説明

可動人形の下半身部

【課題】従来の可動人形の下半身部は、可動範囲を再現するのみで関節の可動による形状の再現がほとんどなされてなかった。
【解決手段】可動範囲を人体と同様にするために関節の基本構造を人体と同様にし、腰部、大腿部、膝下部などを一体的パーツを関節で繋ぐ方法ではなく、腰部、大腿部、膝下部などを関節の動きに合わせて形状変化するように最適の形状で複数パーツに分割する事によって関節可動による形状変化を再現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動人形の形状と形状変化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可動人形の下半身部には、股関節部を複数の可動部の連携で3次元的に脚部を可動させ、さらに脚部を一体的な筒型のパーツを用いて膝部を2重関節などで繋いだものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
以下、図34により従来の可動人形について説明する。図において、軸52は腰パーツ51の中心部を通り
股関節パーツ53は上下方向に回転し大腿部パーツ54は横に回転する事により股関節の可動を再現している。そして二重関節部55によって膝を180度折り畳む事ができる。
【0004】
【特許文献1】 特開平14−227829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に述べた従来の可動人形の下半身部では人体の関節構造とは大きく異なっていた。そして大腿部パーツ54や脛パーツ56は単一構造パーツで構成されていて関節の角度変化により形状変化する事はなかった。また実際の人体の形状と形状変化を再現していなかった。
【0006】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、可動人形の下半身部を実際の人体の形状に近づけ関節の角度変化による形状変化をさせる事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は上記目的を達成するために股関節部分と膝関節を人体と同様の構造にする。
【0008】
また、第2の課題解决手段は臀部パーツ28と内腿パーツ35を股関節の動きに連動させる。
【0009】
また、第3の課題解決手段は腰部分、大腿部分、ふくらはぎ部分を、形状変化のために最良の形状に分割し構成する。
【0010】
また、第4の課題解決手段は腰部、膝関節にできる隙間を関節の動きに合わせて埋めるパーツを配置してバネなどで腰部、大腿、脛パーツなどで支持する。
【0011】
上記第1の課題解決手段による作用は、次の通りである。関節構造が人体と基本的に同じため人体と同じ可動範囲と可動の制限ができる。
【0012】
また、第2の課題解決手段による作用は、股関節の動きによっても臀部の形状、内腿の形状、長さの変化を自然に保てる。
【0013】
また、第3の課題解決手段による作用は、分割された大腿パーツやふくらはぎパーツなどの可動の連動により関節の角度変化による形状変化を再現する。
【0014】
また、第4の課題解決手段による作用は、腰パーツと大腿パーツの間の隙間などをバネで支持されたパーツが関節の角度に合わせて埋める事ができる。
【発明の効果】
【0015】
上述したように本発明の可動人形の下半身部は、実際の人体の関節構造を基本的に再現しているため、実際の人体の動きを再現する効果がある。
【0016】
また、分割された複数パーツの連動可動により各関節の隙間を埋め、関節の角度変化による形状変化を再現する可動人形の下半身を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図33に基づいて説明する。
【0018】
