説明

口腔疾患の治療のための粒状の生物学的に活性な又は再吸収性のバイオシリケートの製造方法及び組成物

口腔疾患の治療において使用するための粒状、生物学的活性又は再吸収性バイオシリケートの製造のための方法及び組成物
ガラス質プレート又はフリットを単一の又は二工程の熱処理工程で、制御された温度と時間、熱処理し、ついで、結晶化ガラスを微粉砕して、所望の生物学的活性を有する、鋭利でかつ傷をつける端部のないそして体液と接触したとき、歯を再生させるヒドロキシカーボネート相を生じさせるか又は歯の組織によって徐々に置換され、吸収される結晶化、生物学的活性又は再吸収性のバイオシリケート粉末を得ることからなる、生物学的活性又は再吸収性バイオシリケートの製造方法。別法においては、最初、ガラス質粉末を取得し、ついで、これを熱処理して鋭利な、傷をつける端部のない結晶質、生物学的活性又は再吸収性のバイオシリケート粉末を得る。種々のプロセス条件について、種々の結晶相を取得し、その結果、そのまま又は組合せて、歯の過敏症、歯の亀裂及び口内乾燥症のごとき種々の口腔疾患の治療に使用し得る。バイオシリケート粒子の粒度分布は0.1〜30ミクロンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状の、生物学的に活性な(bioactive)又は再吸収性の(resorbable)珪酸塩(バイオシリケート;biosilicate)、上記粒状の、生物学的に活性な又は再吸収性の珪酸塩を製造するための組成物、バイオシリケートそれ自体及び口腔疾患(oral ailment)の治療のためのかかる製品の使用に関する。特に、本発明は、均質化し、溶融させついで溶融液を冷却し、固化させるある種の組成物に基づいて規定される粒度分布と結晶相を有する、粒状の、生物学的に活性な又は再吸収性の珪酸塩の製造方法に関する。かく得られたガラス質小片を等温又は一工程処理により結晶化させる;結晶化片を微粉砕して所望の粒度分布を得る。上記処理における珪酸塩の温度と滞留時間は、バイオシリケート素材について制御されたかつ、実際上、完全な結晶化(即ち、0.5%以下の残留ガラス質相を有するものにする)を行うために厳密に決定されるべきである。別法においては、前記組成物を均質化し、溶融させついで溶融液を冷却し、固化し、微粉砕して所望の粒度分布を得、得られた粉末を等温処理にかける。更に別の方法においては前記組成物を2工程熱処理にかけることができる;粉末は熱処理の前又は後に得られる。より大きな粒度を有する本発明のバイオシリケート製品は生物活性(bioactivity)、即ち、体液(body fluid)の存在下でのバイオシリケート表面でのヒドロキシカーボネート アパタイト層の迅速な形成が付与されている;この層は骨又は歯の組織との結合を促進する。唾液の存在下でのバイオシリケートの表面反応により、歯の組織の鉱物成分再補給(remineralization)プロセスを助長するイオンが放出される。より低い粒度を有するか又は高い生物学的活性を有する結晶相を有する本発明のバイオシリケートは、共に、再吸収性である;即ち、これらは、体液と接触した場合、体液により溶解されるか又は組織によって徐々に置換される;分解生成物は無毒性であり、組織によって容易に代謝され、全く無害である。
【0002】
珪素を基材とする本発明の組成物は、更に、カルシウム、リン及びナトリウムイオン、及び場合により、カリウム、弗素、リチウム、スズ、ストロンチウム、鉄、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム及び亜鉛を含有している。本発明の再吸収性バイオシリケートはある種の歯磨き剤溶液中で高度に安定であり、ビヒクルとして口腔衛生用及び処置用製品を使用する多数の口腔疾患の治療に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
The Journal of Clinical Dentistry,v.5,p.68-70,1994,特別版に掲載の
Bolden,T.E.の報文 “A desensitizing dentifrice with multiple oral health benefits formulated for daily use”及びThe Journal of Clinical Dentistry,v.5,p.71-79,1994,特別版に掲載のMiller,S.等の報文 “Evaluation of a new dentifrice for the treatment of sensitive teeth”において教示されているごとく、歯質脱感作(dentine desensitizing)の治療は、基本的には、歯髄機械的受容器の脱感作、歯質小管(dentine tubule)の閉塞(occlusion)又はその両者の原理を利用している。
【0004】
ブラジル出願P10007642号、P19909831号、P19808777号及びP19503544号によれば、ある種の歯磨き剤においては歯の中で分散されるときまで分離されている2種の成分が使用されている。第1成分は口腔内環境下に存在するとき、Kイオンの放出を促進するカリウム塩である。カリウムイオンは歯質小管の内部の方へ拡散して、その濃度を感受性歯質の下の歯髄神経付近で増大させる能力を有する。Kの連続的な存在により、脱感作効果を示すため、歯髄神経に近い機械的受容器に鎮痛効果を生じる。
【0005】
第2の作用成分は第一スズ塩であり、この場合、歯質感受性に対する救済をもたらすという意味で作動して、Sn2+イオンがK2の機構と同様の機構に従って挙動する。
【0006】
分散させる時点まで分離しておくべきこれらの成分を2つの特定の部位に適用することが要求されるという非便利性の他に、歯質感受性を低い水準に保持するためには患者が連続的に処置を行わなければならないという必要性が存在する。このことは機械的受容器付近のK又はSn2+の濃度が低いために、かかる処置によって提供される鎮痛効果が減少するという事実によって生じる。従って、このアプローチによっては歯質感受性の問題についての長時間に亘っての解決は提供されず、処置を連続して行わない場合には処置前の感受性に逆行する。
【0007】
前記で引用したBolden及びKillerの報文に記載されるごとく、ある種の歯磨き剤の脱感作剤は無機微粒子及び高分子接着剤と組合されたカリウム塩である。例えばシリカのごとき歯質小管と同一の直径を有する無機粒子は該歯質小管の開口に機械的に結合し得る。歯磨き剤中に存在する高分子接着剤は歯の表面と無機粒子に接着することができ、無機粒子を拘束し、その歯質小管と歯の表面への接着を強化し、かくして、保護層を形成する。しかしながら、これらの粒子及び高分子接着剤の歯の表面への接着力は比較的弱く、歯磨き及び口腔pHのサイクルによって容易に脱着される。従って、これは長時間継続する処理ではなく、患者による絶えざる適用が必要とされる。処置の中断により歯の感受性の元の水準への返還が生じる。
【0008】
国際公開WO93/25183号には歯の感受性は口腔消毒薬中に配合されたシリカ、合成樹脂及び不溶性カルシウム塩微粒子の使用によって促進され得ることが記載されている。
【0009】
患者による使用中、かかる微粒子は歯の表面に接着することができ、歯の内部の流体の移動を阻害する。また、かかる微粒子の小管の開口への接着は機械的にのみ行われ、かくして、微粒子は口腔衛生の実施又は食品の摂取中に容易に分散し得る。
【0010】
ブラジル出願P19609829号、P19711416号、P19711339号及びP19610258号及び米国特許6,436,370号によれば、酸性又は塩基性溶液と混合し得るかつカルシウム及びリンイオンを放出させて歯の鉱物成分再補給と歯質小管の閉塞(occlusion)を促進するという原理に基づく、水溶性又は難溶性カルシウム及びリン酸塩誘導塩に基づく、空洞、間隙、石灰化及び歯質感受性の治療によって惹き起こされる病巣の治療方法も示唆されている。
