説明

可動レバーの付勢装置

【課題】ねじりコイルバネの組み付けを容易に行うことができるようにする。
【解決手段】ロックレバー7を、第1ベース面31に解錠位置及び施錠位置の2位置間を往復動可能に支持する。ねじりコイルバネ9のコイル部91を、第1ベース面31にほぼ直角な第2ベース面32に設けた固定支持部13に回動可能に支持する。ねじりコイルバネ9のコイル部91から接線方向へ延出する1対のアーム部92、93間で、かつ両アーム部92、93が互いに交差する外側に、ロックレバー7の可動支持部71を挟持することにより、可動支持部71が固定支持部13を横切る位置を境に、ロックレバー7に付与する付勢方向を反転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2位置間を往復動可能に支持される可動レバーに付与する付勢方向を、その移動区間のほぼ中間位置を境にして反転させるようにした可動レバーの付勢装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可動レバーの付勢装置は、ベース部材とこのベース部材に枢支された可動レバーとの間に、ねじりコイルバネを配置するとともに、ねじりコイルバネの各アーム部を、ベース部材と可動レバーとにそれぞれ設けられた係止孔に係止することによって、可動レバーの移動区間のほぼ中間位置を境に、可動レバーに作用する付勢方向を反転させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平7−26529号公報(第12図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載された可動レバーの付勢装置においては、ねじりコイルバネの各アーム部を、ベース部材と可動レバーとの間の狭い隙間で、各係止孔に係止する必要があるため、可動レバー及びベース部材に対するねじりコイルバネの組み付けが極めて面倒である。
【0004】
本発明は、上述のような従来の課題に鑑み、ねじりコイルバネの組み付けを容易に行うことができるようにした可動レバーの付勢装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)可動レバーを、第1ベース面に第1位置及び第2位置の2位置間を往復動可能に支持し、ねじりコイルバネのコイル部を、前記第1ベース面にほぼ直角な第2ベース面に設けた固定支持部または前記固定支持部を横切るように移動可能な前記可動レバーの可動支持部のいずれか一方に回動可能に支持すると共に、前記コイル部から接線方向へ延出する1対のアーム部間で、かつ両アーム部が互いに交差する外側に、前記可動支持部または前記固定支持部のいずれか他方を挟持することにより、前記可動支持部が前記固定支持部を横切る位置を境に、前記可動レバーに付与する付勢方向を反転させるようにする。
【0006】
(2)上記(1)項において、前記可動レバーの可動支持部は、前記第1ベース面と前記固定支持部との間の間隙を移動する。
【0007】
(3)上記(1)または(2)項において、前記固定支持部または前記可動支持部に、前記ねじりコイルバネのコイル部の軸線方向の移動を拘束する鍔部を設ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によると、ねじりコイルバネのアーム部を、従来のように可動レバー及びベース面にそれぞれ係止させる必要がないため、ねじりコイルバネの組み付けを簡単に行うことができる。
【0009】
請求項2記載の発明によると、本装置の小型化を図ることができる。
【0010】
請求項3記載の発明によると、ねじりコイルバネのコイル部を固定支持部または可動支持部に確実に支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係わる一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明を適用した車両用ドアラッチ装置の正面図、図2は、図1におけるII−II線断面図、図3は、III−III線断面図、図4〜図6は、付勢装置の動作説明図である。
【0012】
図1に示すように、車両のドアに装着される車両用ドアラッチ装置1は、車体側に設けられるストライカ(図示略)と噛合することによりドアを閉鎖位置に保持可能な噛合機構を収容した合成樹脂製のボディ2と、このボディ2の前面(図1において図面手前側)に固定されるベース部材をなす金属製のベースプレート3と、ベースプレート3に組み付けられる複数のレバーから構成される操作機構4とを備える。
