可動ルーフ構造とシーリングブリッジとを有するインクジェットノズルアセンブリ
【課題】インクジェットプリントヘッドのための優れたノズルアセンブリを提供する。
【解決手段】インクジェットプリントヘッドのためのノズルアセンブリは、ノズル開口が画定されているルーフを有するノズルチャンバを含む。ルーフは、固定部に対し相対的に動作可能な可動部を備え、固定部に対する相対的な可動部の動きによってインクがノズル開口を通じて吐出される構成とされている。このノズルアセンブリは、また、可動部を動かすためのアクチュエータと、シール部材と、を含む。シール部材は、可動部と固定部との間を架け渡すブリッジとして構成されている。
【解決手段】インクジェットプリントヘッドのためのノズルアセンブリは、ノズル開口が画定されているルーフを有するノズルチャンバを含む。ルーフは、固定部に対し相対的に動作可能な可動部を備え、固定部に対する相対的な可動部の動きによってインクがノズル開口を通じて吐出される構成とされている。このノズルアセンブリは、また、可動部を動かすためのアクチュエータと、シール部材と、を含む。シール部材は、可動部と固定部との間を架け渡すブリッジとして構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタの分野、特に、インクジェットプリントヘッドの分野に関する。本発明は主に、高解像度プリントヘッドの印刷品質及び信頼性を向上させるために開発された。
【背景技術】
【0002】
多くの異なるタイプの印刷が発明され、そのうちの多数が現在使用されている。公知の印刷形態には、当該のマーキング媒体を用いて印刷媒体にマークを付ける種々の方法がある。一般的に使用される印刷形態には、オフセット印刷、レーザ印刷及び複写装置、ドットマトリクス型インパクトプリンタ、感熱紙プリンタ、フィルムレコーダ、熱ワックスプリンタ、染料昇華型プリンタ、ドロップオンデマンド型及び連続フロー型の両方のインク噴射プリンタが含まれる。費用、速度、品質、信頼性、構造及び動作の単純性などを考慮すると、これらのタイプのプリンタにはそれぞれ、独自の利点及び問題がある。
【0003】
近年、個々のインク画素がそれぞれ1つ又は複数のインクノズルに由来するインク噴射印刷の分野は、主にその低価格性及び汎用性のために、ますます人気が高まっている。
【0004】
インク噴射印刷に関する多くの様々な技法が発明された。この分野を通覧するためには、論文「Non−Impact Printing:Introduction and Historical Perspective」、著作:J Moore、Output Hard Copy Devices、R Dubeck及びS Sherr編、207〜220ページ(1988)を参照されたい。
【0005】
インク噴射プリンタはそれ自体が多くの様々なタイプで提供されている。インク噴射印刷におけるインクの連続ストリームの利用は、少なくとも、Hansellによる米国特許第1,941,001号が単純な形態の連続ストリーム静電インク噴射印刷を開示した1929年まで遡るようである。
【0006】
Sweetによる米国特許第3,596,275号も、インク滴を分離させるために高周波静電場によってインク噴射ストリームを調節するステップを含む連続インク噴射印刷の方法を開示している。この技法は、Elmjet社及びScitex社を含むいくつかのメーカによって今なお利用されている(Sweetらによる米国特許第3,373,437号も参照されたい)。
【0007】
圧電インク噴射プリンタも、一般的に利用されているインク噴射印刷装置の一形態である。圧電システムは、ダイアフラム動作モードを利用するKyserらによる米国特許第3,946,398号(1970)、圧電結晶のスクィーズ(squeeze)動作モードを開示しているZoltenの米国特許第3,683,212号(1970)、圧電動作の湾曲モードを開示しているStemmeの米国特許第3,747,120号(1972)、インク噴射ストリームの圧電プッシュモード作動を開示しているHowkinsの米国特許第4,459,601号、及び剪断モード型の圧電トランスデューサ素子を開示しているFischbeckの米国特許第4,584,590号に開示されている。
【0008】
近時、熱インク噴射印刷は、極めて普及したインク噴射印刷の形態となった。このインク噴射印刷技法には、Endoらによる英国特許第2,007,162号(1979)及びVaughtらによる米国特許第4,490,728号に開示された技法が含まれる。上記の参照文献は共に、ノズルなどの狭窄したスペース内に気泡を発生させ、それによって、その限定されたスペースに連結された孔から関連印刷媒体上にインクを吐出させる、電熱アクチュエータの作動に依拠したインク噴射印刷技法を開示した。エレクトロサーマルアクチュエータを利用する印刷装置は、キャノン株式会社、Hewlett Packard社などのメーカによって製造されている。
【0009】
以上のことからわかるように、多くの異なるタイプの印刷技術が使用可能である。理想的には、印刷技術は、多くの望ましい属性を有するべきである。このような属性には、安価な構造及び動作、高速動作、安全で連続した長期動作などが含まれる。各技術は、コスト、速度、品質、信頼性、電力使用、構造動作の単純性、耐久性及び消耗品の領域において独自の利点及び欠点を有することがある。
【0010】
本出願人は、微小電気機械システム(MEMS)技術を利用して組み立てられるインクジェットプリントヘッドを数多く記載している。その内容が参照により本明細書中に組み込まれる、本出願人による先の米国特許出願第11/685,084号、米国特許出願第11/763,443号及び米国特許出願第11/763,440号に記載されるように、MEMSインクジェットプリントヘッドは、可動部を有するノズルプレートを備えていてもよい。一般に、各可動部には、可動部の作動によって、プリントヘッドからインクが吐出されるように、ノズル開口が画定される。
【0011】
このタイプのプリントヘッドの利点は、インクの液滴を吐出するのに必要なエネルギが、例えば従来の熱バブル形成プリントヘッドと比較すると少ないことである。以前、本出願人は、特定のアクチュエータのデザイン及び相補的な作動方法が、どのようにしてそのようなプリントヘッドからの効率の良い滴の吐出をもたらすかについて記載した(例えば、内容を参照により本明細書中に組み込む米国特許出願第11/607,976号及び米国特許出願第12/239,814号を参照のこと)。
【0012】
しかしながら、「可動ノズル」プリントヘッドの問題は、プリントヘッドの可動部と、固定部との間に良好な流体シールを必要とすることにある。インクは、ノズル開口を通じてのみ吐出されるべきで、シールから漏れるべきではない。可動部と、固定部との間の距離が狭い場合、表面張力によってインクをノズルチャンバ内に保持することができる。しかしながら、流体シールとしてインクの表面張力を使用することには問題があり、通常、特にノズルチャンバ内のインクの圧力が上昇している場合には、信頼性の高いシールを実現することはできない。
【0013】
本出願人による先の米国特許出願第11/685,084号、米国特許出願第11/763,443号及び米国特許出願第11/763,440号に、ノズルプレートの可動部のメカニカルシールを製作する方法が記載されている。一般的には、ノズルプレート上に、可撓性のあるポリジメチルシロキサン(PDMS)層がコーティングされ、この層が、プリントヘッドの可動部と、固定部分との間でシーリング膜としての役割を果たす。さらに、PDMS層は、疎水性のインク吐出面となり、プリントヘッドのフルイディクス及び最終的には印刷品質の点においても大変望ましい。
【0014】
可動ノズルを有するインクジェットプリントヘッド用の改良されたメカニカルシールを提供することが望ましい。特に、プリントヘッドの総合効率に与える影響が最小化する効果的なメカニカルシールを設けることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第1,941,001号
【特許文献2】米国特許第3,596,275号
【特許文献3】米国特許第3,373,437号
【特許文献4】米国特許第3,946,398号
【特許文献5】米国特許第3,683,212号
【特許文献6】米国特許第3,747,120号
【特許文献7】米国特許第4,459,601号
【特許文献8】米国特許第4,584,590号
【特許文献9】英国特許第2,007,162号
【特許文献10】米国特許第4,490,728号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】論文「Non−Impact Printing:Introduction and Historical Perspective」、著作:J Moore、Output Hard Copy Devices、R Dubeck及びS Sherr編、207〜220ページ(1988)
【発明の概要】
【0017】
第1の態様において、本発明は、インクジェットプリントヘッドのためのノズルアセンブリであって、
ノズル開口が画定されているルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、固定部に対し相対的に動作可能な可動部を備え、前記固定部に対する相対的な前記可動部の動きによってインクが前記ノズル開口を通じて吐出される構成とされた当該ノズルチャンバと、
前記固定部に対し相対的に前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
前記可動部と前記固定部との間を架け渡すブリッジとして構成されたシール部材と、
を備えるノズルアセンブリを提供する。
【0018】
任意選択で、前記シール部材は、高分子材料から成る。
【0019】
任意選択で、前記高分子材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る。
【0020】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部と前記固定部との間にスペースを有しない。
【0021】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する。
【0022】
任意選択で、前記シール部材は、外形に少なくとも1つの山部及び/又は少なくとも1つの谷部を含む。
【0023】
任意選択で、前記シール部材は、クラウン部を備え、前記クラウン部は、前記可動部に連結された前記シール部材の第1の端部、及び前記固定部に連結された前記シール部材の第2の端部から突出する。
【0024】
任意選択で、前記シール部材は波形である。
【0025】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記可動部内に画定される。
【0026】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記固定部内に画定される。
【0027】
任意選択で、前記アクチュエータは、
駆動回路に接続するための第1の能動素子と、
第1の素子と機械的に協働する第2の受動素子であって、第1の素子を電流が通るとき、第1の素子が第2の素子に対して膨張し、結果としてアクチュエータが湾曲する、第2の受動素子と、
を備える熱湾曲アクチュエータである。
【0028】
任意選択で、前記第1の素子及び前記第2の素子はカンチレバービームである。