【0011】
かかる方法によれば、歯のヒドロキシアパタイト結晶によるカルシウム及びリンイオンの吸収速度が遅いために、鉱物成分再補給反応を満足し得る方法で生起させるには一般的に余りにも短い適用期間に比例して、口腔内環境における上記イオンの一時的濃度の上昇が生じる。
【0012】
他の口腔疾患の治療方法は生物学的活性ガラス(bioactive glass)に関連している。
【0013】
生物学的活性ガラスは生物学的活性を有するガラス質材料である;即ち、水性媒体の存在下で、イオンがかかる材料の表面から浸出し、ついで、ナノポーラス(nanoporous)シリカゲル層が形成され、これが支持体として働き、そして、最終的に、ガラスからの又は水性媒体からのカルシウム及びリンイオンの表面への拡散により、ヒドロキシアパタイト(HA)がかかるナノポア(nanopore)内及び表面上に形成される。この方法で、生物学的活性ガラスは骨の組織の表面及び歯に固定されることができ、強力で永続性の結合が形成される。
【0014】
生物学的活性ガラスが身体流体(body fluid)(例えば血漿)と接触した場合、最初、Naカチオン浸出し、ついで、このイオンがガラス構造体中でH又はH3Oカチオンによって置換される(工程I)。このことによって、局部的pHが上昇し、Si-O-Siが破断され、珪素がSi(OH)4として溶液中に放出される(工程II)。局部的pHが9.5以下である場合には、Si(OH)4が凝縮し、シリカ(SiO2)がガラス表面で再重合してシリカゲル層が形成される(工程III)。
【0015】
シリカゲルの開口構造によりガラスと溶液の間でのイオン交換が連続して生起する。カルシウム及びリンイオンがシリカゲル層を経てガラスから拡散し、これらが溶液中に存在するカルシウムイオン及びリン酸塩に付加して、ガラス表面に非晶質リン酸カルシウムの層を形成する(工程IV)。
【0016】
ガラスの生物学的活性の水準に応じて、かかる反応はガラスが流体と接触した数分後に開始する。非晶質シリカゲルとリン酸カルシウムの層の厚さが増大した後、後者がヒドロキシル、カーボネート又は弗素イオンと結合して、アパタイトへの結晶化が開始される(工程V)。
【0017】
しかしながら、ある材料が生物学的活性であると考えられるためには、表面反応が制御された速度で生起することが必要である。例えば、Naイオンの浸出プロセス(工程I)が余りにも遅い場合には、ガラス構造体の破壊速度は、シリカゲル層を所望の量で生成させ、表面にHCA層を形成させるの十分ではない。
【0018】
一方、これらの反応が非常に急速に生起し、生物学的活性材料が迅速に溶解した場合には、該材料が骨組織により連続的に置換され、この材料は再溶解性であると考えられる。
【0019】
これらのガラスの生物学的活性から、これらの材料を歯質感受性の問題を処理するのに使用することが示唆された。
【0020】
即ち、ブラジル出願P19707219号並びに米国特許6,338,751号、同6,244,871号及び同5,735,942号によって教示される歯質感受性の処置は、大部分の粉末の粒度分布が1〜2ミクロンである粒状の生物学的活性ガラスの使用を示唆している;このことはガラスが小さいチャンネル内に侵入するか又は歯質表面に沈着し、その結果、口腔流体の存在下では、ヒドロキシカーボネートアパタイトの形成が開始し、それ自体、歯質組織に化学的に結合するというガラスの効果的な能力を示している。
【0021】
上記の特許は<90ミクロンの粒度分布を有する生物学的活性ガラス粒子の使用を教示している。即ち、2ミクロン以下の粒子は歯質小管に進入してかかる小管の閉塞を促進し、一方、より大きな粒子は歯の表面に接着して、歯質小管内にあるより小さい粒子の表面でのヒドロキシカーボネートアパタイトの形成反応のためのカルシウム及びリンイオンの供給体として働く。
【0022】
上記の特許はかかる粒状生物学的活性ガラスの歯磨き剤ペースト及びゲルへの配合も教示している;これらは歯磨き中の歯質表面への粒子の分布のためのビヒクルである。
【0023】
これらの条件下での生物学的活性ガラスの使用の欠点は、ガラス粒子を粉末製造プロセスで破砕するときに形成される、粒子の極端に不規則な、とがったそして鋭い形状によって生じる粒子の切断力である。これらの粉砕ガラス粒子は齦肉において刺激性の(irritating)マイクロカット(micro-cut)を生じさせ、感受性の増大を知覚させる。
【0024】
米国特許5,891,233号は、使用の直前に、ガラスを生理学的流体に混合し、混合物を曝露された歯質帯域に局部的に適用することにより、歯質の感受性並びに曝露された歯根を処置するための粒状生物学的活性ガラスの臨床的使用を教示している。ついで、処理された帯域を粉末の分散を防止するために保護型で被覆している。
【0025】
米国特許6,342,207号及び同6,190,643号は、例えばキャビティ(cavities)又は歯肉炎のごとき病原性微生物によって惹起こされる口腔疾患の予防及び治療のための、粒径<100ミクロンの生物学的活性粒状ガラスの使用を教示している。
【0026】
かかる生物学的活性ガラスの粒子の溶解により浸透圧とpHが大きく上昇する−これは溶液中へのナトリウム及びカルシウムイオンの放出によって生じる。これらの2つに効果は、溶液中の高濃度のCa2+イオンと組合されて、病原性微生物を口腔環境から排除し、キャビティ発生バクテリア、歯肉炎、歯垢及び他の病気を排除する。
【0027】
しかしながら、米国特許6,342,207号及び同6,190,643号で報告されている研究によれば、非病原性バクテリアであるストレプトコッシ サングイス(Streptococci sanguis)は排除されないことが認められた。これはこのバクテリアは病原性バクテリアより、高い浸透圧に対して良好な耐性を示すことによるものである。これらの米国特許に記載される生物学的活性ガラスは水又は水性溶液と混合し、処理されるべき歯及び帯域に適用すべきである。従って、示唆されている用途は臨床的用途に限定されている。
【0028】
骨の移植で使用されている非再吸収性、生物学的活性、モノリスガラス−セラミックは生物学的活性ガラスに類似している。生物学的活性ガラスにおけるごとく、生物学的活性ガラス−セラミックにおいては、HCA表面層が形成されており、その外科的移植から僅か否時間後に、これらの材料と患者の骨との間に強力な結合が確立される原因になっている。これらのガラス−セラミック材料はシリカと酸化カルシウムとナトリウム及びリンを含有しており、骨の補綴に有用である。米国特許5,981,412号には34〜60容量%の結晶度と1Na2O.2Ca0.3SiO2結晶相を有するかかる生物学的活性材料が記載されている。
【0029】
米国特許5,981,412号によれば、生物学的活性ガラス−セラミックにおける生物学的活性の水準は化学的組成、結晶のパーセンテージ、結晶相及びミクロ構造に依存する。機械的特性は結晶化部分、結晶の大きさ、結晶相及び結晶の形に依存する。
【0030】
米国特許5,981,412号においては、ガラス−セラミック中のガラスの結晶化は、2工程、即ち、核形成及び結晶の生長で行われる。ガラスの核形成熱処理を温度と時間を変化させて行うことにより、分散した結晶核を含有するマトリックスを有するサンプルが得られる。
【0031】
熱処理の第2工程においては、第1工程で生成した結晶核を含有するガラスを、ある時間、高温の曝露し、その間にこれらの核の生長を促進する。光学的検鏡法により、熱処理期間の関数としての特定の温度についての結晶サイズの変化を測定し、結晶速度を算定する。
【0032】
一旦、核形成速度と結晶生長曲線が得られると、ガラス−セラミック材料を固体片(モノリス)として適当な結晶化容積フラクション(volumetric fraction)を有するガラス−セラミックを得ることができる;その理由は部分的なガラス結晶化により、そのガラス質の形に比較して、機械的特性が増大し、一方、生物学的活性はそのまま保持されるからである。