【0013】
ベースプレート3は、ボディ2に対向する第1ベース面31と、第1ベース面31に対してほぼ直角な第2ベース面32を形成する。
【0014】
ベースプレート3の第1ベース面31には、操作機構4を構成する、噛合機構に連結されるオープンレバー5と、ドアの車内外に設けられるアウトサイドハンドル(図示略)及びインサイドハンドル(図示略)の開扉操作に従動するアウトサイドレバー6と、ドアの車外側に設けられる施解錠操作用のキーシリンダ(図示略)及び車内側に設けられるロックノブの操作に従動する可動レバーをなすロックレバー7と、アウトサイドレバー6とロックレバー7間に架設されるサブレバー8等が配置される。また、ベースプレート3の第2ベース面32には、軸線Oがロックレバー7の回転中心に向くように突出する鍔付き円柱状の固定支持部13が固着され、この固定支持部13には、ロックレバー7に付勢力を付与するためのねじりコイルバネ9が支持される。
【0015】
アウトサイドレバー6は、枢軸10によりベースプレート3の第1ベース面31に枢支され、アウトサイドハンドルまたはインサイドハンドルの開扉操作に基いて、バネ11の付勢力に抗して、リリース方向(図1において反時計方向)へ所定量回動する。
【0016】
ロックレバー7は、枢軸12によりベースプレート3の第1ベース面31に枢支され、アウトサイドハンドルまたはインサイドハンドルの開扉操作を有効にする解錠位置(図1、4に示す第1位置)及び無効にする施錠位置(図6に示す第2位置)の2位置間を往復動回動可能であって、ねじりコイルバネ9の付勢力により、解錠方向(図1、4〜6において反時計方向)及び施錠方向(図1、4〜6において時計方向)へ付勢される。
【0017】
ロックレバー7の回動端には、固定支持部13と第1ベース面31との間隙であって、固定支持部13の下方を横切るように移動可能な円柱状の可動支持部71が設けられている。可動支持部71は、ロックレバー7の移動範囲(解錠位置と施錠位置との間)の中間位置にあるとき、図5に示すように、固定支持部13の真下に位置し、同じく解錠位置にあるとき、図1、4に示すように、固定支持部13よりも解除方向(反時計方向)側に変位し、同じく施錠位置にあるとき、図6に示すように、固定支持部13よりも施錠方向(時計方向)側に変位する。
【0018】
ロックレバー7の裏面側には、突部72が設けられている。この突部72は、ロックレバー7が解錠位置にあるとき、ベースプレート3の下部に設けた切欠部3aの右端縁に当接し、また、同じく施錠位置にあるとき、切欠部3aの左端縁に当接することにより、ロックレバー7の回動量を制限する。
【0019】
サブレバー8は、上端部がアウトサイドレバー6に枢着され、下端部がロックレバー7に上下方向へスライド可能に連結される。
【0020】
ロックレバー7が解錠位置にあるとき、アウトサイドレバー6がリリース方向へ回動すると、サブレバー8は下方へ移動する。これにより、サブレバー8の解除部81がオープンレバー5の当接部51に当接して、オープンレバー5はリリース方向(図1において反時計方向)へ回動する。オープンレバー5がリリース方向へ回動すると、噛合機構とストライカとの噛合が解除されて、ドアの開扉は可能になる。また、ロックレバー7が施錠位置にあるときは、アウトサイドレバー6がリリース方向へ回動して、サブレバー8が下方へ移動しても、解除部81はオープンレバー5の当接部51に対して空振りして、オープンレバー5はリリース方向へ回動しない。よって、ドアを開けることはできない。
【0021】
ねじりコイルバネ9は、コイル部91と、このコイル部91から接線方向へ延長され、互いに交差する1対のアーム部92、93を有する。コイル部91は、固定支持部13に回動可能に支持される。両アーム部92、93は、主に図3に示すように、第1ベース面31へ向けて延出し、それらが互いに交差する交差部94の外側の間には、ロックレバー7の可動支持部71が外方、すなわちロックレバー7の回動方向へ押し出されるように挾持される。これにより、ねじりコイルバネ9のコイル部91を固定支持部13に遊嵌し、ロックレバー7の可動支持部71を両アーム部92、93間に挟み込むだけの作業で、ねじりコイルバネ9を簡単に組み付けることができる。また、ねじりコイルバネ9を組み付けた状態においては、コイル部91が固定支持部13の先端に設けた鍔部13aによって、その軸線方向の動きが規制され、コイル部91は、固定支持部13に確実に支持される。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。ロックレバー7が解錠位置にある場合には、主に図3に実線で示すように、可動支持部71は、固定支持部13よりも解錠側(図3において左側)に位置している。この状態においては、両アーム部92、93及び交差部94は解錠側へ向いているため、可動支持部71に作用する両アーム部92、93の押出力F1は、ロックレバー7に対して解錠方向へ付勢する力として作用する。