【0029】
任意選択で、前記熱湾曲アクチュエータは、前記ルーフの可動部の少なくとも一部を画定する。
【0030】
任意選択で、高分子材料が前記ルーフの大部分にコーティングされ、それによって、前記プリントヘッドのインク吐出面が疎水性となる。
【0031】
任意選択で、各ルーフは、プリントヘッドのノズルプレートの少なくとも一部を形成し、各ルーフは、前記高分子コーティングによって各ノズルチャンバの内部表面に対して疎水性の外部表面を有する。
【0032】
任意選択で、前記ノズルチャンバは、前記ルーフと基板との間を延びる側壁を備え、それによって、前記ルーフは前記基板から間隔を置いて配置される。
【0033】
任意選択で、前記可動部は、前記アクチュエータの作動時に前記基板の方へ動くように構成される。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、複数のノズルアセンブリを備えるインクジェットプリントヘッドであって、各ノズルアセンブリが、
ノズル開口が画定されるルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、固定部に対して可動な可動部を備え、それによって、前記固定部に対する前記可動部の動きによりインクが前記ノズル開口を通じて吐出される、ノズルチャンバと、
前記固定部に対して前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
前記可動部と前記固定部とを相互に連結するシール部材とを備え、
前記シール部材が、前記可動部の動きを容易にするように構成される非平面外形を有する、ノズルアセンブリを提供する。
【0035】
任意選択で、前記プリントヘッドのノズルプレートは高分子コーティングを含む。
【0036】
任意選択で、前記高分子コーティングは前記シール部材を含む。
【0037】
第2の態様において、本発明は、
固定部と、
インクの吐出のための複数の可動部と、
複数のシール部材であって、各シール部材が、各々の可動部と前記固定部とを連結する、複数のシール部材とを備え、
各シール部材が、その各々の可動部と前記固定部との間を架け渡すブリッジとして構成される、インクジェットプリントヘッドを提供する。
【0038】
任意選択で、ノズルプレートは、複数の可動部及び固定部を備える。
【0039】
任意選択で、前記ノズルプレートは、可撓性のある高分子コーティングを含み、前記コーティングは、前記シール部材を含む。
【0040】
任意選択で、前記高分子コーティングは疎水性である。
【0041】
任意選択で、高分子コーティングはポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る。
【0042】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部と前記固定部との間にスペースを有しない。
【0043】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する。
【0044】
任意選択で、各シール部材は、外形に少なくとも1つの山部及び/又は少なくとも1つの谷部を備える。
【0045】
任意選択で、各シール部材はクラウン部を備え、前記クラウン部は、前記可動部に連結された前記シール部材の第1の端部、及び前記固定部に連結された前記シール部材の第2の端部から突出する。
【0046】
任意選択で、各シール部材は波形である。
【0047】
別の態様において、本発明は、複数のノズルアセンブリを備えるプリントヘッドであって、各ノズルアセンブリが、
ノズル開口が画定されるルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、前記固定部に対して可動な前記可動部のうちの1つを備え、それによって、前記固定部に対する前記可動部の動きによりインクがノズル開口を通じて吐出される当該ノズルチャンバと、
前記固定部に対して前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
を備え、
複数のシール部材のうちの1つが、前記可動部と前記固定部との間を橋渡しする、プリントヘッドを提供する。
【0048】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記可動部内に画定される。
【0049】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記固定部内に画定されている。
【0050】
任意選択で、前記アクチュエータは、
駆動回路に接続するための第1の能動素子と、
第1の素子と機械的に協働する第2の受動素子であって、第1の素子を電流が通るとき、第1の素子が第2の素子に対して膨張し、結果としてアクチュエータが湾曲する、第2の受動素子とを備える、熱湾曲アクチュエータである。
【0051】
任意選択で、前記第1の素子及び前記第2の素子はカンチレバービームである。
【0052】
任意選択で、前記熱湾曲アクチュエータは、前記ルーフの可動部の少なくとも一部を画定する。
【0053】
任意選択で、前記ノズルチャンバは、前記ルーフと基板との間を延びる側壁を備え、それによって、前記ルーフは前記基板から間隔を置いて配置される。
【0054】
任意選択で、前記可動部は、前記アクチュエータの作動時に前記基板の方へ動くように構成される。
【0055】
任意選択で、前記ルーフ及び前記側壁は、CVDによって堆積可能なセラミック材料から成り、前記セラミック材料は、窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸化窒化ケイ素を含む群から選択される。
【0056】
さらなる態様において、本発明は、請求項1に記載のプリントヘッドを備えるインクジェットプリンタを提供する。
【0057】
第3の態様において、本発明は、可動部と固定部との間を橋渡しするシール部材を有するインクジェットノズルアセンブリを製作する方法であって、
(a)ルーフでシールされたノズルチャンバを備える部分的に製作されたプリントヘッドを用意するステップと、
(b)前記ルーフを通るビアをエッチングして、前記ビアの第1の側上の前記可動部、及び前記ビアの第2の側上の前記固定部を画定するステップと、
(c)犠牲材料のプラグで前記ビアを施栓(plugging)するステップと、
(d)少なくとも前記プラグ上に可撓性材料の層を堆積するステップと、
(e)前記プラグを除去して、前記可動部と前記固定部との間を橋渡しする前記シール部材を有する前記インクジェットノズルアセンブリを提供するステップとを含み、
前記シール部材が、前記可撓性材料から成る、方法を提供する。
【0058】
任意選択で、前記可撓性のある材料は、高分子材料である。
【0059】
任意選択で、前記可撓性のある材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る。
【0060】
任意選択で、前記プラグは前記ビアを充填し、したがって、前記シール部材は前記ビア内にない。
【0061】
任意選択で、前記プラグは、前記ビアから延びるヘッドを有し、前記ヘッドは、前記可撓性材料を堆積するための足場表面を呈する。
【0062】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する。
【0063】
任意選択で、前記シール部材は、外形に少なくとも1つの山部及び/又は少なくとも1つの谷部を備える。
【0064】
任意選択で、前記シール部材はクラウン部を備え、前記クラウン部は、前記可動部に連結された前記シール部材の第1の端部、及び前記固定部に連結された前記シール部材の第2の端部から突出する。
【0065】
任意選択で、前記シール部材は波形である。
【0066】
さらなる態様において、本発明は、前記犠牲材料の除去の前に前記ルーフを通るノズル開口をエッチングするステップをさらに含む方法を提供する。
【0067】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記可動部を通ってエッチングされる。
【0068】
任意選択で、前記可動部は、熱湾曲アクチュエータを備える。
【0069】
任意選択で、前記熱湾曲アクチュエータは、
駆動回路に接続するための第1の能動素子と、
第1の素子と機械的に協働する第2の受動素子であって、第1の素子を電流が通るとき、第1の素子が第2の素子に対して膨張し、結果としてアクチュエータが湾曲する、第2の受動素子とを備える。
【0070】
任意選択で、前記可撓性のある材料は、疎水性の材料であり、前記可撓性のある材料の前記堆積は、前記ルーフの大部分に行われ、それによって、前記ルーフは相対的に疎水性になる。
【0071】
任意選択で、前記ノズルチャンバは、前記ルーフと基板との間を延びる側壁を備え、それによって、前記ルーフは前記基板から間隔を置いて配置される。
【0072】
任意選択で、前記可動部は、アクチュエータの作動時に前記基板の方へ動くように構成される。
【0073】
任意選択で、前記可撓性層は、前記プラグの除去前に犠牲保護金属層で被覆される。
【0074】
任意選択で、前記犠牲保護金属層は、前記プラグの除去後に除去される。
【0075】
任意選択で、前記プラグは、前記ノズルアセンブリをオキシダイジングプラズマにさらすことによって除去される。
【0076】
さらなる態様において、本発明は、可動部と固定部との間を橋渡しするシール部材を有するインクジェットノズルアセンブリを提供し、前記シール部材は、前記ノズルアセンブリのルーフ上に堆積される可撓性のある材料から成る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】ノズルチャンバの側壁が形成されている、第1のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図2】図4に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図3】ノズルチャンバがポリイミドで充填されている、第2のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図4】図3に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図5】コネクタポストがチャンバルーフに達するよう形成されている、第3のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図6】図5に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図7】導電性金属プレートが形成されている、第4のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図8】図7に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図9】熱湾曲アクチュエータの能動ビーム部材が形成されている、第5のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図10】図9に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図11】熱湾曲アクチュエータを備える可動ルーフ部が形成されている、第6のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図12】図11に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図13】疎水性のポリマー層が堆積されフォトパターニングされている、第7のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図14】図13に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図15】完全に形成されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図16】図15に示す、インクジェットノズルアセンブリの切開斜視図である。