【0033】
米国特許5,981,412号によって教示されるガラス−セラミック材料によって患者の骨組織への移植片の結合を促進するHCA形成機構が提供されるにも拘わらず、同米国特許に記載の材料はモノリス片の形で移植片として使用される。従って、上記米国特許には口腔疾患の治療用のゲル又は口腔洗浄剤(mouth washing)中に包含され得る、本発明の生物学的に活性な、再吸収性の、結晶化された粉末は記載されておらず、示唆もされていない。その上、上記米国特許は得られたガラス−セラミックの粉砕も意図していない。更に、記載されている一体化(monolithic)ガラス−セラミックは生物学的活性は示すが、再吸収性ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明のバイオシリケートは、一工程(等温)或いは2工程での熱処理によりガラス質材料の実質的に完全な結晶化を行い、更に、微粉砕を行って30〜0.1ミクロンの範囲の粒度分布を有する粒状材料を得ることにより得ることが好ましい;この手法は米国特許5,981,412号に記載されるガラス−セラミックの製法とは相違する。
【0035】
別法においては、バイオシリケートはガラス質材料を30〜0.1ミクロンの範囲の粒度分布が得られるまで微粉砕しついで一工程で或いは粒子表面での結晶化が優勢である場合には2工程での熱処理により粒状材料を実質的に完全に結晶化させることにより得ることができる。
【0036】
本発明の粒状バイオシリケートに等温又は2工程の処理を施すことにより、(米国特許5,981,412号に記載される1Na2O.2Ca0.3SiO2相ばかりでなしに)1個の単一の又は異なる結晶相を有するかつ異なるHCA形成速度を有する、特に、本明細書に記載される口腔疾患の治療に適当な粒状材料を得ることができる;ここで記載したバイオシリケートは結晶相及び粒度に応じて、生物学的活性だけを示か或いは生物学的に活性でかつ再吸収性である。
【0037】
粒子の形の本発明のバイオシリケートは、毎日の口腔衛生の実施において又は歯科医よる歯の診療において利用するために、例えば、ゲル、歯科用クリーム、口腔消毒液、塩溶液、人工唾液等のごとき口腔衛生用製品中に配合される。この場合、バイオシリケートは連続的な方法で外部で使用するために設計されかつ外科的処置を必要としない。
【0038】
従って、この分野での技術的進歩にも拘わらず、ある種の組成物に基づいて、0.1〜30ミクロンの範囲の粒度分布を有する粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩を製造する方法を開発することが要求されている;この方法では、上記組成物を均質化しついで溶融させる;ついで、溶融液を冷却し、固化し、ついで、一工程で(等温)又は二工程での熱処理が行われる;これらの工程中の珪酸塩の温度と滞留時間は制御された結晶化と明瞭な(well-defined)結晶相製品がもたらされるようなものである;得られた製品を粉砕して所望の粒度分布としてバイオシリケートを得るか又は粉砕した粉末を等温処理又は2工程での処理にかける;かかるプロセスは本出願に記載され、特許請求されている。
【課題を解決するための手段】
【0039】
広く云えば、ガラス質プレート又はフリットから本発明の粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩を製造する方法は下記の工程からなる:
a) ガラス質プレート又はフリットを結晶の核形成と生長を同時に促進するような温度で一工程熱処理にかけて結晶化材料を得る工程;
b) 上記結晶化材料を所望の粒度分布が得られるまで微粉砕して、粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩を得る工程。
【0040】
別法として、本発明の方法は下記の工程からなる:
a) ガラス質プレート又はフリットを微粉砕して、所望の粒度分布を有するガラス質粉末を得る工程;
b) 上記粉末を結晶の核形成と生長を同時に促進するような温度で一工程熱処理にかけて結晶化材料を得る工程。
【0041】
更に別の方法においては、熱処理工程を2つの工程−一つは核形成工程であり、一つは結晶生長工程である−で行って、最終的に結晶質バイオシリケートを得ることができる。
【0042】
生物学的活性珪酸塩についての所望の粒度分布を得るためには、プレート又はフリットとしての材料を、二工程熱処理にかけるか又はかけることなしに、好ましくは150ミクロン以下の粒度まで減少させ、ついで得られた粒子を、イソプロピルアルコール又はアセトン(これらに限定はされない)のごとき無水有機液体媒体中で、ジャー及びめのうボールを備えた遊星型ミルのごとき任意の適当な粉砕機を利用して、特定の化学的組成に応じて100〜200分間、湿式粉砕する。本発明によれば、バイオシリケートの好ましい粒度は0.1〜30ミクロンである。
【0043】
ガラスの調製は公知技術の一部であり、下記の工程からなる:
a) 組成物の種々の成分を秤量し、約20分間混合する工程;
b) 混合した組成物を1200〜1500℃の温度で2〜6時間溶融させ、均質な液状物を得る工程;
c) かく得られた均質な液状物を
c1) 2個の金属製バーの間に注入し、ついで、加圧してガラス質プレートを得るか、又は
c2) 蒸留水中に注入したガラス質フリットを得る工程。
【0044】
成分の混合は、通常の技術と当業者に周知の装置を使用して行われる。
【0045】
本発明のバイオシリケートを製造するのに有用な組成物は、40〜60重量%のSiO2、0〜30重量%のNa20、0〜30重量%のK20、15〜30重量%のCaO、0〜15重量%のCaF2、0〜15重量%のNaF、0〜10重量%のLi2O、0〜10重量%のSnO、0〜10重量%のSrO、0〜8重量%のP2O5、0〜6重量%のFe2O3、0〜3重量%のMgO、0〜3重量%のB2O3、0〜3重量%のAl2O3及び0〜3重量%のZnOからなる。
【0046】
本発明のバイオシリケートの用途は、ひび割れ(crack)、鉱物消失(demineralization)のごとき口腔疾患の処置及び歯の孔の充填及び歯肉炎における健康の回復に向けられている。
【0047】
従って、本発明によれば、一工程熱処理を行いついで所望の粒度分布が得られるまで微粉砕して、切傷を付ける端部(cutting edge)を生じ得るガラス質相を実際上含まない結晶質粒子(即ち、残留ガラス質相が0.5%以下)を得ること−このことは口腔粘膜に対する攻撃が最小になることを意味する−により、ガラス質プレート又はフリットから粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩を製造する方法が提供される。
【0048】
本発明によれば、更に、微粉砕を行いついで一工程熱処理を行って、口腔粘膜に対する攻撃と過度の歯の磨耗を排除するために、鋭い、切傷を付ける端部を生じ得るガラス質相を実際上含まない結晶質粒子を得ることにより、ガラス質プレート又はフリットから粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩を製造する方法が提供される。
【0049】
本発明によれば、更に、ガラスの粉砕の前又は後に、熱処理を2工程で行いついで核形成工程と結晶生長工程を行って、口腔粘膜に対する攻撃と過度の歯の磨耗を排除するために、切傷を付ける端部を生じ得るガラス質相を実際上含まない結晶質粒子を得ることにより、ガラス質プレート又はフリットから粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩を製造する方法が提供される。
【0050】
本発明によれば、更に、シリカと無機酸化物に基づく組成物であって、この組成物に基づいて、微粉砕を行いついで熱処理を行うことにより本発明の粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩を得る珪酸塩を製造するための組成物が提供される。
