興奮)、及び自律神経(リラックス・活動的・興奮・嫌な感じ)のいずれにも影響を与え、心理生理的影響剤である。その測定方法については、後述の試験例において詳細に説明する。本発明においては、(A)成分の中でも、特にカシア油、カモミール油、ナツメグ油が好ましい。
【0011】
(A)成分の配合量は、口腔用組成物中0.0001〜3質量%であり、好ましくは0001〜0.3質量%である。(A)成分の配合量が0.0001〜3質量%の範囲外であると、高継続使用意向を示すことができない。
【0012】
(B)成分は、カプシカムオレオレジン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ピペリン、サンショウオール、マウンテンペッパー、ジアリルジサルファイド、アリルイソチオシアネート、及びマスタードから選ばれる1種又は2種以上であり、主に刺激を与える成分である。本発明においては、(B)成分の中でも、特にカプシカムオレオレジンが好ましい。
【0013】
(B)成分の配合量は、口腔用組成物中0.0005〜1質量%であり、好ましくは0.001〜0.5質量%である。(B)成分の配合量が0.0005〜1質量%の範囲外であると、高継続使用意向を示すことができない。
【0014】
(C)キジツ抽出物、クララ抽出物、チンピ抽出物、ホップ抽出物、ジュウヤク抽出物、アルニカ抽出物、リョクチャ抽出物、ゲンチアナ抽出物、グレープフルーツ油、トラネキサム酸、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、カフェイン、フェノキシエタノール、及びドデシルジアミノエチルグリシンから選ばれる1種又は2種以上であり、主に苦味を有する成分である。本発明においては、(C)成分の中でも、特にゲンチアナ抽出物が好ましい。
【0015】
(C)成分の中でも、キジツ抽出物、クララ抽出物、チンピ抽出物、ホップ抽出物、ジュウヤク抽出物、アルニカ抽出物、リョクチャ抽出物、及びゲンチアナ抽出物は、市販品あるいは公知の抽出方法よって得られたものを使用することができる。
【0016】
キジツ(枳実)はカン科のダイダイ、ナツダイダイ、その他同属植物の未熟果実からなる生薬である。クララ(学名:Sophora flavescens Ait)は、マメ科の多年草である。チンピ(陳皮)はミカン科のウンシュウミカンの成熟した果皮からなる生薬である。ホップはビールの原料として有名であり、アサ科の植物である。ジュウヤク(十薬)は、ドクダミ科(Sauruaceae)のドクダミ(Houttuynia cordata Thunberg)の花期の地上部からなる生薬である。アルニカは、キク科の植物アルニカの頭花から抽出されるハーブの1種である。リョクチャ(緑茶)は、茶葉を蒸して水分蒸発させ、もんで乾燥させて作る不発酵茶のことである。ゲンチアナ(学名Gentiana lutea L.)はリンドウ科に属し、根と根茎を多少発酵させて乾燥して用いる生薬である。
【0017】
上記抽出方法に用いる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0018】
上記抽出方法における各種条件は、特に制限されるものではないが、通常、抽出原料と上記抽出溶媒との比率は、質量比で抽出原料:抽出溶媒=1:2〜1:50程度の範囲が好ましい。また、抽出温度は、5〜80℃の範囲が好ましく、1時間〜1週間、抽出溶媒に浸漬したり、攪拌したりすることによって行うことが好ましい。なお、抽出pHは、極端な酸性又はアルカリ性でなければ、特に制限はない。
【0019】
上記抽出溶媒が、水、エタノール、水/エタノール(含水エタノール)等の非毒性の溶媒である場合は、抽出物をそのまま用いても良く、あるいは希釈液として用いてもよい。また、上記抽出物を濃縮エキスとしてもよく、凍結乾燥等により乾燥粉末物にしたり、ペースト状に調製したりしてもよい。なお、他の溶媒を用いた場合は、溶媒を留去後、乾燥分を非毒性の溶媒で希釈して用いることが好ましい。
【0020】
(C)成分の配合量は、口腔用組成物中0.001〜3質量%であり、好ましくは0.01〜1.5質量%である。(B)成分の配合量が0.001〜3質量%の範囲外であると、高継続使用意向を示すことができない。