【図17】図9及び図10に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの概略横断面図である。
【図18】図17に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルの、チャンバルーフの可動部及び固定部を画定するためにビアをエッチングした後の、概略横断面図である。
【図19】図18に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルの、フォトレジストのプラグでビアを充填した後の概略横断面図である。
【図20】図19に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルの、ポリマー層及び保護金属層を堆積した後の概略横断面図である。
【図21】図20に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルの、ノズル開口をエッチングした後の概略横断面図である。
【図22】本発明によるインクジェットノズルアセンブリの概略横断面図である。
【図23】別のシール部材の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
次に本発明の任意選択の実施形態について、添付の図面を参照して、単に例として説明する。
【0079】
[可動部と固定部との間のスペースを充填するポリマーを含むノズルアセンブリ]
図1〜図16は、その内容を参照により本明細書中に組み込む、本出願人の先の米国特許出願第11/763,440号に記載されている、インクジェットノズルアセンブリ100のMEMS製造ステップのシーケンスを示す。図15及び図16に示す、完成したインクジェットノズルアセンブリ100は、熱湾曲作動を利用し、それにより、ルーフの可動部が基板の方へ湾曲し、その結果インクが吐出する。
【0080】
MEMS製造の出発点は、シリコンウエハの上部に形成されたCMOS駆動回路を有する標準CMOSウエハである。MEMS製造工程の最後に、このウエハは、各ICが駆動回路及び複数のノズルアセンブリを備える、個々のプリントヘッド集積回路(ICs)にダイス化される。
【0081】
図1及び図2に示すように、基板1には、上部に電極2が形成されている。電極2は、インクジェットノズル100のアクチュエータに電力を供給する一対の隣接する電極(正電極及びアース)のうちの1つである。電極は、基板1の上層のCMOS駆動回路(図示せず)から電力を受け取る。
【0082】
図1及び図2に示す別の電極3は、隣接するインクジェットノズルに電力を供給する。概して、図は、ノズルアセンブリのアレイの1つである、ノズルアセンブリのMEMS製造の諸ステップを示す。以下の説明では、これらのうち1つのノズルアセンブリの製造ステップに焦点を当てる。しかしながら、対応するステップが、ウエハ上に形成されるすべてのノズルアセンブリに対して同時に実施されることがもちろん認められる。図には隣接するノズルアセンブリの一部が示されているが、これは本目的においては無視してよい。したがって、電極3及び隣接するノズルアセンブリの全てのフィーチャについてここで詳しく述べることはしない。実際、明確化のために、隣接するノズルアセンブリに関しては、一部のMEMS製造ステップは示されていない。
【0083】
図1及び図2に示すステップのシーケンスでは、8ミクロンの二酸化ケイ素の層が、まず基板1上に堆積される。二酸化ケイ素の深さがインクジェットノズルのノズルチャンバ5の深さを画定する。図2に最も明確に示されるように、SiO2層の堆積後、SiO2層はエッチングされ、ノズルチャンバ5の側壁になる壁4が画定される。
【0084】
図3及び図4に示すように、ノズルチャンバ5は、次いで、フォトレジスト又はポリイミド6で充填され、次の堆積ステップの犠牲足場としての役割を果たす。ポリイミド6を、標準技術を使用してウエハ上にスピンコーティングし、紫外線キュア及び/又はハードベークし、次いで、SiO2壁4の上面に達するまで、化学機械平坦化(CMP)を施す。
【0085】
図5及び図6において、ノズルチャンバ5のルーフ部材7並びに電極2にまで延びる高導電性コネクタポスト8が形成される。まず、1.7ミクロンのSiO2層が、ポリイミド6及び壁4上に堆積される。このSiO2層がノズルチャンバ5のルーフ7を画定する。次に、標準の異方性DRIEを使用して、一対のビアが、電極2に達するまで壁4に形成される。このエッチングにより、各々のビアを通して一対の電極2が露出する。次に、ビアは、無電解めっきを使用して、銅などの高導電性金属で充填される。堆積された銅ポスト8に、平坦な構造を設けるために、SiO2ルーフ部材7上に達するまで、CMPが施される。無電解銅めっき時に形成された銅コネクタポスト8が、各々の電極2に接し、ルーフ部材7までのリニア導電路をもたらすことがわかる。
【0086】
図7及び図8では、ルーフ部材7及びコネクタポスト8上に0.3ミクロンのアルミニウム層をまず堆積することによって、金属パッド9が形成される。いかなる高導電性金属(例えば、アルミニウム、チタン等)を使用してもよく、ノズルアセンブリの全体的な平坦度に大きく影響しすぎないよう約0.5ミクロン未満の厚さで堆積されるべきである。金属パッド9は、熱弾性能動ビーム部材の所定の「湾曲領域」内のコネクタポスト8及びルーフ部材7上に配置される。
【0087】
図9及び図10では、熱弾性能動ビーム部材10がSiO2ルーフ7上に形成される。能動ビーム部材10に融合されることによって、SiO2ルーフ部材7の一部は、能動ビーム10及び受動ビーム16によって画定される機械的熱湾曲アクチュエータの下部受動ビーム部材16として機能する。熱弾性能動ビーム部材10は、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム及びアルミニウム合金などの、適切ないかなる熱弾性材料から成るものであってもよい。その内容を参照により本明細書中に組み込む、2002年12月4日出願の本出願人による先の米国特許出願第11/607,976号に記載されるように、バナジウム−アルミニウム合金が、好ましい材料である。その理由は、熱膨張が大きい、密度が低い、及びヤング率が高いという有利な性質を併せ持つためである。
【0088】
能動ビーム部材10を形成するためには、1.5ミクロンの能動ビーム材料の層が、まず標準PECVDによって堆積される。ビーム材料は、次いで、標準の金属エッチングを使用してエッチングされて、能動ビーム部材10が画定される。金属エッチングの完了後、図9及び図10に示すように、能動ビーム部材10は、部分的なノズル開口11と、コネクタポスト8を介し各端部において正電極及び接地電極2に電気的に接続されたビーム素子12とを備える。平坦なビーム素子12は、第1の(正電極)コネクタポストの上部から延び、180度湾曲して、第2の(接地)コネクタポストの上部に戻る。
【0089】
さらに図9及び図10を参照すると、金属パッド9が、電流の流れを容易にするために、潜在的に抵抗が高い領域に配置されている。一方の金属パッド9がビーム素子12の湾曲領域に配置され、能動ビーム部材10と、受動ビーム部材16との間に挟まれている。他方の金属パッド9は、コネクタポスト8の上部と、ビーム素子12の端部との間に配置される。
【0090】
図11及び図12を参照すると、SiO2ルーフ部材7は、次いで、ルーフのノズル開口13及び可動部14の全体を画定するためにエッチングされる。可動部14は、熱湾曲アクチュエータ15を備え、熱湾曲アクチュエータ15自体は、能動ビーム部材10及び下の受動ビーム部材16からなる。ノズル開口13は、作動時にノズル開口がアクチュエータと共に動くようにルーフの可動部14内に画定される。参照により本明細書中に組み込む、本出願人による米国特許出願第11/607,976号に記載されるように、ノズル開口13が可動部14に対して固定される構成も可能である。
【0091】
ルーフの可動部14の周囲の外周スペース又は間隙17が、ルーフの固定部18から可動部を分離する。この間隙17によって、アクチュエータ15の作動時に、可動部14がノズルチャンバ5内及び基板1の方へ湾曲することが可能となる。
【0092】
図13及び図14を参照すると、フォトパターニング可能な疎水性のポリマー19の層が、次いで、ノズルアセンブリ全体の上に堆積され、ノズル開口13を再画定するためにフォトパターニングされる。
【0093】
ノズルアセンブリのアレイをコートするためのフォトパターニング可能なポリマーの使用に関しては、その内容を参照により本明細書中に組み込む、本出願人による2007年3月12日出願の先の米国特許出願第11/685,084号及び2007年4月27日出願の米国特許出願第11/740,925号に詳細に記載されている。一般に、疎水性のポリマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又はパーフルオロポリエチレン(PFPE)である。このようなポリマーは、フォトパターニング可能であり、高い疎水性を有し、ヤング率が低いという理由から、特に好都合である。
【0094】
上述の米国特許出願に説明されるように、疎水性のポリマーを組み込んだMEMS製造ステップの正確な順序は、比較的柔軟である。例えば、疎水性のポリマー19の堆積後にノズル開口13をエッチングし、ノズルエッチング用のマスクとしてポリマーを使用することは十分に可能である。MEMS製造ステップの正確な順序の変更は、十分に当業者の手の届く範囲内に、さらに、本発明の範囲内に含まれることが認められる。
【0095】
疎水性のポリマー層19は、いくつかの機能を果す。第1に、疎水性のポリマー層19は、間隙17を充填して、ルーフ7の可動部14と、固定部18との間にメカニカルシールをもたらす。ポリマーが十分に低いヤング率を有していれば、作動時にインクが間隙17を通じて漏れるのを防ぐ一方で、アクチュエータは依然として基板1の方へ湾曲することができる。第2に、ポリマーは、高い疎水性を有し、比較的親水性のノズルチャンバからプリントヘッドのインク吐出面21上にインクが溢れる傾向を最小化する。第3に、ポリマーは保護層として機能し、プリントヘッドのメンテナンスを容易にする。
【0096】
最後に、図15及び図16に示すように、インク供給流路20が、基板1の裏側からノズルチャンバ5までエッチングされる。図15及び図16には、インク供給流路20がノズル開口13と並んで示されているが、もちろん、ノズル開口とずらして配置することもできる。
【0097】
インク供給流路のエッチング後、ノズルチャンバ5を充填したポリイミド6が、例えば、O2プラズマを使用したアッシング(表側アッシング又は裏側アッシングの一方)によって除去されて、ノズルアセンブリ100が形成される。