【0051】
本発明によれば、更に、口腔衛生用のゲル及び他の製品に配合したとき、口腔疾患、歯肉炎及び歯の孔の処置に有用なそして歯質の感受性を減少させるのに有用な、粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩が提供される。
【0052】
図面の簡単な説明
添付された図1は、SBF K-9液中での生物学的活性試験の前及び後の、本発明のバイオシリケート組成物の赤外線スペクトルを示す。
【0053】
添付された図2は、口腔衛生用製品として使用されるゲル中に種々の時間暴露した、2〜0.1ミクロンの粒度分布を有する粒状バイオシリケート組成物の赤外線スペクトルを示す。
【0054】
添付された図3は、20〜0.1ミクロンの粒度分布を有するバイオシリケートで処理した歯の頸部帯域表面の顕微鏡写真である。図3Aは2000倍に拡大した図である。図3bは10,000倍に拡大した図である。図3Cは10,000倍に拡大した図である。図3dは3,000倍に拡大した図である。図3Eは5,000倍に拡大した図である。
【0055】
添付された図4は、本発明のバイオシリケート及び本発明のバイオシリケートと同一の化学的組成と粒度分布を有するガラスとの接触時間と、水溶液のpH上昇を示すグラフである。両者の粒度分布は20〜0.1ミクロンである。
【0056】
添付された図5は、DSC サーモグラフ、K20を含まない組成物についての一つのサーモグラフ及びNa2Oの全てがK20で置換されている組成物についての一つのサーモグラフを示す。この図は各々の組成物について熱処理を行った温度間隔を示す。
【0057】
好ましい態様の説明
・粒状結晶質バイオシリケートの製造方法
本発明の第1の要旨は粒状結晶質バイオシリケートの製造方法である。
【0058】
本発明によれば、ガラス質プレート又はフリットから粒状結晶質バイオシリケートを製造する方法の一つの態様は下記の工程からなる:
a) ガラス質小片を400℃〜1050℃の温度で1〜150時間、好ましくは、500℃〜700℃の温度で3〜100時間、より好ましくは、560℃〜670℃で10〜50時間、熱処理にかけ、同時に結晶の核形成と生長の促進することにより、結晶化した珪酸塩を得る工程;
b) 結晶化した珪酸塩を所望の粒度分布が得られるまで微粉砕して、粒状結晶質バイオシリケートを得る工程。
【0059】
a) に記載した温度と時間の範囲がやや広いのは、本発明の概念に概念に従って可能な化学的組成の変化が大きいことによるものである;化学的組成の変化が小さい場合には、ガラスの粘度、従って、結晶化を促進するのに使用すべき熱処理の変化が非常に大きくなる。
【0060】
図5のDSC(示差走査熱量分析)曲線は種々の組成のガラスの結晶化について見出される熱処理温度における大きな差を示している。
【0061】
本発明の全ての態様についてのバイオシリケートを得るための熱処理はガラス転移温度(Tg)と図1に示される結晶化温度(Tc)の間で行われるべきである。かくして、組成を変化させることにより、これらの範囲を広く変化させることができる。図5は下記の組成(重量%)についてのDSC曲線を示している:
バイオシリケートL1:
SiO2 44.9%
Na2O 22.0%
Ca0 22.0%
Li2O 7.4%
P205 3.7%
バイオシリケートK1:
SiO2 48.5%
K20 23.75%
CaO 23.75%
P205 4.07%
カリウム含有組成物については、かかるガラスの結晶化はより高い温度で生起するので、熱処理温度の範囲は更に広い。
【0062】
その上、種々の結晶相及び最終バイオシリケートのミクロ構造を得るためには、熱処理は大きく変動する。例えば、図5において、バイオシリケートK1についてのDSC サーモグラフは、890℃〜1025℃の結晶化温度Tcで2つの結晶相の結晶化を示している。
【0063】
別法として、本発明の方法は、
a) ガラス質プレート又はフリットを微粉砕して、所望の粒度分布を有するガラス質粉末を取得し、
b) かく得られた粉末を、400℃〜950℃の温度で1〜150時間、好ましくは、500℃〜700℃の温度で3〜50時間、より好ましくは、540℃〜650℃で5〜20時間、熱処理にかけ、同時に結晶の核形成と生長の促進することにより、結晶化した粒状の、生物学的に活性な又は再吸収性珪酸塩を得ることからなる。
【0064】
熱処理の時間は、所望の好ましい結晶相と基本ガラス組成に応じて、多かれ少なかれ長い。
【0065】
バイオシリケートを得るための等温熱処理においては、ガラス質材料をガラス転移温度Tg以上の温度、本発明の組成物の場合、400〜680℃で加熱することにより、結晶の核形成と生長が同時に行われる。熱処理の温度と時間を変化させることにより、ある種のバイオシリケートの容積中に分布している結晶の数と大きさを変化させることができる。
【0066】
所望の粒度分布のバイオシリケートを得るためには、予め熱処理にかけた又はかけていないプレート又はフリットとしてのガラス質材料を、好ましくは150ミクロン以下の粒度に減少させ(但し、この値に限定されない)、ついで、得られた粒子を、化学的組成と特定のミクロ構造に応じて無水有機液体媒体中で100〜200分間微粉砕する。
【0067】
微粉砕に有用な無水液体媒体はイソプロピルアルコール又はアセトンである(但し、これらに限定されない)。
【0068】
バイオシリケート材料を微粉砕するために使用される微粉砕機はジャーとめのうボールを有する遊星型のものであるが、これに限定されない。
【0069】
別法として、ガラス質プレート又はフリットから本発明の粒状、生物学的活性珪酸塩を得る方法は下記の工程からなる:
a) ガラス質小片を2工程熱処理、即ち、400℃〜850℃の温度で10〜150時間、好ましくは、450℃〜680℃で15〜130時間、より好ましくは、500℃〜600℃で20〜120時間、結晶の核形成を行う第1工程及び500℃〜1050℃の温度で1〜20時間、好ましくは、530℃〜700℃で1〜15時間、より好ましくは、560℃〜680℃で1〜10時間、結晶の生長を行う第2工程にかけて、制御された結晶の大きさを有し、ガラス質相を実際上含まない生物学的活性珪酸塩を得る工程;
b) 結晶化生成物を所望の粒度分布になるまで微粉砕して、生物学的活性、粒状珪酸塩を得る工程。
【0070】
本発明の更に別の方法は下記の工程からなる:
a) ガラス質プレート又はフリットを微粉砕して所望の粒度分布を有するガラス質粉末を得る工程;
b) かく得られた粉末を2工程熱処理、即ち、400℃〜800℃の温度で1〜50時間、好ましくは、450℃〜600℃で1〜30時間、より好ましくは、500℃〜580℃で1〜15時間、結晶の核形成を行う第1工程及び500℃〜900℃の温度で1〜20時間、好ましくは、500℃〜680℃で2〜15時間、より好ましくは、560℃〜660℃で3〜10時間、結晶の生長を行う第2工程にかけて、制御された結晶の大きさを有する、粒状の生物学的活性珪酸塩を得る工程。
【0071】
本発明のバイオシリケートの製造方法で使用されるシリカを基材とする組成物の成分は、最初、正確な秤りを使用して秤量しついで遊星型ミキサー中で20分間混合すべきである。
【0072】
ついで、成分を炉内の白金るつぼ中で、特定の組成に応じて1200〜1500℃の温度で、2〜6時間、溶融させて完全に均質化を行う。
【0073】
この期間の終了後、溶融液を2個の金属バー中に注入し、加圧してガラス質プレートを得る。
【0074】
別法として、溶融液を蒸留水中に注入してガラス質フリットを得る。
【0075】
バイオシリケートの結晶化により、従来のガラス質微粉砕粉末の重大な欠点、即ち、極めて不規則なかつ鋭利な貝殻状の破壊が排除される。これはガラス質の形の粉末により歯肉が切断されるという理由からである。
【0076】