図において、腰部パーツ1の腹部からパイプが股関節部まで伸ばされボールジョイントに固着されている。
【0019】
ボールジョイントのボール部側の軸が曲げられパイプに差し込まれ固着されている。そのパイプの下方部先端が大腿部前パーツ6に差し込まれている。
【0020】
大腿部前パーツ6は脛パーツ8とT字型の軸で繋がれ、さらに脛パーツ8の足首部で足部パーツを挟み込んでいる。
【0021】
股関節ボールジョイント部近くのパイプに臀部パーツ28が臀部棒状部品29を介して繋がれている。これにより股関節の動きに連動して臀部パーツ28を動かす事ができる。
【0022】
腰部パーツ1の前下部にボールジョイント軸受けが取り付けられ、ボール側の軸が曲げられ内腿中央パーツ35に差し込まれ固着されている。さらに内腿中央パーツ35に直線状バネを介して内腿前部パーツ36、内腿後部パーツ37に繋がれている。内腿前部パーツ36はやや外側に向くように取り付けられている。そしてその内腿前部パーツ36に内腿上部パーツ38が回転する軸で繋がれている。
【0023】
内腿下パーツ25が内腿パーツの外側から大腿部前パーツ6に直線状のバネで繋がれている。さらに内腿下楕円パーツ42が内腿下パーツ25の下に接して大腿部前パーツ6に直線状バネで繋がれている。
【0024】
大腿部後パーツ11が大腿部前パーツ6と内腿下パーツ25の間に挟み込まれ半固定されている。また、大腿部棒状パーツ12が大腿部後パーツ11に付けた支持部品22に差し込まれ脛パーツ8内側後部に接触している。
【0025】
また、脛パーツ8の後上部外側に板状パーツ43が1本の軸により回転するように半固定されて上端が大腿部前パーツ6の内側にある保持部品に差し込まれ膝曲げ時に連動して回転することにより膝外側後の形状を再現している。
【0026】
脛の中心に入った金属棒が軸になり、それを軸に回転する棒にふくらはぎ下内側パーツ15、ふくらはぎ下外側パーツ16が固定されている。さらに、ふくらはぎ下内側パーツ15にふくらはぎ上内側パーツ17が、ふくらはぎ下外側パーツ16にふくらはぎ上外側パーツがボールジョイントを介してそれぞれ繋がれている。
【0027】
また、脛パーツ8後下部に金属部品を介してふくらはぎ下部パーツ20が可動するように繋がれていて、さらにふくらはぎ上部パーツ19が直線状バネ33で繋がれている。
【0028】
膝皿パーツ10は脛パーツ8にバネで内側に向くように固定されていて、また膝皿パーツ10の横に突起があり、突起は外側がやや上内側がやや下に配置され膝の角度に合わせて膝の隙間を埋めるようになっている。
【0029】
腰部パーツ1の横の内側に腰部横パーツ31がバネなどを介してつながれている。
【0030】
腰部パーツ1の前の内側に扇形パーツ30がバネを介して繋がれている。また、腰部パーツ1の前内側に腰部前中央スライドパーツ32がバネを介して繋がれている。
【0031】
膝裏パーツ14が大腿部後保持部品と大腿部後パーツ11とふくらはぎ上部パーツ19とによって半固定されている。
【0032】
股関節を前に動かす場合、股関節の動きに連動して臀部パーツ28が動き、また内腿パーツ35もそれに合わせて動かす事ができ内腿前パーツ36が内側に折れ込み内腿上部パーツ38が大腿部前パーツ6側に引っ込み扇形パーツ30も内腿上部パーツ38に押され腰部パーツ1内に引っ込む。さらに、腰部横パーツ31、腰部横中央スライドパーツ32も大腿部前パーツ6に押され腰部パーツ1側に引っ込む。
【0033】
股関節を内側から外側に動かす場合、大腿部パーツ6が外側に開き内腿パーツ35の先端が開いた部位をカバーする。
【0034】
膝を曲げる場合、大腿部棒状パーツ12が脛パーツ8に押され大腿部後パーツ11に畳み込まれふくらはぎ後上部パーツ19と大腿部後パーツ11同士が押され大腿部後パーツ11は大腿部棒状パーツ12を軸に回転し外側が大腿部前パーツ6側に押し込まれる。ふくらはぎ上部パーツ19に押され、ふくらはぎ上部左右パーツ17,18が展開される。また、内腿下パーツ25と楕円パーツ42が外に開き形状を再現する。