【0098】
上述されていないが、その内容を参照により本明細書中に組み込む、本出願人による先の米国特許出願第11/740,925号及び米国特許出願第11/946,840号に記載されるように、MEMS加工の最終段階時に、ポリマー層19を保護するために金属フィルム(例えば、チタン又はアルミニウム)を使用してもよい。一般に、保護金属フィルムはノズル開口13のエッチング前にポリマー層19上に堆積される。全てのエッチング及び酸化的フォトレジスト除去ステップ(「アッシングステップ」)の完了後、保護金属フィルムを簡単なHF又はH2O2リンスを使用して除去してもよい。
【0099】
[可動部と固定部との間のスペースをポリマーが橋渡しするノズルアセンブリ]
上述したノズルアセンブリ100において、ポリマー層19は、ルーフ7の可動部14と、固定部18との間の間隙を充填する。このポリマー層は良好なメカニカルシールをもたらし、容易に製造できるが、シールの構成は、必然的に、ノズルアセンブリの全体的な性能及び効率に影響を与える。
【0100】
図17〜図22を参照すると、製造ステップの別のシーケンスが概略的に示されており、このシーケンスの結果、可動部14と固定部18との間を橋渡しするシーリング部材が改良される。簡略化のため、図17〜図22の概略図では、アクチュエータの詳細なフィーチャは示さない。しかしながら、この製造ステップの別のシーケンスの出発点である図17は、図9及び図10に示す、部分的に形成されたノズルアセンブリを概略的に表すことが認められるであろう。明確化のため、ノズルアセンブリの対応するフィーチャを指すために、同様の参照番号が使用される。
【0101】
次いで、図17を参照すると、ポリイミド6で充填されたノズルチャンバ5を有する、部分的に形成されたノズルアセンブリが示される。熱湾曲アクチュエータ(図17に図示せず)を備えるルーフ7が、ノズルチャンバ5上のカバーを形成する。
【0102】
図18では、ビアがルーフ7内にエッチングされる。ビアは、ルーフ7の可動部14と、固定部18との間の間隙17を画定する。
【0103】
次に、図19を参照すると、間隙17は、フォトレジストなどの犠牲材料のプラグ30で充填されている。プラグ30は、次のステップで、高分子シール部材の堆積のための犠牲足場としての役割を果たす。具体的には、プラグ30の上面がシール部材の外形を画定する。プラグ30の構成及びその上面の外形は、従来のフォトリソグラフィ技術によって制御してもよい。例えば、フォトレジスト露光時の集束パラメータを調整することによって、プラグ30の傾斜した側壁を形成してもよい。
【0104】
プラグ30の形成後、部分的に形成されたノズルアセンブリは、次いで、可撓性高分子材料の層19でコーティングされる。一般に、高分子材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。図20に示すように、PDMS層19は、ノズルアセンブリの上面の外形に一致する。
【0105】
その後、PDMS層19上に、保護アルミニウムフィルム31が堆積される。アルミニウムフィルム31は、ポリイミド6(図22)の除去に使用される酸化プラズマからPDMS層19を保護する。
【0106】
次に図21を参照すると、ノズル開口13は、次いで、アルミニウムフィルム31、PDMS層19及びルーフ7を貫通するエッチングによって画定される。このエッチングにおいては、全3層を貫通してエッチングするために、別々の段階において別々のエッチング用化学薬品が必要となることがある。
【0107】
最後に、図22を参照すると、ノズルアセンブリは、ポリイミド6及びフォトレジストプラグ30を除去する、酸化プラズマ(例えば、O2プラズマ)にさらされる。ポリイミド6及びプラグ30の酸化除去後に、HF又はH2O2で洗浄することによって、保護アルミニウム層31が除去される。
【0108】
図22に示す、完成したノズルアセンブリ200は、ルーフ7の可動部14と、固定部18との間の間隙17を橋渡しするシール部材32を有する。重要なことに、シール部材32は、間隙17を充填せず、実際、可動部14と、固定部18との間にスペースは全くない。
【0109】
シール部材32は、一端が可動部14に連結され、他端が固定部18に連結された、ブリッジの外形を有する。さらに、このブリッジは、ブリッジの各端部から突出する山部又はクラウン部33を有する、ほぼ単一アーチ型ブリッジの形態をとる。もちろん、シール部材は、プラグ30の上面の外形に応じて、代わりに可動部14と、固定部18との間を架け渡す単純ビームブリッジの形態をとってもよい。
【0110】
シール部材32には、間隙17が完全に高分子材料19で充填される、図15及び図16に示す実施形態に勝るいくつかの利点がある。第1に、可動部14と、固定部18との間のポリマーの総量を減らすことによって、基板1に向かう、可動部14の下方への運動のインピーダンスがより低くなる。加えて、シール部材の外形は、特に、可動部14の下方への運動を容易にするように構成される。シール部材32は、可動部14と、固定部18との間の距離よりも長い全長を有する可撓性ブリッジの形態をとるため、作動時の可動部14のいかなる下方への運動にも、ブリッジ構造によりポリマー材料の最小限の曲げ又は伸びで容易に対応することができる。したがって、シール部材32は、可動部14の動きに対する最小限のインピーダンスをもたらし、一方でなお、優れたシールを提供する。可動部14の動きに対するインピーダンスを最小化することによって、ノズルアセンブリ200及びそのようなノズルアセンブリを備えるプリントヘッドの総合効率が改善する。
【0111】
もちろん、他の構成のシール部材32も本発明の範囲内である。例えば、図23に示すように、シール部材32は、複数の山部41及び谷部42を有する波形構造40であってもよい。波形構造40は可動部14の動きに容易に対応できることが認められるであろう。
【0112】
当業者であれば、広く記載された本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明に対して特定の実施形態に示すような多くの変更及び/又は修正を加えることが可能であることが理解されるであろう。したがって、本実施形態はあらゆる点において例示的であり、限定的なものではないとみなすべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタの分野、特に、インクジェットプリントヘッドの分野に関する。本発明は主に、高解像度プリントヘッドの印刷品質及び信頼性を向上させるために開発された。
【背景技術】
【0002】
多くの異なるタイプの印刷が発明され、そのうちの多数が現在使用されている。公知の印刷形態には、当該のマーキング媒体を用いて印刷媒体にマークを付ける種々の方法がある。一般的に使用される印刷形態には、オフセット印刷、レーザ印刷及び複写装置、ドットマトリクス型インパクトプリンタ、感熱紙プリンタ、フィルムレコーダ、熱ワックスプリンタ、染料昇華型プリンタ、ドロップオンデマンド型及び連続フロー型の両方のインク噴射プリンタが含まれる。費用、速度、品質、信頼性、構造及び動作の単純性などを考慮すると、これらのタイプのプリンタにはそれぞれ、独自の利点及び問題がある。
【0003】
近年、個々のインク画素がそれぞれ1つ又は複数のインクノズルに由来するインク噴射印刷の分野は、主にその低価格性及び汎用性のために、ますます人気が高まっている。
【0004】
インク噴射印刷に関する多くの様々な技法が発明された。この分野を通覧するためには、論文「Non−Impact Printing:Introduction and Historical Perspective」、著作:J Moore、Output Hard Copy Devices、R Dubeck及びS Sherr編、207〜220ページ(1988)を参照されたい。
【0005】
インク噴射プリンタはそれ自体が多くの様々なタイプで提供されている。インク噴射印刷におけるインクの連続ストリームの利用は、少なくとも、Hansellによる米国特許第1,941,001号が単純な形態の連続ストリーム静電インク噴射印刷を開示した1929年まで遡るようである。
【0006】
Sweetによる米国特許第3,596,275号も、インク滴を分離させるために高周波静電場によってインク噴射ストリームを調節するステップを含む連続インク噴射印刷の方法を開示している。この技法は、Elmjet社及びScitex社を含むいくつかのメーカによって今なお利用されている(Sweetらによる米国特許第3,373,437号も参照されたい)。
【0007】
圧電インク噴射プリンタも、一般的に利用されているインク噴射印刷装置の一形態である。圧電システムは、ダイアフラム動作モードを利用するKyserらによる米国特許第3,946,398号(1970)、圧電結晶のスクィーズ(squeeze)動作モードを開示しているZoltenの米国特許第3,683,212号(1970)、圧電動作の湾曲モードを開示しているStemmeの米国特許第3,747,120号(1972)、インク噴射ストリームの圧電プッシュモード作動を開示しているHowkinsの米国特許第4,459,601号、及び剪断モード型の圧電トランスデューサ素子を開示しているFischbeckの米国特許第4,584,590号に開示されている。
【0008】
近時、熱インク噴射印刷は、極めて普及したインク噴射印刷の形態となった。このインク噴射印刷技法には、Endoらによる英国特許第2,007,162号(1979)及びVaughtらによる米国特許第4,490,728号に開示された技法が含まれる。上記の参照文献は共に、ノズルなどの狭窄したスペース内に気泡を発生させ、それによって、その限定されたスペースに連結された孔から関連印刷媒体上にインクを吐出させる、電熱アクチュエータの作動に依拠したインク噴射印刷技法を開示した。エレクトロサーマルアクチュエータを利用する印刷装置は、キャノン株式会社、Hewlett Packard社などのメーカによって製造されている。
【0009】
以上のことからわかるように、多くの異なるタイプの印刷技術が使用可能である。理想的には、印刷技術は、多くの望ましい属性を有するべきである。このような属性には、安価な構造及び動作、高速動作、安全で連続した長期動作などが含まれる。各技術は、コスト、速度、品質、信頼性、電力使用、構造動作の単純性、耐久性及び消耗品の領域において独自の利点及び欠点を有することがある。
【0010】
本出願人は、微小電気機械システム(MEMS)技術を利用して組み立てられるインクジェットプリントヘッドを数多く記載している。その内容が参照により本明細書中に組み込まれる、本出願人による先の米国特許出願第11/685,084号、米国特許出願第11/763,443号及び米国特許出願第11/763,440号に記載されるように、MEMSインクジェットプリントヘッドは、可動部を有するノズルプレートを備えていてもよい。一般に、各可動部には、可動部の作動によって、プリントヘッドからインクが吐出されるように、ノズル開口が画定される。
【0011】
このタイプのプリントヘッドの利点は、インクの液滴を吐出するのに必要なエネルギが、例えば従来の熱バブル形成プリントヘッドと比較すると少ないことである。以前、本出願人は、特定のアクチュエータのデザイン及び相補的な作動方法が、どのようにしてそのようなプリントヘッドからの効率の良い滴の吐出をもたらすかについて記載した(例えば、内容を参照により本明細書中に組み込む米国特許出願第11/607,976号及び米国特許出願第12/239,814号を参照のこと)。