【0023】
ロックレバー7が解錠位置から施錠方向へ向けて回動すると、それに伴って、可動支持部71は、第1ベース面31と固定支持部13との間隙を施錠方向(図3において右方)へ向けて移動する。その移動過程で、可動支持部71が、固定支持部13の真下を横切る位置を境にして、固定支持部13よりも施錠方向側へ変位すると、両アーム部92、93及び交差部94が反転して施錠方向側へ向くため、この時点で、可動支持部71に作用する両アーム部92、93の押出力F2の方向が反転して、ロックレバー7に対して施錠方向へ付勢する力として作用する。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
【0025】
(i)ロックレバー7を、ベース部材3の第1ベース面31に沿って直線往復運動可能に支持する。
(ii)ねじりコイルバネ9のコイル部91を、ロックレバー7の可動支持部71に回動可能に支持し、両アーム部92、93間に固定支持部13を挾持する。
(iii)可動レバーを、ロックレバー7以外の他のレバーとする。
(iv)可動レバーの付勢装置を車両用ドアラッチ装置以外に使用する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した車両用ドアラッチ装置の正面図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】可動レバーが第1位置にあるときの要部の動作説明図である。
【図5】可動レバーが中間位置にあるときの要部の動作説明図である。
【図6】可動レバーが第2位置にあるときの要部の動作説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 車両用ドアラッチ装置
2 ボディ
3 ベースプレート(ベース部材)
3a 切欠部
4 操作機構
5 オープンレバー
6 アウトサイドレバー
7 ロックレバー(可動レバー)
8 サブレバー
9 ねじりコイルバネ
10 枢軸
11 バネ
12 枢軸
13 固定支持部
13a 鍔部
31 第1ベース面
32 第2ベース面
51 当接部
71 可動支持部
72 突部
81 解除部
91 コイル部
92、93 アーム部
94 交差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動レバーを、第1ベース面に第1位置及び第2位置の2位置間を往復動可能に支持し、ねじりコイルバネのコイル部を、前記第1ベース面にほぼ直角な第2ベース面に設けた固定支持部または前記固定支持部を横切るように移動可能な前記可動レバーの可動支持部のいずれか一方に回動可能に支持すると共に、前記コイル部から接線方向へ延出する1対のアーム部間で、かつ両アーム部が互いに交差する外側に、前記可動支持部または前記固定支持部のいずれか他方を挟持することにより、前記可動支持部が前記固定支持部を横切る位置を境に、前記可動レバーに付与する付勢方向を反転させるようにしたことを特徴とする可動レバーの付勢装置。
【請求項2】
前記可動レバーの可動支持部は、前記第1ベース面と前記固定支持部との間の間隙を移動することを特徴とする請求項1記載の可動レバーの付勢装置。
【請求項3】
前記固定支持部または前記可動支持部に、前記ねじりコイルバネのコイル部の軸線方向の移動を拘束する鍔部を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の可動レバーの付勢装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−46908(P2009−46908A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214836(P2007−214836)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】