一方、本明細書で述べた熱処理についての可能な方法を使用して、本発明の方法に従ってガラスの制御された結晶化を行うことにより、鋭利な切断端部を有するガラス質粉末の重大な欠点が排除される。
【0077】
生物学的活性珪酸塩の製造方法の態様によれば、既に粒状のガラスの結晶化について、熱処理中、ガラス原子は粘度の関数、従って、ガラスを保持する温度の関数である、ある種の可動性を有する。表面エネルギーを減少させることを目的として、粒子は表面積の低い状態を満足させる形態(morphology)を採用するを傾向にあり、球になる傾向にある。かくして、結晶化熱処理中、粒子の鋭利な輪郭は次第に丸くなる。この方法で鋭利で、切断性の端部のない粒子を得ることができる。
【0078】
重要な点は結晶化時間と温度の制御であり、その理由は高温での或いは高い回数での熱処理は粒子の焼結を生じ、その結果、粒子の大きさが増大するからである;これは望ましくないことである。この場合、粒子の大きさを調節するために、更に微粉砕工程を行うことが予想される。
【0079】
かくして、各々の組成物について、熱処理条件を調節して理想的な形態学的特徴を生じさせ、同時に、粒子の焼結を防止する。
【0080】
従って、バイオシリケート組成、珪酸塩の等温又は2工程処理の温度と時間を操作することにより、結晶の粒度分布を制御しかつ得られる結晶相の量を変化させて、結晶質材料を得ることができる。
【0081】
本明細書に記載の等温又は2工程処理によって得られる結晶相の幾つかは下記のものである:1Na2O.2CaO.3Si02、2Na2O.1CaO.3Si02、Na2OCa(PO4)F、Ca5Si6O16(OH)2.8H20。SiO2、Na2O、CaO及びP2O5を含有する組成物については、800℃より高い温度及び10時間より長い時間での熱処理を行って、アパタイト結晶相を得ることができる。
【0082】
バイオシリケートを製造するための方法の種々の態様により、制御された結晶の寸法を有するバイオシリケートが得られる。かかる生成物の破壊は結晶の輪郭(contour)を介して或いはその破壊プランによって伝播する傾向がある。例えばボールミル中におけるごとき低エネルギー粉砕においては、破壊は結晶の輪郭に従うことが好ましく、一方、高エネルギー粉砕においては、これらの破壊は結晶の輪郭及び結晶の破壊プランに従う。
【0083】
1工程又は2工程熱処理での全ての予測された態様から得られる製品について、本発明の結晶質粒状バイオシリケートの破壊は従来の生物学的活性ガラスの表面で生じる破壊と相違する。本発明のバイオシリケート製品の特徴とプランは、それらがより均一であるか又は滑らかであることであり、その角度に拘わらず、鋭利ではなく、切断性でもない端部を生じ、このことは、本発明のバイオシリケートを口腔衛生製品中に配合することにより、日常的な口腔衛生を実施することによって、これらを口腔疾患の処置に使用するのにとくに適当なものにしている。
【0084】
本発明によれば、生物学的活性珪酸塩の粒度は0.1〜30ミクロンである。場合により、粒度は0.1ミクロン以下であり得る。
【0085】
本発明の粒状、結晶質バイオシリケートの製造方法により、上記材料が受けた等温又は2工程処理の温度と時間に応じて、かかる製品中で結合している又は分離している種々の結晶相が得られる。かかる結晶相は異なる水準の生物学的活性を示す。異なる等温又は2工程処理を行うことにより粒状珪酸塩中の各々の相の相対的留分を変化させることができる。本発明に示唆される種々の組成と結晶相は単一で又は組合せて使用し得る。
【0086】
本発明によれば、生物学的活性のより高い結晶相は歯の組織とのより高い反応速度を示し、身体液の存在下では、材料表面からのイオンの浸出が迅速であり、溶液中にイオンが放出される。かくして、これらの相から形成されるバイオシリケートはより迅速に組織と結合し、周囲の組織によって次第に置換され、かかる組織の再生を生起させる。
【0087】
これらを組合せて使用することにより、生物学的活性のより高い結晶相は歯質小管の閉塞と被覆、微細亀裂及び病巣の充填の際、並びに、組織によるバイオシリケートの進行的な再吸収及び置換による歯のエナメルの修復においてより直接的な作用を有する。
【0088】
本発明によれば、比較的低い生物学的活性を有するが、再吸収相より遅い表面反応速度のために高い生物活性を示す結晶質相は、HCA層の形成により歯の表面に結合する。従って、より寸法の大きい粒子及び生物学的活性結晶相の粒子は、再吸収性ではないが、歯の環境内により長く保持され、より長期間、主として、鉱物成分再補給及びカルシウム再沈降反応のためのイオン供給体として働き、歯質及び歯の表面再生プロセスを助長する。
【0089】
材料組成及びバイオシリケートに施される等温又は2工程処理の温度と時間を変化させることにより、種々の所望の結晶相の留分を変動させ得る。
【0090】
更に、種々の結晶相の生物学的活性珪酸塩を調製することにより粒子溶解速度を制御することが可能であり、このことは口腔疾患の処置の点から興味のあることである。
【0091】
・組成物
他の要旨によれば、本発明は、本発明の方法で使用されるシリカを基材とする組成物に関する。
【0092】
本発明の結晶質粒状バイオシリケートに由来する組成物は口腔疾患の処置に使用するために設計されていることから見て、全ての成分は比較的純粋な形、即ち、ヒ素、鉛、水銀及び放射性元素のごとき高度に毒性の元素を含んでいない形で使用されるべきであることは明らかである;例えば、組成物は無菌状態で操作され、微粉砕されそして熱処理される。
【0093】
広く云えば、本発明の粒状バイオシリケート組成物は、以下に示す表1(重量%)に示す通りである。
【0094】
表 1
成分 重量%
SiO2 40−60 %
Na20 0−30 %
CaO 15−30 %
K2O 0−30 %
CaF2 0−15 %
NaF 0−15 %
Li2O 0−10 %
SnO 0−10 %
SrO 0−10 %
P2O5 0−8 %
Fe2O3 0−6 %
MgO 0−3 %
B2O3 0−3 %
Al203 0−3 %
ZnO 0−3 %
組成物含量、結晶相及び粒度によってバイオシリケートの生物学的活性と歯の組織との反応速度が決定される;バイオシリケートは生物学的活性であるか又は再吸収性である。
【0095】
即ち、比較的、反応速度の遅い結晶相については、本明細書中に記載されるかつ身体液との生物学的活性ガラスの反応に関連する反応段階I−Vは、完全に、本発明の生物学的活性、結晶質珪酸塩に従う;但し、それらが所望の最終製品に従って処方された組成物から調製されたものであり、組成物の加工が適切に調節されていることを条件とする。
【0096】
一方、再吸収性結晶質珪酸塩を構成する、組織との反応速度が速い結晶相については、該結晶相は漸進的に分解され、周囲の組織によって置換される;その結果、組織が完全に再生される:このことは、同一の方法においては、真実である;但し、製品が所望の最終製品に従って処方された組成物から調製されたものであり、組成物の加工が適切に調節されていることを条件とする。
【0097】
本発明の典型的な組成物を表2に示す;数字は重量%である。
表 2
Si02 47.8 %
Na2O 23.4 %
CaO 19.8 %
CaF2 5.0 %
P2O5 4.0 %
【0098】
本発明の典型的な組成物(重量%)を表3に示す;この例では、ナトリウムは完全にカリウムで置換されている。
表 3
Si02 48.5 %
K2O 23.75 %
CaO 23.75 %
P2O5 4.0 %
【0099】
更に、本発明の典型的な組成物(重量%)を表4に示す。
表 4
SiO2 48.5 %
Na2O 23.75 %
CaO 23.75 %
P2O 4.0 %
【0100】
更に、本発明の典型的な組成物(重量%)を表5に示す。
表 5
Si02 44.9 %
Na2O 22.0 %
CaO 22.0 %
Li20 7.4 %
P2O5 3.7 %
【0101】