【0012】
しかしながら、「可動ノズル」プリントヘッドの問題は、プリントヘッドの可動部と、固定部との間に良好な流体シールを必要とすることにある。インクは、ノズル開口を通じてのみ吐出されるべきで、シールから漏れるべきではない。可動部と、固定部との間の距離が狭い場合、表面張力によってインクをノズルチャンバ内に保持することができる。しかしながら、流体シールとしてインクの表面張力を使用することには問題があり、通常、特にノズルチャンバ内のインクの圧力が上昇している場合には、信頼性の高いシールを実現することはできない。
【0013】
本出願人による先の米国特許出願第11/685,084号、米国特許出願第11/763,443号及び米国特許出願第11/763,440号に、ノズルプレートの可動部のメカニカルシールを製作する方法が記載されている。一般的には、ノズルプレート上に、可撓性のあるポリジメチルシロキサン(PDMS)層がコーティングされ、この層が、プリントヘッドの可動部と、固定部分との間でシーリング膜としての役割を果たす。さらに、PDMS層は、疎水性のインク吐出面となり、プリントヘッドのフルイディクス及び最終的には印刷品質の点においても大変望ましい。
【0014】
可動ノズルを有するインクジェットプリントヘッド用の改良されたメカニカルシールを提供することが望ましい。特に、プリントヘッドの総合効率に与える影響が最小化する効果的なメカニカルシールを設けることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第1,941,001号
【特許文献2】米国特許第3,596,275号
【特許文献3】米国特許第3,373,437号
【特許文献4】米国特許第3,946,398号
【特許文献5】米国特許第3,683,212号
【特許文献6】米国特許第3,747,120号
【特許文献7】米国特許第4,459,601号
【特許文献8】米国特許第4,584,590号
【特許文献9】英国特許第2,007,162号
【特許文献10】米国特許第4,490,728号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】論文「Non−Impact Printing:Introduction and Historical Perspective」、著作:J Moore、Output Hard Copy Devices、R Dubeck及びS Sherr編、207〜220ページ(1988)
【発明の概要】
【0017】
第1の態様において、本発明は、インクジェットプリントヘッドのためのノズルアセンブリであって、
ノズル開口が画定されているルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、固定部に対し相対的に動作可能な可動部を備え、前記固定部に対する相対的な前記可動部の動きによってインクが前記ノズル開口を通じて吐出される構成とされた当該ノズルチャンバと、
前記固定部に対し相対的に前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
前記可動部と前記固定部との間を架け渡すブリッジとして構成されたシール部材と、
を備えるノズルアセンブリを提供する。
【0018】
任意選択で、前記シール部材は、高分子材料から成る。
【0019】
任意選択で、前記高分子材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る。
【0020】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部と前記固定部との間にスペースを有しない。
【0021】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する。
【0022】
任意選択で、前記シール部材は、外形に少なくとも1つの山部及び/又は少なくとも1つの谷部を含む。
【0023】
任意選択で、前記シール部材は、クラウン部を備え、前記クラウン部は、前記可動部に連結された前記シール部材の第1の端部、及び前記固定部に連結された前記シール部材の第2の端部から突出する。
【0024】
任意選択で、前記シール部材は波形である。
【0025】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記可動部内に画定される。
【0026】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記固定部内に画定される。
【0027】
任意選択で、前記アクチュエータは、
駆動回路に接続するための第1の能動素子と、
第1の素子と機械的に協働する第2の受動素子であって、第1の素子を電流が通るとき、第1の素子が第2の素子に対して膨張し、結果としてアクチュエータが湾曲する、第2の受動素子と、
を備える熱湾曲アクチュエータである。
【0028】
任意選択で、前記第1の素子及び前記第2の素子はカンチレバービームである。
【0029】
任意選択で、前記熱湾曲アクチュエータは、前記ルーフの可動部の少なくとも一部を画定する。
【0030】
任意選択で、高分子材料が前記ルーフの大部分にコーティングされ、それによって、前記プリントヘッドのインク吐出面が疎水性となる。
【0031】
任意選択で、各ルーフは、プリントヘッドのノズルプレートの少なくとも一部を形成し、各ルーフは、前記高分子コーティングによって各ノズルチャンバの内部表面に対して疎水性の外部表面を有する。
【0032】
任意選択で、前記ノズルチャンバは、前記ルーフと基板との間を延びる側壁を備え、それによって、前記ルーフは前記基板から間隔を置いて配置される。
【0033】
任意選択で、前記可動部は、前記アクチュエータの作動時に前記基板の方へ動くように構成される。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、複数のノズルアセンブリを備えるインクジェットプリントヘッドであって、各ノズルアセンブリが、
ノズル開口が画定されるルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、固定部に対して可動な可動部を備え、それによって、前記固定部に対する前記可動部の動きによりインクが前記ノズル開口を通じて吐出される、ノズルチャンバと、
前記固定部に対して前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
前記可動部と前記固定部とを相互に連結するシール部材とを備え、
前記シール部材が、前記可動部の動きを容易にするように構成される非平面外形を有する、ノズルアセンブリを提供する。
【0035】
任意選択で、前記プリントヘッドのノズルプレートは高分子コーティングを含む。
【0036】
任意選択で、前記高分子コーティングは前記シール部材を含む。
【0037】
第2の態様において、本発明は、
固定部と、
インクの吐出のための複数の可動部と、
複数のシール部材であって、各シール部材が、各々の可動部と前記固定部とを連結する、複数のシール部材とを備え、
各シール部材が、その各々の可動部と前記固定部との間を架け渡すブリッジとして構成される、インクジェットプリントヘッドを提供する。
【0038】
任意選択で、ノズルプレートは、複数の可動部及び固定部を備える。
【0039】
任意選択で、前記ノズルプレートは、可撓性のある高分子コーティングを含み、前記コーティングは、前記シール部材を含む。
【0040】
任意選択で、前記高分子コーティングは疎水性である。
【0041】
任意選択で、高分子コーティングはポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る。
【0042】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部と前記固定部との間にスペースを有しない。
【0043】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する。
【0044】
任意選択で、各シール部材は、外形に少なくとも1つの山部及び/又は少なくとも1つの谷部を備える。
【0045】
任意選択で、各シール部材はクラウン部を備え、前記クラウン部は、前記可動部に連結された前記シール部材の第1の端部、及び前記固定部に連結された前記シール部材の第2の端部から突出する。
【0046】
任意選択で、各シール部材は波形である。
【0047】
別の態様において、本発明は、複数のノズルアセンブリを備えるプリントヘッドであって、各ノズルアセンブリが、
ノズル開口が画定されるルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、前記固定部に対して可動な前記可動部のうちの1つを備え、それによって、前記固定部に対する前記可動部の動きによりインクがノズル開口を通じて吐出される当該ノズルチャンバと、
前記固定部に対して前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
を備え、
複数のシール部材のうちの1つが、前記可動部と前記固定部との間を橋渡しする、プリントヘッドを提供する。
【0048】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記可動部内に画定される。
【0049】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記固定部内に画定されている。
【0050】
任意選択で、前記アクチュエータは、
駆動回路に接続するための第1の能動素子と、
第1の素子と機械的に協働する第2の受動素子であって、第1の素子を電流が通るとき、第1の素子が第2の素子に対して膨張し、結果としてアクチュエータが湾曲する、第2の受動素子とを備える、熱湾曲アクチュエータである。
【0051】
任意選択で、前記第1の素子及び前記第2の素子はカンチレバービームである。
【0052】
任意選択で、前記熱湾曲アクチュエータは、前記ルーフの可動部の少なくとも一部を画定する。
【0053】
任意選択で、前記ノズルチャンバは、前記ルーフと基板との間を延びる側壁を備え、それによって、前記ルーフは前記基板から間隔を置いて配置される。
【0054】
任意選択で、前記可動部は、前記アクチュエータの作動時に前記基板の方へ動くように構成される。
【0055】
任意選択で、前記ルーフ及び前記側壁は、CVDによって堆積可能なセラミック材料から成り、前記セラミック材料は、窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸化窒化ケイ素を含む群から選択される。
【0056】
さらなる態様において、本発明は、請求項1に記載のプリントヘッドを備えるインクジェットプリンタを提供する。
【0057】
第3の態様において、本発明は、可動部と固定部との間を橋渡しするシール部材を有するインクジェットノズルアセンブリを製作する方法であって、
(a)ルーフでシールされたノズルチャンバを備える部分的に製作されたプリントヘッドを用意するステップと、
(b)前記ルーフを通るビアをエッチングして、前記ビアの第1の側上の前記可動部、及び前記ビアの第2の側上の前記固定部を画定するステップと、
(c)犠牲材料のプラグで前記ビアを施栓(plugging)するステップと、