【0021】
本発明の口腔用組成物には、上記(A)〜(C)成分の他に、口腔用組成物に使用可能な任意成分を添加することができる。具体的に保湿剤として、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、ラウリン酸デカグリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ミリスチン酸ジエタノールアミド等の非イオン界面活性剤、有効成分としてフッ化ナトリウム等のフッ化物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸等、香味剤としてはサッカリンナトリウム、メントール、ペパーミント、スペアミント等が挙げられる。なお、これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0022】
本発明の口腔用組成物は、上記必須成分、任意成分、及び水(口腔用組成物が100質量%となるように残部配合)を混合し、常法によって得ることができる。
【0023】
本発明の口腔用組成物は、歯磨き、洗口剤として用いることができ、洗口剤として好適である。その剤型としては、液体、軟膏、ペースト、ゲル、ゾル、クリーム等に調製することができるが、液体が好ましい。
【0024】
本発明の口腔用組成物は、一定期間(14日以上程度)継続使用しても飽きることがなく、さらに継続して使用する意向を高め、口腔ケアを継続させ習慣化しやすくすることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示す。
【0026】
[試験例]
カモミール油、カシア油、ユーカリ油、ウインターグリーン油、ナツメグ油、クローブ油、ジンジャー油、タイムホワイト油、及びシソ油について、下記方法で洗口剤を調製し、この洗口剤を用い被験者8人で、下記方法に基づいて心理生理的効果を評価した。結果を表4に示す。
【0027】
洗口剤の調製
カモミール油、カシア油、ウインターグリーン油、ユーカリ油、ナツメグ油、クローブ油、ジンジャー油、タイムホワイト油、及びシソ油をそれぞれ単独で0.1部、以下の洗口剤基剤99.9部に添加し、撹拌溶解させ洗口剤を得た。
洗口剤基剤 組成(%)
クエン酸 0.03
クエン酸ソーダ 0.25
安息香酸ソーダ 0.30
ソルビトール 0.70
グリセリン 1.00
プロピレングリコール 0.50
メチルパラベン 0.10
HCO60 1.00
(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)
精製水 96.02
合計 99.9
【0028】
(1)脳波計測
102.4秒間の脳波計測を連続して5回行った。2回目の計測時間中に開眼して、洗口剤20mLを20秒間口に含み、吐き出した。この洗口剤使用時以外は安静閉眼状態とした。洗口剤を使用する前の第1回計測を洗口剤使用前、第2回計測を洗口剤使用中、第3〜5回計測を洗口剤使用後とした。
)。
【0029】
簡易型α波周波数リズム測定機(ひとセンシング(株)製)を用いて、被験者の脳波を計測した。計測は電極を国際10−20法に従いFp1とFp2の前頭部2部位に装着し、右耳朶をアース、左耳朶を基準電極として前頭部脳波(8〜13Hz)を記録した。記録された脳波の左右それぞれの周波数と時間的変動(ゆらぎ)の解析を行い、吉田教授の理論(参考文献:吉田倫幸、「香りの心理生理作用と有用性の評価」AROMA RESEARCH No.1,38−43(2001))に基づき、生理状態と心理状態を確認した。すなわち左右の脳波の周波数から脳活動度(周波数増加→覚醒状態への推移、周波数減少→睡眠状態への推移)という生理状態を求め、左右の脳波のゆらぎからそれぞれ左リズム度;快−不快、右リズム度;鎮静−興奮という心理学的な2軸における気分の程度と総合的な心理状態を求めた。
評価は洗口剤使用前をブランクとし、使用前に対する「使用中から使用後」の脳活動度と心理状態の変化から効果を判断した。
【0030】
脳活動度については、
[使用中から使用後の活動度の平均値−使用前の活動度]>0となった被験者の数を指標とし、以下の判定基準に基づいて評価した。
【0031】
【表1】