【0035】
さらに、膝曲げ角度が深くなるとふくらはぎ下部パーツ20が大腿部後パーツ11におされふくらはぎ下部左右パーツ15,16も展開される。それによりふくらはぎ上部パーツ17,18とふくらはぎ下部パーツ15,16の位置関係が元にもどる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】 人形左下半身の分解図
【図2】 左脚部を内側から見た図
【図3】 大腿部後パーツを加えた左脚部を内側から見た図
【図4】 腰部パーツの骨格構造図
【図5】 左脚部背面図
【図6】 左脚部側面図
【図7】 左脚正面図
【図8】 腰部側面構造図
【図9】 左臀部正面図
【図10】 腰部パーツを上から見た図
【図11】 腰部骨格側面構造図
【図12】 脚を前に上げた状態の腰部骨格側面構造図
【図13】 左下半身正面骨格図
【図14】 脚を前に上げた状態で下から見た臀部パーツ
【図15】 脚を斜め前に上げた状態で下から見た臀部パーツ
【図16】 一重関節構造図
【図17】 大腿部を外側から見た図
【図18】 大腿部を内側から見た図
【図19】 大腿部前パーツと脛パーツ
【図20】 可動人形下半身正面図
【図21】 大腿部前パーツと内腿下パーツ
【図22】 図3におけるB−B断面図
【図23】 図3におけるA−A断面図
【図24】 正座状態のA−A断面図
【図25】 脚を前に伸ばした状態の側面図
【図26】 正座した状態の側面図
【図27】 正座した状態を内側から見た図
【図28】 正座状態の正面図
【図29】 正座状態からやや開脚した図
【図30】 膝を曲げ開脚した状態の正面図
【図31】 脚を伸ばし開脚した状態の正面図
【図32】 ふくらはぎ別形状図
【図33】 図10におけるC−C断面図
【図34】 従来の可動人形下半身図
【符号の説明】
【0037】
1 腰部パーツ
2 股関節パーツ
3 股関節軸受け
4 股関節ボール側軸
5 大腿骨パーツ
6 大腿部前パーツ
7 T字型軸
8 脛パーツ
9 足部パーツ
10 膝皿パーツ
11 大腿部後パーツ
12 大腿部棒状パーツ
14 膝裏パーツ
15 左脚ふくらはぎ下内側パーツ
16 左脚ふくらはぎ下外側パーツ
17 左脚ふくらはぎ上内側パーツ
18 左脚ふくらはぎ上外側パーツ
19 左脚ふくらはぎ上部パーツ
20 左脚ふくらはぎ下部パーツ
22 保持部品
25 内腿下パーツ
28 臀部パーツ
29 臀部棒状部品
30 扇形パーツ
31 腰部横パーツ
32 腰部前中央スライドパーツ
33 直線状バネ
35 内腿中央パーツ
36 内腿前パーツ
37 内腿後パーツ
38 内腿上パーツ
42 楕円パーツ
43 板状パーツ
45 扇形パーツ用バネ
46 腰部前中央スライドパーツ用バネ
47 腰部横パーツ用バネ
48 ガイド棒
51 腰パーツ
52 軸
53 股関節パーツ
54 大腿部パーツ
55 二重関節部
56 脛パーツ
57 膝パーツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の股関節及び膝関節の角度変化による形状変化をできる限り人体と同様に再現するため図1のように分割、構成した可動人形の下半身部
【請求項2】
股関節の動きに臀部パーツ28が連動するために人形の股関節と臀部パーツ28を臀部棒状部品29で繋いだ請求項1記載の人形の股関節構造
【請求項3】
請求項1記載の可動人形の下半身部の大腿部の円周を複数枚のパーツに分割し大腿部後パーツ11が図18の大腿部棒状パーツ12を軸に回転し下肢の折り畳み時に大腿部前パーツ6側に沈み込む構造
【請求項4】
請求項1記載の可動人形の大腿部前パーツ6に直線状バネで繋がれた内腿下パーツ25が大腿部後パーツ11の回転に連動してせり上がる構造