(d)少なくとも前記プラグ上に可撓性材料の層を堆積するステップと、
(e)前記プラグを除去して、前記可動部と前記固定部との間を橋渡しする前記シール部材を有する前記インクジェットノズルアセンブリを提供するステップとを含み、
前記シール部材が、前記可撓性材料から成る、方法を提供する。
【0058】
任意選択で、前記可撓性のある材料は、高分子材料である。
【0059】
任意選択で、前記可撓性のある材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る。
【0060】
任意選択で、前記プラグは前記ビアを充填し、したがって、前記シール部材は前記ビア内にない。
【0061】
任意選択で、前記プラグは、前記ビアから延びるヘッドを有し、前記ヘッドは、前記可撓性材料を堆積するための足場表面を呈する。
【0062】
任意選択で、前記シール部材は、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する。
【0063】
任意選択で、前記シール部材は、外形に少なくとも1つの山部及び/又は少なくとも1つの谷部を備える。
【0064】
任意選択で、前記シール部材はクラウン部を備え、前記クラウン部は、前記可動部に連結された前記シール部材の第1の端部、及び前記固定部に連結された前記シール部材の第2の端部から突出する。
【0065】
任意選択で、前記シール部材は波形である。
【0066】
さらなる態様において、本発明は、前記犠牲材料の除去の前に前記ルーフを通るノズル開口をエッチングするステップをさらに含む方法を提供する。
【0067】
任意選択で、前記ノズル開口は、前記可動部を通ってエッチングされる。
【0068】
任意選択で、前記可動部は、熱湾曲アクチュエータを備える。
【0069】
任意選択で、前記熱湾曲アクチュエータは、
駆動回路に接続するための第1の能動素子と、
第1の素子と機械的に協働する第2の受動素子であって、第1の素子を電流が通るとき、第1の素子が第2の素子に対して膨張し、結果としてアクチュエータが湾曲する、第2の受動素子とを備える。
【0070】
任意選択で、前記可撓性のある材料は、疎水性の材料であり、前記可撓性のある材料の前記堆積は、前記ルーフの大部分に行われ、それによって、前記ルーフは相対的に疎水性になる。
【0071】
任意選択で、前記ノズルチャンバは、前記ルーフと基板との間を延びる側壁を備え、それによって、前記ルーフは前記基板から間隔を置いて配置される。
【0072】
任意選択で、前記可動部は、アクチュエータの作動時に前記基板の方へ動くように構成される。
【0073】
任意選択で、前記可撓性層は、前記プラグの除去前に犠牲保護金属層で被覆される。
【0074】
任意選択で、前記犠牲保護金属層は、前記プラグの除去後に除去される。
【0075】
任意選択で、前記プラグは、前記ノズルアセンブリをオキシダイジングプラズマにさらすことによって除去される。
【0076】
さらなる態様において、本発明は、可動部と固定部との間を橋渡しするシール部材を有するインクジェットノズルアセンブリを提供し、前記シール部材は、前記ノズルアセンブリのルーフ上に堆積される可撓性のある材料から成る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】ノズルチャンバの側壁が形成されている、第1のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図2】図4に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図3】ノズルチャンバがポリイミドで充填されている、第2のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図4】図3に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図5】コネクタポストがチャンバルーフに達するよう形成されている、第3のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図6】図5に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図7】導電性金属プレートが形成されている、第4のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図8】図7に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図9】熱湾曲アクチュエータの能動ビーム部材が形成されている、第5のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図10】図9に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図11】熱湾曲アクチュエータを備える可動ルーフ部が形成されている、第6のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図12】図11に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図13】疎水性のポリマー層が堆積されフォトパターニングされている、第7のステップシーケンス後の、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図14】図13に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの斜視図である。
【図15】完全に形成されたインクジェットノズルアセンブリの横断面図である。
【図16】図15に示す、インクジェットノズルアセンブリの切開斜視図である。
【図17】図9及び図10に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルアセンブリの概略横断面図である。
【図18】図17に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルの、チャンバルーフの可動部及び固定部を画定するためにビアをエッチングした後の、概略横断面図である。
【図19】図18に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルの、フォトレジストのプラグでビアを充填した後の概略横断面図である。
【図20】図19に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルの、ポリマー層及び保護金属層を堆積した後の概略横断面図である。
【図21】図20に示す、部分的に製作されたインクジェットノズルの、ノズル開口をエッチングした後の概略横断面図である。
【図22】本発明によるインクジェットノズルアセンブリの概略横断面図である。
【図23】別のシール部材の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
次に本発明の任意選択の実施形態について、添付の図面を参照して、単に例として説明する。
【0079】
[可動部と固定部との間のスペースを充填するポリマーを含むノズルアセンブリ]
図1〜図16は、その内容を参照により本明細書中に組み込む、本出願人の先の米国特許出願第11/763,440号に記載されている、インクジェットノズルアセンブリ100のMEMS製造ステップのシーケンスを示す。図15及び図16に示す、完成したインクジェットノズルアセンブリ100は、熱湾曲作動を利用し、それにより、ルーフの可動部が基板の方へ湾曲し、その結果インクが吐出する。
【0080】
MEMS製造の出発点は、シリコンウエハの上部に形成されたCMOS駆動回路を有する標準CMOSウエハである。MEMS製造工程の最後に、このウエハは、各ICが駆動回路及び複数のノズルアセンブリを備える、個々のプリントヘッド集積回路(ICs)にダイス化される。
【0081】
図1及び図2に示すように、基板1には、上部に電極2が形成されている。電極2は、インクジェットノズル100のアクチュエータに電力を供給する一対の隣接する電極(正電極及びアース)のうちの1つである。電極は、基板1の上層のCMOS駆動回路(図示せず)から電力を受け取る。
【0082】
図1及び図2に示す別の電極3は、隣接するインクジェットノズルに電力を供給する。概して、図は、ノズルアセンブリのアレイの1つである、ノズルアセンブリのMEMS製造の諸ステップを示す。以下の説明では、これらのうち1つのノズルアセンブリの製造ステップに焦点を当てる。しかしながら、対応するステップが、ウエハ上に形成されるすべてのノズルアセンブリに対して同時に実施されることがもちろん認められる。図には隣接するノズルアセンブリの一部が示されているが、これは本目的においては無視してよい。したがって、電極3及び隣接するノズルアセンブリの全てのフィーチャについてここで詳しく述べることはしない。実際、明確化のために、隣接するノズルアセンブリに関しては、一部のMEMS製造ステップは示されていない。
【0083】
図1及び図2に示すステップのシーケンスでは、8ミクロンの二酸化ケイ素の層が、まず基板1上に堆積される。二酸化ケイ素の深さがインクジェットノズルのノズルチャンバ5の深さを画定する。図2に最も明確に示されるように、SiO2層の堆積後、SiO2層はエッチングされ、ノズルチャンバ5の側壁になる壁4が画定される。
【0084】
図3及び図4に示すように、ノズルチャンバ5は、次いで、フォトレジスト又はポリイミド6で充填され、次の堆積ステップの犠牲足場としての役割を果たす。ポリイミド6を、標準技術を使用してウエハ上にスピンコーティングし、紫外線キュア及び/又はハードベークし、次いで、SiO2壁4の上面に達するまで、化学機械平坦化(CMP)を施す。
【0085】
図5及び図6において、ノズルチャンバ5のルーフ部材7並びに電極2にまで延びる高導電性コネクタポスト8が形成される。まず、1.7ミクロンのSiO2層が、ポリイミド6及び壁4上に堆積される。このSiO2層がノズルチャンバ5のルーフ7を画定する。次に、標準の異方性DRIEを使用して、一対のビアが、電極2に達するまで壁4に形成される。このエッチングにより、各々のビアを通して一対の電極2が露出する。次に、ビアは、無電解めっきを使用して、銅などの高導電性金属で充填される。堆積された銅ポスト8に、平坦な構造を設けるために、SiO2ルーフ部材7上に達するまで、CMPが施される。無電解銅めっき時に形成された銅コネクタポスト8が、各々の電極2に接し、ルーフ部材7までのリニア導電路をもたらすことがわかる。
【0086】
図7及び図8では、ルーフ部材7及びコネクタポスト8上に0.3ミクロンのアルミニウム層をまず堆積することによって、金属パッド9が形成される。いかなる高導電性金属(例えば、アルミニウム、チタン等)を使用してもよく、ノズルアセンブリの全体的な平坦度に大きく影響しすぎないよう約0.5ミクロン未満の厚さで堆積されるべきである。金属パッド9は、熱弾性能動ビーム部材の所定の「湾曲領域」内のコネクタポスト8及びルーフ部材7上に配置される。
【0087】