【0032】
心理状態については、下記の左右リズム度から総合的に判断した。
【表2】

【0033】
(2)心電図測定
3分間の装置アイドリングの後、上記(1)脳波計測5回分の時間に合わせ、連続で6分50秒間行った。洗口剤使用前、使用中、及び使用後のタイミングは脳波計測に準拠し、測定後にそれぞれの区間のデータを独立して解析した。
【0034】
循環動態波形・ゆらぎ解析ソフトウェア フラクレットWT(大日本製薬(株)製)を用いて、被験者の心電図を測定した。測定は心臓を対角線で挟むように右胸上部にマイナス電極、左胸下部にプラス電極を装着し、また左胸上部にアース電極を装着して行った。心電図のシグナルの波形を基に心拍のゆらぎを解析し、自律神経(交感神経と副交感神経)の活動度を求めた。
評価は洗口剤使用前をブランクとし、使用前に対する「使用中から使用後」の自律神経活動度の変化から効果を判断した。
【0035】
すなわち交感神経又は副交感神経の活動度の[使用中から使用後の平均値)−(使用前の平均値]>0となった被験者の数を指標とし、以下の判定基準に基づいて評価した。また、自律神経系のバランスを交感神経及び副交感神経の活動度から判断し、自律神経系解析結果(バランス)として併記した。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
カモミール油、カシア油、ユーカリ油、ウインターグリーン油、ナツメグ油、クローブ油、及びジンジャー油については、脳波及び自律神経の双方に影響を与え、心理生理的影響力を有するものであった。
【0039】
[実施例1〜27、比較例1〜17]
表5〜12に示す組成の洗口剤を調製し、下記方法で使用意向を評価した。結果を表中に併記する。
【0040】
<使用意向評価方法>
洗口剤を被験者33名にそれぞれ1日2回、1回に10mLずつ2週間連続使用させ、その初回使用時及び2週間後(終了時)の2回、継続して使用したいか否かを下記判定基準で評価した。結果を33名の平均値で示す。
使用意向の判定基準
7;非常に使いたい
6;かなり使いたい
5;やや使いたい
4;どちらでもない
3;やや使いたくない
2;かなり使いたくない
1;非常に使いたくない
【0041】
下記の式から各々の試料の連続使用による使用意向変化率(%)を求めた。
連続使用による使用意向変化率(%)
=[(2週間連続使用後の使用意向の平均値)−(初回の使用意向の平均値)]/
(初回の使用意向の平均値)×100
【0042】
【表5】

【0043】
【表6】

【0044】
【表7】

【0045】
【表8】

【0046】
【表9】

【0047】
【表10】

【0048】
【表11】

【0049】
【表12】

【0050】
上記結果によれば、本発明の口腔用組成物は2週間連続使用後の「使用意向」が高く、使用意向変化率が正の方向に高く、連続使用により嗜好性が上昇した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カシア油、カモミール油、ナツメグ油、ジンジャー油、ウインターグリーン油、クローブ油、及びユーカリ油から選ばれる1種又は2種以上を組成物中0.0001〜3質量%と、
(B)カプシカムオレオレジン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ピペリン、サンショウオール、マウンテンペッパー、ジアリルジサルファイド、アリルイソチオシアネート、及びマスタードから選ばれる1種又は2種以上を組成物中0.0005〜1質量%と、
(C)キジツ抽出物、クララ抽出物、チンピ抽出物、ホップ抽出物、ジュウヤク抽出物、アルニカ抽出物、リョクチャ抽出物、ゲンチアナ抽出物、グレープフルーツ油、トラネキサム酸、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、カフェイン、フェノキシエタノール、及びドデシルジアミノエチルグリシンから選ばれる1種又は2種以上を組成物中0.001〜3質量%とを含む口腔用組成物。

【公開番号】特開2008−143870(P2008−143870A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335330(P2006−335330)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】