【請求項5】
請求項1記載の可動人形の股関節と同様に股間前部分に軸に角度をつけたボールジョイントで繋ぎ股関節と連動して動く内腿中央パーツ35とその構造
【請求項6】
請求項1記載の可動人形の内腿前パーツ36の前側に回転する軸で繋いだ大腿前部と腰部との隙間を埋める内腿上パーツ38とその内腿上パーツ38が大腿部前パーツ6が上げられた時大腿部側に引っ込む構造
【請求項7】
請求項1記載の可動人形の股間前部分に大腿部前パーツ6の動きに合わせて腰部パーツ1と大腿前部パーツ6と内腿前上パーツ38との間を埋める、腰部パーツ1にバネで繋がれた扇型パーツ30とその扇形パーツ30が股間部を軸に腰部パーツ1側に引っ込む構造
【請求項8】
請求項1記載の可動人形の腰部パーツ1の横の内側に大腿部の動きに合わせ大腿前パーツ6と腰部パーツ1の間で上下する腰部横パーツ31とその構造
【請求項9】
請求項1記載の可動人形の扇形パーツ30と腰部横パーツ31の間で大腿部前パーツ6の動きに合わせ大腿部前パーツ6と腰部パーツ1の隙間を埋める、腰部パーツ1にバネで繋いだ腰部前中央スライドパーツ32とその構造
【請求項10】
請求項1記載の可動人形の脛パーツ8上の後方部分から前方に傾けたT字型の軸を大腿部前パーツ6の下部を軸受けにした160度程回転して折り曲げることができる膝関節構造
【請求項11】
請求項1記載の可動人形の膝関節の折り曲げに応じ大腿部前パーツの軸受けのための溝が膝関節の前と横から直接見えないように配置した膝皿パーツ10の突起が内側下、外側上に突き出た形状
【請求項12】
請求項1記載の可動人形のふくらはぎ下部構造において脛パーツ8を左ふくらはぎ下内側パーツ15、左ふくらはぎ下外側パーツ16が両側に開き左脚ふくらはぎ下部パーツ20が脛パーツ8側に寄ることにより、ふくらはぎ下部の膝関節の角度変化による形状変化を再現する構造
【請求項13】
請求項1記載の可動人形のふくらはぎ上部構造において膝関節の屈曲により大腿部後部パーツ11に押されて左脚ふくらはぎ上部パーツ19が脛パーツ側に押されることにより左脚ふくらはぎ上内側パーツ17、左脚ふくらはぎ上外側パーツ18がボールジョイント部を回転軸として外側に回転する事によりふくらはぎ部の形状変化を表現しさらに膝の屈曲が進むとふくらはぎ下部が請求項12記載の構造により大腿部後部パーツ11に押され左脚ふくらはぎ下内側パーツ15、左脚ふくらはぎ下外側パーツ16が外側に向かう、それによりボールジョイント部を回転軸として外側に回転して開き形状変化を再現する構造
【請求項14】
請求項1記載の可動人形のくるぶし部において、内側を前上、外側を後下にして軸を配置した構造
【請求項15】
請求項1記載の可動人形の大腿後部パーツ11から支持部品によって保持された大腿部棒状パーツ12の先端が脛パーツ8に接して、膝曲げ時に出て膝伸ばし時に引っ込む構造
【請求項16】
請求項1記載の可動人形の脛パーツ8の膝外側に回転軸を置き上部を大腿部前パーツ6と大腿部後パーツ11の間に差し込み膝の曲げ伸ばしに合わせ動く板状パーツ43とその構造
【請求項17】
請求項1記載の可動人形の膝裏で大腿部後パーツ11の板状パーツ43に挟まれ膝の曲げ伸ばしに合わせ上下移動する軟質素材の膝裏パーツ14とその構造
【請求項18】
請求項1記載の可動人形の腰部パーツ1の腹部に股関節軸受けを固定する構造

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2007−296293(P2007−296293A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152640(P2006−152640)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(506185078)
【Fターム(参考)】