身体液と接触した際のKイオンの放出速度はNaイオンより大きいという事実から、カリウム含有組成物は、同一のナトリウム含量の組成物より高い生物学的活性を示す。
【0102】
粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩
本発明の別の要旨によれば、本発明は、本発明の方法によって得られた粒状、生物学的活性又は再吸収性珪酸塩に関する。本発明の概念によれば、生物学的活性珪酸塩は歯の組織に結合して、HCAを形成する能力を有する。
【0103】
同様に、かかる生物学的活性珪酸塩は、それらが歯に結合するばかりでなしに、歯に隣接する組織が生物学的活性珪酸塩粒子上で増大し、ある期間後、生物学的活性珪酸塩が組織によって置換される場合;即ち、バイオシリケート物質が消滅し、生体によって吸収され、組織によって置換される場合、再吸収性である。
【0104】
本発明に従って製造される生物学的活性珪酸塩の基本的特徴は、Journal of Biomedical Materials Research,.vol 24,No.6,p 721−734,June 1990に掲載の、
“Solutions able to reproduce in vivo surface-structure in bioactive glass-ceramic ANN”と題する小久保等の報文に記載されるごとく、類似体液(simulated body fluid)(SBF K-9)として知られる人工血漿中に36.7℃で一日、曝露した後に、生物学的活性珪酸塩の表面にヒドロキシカルボネートアパタイトを形成させる能力である。SBF K-9流体はヒトの血漿中に存在する全てのイオンを血漿中に存在する濃度に非常に近い濃度で含有する溶液からなる。
【0105】
バイオシリケートについての生物学的試験については、約1200℃以上の溶融液体を円筒形の型に注入する。かく得られたガラスシリンダーを炉内で、特定の組成物に応じて400〜630℃の温度でアニールする。ついで、シリンダーをダイアモンドリカバーブレードにより円盤状に切断する。円盤を熱処理のための炉に導入して、バイオシリケートの実質的に完全に結晶化を促進する。バイオシリケートの結晶化は前記した方法で得られる。
【0106】
結晶化円盤を、各々、SBF K-9流体を含有する蓋付きポリエチレンフラスコに導入する。円盤表面領域(SA)と接触しているフラスコ中のSBF K-9溶液の容量(VS)は下記の比で示される:
SA/VS=0.1cm-1
【0107】
円盤をフラスコの蓋に取り付けた細いナイロン糸で懸垂して、表面がフラスコに接触しないようにすべきである。フラスコは液体の蒸発を防止し、溶液濃度を一定に保持するために、完全に密封すべきである。種々の時間、曝露した後、円盤をフラスコから取り出し、フーリエ変換器(Fourier transform)を取り付けた赤外線装置(FTIR)で分析して表面の変化を評価する。
【0108】
フーリエ変換器を取り付けた赤外分光器を本発明の関係で使用するが、その理由は、表面分析についての技術においては、ガラス表面の現象の変化及びその後の生物活性材料における表面の変化を分析することについて有用であるからである。FTIR技術により化学的組成、表面の振動性Si-O-Si及びP-Oモードについての情報が提供さえ、かつ、同様に、ある種の表面の層に生起する相の変化を検出し得る。例えば、生物学的活性材料の表面上のHCA層の結晶化はFTIRによって容易に検出し得る。
【0109】
生物学的活性材料について興味のある帯域における分子の振動を以下の表6に示す。
【0110】

【0111】
図1は熱処理前、以下の表7に示す当初の組成(重量%)を有する本発明の結晶質バイオシリケートの一つの、SBK-9中での“生体外”試験後のFTIRスペクトルを示す。
【0112】

【0113】
ついで、SBK-9液中に72時間まで浸漬した際に、その表面にヒドロキシカーボネートアパタイトを形成する結晶化組成物を、イソプロピルアルコール又はアセトンを使用して、ジャー及びめのう球を使用する高エネルギー遊星型ミル中で、特定の組成に応じて100〜200分間湿式磨砕して0.1〜30ミクロンの粒度を有する粉末を得た。粉末重量/アルコール容積の比は100g/70mlであった。バイオシリケートが水性媒体と反応する能力の点から見て、磨砕は分析用等級のイソプロピルアルコール又はアセトン中で行った。
【0114】
ついで、かく得られた結晶質粉末を歯磨き剤中でビヒクルとして使用される種々のゲルを含有するポリエチレンフラスコに装入して、これらの媒体中に長時間滞留させた後の粉末の表面変化を検討した。水性媒体容積/粉末重量の比は10ml/1g〜100ml/0.5gの間で変動させた。
【0115】
粉末を1日〜90日間、ゲルに暴露した後、懸濁液を孔径0.22ミクロンのろ過膜を使用して減圧下でろ過した。粉末を60℃で加熱炉で乾燥させた。1/100の比の粉末−KBrディスクを調製し、このディスクをフーリエ変換器を取り付けた赤外分光器で分析した。
【0116】
図2は30ml/1gの濃度のゲルの一つに1、7、15、30、60及び90日暴露した粒状バイオシエイケートの赤外線スペクトルを示す。
【0117】
図2から、粉末で生起する表面変換は非常に緩慢(smooth)であり、従って、90日間の暴露時間後でさえ、この粉末の化学的特徴、従って、骨組織に結合する能力が実際上、保持されていることが注目される。粉末表面に生起する穏やかな変化は、粉末と骨組織との間での反応速度を変化させるのには不十分であり、赤外線スペクトル曲線から観察されるごとく、反応速度は粉末をゲル中に15日間滞留させた後には完全に安定化される。図2において、2366及び2346cm-1のピークはサンプルの特徴とはなんら関係が無く、試験環境におけるCO2の変化に対応することに留意すべきである。
【0118】
別の試験により結晶化粉末が歯の表面に結合する能力を評価できる。
【0119】
この試験においては、歯を蒸留水で浄化し、歯磨きに似せた操作を行う装置に取り付ける。0.1〜20ミクロンの粒度分布を有する粉末を蒸留水中に1g/100mlの比で懸濁させたバイオシリケート懸濁液を調製した。歯磨き頻度は20秒間に365rpmとした。ブラシの移動距離は3.8cmであった。一対のブラシを備えたシュー(shoe)の重量は200gであった。歯磨きに似せた操作の後、歯を蒸留水中に20時間装入した。ついで、歯の表面を熱空気流中乾燥させ、走査電子顕微鏡で分析した。
【0120】
図3は歯の表面、歯の頚部のバイオシリケート粒子の電子顕微鏡写真の拡大図を示す。
【0121】
図3の電子顕微鏡写真から、バイオシリケート粒子は歯との封止プロセス(sealing process)を開始するが、かかる粒子と歯と接触が明確ではなく、粒子と歯の表面との結合界面が滑らかであることが観察される。粒子の大部分は深く侵食された面を示し(図3A、3C、3D及び3E)、その表面がコラーゲン原繊維で占められている、接触している組織によって徐々に置換されている。これは、頚部領域は生物活性又は再吸収性材料に容易に結合する、ある量のコラーゲン原繊維を保有していることによるものである。歯の表面と接触していない大部分の粒子の帯域は完全に溶解する。この仕方で、Si4+、Ca2+P5+、F-及びK+イオンは溶液中に溶解し、粒子の歯の表面への結合プロセスと鉱物成分再補給プロセスを助長する。
【0122】
口腔疾患の処置に使用するためのバイオシリケートの、関連する別の特徴はバイオシリケートが殺菌性を示すことである。
【0123】
かくして、本発明のバイオシリケートがこの要求について安全であるか否かを検討するための試験を行った。この試験においては、20〜0.1ミクロンの粒度分布を有するバイオシリケート粉末 1gを、30mlの水溶液に導入した。同一の粒度分布を有する、同一の量の生物活性ガラス粉末を30mlの同一の溶液に導入した。同一の条件下、暴露時間によるpHの変化を測定した。
【0124】