図9及び図10では、熱弾性能動ビーム部材10がSiO2ルーフ7上に形成される。能動ビーム部材10に融合されることによって、SiO2ルーフ部材7の一部は、能動ビーム10及び受動ビーム16によって画定される機械的熱湾曲アクチュエータの下部受動ビーム部材16として機能する。熱弾性能動ビーム部材10は、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム及びアルミニウム合金などの、適切ないかなる熱弾性材料から成るものであってもよい。その内容を参照により本明細書中に組み込む、2002年12月4日出願の本出願人による先の米国特許出願第11/607,976号に記載されるように、バナジウム−アルミニウム合金が、好ましい材料である。その理由は、熱膨張が大きい、密度が低い、及びヤング率が高いという有利な性質を併せ持つためである。
【0088】
能動ビーム部材10を形成するためには、1.5ミクロンの能動ビーム材料の層が、まず標準PECVDによって堆積される。ビーム材料は、次いで、標準の金属エッチングを使用してエッチングされて、能動ビーム部材10が画定される。金属エッチングの完了後、図9及び図10に示すように、能動ビーム部材10は、部分的なノズル開口11と、コネクタポスト8を介し各端部において正電極及び接地電極2に電気的に接続されたビーム素子12とを備える。平坦なビーム素子12は、第1の(正電極)コネクタポストの上部から延び、180度湾曲して、第2の(接地)コネクタポストの上部に戻る。
【0089】
さらに図9及び図10を参照すると、金属パッド9が、電流の流れを容易にするために、潜在的に抵抗が高い領域に配置されている。一方の金属パッド9がビーム素子12の湾曲領域に配置され、能動ビーム部材10と、受動ビーム部材16との間に挟まれている。他方の金属パッド9は、コネクタポスト8の上部と、ビーム素子12の端部との間に配置される。
【0090】
図11及び図12を参照すると、SiO2ルーフ部材7は、次いで、ルーフのノズル開口13及び可動部14の全体を画定するためにエッチングされる。可動部14は、熱湾曲アクチュエータ15を備え、熱湾曲アクチュエータ15自体は、能動ビーム部材10及び下の受動ビーム部材16からなる。ノズル開口13は、作動時にノズル開口がアクチュエータと共に動くようにルーフの可動部14内に画定される。参照により本明細書中に組み込む、本出願人による米国特許出願第11/607,976号に記載されるように、ノズル開口13が可動部14に対して固定される構成も可能である。
【0091】
ルーフの可動部14の周囲の外周スペース又は間隙17が、ルーフの固定部18から可動部を分離する。この間隙17によって、アクチュエータ15の作動時に、可動部14がノズルチャンバ5内及び基板1の方へ湾曲することが可能となる。
【0092】
図13及び図14を参照すると、フォトパターニング可能な疎水性のポリマー19の層が、次いで、ノズルアセンブリ全体の上に堆積され、ノズル開口13を再画定するためにフォトパターニングされる。
【0093】
ノズルアセンブリのアレイをコートするためのフォトパターニング可能なポリマーの使用に関しては、その内容を参照により本明細書中に組み込む、本出願人による2007年3月12日出願の先の米国特許出願第11/685,084号及び2007年4月27日出願の米国特許出願第11/740,925号に詳細に記載されている。一般に、疎水性のポリマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又はパーフルオロポリエチレン(PFPE)である。このようなポリマーは、フォトパターニング可能であり、高い疎水性を有し、ヤング率が低いという理由から、特に好都合である。
【0094】
上述の米国特許出願に説明されるように、疎水性のポリマーを組み込んだMEMS製造ステップの正確な順序は、比較的柔軟である。例えば、疎水性のポリマー19の堆積後にノズル開口13をエッチングし、ノズルエッチング用のマスクとしてポリマーを使用することは十分に可能である。MEMS製造ステップの正確な順序の変更は、十分に当業者の手の届く範囲内に、さらに、本発明の範囲内に含まれることが認められる。
【0095】
疎水性のポリマー層19は、いくつかの機能を果す。第1に、疎水性のポリマー層19は、間隙17を充填して、ルーフ7の可動部14と、固定部18との間にメカニカルシールをもたらす。ポリマーが十分に低いヤング率を有していれば、作動時にインクが間隙17を通じて漏れるのを防ぐ一方で、アクチュエータは依然として基板1の方へ湾曲することができる。第2に、ポリマーは、高い疎水性を有し、比較的親水性のノズルチャンバからプリントヘッドのインク吐出面21上にインクが溢れる傾向を最小化する。第3に、ポリマーは保護層として機能し、プリントヘッドのメンテナンスを容易にする。
【0096】
最後に、図15及び図16に示すように、インク供給流路20が、基板1の裏側からノズルチャンバ5までエッチングされる。図15及び図16には、インク供給流路20がノズル開口13と並んで示されているが、もちろん、ノズル開口とずらして配置することもできる。
【0097】
インク供給流路のエッチング後、ノズルチャンバ5を充填したポリイミド6が、例えば、O2プラズマを使用したアッシング(表側アッシング又は裏側アッシングの一方)によって除去されて、ノズルアセンブリ100が形成される。
【0098】
上述されていないが、その内容を参照により本明細書中に組み込む、本出願人による先の米国特許出願第11/740,925号及び米国特許出願第11/946,840号に記載されるように、MEMS加工の最終段階時に、ポリマー層19を保護するために金属フィルム(例えば、チタン又はアルミニウム)を使用してもよい。一般に、保護金属フィルムはノズル開口13のエッチング前にポリマー層19上に堆積される。全てのエッチング及び酸化的フォトレジスト除去ステップ(「アッシングステップ」)の完了後、保護金属フィルムを簡単なHF又はH2O2リンスを使用して除去してもよい。
【0099】
[可動部と固定部との間のスペースをポリマーが橋渡しするノズルアセンブリ]
上述したノズルアセンブリ100において、ポリマー層19は、ルーフ7の可動部14と、固定部18との間の間隙を充填する。このポリマー層は良好なメカニカルシールをもたらし、容易に製造できるが、シールの構成は、必然的に、ノズルアセンブリの全体的な性能及び効率に影響を与える。
【0100】
図17〜図22を参照すると、製造ステップの別のシーケンスが概略的に示されており、このシーケンスの結果、可動部14と固定部18との間を橋渡しするシーリング部材が改良される。簡略化のため、図17〜図22の概略図では、アクチュエータの詳細なフィーチャは示さない。しかしながら、この製造ステップの別のシーケンスの出発点である図17は、図9及び図10に示す、部分的に形成されたノズルアセンブリを概略的に表すことが認められるであろう。明確化のため、ノズルアセンブリの対応するフィーチャを指すために、同様の参照番号が使用される。
【0101】
次いで、図17を参照すると、ポリイミド6で充填されたノズルチャンバ5を有する、部分的に形成されたノズルアセンブリが示される。熱湾曲アクチュエータ(図17に図示せず)を備えるルーフ7が、ノズルチャンバ5上のカバーを形成する。
【0102】
図18では、ビアがルーフ7内にエッチングされる。ビアは、ルーフ7の可動部14と、固定部18との間の間隙17を画定する。
【0103】
次に、図19を参照すると、間隙17は、フォトレジストなどの犠牲材料のプラグ30で充填されている。プラグ30は、次のステップで、高分子シール部材の堆積のための犠牲足場としての役割を果たす。具体的には、プラグ30の上面がシール部材の外形を画定する。プラグ30の構成及びその上面の外形は、従来のフォトリソグラフィ技術によって制御してもよい。例えば、フォトレジスト露光時の集束パラメータを調整することによって、プラグ30の傾斜した側壁を形成してもよい。
【0104】
プラグ30の形成後、部分的に形成されたノズルアセンブリは、次いで、可撓性高分子材料の層19でコーティングされる。一般に、高分子材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。図20に示すように、PDMS層19は、ノズルアセンブリの上面の外形に一致する。
【0105】
その後、PDMS層19上に、保護アルミニウムフィルム31が堆積される。アルミニウムフィルム31は、ポリイミド6(図22)の除去に使用される酸化プラズマからPDMS層19を保護する。
【0106】
次に図21を参照すると、ノズル開口13は、次いで、アルミニウムフィルム31、PDMS層19及びルーフ7を貫通するエッチングによって画定される。このエッチングにおいては、全3層を貫通してエッチングするために、別々の段階において別々のエッチング用化学薬品が必要となることがある。
【0107】
最後に、図22を参照すると、ノズルアセンブリは、ポリイミド6及びフォトレジストプラグ30を除去する、酸化プラズマ(例えば、O2プラズマ)にさらされる。ポリイミド6及びプラグ30の酸化除去後に、HF又はH2O2で洗浄することによって、保護アルミニウム層31が除去される。
【0108】
図22に示す、完成したノズルアセンブリ200は、ルーフ7の可動部14と、固定部18との間の間隙17を橋渡しするシール部材32を有する。重要なことに、シール部材32は、間隙17を充填せず、実際、可動部14と、固定部18との間にスペースは全くない。
【0109】
シール部材32は、一端が可動部14に連結され、他端が固定部18に連結された、ブリッジの外形を有する。さらに、このブリッジは、ブリッジの各端部から突出する山部又はクラウン部33を有する、ほぼ単一アーチ型ブリッジの形態をとる。もちろん、シール部材は、プラグ30の上面の外形に応じて、代わりに可動部14と、固定部18との間を架け渡す単純ビームブリッジの形態をとってもよい。
【0110】
シール部材32には、間隙17が完全に高分子材料19で充填される、図15及び図16に示す実施形態に勝るいくつかの利点がある。第1に、可動部14と、固定部18との間のポリマーの総量を減らすことによって、基板1に向かう、可動部14の下方への運動のインピーダンスがより低くなる。加えて、シール部材の外形は、特に、可動部14の下方への運動を容易にするように構成される。シール部材32は、可動部14と、固定部18との間の距離よりも長い全長を有する可撓性ブリッジの形態をとるため、作動時の可動部14のいかなる下方への運動にも、ブリッジ構造によりポリマー材料の最小限の曲げ又は伸びで容易に対応することができる。したがって、シール部材32は、可動部14の動きに対する最小限のインピーダンスをもたらし、一方でなお、優れたシールを提供する。可動部14の動きに対するインピーダンスを最小化することによって、ノズルアセンブリ200及びそのようなノズルアセンブリを備えるプリントヘッドの総合効率が改善する。
【0111】
もちろん、他の構成のシール部材32も本発明の範囲内である。例えば、図23に示すように、シール部材32は、複数の山部41及び谷部42を有する波形構造40であってもよい。波形構造40は可動部14の動きに容易に対応できることが認められるであろう。
【0112】
当業者であれば、広く記載された本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明に対して特定の実施形態に示すような多くの変更及び/又は修正を加えることが可能であることが理解されるであろう。したがって、本実施形態はあらゆる点において例示的であり、限定的なものではないとみなすべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリントヘッドのためのノズルアセンブリであって、
ノズル開口が画定されているルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、固定部に対し相対的に動作可能な可動部を備え、前記固定部に対する相対的な前記可動部の動きによってインクが前記ノズル開口を通じて吐出される構成とされた当該ノズルチャンバと、
前記固定部に対し相対的に前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
前記可動部と前記固定部との間を架け渡すブリッジとして構成されたシール部材と、
を備えるノズルアセンブリ。
【請求項2】
前記シール部材が、高分子材料から成る、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項3】
前記高分子材料が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る、請求項2に記載のノズルアセンブリ。
【請求項4】
前記シール部材が、前記可動部と前記固定部との間にスペースを有しない、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項5】
前記シール部材が、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項6】
前記シール部材が、当該シール部材の外形に、少なくとも1つの山部と少なくとも1つの谷部のうち一方又は両方を備える、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項7】
前記シール部材が、クラウン部を備え、
前記クラウン部が、前記可動部に連結された前記シール部材の第1の端部、及び前記固定部に連結された前記シール部材の第2の端部から突出する、請求項4に記載のノズルアセンブリ。
【請求項8】
前記シール部材が波形である、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項9】
前記ノズル開口が前記可動部内で画定されている、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項10】
前記ノズル開口が前記固定部内で画定されている、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項11】
前記アクチュエータは、熱湾曲アクチュエータであり、
当該熱湾曲アクチュエータは、
駆動回路に接続するための第1の能動素子と、
前記第1の素子と機械的に連携する第2の受動素子であって、前記第1の素子に電流が通るときに前記第1の素子が前記第2の素子に対し相対的に膨張することで、前記アクチュエータが湾曲する当該第2の受動素子と、
を備える、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項12】
前記第1の素子及び前記第2の素子がカンチレバービームである、請求項11に記載のノズルアセンブリ。
【請求項13】
前記熱湾曲アクチュエータが、前記ルーフの前記可動部の少なくとも一部を画定する、請求項11に記載のプリントヘッド。
【請求項14】
前記高分子材料が前記ルーフの大部分にコーティングされ、それによって、前記プリントヘッドのインク吐出面が疎水性となる、請求項2に記載のノズルアセンブリ。
【請求項15】
各ルーフが、前記プリントヘッドのノズルプレートの少なくとも一部を形成し、
各ルーフが、前記高分子コーティングによって各ノズルチャンバの内部表面に対して疎水性の外部表面を有する、請求項13に記載のノズルアセンブリ。
【請求項16】
前記ノズルチャンバが、前記ルーフと基板との間を延びる側壁を備え、それによって、前記ルーフが前記基板から間隔を置いて配置される、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項17】
前記可動部が、前記アクチュエータの作動時に前記基板の方へ動くように構成される、請求項15に記載のノズルアセンブリ。
【請求項18】
複数のノズルアセンブリを備えるインクジェットプリントヘッドであって、
各ノズルアセンブリが、
ノズル開口が画定されているルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、固定部に対し相対的に動作可能な可動部を備え、前記固定部に対する相対的な前記可動部の動きによってインクが前記ノズル開口を通じて吐出される構成とされた当該ノズルチャンバと、
前記固定部に対し相対的に前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
前記可動部と前記固定部とを相互に連結するシール部材と、
を備えており、
前記シール部材が、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する、インクジェットプリントヘッド。
【請求項19】
前記プリントヘッドのノズルプレートが高分子コーティングを含む、請求項18に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項20】
前記高分子コーティングが前記シール部材を含む、請求項19に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項1】
インクジェットプリントヘッドのためのノズルアセンブリであって、
ノズル開口が画定されているルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、固定部に対し相対的に動作可能な可動部を備え、前記固定部に対する相対的な前記可動部の動きによってインクが前記ノズル開口を通じて吐出される構成とされた当該ノズルチャンバと、
前記固定部に対し相対的に前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
前記可動部と前記固定部との間を架け渡すブリッジとして構成されたシール部材と、
を備えるノズルアセンブリ。
【請求項2】
前記シール部材が、高分子材料から成る、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項3】
前記高分子材料が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る、請求項2に記載のノズルアセンブリ。
【請求項4】
前記シール部材が、前記可動部と前記固定部との間にスペースを有しない、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項5】
前記シール部材が、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項6】
前記シール部材が、当該シール部材の外形に、少なくとも1つの山部と少なくとも1つの谷部のうち一方又は両方を備える、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項7】
前記シール部材が、クラウン部を備え、
前記クラウン部が、前記可動部に連結された前記シール部材の第1の端部、及び前記固定部に連結された前記シール部材の第2の端部から突出する、請求項4に記載のノズルアセンブリ。
【請求項8】
前記シール部材が波形である、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項9】
前記ノズル開口が前記可動部内で画定されている、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項10】
前記ノズル開口が前記固定部内で画定されている、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項11】
前記アクチュエータは、熱湾曲アクチュエータであり、
当該熱湾曲アクチュエータは、
駆動回路に接続するための第1の能動素子と、
前記第1の素子と機械的に連携する第2の受動素子であって、前記第1の素子に電流が通るときに前記第1の素子が前記第2の素子に対し相対的に膨張することで、前記アクチュエータが湾曲する当該第2の受動素子と、
を備える、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項12】
前記第1の素子及び前記第2の素子がカンチレバービームである、請求項11に記載のノズルアセンブリ。
【請求項13】
前記熱湾曲アクチュエータが、前記ルーフの前記可動部の少なくとも一部を画定する、請求項11に記載のプリントヘッド。
【請求項14】
前記高分子材料が前記ルーフの大部分にコーティングされ、それによって、前記プリントヘッドのインク吐出面が疎水性となる、請求項2に記載のノズルアセンブリ。
【請求項15】
各ルーフが、前記プリントヘッドのノズルプレートの少なくとも一部を形成し、
各ルーフが、前記高分子コーティングによって各ノズルチャンバの内部表面に対して疎水性の外部表面を有する、請求項13に記載のノズルアセンブリ。
【請求項16】
前記ノズルチャンバが、前記ルーフと基板との間を延びる側壁を備え、それによって、前記ルーフが前記基板から間隔を置いて配置される、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項17】
前記可動部が、前記アクチュエータの作動時に前記基板の方へ動くように構成される、請求項15に記載のノズルアセンブリ。
【請求項18】
複数のノズルアセンブリを備えるインクジェットプリントヘッドであって、
各ノズルアセンブリが、
ノズル開口が画定されているルーフを備えるノズルチャンバであり、前記ルーフが、固定部に対し相対的に動作可能な可動部を備え、前記固定部に対する相対的な前記可動部の動きによってインクが前記ノズル開口を通じて吐出される構成とされた当該ノズルチャンバと、
前記固定部に対し相対的に前記可動部を動かすためのアクチュエータと、
前記可動部と前記固定部とを相互に連結するシール部材と、
を備えており、
前記シール部材が、前記可動部の動きを容易にするように構成された非平面外形を有する、インクジェットプリントヘッド。
【請求項19】
前記プリントヘッドのノズルプレートが高分子コーティングを含む、請求項18に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項20】
前記高分子コーティングが前記シール部材を含む、請求項19に記載のインクジェットプリントヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2012−506782(P2012−506782A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532466(P2011−532466)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001741
【国際公開番号】WO2010/060129
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001741
【国際公開番号】WO2010/060129
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
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