図4から、本発明のバイオシリケートは従来の生物活性ガラスと同一の殺菌性を示すことが明らかである;その理由は、本発明のバイオシリケートは同一のヒドロキシアパタイト層形成プロセスを受け、生物活性ガラスと同一のイオンを溶液中に放出し、同一の組成と粒度分布を有する非結晶質ガラスより更に高いpH上昇を示すからである。
【0125】
従って、病原体バクテリアに対するバイオシリケートの効果は確保されている。
【0126】
・粒状、生物学的活性又は再吸収性バイオシリケートの口腔疾患の処置における使用
本発明の更に別の要旨は粒状、生物学的活性又は再吸収性バイオシリケートの口腔疾患の処置における使用である。
【0127】
本発明の結晶質、粒状、生物学的活性又は再吸収性バイオシリケートは、その粒度及び結晶相に応じて、唾液との種々の反応速度を有する。
【0128】
本発明の目的に関して、生物学的活性バイオシリケートの粒度は30〜0.1ミクロンである。好ましい範囲は20〜0.1ミクロンである。
【0129】
かかる粒子は練り歯磨き、ゲル、口腔洗浄剤、口腔消毒剤、塩溶液、人工唾液等のごときビヒクルに配合し得る。これらのビヒクル中に配合すべきバイオシリケートの量は、ビヒクル及び特定の処置に応じて変動するが、0.5〜10重量%である。この量の好ましい範囲は、ゲル及び口腔洗浄剤に配合する場合については、0.5〜3重量%である。
【0130】
バイオシリケート粒子は歯磨き中に或いは口腔衛生を実施することによって歯の組織中に分布されるが、歯の処置にための診療にも供給され得る。
【0131】
4〜0.1ミクロンの粒子は歯質小管又は微細亀裂中に浸透して、最初に、歯の組織の間に強力な化学的結合を形成させ、ついで、徐々に周囲の組織によって置換され、これらの小管及び微細亀裂の閉塞を促進し、その結果、これらの帯域の感受性を除去する。
【0132】
30〜4ミクロンの粒子は歯及び歯の外部表面に沈着させるために設計されている。歯の組織と迅速に反応し、ヒドロキシカーボネートアパタイトを形成して、粒子と組織の間に強い化学的結合を形成させるその能力から見て、かかる粒子は、種々の溶解速度を示す種々の結晶相を使用して制御し得る溶解によって、小管内部に位置する小粒子の反応のためのカルシウム及びリンイオンの供給体として働くことができる。
【0133】
その上、これらの粒子は長時間に亘っての、唾液に対するCa2+、P5+及びF-イオンの供給源であり、このことは鉱物成分再補給プロセス、亀裂の石灰化及び初期空洞(cavity)並びに歯組織の再生に有利である。
【0134】
このことに加えて、Na+、Ca2+及びK+イオンによって提供されるpH上昇の効果がある;その理由は、これらのイオンによって病原体バクテリアの生存に対立する環境が提供され、米国特許6,342,207号及び同6,190,643号に記載されるごとき殺菌効果が示され、空洞、歯肉炎及びバクテリアプラークの繁殖が阻止され、かくして、口腔衛生の保全が促進されるからである。
【0135】
その上、口腔衛生、K+イオンの一定の放出についての有益な効果によって、これらのイオンは歯質小管の内部に拡散するが、歯髄の機械的受容体(メカノ−レセプター)の周囲のこれらのイオンの濃度が増大する。この結果、全ての歯質小管が閉塞される前に、歯質の感受性に対する鎮痛効果が得られる。
【0136】
粒子と歯の強い結合によって、粒子が唾液の移動によって又は口腔衛生の実施によって連行されることが防止される。
【0137】
バイオシリケートを歯に連続的に適用することによって歯の上にヒドロキシカーボネートアパタイトからなる層が形成され、或いは、歯表面が完全に再生される。
【0138】
より小さいバイオシリケート粒子(直径<1ミクロン)を微細亀裂上に沈着させ、唾液中でのその高い溶解性により、局部的カルシウム及びりん濃度を急速の増大させる;このことはこれらの組織の再石灰化に貢献する。
【0139】
溶解速度の異なる、弗素を含有する結晶相を存在させることは、病巣の回復と口腔衛生の促進にとって重要である;その理由は弗素は、その唾液中での濃度が低い場合でも、歯の表面にカルシウムに富む結晶相を沈降させるからである。
【0140】
Kriger,L,ABORPREV:Pomocao de saude bucal.2.ed.,Sao Paulo:Artes Medicas,1999. p.168-194に掲載の“Consideracoes cl’nicas e laboratorias sobre a reatividade de compostos fluoretados aplicados topicamente no esmalte dental humano (Clinical and Laboratorial Consideration on the Reactivity of Fluoride Compounds Topically Applied to the Human Dental Enamel”,in Kriger,L,ABORPREV:“Promotion of the oral health 2nd edition,Sao Paulo,Medical Arts,1999,p.168-194)によれば、0.05%NaF溶液を30秒、適用することは、エナメル質表面にCaF2球状層を形成するのに十分である。溶液により長い時間、暴露した場合には沈着弗素の量が増大する。
【0141】
最近の調査資料に基づいて、エナメル質表面及びミクロ細孔の初期病巣上でのかかるCaF2層の沈着は弗素による歯科処理の有益な作用に応答すべきである。弗化物球(fluoride globule)によって放出される弗素はエナメル質表面を安定化させ、酸に対する抵抗性を増大させるか又は口腔環境内のpHサイクルにおける鉱物成分再供給を可能にする(potentialize)。
【0142】
本発明の別の用途は、放射線ガン治療によって唾液が減少した患者において歯の鉱物層の消失によって歯の組織の変更が生じる口内乾燥症(xerostomy)の処置である。
【0143】
結論
本発明のバイオシリケートは口腔衛生用ビヒクルに配合したとき、表面変性に耐える能力を有しており、水性溶液中での長時間の滞留に耐えるのに十分な化学的耐久性を示し、歯の組織と反応する性質を失うことがない。一方、従来の生物学的活性ガラスについてはこれを水溶液中に長時間、滞留させたときの化学的耐久性に関連するデーターは見出し得ない。従って、本発明の生物学的活性珪酸塩は口腔衛生用製品中で状態調節したとき、長い保存寿命を有する。
【0144】
硝酸カリウムを含有するかつ感受性について無痛覚効果しか示さない、歯の脱感作に使用される従来の練り歯磨きと異なり、本発明のバイオシリケートは、歯の組織に結合してその再生と被覆を行うというその能力からみて、長時間持続する方法で歯質小管の咬合(occlusion)を促進する;処理はある適用回数の後に中断される。その上、カリウム含有組成物については、かかるイオンは表面浸出中、絶えず放出され、歯髄神経のメカノ-レセプターに対する同一の無痛覚効果を促進する。
【0145】
歯の鉱物相と同一の化学的組成を有する内面ヒドロキシカーボネートアパタイト層を形成させることにより、本発明のバイオシリケートにより歯組織との強力な結合が確立される。
【0146】
本明細書に記載されるかつ特許請求されているバイオシリケートは歯の鉱物成分再吸収プロセスに好ましい能力を有することが有利である。口腔内の環境中に存在させた場合、バイオシリケート粒子表面は、歯のヒドロキシアパタイト結晶によってえ吸収されるCa2+及びP5+イオン及び歯のヒドロキシアパタイト相を安定化させるF-を放出させることにより浸出プロセスを開始する;これらは化学的により耐久性であり、また、歯表面でのCaF2球の形成を促進し、これらの球はヒドロキシアパタイト相の安定化のための弗素貯蔵体としての働きをする。バイオシリケートの歯への迅速な結合の後、第2の有益な開始工程は、かかるイオンの水準を高いレベルに保持するための、口腔内環境でのかかるイオンの緩慢な放出である。この方法はより健康な歯についての好ましい環境を保証する。
【0147】
従って、バイオシリケートは、歯の鉱物成分再補給を促進するために難溶性のカルシウム塩及びリン塩を使用する歯磨き剤と比較して有利なものである;その理由はこの遅いプロセスでは、鉱物成分再補給を効率的に促進するために口腔内環境中にこれらのイオン源を長時間存在させることが必要であるからである。
【0148】
0.1ミクロンまでの粒子を含有するバイオシリケートは、更に亀裂の封止を促進しかつ過酸化物を使用する歯の白色化の場合、歯の多孔度を減少させる。過酸化物処理においては、飽和水準を越える歯の有機分子の破壊により歯の多孔度が増大し、歯をより脆弱なかつ脆い物にする。その上、白色化の結果と生じる孔は、歯の暗色化を生じる新しい有機分子の沈着場所である。
【0149】
従来の方法と製品においては制限があるのに対し、本発明に従ってバイオシリケートを製造する方法によれば歯の感受性及び微細亀裂を処置するために歯の組織と迅速に反応する粒子、又は、歯の鉱物成分再補給を促進する目的で口腔内の環境に長時間存在することを表す、溶解性の低い結晶相の粒子が得られる。この効果の組合せは口腔衛生を保持し、一方、同時に、病原体バクテリアを除去するのに極めて有益である。
【0150】
本発明に従って熱処理を行うことによりガラス相を実質的に含まないバイオシリケートが生成し、このことにより鋭利で傷をつける表面のない粒子を得るために磨砕することが可能である;これらは口腔衛生の実施の際にゴム及び粘膜に対し最小の傷しか生じない表面である;これらの特徴は本発明のバイオシリケートを歯磨き用に設計されたゲル及び歯科用クリーム中に配合することを可能にしている。
【0151】
従って、上記の記載は種々の出発組成物から、そして、熱処理に条件を変動させることにより、2つの態様の本発明の方法により種々の組成と結晶相を有する多種の異なるバイオシリケートを得ることができることを証明している;このバイオシリケートはそのままで或いは組合せて使用することができ、広範囲の口腔疾患におけるバイオシリケートの治療的用途を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】SBF K-9液中での生物学的活性試験の前及び後の、本発明のバイオシリケート組成物の赤外線スペクトルを示す。
【図2】腔衛生用製品として使用されるゲル中に種々の時間暴露した、2〜0.1ミクロンの粒度分布を有する粒状バイオシリケート組成物の赤外線スペクトルを示す。
【図3】20〜0.1ミクロンの粒度分布を有するバイオシリケートで処理した歯の頸部帯域表面の顕微鏡写真である。
【図4】本発明のバイオシリケート及び本発明のバイオシリケートと同一の化学的組成と粒度分布を有するガラスとの接触時間と、水溶液のpH上昇を示すグラフである。
【図5】DSC サーモグラフ、K20を含まない組成物についての一つのサーモグラフ及びNa2Oの全てがK20で置換されている組成物についての一つのサーモグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程:
a) ガラス質プレート又はフリットを一工程熱処理にかけかつ同時に結晶の核形成と生長を促進して結晶質珪酸塩を取得し;
b) かく得られた結晶質珪酸塩を微粉砕して0.1〜30μmの粒度分布とし;
c) 0.5%以下の残留ガラス質相を有する粒状の、生物学的活性を有する、結晶質のかつ再吸収性バイオシリケート製品を回収し、それによって、上記結晶質の、生物学的に活性な、粒状のバイオシリケート製品を貝殻状破壊を生じることのないものとする工程;からなるガラス質プレート又はフリットから粒状の、生物学的に活性な、結晶質のかつ再吸収性バイオシリケートを製造する方法。
【請求項2】
別法として、熱処理の前に微粉砕工程を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
別法として、熱処理を二工程で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
別法として、熱処理工程の前に微粉砕工程を行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
等温又は二工程熱処理中に形成される結晶相は、1Na20.2CaO.3SiO2、2Na20.1CaO.3SiO2、Na2OCa(PO4)F及びCa5Si6016(OH)2.H2Oからなる、請求項1、2、3及び4に記載の方法。
【請求項6】
前記結晶相は異なる溶解速度と生物学的活性を有しており、より大きい溶解速度を有する結晶相は歯の組織とより迅速に反応しかつ歯の構造を再生させ、一方、より小さい溶解速度を有する結晶相はHA形成を介して歯の組織に結合する、請求項1〜5に記載の方法
【請求項7】
生物学的活性珪酸塩の粒度は0.1〜20μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生物学的活性珪酸塩の粒度は0.1〜4μmである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
生物学的活性珪酸塩の粒度は30〜4μmである、請求項1及び8に記載の方法。
【請求項10】
生物学的活性珪酸塩の粒度は<1μmである、請求項7及び8に記載の方法。
【請求項11】
40〜60重量%のSiO2、0〜30重量%のK20、0〜30重量%のNa20、0〜15重量%のNaF、15〜30重量%のCaO、0〜15重量%のCaF2、0〜10重量%のLi2O、0〜10重量%のSnO、0〜10重量%のSrO、0〜8重量%のP2O5、0〜6重量%のFe2O3、0〜3重量%のMgO、0〜3重量%のB2O3、0〜3重量%のAl2O3及び0〜3重量%のZnOからなる、請求項1、2、3及び4に記載の方法に従ってバイオシリケートを製造するための組成物。
【請求項12】
SiO2 47.8重量%
Na20 23.4重量%
Ca0 19.8重量%
CaF2 5.0重量%
P2O5 4.0重量%
からなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
SiO2 48.5重量%
K2O 23.75重量%
CaO 23.75重量%
P2O 4.0重量%
からなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
SiO2 44.9重量%
Na2O 22.0重量%
CaO 22.0重量%
Li2O 7.4重量%
P2O5 3.7重量%
からなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1、2、3及び4に記載の方法に従って製造された、粒状の、生物学的に活性な、結晶質のかつ再吸収性バイオシリケート。
【請求項16】
前記バイオシリケートは貝殻状破壊を生じない、請求項15に記載のバイオシリケート。
【請求項17】
0.5〜10重量%、より好ましくは、0.5〜3.0重量%の量でデンタルゲル中に包含されている請求項15に記載のバイオシリケート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−519776(P2006−519776A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501393(P2006−501393)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/BR2004/000015
【国際公開番号】WO2004/074199
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505315421)ウニベルシダデ フェデラル デ サン カルロス (1)
【出願人】(505315432)ウニベルシダデ デ サン パウロ (1)
【Fターム(参考)】